実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構造を示す断面図である。SOI基板4は、シリコン基板1、BOX層2、及び単結晶のシリコン層3がこの順に積層された構造を有している。但し、単結晶のシリコン層3ではなく、多結晶又は非結晶のシリコン層が形成されていてもよい。シリコン層3内には、シリコン酸化膜から成る完全分離型の素子分離絶縁膜5が部分的に形成されている。素子分離絶縁膜5は、シリコン層3の上面からBOX層2の上面にまで到達して形成されている。
素子分離絶縁膜5によって規定される素子形成領域内には、MOSFETが形成されている。具体的には以下の通りである。シリコン層3の上面上には、シリコン酸化膜6が部分的に形成されている。シリコン酸化膜6上には、ポリシリコンから成るゲート電極7が部分的に形成されている。ゲート電極7の下方に存在する部分のシリコン酸化膜6は、ゲート絶縁膜として機能する。ゲート電極7の側面には、シリコン酸化膜8を挟んで、シリコン窒化膜9が形成されている。シリコン酸化膜8及びシリコン窒化膜9は、シリコン酸化膜6上に形成されている。ゲート長方向(紙面の左右方向)に関するシリコン酸化膜8の幅W1は、シリコン酸化膜6の膜厚T1よりも大きい。
シリコン酸化膜8に関し、本明細書においては、ゲート電極7の側面に接触する側の側面を「内側面」、ゲート電極7の側面に接触しない側の側面を「外側面」と定義する。また、シリコン窒化膜9に関し、本明細書においては、シリコン酸化膜8の外側面に接触する側の側面を「内側面」、シリコン酸化膜8の外側面に接触しない側の側面を「外側面」と定義する。
シリコン層3内には、対を成すソース・ドレイン領域10が形成されている。対を成すソース・ドレイン領域10同士に挟まれる領域は、ボディ領域12として規定される。ソース・ドレイン領域10は、シリコン酸化膜8の外側面の下方からボディ領域12に向かって延びて形成されたエクステンション(不純物濃度が比較的低い場合は「LDD」とも呼ばれる)11を、シリコン層3の上面内に有している。
図2は、本実施の形態1に係るNMOSFET及びPMOSFETが、同一のSOI基板4上に形成された態様を示す断面図である。図2において、左端の素子分離絶縁膜5と中央の素子分離絶縁膜5とによって規定される素子形成領域にはNMOSFETが形成されており、右端の素子分離絶縁膜5と中央の素子分離絶縁膜5とによって規定される素子形成領域にはPMOSFETが形成されている。NMOSFET及びPMOSFETはそれぞれ、図1に示した構造と同一の構造を有している。
図3〜12は、図2に示した半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。図3を参照して、まず、SOI基板4を準備した後、シリコン層3内に素子分離絶縁膜5を形成する。次に、CVD法又は熱酸化法によって、シリコン酸化膜13を、シリコン層3の上面上及び素子分離絶縁膜5の上面上に全面的に形成する。但し、シリコン酸化膜13の代わりに、シリコン酸窒化膜、Al2O3等の金属酸化膜、Ta2O5やBST等の強誘電体膜を形成してもよい。次に、LPCVD法によって、膜厚が100〜400nm程度のポリシリコン膜14を、シリコン酸化膜13の上面上に全面的に形成する。但し、ポリシリコン膜14内には、PやB等の不純物が導入されていてもよい。また、ポリシリコン膜14の代わりに、W,Ta,Al等の金属膜を形成してもよい。次に、写真製版法によって、フォトレジスト15a,15bを、ポリシリコン膜14の上面上に部分的に形成する。フォトレジスト15a,15bは、ゲート電極7a,7bの形成予定領域の上方に形成されている。
図4を参照して、次に、フォトレジスト15a,15bをエッチングマスクに用いて、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い、RIE(Reactive Ion Etching)又はECR(Electron Cyclotron Resonance)等の異方性ドライエッチング法によって、ポリシリコン膜14をエッチングする。これにより、フォトレジスト15a,15bの下方に位置する部分のポリシリコン膜14がエッチングされずに残り、ゲート電極7a,7bが形成される。この異方性ドライエッチングによって、シリコン酸化膜13の上面も若干エッチングされる。その後、フォトレジスト15a,15bを除去する。但し、ポリシリコン膜14の上面上に絶縁膜を形成し、写真製版法及びエッチング法によってこの絶縁膜をパターニングした後、パターニングされた上記絶縁膜をハードマスクに用いてポリシリコン膜14を異方性エッチングすることによって、ゲート電極7a,7bを形成してもよい。
図5を参照して、次に、CVD法又は熱酸化法によって、シリコン酸化膜16を全面的に形成する。但し、シリコン酸化膜16の代わりに、HTO膜、LTO膜、TEOS膜、プラズマ酸化膜を形成してもよい。
図6を参照して、次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン酸化膜16をエッチングする。これにより、ゲート電極7a,7bの側面にシリコン酸化膜8a,8bが形成される。このとき、シリコン酸化膜13の上面及びゲート電極7a,7bの上面が露出する前にエッチングを停止することによって、シリコン酸化膜13の上面上及びゲート電極7a,7bの上面上に、シリコン酸化膜16を薄く残してもよい。
図7を参照して、次に、写真製版法によって、PMOSFETの形成予定領域上にフォトレジスト17を形成する。次に、フォトレジスト17を注入マスクに用いて、B,BF2,In等のp形不純物を1×1012〜1×1014cm−2の条件下でイオン注入することにより、NMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、ポケット領域(図示しない)を形成する。ポケット領域は、デバイスの微細化に起因する短チャネル効果を抑制するために形成される。次に、As,P,Sb等のn形のイオン18を1×1013〜1×1015cm−2の条件下でイオン注入することにより、NMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、エクステンション11aを形成する。このとき、フォトレジスト17、ゲート電極7a、シリコン酸化膜8a、及び素子分離絶縁膜5が、注入マスクとして作用する。その結果、エクステンション11aは、ゲート電極7a、シリコン酸化膜8a、及び素子分離絶縁膜5が形成されていない部分のシリコン層3の上面内に形成されるが、その端部(ゲート電極7a側の端部)は、シリコン酸化膜8aの外側面よりも内側に存在する。
なお、図6に示した構造を得た後、フォトレジスト17を形成する前に、所定の膜厚のシリコン酸化膜をCVD法によって全面に形成しておくことにより、シリコン層3内においてポケット領域及びエクステンション11aが形成される箇所を調整することもできる。また、ソース・ドレインの接合深さやゲート絶縁膜の膜厚等を調整することによって短チャネル効果を抑制する場合は、ポケット領域は形成する必要はない。
図8を参照して、次に、フォトレジスト17を除去した後、写真製版法によって、NMOSFETの形成予定領域上にフォトレジスト19を形成する。次に、フォトレジスト19を注入マスクに用いて、As,P,Sb等のn形不純物を1×1012〜1×1014cm−2の条件下でイオン注入することにより、PMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、ポケット領域(図示しない)を形成する。次に、B,BF2,In等のp形のイオン20を1×1012〜1×1014cm−2の条件下でイオン注入することにより、PMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、エクステンション11bを形成する。このとき、フォトレジスト19、ゲート電極7b、シリコン酸化膜8b、及び素子分離絶縁膜5が、注入マスクとして作用する。その結果、エクステンション11bは、ゲート電極7b、シリコン酸化膜8b、及び素子分離絶縁膜5が形成されていない部分のシリコン層3の上面内に形成されるが、その端部(ゲート電極7b側の端部)は、シリコン酸化膜8bの外側面よりも内側に存在する。なお、上記と同様に、シリコン層3内においてポケット領域及びエクステンション11bが形成される箇所を調整することもできる。また、上記と同様に、ポケット領域の形成は省略することもできる。
図9を参照して、次に、フォトレジスト19を除去した後、CVD法によって、シリコン窒化膜21を全面的に形成する。図10を参照して、次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン層3の上面が露出するまで、シリコン窒化膜21及びシリコン酸化膜13をこの順にエッチングする。これにより、シリコン酸化膜8a,8bの外側面に、サイドウォール絶縁膜としてのシリコン窒化膜9a,9bが形成される。シリコン窒化膜9a,9bは、シリコン酸化膜6a,6b上に形成されている。
図11を参照して、次に、写真製版法によって、PMOSFETの形成予定領域上にフォトレジスト22を形成する。次に、フォトレジスト22を注入マスクに用いて、As,P,Sb等のn形のイオン23を1×1014〜1×1016cm−2の条件下でイオン注入することにより、NMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、ソース・ドレイン領域10aを形成する。エクステンション11aは、ソース・ドレイン領域10aの一部となる。
図12を参照して、次に、フォトレジスト22を除去した後、写真製版法によって、NMOSFETの形成予定領域上にフォトレジスト24を形成する。次に、フォトレジスト24を注入マスクに用いて、B,BF2,In等のp形のイオン25を1×1014〜1×1016cm−2の条件下でイオン注入することにより、PMOSFETの形成予定領域におけるシリコン層3内に、ソース・ドレイン領域10bを形成する。エクステンション11bは、ソース・ドレイン領域10bの一部となる。
最後に、フォトレジスト24を除去した後、シリコン層3内に導入された不純物を活性化するために、800〜1150℃程度でアニールを行う。そして、ソース・ドレイン領域10a,10b及びゲート電極7a,7bの上面に金属シリサイドを形成する工程や、配線工程を経て、半導体装置が完成する。
このように、本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、図6に示した工程で、比較的幅広のシリコン酸化膜8a,8bをゲート電極7a,7bの側面に形成した後、図7,8に示した工程で、エクステンション11a,11bを形成する。従って、図1に示したように、対を成すソース・ドレイン領域10同士の間隔(具体的には、対を成すエクステンション11同士の間隔)L1を、従来の半導体装置における間隔L101(図44参照)よりも広げることができる。
その結果、寄生バイポーラトランジスタのベース幅が広がるため、寄生バイポーラトランジスタのゲインが小さくなり、MOSFETの誤動作や動作特性の変動を抑制することができる。
また、ゲート電極7とエクステンション11との平面視上の重なり程度が小さくなるため、ゲートオーバーラップ容量が抑制され、動作の高速化及び消費電力の低減を図ることもできる。しかも、本実施の形態1に係る半導体装置では、通常のバルク基板ではなくSOI基板4が用いられている。図1に示したように、SOI基板4を用いた半導体装置では、ソース・ドレイン領域10の底面がBOX層2に接しているため、ソース・ドレインにおける接合容量が小さい。そのため、SOI基板4を用いた半導体装置は、バルク基板を用いた半導体装置よりも寄生容量のトータルが小さい。従って、同等の電流駆動能力を得ようとした場合、本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法によると、バルク基板を用いて半導体装置を製造する場合と比較すると、より幅広のシリコン酸化膜8をゲート電極7の側面に接して形成することができる。その結果、デバイスの微細化によってゲート電極7のゲート長が短くなった場合であっても、アッシング処理やRCA洗浄処理によってゲート電極7が倒れることを効果的に防止することができる。
なお、従来技術に関する図44,45を参照して、シリコン酸化膜108の膜厚を単純に厚くしても間隔L101を広げることができるが、この場合は、エクステンション111を形成するためのイオン注入工程で、注入エネルギーを高くする必要がある。従って、イオンの飛程が大きくため、シリコン層103の上面内にエクステンション111を浅く形成することが困難となり、短チャネル効果が発生する。これに対して、本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、シリコン層3の上面内にエクステンション11を浅く形成することができるため、短チャネル効果を抑制することもできる。
実施の形態2.
図13は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示した完全分離型の素子分離絶縁膜5の代わりに、部分分離型の素子分離絶縁膜30が形成されている。本実施の形態2に係る半導体装置のその他の構造は、図1に示した上記実施の形態1に係る半導体装置の構造と同様である。また、本実施の形態2に係る半導体装置は、図3に示した工程で素子分離絶縁膜5の代わりに素子分離絶縁膜30を形成することにより、図3〜12に示した工程を経て形成することができる。
部分分離型の素子分離絶縁膜30を採用することにより、ボディコンタクト領域(図示しない)から、素子分離絶縁膜30の底面とBOX層2の上面との間のシリコン層3を介して、ボディ領域12の電位を固定することができる。その結果、キンク現象が発生したり、動作周波数に依存して遅延時間が変動する等の、いわゆる基板フローティング効果を抑制することが可能となる。
本実施の形態2に係る半導体装置によれば、上記実施の形態1に係る半導体装置及びその製造方法によって得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。即ち、間隔L1が広がる結果、図13の紙面の垂直方向に関するボディ抵抗も小さくなる。そのため、ボディコンタクト領域からの距離に応じてMOSFETのしきい値電圧が異なるという問題を抑制することができる。
図14は、本実施の形態2に係る半導体装置の第1の変形例を示す上面図である。図14に示す半導体装置では、部分分離型の素子分離絶縁膜30ではなく、完全分離型の素子分離絶縁膜5が採用されている。ゲート電極7には、両端部が広がったH字形ゲートが採用されている。ボディ領域12の電位を固定するために、ボディ領域12に直接接するボディコンタクト領域31が、ゲート電極7の両端部にそれぞれ形成されている。
図15は、本実施の形態2に係る半導体装置の第2の変形例を示す上面図である。図15に示す半導体装置では、部分分離型の素子分離絶縁膜30ではなく、完全分離型の素子分離絶縁膜5が採用されている。ゲート電極7には、一方の端部が広がったT字形ゲートが採用されている。ボディ領域12の電位を固定するために、ボディ領域12に直接接するボディコンタクト領域31が、ゲート電極7の上記一方の端部に形成されている。
図14,15に示した半導体装置においても、図13に示した断面構造を採用することによってボディ抵抗を低減でき、ボディコンタクト領域31からの距離に応じてMOSFETのしきい値電圧が異なるという問題を抑制することができる。
実施の形態3.
本実施の形態3では、ゲート電極7のゲート長と、ゲート長方向に関するシリコン酸化膜8の幅W1との関係について説明する。
図16は、トランジスタの等価回路を簡略化して示す回路図である。図16において、Rgはゲート抵抗、Riはチャネル抵抗、Rsはソース抵抗、gmは相互コンダクタンス、gdsはドレイン−ソース間のコンダクタンス、Cgsはゲート−ソース間の容量、Cgdはゲート−ドレイン間の容量である。一般的にトランジスタの性能を示す指標に、遮断周波数ft及び最大発振周波数fmaxがある。図16を参照して、遮断周波数ft及び最大発振周波数fmaxは、それぞれ以下の式(1),式(2)で表される。
シリコン酸化膜8の幅W1を大きくすると、実効チャネル長が長くなるため、相互コンダクタンスgmは低下する。従って、式(1)より、シリコン酸化膜8の幅W1を大きくすると、遮断周波数ftは低下する。そして、遮断周波数ftが低下すると、式(2)より、最大発振周波数fmaxも低下する。しかしながら、シリコン酸化膜8の幅W1を大きくすると、ゲート−ドレイン間のオーバーラップ容量(上記のCgdに相当する)が低下するとともに、短チャネル効果が抑制されるためにドレイン−ソース間のコンダクタンスgdsも低下する。このように、遮断周波数ftと、ゲート−ドレイン間のオーバーラップ容量Cgd及びドレイン−ソース間のコンダクタンスgdsとは、互いにトレードオフの関係にある。そのため、最大発振周波数fmaxの向上を図るにあたっては、シリコン酸化膜8の幅W1に関して最適値が存在する。
図17は、ゲート長がLg=70nmのトランジスタを対象として、シリコン酸化膜8の幅W1と、遮断周波数ft及び最大発振周波数fmaxとの関係を測定した結果を示すグラフである。アッシング処理やRCA洗浄処理によってゲート電極7が倒れることを防止するためには、シリコン酸化膜8の幅W1は広い方が望ましい。しかしながら、図17に示すように、シリコン酸化膜8の幅W1が広くなりすぎると、最大発振周波数fmaxが低下してしまう。そこで、ゲート電極7を安定して形成する観点と、最大発振周波数fmaxの低下を抑制する観点とに鑑みて、シリコン酸化膜8の幅W1を20nm程度に設定することが望ましい。この場合、ゲート長Lgとシリコン酸化膜8の幅W1との比は、1対2/7となる。
次に、ゲート電極7が微細化された場合を考える。スケーリング則に従うと、微細化が進んでゲート長Lgが短くなると、それに従ってシリコン酸化膜8の幅W1も狭くなるはずである。しかしながら、エクステンション11を形成するためのイオン注入における注入エネルギーは、現在でもsub−keVであり、これ以上注入エネルギーを下げることは困難である。また、熱処理に関しても、RTA(Rapid Thermal Annealing)技術が現在使用されており、これ以上熱処理時間を短くすることも困難である。このような理由により、ゲート電極7が微細化されたとしても、スケーリング則に従ってソース・ドレイン領域10を浅く形成することは困難であるため、ソース・ドレインのプロファイルはそれほど変化しないと考えられる。また、スケーリング則に従ってシリコン酸化膜8の幅W1を狭くすると、ゲートオーバーラップ容量が大きくなり、トランジスタの動作速度が遅くなる。以上の理由から、デバイスの微細化が進んでも、シリコン酸化膜8の幅W1の最適値は20nmのままであると考えられる。従って、MOSトランジスタが動作し得る最短のゲート長(Lg=20nm)まで微細化された場合であっても、シリコン酸化膜8の幅W1の最適値は20nm程度であり、この場合は、ゲート長Lgとシリコン酸化膜8の幅W1との比は、1対1となる。
このように本実施の形態3に係る半導体装置によれば、シリコン酸化膜8の幅W1を、ゲート電極7のゲート長Lgの寸法の2/7〜1に規定したため、ゲート電極7を安定して形成し得るとともに、最大発振周波数fmaxの低下を抑制することができる。
実施の形態4.
図18〜22は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。図18を参照して、まず、上記実施の形態1と同様にゲート電極7を形成した後、CVD法によって、シリコン酸化膜16を全面的に形成する。
図19を参照して、次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン酸化膜16をエッチングする。これにより、ゲート電極7の側面にシリコン酸化膜8が形成される。このとき、シリコン酸化膜16のエッチングによって露出した部分のシリコン層3の上面を、シリコン酸化膜8を形成するための異方性ドライエッチングにおけるオーバーエッチングによって、続けてエッチングする。これにより、エッチングによるダメージによって、シリコン層3の上面内に欠陥が発生する。
図20を参照して、次に、イオン注入法によって、シリコン層3の上面内にエクステンション11を形成する。図21を参照して、次に、CVD法によってシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をこの順に全面的に形成する。次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン層3の上面が露出するまで、これらのシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をエッチングする。これにより、シリコン酸化膜8の外側面にシリコン酸化膜40及びシリコン窒化膜9が形成される。図22を参照して、次に、イオン注入法によって、シリコン層3内にソース・ドレイン領域10を形成する。
このように、本実施の形態4に係る半導体装置の製造方法によれば、シリコン酸化膜8を形成するためのエッチングにおいて、シリコン層3の上面を併せてエッチングすることにより、シリコン層3の上面内に欠陥を形成する。その結果、この欠陥が寄生バイポーラトランジスタに対するライフタイムキラーとして作用するため、寄生バイポーラトランジスタのゲインを低下することができる。本実施の形態4に係る発明は、上記実施の形態1〜3に係るいずれの発明に対しても適用することができる。
図23は、本実施の形態4に係る半導体装置の製造方法の第1の変形例を示す断面図である。図21では、シリコン窒化膜9は、シリコン酸化膜40を介してシリコン層3の上面上に形成された。これに対して本実施の形態4の第1の変形例では、シリコン窒化膜9を、シリコン層3の上面上に直接形成する。本実施の形態4の第1の変形例に係る発明は、上記実施の形態1〜4に係るいずれの発明に対しても適用することができる。
本実施の形態4の第1の変形例によれば、シリコン窒化膜9の底面とシリコン層3の上面との界面に発生するストレスによって、シリコン層3の上面内により多くのライフタイムキラーを発生させることができる。その結果、寄生バイポーラトランジスタのゲインをさらに低下することができる。これにより、特にSOIデバイスで問題となっている基板フローティング効果を抑制することができる。基板フローティング効果が抑制されることによって、トランジェント効果、キンク効果、及びホットキャリア効果が抑制されるという利点や、電流駆動能力が向上されるという利点を得ることが可能となる。
図24は、本実施の形態4に係る半導体装置の製造方法の第2の変形例を示す断面図である。図22,23では、シリコン窒化膜9を形成するための異方性ドライエッチングは、シリコン層3の上面が露出した時点で停止された。これに対して本実施の形態4の第2の変形例では、シリコン窒化膜9を形成するための異方性ドライエッチングにおけるオーバーエッチングによって、シリコン層3の上面を併せてエッチングする。本実施の形態4の第2の変形例に係る発明は、上記実施の形態1〜4に係る発明、及び上記実施の形態4の第1の変形例に係る発明の、いずれに対しても適用することができる。
本実施の形態4の第2の変形例によれば、シリコン窒化膜9を形成する際にシリコン層3の上面を併せてエッチングすることによって、シリコン層3の上面内により多くのライフタイムキラーを発生させることができる。その結果、寄生バイポーラトランジスタのゲインをさらに低下することができる。
図25は、本実施の形態4に係る半導体装置の製造方法の第3の変形例を示す断面図である。本実施の形態4の第3の変形例では、シリコン層3内にソース・ドレイン領域10を形成した後、ソース・ドレイン領域10の上面をシリサイド化することにより、金属シリサイド層45を形成する。このとき、ゲート電極7の上面もシリサイド化され、金属シリサイド層46が形成される。本実施の形態4の第3の変形例に係る発明は、上記実施の形態1〜4に係る発明、及び上記実施の形態4の第1及び第2の変形例に係る発明の、いずれに対しても適用することができる。
本実施の形態4の第3の変形例によれば、ソース・ドレイン領域10の上面をシリサイド化することによって、シリコン層3の上面内により多くのライフタイムキラーを発生させることができる。その結果、寄生バイポーラトランジスタのゲインをさらに低下することができる。
上記実施の形態4及びその第1〜第3の変形例では、寄生バイポーラトランジスタのゲインを低下させるために、シリコン層3の上面内に多くのライフタイムキラーを発生させることを目的とした。しかし、ライフタイムキラーを増加させることは、一方で接合リークを増加させるという欠点を有している。そのため、基板フローティング効果の抑制による動作の高速化という利点、及び接合リークの増大による消費電力の増大という欠点の双方を考慮して、最適な構造を選択する必要がある。
実施の形態5.
図2に示した上記実施の形態1に係る半導体装置では、NMOSFETが有するシリコン酸化膜8aの幅と、PMOSFETが有するシリコン酸化膜8bの幅とが互いに同一であった。本実施の形態5では、目的に応じてこれらの幅が異なる半導体装置について説明する。
図26は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図2に示したシリコン酸化膜8bの代わりに、シリコン酸化膜8aの幅W1よりも狭い幅W3のシリコン酸化膜8bbが形成されている。その結果、対を成すソース・ドレイン領域10b同士の間隔L3は、対を成すソース・ドレイン領域10a同士の間隔L1よりも狭くなっている。幅狭のシリコン酸化膜8bbは、例えば、図8に示した工程でシリコン酸化膜8bをウェットエッチングすることによって得ることができる。
図27は、本実施の形態5に係る他の半導体装置の構造を示す断面図である。図2に示したシリコン酸化膜8aの代わりに、シリコン酸化膜8bの幅W1よりも狭い幅W4のシリコン酸化膜8aaが形成されている。その結果、対を成すソース・ドレイン領域10a同士の間隔L4は、対を成すソース・ドレイン領域10b同士の間隔L1よりも狭くなっている。幅狭のシリコン酸化膜8aaは、例えば、図7に示した工程でシリコン酸化膜8aをウェットエッチングすることによって得ることができる。
基板フローティング効果の問題は、PMOSFETよりもNMOSFETで起こりやすい。ドレイン近傍でのインパクトイオン化により発生した正孔によって、寄生バイポーラトランジスタが動作しやすいためである。従って、図25に示した半導体装置のように、PMOSFETが有するシリコン酸化膜8bbよりも、NMOSFETが有するシリコン酸化膜8aの幅を広げることにより、NMOSFETにおける基板フローティング効果の問題を抑制することができ、動作の高速化や電流駆動能力の向上を図ることができる。
また、短チャネル効果は、NMOSFETよりもPMOSFETで発生しやすい。従って、図27に示した半導体装置のように、NMOSFETが有するシリコン酸化膜8aaよりも、PMOSFETが有するシリコン酸化膜8bの幅を広げることにより、PMOSFETにおける短チャネル効果の発生を抑制することができる。その結果、PMOSFETのロールオフ特性が改善され、オフ電流の増加が抑制されるため、消費電力の低減を図ることができる。
実施の形態6.
図17では、オフセット用絶縁膜としてのシリコン酸化膜8の幅W1と、遮断周波数ft及び最大発振周波数fmaxとの関係を示したが、これらの遮断周波数ft及び最大発振周波数fmaxは、アナログ回路や高周波(Radio frequency)回路の性能を示す指標として用いられる。但し以下では、代表的にアナログ回路について述べる。アナログ回路の例としては、PLL(Phase-locked loop)回路やセンスアンプ等が挙げられる。これに対し、ディジタル回路の性能を示す指標としては、インバータの遅延時間tpdがよく用いられる。遅延時間tpdは、以下の式(3)で表される。
ここで、Cはトータルの容量であり、VDDは電源電圧であり、Iは電流駆動能力である。
図28は、ゲート長がLg=70nmのトランジスタを対象として、オフセット用絶縁膜の幅W1と、遅延時間tpdとの関係を測定した結果を示すグラフである。オフセット用絶縁膜の幅W1が狭いほど、遅延時間tpdが小さくなっていることが分かる。
式(3)を参照して、オフセット用絶縁膜の幅を狭くすると、ゲートオーバーラップ容量が増大してトータル容量Cも増大するため、遅延時間tpdは大きくなるはずである。しかしながら、オフセット用絶縁膜の幅を狭くすると、実効チャネル長が短くなって電流駆動能力Iが大きくなる。そして、この影響は、トータル容量Cの増大による影響よりも大きく作用する。その結果、図28に示すように、オフセット用絶縁膜の幅W1が狭くなるほど、遅延時間tpdは小さくなるのである。
以上より、ディジタル回路では、オフセット用絶縁膜の幅が狭くなるほど、遅延時間tpdが小さくなって回路の性能は向上する。即ち、アナログ回路(又は高周波回路)を構成するトランジスタと、ディジタル回路を構成するトランジスタとでは、オフセット用絶縁膜の幅の最適値が異なる。そこで、本実施の形態6では、同一基板上にアナログ回路(又は高周波回路)とディジタル回路とが混載して形成された半導体装置において、アナログ回路(又は高周波回路)を構成するトランジスタのオフセット用絶縁膜の幅と、ディジタル回路を構成するトランジスタのオフセット用絶縁膜の幅とを互いに異ならせた半導体装置について説明する。本実施の形態6に係る構造は、上記実施の形態1〜5のいずれの半導体装置についても適用可能である。
図29は、本実施の形態6に係る半導体装置の構造を示す断面図である。SOI基板4は、ディジタル回路が形成されたディジタル回路形成領域と、アナログ回路が形成されたアナログ回路形成領域とを有している。ディジタル回路形成領域とアナログ回路形成領域とは、底面の一部に完全分離部51が形成された素子分離絶縁膜50によって、互いに電気的に分離されている。
まずディジタル回路形成領域に関し、素子分離絶縁膜30,50によって規定される素子形成領域には、ディジタル回路を構成するMOSFETが形成されている。このMOSFETは、シリコン酸化膜から成るゲート酸化膜52を挟んでシリコン層3の上面上に形成された、ポリシリコンから成るゲート電極53と、ゲート電極53の下方において、シリコン層3内に形成されたボディ領域58と、シリコン層3内に形成され、ボディ領域58を挟んで対を成すソース・ドレイン領域60とを備えている。ソース・ドレイン領域60は、シリコン層3の上面内において、ゲート電極53の下方に延びて形成された、対を成すエクステンション59を有している。
また、オフセット用絶縁膜としてのシリコン酸化膜54が、ゲート電極53の側面に接して形成されている。シリコン酸化膜54の外側にはシリコン酸化膜55が形成されており、シリコン酸化膜55の外側には、シリコン酸化膜56及びシリコン窒化膜57から成るサイドウォールが形成されている。
次にアナログ回路形成領域に関し、素子分離絶縁膜30,50によって規定される素子形成領域には、アナログ回路を構成するMOSFETが形成されている。このMOSFETは、シリコン酸化膜から成るゲート酸化膜62を挟んでシリコン層3の上面上に形成された、ポリシリコンから成るゲート電極63と、ゲート電極63の下方において、シリコン層3内に形成されたボディ領域68と、シリコン層3内に形成され、ボディ領域68を挟んで対を成すソース・ドレイン領域70とを備えている。ソース・ドレイン領域70は、シリコン層3の上面内において、ゲート電極63の下方に延びて形成された、対を成すエクステンション69を有している。ゲート電極63のゲート長はゲート電極53のゲート長に等しい。
また、第1のオフセット用絶縁膜としてのシリコン酸化膜64が、ゲート電極63の側面に接して形成されている。シリコン酸化膜64の外側には、第2のオフセット用絶縁膜としてのシリコン酸化膜65が形成されている。シリコン酸化膜64の膜厚はシリコン酸化膜54の膜厚に等しく、シリコン酸化膜65の膜厚はシリコン酸化膜55の膜厚に等しい。シリコン酸化膜65の外側には、シリコン酸化膜66及びシリコン窒化膜67から成るサイドウォールが形成されている。
平面視上(即ち、ゲート電極の上方から眺めた場合)ゲート電極53とエクステンション59とが重なり合う程度(寸法K1)は、平面視上ゲート電極63とエクステンション69とが重なり合う程度(寸法K2)よりも広い。その結果、ディジタル回路形成領域に形成されているMOSFETの実効チャネル長は、アナログ回路形成領域に形成されているMOSFETの実効チャネル長よりも短くなっている。
図30〜35は、本実施の形態6に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。図30を参照して、まず、SOI基板4を準備した後、シリコン層3内に素子分離絶縁膜30,50を形成する。
図31を参照して、次に、CVD法又は熱酸化法によって、シリコン酸化膜を、シリコン層3の上面上及び素子分離絶縁膜30,50の上面上に全面的に形成する。但し、シリコン酸化膜の代わりに、シリコン酸窒化膜、Al2O3等の金属酸化膜、Ta2O5やBST等の強誘電体膜を形成してもよい。次に、LPCVD法によって、膜厚が100〜400nm程度のポリシリコン膜を、シリコン酸化膜の上面上に全面的に形成する。但し、ポリシリコン膜内には、PやB等の不純物が導入されていてもよい。また、ポリシリコン膜の代わりに、W,Ta,Al等の金属膜を形成してもよい。次に、写真製版法及び異方性ドライエッチング法によってポリシリコン膜及びシリコン酸化膜をパターニングすることにより、ゲート電極53,63及びゲート酸化膜52,62が形成される。
次に、数nm〜数十nm程度の膜厚のシリコン酸化膜を全面に形成した後、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によってこのシリコン酸化膜をエッチングする。これにより、ゲート電極53の側面に接してシリコン酸化膜54が形成されるとともに、ゲート電極63の側面に接してシリコン酸化膜64が形成される。シリコン酸化膜54は、後の工程でエクステンション59を形成するためのオフセット用絶縁膜として機能する。また、シリコン酸化膜64は、後の工程でエクステンション69を形成するための第1のオフセット用絶縁膜として機能する。
図32を参照して、次に、写真製版法によって、アナログ回路形成領域におけるシリコン層3上に、ゲート電極63及びシリコン酸化膜64を覆ってフォトレジスト71を形成する。次に、As,P,Sb等の不純物(NMOSを形成する場合)をイオン注入することにより、ディジタル回路形成領域におけるシリコン層3の上面内に、エクステンション59を形成する。
図33を参照して、次に、フォトレジスト71を除去した後、数nm〜数十nm程度の膜厚のシリコン酸化膜を全面に形成する。その後、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によってこのシリコン酸化膜をエッチングする。これにより、シリコン酸化膜54の外側にシリコン酸化膜55が形成されるとともに、シリコン酸化膜64の外側にシリコン酸化膜65が形成される。シリコン酸化膜65は、後の工程でエクステンション69を形成するための第2のオフセット用絶縁膜として機能する。
図34を参照して、次に、写真製版法によって、ディジタル回路形成領域におけるシリコン層3上に、ゲート電極53及びシリコン酸化膜54,55を覆ってフォトレジスト72を形成する。次に、As,P,Sb等の不純物(NMOSを形成する場合)をイオン注入することにより、アナログ回路形成領域におけるシリコン層3の上面内に、エクステンション69を形成する。
図35を参照して、次に、フォトレジスト72を除去した後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を、この順に全面に形成する。次に、異方性ドライエッチング法によって、シリコン層3の上面が露出するまで、これらのシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を除去する。これにより、シリコン酸化膜55の外側に、シリコン酸化膜56及びシリコン窒化膜57から成るサイドウォールが形成されるとともに、シリコン酸化膜65の外側に、シリコン酸化膜66及びシリコン窒化膜67から成るサイドウォールが形成される。これらのサイドウォールは、後の工程でソース・ドレイン領域60,70を形成するための注入マスクとして機能する。
その後、イオン注入法によって、As,P,Sb等の不純物(NMOSを形成する場合)をシリコン層3内に導入することにより、ソース・ドレイン領域60,70を形成する。以上の工程により、図29に示した構造が得られる。
このように本実施の形態6に係る半導体装置の製造方法によれば、ディジタル回路形成領域においては、シリコン酸化膜54をオフセット用絶縁膜に用いて、エクステンション59を形成するためのイオン注入が行われる。一方、アナログ回路形成領域においては、シリコン酸化膜64,65をオフセット用絶縁膜に用いて、エクステンション69を形成するためのイオン注入が行われる。その結果、本実施の形態6に係る半導体装置によれば、平面視上ゲート電極53とエクステンション59とが重なり合う程度(寸法K1)は、平面視上ゲート電極63とエクステンション69とが重なり合う程度(寸法K2)よりも広い。従って、アナログ回路(又は高周波回路)を構成するトランジスタに関して、オフセット用絶縁膜の幅の最適値を確保しつつ、ディジタル回路を構成するトランジスタに関して、実効チャネル長を短くすることができ、遅延時間tpdの短縮化による性能の向上を図ることができる。
なお、ディジタル回路を構成するトランジスタに関して、実効チャネル長が短くなると短チャネル効果が発生しやすくなるが、ディジタル回路では、アナログ回路ほど短チャネル効果による影響は問題とはならない。
また、以上の説明では、NMOSトランジスタを形成する場合を例にとって本実施の形態6に係る発明について説明したが、本実施の形態6に係る発明は、PMOSトランジスタやCMOSトランジスタを形成する場合にも適用可能である。後述の実施の形態7についても同様である。
実施の形態7.
上記の式(2)より、ゲート抵抗Rgを下げることによって最大発振周波数fmaxを増大できることが分かる。本実施の形態7では、ゲート抵抗を低減できるゲート構造について説明する。本実施の形態7に係るゲート構造は、上記実施の形態1〜6のいずれの半導体装置についても適用可能である。
図36は、本発明の実施の形態7に係る半導体装置の構造を模式的に示す上面図である。ゲート電極75を挟んで、一対のソース・ドレイン領域76が形成されている。また、ソース・ドレイン領域76に接触する複数のコンタクトプラグ77が形成されている。
図37は、図36に示した線分A1−A1に沿った位置に関する断面構造を示す断面図であり、図38は、図36に示した線分A2−A2に沿った位置に関する断面構造を示す断面図である。図37を参照して、シリコン層3の上面上には、シリコン酸化膜から成るゲート酸化膜78を介して、ポリシリコン膜79が形成されている。また、ポリシリコン膜79上には金属シリサイド層80が形成されており、ポリシリコン膜79と金属シリサイド層80とによってゲート電極75が構成されている。ゲート電極75の側面には、シリコン酸化膜81及びシリコン窒化膜82から成るサイドウォール83が形成されている。ゲート電極75とは反対側のサイドウォール83の側面には、シリコン酸化膜84及びシリコン窒化膜85から成るサイドウォール86が形成されている。
ゲート電極75の下方におけるシリコン層3内には、ボディ領域88が形成されている。また、シリコン層3内には、ボディ領域88を挟んで対を成すソース・ドレイン領域76が形成されている。ソース・ドレイン領域76は、シリコン層3の上面内において、ゲート電極75の下方に延びて形成された、対を成すエクステンション87を有している。サイドウォール83,86が形成されていない部分のソース・ドレイン領域76の上面上には、金属シリサイド層89が形成されている。
また、シリコン酸化膜から成る層間絶縁膜90が、MOSFETを覆ってシリコン層3上に形成されている。層間絶縁膜90内には、層間絶縁膜90の上面から金属シリサイド層89の上面に到達し、金属から成るコンタクトプラグ77が形成されている。層間絶縁膜90の上面上には、アルミニウムや銅等の金属から成る金属配線91が、コンタクトプラグ77に接触して形成されている。また、層間絶縁膜90内には、層間絶縁膜90の上面から金属シリサイド層80及びサイドウォール83の上面に到達し、金属から成るゲート配線92が形成されている。ゲート長方向に関するゲート配線92の寸法は、ゲート電極75のゲート長よりも大きい。
図38を参照して、ゲート配線92は、ゲート電極75の上面に接触しつつ、ゲート電極75が延在する方向に延在して形成されている。
図39〜43は、本実施の形態7に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。図39を参照して、まず、SOI基板4を準備した後、シリコン層3内に素子分離絶縁膜30を形成する。次に、上記各実施の形態で述べた方法によって、ゲート酸化膜78及びポリシリコン膜79を、シリコン層3の上面上に形成する。次に、イオン注入法によって、As,P,Sb等の不純物(NMOSを形成する場合)をシリコン層3の上面内に導入することにより、エクステンション87を形成する。このとき、上記実施の形態1〜6に係る発明の概念を適用して、イオン注入を行うよりも前に、オフセット用の絶縁膜をポリシリコン膜79の側面に形成しておくことにより、実効チャネル長を広げてもよい。
図40を参照して、次に、CVD法によって、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をこの順に全面に形成する。次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン層3の上面が露出するまでこれらの膜をエッチングする。これにより、ポリシリコン膜79の側面にシリコン酸化膜81及びシリコン窒化膜82が残り、サイドウォール83が形成される。次に、イオン注入法によって、As,P,Sb等の不純物(NMOSを形成する場合)をシリコン層3内に導入することにより、ソース・ドレイン領域76を形成する。サイドウォール83は、ソース・ドレイン領域76を形成するためのイオン注入工程において、注入マスクとして機能する。
図41を参照して、次に、CVD法によって、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をこの順に全面に形成する。次に、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、シリコン層3の上面が露出するまでこれらの膜をエッチングする。これにより、サイドウォール83の側面にシリコン酸化膜84及びシリコン窒化膜85が残り、サイドウォール86が形成される。このとき、シリコン窒化膜の膜厚やエッチング条件等を調整することによって、ゲート長方向に関するサイドウォール86の寸法を、ゲート長方向に関するサイドウォール83の寸法と異ならせることもできる。
図42を参照して、次に、コバルト等の金属膜を全面に形成した後に熱処理を行う。これにより、互いに接触している部分のシリコンと金属とが反応し、金属シリサイド層80,89が形成される。金属シリサイド層80はポリシリコン膜79上に形成され、これによってゲート電極75が形成される。また、金属シリサイド層89はソース・ドレイン領域76上に形成される。その後、未反応の金属膜を除去する。
図43を参照して、次に、CVD法によって全面にシリコン酸化膜を堆積することにより、層間絶縁膜90を形成する。次に、写真製版法によって、層間絶縁膜90の上面上に、所定の開口パターンを有するフォトレジスト(図示しない)を形成する。次に、そのフォトレジストをエッチングマスクに用いて、SOI基板4の深さ方向にエッチングレートの高い異方性ドライエッチング法によって、層間絶縁膜90を除去する。このとき、シリコン酸化膜はエッチングされやすく、シリコン窒化膜はエッチングされにくい条件でエッチングを行うことにより、サイドウォール83の上面がエッチングされることを防止することができる。これにより、金属シリサイド層76上にコンタクトホール93が形成されるとともに、ゲート電極75上に配線溝94が形成される。
このとき、ゲート長方向に関するコンタクトホール93の寸法M1が、ゲート長方向に関する配線溝94の寸法M2よりも大きくなるように、フォトレジストの開口パターンを成形することが望ましい。その理由は以下の通りである。即ち、配線溝92はゲート電極75に沿って延在しているため、各コンタクトホール93の開口面積は配線溝92の開口面積よりも小さい。そのため、配線溝92のエッチングに比べてコンタクトホール93のエッチングは進行しにくい。従って、寸法M2よりも寸法M1を大きくすることによって、エッチング速度の差を低減できるからである。
次に、コンタクトホール93内及び配線溝94内を充填し得る膜厚で全面に金属膜(Al,W,Cu等)を形成し、層間絶縁膜90の上面が露出するまで金属膜をエッチバックする。ここで、金属膜の密着性を向上するために、金属膜を成膜する前にバリアメタル層を形成しても良い。バリアメタル層の材質はチタン(Ti)、チタンナイトライド(TiN)、TiとTiNとの複合膜等である。その後、金属配線91を形成することにより、図37に示した構造が得られる。
このように本実施の形態7に係る半導体装置によれば、ゲート電極75の上面に接触しつつゲート電極75が延在する方向に延在し、しかも、ゲート長方向に関する寸法がゲート電極79のゲート長よりも大きいゲート配線92が、層間絶縁膜90内に形成されている。従って、上記の式(2)におけるゲート抵抗Rgが低減され、最大発振周波数fmaxを増大することができる。
また、本実施の形態7に係る半導体装置の製造方法によれば、サイドウォール83の外側にサイドウォール86が形成されている。従って、フォトマスクのアライメントずれ等によって配線溝94の形成箇所がずれた場合であっても、ゲート配線92と金属シリサイド層89とが互いに接触することを回避することができる。即ち、サイドウォール86を形成することにより、アライメントずれのマージンを向上することができる。ゲート長方向に関するサイドウォール86の寸法が大きければ大きいほど、この効果も大きくなる。
但し、ゲート長方向に関するサイドウォール86の寸法が大きくなり過ぎると、ゲート長方向に関する金属シリサイド層76の寸法が小さくなり、ソース・ドレインの直列抵抗が増大してしまう。従って、アライメントずれのマージンを向上できるというメリットと、ソース・ドレインの直列抵抗が増大するというデメリットとを比較考量して、ゲート長方向に関するサイドウォール86の寸法を最適化する必要がある。
なお、サイドウォール83とサイドウォール86とを個別に形成するのではなく、単にサイドウォール83の幅を広げることによっても、アライメントずれのマージンを向上できるという効果は得られる。しかしながらこの場合は、対を成すソース・ドレイン領域76同士の間隔が広がって、エクステンション87の長さが長くなるため、その部分での直列抵抗が増大して電流駆動能力が低下する。これに対して本実施の形態7に係る半導体装置の製造方法のように、サイドウォール83を形成した後にソース・ドレイン領域76を形成し、その後にサイドウォール86を形成すると、エクステンション87の長さを短くでき、電流駆動能力の低下を防止することができる。