JP3902371B2 - 生分解性積層シート状物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性積層シート状物に関し、特に、ガス等のバリヤー性およびヒートシール性を有する生分解性積層シート状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品保存用袋などの一般的な包装材料をはじめ、漁業用、農業用、建築用、医療用などのプラスチックフィルムには、透明性及びヒートシール性に優れたプラスチックフィルムが要求されることがある。
プラスチックフィルム等の多くが、特にプラスチック包装材は一般に使い捨てされるものであり、使用後、廃棄処分されることが多く、その廃棄が問題となっている。一般的な包装用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられるが、これらの材料は燃焼時の発熱量が多く、燃焼処理中に燃焼炉をいためる恐れがある。また、現在でも使用量の多いポリ塩化ビニルは、その自己消火性のため燃焼することができない。このような焼却できない材料も含めプラスチック製品は土中に埋設処理されることが多いが、これらは化学的に安定で生分解性がないため、ほとんど分解されることなく残留し、蓄積される。そのため、これらは自然環境下に散乱して動植物の生活環境を汚染するだけでなく、ゴミ処理用地の能力を短期間で飽和させてしまう。
【0003】
そこで、燃焼熱量が低く、かつ人体等に安全である、生分解性の材料が要求され、多くの研究がなされており、その一つとして、ポリ乳酸が知られている。ポリ乳酸は、燃焼熱量がポリエチレンの半分以下であり、土中や水中で自然に加水分解が進行し、次いで微生物により無害な分解物となる。ポリ乳酸を用いたフィルムやシート、容器(成形物)等の開発が盛んに行われている。
【0004】
しかし、ポリ乳酸には水蒸気バリア性、ガスバリア性がないので、例えば包装材として使用する場合には、かかるバリア性の改良は重要な課題であった。水蒸気バリア性等を付与するためにアルミニウム箔を積層したシートが、例えば特開平8−290526号、特開平11−35058号に開示されているが、これらのシートはヒートシール性が十分ではなかった。
一般にヒートシール性を付与するためには、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、芳香族−脂肪族系ポリエステル共重合体などのヒートシール材からなるフィルムが設けられるが、かかるヒートシール材は生分解性がないため、廃棄処分の際に環境問題等が生じた。
したがって、水蒸気やガス等のバリア性が良好で、ヒートシール性にも優れ、かつ環境問題を生じない、という全ての条件を満たすプラスチック材料の出現が切望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、水蒸気やガス等のバリア性が良好で、ヒートシール性に優れ、かつ自然環境下で生分解性のあるプラスチックシート状物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明の生分解性積層シート状物は、アルミニウム層の一方の面側にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Aを有し、他方の面側にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bを有する生分解性積層シート状物であって、該2軸延伸シート状物Aと該2軸延伸シート状物Bとは同一ではなく、該ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Aの融点と、該ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bの融点との差が10℃以上であることを特徴とする。
ここで、前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物A、および前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方のポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物は、JIS K 7198で測定される周波数10Hz、120℃での動的貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であることができる。
また、前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物A、および前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方のポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物の結晶化融解熱量(ΔHm)が20J/g以上であることができる。
【0007】
本発明の生分解性積層シート状物は、ヒートシール材として、通常のプラスチック製ヒートシール材ではなく、ポリ乳酸系重合体を用いるので生分解性があり、使用後の廃棄等において、環境問題が発生することもない。本発明の生分解性積層シート状物は、ヒートシールする層とは反対側の面に該層の材料より融点の高い2軸延伸のポリ乳酸系重合体の層(支持層)を有するので、支持層が溶け出すこともなく、印刷等を施すことができる。また、膜厚の薄いアルミニウム箔を用いるので、自然に分解し、環境問題を生じることもない。本発明の生分解性積層シート状物はポリ乳酸系重合体を用いるので人体に安全であり、食品等と接触する場合にも使用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性積層シート状物は、アルミニウム層の一方の面にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Aを、他方にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bを有する。
【0009】
ここでシート状物とは、シート又はシート状物をいう。JISにおける定義上、シートとは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さな平らな製品をいい、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900)。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえる。しかし、シートとフィルムとの境界は定かでなく、明確に区別することは困難であるので、本願においては、上記のとおり、シートとフィルムの両方を含んだ概念として「シート状物」の用語を使用する。
【0010】
本発明において使用されるポリ乳酸系重合体は、L−乳酸、D−乳酸またはDL−乳酸単位を主成分とする重合体、またはこれらの重合体の混合物であるが、、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対しては、D−乳酸が、D−乳酸に対しては、L−乳酸)を共重合することができる。ポリ乳酸系重合体は、少量の共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸等を含んでいてもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでいてもよい。
ポリ乳酸に共重合される共重合成分等のモノマーとしては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0011】
本発明においては、重合法として、縮合重合法、開環重合法等公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸等を直接脱水縮合重合して、任意の組成を有するポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤、触媒等を適宜選択、使用することによりポリ乳酸系重合体を得ることができる。
【0012】
本発明において使用されるポリ乳酸系重合体の重量平均分子量(Mw)は6万〜70万の範囲であることが好ましく、より好ましくは8万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量が6万以上であれば実用可能なレベルの機械物性や耐熱性等を発現することができ、重量平均分子量が70万以下であれば、溶融粘度が高くなりすぎて成形加工性が劣ることもない。
【0013】
ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物A(以下「2軸延伸シート状物A」ということもある)、およびポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物B(以下「2軸延伸シート状物B」ということもある)は、各々の2軸延伸シート状物の融点の差が10℃以上である。本発明の生分解性積層シート状物においては、通常、融点の低い方の2軸延伸シート状物がヒートシール材として機能し、融点の高い方の2軸延伸シート状物が支持層、保護層等として機能するが、融点の差が10℃より小さいと、シールするためにヒートシール材を加熱して溶融する際に、融点の高い方の2軸延伸シート状物も溶融または半溶融の状態となり、シール部のきれいな仕上がりを達成することはできない。本発明においては、2軸延伸シート状物Aと2軸延伸シート状物Bの融点の差は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることが更に好ましい。
なお、本発明において「2軸延伸シート状物の融点」とは、ポリ乳酸系重合体を主成分とするシート状物に2軸延伸を施した後の延伸シート状物の融点を意味する。融点は、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7122に基づいて測定する。
【0014】
2軸延伸シート状物Aおよび2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方の2軸延伸シート状物(仮に、2軸延伸シート状物Aとする)は、JIS−K−7198に基づいて、周波数10Hz、温度120℃で測定される動的貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であることが好ましい。動的貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、本発明の生分解性積層シート状物をヒートシールする際に、保護層として機能する2軸延伸シート状物Aの耐熱性は十分であり、加熱板(加熱バー)に粘着することもない。したがって、加熱板から2軸延伸シート状物Aを容易にその表面を傷つけることなく剥がすことができ、シール部のきれいな仕上がりを達成することができる。動的貯蔵弾性率(E’)はポリ乳酸系重合体の結晶性により異なってくる数値であり、結晶化度が高いほど同温度で比較した場合の動的貯蔵弾性率(E’)は大きくなる。実際には、ポリ乳酸系重合体からなる延伸シート状物の120℃での動的貯蔵弾性率(E’)は350MPaが上限である。
【0015】
2軸延伸シート状物Aおよび2軸延伸シート状物Bは、ポリ乳酸系重合体を主成分とする樹脂組成物をTダイ、Iダイ、丸ダイ等から押し出して得られたシート状または円筒状のシート状物を、冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し、非結晶に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により2軸に延伸することにより得られる。一般に、シート状物を2軸延伸するには、縦延伸をロール法で、横延伸をテンター法で行う逐次2軸延伸法により、または縦横同時にテンターで延伸する同時2軸延伸法により行われる。
【0016】
延伸条件としては、延伸温度が55〜90℃、好ましくは65〜80℃であり、縦延伸倍率が1.5〜5倍、好ましくは2〜4倍、横延伸倍率が1.5〜5倍、好ましくは2〜4倍であり、延伸速度が10〜100,000%/分、好ましくは100〜10,000%/分である。しかしながら、延伸条件の適正範囲はポリ乳酸系重合体の組成や、未延伸シート状物の熱履歴によって異なってくるので、シート状物の面内配向指数および面配向指数を見ながら適宜、定める。
【0017】
延伸した後、延伸シート状物に熱処理が施されるが、延伸シート状物の熱収縮を抑制するためには、延伸シート状物を把持した状態で熱処理する必要がある。テンター法では、通常、クリップでシート状物を把持した状態で延伸するので、延伸後、そのまま熱処理を施すことができる。
熱処理条件は、使用するポリ乳酸系重合体の融点にもよるが、熱処理温度が100℃以上、ポリ乳酸系重合体の融点以下の範囲内の温度であり、熱処理時間が3秒以上であることが好ましい。熱処理条件がかかる範囲内であればシート状物の熱収縮率は小さくなり、シート状物の二次加工工程においてシート状物の収縮等による問題を生じることもない。かかる問題を生じさせないための熱収縮率は、80℃の温水中に10秒間浸した後のシート状物の熱収縮率が5%以下となるようにすることであり、好ましくは3%以下である。
また、熱処理温度がポリ乳酸系重合体の融点以下であれば、熱処理中にシート状物が融解したり破断が生じることもない。
【0018】
本発明においては、2軸延伸シート状物Aおよび2軸延伸シート状物Bのうち、融点の低い方のシート状物の材料は、例えば、融点の高い方のシート状物をまず選択し、次いでこのシート状物を基準にしてこれより融点が10℃以上低い材料の中から任意に選択することができる。
2軸延伸シート状物Aおよび2軸延伸シート状物Bには、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加することもできる。さらに、シート状物A及び/又はシート状物Bの一方あるいは双方の面にコロナ処理を施すことにより、接着性、印刷性の向上を図ることもできる。
【0019】
本発明においては、水蒸気およびガス等のバリア性を付与するため、アルミニウム層を積層する。アルミニウムは自然環境下で酸化され、膜厚の薄いものは最終的に崩壊する。本発明においては、約0.02μm〜約100μmのアルミニウム層が積層されることが好ましい。
アルミニウム層としては、従来から包装材等に使用されているアルミニウム箔等を用いることができるが、例えば、厚さ2〜100μmのアルミニウム箔を用いることができる。また、アルミニウム箔以外にも、アルミニウム蒸着等により、アルミニウム層とすることができ、この場合のアルミニウム層の厚さは、例えば約0.02μm〜約0.2μmであり、好ましくは約0.04μm〜0.1μmである。
アルミニウム層を積層するには、通常使用される公知の方法を用いることができるが、例えば、アルミニウム箔等を接着剤を用いて2軸延伸シート状物A等に積層してもよいし、2軸延伸シート状物A等にアルミニウムを蒸着させてもよい。
なお、アルミニウム層には必要に応じてコロナ処理等の各種表面処理が施されていてもよい。
【0020】
本発明の生分解性積層シート状物は、3層構造に限定されるものではない。すなわち、2軸延伸シート状物A及び/又は2軸延伸シート状物Bは、アルミニウム層の上に直接設けられていても、その間に別の層(例えば、接着層)を介して設けられていてもよく、また、2軸延伸シート状物A及び/又は2軸延伸シート状物Bの上には、それぞれ他の層(例えば、コート層、スキン層、印刷層)が設けられていてもよい。
すなわち、本発明の生分解性積層シート状物の層構成は、例えば、2軸延伸シート状物A/アルミニウム層/2軸延伸シート状物Bのような3層構成でもよいし、2軸延伸シート状物A/接着層/アルミニウム層/接着層/2軸延伸シート状物Bのような5層構成でもよいし、スキン層/2軸延伸シート状物A/アルミニウム層/2軸延伸シート状物Bのような4層構成でもよい。
【0021】
例えば、本発明の生分解性積層シート状物を用いて包装体を形成する場合には、2軸延伸シート状物A、2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方の2軸延伸シート状物が外層となるようにし、融点の低い方の2軸延伸シート状物を内側にしてヒートシール層として貼り合わせる。外層の2軸延伸シート状物は、通常、裏印刷を施す層となり、内側の2軸延伸シート状物は包装される内容物と接する層となる。本発明においては、内側の内容物と接する部分の材料がポリ乳酸で形成されているので、食品等を包装することもできる。
【0022】
接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ゴム系、ウレタン系等の接着剤を一般に用いることができるが、接着剤も生分解性にすることができる。生分解性の接着剤としては、でんぷん、アミロース、アミロペクチン等の多糖類、膠、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン等の蛋白質類やポリペプチド類、未加硫天然ゴム、あるいは脂肪族ポリエステル等が好ましく用いられる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に示すが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
なお、融点(Tm)、結晶化融解熱量(△Hm)、および動的貯蔵弾性率(E’)の値は下記に示すような条件で求めた。
【0024】
融点(Tm)および結晶化融解熱量(△Hm)
示差走査熱量計「DSC−7」(パーキンエルマー製)を用い、JIS K 7121およびJIS K 7122に基づいて、融解熱を測定した。すなわち、作成された2軸延伸シート状物から試験片10mgを切り取り、これについて標準状態で状態調節を行った後、窒素ガス流量25ml/分、加熱温度10℃/分で200℃まで昇温する間に描かれるDSC曲線から、吸熱ピークおよびその面積を読みとり、それぞれを融点(Tm)、結晶化融解熱量(△Hm)とした。120℃での動的貯蔵弾性率(E’)
動的粘弾性測定装置「VES−II型」((株)岩本製作所製)を用い、JISK 7198に基づいて、室温以上、ポリ乳酸系重合体の融解温度以下の範囲内で、昇温速度1℃/分、周波数10Hzで測定を行った。得られた粘弾性カーブから120℃での動的貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0025】
シート状物No.1〜No.5の作成
(1)シート状物No.1
重量平均分子量が約20万のポリ乳酸(融点175℃)100重量部と、平均粒径約2.5μmの粒状二酸化ケイ素(シリカ)(商品名「サイリシア430」、富士シリシア化学(株)製)1重量部とを、それぞれ乾燥させて十分に水分を除去した後、径(Φ)40mmの同方向二軸押出機に投入し、約200℃で溶融混合し、ストランドにして押出し、冷却しながらペレット状にカットした。このペレットをマスターバッチとして、再度乾燥させ、同様に乾燥させた上述のポリ乳酸に対し10%の割合で混合し、径(Φ)40mmの同方向二軸押出機に投入し、設定温度210℃でシート状に押出した後、回転する冷却ドラムで急冷固化させ、実質的に非晶質のシート状物を得た。
ただし、得られたシート状物を温水循環式ロールと接触させつつ赤外線ヒーターを併用して加熱し、周速差ロール間で縦方向に70℃で2.4倍、次いでこの縦延伸シート状物をクリップで把持しながらテンターに導き、フィルム流れの垂直方向に70℃で2.7倍に延伸した後、130℃で約25秒間、熱処理し、厚さ25μmの二軸延伸シート状物(シート状物No.1)を作製した。
得られたシート状物No.1について、融点(Tm)、結晶化融解熱量(Hm)および120℃での動的貯蔵弾性率(E’)を求めた。その結果を表1に示す。
【0026】
(2)シート状物No.2〜No.4
シート状物No.1の作成において、ポリ乳酸系重合体のD−乳酸の含有率を変化させて、ポリ乳酸系重合体の未延伸シート状物をそれぞれ作成した。また得られた未延伸シート状物を用い、シート状物No.1の作成において、縦延伸および横延伸の温度と延伸倍率、および熱処理条件を表1に示すように変更した以外は、シート状物No.1の作成と同様にしてシート状物No.2〜No.4の2軸延伸シート状物を作成した。
【0027】
(3)シート状物No.5
シート状物No.1の作成において、シート状物No.4の原料を用いて、ポリ乳酸系重合体の未延伸シートを作成した。ここでは、延伸せず、このままの未延伸状態のシート状物をシート状物No.5のシート状物とした。ただし、シート状物の厚みは25μmにした。
シート状物No.5は、同じ原料を使用した二軸延伸シート状物No.4とは異なり、DSC測定では融点(Tm)を観察することができなかった。すなわち、シート状物No.5は二軸延伸したシート状物と比較して結晶性がかなり低く、実質的に非晶状態であるので、ガラス転移点を越える温度では軟化する。動的粘弾性測定においても120℃の領域での測定はできなかった。つまり、120℃では動的貯蔵弾性率(E’)が100MPaを大きく下回っていることを表している。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例1)
A4サイズに切り出したシート状物No.1の片面に50W/m2/minの強度でコロナ処理を施し、シート状物表面のぬれ張力を向上させた。なお、コロナ処理の強度が高いほどぬれ張力を向上させることができるが、高すぎるとコロナ処理中にシート状物の表面が溶融するなどの問題が生じ、外観が損なわれる。コロナ処理の強度が50W/m2/minはシート状物の外観が損なわれない範囲において最も効果が期待できるものである。参考までに、ポリオレフィン系シート状物のコロナ処理の強度は、一般的には、20〜40W/m2/minであり、最大でも500W/m2/minである。
厚さ7μmのアルミニウム箔をA4サイズの大きさに切り出し、このアルミニウム箔の表面に脂肪族ポリエステル系ドライラミネート用接着剤、商品名「タケラックA−315」(武田薬品工業(株)製)と商品名「タケネートA−50」(武田薬品工業(株)製)とを15:1の割合で混合したものを、メイヤーバーを用いて、厚さ約3μmとなるように塗工した。塗工後直ちに、シート状物No.1のコロナ処理を施した面を接着面に貼り合わせた。ただし、このシート状物を支持層とした。
次いで、アルミニウム箔のもう一方の面にA4サイズに切り出したシート状物No.2を同様にして貼り合わせた。このシート状物No.2をヒートシール層とした。
得られた生分解性積層シート状物を40℃で2日間エージングした後、下記に示す評価を行った。その結果を表2に示す。
【0030】
ヒートシール性(接着性)の評価、ヒートシール時の支持層の変化の評価
得られた生分解性積層シート状物を幅150mm、長さ128mmに切り出した。切り出したシート状物2枚を、融点の低い方のシート状物(ヒートシール材)同士が向き合って接触するように重ね合わせた。この重ね合わせたシート状物の3辺をヒートシールした。ただし、ヒートシールは、加熱バーの幅が5mmの加熱板を、圧力が1.5kgf/cm2で、5秒間押し当てた後、放冷することにより行った。ヒートシール温度はヒートシール材が融着するように、80〜170℃の範囲内で適宜設定した。なお、ヒートシール温度の設定の目安は、ヒートシール材の融点以上にすることである。
ヒートシール後、ヒートシール部のヒートシール性(接着性)について、目視および触感により評価を行った。すなわち、接着具合が良好であるものを「○」、接着が不十分であるものを「×」で示した。
また、ヒートシール時に支持層(印刷層)となる融点の高い方のシート状物が加熱されて加熱バーに粘着気味であるか、支持層の表面が融解して仕上りの悪いものを「×」、支持層に若干変化があり、やや仕上がりの悪いものを「△」、きれいに仕上ったものを「○」で示した。
【0031】
(実施例2、3および比較例1〜3)
実施例1において、アルミニウムに貼り合わせる支持層およびヒートシール層のシート状物を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、生分解性積層シート状物を作製した。得られた生分解性積層シート状物について、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表2に示す。
【0032】
(実施例4)
電子ビーム加熱方式真空蒸着機(レイボルド社製)を用いて、アルミニウム(Al)を原料とし、真空度5×10−5の空気雰囲気下で、コロナ処理したシート状物No.1の片面に連続的に蒸着処理を施した。
次いで、このシート状物のアルミニウムが蒸着されていない方の面に、実施例1と同様にしてA4サイズに切り出したシート状物No.4を貼り合わせて積層シート状物を作成した。得られた積層シート状物について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表1および表2から明らかなように、実施例2〜4は、良好なヒートシール性を示した。また、アルミニウムの両面に貼り合わせたシート状物の融点が比較的近い実施例1では、やや仕上がりが劣るもののヒートシール性には問題がなかった。
一方、比較例1では、ヒートシール(接着)性はあるものの、ヒートシール時に支持層が融け出し、加熱バーに粘着してきれいに仕上がらなかった。比較例2は、比較例1と同じ構成の積層体であるが、ヒートシール温度を下げたので支持層の融け出しはなかったがシールできなかった。比較例3では、ヒートシール温度80〜170℃の範囲でシールを試みたが、支持層の表面がシールバーに融着してしまい、きれいに仕上げることはできなかった。
なお、本発明のシート状物は水蒸気やガスのバリア性にも優れていた。
【0035】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明の生分解性積層シート状物は、水蒸気やガス等のバリア性が良好で、ヒートシール性に優れ、かつ生分解性があり環境問題を生じない。
Claims (3)
- アルミニウム層の一方の面側にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Aを有し、他方の面側にポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bを有する生分解性積層シート状物であって、該2軸延伸シート状物Aと該2軸延伸シート状物Bとは同一ではなく、該ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Aの融点と、該ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bの融点との差が10℃以上であることを特徴とする生分解性積層シート状物。
- 前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物A、および前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方のポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物は、JIS K 7198で測定される周波数10Hz、120℃での動的貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性積層シート状物。
- 前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物A、および前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物Bのうち、融点の高い方のポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート状物の結晶化融解熱量(ΔHm)が20J/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性積層シート状物。
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