JP3866465B2 - ポリ乳酸系重合体の成形体およびその成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れた生分解性容器や成形体およびその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種商品等の展示包装用に用いられるブリスター加工品や納豆などの各種食品を入れる容器には、ディスプレイのため、中の商品等を透視できるように透明性に優れている材料や、輸送時や保管時の環境により変形しない耐熱性に優れている材料が求められる。そのため、ブリスター加工品用の材料としてはポリ塩化ビニル系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリスチレン系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系などのシートがその用途に応じて用いられてきた。
ところが、これらのシートは化学的に安定で、また生分解性がないため、自然環境下に放置した場合、ほとんど分解されることなく残留、蓄積される。そのため、これらは自然環境中に散乱して動植物の生活環境を汚染するだけでなく、ゴミとして埋設処理してもほとんど分解されずに地中に残り、ゴミ処理用地の能力をすぐに飽和させてしまうという問題がある。
そこで、かかる問題を生じない生分解性の材料が要求され、多くの研究や開発が行われている。その生分解性材料の一つとしてポリ乳酸が知られている。特開平6−122148号には、L−乳酸系ポリマーの含有量が75%以上の透明なL−乳酸系ポリマーシートを用いて真空吸引、圧空又は真空圧空によって透明性および成形性に優れたL−乳酸系ポリマー成形物を得る方法が開示されている。
しかし、従来のポリ乳酸系ポリマーからなる成形物はその強度、耐衝撃性能が不十分であり、取扱いの際に穴があく等の問題があった。また、耐湿熱性能が不十分であり、成形物の輸送、保管、使用の際に高温高湿環境下におかれると、成形物が変形したり、透明な成形物が白色化するという、いわゆる白化が生じた。特開平9−25345号には、面配向度(△P)が3.0×10−3〜30×10−3であり、シートを昇温したときの結晶融解熱量(△Hm)と昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量(△Hc)との差(△Hm−△Hc)が20J/g以上で、かつ{(△Hm−△Hc)/△Hm}が0.75以上である配向ポリ乳酸系シートを熱成形して得られる、耐衝撃性、透明性に優れた成形体が開示されているが、これらは耐熱性の点で未だ満足のいくものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、耐衝撃性および耐熱性に優れた生分解性成形体、特にブリスターパック用容器や食品等の容器を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明のポリ乳酸系重合体の成形方法の一態様は、面配向度(ΔP)が3.0×10−3〜30×10−3であるポリ乳酸系重合体のシートを、該ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲の温度になるまで予め加熱した後、加熱型と接触させたまま{該ポリ乳酸系重合体の結晶化度(Tc)−20℃}以上、{該ポリ乳酸系重合体の融点(Tm)−20℃}以下の範囲の温度でかつ、成形圧力が25kg/cm 2 以上、40kg/cm 2 以下の範囲で成形及び熱処理を行い、その後、冷却して、耐衝撃性が80kgf・mm以上であり、かつ、耐熱性は80℃で20分間熱風乾燥器中で乾燥させたときの体積収縮率が5%以下である成形体を形成することを特徴とする。
本発明のポリ乳酸系重合体の成形方法の別の態様は、面配向度(ΔP)が3.0×10−3〜30×10−3であるポリ乳酸系重合体のシートを、該ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲の温度になるまで予め加熱した後、25kg/cm 2 以上、40kg/cm 2 以下の圧空により加熱型に沿わせて成形し、得られた成形品を加熱型と接触させたまま{該ポリ乳酸系重合体の結晶化温度(Tc)−20℃}以上、{該ポリ乳酸系重合体の融点(Tm)−20℃}以下の範囲の温度で熱処理を行い、その後、加熱型に略対応する形状を有する冷却型に嵌合させた後、加熱型側から圧空を吹き込んで成形品を冷却型に移し沿わせて、冷却型と接触させつつ冷却して、耐衝撃性が80kgf・mm以上であり、かつ、耐熱性は80℃で20分間熱風乾燥器中で乾燥させたときの体積収縮率が5%以下である成形体を形成することを特徴とする。
本発明のポリ乳酸系重合体の成形体は、上記成形方法を用いて製造されることを特徴とする。
ここで、ポリ乳酸系重合体の成形体は、ポリ乳酸系重合体の食品容器として用いることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の成形方法は、ポリ乳酸系重合体のシートを予熱して所定温度にし、次いで加熱型(例えば雌型)に該シートを例えば圧空により接触させ、加熱成形および熱処理を施し、その後、冷却して成形する。冷却の方法については特に制限はないが、例えば、加熱成形および加熱処理後、加熱型に該シートを介して対応する冷却型(例えば雄型)を嵌合させた後、シートを冷却型に移し沿わせて冷却成形することができる。
【0006】
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体は、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、もしくはこれらの重合体の混合物であり、本発明の効果を阻害しない範囲で他の高分子材料を混入することができる。また、成形加工性、シートや成形体の物性を調整する目的で可塑剤、滑剤、無機フィラー、紫外線吸収剤などの添加剤、改質剤等を添加することもできる。
乳酸としてはL−乳酸、D−乳酸またはそれらの混合物等が挙げられ、他のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などが代表的なものとして挙げられる。
【0007】
これらの重合法としては、縮合重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することも可能であり、さらに、分子量を増大させる目的で少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などの鎖延長剤を使用することができる。
ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜1,000,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が50,000以上であれば実用可能なレベルの物性を発現することができ、重量平均分子量が1,000,000以下であれば熱成形時にシート強度を保持できないなどの問題を生じることもなく、また、溶融粘度が高くなりすぎ成形加工性に劣ることもない。
【0008】
本発明に使用されるポリ乳酸系重合体のシートは、ポリ乳酸系重合体を十分に乾燥して水分を除去した後、押出法、カレンダー法、プレス法などの一般的な溶融成形法によりシート状に成形し、次いで、急冷することにより得られる。
実用的には、シート状に溶融押出成形された重合体を、回転するキャスティングドラム(冷却ドラム)に接触させて急冷することが好ましい。キャスティングドラムの温度は60℃以下が適当である。キャスティングドラムの温度が60℃より高いとポリ乳酸系重合体のシートがキャスティングドラムに粘着し、シートの巻き取りが困難になり、また結晶化が促進されて球晶が発達し透明性が低下するとともに熱成形加工も困難になる。従って、60℃以下のキャスティングドラムに接触させてシートを急冷することにより、実質上非晶質のシートとすることが好ましい。
【0009】
本発明においては、ポリ乳酸系重合体が本来的に有する脆性を大幅に改良して成形品の耐衝撃性を向上させるために、ポリ乳酸系重合体のシートの面配向度(△P)を3.0×10−3〜30×10−3に調整する。面配向度(△P)は、シートの厚み方向に対する面方向の配向度を表わし、通常直交3軸方向の屈折率(α,β,γ)を測定して後述する所定の式に従って算出される。
面配向度(△P)を3.0×10−3以上とすることにより、耐衝撃性が顕著に改良されるとともに、無配向シートが高温高湿雰囲気下にさらされた時に生じる、主に球晶成長に起因する脆化や白化を防止することができる。なお、面配向度(△P)の上限は実際上30×10−3程度であり、これより面配向度(△P)を高めようとすると、延伸が不安定ないし不可能になる。たとえ、延伸できたとしても、シートの熱成形が困難となる。
面配向度(△P)は結晶化度や結晶配向にも依存するが、シート面内の分子配向に大きく依存する。したがって△Pの調節は、シート面内、特にシートの流れ方向および/またはそれと直交する方向の、1または2方向に対し、分子配向を増大させることにより、無配向シートでは1.0×10−3以下である面配向度(△P)を、3.0×10−3以上に増大させることができる。本発明においては、面配向度(△P)を増大させるために、既知のあらゆる延伸法を採用することができ、その他にも、電場や磁場を利用した分子配向法を採用することもできる。
通常はTダイ、Iダイ、丸ダイ等から溶融押し出しを行ったシート状物または円筒状物を冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し非晶質に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により一軸または二軸に延伸する方法が、工業的に望ましく採用される。
未延伸ポリ乳酸系重合体のシートを延伸する条件は、延伸温度50〜100℃、延伸倍率1.5倍〜5倍、延伸速度100%/分〜10,000%/分が一般的ではあるが、延伸条件の適正範囲は重合体の組成や、未延伸シートの熱履歴によって異なってくるので、面配向度(△P)の値を見ながら適宜決定することができる。
【0010】
本発明においては、以上のようにして作られたポリ乳酸系重合体のシートを熱成形して、成形体を得る。熱成形に適したシートの厚さは、特に限定されるものではないが、用途上からは0.05mm〜2mmの範囲内のものが好ましい。
【0011】
本発明の成形体は、80kgf・mm以上の高い耐衝撃性を有するが、100kgf・mm以上の耐衝撃性を有することがさらに好ましい。
また、本発明の成形体は、高い耐熱性を有し、80℃で20分間熱風乾燥器中で乾燥させた後の体積収縮率が5%以下である。
【0012】
以下に本発明に使用する成形装置と成形方法について図面を用いて説明する。図1は、本発明に用いられる成形装置の一態様を模式的に示す縦断面図である。本発明においては、ポリ乳酸系重合体のシート1を、加熱装置2で予め所定温度まで加熱した後、加熱型3の下方で圧空チャンバー4の上面に載置する。かかる載置の方法としては、特に制限はなく、例えば、所定の大きさのシートを予熱後、該シートを圧空チャンバー4の上面の所定場所まで移動してもよいし、一枚の連続したシートを用いて、一枚のシートを連続的に加熱装置2の間を通過させて予熱し、圧空チャンバー4の上に移送、載置してもよい。なお、加熱装置2には適当な加熱手段が設けられている。
載置した後、加熱型3を下降せしめてシート1を圧空チャンバー4との間に固定し、次いで圧空チャンバー4側の圧空孔5から圧空を吹き込んでシート1を加熱型3に接触するように沿わせて成形する。圧空孔5から吹き込まれる圧空をそのまま維持して所定時間加熱型3と接触させ、熱処理を行う。加熱型3には電気ヒーター6が接続されていて、所定温度が保持できるようになっている。
次いで、加熱型(雌型)3と対応する形状の冷却型(雄型)7を圧空チャンバー4内で軸8により上昇せしめて加熱型3と嵌合させ、しかる後に今度は加熱型3側の圧空孔5’から圧空を吹き込むとともに圧空チャンバー4側の圧空孔5から空気を排出することにより熱処理後の成形品を冷却型7に強制的に移し沿わせて接触せしめ冷却する。冷却型3は冷却液管10から冷却型3内に水等が循環されて冷却温度を保持することができるようになっている。このようにして成形された成形体は、加熱型3を軸9により上昇させ、冷却型7を圧空チャンバー4内で軸8により下降させた状態、すなわち図1に示す状態に戻してから取り出される。図1においては、加熱型が雌型、冷却型が雄型の態様を示したが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明に用いられる成形装置については、特公平1−27850号公報に詳しく開示されている。
【0013】
本発明においては、ポリ乳酸系重合体のシートは(Tg)〜(Tg+50℃)の範囲の温度となるように、予め加熱されていることが必要である。ここでTgとは、該ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度を表す。シートの予熱温度がガラス転移温度(Tg)より低いと軟化不充分であり、一方、(Tg+50℃)を超えるとシートの配向が崩れ、耐衝撃性、透明性に劣ることとなる。
また、シートの成形および熱処理は、(Tc−20℃)〜(Tm−20℃)の範囲の温度で行うことが必要である。ここで、Tcとは、ポリ乳酸系重合体の結晶化温度を表し、Tmとはポリ乳酸系重合体の融点を表す。加熱型3は、電気ヒーター9を用いて、(Tc−20℃)〜(Tm−20℃)の範囲の温度になるように予め加熱しておくことが必要である。(Tc−20℃)より低いと、シートの結晶化が短時間では充分に進まなくて所望の耐熱性が得られず、(Tm−20)より高いと、配向が崩れるため耐衝撃性に劣ることとなる。
本発明のように所定温度まで加熱された加熱型に沿わせて成形することにより、シートの温度が低下してシートの張力が大きくなることを防ぐことができるので、成形に要する圧空圧力を低くおさえることができる効果もある。成形圧力は、装置の耐圧構造などの点から実用的には、25kg/cm 2 以上、40kg/cm 2 以下の範囲で適宜選択することが好ましい。
【0014】
成形され、熱処理により結晶化された成形体を加熱型から取り出すには、余熱により成形体が収縮変形しないように充分に冷却してから取り出す必要がある。
本発明においては、加熱型3に冷却型7を嵌合し、両型の間に挟み込んだ成形品に加熱型3側から圧空を吹き込んで成形体を強制的に冷却型に移し沿わせて冷却することにより、迅速に移しかえができ、収縮変形することなく型に忠実な成形体を得ることが出来る。
【0015】
得られた成形体は、例えば食品用容器やブリスターパック用容器、展示用包装体として好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。本発明の成形体は、大きさや形状を適宜選択することにより、種々の用途に適応することができる。なお、ここでブリスターパック用容器とは、内容物を収納し、底部または蓋部をヒートシール製シート等で密封する、いわゆるブリスターパックに用いられる容器をいう。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中に示す測定値は下記に示すような条件で測定し、算出した。
(1)面配向度(△P)
アッペ屈折計によってシートの直交3軸方向の屈折率(α,β,γ)を測定し、次式で算出した。
△P={(γ+β)/2)}−α (α<β<γ)
γ:シート面内の最大屈折率
β:シート面内におけるγの方向と直交する方向の屈折率
α:シート厚さ方向の屈折率
(2)ガラス転移温度(Tg),結晶化温度(Tc),融点(Tm)
示差走査熱量計「DSC−7」(パーキンエルマー製)を用いて、JIS−K7122に基づきポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融点(Tm)を測定した。ただし、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)についてはペレット状態で測定し、結晶化温度(Tc)についてはシートの状態で測定した。
(3)耐衝撃性
ハイドロショット高速衝撃試験機「HTM−1型」((株)島津製作所製)を用いて耐衝撃性を測定した。成形体底部より100mm×100mmの大きさのサンプルを切り出し、サンプルの中央に錘を落して衝撃を与えて、サンプルが破壊した時の破壊エネルギーを読みとった。ただし、測定温度は23℃、錘の落下速度は3m/秒である。サンプルが破壊した時の最大荷重およびエネルギーが小さいほど耐衝撃性に劣り、脆い。
(4)耐熱性(加熱時の安定性)
温度80℃の熱風乾燥機中に成形体を20分間放置した後の容積(Vt)を測定し、放置前の容積(V0)と放置後の容積〈Vt)とから次式により容積変化率(△V)を求め、この値を耐熱性とした。容積変化率(△V)の数値が小さいほど耐熱性が良好である。
△V=[(Vo−Vt)/Vo]×100(%)
【0017】
(実施例1)
L−乳酸とD−乳酸との組成比がおよそ99.5:0.5で、ガラス転移温度(Tg)60℃、融点(Tm)174℃、重量平均分子量20万のポリ乳酸)を90mmφの単軸エクストルーダーを用い、200℃で押し出して、幅300mm、延伸後の厚みが0.3mmのポリ乳酸系重合体の未延伸シートを作製した。
得られた未延伸シートを表1に示す条件の下、逐次二軸延伸機を用いて延伸し、ポリ乳酸系重合体の延伸シートを得た。得られたポリ乳酸系重合体の延伸シートの面配向度(△P)を求めたところ、9.1×10−3であった。
得られたポリ乳酸系重合体の延伸シートから図1に示す圧空成形装置を用いて長さ130mm、幅130mm、深さ30mmの箱状の成形体を成形した。ただし、加熱装置の温度(シート加熱温度)、圧空孔からの圧空圧力および加熱型の温度(熱処理温度)は表1に示すようにして成形を行った。得られた成形体について、成形性の評価、および耐衝撃性と耐熱性の測定を行った。それらの結果を表1に示す。成形性の評価基準は、成形できるものを「○」、成形できなかったものを「×」で示した。また、耐衝撃性および耐熱性の結果を考慮して総合評価を行った。ただし、使用に耐えないレベルのもの又は成形できないものを「×」、実用レベル以上のものを「○」、非常に優れているものを「◎」で表した。
【0018】
(実施例2〜4)
実施例1と同様にして未延伸シートを作製した。次いで、得られた未延伸シートの延伸条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸系重合体の延伸シートを作製した。次いで、得られたポリ乳酸系重合体の延伸シートを用いて、シート加熱温度、圧空圧力、熱処理温度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、成形体を得た。
△P、結晶化温度(Tc)、成形性の評価、耐衝撃性、耐熱性(△V)を実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
【0019】
(比較例1〜6)
実施例1と同様にして未延伸シートを作製した。次いで、比較例1〜4,6については、延伸条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして延伸シートを作製した。次いで、得られた延伸シートを用いて、シート加熱温度、圧空圧力、熱処理温度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、成形体を得た。ただし、比較例5については未延伸シートのまま上記と同様にして成形体を作製した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1から明らかなように、実施例1〜4の成形体はいずれも耐衝撃性が80kgf・mm以上、かつ耐熱性(△V)が5%以下であり、総合評価「◎」の非常に優れた成形体であることが分かった。一方、比較例1はシート加熱温度が低いので、成形できず、比較例2はシート加熱温度が高すぎ、耐衝撃性、耐熱性に劣ったものであった。比較例3は熱処理温度が低いので、耐熱性が劣り、比較例4では熱処理温度が高すぎるので、耐衝撃性に劣っていた。比較例5は△Pが小さいので、耐衝撃性に劣り、比較例6は面配向度(△P)が大きすぎて、成形することができなかった。
なお、得られた成形体は用途に応じて形状等を適宜選択することができ、適当な形状を選択して食品用容器およびブリスターパック用容器を作製したところ、これらは耐衝撃性および耐熱性に優れた、生分解性の容器であることが分かった。
【0022】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明のポリ乳酸系重合体のシートから得られる生分解性の成形体は、耐衝撃性、耐湿熱性に優れており、広い分野での使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる成形装置の一態様を模式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 シート
2 加熱装置
3 加熱型
4 圧空チャンバー
5 圧空孔
5’ 圧空孔
6 電気ヒーター
7 冷却型
8 軸
9 軸
10 冷却液管
Claims (4)
- 面配向度(ΔP)が3.0×10−3〜30×10−3であるポリ乳酸系重合体のシートを、該ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲の温度になるまで予め加熱した後、加熱型と接触させたまま{該ポリ乳酸系重合体の結晶化度(Tc)−20℃}以上、{該ポリ乳酸系重合体の融点(Tm)−20℃}以下の範囲の温度で、かつ、成形圧力が25kg/cm 2 以上、40kg/cm 2 以下の範囲で成形及び熱処理を行い、その後、冷却して、耐衝撃性が80kgf・mm以上であり、かつ、耐熱性は80℃で20分間熱風乾燥器中で乾燥させたときの体積収縮率が5%以下である成形体を形成することを特徴とするポリ乳酸系重合体の成形方法。
- 面配向度(ΔP)が3.0×10−3〜30×10−3であるポリ乳酸系重合体のシートを、該ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲の温度になるまで予め加熱した後、25kg/cm 2 以上、40kg/cm 2 以下の範囲の圧空により加熱型に沿わせて成形し、得られた成形品を加熱型と接触させたまま{該ポリ乳酸系重合体の結晶化温度(Tc)−20℃}以上、{該ポリ乳酸系重合体の融点(Tm)−20℃}以下の範囲の温度で熱処理を行い、その後、加熱型に略対応する形状を有する冷却型に嵌合させた後、加熱型側から圧空を吹き込んで成形品を冷却型に移し沿わせて、冷却型と接触させつつ冷却して、耐衝撃性が80kgf・mm以上であり、かつ、耐熱性は80℃で20分間熱風乾燥器中で乾燥させたときの体積収縮率が5%以下である成形体を形成することを特徴とするポリ乳酸系重合体の成形方法。
- 請求項1又は2記載の成形方法を用いて製造された、ポリ乳酸系重合体の成形体。
- 請求項1又は2記載の成形方法を用いて製造された、ポリ乳酸系重合体の食品容器。
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