JP5519172B2 - 上下送りミシン - Google Patents

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Description

本発明は、上下送りミシンに関する。
二枚の布を重ね合わせ、これらの布を上方と下方から挟み込んで送ることで、二枚の布を縫い合わせることができる上下送りミシンが知られている。
上下送りミシンは、針板の下方から出没しながら布送りの前後方向に往復移動を行う送り歯と、送り歯と同期して針板上方から上下動しつつ前後方向に移動する送り足と、を備えている。
さらに、上下送りミシンは、縫い代を一定に保つため、針板上面において布送り方向に交差する方向にそれぞれの布を移動させる上マニピュレータと、下マニピュレータと、を備えている。
上マニピュレータ及び下マニピュレータは、それぞれ先端に布を布送り方向に交差する方向に移動させるローラを備えており、縫製中は布端をセンサで検出しながらパルスモータによりローラを回転させて縫い代を一定に保っている。
ここで、各ローラは布に対する押圧力をエアシリンダで調整可能であり、二つのローラの押圧力を変えることで、いせ込み縫いを行うことができる(例えば、特許文献1,2参照。)。
特開昭58−192576号公報 特開昭59−14881号公報
ところで、縫製に用いる布の素材が代わる毎にローラによる布の押圧力も変化させる必要がある。しかし、布の特性が僅かに変化するだけの場合や、低い押圧力において圧力を微調整する場合に、エアシリンダの駆動でローラの押圧力を調整することは困難であった。
また、エアシリンダは、目標とする押圧力を発揮するまでのレスポンスが遅いため、細かい押圧力の変更に対応することも困難であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ローラによる布への押圧力の微調整を行うことができ、従来よりも高レスポンスで調整することができる上下送りミシンを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、
針板上に重ねて載置された二枚の被縫製物のうち、下側の被縫製物に下方から接して送り動作を行う送り歯と、
針板上に重ねて載置された二枚の被縫製物のうち、上側の被縫製物に上方から接して送り動作を行う送り足と、
前記下側の被縫製物に下方から接して前記送り歯による送り方向に交差する方向に往復移動させるとともに、押圧力を調整することで前記上側の被縫製物のいせ込みが可能な下側ローラと、
前記下側ローラを回転させる下側駆動手段と、
前記上側の被縫製物に上方から接して前記送り足による送り方向に交差する方向に往復移動させるとともに、押圧力を調整することで前記下側の被縫製物のいせ込みが可能な上側ローラと、
前記上側ローラを回転させる上側駆動手段と、
前記二枚の被縫製物の間に配置され、前記上側ローラ及び前記下側ローラとでそれぞれの被縫製物を挟み込む分離板と、
被縫製物が所定位置にあるか否かを検知する検知手段と、
前記下側ローラと下側連結機構を介して連結し、前記下側の被縫製物に押し付ける下側押圧手段と、
前記上側ローラと上側連結機構を介して連結し、前記上側の被縫製物に押し付ける上側押圧手段と、
前記検知手段による検知結果に基づいて各ローラの回転方向及び回転量を決定するように各駆動手段の駆動を制御すると共に、各ローラの被縫製物に対する押圧力を調整するために各押圧手段の駆動を制御する制御手段と、を備える上下送りミシンにおいて、
各押圧手段は、通電した電流量に応じて各ローラを介して被縫製物に対する押圧力が調整自在とされ、
前記制御手段は、各押圧手段に通電する電流量を個別に制御することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の上下送りミシンにおいて、
前記下側押圧手段は通電した電流量に応じてプランジャの移動量が変化する下側ソレノイド、前記上側押圧手段は通電した電流量に応じてプランジャの移動量が変化する上側ソレノイドであり、
前記下側連結機構は、前記下側ローラを回転自在に支持すると共に前記下側ソレノイドに連結され、前記下側ソレノイドのプランジャの移動量に応じて前記下側ローラを被縫製物に対する押圧方向に沿って移動させ、
前記上側連結機構は、前記上側ローラを回転自在に支持すると共に前記上側ソレノイドに連結され、前記上側ソレノイドのプランジャの移動量に応じて前記上側ローラを被縫製物に対する押圧方向に沿って移動させることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、各押圧手段に通電する電流量を調整することにより、各ローラによる被縫製物の押圧力を調整することができる。ここで、各押圧手段は、通電された電流量に応じて駆動することから、電流値の微調整により各押圧手段による被縫製物への押圧力の微調整を行うことが可能となる。また、押圧手段の駆動源は電流であるため、従来の機械的な構造の押圧手段に比べて高レスポンスで押圧力を調整することができる。
また、制御手段は、各押圧手段に通電する電流量を個別に制御するので、それぞれの押圧手段に通電する電流量を変えることにより、いせ込み縫いを行うことができるようになる。この際にも電流量を微調整することで、可能ないせ込み量の範囲を広く取ることができ、いせ込み縫いに幅広く対応することができる。
請求項2に記載の発明によれば、制御手段が上側ソレノイド(下側ソレノイド)に通電する電流量に応じて上側ソレノイド(下側ソレノイド)のプランジャはその電流量に応じた量だけ移動する。プランジャが移動すると、上側連結機構(下側連結機構)はその移動を上側ローラ(下側ローラ)に伝達し、上側ローラ(下側ローラ)は被縫製物に対する押圧方向に沿ってプランジャの移動量に応じた分だけ移動する。ここで、上側ローラ(下側ローラ)の移動量は被縫製物に対する押圧力を決定づけるものであるため、上側ローラ(下側ローラ)の移動量に応じて被縫製物への押圧力も変化する。
これにより、ソレノイドとローラを連結機構で連結するという簡単な機構で容易に押圧力を調整することができる。
上下送りミシンの斜視図。 針落ち近傍を示す模式図。 各ローラの駆動に関する機構を示した斜視図。 下側ローラの駆動に関する機構を示した下方からの斜視図。 下側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図。 ソレノイドの断面図。 ソレノイドのストローク対推力を示したグラフ。 ソレノイドの電流値対推力を示したグラフ。 上側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図。 上側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図。 布センサの斜視図。 布センサの検知について説明する模式図。 制御装置まわりの構成を示すブロック図。 布のセット時における上下送りミシンの動作の流れを示すフローチャート。 布のセット時におけるローラ近傍の斜視図。 いせ込み縫い中におけるローラ近傍の斜視図。 上布にいせ込みを行う場合の布の形状の例を示した図。 下布にいせ込みを行う場合の布の形状の例を示した図。
本発明に係る上下送りミシンの実施形態について説明する。
<上下送りミシンの構成>
上下送りミシンは、針板上に重ねて載置された二枚の布(被縫製物)をそれぞれ同じ方向に送りながら縫い合わせるものであり、上下の布の送り量を変えることによりいせ込み縫いが可能なミシンである。
図1,2に示すように、上下送りミシン100は、送り歯1と、送り足2と、下側ローラ3と、下側パルスモータ4と、下側連結機構5と、下側ソレノイド6と、上側ローラ7と、上側パルスモータ8と、上側連結機構9と、上側ソレノイド10と、分離板11と、布センサ12と、制御装置13と、を備えている。
(送り歯)
図2に示すように、送り歯1は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、下側の布C1(以下、下布という。)に下方から接して送り動作を行う。送り歯1は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り歯前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り歯上下送り機構(図示略)と、によって駆動する。これにより、送り歯1は、針板14の下方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り歯1が上方に移動した際に針板14から突出して下布に下方から接する。
(送り足)
図2に示すように、送り足2は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、上側の布C2(以下、上布という。)に上方から接して送り動作を行う。送り足2は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り足前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り足上下送り機構(図示略)と、によって駆動する。これにより、送り足2は、針板14の上方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り足2が下方に移動した際に上布に上方から接する。
(下側ローラ)
下側ローラ3は、上昇時に針板14上に少し突出するように設けられ、下布C1に下方から接して送り歯1による布送り方向に交差(直交)する方向に布を往復移動させる。下側ローラ3は、下側連結機構5(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。下側ローラ3は、その外周面が鋸歯状に形成され、布と接した際に下側ローラ3が布を確実に捉えて移動させることができるように形成されている。
図3〜図5に示すように、下側ローラ3は、ベルト15により下側パルスモータ4の出力軸に連結されている。
(下側パルスモータ)
図3〜図5に示すように、下側パルスモータ4は、土台16に固定されている。土台16には直線状に延びるスイングアーム17が設けられている。スイングアーム17の一端は下側パルスモータ4とともに土台16に固定され、他端は自由端となっている。スイングアーム17の他端には、下側ローラ3が回転自在に支持されている。スイングアーム17は、棒状に形成され、スイングアーム17を覆うようにベルト15が下側ローラ3と下側パルスモータ4の出力軸とに架け渡されている。これにより、下側パルスモータ4の出力軸が回転すると、その回転はベルト15を介して下側ローラ3に伝達され、下側ローラ3を回転させる。すなわち、下側パルスモータ4は、「下側駆動手段」として機能する。
(下側連結機構)
図3〜図5に示すように、下側連結機構5は、上述した土台16及びスイングアーム17と、回転軸21と、駆動レバー22と、伝達リンク23と、を備えている。
下側パルスモータ4が固定される土台16は、五角形状に形成され、その一角に回転軸21が設けられている。
回転軸21は、その一端部で土台16に固定されており、回転軸21の軸回りの回転と共に土台16も回転する。回転軸21の他端部には駆動レバー22が設けられている。
駆動レバー22は、一方向に延びる棒状の板材であり、その一端部において回転軸21が抱き締め固定されている。駆動レバー22の他端部には、伝達リンク23の一端部がネジ等により連結、固定されている。
伝達リンク23は、一方向に延びる板材であり、伝達リンク23の他端部には、下側ソレノイド6のプランジャ62が下方から当接可能となっている。
すなわち、下側ソレノイド6は、プランジャ62が上下方向に移動可能に配置されており、プランジャ62が伸びると伝達リンク23を押し上げ、縮むと伝達リンク23は支えるものがなくなって下方に移動する。ここで、下側ソレノイド6のハウジング60には、支持台61が設けられており、プランジャ62が駆動していないときには、伝達リンク23を下方から支えている。
(下側ソレノイド)
図3〜図5に示すように、下側ソレノイド6は、ミシンの上下方向(針の上下方向)に沿ってプランジャ62が移動するように配置されている。下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じてプランジャ62の移動量が変化する。これにより、下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じて下側ローラ3を介して布に対する押圧力が調整自在となっている。
図6に示すように、下側ソレノイド6は、ハウジング60、プランジャ62、コイル用フレーム63、コイル64、磁性材料65等から構成される。ハウジング60は、軸受け60A,60Bを支持する非磁性体60Cを有する。プランジャ62は、軸方向に移動可能で且つ回転不能に軸受け60A,60Bに支持されている。プランジャ62に固着された磁性部材65は、円筒形状でその一部に軸心からの径をかえる段部65aが形成されている。そして、この形状により、推力がストロークによらない特定ストローク区間(後に詳述)が得られる。
下側ソレノイド6は、通電電流が一定のとき、ストローク−推力で図7のヒステリシスカーブに示す特性が得られる。すなわち、推力がプランジャ62のストロークによらない特定ストローク区間Wが得られる。
また、ストローク一定のときには、通電電流−推力で図8のヒステリシスカーブに示す特性が得られる。すなわち、ストローク一定で、下側ソレノイド6に出力される通電電流が大きくなるに従って通電電流に対する推力の変化量が大きくなる特性が得られる。
下側ソレノイド6は、コイル64に通電することでプランジャ62を引き込む方向に駆動する方向に取り付けられている。そして、通電電流の増大に従ってプランジャ62を引き込む推力を増大させる。
下側ソレノイド6は、加える電流の2乗に比例した推力が発生する。すなわち、電流変化に対する推力の変化量は、発生推力が強くなるにしたがって大きくなる。このため、小さな推力では細かい変化量が得られて微少の押圧力変化が可能となり、大きな推力では、大きな変化量が得られて比較的大きな幅で押圧力を変化できるので、下側ローラ3による押圧力調整が容易となる。
すなわち、下側ソレノイド6は、「下側押圧手段」として機能する。
(上側ローラ)
図3,9,10に示すように、上側ローラ7は、針板14の上方に設けられ、上布に上方から接して送り歯1による布送り方向に交差(直交)する方向に布を往復移動させる。上側ローラ7は、上側連結機構9(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。上側ローラ7は、その外周面が鋸歯状に形成され、布と接した際に上側ローラ7が布を確実に捉えて移動させることができるように形成されている。
上側ローラ7は、ベルト18により上側パルスモータ8の出力軸に連結されている。
(上側パルスモータ)
上側パルスモータ8は、土台31に固定されている。上側パルスモータ8には直線状に延びるスイングアーム32が設けられている。スイングアーム32の一端は上側パルスモータ8に固定され、他端は自由端となっている。スイングアーム32の他端には、上側ローラ7が回転自在に支持されている。スイングアーム32は、板状に形成され、スイングアーム32を覆うようにベルト18が上側ローラ7と上側パルスモータ8の出力軸とに架け渡されている。これにより、上側パルスモータ8の出力軸が回転すると、その回転はベルト18を介して上側ローラ7に伝達され、上側ローラ7を回転させる。すなわち、上側パルスモータ8は、「上側駆動手段」として機能する。
(上側連結機構)
上側連結機構9は、上述した土台31及びスイングアーム32と、回転軸33と、駆動レバー34と、伝達リンク35と、回転リンク36と、を備えている。
上側パルスモータ8が固定される土台31は、五角形状に形成され、その一角に回転軸33が設けられている。
回転軸33は、その一端部で土台31に固定されており、回転軸33の軸回りの回転と共に土台31も回転する。回転軸33の他端部には駆動レバー34が設けられている。
駆動レバー34は、一方向に延びる板材であり、その一端部において回転軸33が抱き締め固定されている。駆動レバー34の他端部には、伝達リンク35の一端部が回転自在に連結されている。
伝達リンク35は、一方向に延びる棒状の板材であり、その長手方向に沿って複数の連結孔35aが形成されている。伝達リンク35の他端部には、回転リンク36の一端部が回転自在に連結されている。
回転リンク36は、その中央部近傍で上側ソレノイド10のハウジング70に取り付けられた板材71に回転自在に設けられている。回転リンク36の他端部は、上側ソレノイド10の出力軸となるプランジャ72に回転自在に連結されている。
(上側ソレノイド)
上側ソレノイド10は、伝達リンク35の移動方向(長手方向)に沿ってプランジャ72が移動するように配置されている。
上側ソレノイド10は、ハウジング70、プランジャ72等を備えている。なお、上側ソレノイド10の内部構成は、下側ソレノイド6と同じであるため、説明を省略する。
すなわち、上側ソレノイド10は、「上側押圧手段」として機能する。
(分離板)
図9に示すように、分離板11は、針板14上にネジ等により取り付けられている。分離板11は、針板14に取り付けた際に、その先端が針板14から浮き上がるように屈曲形成されている。すなわち、分離板11により、針板14上の空間を上下に仕切ることができ、分離板11の上側と下側にそれぞれ布が送られる。
これにより、分離板11は、二枚の布の間に配置され、下側ローラ3と分離板11の下面とで下布を挟み込み、上側ローラ7と分離板11の上面とで上布を挟み込む。
(布センサ)
図11,12に示すように、布センサ12は、縫製時に縫い代を一定に保つために布端が所定の位置にあるか否かを検知するものである。図2に示すように、布センサ12は、上側ローラ7に並んで設けられている。図11,12に示すように、布センサ12は、センサ台41と、二つの布有無センサ42(一方は不図示)と、二つの布端センサ43(一方は不図示)と、反射板46と、を備えている。
センサ台41には、布が進入可能となるように針板14上に載置された布に対向する位置に凹部41aが形成されている。凹部41aは、各ローラ3,7が布を移動させる方向に沿って掘り下げるように形成されている。
凹部41aの上壁面及び下壁面は、布の進行方向から見た際にV字状に形成されている。
凹部41aの上壁面及び下壁面には、手前側(布の進入側)に発光センサ42aと受光センサ42bからなる布有無センサ42が設けられている。上壁面の布有無センサ42は、上布C2があるか否かを検知するセンサであり、下壁面の布有無センサ42は、下布C1があるか否かを検知するセンサである。
凹部41aの上壁面及び下壁面には、奥側に発光センサ43aと受光センサ43bからなる布端センサ43が設けられている。上壁面の布端センサ43は、上布C2の布端が所定位置にあるか否かを検出するセンサであり、下壁面の布端センサ43は、下布C1の布端が所定位置にあるか否かを検出するセンサである。
凹部41aの上下方向中央部には、布の進入方向に沿って延びる反射板46が設けられている。反射板46は、各発光センサ42a,43aから発光された光を反射するものであり、反射板46により反射された光は各受光センサ42b,43bにて受光される。
ここで、上布C2は反射板46と上壁面の布有無センサ42及び布端センサ43との間に進入することができ、下布C1は反射板46と下壁面の布有無センサ42及び布端センサ43との間に進入することができる。布が進入していれば、各発光センサ42a,43aからの光を布が遮って反射板46により反射されなくなるので、各受光センサ42b,43bは光を検知することができない。この原理を利用して布の有無、布端を検知している。
すなわち、布センサ12は、「検知手段」として機能する。
(制御装置)
図13に示すように、制御装置13は、各種の演算処理を行うCPU51と、送り歯1及び送り足2の駆動制御、各パルスモータ4,8の駆動制御、各ソレノイド6,10の駆動制御に関するプログラムが格納されたROM52と、CPU51の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM53とを備えている。
制御装置13は、布有無センサ42,44が布を検知している場合に、布端センサ43,45で布端を検知し、その検知結果に基づいて、各ローラ3,7の回転方向及び回転量を決定し、各パルスモータ4,8を駆動させる。また、制御装置13は、いせ込み縫いを行う際に、いせ込み量に応じてローラ3,7による布の押圧力を調整するため、各ソレノイド6,10を駆動させる。
すなわち、制御装置13は、「制御手段」として機能する。
制御装置13には、各パルスモータ4,8と、各ソレノイド6,10と、各布有無センサ42,44と、各布端センサ43,45とが接続されている。
<上下送りミシンの動作>
次に、上下送りミシンの動作について説明する。
図14に示すように、いせ込み縫いを行う際には、制御装置13は、布有無センサ42が下布を検知したか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1において、制御装置13は、布有無センサ42が下布を検知したと判断すると(ステップS1:YES)、制御装置13は、下側ソレノイド6を駆動させて、下側ローラ3を上昇させる(ステップS2)。また、制御装置13は、下側パルスモータ4を駆動させる(ステップS3)。これにより、下側ローラ3は回転しながら下布に当接する。下側ローラ3が下布に当接すると、図15に示すように、下側ローラ3の回転によって下布はセンサ台41の凹部41aに引き込まれる。
次いで、制御装置13は、布端センサ43が下布を検知したか否かを判断する(ステップS4)。
ステップS4において、制御装置13は、布端センサ43が下布を検知したと判断すると(ステップS4:YES)、制御装置13は、下側パルスモータ4の駆動を停止させる(ステップS5)。
次いで、制御装置13は、布有無センサ42が上布を検知したか否かを判断する(ステップS6)。
ステップS6において、制御装置13は、布有無センサ42が上布を検知したと判断すると(ステップS6:YES)、制御装置13は、上側ソレノイド10を駆動させて、上側ローラ7を下降させる(ステップS7)。また、制御装置13は、上側パルスモータ8を駆動させる(ステップS8)。これにより、上側ローラ7は回転しながら上布に当接する。上側ローラ7が上布に当接すると、上側ローラ7の回転によって上布はセンサ台41の凹部41aに引き込まれる。
次いで、制御装置13は、布端センサ43が布を検知したか否かを判断する(ステップS9)。
ステップS9において、制御装置13は、布端センサ43が上布を検知したと判断すると(ステップS9:YES)、制御装置13は、上側パルスモータ8の駆動を停止させる(ステップS10)。以上をもって、縫製前の布のセット動作が終了する。
いせ込み縫いは、予めメモリ等に記憶されている縫製データに従って縫製を行う。いせ込み縫い中も布端センサ43,45は、布端の検知を行い、布端センサ43,45が布端を検知しなくなると、制御装置13は各パルスモータ4,8を駆動させて各ローラ3,7を回転して布端センサ43,45に検知されるように布を移動させる。逆に、既に布端センサ43,45が布端を検知しているときは、制御装置13は各パルスモータ4,8の駆動を停止させる。すなわち、図16に示すように、制御装置13は、各ローラ3,7を二方向に頻繁に回転させることにより、布端を所定位置に維持して縫い代を一定にする。
ここで、図17に示すような二枚の布D,Eを縫い合わせる場合には、上布Dの方が下布Eよりも布の縁が長いため、上布Dの湾曲部D1において、下側ローラ3による下布Eの押圧力を高めていせ込み縫いを行う。いせ込み量は下側ローラ3の押圧力に依存し、この押圧力は下側ソレノイド6のプランジャ62の移動量に依存し、プランジャ62の移動量は下側ソレノイド6に通電する電流量に依存する。制御装置13は、最適ないせ込み量を実現するため、下側ソレノイド6に通電する電流量を調整する。
下側ソレノイド6のプランジャ62が軸方向に移動すると、プランジャ62の移動量に応じて駆動レバー22及び伝達リンク23は、回転軸21との連結部を中心として回転する。駆動レバー22及び伝達リンク23が回転軸21まわりに回転することにより、土台16が回転軸21を中心として回転し、土台16に設けられている下側パルスモータ4、スイングアーム17も回転軸21を中心として回転する。
このように、下側連結機構5は、スイングアーム17で下側ローラ3を回転自在に支持すると共に下側ソレノイド6に連結され、下側ソレノイド6のプランジャ62の移動量に応じて下側ローラ3を布の押圧方向に沿って移動させることができる。よって、この移動量に応じて布に対する押圧力が変化し、いせ込み量を変えることができる。
<作用効果>
以上のように、上下送りミシン100によれば、制御装置13は、各ソレノイド6,10に通電する電流量を調整することにより、各ローラ3,7による布の押圧力を調整することができる。ここで、各ソレノイド6,10は、通電された電流量に応じて駆動することから、電流値の微調整により各ソレノイド6,10による布への押圧力の微調整を行うことが可能となる。また、ソレノイド6,10の駆動源は電流であるため、従来の機械的な構造の押圧手段(例えば、エアシリンダ)に比べて高レスポンスで押圧力を調整することができる。
また、制御装置13は、各ソレノイド6,10に通電する電流量を個別に制御するので、それぞれのソレノイド6,10に通電する電流量を変えることにより、いせ込み縫いを行うことができるようになる。この際にも電流量を微調整することで、可能ないせ込み量の範囲を広く取ることができ、いせ込み縫いに幅広く対応することができる。
また、制御装置13が各ソレノイド6,10に通電する電流量に応じてプランジャ62,72はその電流量に応じた量だけ移動する。プランジャ62,72が移動すると、上側連結機構9(下側連結機構5)はその移動を上側ローラ7(下側ローラ3)に伝達し、上側ローラ7(下側ローラ3)は布に対する押圧方向に沿ってプランジャ62,72の移動量に応じた分だけ移動する。ここで、上側ローラ7(下側ローラ3)の移動量は布に対する押圧力を決定づけるものであるため、上側ローラ7(下側ローラ3)の移動量に応じて布への押圧力も変化する。
これにより、ソレノイド6,10とローラ3,7を連結機構5,9で連結するという簡単な機構で容易に押圧力を調整することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、図18に示すような二枚の布F,Gを縫い合わせる場合には、下布Gに湾曲部G1がある場合、側ソレノイド6による押圧力を強くすることにより、下布Gにいせ込み縫いを施せばよい。
また、押圧手段としてソレノイドを使用せずに、出力される押圧力の異なる複数のエアシリンダを用い、布に応じて順次切り替えるようにしてもよい。
1 送り歯
2 送り足
3 下側ローラ
4 下側パルスモータ(下側駆動手段)
5 下側連結機構
6 下側ソレノイド(下側押圧手段)
7 上側ローラ
8 上側パルスモータ(上側駆動手段)
9 上側連結機構
10 上側ソレノイド(上側押圧手段)
11 分離板
12 布センサ(検知手段)
13 制御装置(制御手段)
14 針板
100 上下送りミシン

Claims (2)

  1. 針板上に重ねて載置された二枚の被縫製物のうち、下側の被縫製物に下方から接して送り動作を行う送り歯と、
    針板上に重ねて載置された二枚の被縫製物のうち、上側の被縫製物に上方から接して送り動作を行う送り足と、
    前記下側の被縫製物に下方から接して前記送り歯による送り方向に交差する方向に往復移動させるとともに、押圧力を調整することで前記上側の被縫製物のいせ込みが可能な下側ローラと、
    前記下側ローラを回転させる下側駆動手段と、
    前記上側の被縫製物に上方から接して前記送り足による送り方向に交差する方向に往復移動させるとともに、押圧力を調整することで前記下側の被縫製物のいせ込みが可能な上側ローラと、
    前記上側ローラを回転させる上側駆動手段と、
    前記二枚の被縫製物の間に配置され、前記上側ローラ及び前記下側ローラとでそれぞれの被縫製物を挟み込む分離板と、
    被縫製物が所定位置にあるか否かを検知する検知手段と、
    前記下側ローラと下側連結機構を介して連結し、前記下側の被縫製物に押し付ける下側押圧手段と、
    前記上側ローラと上側連結機構を介して連結し、前記上側の被縫製物に押し付ける上側押圧手段と、
    前記検知手段による検知結果に基づいて各ローラの回転方向及び回転量を決定するように各駆動手段の駆動を制御すると共に、各ローラの被縫製物に対する押圧力を調整するために各押圧手段の駆動を制御する制御手段と、を備える上下送りミシンにおいて、
    各押圧手段は、通電した電流量に応じて各ローラを介して被縫製物に対する押圧力が調整自在とされ、
    前記制御手段は、各押圧手段に通電する電流量を個別に制御することを特徴とする上下送りミシン。
  2. 前記下側押圧手段は通電した電流量に応じてプランジャの移動量が変化する下側ソレノイド、前記上側押圧手段は通電した電流量に応じてプランジャの移動量が変化する上側ソレノイドであり、
    前記下側連結機構は、前記下側ローラを回転自在に支持すると共に前記下側ソレノイドに連結され、前記下側ソレノイドのプランジャの移動量に応じて前記下側ローラを被縫製物に対する押圧方向に沿って移動させ、
    前記上側連結機構は、前記上側ローラを回転自在に支持すると共に前記上側ソレノイドに連結され、前記上側ソレノイドのプランジャの移動量に応じて前記上側ローラを被縫製物に対する押圧方向に沿って移動させることを特徴とする請求項1に記載の上下送りミシン。
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