JP5517280B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体に関する。
従来、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の汎用樹脂からなる発泡体が、軽量性、断熱性、緩衝性に優れていることから、多分野にわたって使用されてきた。しかしながら、これらの汎用樹脂からなる発泡体は、使用後自然環境下に放置された場合、土中の微生物により分解されることが殆どないので、環境汚染の問題を引き起こす虞がある。
かかる問題を解決するために、土中の微生物により分解される生分解性樹脂の開発が行なわれてきた。その一例として、微生物分解性ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。該ポリ乳酸系樹脂は、微生物分解性を有する上に人体に対する安全性にも優れているので、例えば外科用の縫合糸として実用化されており、長年にわたる実績を収めている。しかも近年、ポリ乳酸系樹脂の原料である乳酸が、とうもろこし等を原料とする発酵法により大量かつ安価に製造されるようになったことから、汎用性が高まることが予想され、ポリ乳酸系樹脂を原料とする発泡体、特に発泡シートの開発が行なわれるようになってきている。
しかしながら、従来のポリ乳酸樹脂発泡シート(特許文献1)は、非晶性ポリ乳酸を主成分としていたので、成形性には優れるが耐熱性に問題があり、室温で変形してしまうほどであった。一方、結晶性ポリ乳酸は、耐熱性には優れるものの成形性、発泡性に問題があり、良質の発泡シートを得ることが難しかった。たとえ、発泡シートを製造したとしても、結晶性ポリ乳酸樹脂発泡シート(特許文献2、3)は耐熱性には優れるものの、熱成形性が悪いものであった。また、見掛け密度が大きく、気泡形状が不均一であり、独立気泡率が低いため、そのことからも熱成形することは容易ではなかった。
特開2002−322309号公報 [特許請求の範囲] 特開2002−3709号公報 [特許請求の範囲] 特開2000−136259号公報 [特許請求の範囲]
本発明は、耐熱性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡成形体を提供することを課題とする。
本発明によれば、以下に示すポリ乳酸系樹脂発泡成形体が提供される。
〔1〕 ゲル分率が2%以下(0を含む)、190℃における溶融張力が5cN以上のポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする発泡シートを、該発泡シート成形部分の面積(A)にて、該成形部分の面積(A)に対応する部分の成形後の面積(B)を除して求められる展開倍率(B/A)が1.5以上の条件にて熱成形してなる発泡成形体であって、
該発泡成形体の加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上であり、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が20J/g以上である(ただし、WAXD反射粉末法(X線:Cu−Kα線/50kV/200mA、スキャンスピード:4°/min)により測定される結晶化度が20%以下である発泡成形体を除く。)ことを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
〔2〕 前記発泡成形体が、前記発泡シートを、展開倍率が1.8以上の条件にて熱成形してなるものである前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
〔3〕 前記発泡成形体の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が25J/g以上である前記1または2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。



本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、特定の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)を有するので、剛性、耐熱性に優れる生分解性の発泡成形体である。
発泡シートの気泡径の測定方法を説明するための発泡シート縦断面図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められるポリ乳酸のΔHendo:rowを示すDSC曲線の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められるポリ乳酸のΔHendo:rowを示すDSC曲線の他の説明図である。 基材樹脂または発泡シートのメルトテンションの測定方法を説明するためのグラフである。 熱流束示差走査熱量測定により求められる発泡シートのΔHexo:2℃/分及びΔHendo:2℃/分を示すDSC曲線の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められる発泡シートのΔHexo:Bead及びΔHendo:2℃/分を示すDSC曲線の他の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められる発泡シートのΔHexo:Bead及びΔHendo:Beadを示すDSC曲線の更に他の説明図である。 発泡シートの半結晶化時間の測定方法を説明するためのグラフである。
本発明における熱成形用ポリ乳酸系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートともいう。)は、ポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする。該ポリ乳酸系樹脂とは、乳酸成分単位を50モル%以上含むポリマーを言う。このようなものには、(1)乳酸の重合体、(2)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(4)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(5)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(6)前記(1)〜(5)の何れかの組み合わせによる混合物等が包含される。尚、上記乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物を挙げることができる。
本発明にて用いるポリ乳酸系樹脂は、上述したポリ乳酸系樹脂の中で、下記熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:rowが20J/g以上、好ましくは30J/g以上のものである。尚、 本発明にて用いるポリ乳酸系樹脂の該吸熱量(ΔHendo:row)の上限は、特に限定されるものではないが概ね60J/gである。そして、本発明にて用いる該吸熱量(ΔHendo:row)が20J/g以上のポリ乳酸系樹脂としては、結晶性ポリ乳酸系樹脂、或いは、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂との混合物から該吸熱量(ΔHendo:row)が20J/g以上のものが選択される。
本明細書において結晶性ポリ乳酸とは、前述のポリ乳酸の吸熱量(ΔHendo:row)が2J/gを超えるものとする。
尚、該結晶性ポリ乳酸の吸熱量(ΔHendo:row)は通常20〜65J/gである。また、本明細書において非晶性ポリ乳酸とは、前述のポリ乳酸の吸熱量(ΔHendo:row)が2J/g以下の吸熱ピークが現れるもの或いは吸熱ピークが現れないものとする。
上記ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は、JIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、ポリ乳酸系樹脂1〜4mgを試験片とし、試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、125℃まで2℃/分の冷却速度にて冷却し、その温度に120分間保った後、40℃まで2℃/分の冷却速度にて冷却する熱処理後、再度、2℃/分の加熱速度にて融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱溶融させる際にDSC曲線を得る。
尚、ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は、図2に示すように、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、図3に示すように、湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、湾曲した高温側のベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。
なお、上記吸熱量(ΔHendo:row)の測定において、試験片の状態調節およびDSC曲線の測定条件として、125℃での120分間の保持、2℃/分の冷却速度および2℃/分の加熱速度を採用する理由は、ポリ乳酸系樹脂試験片の結晶化を極力進ませて、完全に結晶化した状態、或いは、それに近い状態に調整されたものの吸熱量(ΔHendo:row)を該測定にて求めることを目的としている為である。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とするとは、100重量%の上記ポリ乳酸系樹脂、或いは、50重量%以上,100重量%未満の上記ポリ乳酸系樹脂と0重量%を超え,50重量%以下の上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物を基材樹脂とすることを意味する。即ち、本発明において基材樹脂中には、本発明の目的、効果を達成できる範囲において上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂を50重量%以下の割合で混合することができる。また、基材樹脂中に上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂が混合される場合には、該基材樹脂中には70重量%以上、更に90重量%以上の割合で上記ポリ乳酸系樹脂が含まれていることが好ましい。尚、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂には、上記ポリ乳酸系樹脂以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物等が包含される。
上記ポリ乳酸系樹脂の製造方法の具体例としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,310,865号に示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758,987号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、重合する開環重合法(例えば、米国特許4,057,537号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,428,126号に開示されている製造方法)、乳酸重合体と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許公報第0712880 A2号に開示されている製造方法)、乳酸を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法は、特に限定されない。また、少量のグリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良い。
本発明における発泡シートは、上記のポリ乳酸系樹脂を主成分とする基材樹脂と気泡調整剤を押出機に供給し、加熱溶融混練した後、物理発泡剤を押出機内に圧入して混練し、樹脂温度を発泡適正温度に調整してダイから押出して発泡させ、得られた発泡体表面を押出し直後に空気またはミストを吹き付けるなどして急冷することによって得ることができる。押出発泡に用いるダイとしては環状ダイやTダイが挙げられるが、前記見掛け密度を有し、均一な前記厚みの発泡シートを得るには環状ダイが好ましい。環状ダイを用いて押出発泡すると、円筒状の発泡体が得られるので、該発泡体を円筒状の冷却装置の側面に沿わせて引き取り、押出方向に切り開けば広幅の発泡シートを得ることができる。
尚、本発明における発泡シートの比較例の一つに相当する非晶性ポリ乳酸樹脂発泡シートは、基材樹脂として非晶性ポリ乳酸樹脂を使用し周知の押出発泡方法により見掛け密度が低い発泡シートを得ることができる。しかしながら、非晶性ポリ乳酸発泡シートは熱成形性に優れてはいるが、ガラス転移点を超えると急激に剛性が低下し、得られた成形品が一定の形状を保持することができないので、実用的な耐熱性がない。よって、該非晶性ポリ乳酸樹脂発泡シートは熱成形性は良好であるが耐熱性が不十分なものとなる。それに対し、本発明における発泡シートは、該発泡シートの基材樹脂の主成分を構成するポリ乳酸系樹脂として、前記の通り熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:row)が20J/g以上のものを使用して、結晶状態を調整することにより、熱成形性と成形後のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性の課題を解決することができる。
尚、非晶性ポリ乳酸を基材樹脂とする場合とは異なり、該吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上のポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする場合には、見掛け密度が63〜630kg/m、厚みが0.5〜7mmの発泡シートを得る際の発泡性溶融樹脂の粘弾性の調整が難しく、基材樹脂の190℃における溶融張力が5cN以上のものを使用することを要し、8cN以上であることが好ましく、10cN以上であることがより好ましい。溶融張力が5cN未満であると、発泡時に十分な溶融張力が得られず、機械物性に優れた見掛け密度の小さく、十分な厚みを有する良好な発泡シートが得られない虞がある。尚、該溶融張力が5cN以上の基材樹脂から得られるポリ乳酸系樹脂発泡シートは、190℃における溶融張力が5cN以上のポリ乳酸系樹脂発泡シートとなる。
上記溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のメルトテンションテスターII型によって測定することができる。具体的には、オリフィス内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを有するメルトテンションテスターを用い、上記オリフィスを予め190℃に昇温しておき、その中に基材樹脂またはポリ乳酸系樹脂発泡シート粉砕片からなる測定試料を約4g入れ、5分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として190℃の溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、5rpm/秒(紐状物の捲取り加速度:1.3×10−2m/秒)の割合で捲取り速度を徐々に増加させていきながら直径50mmの捲取りローラーで捲取る。尚、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が混入しないようにする。
上記溶融張力を求めるには、まず、張力検出用プーリーに掛けた紐状物が切れるまで捲取り速度を増加させ、紐状物が切れた時の捲取り速度:R(rpm)を求める。次いで、R×0.7(rpm)の一定の捲取り速度において紐状物の捲取りを行い、張力検出用プーリーと連結する検出器により検出される紐状物の溶融張力を経時的に測定し、縦軸に溶融張力を、横軸に時間をとったグラフに示すと、図4のような振幅をもったグラフが得られる。
本明細書における溶融張力としては、図4において振幅の安定した部分の振幅の中央値(X)を採用する。但し、捲取り速度が500rpmに達しても紐状物が切れない場合には、捲取り速度を500rpmとして紐状物を巻き取って求めたグラフより紐状物の溶融張力を求める。尚、溶融張力の経時的測定の際に、まれに特異な振幅値が検出されることがあるが、このような特異な振幅値は無視するものとする。
更に、基材樹脂のメルトフローレイト(MFR)は0.1〜10g/10分(但し、JIS K7210−1976のA法の試験条件:温度190℃、荷重21.2Nにより測定されるMFR)であることが好ましく、0.1〜5g/10分であることがより好ましく、0.3〜3g/10分であることが更に好ましい。該MFRが小さすぎる場合、粘度が高くなりすぎるため気泡が成長できず、実用的な発泡体となり得ない虞がある。MFRが大きすぎる場合、粘度が低くなりすぎるためダイスより押出した直後に垂れが生じ成形加工性が悪化する虞がある。
本発明における発泡シートを構成する基材樹脂は、前述したように、190℃における溶融張力が5cN以上であり、MFRが0.1〜10g/10分のものが好ましい。このようなポリ乳酸系樹脂を得る方法としては、例えば、溶融張力が5cN未満(0は含まず)、MFRが2〜12g/10分のポリ乳酸系樹脂に有機過酸化物を添加して反応せしめ微架橋(ゲル分率が実質的に0%)して改質ポリ乳酸系樹脂とする方法、該ポリ乳酸系樹脂とイソシアネート、エポキシ化合物、金属錯体、多価カルボン酸、或いはこれらの混合物のような高分子量化剤とを反応させる等して高分子量化させ改質ポリ乳酸系樹脂とする方法等が挙げられる。
上記のポリ乳酸系樹脂を微架橋する方法において用いる有機過酸化物は、1分間半減期温度(一定温度で有機化酸化物を分解させた際、活性酸素量が1分間で当初の半分になるときのその一定温度)が改質するポリ乳酸系樹脂の融点から10℃低い温度よりも、高いことが望ましい。1分間半減期温度がポリ乳酸系樹脂の融点よりも10℃以上低い温度であると、有機過酸化物とポリ乳酸系樹脂との加熱混練時に両者の均一な混合が行われないうちに有機過酸化物が分解、反応してしまうために、改質効果が不均一となるおそれがある。また充分な改質効果を得るためには、該樹脂の融点から10℃低い温度よりも、高い温度の1分間半減期温度を持つ有機過酸化物と較べてより多くの量を添加する必要があり、その結果、後工程の押出発泡工程において架橋反応が必要以上に進み溶融樹脂にゲル分が発生するおそれがあり満足な発泡体を得ることが困難になるおそれがある。
一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が樹脂の融点よりも著しく高温である場合には、改質反応を高温で行うために、熱分解によって樹脂の分子量が低下して発泡体の物性が低下したり、更には発泡体が得られなくなるおそれがある。従って、有機過酸化物の1分間半減期温度は、ポリ乳酸系樹脂の融点よりも20℃高い温度を超えないことが望ましい。
好ましく用いられる有機過酸化物としては、例えば、従来公知の各種のもの、例えば、イソブチルパーオキシド〔85℃〕、クミルパーオキシネオデカノエート〔94℃〕、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン〔82℃〕、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔94℃〕、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート〔88℃〕、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート〔94℃〕、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート〔92℃〕、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート〔92℃〕、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート〔92℃〕、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート〔91℃〕、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート〔101℃〕、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート〔102℃〕、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート〔103℃〕、t−ブチルパーオキシネオデカノエート〔104℃〕、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド〔119℃〕、t−ヘキシルパーオキシピバレート〔109℃〕、t−ブチルパーオキシピバレート〔110℃〕、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド〔113℃〕、オクタノイルパーオキシド〔117℃〕、ラウロイルパーオキシド〔116℃〕、ステアロイルパーオキシド〔117℃〕、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート〔124℃〕、サクシニックパーオキシド〔132℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン〔119℃〕、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔138℃〕、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔133℃〕、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔134℃〕、m−トルオイルベンゾイルパーオキシド〔131℃〕、ベンゾイルパーオキシド〔130℃〕、t−ブチルパーオキシイソブチレート〔136℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン〔142℃〕、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〔147℃〕、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン〔149℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〔149℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン〔154℃〕、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン〔154℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン〔153℃〕、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート〔155℃〕、t−ブチルパーオキシマレイン酸〔168℃〕、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート〔166℃〕、t−ブチルパーオキシラウレート〔159℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン〔156℃〕、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート〔159℃〕、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート〔161℃〕、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート〔160℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン〔158℃〕、ジクミルパーオキサイド〔175℃〕等が例示される。上記有機過酸化物の中でもジクミルパーオキサイドが特に好ましい。
尚、上記各有機過酸化物のすぐ後ろの〔〕内の温度は各有機過酸化物の1分間半減期温度である。前記有機過酸化物は、単独でまたは2種以上を併用して、基材樹脂100重量部当り、通常、0.3〜0.7重量部、好ましくは0.4〜0.6重量部添加して使用される。
尚、本明細書において有機過酸化物の1分間半減期温度は、ラジカルに対して比較的不活性な溶液(例えばベンゼンやミネラルスピリット等)を使用して、0.1mol/L濃度の有機過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行なったガラス管内に密封し、所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させて測定される。
また、上記のように改質ポリ乳酸系樹脂は、そのゲル分率が実質的に0%である。尚、該ゲル分率とは、次のようにして求めたものである。
150mlのフラスコに、ポリ乳酸系樹脂約1gを精秤した重量W1の試料と100mlのクロロホルムを入れ、約61℃の沸騰クロロホルム中にて10時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理する。得られた金網上の濾過処理物を20℃のオーブン中で30〜40トールの条件下にて24時間乾燥する。この際に得られた乾燥物重量W2を測定する。この重量W2の試料重量W1に対する重量百分率[(W2/W1)×100](%)をゲル分率とする。
そして、ゲル分率が実質的に0%とは、上記式により求められるポリマーのゲル分率が2%以下、好ましくは0.5%以下であることを意味する。
本発明における発泡シートの製造に用いられる発泡剤としては、低い見掛け密度の発泡シートを得るためには、プロパン,ノルマルブタン,イソブタン,ノルマルペンタン,イソペンタン,ヘキサン等の低級アルカン等の脂肪族炭化水素、メチルクロライド,エチルクロライド等のハロゲン化脂肪族炭化水素、二酸化炭素等の無機ガスなどの物理発泡剤が挙げられる。これらの中でも、ノルマルブタン,イソブタン、二酸化炭素が好ましい。尚、本発明における発泡シートを得るための発泡剤として、上記物理発泡剤の他、化学発泡剤、或いは物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して使用することもできるが、見掛け密度の小さな発泡シートを得るためには発泡剤として物理発泡剤、或いは物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して使用することが好ましい。
本発明における発泡シートには、例えばタルク、シリカ等の無機系の気泡調整剤や、ステアリン酸カルシウム等の有機系の気泡調整剤が添加される。また、目的に応じて着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を基材樹脂に添加することもできる。
本発明の参考発明である発泡シートの見掛け密度は63〜630kg/mであり、好ましくは84〜504kg/mである。見掛け密度が小さすぎる場合は、得られる成形品の強度が低下する虞があり、また熱成形性が悪くなり金型通りの形状の成形品を得ることができなくなる虞がある。一方、見掛け密度が大きすぎる場合は、軽量性、断熱性、緩衝性等の発泡体としての特徴が失われる虞がある。
本明細書において、発泡シートの見掛け密度は、縦10cm、横10cm、厚みが発泡シート全厚みの試料を発泡シートから切出し、該試料の重量を該試料の体積により除した値である。
参考発明の発泡シートの厚みは、0.5〜7mmであり、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは0.7〜3mmである。厚みが薄すぎる場合は、熱成形よって得られる成形品の強度が低下しすぎる虞があり、厚みが厚すぎる場合は、熱成形性が悪くなり、成形品に厚みむらが発生する虞がある。
本明細書において、発泡シートの厚みは、発泡シートの全幅に沿って10mm間隔に厚みを測定し、求められた各測定値の算術平均とする。
参考発明の発泡シートにおいては、その気泡形状が下記(1)〜(3)式を満足する。尚、この気泡形状は、後述するように、発泡シートの中央層について測定したものである。
0.05<Z<0.8 (1)
0.2<Z/X<0.8 (2)
0.2<Z/Y<0.65 (3)
但し、(1)〜(3)式中、X、Y、Zはそれぞれ、発泡シートの押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)、厚み方向における平均気泡径であり、その単位はmmである。
上記Z/X、Z/Yの少なくとも一方が0.2以下の場合、気泡形状が扁平であるため、シートの剛性が不十分となってしまう。又、発泡シートの熱成形性、特に深絞り成形性が悪くなり、得られる成形体の機械的強度が低下する虞がある。一方、Z/Xが0.8以上、及び/又はZ/Yが0.65以上の場合は、加熱成形時のドローダウンが大きくなりやすく、熱成形性が悪くなる虞がある。また、Zが0.05mm以下となる場合は、熱成形性、機械的物性が悪化する。Zが0.8mm以上である場合は、外観が不良となる虞があり、また柔軟性が不十分となる虞があり外部から力を受けた場合に座屈しやすくなる。したがって、上記範囲を満足するような気泡形状を有する発泡シートは、機械的強度、熱成形性に優れ、また、該発泡シートを熱成形して得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度においても優れたものとなる。
また、Z/Xは0.3〜0.7、Z/Yは0.25〜0.60、Zは0.1〜0.5mmであることが機械的強度、熱成形性の面から更に好ましい。
なお、上記(1)〜(3)で表される気泡形状は、発泡シートの中央層について測定されたものである。ここで中央層とは、厚み方向の中心を含み、両表面から各々発泡シート全厚み10%迄の範囲を含まない層の意味である。即ち、図1に示すように、シート全厚みの80%を占める発泡シートの厚み方向の中央部分である。
本明細書において、平均気泡径X、Y、Zは次のように測定するものとする。発泡シートの中央層の押出方向(MD方向)の平均気泡径(X:mm)、幅方向(TD方向)の平均気泡径(Y:mm)、厚み方向の平均気泡径(Z:mm)は、発泡シートの押出方向の垂直断面及び、幅方向の垂直断面を顕微鏡で拡大撮影し、得られた顕微鏡撮影写真に基づいて測定するものとし、測定によって得られた平均気泡径X、平均気泡径Y、平均気泡径ZからZ/X、Z/Yを求める。
更に詳しく説明すると、発泡シートの、MD方向に沿う方向の厚み方向断面の顕微鏡拡大写真を得て、得られた写真をもとに発泡シート両表面Sから0.1×(発泡シート全厚み:T)の位置に相当する位置に線を引き、表層と中央層の気泡に分け、写真上の中央層に存在する各気泡全てについてMD方向および厚み方向の気泡径を図1(a)に示す通りノギスにより測定して各気泡2のx、zの値をそれぞれ気泡ごとに得、こうして得られたx1 ,x2 ,x3 ・・・xn、並びにz1 ,z2 ,z3 ・・・znの値から各々その算術平均値であるX、Zを得、このX、Zの値からZ/Xの値を得る。尚、当然のことながらX、Zの値は、それぞれ上記写真の拡大率にもとづいて換算して真の平均気泡径を求める。
Yの値は、発泡シートの、TD方向に沿う方向の厚み方向断面の顕微鏡拡大写真を得て、得られた写真をもとに発泡体両表面Sから0.1×(発泡シート全厚み:T)の位置に相当する位置に線を引き、表層と中央層の気泡に分け、写真上の中央層に存在する各気泡全てについてTD方向の気泡径を図1(b)に示す通りノギスにより測定して各気泡2のyの値を気泡ごとに得、こうして得られたy1 ,y2 ,y3 ・・・yn の値からその算術平均値であるYを得、このYの値と、先に求めたZの値からZ/Yの値を得る。尚、当然のことながらYの値は、上記写真の拡大率にもとづいて換算して真の平均気泡径を求める。また、上記Z、X、Yの測定において両表層部Sより0.1×(発泡シート全厚み:T)の線上にある気泡2aは測定の対象外とする。
上記気泡径比および気泡径の調整は、以下の通り調整することができる。
気泡径X、Y、Zの調整方法としては、タルク、重炭酸ナトリウムなどの無機又は有機の気泡調整剤を基材樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部添加することや、押出発泡時のダイの圧力を調節することにより調整できる。即ち、良好な外観、目的とする見掛け密度、厚みの発泡シートが得られる範囲内において、気泡調整剤を増量することにより気泡径を小さくすることができ、ダイの圧力を高くすることにより気泡径を小さくすることができる。
また、気泡径比Z/Xについては、押出発泡後の発泡シートの引取速度を調節することにより調整でき、気泡径比Z/Yについては、押出発泡後の発泡シートの拡幅率を調節することにより調整できる。
本発明における発泡シートの独立気泡率は、50〜100%が好ましく、70〜100%がより好ましく、80〜100%が更に好ましい。独立気泡率が上記の範囲内であることにより、機械的強度、熱成形時の二次発泡性に特に優れたものとなり、また、該発泡シートを熱成形して得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度、金型再現性などの外観においても優れたものとなる。
本明細書において、発泡シートの独立気泡率(%)は、ASTM D2856−70(1976再認定)に記載されている手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型を使用して測定される試験片の真の体積:Vxから、下記(4)式より算出される値である。
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (4)
但し、上記(4)式において、Vxは上記した方法で測定される試験片の真の体積(cm)で、試験片を構成する樹脂の容積と、試験片内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
その他、上記(4)式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va:測定に使用した試験片の外形寸法から計算される試験片の見掛けの体積(cm
W :測定に使用した試験片の全重量(g)
ρ :試験片を構成する基材樹脂の密度(g/cm
尚、試験片は、空気比較式比重計に付属のサンプルカップに非圧縮状態で収納されなければならないので、縦と横がそれぞれ2.5cmになるように発泡シートから切り出し(厚みは発泡シートの厚みそのままとする)、見掛け体積が15cmに最も近づくように複数枚を重ね合せて使用する。
参考発明の発泡シートは、発泡シートの結晶状態を調整することにより、熱成形性と成形時または成形後のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性向上性の課題を解決するものである。即ち、該発泡シートの加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が20J/g未満であると共に、該吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が20J/g以上となるように、前述の通り押出発泡法により得られた発泡体表面を押出し直後に空気またはミストを吹き付けるなどして急冷することによって調整されたものである。
ここで、発熱量(ΔHexo:2℃/分)は、加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定により試験片の結晶化が促進され、それに伴って放出される熱量をいい、発熱量(ΔHexo:2℃/分)の値が大きいほど発泡シートの結晶化が進んでいないことを意味する。また、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)とは、加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定により試験片の結晶が溶融する際の融解熱量をいい、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の値が大きい発泡シートほど、結晶化が進むことにより剛性、耐熱性が優れたものとなることを意味する。該吸熱量と該発熱量との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の値は、熱流束示差走査熱量測定に使用される試験片が該測定装置にセットされる時点で有していた分の結晶が溶融するのに必要な融解熱量に相当し、該値が小さいほど発泡シートの結晶化が進んでいないことを意味する。
従って、(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が20J/g未満であることは、発泡シートは結晶化が大きく進んでいないものであって、熱成形性に優れるものであることを意味し、(ΔHendo:2℃/分)が20J/g以上であることは、発泡シートが後工程の熱処理により結晶化が進むと剛性、耐熱性が優れたものとなることを意味する。
参考発明において、(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の値は20J/g未満(0も含む)であり、好ましくは1〜20J/gであり、更に好ましくは2〜18J/gである。(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が20J/g以上の場合は、発泡シートの熱成形性、特に展開倍率(成形部分の面積を(A)、該成形部分の面積(A)に対応する部分の成形後の面積を(B)とした場合の(B)と(A)との比:(B)/(A))が1.5以上、特に1.8以上の深絞り熱成形性が悪くなる。
更に参考発明では、発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分が20J/g以上であり、好ましくは25J/g以上である。発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が小さすぎる場合、得られる発泡シートを後工程の熱処理により結晶化させても、参考発明において所望される剛性、耐熱性が得られない。尚、参考発明発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の上限は、特に限定されるものではないが概ね60J/gである。また、参考発明において発泡シートの上記ΔHexo:2℃/分の値は0を示すこともある。
上記発泡シートの発熱量(ΔHexo:2℃/分)および吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は、JIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、発泡シートから切出した1〜4mgの発泡体片を試験片とし、該試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。試験片をDSC装置の容器に入れ、熱処理を行わず、2℃/分の加熱速度にて融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱溶融させる際のDSC曲線を得る。尚、発泡シートの発熱量(ΔHexo:2℃/分)は該DSC曲線の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点eとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。尚、該DSC曲線におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、湾曲した高温側のベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとし、或いは、湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点e、湾曲した高温側のベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点fとする。
例えば、図5に示す場合には、上記の通り定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から発泡シートの発熱量(ΔHexo:2℃/分)を求め、上記の通り定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分)を求める。また、図6に示すような場合には、上記の方法では点dと点eを定めることが困難である為、上記の通り定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点d(点e)と定めることにより、発泡シートの発熱量(ΔHexo:2℃/分)及び吸熱量(ΔHendo:2℃/分)を求める。また、図7に示すように、吸熱ピークの低温側に小さな発熱ピークが発生するような場合には、発泡シートの発熱量(ΔHexo:2℃/分)は図7中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積Bとする。一方、図7において、発泡シートの吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。
なお、上記発熱量(ΔHexo:2℃/分)および吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の測定において、DSC曲線の測定条件として、2℃/分の加熱速度を採用する理由は、発熱ピークと吸熱ピークとをなるべく分離し、正確な吸熱量(ΔHendo:2℃/分)および(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)を熱流束示差走査熱量測定にて求める際に、2℃/分の加熱速度が好適であるという発明者の知見に基づく。
また、参考発明の発泡シートは、JIS K7195−1993により測定されるヒートザグ値が10mm以上であることが好ましい。該ヒートザグ値が10mm未満の場合は、発泡シートの結晶化が進み過ぎている可能性があり、熱成形性において不十分なものとなる虞がある。尚、該ヒートザグ値の測定は、該発泡シートから、少なくとも片面の表層を残すように幅10mm、長さ125mm、厚み3mm(発泡シートの厚みが3mm以下の場合は、そのままの厚さ)の試験片を切り出して、該試験片の少なくとも片面の表層が上面になるように試験片保持具に試験片を固定し、試験温度を75℃として測定を行うこととする。
参考発明の発泡シートにおいては、該発泡シートの冷却速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる発熱量(ΔHexo:10℃/分)が20〜45J/gであることが好ましく、より好ましくは25〜40J/gであり、更に好ましくは30〜38J/gである。該吸熱量(ΔHexo:10℃/分)が小さすぎる場合には、得られる発泡シートを後工程の熱処理により結晶化させようとしても、熱処理に時間がかかりすぎるので、耐熱性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることはできても、生産性に劣る発泡シートとなる虞がある。一方、該発熱量(ΔHexo:10℃/分)が大きすぎる場合には、結晶化速度が速すぎるために発泡シート製造時に結晶化がすすみ過ぎるので、熱成形性、特に深絞り成形性が劣る発泡シートとなる虞がある。
参考発明において、該発熱量(ΔHexo:10℃/分)が20〜45J/gであることは、結晶化速度が速すぎることもなければ遅すぎることもなく、結晶性の低い状態の発泡シートの生産と後工程の熱処理での結晶性の高いポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産の双方に適した結晶化速度を有するものであることを意味する。なお、冷却速度2℃/分のような冷却速度が遅い条件下での熱流束示差走査熱量測定では、結晶化速度の遅い基材樹脂からなる発泡シートであっても該測定により結晶化が促進され明確な発熱ピークが確認される。これに対し、冷却速度10℃/分という冷却速度が速い条件下での熱流束示差走査熱量測定では、結晶化速度の遅い基材樹脂からなる発泡シートは該測定により結晶化が促進されず、殆ど或いは全く発熱ピークが確認されない、或いは、結晶化がほとんど促進されず明確な発熱ピークは確認されない。このように発泡シートの熱流束示差走査熱量測定において、冷却速度2℃/分の場合には結晶化が進むが、冷却速度10℃/分の場合には結晶化が殆ど或いは全く進まない発泡シートは、熱成形は容易であるが、後工程の熱処理に必要な時間が長くなるので、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産性が不十分なものとなる虞がある。従って、冷却速度10℃/分の条件下における熱流束示差走査熱量測定でも結晶化が進む発泡シートは、後工程の熱処理にて結晶化が早期に進むことから、耐熱性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産性に優れるものである。
尚、上記発泡シートの発熱量(ΔHexo:10℃/分)はJIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、発泡シートから切出した1〜4mgの発泡体片を試験片とし、該試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、10℃まで10℃/分の冷却速度にて冷却する際のDSC曲線を得る。尚、発泡シートの発熱量(ΔHexo:10℃/分)は該DSC曲線の発熱ピークの高温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点hとし、発熱ピークが低温側のベースラインへ戻る点を点iとして、点hと点iとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。尚、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、湾曲した高温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点h、湾曲した低温側のベースラインへ発熱ピークが戻る点を点iとする。
また、参考発明の発泡シートの結晶化速度は、上述したように適当な速さであることが好ましく、具体的には、発泡シートの110℃における半結晶化時間が、2〜200秒であることが好ましく、より好ましくは10〜150秒であり、更に好ましくは20〜120秒である。半結晶化時間が長すぎる場合は、得られる発泡シートを後工程の熱処理により結晶化させようとしても、該熱処理に時間がかかりすぎるため、耐熱性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることはできても生産性に劣る発泡シートとなる虞がある。一方、半結晶化時間が短すぎる場合、結晶化速度が速すぎるために発泡シート製造時に結晶化がすすみ過ぎるので、熱成形性、特に深絞り成形性が劣る発泡シートとなる虞がある。
本明細書における110℃での半結晶化時間は、結晶化速度測定器(メトロン株式会社(旧コタキ商事株式会社)製のMK−801型)を使用し、あらかじめ200℃に加熱した樹脂試料を、110℃に設定した結晶浴に投入し、測定することができる。なお、測定用の樹脂試料は、発泡シートを脱泡しフィルム状にしたものを用意する。この場合、そのフィルムの厚みは0.1±0.02mmのものとし、そのフィルムの寸法は15×15mmの四角とする。これを顕微鏡用カバーガラスに挟み込んだものを測定試料として使用する。また、光源ランプの輝度設定は指示値を3Vとする。
前記メトロン株式会社製の結晶化速度測定器は、試料の結晶化と光の複屈折の関係より結晶化度を求める装置であり、本明細書で言う半結晶化時間とは前記測定法により得られる図8に示すグラフ上の曲線から複屈折による光の量が一定になった値Aをグラフ上縦軸から読取り、その値に0.5を乗じたグラフ上縦軸の値Bに対応するグラフ上の曲線の値Cとして求められる値である。
上記発泡シートの発熱量(ΔHexo:10℃/分)及び/又は発泡シート110℃における半結晶化時間の要件を満足する好ましい発泡シートは、基材樹脂の主成分であるポリ乳酸系樹脂に、結晶化速度向上剤としてタルク、シリカ、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム等の無機物をポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.2重量部以上、4重量部未満、更に好ましくは1〜3.5重量部添加したものを使用することにより得ることができる。又、上記無機物の中でも特にタルクが好ましい。尚、ポリ乳酸系樹脂に対する上記無機物の添加量が上記範囲を超える場合は、得られる発泡シートの独立気泡率が低下してしまい熱成形用発泡シートの機械的強度および熱成形性が不十分なものとなる。一方、該添加量が上記範囲未満の場合には、結晶化速度向上効果が不十分となる。
また、参考発明の発泡シートは、フィルムの接着剤による接着、フィルムの熱接着、共押出し、溶融樹脂の押出ラミネート等の方法により、該発泡シート少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を設けることもできる。該熱可塑性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、中でも、本発明における発泡シートの基材樹脂と同様のものや、脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含むポリエステル系樹脂等の生分解性熱可塑性樹脂が好ましい。
本発明における発泡シートは、熱成形用発泡シートとして用いるものである。以下、該発泡シートを熱成形して得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体について説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体(以下、単に発泡成形体ともいう。)は、ポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする発泡シートを熱成形してなる発泡成形体であって、該発泡成形体の加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる、発熱量(ΔHexo:2℃/分)と吸熱量(ΔHendo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上、好ましくは15J/g以上、更に好ましくは20J/g以上、特に好ましくは25J/g以上であり、結晶化が十分に進み、剛性および耐熱性が特に優れたものである。(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の値が小さすぎる場合は、結晶化が不十分であることを意味し、所望される剛性、耐熱性が得られない発泡成形体である。即ち、発泡成形体の(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の値は、熱流束示差走査熱量測定時において発泡成形体が有している結晶が溶融する際の融解熱量に相当し、該値が大きいほど発泡成形体の結晶化が進んでいることを意味する。尚、該(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の上限は、特に限定されるものではないが概ね60J/gである。また、本発明において発泡成形体の上記ΔHexo:2℃/分の値は、0を示すこともある。
本発明の発泡成形体における発熱量(ΔHexo:2℃/分)、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の熱流束示差走査熱量測定の方法は、発泡成形体から切出した1〜4mgの発泡体片を試験片とする以外は、前記発泡シートにおける発熱量(ΔHexo:2℃/分)および吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の熱流束示差走査熱量測定の方法と同様である。
本発明における発泡シートは、これを加熱軟化させ、金型を使用して真空成形法及び/又は圧空成形法、更にそれらを応用したマッチドモールド成形法、プラグアシスト成形法等の熱成形等を行うことにより、主にトレイ、カップ、丼、弁当箱等に成形することができる。
本発明の発泡成形体は、例えば上記発泡シートの熱成形後に好ましくは80〜130℃、更に好ましくは90〜120℃の温度に温調した結晶化促進のための成形用金型と同じ又は別に設けた金型にて好ましくは10〜60秒間保持することにより得られる。結晶化促進のための金型の温度が低すぎると十分に結晶化させるのに時間がかかり生産性に劣る虞がある。一方、該金型の温度が高すぎると、十分に結晶化させるのが難しくなるばかりか、離型後の発泡成形体の強度が低くなり、発泡成形体の形状を保持できない虞がある。
また、本発明の発泡成形体は、例えば上記発泡シートの熱成形後にポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以上の60〜80℃程度の雰囲気下で成形体を、好ましくは6〜36時間養生することによっても得ることができる。
参考発明の発泡シートは前記の通り、結晶化度を低く抑えたものである。よって熱成形時にはポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度付近まで加熱することで深絞り等の良好な熱成形性示すものとなり、得られる発泡成形体の外観も良好なものとなる。そして、本発明の発泡成形体は発泡シートの熱成形と同時に、或いは、熱成形後に上記の通りポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以上の温度に保持するなどして結晶化を進行させたものであり耐熱性に優れる。特に、冷却速度10℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる発熱量(ΔHexo:10℃/分)が20〜45J/gである参考発明の発泡シートは、前述の熱成形後に結晶化促進のための成形用金型と同じ又は別に設けた金型にて結晶化を促進させる方法にて十分に耐熱性の高い発泡成形体となる。
尚、本明細書においてガラス転移温度の測定はJIS K7121(1987)により熱流束示差走査熱量測定にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求められる値である。尚、ガラス転移温度を求めるための試験片はJIS K7121(1987)の3.試験片の状態調節(3)記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで10℃/分にて昇温して加熱溶解させ、直ちに0℃まで10℃/分にて冷却する状態調整を行ったものを試験片とする。
このようにして得られる本発明の発泡成形体は生分解性であり、弁当箱、カップ麺容器、果物容器、野菜容器等の食品包装容器、精密機器、電気製品の緩衝包装容器等として好ましく使用される。
以下、本発明を実施例、比較例により説明する。
参考実施例、参考比較例で使用するポリ乳酸系樹脂A〜Dは以下の通りのものである。
ポリ乳酸系樹脂A〜Dは、内径47mmの二軸押出機を用いて、次のように製造した。
三井化学株式会社製結晶性ポリ乳酸樹脂H−100(密度:1260kg/m、吸熱量(ΔHendo:row):49J/g)100重量部と、表1に示す量の過酸化物(DCP:ジクミルパーオキサイド)を二軸押出機に供給し、該樹脂が十分溶融する温度以上に加熱して溶融混練した後、樹脂温度を215℃に調整してから、ストランド状に押出し、該ストランド状の押出物を約25℃の水中に浸漬させることにより冷却した後、ペレット状に切断することによりポリ乳酸系樹脂A〜Dを得た。ポリ乳酸系樹脂A〜Dの物性を表1に示す。
Figure 0005517280
ポリ乳酸樹脂Eとして結晶性ポリ乳酸樹脂H−100を使用した。ポリ乳酸樹脂Eの物性を表2に示す。
Figure 0005517280
参考実施例1
内径90mmの第一押出機と内径120mmの第二押出機が接続されたタンデム形式の押出機を用いて、次のように発泡シートを製造した。
前記ポリ乳酸系樹脂Aと、表3に示す種類、量の気泡調整剤とを第一押出機に供給し、加熱溶融混練した後、表3に示す種類、量の発泡剤を第一押出機内に圧入して混練した。次いで第一押出機と接続された第二押出機内で上記発泡性溶融混練物を冷却し、樹脂温度を171℃に調整してから、直径110mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出して円筒状に発泡させた。次いでこの円筒状発泡体を冷却しながら引き取り、押出方向に切り開いて発泡シートを得た。尚、具体的な円筒状発泡体の冷却条件としては、押出し直後の筒状発泡体の内部に0.4m/分(23℃、1atm)の条件で空気を吹き付けると共に外部に0.9m/分(23℃、1atm)の条件で空気を吹き付けることと、5℃に調整された直径333mmの円筒状冷却装置の側面に沿わせて筒状発泡体を引き取ること、これらにより円筒状発泡体を冷却した。
参考実施例2
表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を172℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例3
樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いたこと、表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を167℃に調整してから、直径90mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例4
樹脂Aの代わりに樹脂Eを用いたこと、表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を183℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例5
樹脂Aの代わりに樹脂Bを用いたこと、表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を180℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例6
樹脂Aの代わりに樹脂Eを用い、樹脂Eと該樹脂E100重量部に対して0.4重量部の割合のDCPを共に第一押出機に供給したこと、表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を170℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例7
表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を170℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例8
樹脂Aの代わりに樹脂Dを用いたこと、表3に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を170℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考比較例1
表4に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を174℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考比較例2
樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いたこと、表4に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を167℃に調整してから、直径90mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考比較例3
樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いたこと、表4に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を171℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと、筒状発泡体の外部に空気を吹き付けなかったこと、円筒状の冷却装置を110℃に温調したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考比較例4
樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いたこと、表4に示す種類、量の発泡剤を用いたこと、樹脂温度を181℃に調整してから、直径135mm、スリット間隔0.5mmの円筒状細隙を有する環状ダイから押出したこと以外は、参考実施例1と同様に発泡シートを得た。
参考実施例1〜8で得られた発泡シートの見掛け密度、厚み、独立気泡率、気泡形状(Z、Z/X、Z/Y)、加熱速度2℃/分で熱流束示差走査熱量測定を行なった場合の発熱量(ΔHexo:2℃/分)、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)、冷却速度10℃/分で熱流束示差走査熱量測定を行なった場合の発熱量(ΔHexo:10℃/分)、半結晶化時間の測定結果、成形性、外観、耐熱性向上性の評価を表3に、参考比較例1〜4で得られた発泡シートについての測定結果、評価結果を表4に示す。
尚、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの吸熱量、発熱量の測定は、測定装置として株式会社島津製作所製商品名「DSC―50」を用いて解析ソフトは「島津熱分析ワークステーションTA−60WS用部分面積解析プログラムversion1.52」を用いた。
Figure 0005517280
表中、nブタンはノルマルブタン、iブタンはイソブタンを表す。また、表中、重量部は基材樹脂100重量部に対する値である。
Figure 0005517280
表中、nブタンはノルマルブタン、iブタンはイソブタンを表す。また、表中、重量部は基材樹脂100重量部に対する値である。
表3、表4中の発泡シート成形性、外観、耐熱性向上性の評価は次のように行った。
発泡シートの成形性の評価
参考実施例、参考比較例の各々で得られた発泡シートのそれぞれに対し、株式会社浅野研究所製FKS型テスト用圧空真空成形機を使用して熱成形テストを行って評価した。具体的には、該成形機を使用し、四辺をクランプした発泡シートの両面をヒーターにより表面温度40℃に加熱した後、金型にて開口部直径125mm、低部直径110mm、深さ50mmの円形収納部を有する円錐台形型容器(展開倍率:2.3)を成形し、発泡シートを成形する際における加熱炉内での発泡シートの挙動及び得られた成形品について以下の評価を行った。
○・・・加熱炉内での発泡シートのドローダウン(垂れ下がり)がなく、又は多少見られるが、成形品の厚みが均一である。
×・・・加熱炉内でのドローダウンが大きく、成形品に厚みむらが発生する。または、成形品内側壁面または外側壁面にクッラクが発生する。
外観の評価
発泡シートの外観を目視により、以下の評価を行った。
○・・・発泡シートの表面光沢が均一である。
×・・・発泡シート表面の部分部分において、気泡が目立つ。
耐熱性向上性の評価
実施例、比較例の各々で得られた発泡シートの発熱量(ΔHexo:10℃/分)に基づき以下の評価を行った。
○・・・発熱量(ΔHexo:10℃/分)が20J/g以上である。
△・・・発熱量(ΔHexo:10℃/分)が5J/g超、20J/g未満である。
×・・・発熱量(ΔHexo:10℃/分)が5J/g以下である。
参考実施例1、2、6、8で得られた発泡シートをそれぞれ発泡シートA、B、C、Dとして、以下の実施例1〜5、比較例1を行なった。
実施例1
株式会社浅野研究所製FKS型テスト用圧空真空成形機を使用し、四辺をクランプした発泡シートAの両面をヒーターにより表面温度40℃に加熱した後、金型にて開口部直径125mm、低部直径110mm、深さ50mmの円形収納部を有する円錐台形型容器(展開倍率:2.3)を成形した。その後、90℃に加熱した金型内で該容器を30秒保持して熱処理を行なった。
実施例2
発泡シートBを用いて、実施例1と同様に円錐台形型容器を成形し、その後、110℃に加熱した金型内で該容器を30秒保持して熱処理を行なった。
実施例3
発泡シートCを用いて、実施例1と同様に円錐台形型容器を成形し、その後、110℃に加熱した金型内で該容器を30秒保持して熱処理を行なった。
実施例4
発泡シートDを用いて、実施例1と同様に円錐台形型容器を成形し、その後、90℃に加熱した金型内で該容器を15秒保持して熱処理を行なった。
実施例5
発泡シートDを用いて、実施例1と同様に円錐台形型容器を成形し、その後、90℃に加熱した金型内で該容器を30秒保持して熱処理を行なった。
比較例1
発泡シートAを用いて、熱処理を行なわないこと以外は実施例1と同様に円錐台形型容器を成形した。
実施例1〜5及び比較例1で得られた発泡成形体についての諸物性を表5に示す。
Figure 0005517280
表5中の発泡成形性の耐熱性の評価は次のように行った。
耐熱性の評価
実施例、比較例の各々で得られた発泡成形体を、オーブン中で5分間加熱し加熱前後の変形を調べた。
◎・・・90℃まで変形が無い。
○・・・70℃まで変形が無い。
×・・・70℃までに激しく変形する。

Claims (3)

  1. ゲル分率が2%以下(0を含む)、190℃における溶融張力が5cN以上のポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする発泡シートを、該発泡シート成形部分の面積(A)にて、該成形部分の面積(A)に対応する部分の成形後の面積(B)を除して求められる展開倍率(B/A)が1.5以上の条件にて熱成形してなる発泡成形体であって、
    該発泡成形体の加熱速度2℃/分における熱流束示差走査熱量測定によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上であり、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が20J/g以上である(ただし、WAXD反射粉末法(X線:Cu−Kα線/50kV/200mA、スキャンスピード:4°/min)により測定される結晶化度が20%以下である発泡成形体を除く。)ことを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
  2. 前記発泡成形体が、前記発泡シートを、展開倍率が1.8以上の条件にて熱成形してなるものである請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
  3. 前記発泡成形体の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)が25J/g以上である請求項1または2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
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