JP5526491B2 - 一次電池用非水電解液、及びそれを用いた非水電解液一次電池 - Google Patents
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Description
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。則ち、本発明の目的は、非水電解液一次電池において、高温保存時の電池抵抗上昇が小さく、安定して動作することを可能とする非水電解液の提供することにある。
本発明の一次電池用非水電解液は、正極と、金属リチウム又はリチウム合金を含んでなる負極とを有する一次電池(以下、単に「リチウム一次電池」という。)用の非水電解液である。この本発明の一次電池用非水電解液は、溶質と、非水溶媒と、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩とを含有する。
溶質は、通常はリチウム塩を用いる。リチウム塩としては、リチウム一次電池の非水電解液の用途に用いることができるものであれば制限はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
これらのリチウム塩は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、必要に応じてリチウム塩以外の溶質を、リチウム塩と併用してもよい。
非水溶媒としては、特に制限はなく、公知のリチウム一次電池用の非水電解液の溶媒として用いられてきている非水溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。
鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。
環状エステル類としては、γ-ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
鎖状エステル類としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテル類としては、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
環状スルホン類としてはスルホラン等が挙げられる。
これらの非水溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
ここで高誘電率溶媒とは、25℃において比誘電率が20以上のものをいい、低粘度溶媒とは、25℃において粘度が1mPa・S未満のものをいう。
また、低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
本発明の一次電池用非水電解液は、上記の溶質及び非水溶媒の他に、モノフルオロリン酸塩、及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる、少なくとも一種のフルオロリン酸塩を含有する。
具体例としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu等の金属元素カチオン;NR1R2R3R4(式中R1〜R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基を表わす。)で表わされるアンモニウムカチオンが挙げられる。
中でも、R1〜R4としては、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子含有複素環基等が好ましい。
本発明において、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩は1種を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
その理由については、以下の様に推測される。
非水電解液一次電池は、高温環境下に置かれた場合、負極のリチウムと電解液とが激しく反応し、ガスの発生や、電極表面への高抵抗皮膜の形成等が起こる傾向にある。その結果、電池の抵抗が上昇し、放電時の過電圧により電池電圧の低下が起こる課題があった。
しかし、本発明の一次電池用非水電解液は、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有するため、それらが金属リチウム及び/又はリチウム合金を含んでなる負極上で反応し、負極表面に耐高温性且つ低抵抗の保護皮膜を形成すると考えられる。これにより、高温保存時に起こる負極と電解液成分の異常反応が抑制でき、高温保存後も良好な放電特性を保つことができると推測される。
本発明の一次電池用非水電解液は、いずれの態様においても、必要に応じて上記の溶質、非水溶媒、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩に加えて、その他の成分を含有することができる。
これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。また、一次電池用非水電解液に対する添加剤の濃度は、本発明の効果を損なわない限り制限はない。
本発明の一次電池用非水電解液の製造方法に制限はなく、最終的に溶質と、非水溶媒と、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩とを混合した非水電解液が得られればよい。従って、本発明の効果を損なわない限り、混合の順序、混合速度、混合温度、撹拌の有無やその速度等、混合の方法には制限はなく、公知の何れの方法を用いて製造することができる。
本発明の非水電解液一次電池は、正極、金属リチウム又はリチウム合金を含んでなる負極、本発明の非水電解液を有する。以下、本発明の非水電解液一次電池について詳述する。
本発明の非水電解液一次電池は、本発明の一次電池用非水電解液以外の構成については、公知の非水電解液一次電池の構成を任意に適用できる。その具体的構成は、通常、本発明の一次電池用非水電解液が含浸されているセパレータを介して、正極と負極とが備えられており、それらを外装体に収納した形態を有する。
一次電池用非水電解液は、上述の本発明の一次電池用非水電解液を用いる。
本発明の非水電解液一次電池の正極に制限はないが、通常、正極活物質、結着剤、及び導電材を含有するものが用いられる。
中でも、MnO2、フッ化黒鉛、フッ化炭素{(CFX)n;0<X≦1}等は、電池特性の長期信頼性の面から特に好ましい。
正極活物質は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
結着剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
導電材は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
例えば、上述の正極活物質に、必要に応じて上述の結着剤、上述の導電材、増粘剤、溶媒等を混合してスラリー状とし、正極集電体の基板に塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
増粘剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
正極集電体の素材は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
負極には、金属リチウム又はリチウム合金を含んで形成されたものが用いられる。
リチウム合金としては例えば、Li−Al、Li−Si、Li−Sn、Li−NiSi、Li−Pb等が挙げられる。リチウム合金は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
なお、金属リチウムとリチウム合金とは、一方のみを用いてもよく、両方を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
例えば、金属リチウム又はリチウム合金のシートを所望の大きさに打ち抜くことにより製造することができる。
負極に使用できる負極集電体の素材としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属、又はそれらの合金が挙げられる。中でも好ましくは、銅が挙げられる。
負極集電体の素材は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
本発明の非水電解液一次電池は、通常、短絡防止のため正極と負極との間にセパレータが介装される。セパレータが液体を含浸できるものである場合、本発明の非水系電解液は、通常このセパレータに含浸させて用いられる。
なお、セパレータの材料は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
本発明の非水電解液一次電池は、通常、上記の本発明の非水電解液、正極、負極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装体の材料は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
本発明の非水電解液一次電池を製造する方法について制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。
具体例としては、本発明の非水電解液一次電池の形状によって、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等を製造することができる。
非水電解液一次電池の作製及びその評価は以下のように行った。
正極活物質として実施例及び比較例ごとに選択される化合物80重量%と、導電材としてアセチレンブラック10重量%と、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン10重量%とからなる混合物を混練した後、50kgf/cm2の圧力で加圧成形して、直径12mm、厚さ0.5mmの円盤状の成形体とし、これを正極として用いた。
厚さ0.5mmの金属リチウムシートを直径14mmに打ち抜いて円盤状とし、これを負極として用いた。
アルゴン雰囲気のドライボックス内で、2032型ステンレス製コインセルケースを使用して、リチウム一次電池を作製した。具体的には、まず正極缶の上に正極を置き、その上にセパレータとしてポリプロピレン不織布を置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた。次に、実施例及び比較例ごとに選択される電解液を加え電池内に十分しみこませた。その後、負極缶を載せて電池を封口することにより、リチウム一次電池を得た。
なお、実施例及び比較例における電池の容量は、放電下限2.0Vで約40mAhになる設計とした。
非水電解液一次電池の評価は、作製した非水電解液一次電池を125℃の環境下で3時間保存した後、−40℃で1mAの定電流放電を行い、放電開始直後の電池電圧を比較した。
電池電圧が高いものは、過電圧による電圧低下が小さいことを意味し、高温保存後でも安定に動作することができる。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンに、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートに、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンに、1モル/リットルの濃度でLiPF6を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、二酸化マンガンを用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、0.5モル/リットルの濃度でLiCF3SO3を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、二酸化マンガンを用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、0.5モル/リットルの濃度でLiClO4を溶解させた溶液に、ジフルオロリン酸リチウムを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンに、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートに、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンに、1モル/リットルの濃度でLiPF6を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、フッ化黒鉛を用いた。
非水電解液として、γ−ブチロラクトンと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、1モル/リットルの濃度でLiBF4を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、二酸化マンガンを用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、0.5モル/リットルの濃度でLiCF3SO3を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、二酸化マンガンを用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、0.5モル/リットルの濃度でLiClO4を溶解させた以外は、何も含有させない非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
正極活物質として、二酸化マンガンを用いた。
非水電解液として、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとを体積比で3:2の比率で混合させた非水溶媒に、0.5モル/リットルの濃度でLiClO4を溶解させた溶液に、1,3−プロパンスルトンを1重量%の濃度で含有させた非水電解液を用いた。
前記の[電池の作製・評価]に記載の方法に従って、製造した非水電解液一次電池の高温保存後の放電試験を行った。結果を表1に示す。
また、比較例7では従来公知の添加剤の例として、特許第3866191号で用いられた環状スルトンを用いている。具体的には、一次電池用非水電解液に1,3−プロパンスルトンを含有させている。本比較例7と実施例6とを比較すると、実施例6の方が高温保存時の抵抗上昇が小さく、安定に動作させられることがわかる。
Claims (8)
- 正極と、金属リチウム又はリチウム合金を含んでなる負極とを有する一次電池用の非水電解液であって、
前記非水電解液が溶質と、非水溶媒と、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩とを含有し、
上記のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を、非水電解液100質量%中に、0.01質量%以上、5質量%以下含有する
ことを特徴とする、一次電池用非水電解液。 - 該非水溶媒が、環状カルボン酸エステル化合物及び/又は鎖状エーテル化合物を含有する
ことを特徴とする、請求項1記載の一次電池用非水電解液。 - 該環状カルボン酸エステル化合物が、γ−ブチロラクトン及び/又はγ−バレロラクトンである
ことを特徴とする、請求項2記載の一次電池用非水電解液。 - 該鎖状エーテル化合物が、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2又は請求項3記載の一次電池用非水電解液。
- 該溶質が、LiBF4、LiClO4、及びLiCF3SO3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の一次電池用非水電解液。 - 正極、金属リチウム又はリチウム合金を含んでなる負極、及び請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液を有する
ことを特徴とする、非水電解液一次電池。 - 該正極が、フッ化黒鉛、又は式{(CFX)n;0<X≦1}で表わされるフッ化炭素を含有する
ことを特徴とする、請求項6記載の非水電解液一次電池。 - 該正極が、二酸化マンガンを含有する
ことを特徴とする、請求項6記載の非水電解液一次電池。
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