JP5110615B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡成形体 - Google Patents

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本発明は、発泡層を有する筒状体を金型にて挟んで成形することにより製造されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体に関する。
従来、熱可塑性樹脂の成形方法の一つとして、押出機内で樹脂と発泡剤とを溶融混練し、これをダイより押し出して形成された、発泡層を有する筒状体(以下、発泡パリソンともいう。)を金型で挟んで成形する成形体の製造方法が知られている。
上記成形体の製造方法においては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の汎用樹脂の使用が検討されてきた。
一方、近年地球環境に対する意識が高まっており、石油資源の枯渇などの環境問題がクローズアップされる中、従来の石油資源を原料とする上記の汎用樹脂に変わって、植物由来のポリ乳酸系樹脂が注目されている。該ポリ乳酸系樹脂は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られ、使用後自然環境下に放置されることがあっても二酸化炭素と水にまで分解されてしまう環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸系樹脂は、今後汎用性が高まることが予想され、ポリ乳酸系樹脂を原料とする発泡体の開発が行なわれている。
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂の発泡体については、発泡シートについての技術は開示されているものの(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、ポリ乳酸系樹脂を用いた発泡パリソンを金型にて挟んで成形される成形体の開発は行われていないのが実情である。
特開2002−322309号公報 [特許請求の範囲] 特開2002−3709号公報 [特許請求の範囲] 特開2000−136259号公報 [特許請求の範囲]
本発明は、発泡パリソンを金型で挟んで成形する(以下、本発泡パリソン成形ともいう。)ことにより得られる中空、或いは中実のポリ乳酸系樹脂発泡成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下に示すポリ乳酸系樹脂発泡成形体及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
〔1〕 結晶性ポリ乳酸系樹脂、又は結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂との混合物であると共に、熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂と、物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂組成物をダイより低圧域へ押出して形成した、発泡層を有する筒状体を、金型間に挟んで成形することにより得られた発泡成形体であって、該発泡成形体を構成する成形体発泡層について、熱流束示差走査熱量測定(昇温速度2℃/分)によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上であり、190℃における溶融張力が2cN以上であり、該成形体発泡層を構成するポリ乳酸系樹脂が、有機過酸化物により改質された改質ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
〔2〕 該成形体発泡層の熱流束示差走査熱量測定(冷却速度10℃/分)によって求められる発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
〔3〕 該成形体発泡層の見掛け密度が0.03〜0.8g/cmであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
〔4〕 該ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の内部に中空部を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体
本発明の請求項1に係わるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、本発泡パリソン成形により製造されたものであって、該成形体を構成する成形体発泡層が特定のポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とし、其の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上、190℃における溶融張力が2cN以上であり、該発泡層を構成するポリ乳酸系樹脂が有機過酸化物により改質処理されているため、耐熱性、外観などに優れる良好なポリ乳酸系樹脂発泡成形体である。
本発明の請求項2に係わるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の成形体発泡層は、発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上であることにより、成形体形状などによらず、短時間の熱処理により、特に耐熱性に優れたものを生産性良く得ることができるものである。
本発明の請求項3に係わるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、成形体発泡層の見掛け密度が0.03〜0.8g/cmであることにより、圧縮強度や曲げ強度等の物理的強度に優れると共に、断熱性、防音性、緩衝性、軽量性に優れるものである。
本発明の請求項4に係わるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、内部に中空部を有する発泡成形体であり機械的強度を大きく低下させずに軽量性において特に優れたものとなる効果や、複雑な形状の軽量断熱筒状一体成形物となる効果を有し、該発泡成形体はダクト、自動車部品、容器等の用途に好ましく使用できる
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体(以下、単に発泡成形体ともいう。)は、ポリ乳酸系樹脂と物理発泡剤を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物をダイより低圧域へ押出して、発泡層を有する筒状体を形成し、該筒状体を金型間に挟んで成形することにより得られた成形体発泡層を有する発泡成形体である。
なお、以下の説明において、発泡成形体を構成する発泡層を成形体発泡層と表現するのに対し、ダイより低圧域へ押出されて形成された筒状体を構成する発泡層を筒状体発泡層という。
本発明の発泡成形体は、本発泡パリソン成形により形成されたものであり、図9(b)に示すような平板状のものや、図1や図9(a)に示すような内部に中空部を有するものがある。又、中空部を有する発泡成形体としては、図1(a)に示すような成形体発泡層のみからなるものがあり、図1(b)に示すような成形体発泡層の外層に非発泡の樹脂層を有するものがあり、図1(c)に示すような成形体発泡層の内層に非発泡の樹脂層を有するものがあり、図1(d)に示すような成形体発泡層の外層及び内層に非発泡の樹脂層を有するものがある。
なお、図1(a)(b)(c)(d)は、内部に中空部を有する発泡成形体の縦断面図であり、1は成形体発泡層を、2は非発泡の樹脂層(以下、単に非発泡樹脂層ともいう。)をそれぞれ示す。ここにおいて、成形体発泡層は、単層の発泡体層のみならず、複数の発泡体層が積層一体化されてなる積層体であってもよく、非発泡の樹脂層は、単層の非発泡の樹脂層のみならず、複数の非発泡樹脂層が積層一体化されてなる積層体であってもよい。
本発明の筒状体発泡層、更に成形体発泡層はポリ乳酸系樹脂を主成分とする。即ち、これらの発泡層を構成する基材樹脂の主成分はポリ乳酸系樹脂である。該ポリ乳酸系樹脂とは、乳酸成分単位(乳酸から得られる又は乳酸に由来する構造単位)を50モル%以上含むポリマーを言う。このようなものには、(1)乳酸の重合体、(2)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(4)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(5)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(6)前記(1)〜(5)の何れかの組み合わせによる混合物が包含される。尚、上記乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物を挙げることができる。
本発明にて用いるポリ乳酸系樹脂は、上述したポリ乳酸系樹脂の中でも、下記熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上、好ましくは20J/g以上、更に好ましくは30J/g以上のものである。尚、本発明にて用いるポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)の上限は、特に限定されるものではないが概ね65J/gである。そして、本発明にて用いる吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上のポリ乳酸系樹脂としては、結晶性ポリ乳酸系樹脂、或いは、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂との混合物から該吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上のものが選択される。
なお、本明細書における結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、上記吸熱量(ΔHendo:row)が2J/gを超えるものとする。尚、該結晶性ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は通常20〜65J/gである。また、本明細書における非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、前述のポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)が2J/g以下の吸熱ピークが現れるもの或いは吸熱ピークが現れないものとする。
上記ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は、JIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、ポリ乳酸系樹脂1〜4mgを試験片とし、試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。
試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、125℃まで2℃/分の冷却速度にて冷却し、その温度に120分間保った後、40℃まで2℃/分の冷却速度にて冷却する熱処理を行った後、再度、2℃/分の加熱速度にて融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱溶融させる際にDSC曲線を得る。
但し、ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は、図2に示すように、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、図3に示すように、湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、湾曲した高温側のベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。
なお、上記吸熱量(ΔHendo:row)の測定において、試験片の状態調節およびDSC曲線の測定条件として、125℃での120分間の保持、2℃/分の冷却速度および2℃/分の加熱速度を採用する理由は、ポリ乳酸系樹脂試験片の結晶化を極力進ませて、完全に結晶化した状態、或いは、それに近い状態に調整されたものの吸熱量(ΔHendo:row)を該測定にて求めることを目的としている為である。
本発明の発泡成形体を構成する成形体発泡層は、ポリ乳酸系樹脂を基材樹脂の主成分とする。このことは、100重量%の上記ポリ乳酸系樹脂、或いは、50重量%以上,100重量%未満の上記ポリ乳酸系樹脂と0重量%を超え,50重量%以下の上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物を基材樹脂とすることを意味する。即ち本発明において、発泡層の基材樹脂中には、本発明の目的、効果を達成できる範囲において上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂を50重量%以下の割合で混合することができる。また、基材樹脂中に上記ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂が混合される場合には、該基材樹脂中には70重量%以上、更に90重量%以上の割合で上記ポリ乳酸系樹脂が含まれていることが好ましい。
尚、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂には、上記ポリ乳酸系樹脂以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物等が包含される。
本発明で用いるポリ乳酸系樹脂の製造方法の具体例としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,310,865号に示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758,987号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下にて重合する開環重合法(例えば、米国特許4,057,537号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,428,126号に開示されている製造方法)、乳酸重合体と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下にて縮合する方法(例えば、欧州特許公報第0712880 A2号に開示されている製造方法)、乳酸を触媒の存在下にて脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法等を挙げることができるが、その製造方法は特に限定されない。また、少量のグリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて共重合させても良い。
尚、非晶性ポリ乳酸樹脂からなる成形体発泡層の場合は、本発明に対して比較例の一つに相当する。この場合、基材樹脂として非晶性ポリ乳酸樹脂を使用し、本発泡パリソン成形により発泡させ、得られた筒状体を、金型間に挟んで成形することにより、見掛け密度が低い成形体発泡層を形成することはできる。しかし、非晶性ポリ乳酸樹脂はガラス転移点を超えると急激に剛性が低下し、得られた発泡成形体が一定の形状を保持することができないので、実用的な耐熱性がない。これに対し、発泡層の基材樹脂の主成分を構成するポリ乳酸系樹脂として、前記の通り熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上のものを使用すれば、結晶状態を調整することにより、発泡性及び金型成形性とポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性とを両立させることができる。
本発明の発泡成形体の成形体発泡層においては、熱流束示差走査熱量測定(昇温速度2℃/分)によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上である。
ここで、発熱量(ΔHexo:2℃/分)は、加熱速度2℃/分での熱流束示差走査熱量測定により試験片の結晶化が促進され、それに伴って放出される熱量をいい、成形体発泡層の結晶化が進んでいた試験片ほど該発熱量(ΔHexo:2℃/分)の値は小さい値を示す。また、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)とは、加熱速度2℃/分での熱流束示差走査熱量測定により試験片の結晶が融解する際の融解熱量をいい、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の値が大きい成形体発泡層ほど、結晶化を進めさせることができ、結晶化が進んだ成形体発泡層を持つポリ乳酸系樹脂発泡成形体は剛性、耐熱性が優れたものとなる。該吸熱量と該発熱量との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)の値は、熱流束示差走査熱量測定に使用される試験片が該測定装置にセットされる時点で有していた分の結晶が融解するのに必要な融解熱量に相当し、該値が大きいほど成形体発泡層の結晶化が進んでおり、剛性、耐熱性に優れる成形体発泡層を有する発泡成形体となっていることを意味する。
かかる観点から、該差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)は15J/g以上であることが好ましく、20J/g以上であることがより好ましく、30J/g以上であることが更に好ましい。尚、結晶性ポリ乳酸系樹脂の吸熱量の上限は、前記した通り概ね65J/gであるので、該差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が65J/gを越えることはない。
上記成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:2℃/分)および吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は、JIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、成形体発泡層から切出した1〜4mgの発泡体片を試験片とし、該試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。
試験片をDSC装置の容器に入れ、熱処理を行わず、2℃/分の加熱速度にて融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱溶融させる際のDSC曲線を得る。尚、成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:2℃/分)は該DSC曲線の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、成形体発泡層の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点eとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。尚、該DSC曲線におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、湾曲した高温側のベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとし、或いは、湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点e、湾曲した高温側のベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点fとする。
例えば、図4に示す場合には、上記の通り定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:2℃/分)を求め、上記の通り定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から成形体発泡層の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)を求める。また、図5に示すような場合には、上記の方法では点dと点eを定めることが困難である為、上記の通り定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点d(点e)と定めることにより、成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:2℃/分)及び吸熱量(ΔHendo:2℃/分)を求める。また、図6に示すように、吸熱ピークの低温側に小さな発熱ピークが発生するような場合には、成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:2℃/分)は図6中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分を面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分を面積Bとする。一方、図6において、成形体発泡層の吸熱量(ΔHendo:2℃/分)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。
なお、上記発熱量(ΔHexo:2℃/分)および吸熱量(ΔHendo:2℃/分)の測定において、DSC曲線の測定条件として、2℃/分の加熱速度を採用する理由は、発熱ピークと吸熱ピークとをなるべく分離し、正確な吸熱量(ΔHendo::2℃/分)および(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)を熱流束示差走査熱量測定にて求める際に、2℃/分の加熱速度が好適であるという発明者の知見に基づくものである。
本発明の成形体発泡層においては、冷却速度10℃/分での熱流束示差走査熱量測定によって求められる発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上であることが好ましく、20〜45J/gであることがより好ましく、更に好ましくは25〜40J/gであり、特に好ましくは30〜38J/gである。該発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が小さすぎる場合には、得られる発泡成形体を金型成形時、或いはその後工程で熱処理を行うことにより結晶化させようとしても、熱処理に時間がかかりすぎるので、剛性、耐熱性に優れる発泡成形体を得ることはできても、生産性が悪くなる虞がある。一方、該吸熱量(ΔHexo:−10℃/分)が大きすぎる場合には、結晶化速度が速すぎるために、本発泡パリソン成形時に結晶化が進み過ぎるので、目的とする形状によっては良好な発泡成形体を得ることができない虞がある。尚、発熱量(ΔHexo:−10℃/分)の上限は、特に限定されるものではないが概ね60J/gである。
なお、冷却速度2℃/分のような冷却速度が遅い条件下での熱流束示差走査熱量測定では、結晶化速度の遅い基材樹脂からなる成形体発泡層であっても該測定により結晶化が促進され明確な発熱ピークが確認される。これに対し、冷却速度10℃/分という冷却速度が速い条件下での熱流束示差走査熱量測定では、結晶化速度の遅い基材樹脂からなる成形体発泡層は該測定により結晶化が促進されず、殆ど或いは全く発熱ピークが確認されない、或いは、結晶化がほとんど促進されず明確な発熱ピークは確認されない。このように成形体発泡層の熱流束示差走査熱量測定において、冷却速度2℃/分の場合には結晶化が進むが、冷却速度10℃/分の場合には結晶化が殆ど或いは全く進まないポリ乳酸系樹脂は、本発泡パリソン成形は可能であるが、耐熱性を向上させる為の熱処理に必要な時間が長くなるので、生産性が不十分なものとなる虞がある。従って、冷却速度10℃/分の条件下における熱流束示差走査熱量測定において発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上のポリ乳酸系樹脂は、熱処理にて結晶化が早期に進むことから、生産性に優れ、剛性、耐熱性に優れる発泡成形体を容易に得ることができるため好ましい。
尚、上記成形体発泡層の発熱量(ΔHexo:−10℃/分)はJIS K7122−1987に記載される熱流束示差走査熱量測定によって求められる値とする。但し、成形体発泡層から切出した1〜4mgの発泡体片を試験片とし、該試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。
試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、10℃まで10℃/分の冷却速度にて冷却する際のDSC曲線を得る。尚、発泡層の発熱量(ΔHexo:−10℃/分)は該DSC曲線の発熱ピークの高温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点hとし、発熱ピークが低温側のベースラインへ戻る点を点iとして、点hと点iとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。尚、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、湾曲した高温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点h、湾曲した低温側のベースラインへ発熱ピークが戻る点を点iとする。
本発明においては成形体発泡層の190℃における溶融張力が2cN以上である。該溶融張力が2cN未満の場合、外観、断熱性に優れる成形体発泡層にはなり得ない。即ち、成形体発泡層の溶融張力は、本発泡パリソン成形における筒状体発泡層の溶融張力と強い相関があり、成形体発泡層の溶融張力が低いことは、軟化状態にある筒状体発泡層の溶融張力も低いことを意味し、溶融張力が低い筒状体発泡層は、発泡パリソンのドローダウン、セルの潰れが激しく、外観、断熱性に優れる成形体を得ることができない。また、成形体発泡層の発泡倍率、厚み、気泡のセル径、独立気泡率等を広範囲に調整することも困難である。かかる観点から、成形体発泡層の溶融張力は2〜20cNが好ましく、2〜15cNがより好ましい。尚、該溶融張力の上限は、特に限定されるものではないが概ね40cNである。
上記溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のメルトテンションテスターII型によって測定することができる。具体的には、オリフィス内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを有するメルトテンションテスターを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とし、該シリンダー中に基材樹脂または成形体発泡層片からなる測定試料を入れ、5分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として190℃の溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、5rpm/秒(紐状物の捲取り加速度:1.3×10−2m/秒)の割合で捲取り速度を徐々に増加させていきながら直径50mmの捲取りローラーで捲取る。尚、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が混入しないようにする。
本発明において、溶融張力を求めるには、まず、張力検出用プーリーに掛けた紐状物が切れるまで捲取り速度を増加させ、紐状物が切れた時の捲取り速度:R(rpm)を求める。次いで、R×0.7(rpm)の一定の捲取り速度において紐状物の捲取りを行い、張力検出用プーリーと連結する検出器により検出される紐状物の溶融張力を経時的に測定し、縦軸に溶融張力を、横軸に時間をとったグラフに示すと、図7のような振幅をもったグラフが得られる。
本明細書における溶融張力としては、図7において振幅の安定した部分の振幅の中央値(X)を採用する。但し、捲取り速度が500rpmに達しても紐状物が切れない場合には、捲取り速度を500rpmとして紐状物を巻き取って求めたグラフより紐状物の溶融張力を求める。尚、溶融張力の経時的測定の際に、まれに特異な振幅値が検出されることがあるが、このような特異な振幅値は無視するものとする。
更に、成形体発泡層のメルトフローレイト(MFR)は、外観、発泡体物性に特に優れる成形体発泡層となっている観点から0.1〜10g/10分であることが好ましく、0.1〜5g/10分であることがより好ましく、0.3〜3g/10分であることが更に好ましい。
上記MFRは、成形体発泡層から切出した発泡層片を試料としてJIS K7210−1976,A法にて温度190℃、荷重21.2Nの試験条件により測定されるMFRである。尚、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が混入しないようにする。
本発明における成形体発泡層の見掛け密度は、0.03〜0.8g/cmが好ましい。見掛け密度が0.03g/cm未満の場合は、発泡倍率が大きすぎて、用途によっては圧縮強度や曲げ強度等の物理的強度が不足する虞がある。一方、見掛け密度が0.8g/cmを超える場合は、発泡倍率が小さすぎて、断熱性、防音性、緩衝性が不足し、軽量性が不十分になる虞がある。この観点から、該見掛け密度は0.06〜0.7g/cmがより好ましく、0.08〜0.63g/cmが更に好ましい。
上記見掛け密度は、発泡成形体から本発泡パリソン成形時に過度に伸ばされていない厚みが比較的均一な部分(例えば、ボトル形状の発泡成形体の場合は、パーティングラインを除く側面中央部)を選んで試料を切り取り、試料の重量を、該試料を23℃の水中に沈めて水位上昇分より求められる試料の体積で除して求められる値である。
また、成形体発泡層の独立気泡率は、50〜100%が好ましく、70〜100%がより好ましく、80〜100%が更に好ましい。独立気泡率がこの範囲内であることにより、機械的強度、断熱性が優れたものとなる。
本明細書における成形体発泡層の独立気泡率(%)は、ASTM D2856−70(1976再認定)に記載されている手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型を使用して測定される試験片の真の体積:Vxから、下記(1)式より算出される値である。
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (1)
但し、上記(1)式において、Vxは上記した方法で測定される試験片の真の体積(cm)で、試験片を構成する樹脂の容積と、試験片内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
その他、上記(1)式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va:試験片の外形寸法から計算される試験片の見掛けの体積(cm
W :試験片の全重量(g)
ρ :試験片を構成する基材樹脂の密度(g/cm
本発明の発泡成形体の形状としては、(1)内部に外部と連通しない空間を有するもの、(2)図1に示すように内部に外部と連通する空間を有するもの、或いは、(3)筒状のものなど、中空状のものが好ましく挙げられる。かかる形状のものの好ましい具体例としては、上記(1)のものとして風呂蓋、トランクリッド、保冷保温容器など、上記(2)のものとして断熱ボトルなど、上記(3)のものとしてダクトなどが挙げられる。但し、本発明の発泡成形体は中空状に限定されるものではなく、図9(b)に示すように内部に空間が存在しない(中実状)ものも本発明の権利範囲に包含される。
本発明における成形体発泡層の平均厚みは、本発泡パリソン成形において、図9(a)に示すように発泡パリソン内面を融着させずに形成された筒状又は中空状等のものにおいては、1〜15mmのものが機械的物性、断熱性などの観点から好ましい。また、図9(b)に示すような発泡パリソン内面を融着させて形成されたものにおいては、見かけ上、成形体発泡層の平均厚みは倍になる。
上記平均厚みは、発泡成形体から本発泡パリソン成形時に過度に伸ばされていない厚みが比較的均一な部分(例えば、ボトル形状の発泡成形体の場合は側面中央部)を選んで発泡成形体垂直断面を得る。次いで該垂直断面における成形体発泡層の厚みを等間隔に10点測定し、それらの算術平均値を成形体発泡層の平均厚みとする。
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法について説明する。
本発明の製造方法においては、前記ポリ乳酸系樹脂と物理発泡剤を押出機に供給し加熱混練して溶融樹脂組成物を得、次いで物理発泡剤を押出機中に注入し該溶融樹脂組成物とともに混練して発泡性溶融樹脂組成物とし、必要に応じてアキュームレーターを押出機とダイの間に設け、図8に示すように、該組成物を環状ダイ5より低圧域へ押出して筒状体発泡層3aを有する筒状体4を形成した後、図9(a)(b)に示すように、金型6、6を型締めして軟化状態にある筒状体4を金型6、6内に配置して、発泡成形体を製造する。このとき、図9(a)に示すように、筒状体4の内部に気体吹き込み口7から筒状体発泡層の気泡を破壊しない程度の加圧気体を吹き込めば、前記(2)、(3)の中空部を有する発泡成形体を得ることができ、加圧気体を吹き込まなければ、図9(b)に示すように、中実状の発泡成形体、或いは前記(1)の内部に外部と連通しない空間を有する発泡成形体を得ることができる。
但し、図8、図9は本発明の製造方法の一例を概念的に示す説明図であり、本発明の製造方法の具体的な操作手順は図示するものには限られない。
尚、図8、図9(a)(b)において、3aは発泡層を、3bは非発泡の熱可塑性樹脂樹脂層を示す。
本発明の製造方法においては、押出機に供給するポリ乳酸系樹脂の190℃における溶融張力が3cN以上であり、含有水分量が300ppm未満であり、熱流束示差走査熱量測定(冷却速度10℃/分)によって求められる、発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上である。更に、該ポリ乳酸系樹脂のMFRは0.1〜10g/10分であることが好ましい。溶融張力、冷却速度10℃/分での熱流束示差走査熱量測定、MFRの測定方法は、試料をポリ乳酸系樹脂とする以外は前述した通りである。
上記溶融張力が3cN未満の場合、本発明で使用されるポリ乳酸系樹脂においては形成された気泡が破泡してしまい筒状体発泡層を得ること自体が困難であり、なんとか筒状体発泡層が得られたとしてもドローダウンが激しく、実用に耐える成形体発泡層を成形することができない。この観点から、ポリ乳酸系樹脂の溶融張力は5〜40cNが好ましく、7〜30cNがより好ましい。尚、該溶融張力の上限は、特に限定されるものではないが概ね40cNである。
また、該ポリ乳酸系樹脂の溶融張力が3cN以上であっても、ポリ乳酸系樹脂は、発泡成形時のせん断応力や熱等により分解し、得られた成形体発泡層の溶融張力は小さくなり、通常当初の値を下回ることが認められる。従って、基材樹脂の溶融張力の大きな低下は、良好な成形体発泡層が得られなくなることに繋がるおそれがあることから、必要以上の加熱、高せん断が加わる条件での発泡成形は避けるべきであり、最終的に成形体発泡層の溶融張力が2cN以上、更に3cN以上、特に5cN以上に保たれていれば発泡成形条件は良好なものであったことがうかがえ、結果として良好な成形体発泡層が形成されている。
該ポリ乳酸系樹脂の含有水分量が300ppm以上の場合、本発泡パリソン成形時に加水分解が急激に進んで、溶融張力が低下し、筒状体4のドローダウンが起こり、実用に耐える成形体発泡層を得ることができない虞がある。この観点から、ポリ乳酸系樹脂の含有水分量は、200ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下が更に好ましい。
本明細書において、含有水分量の測定は、カールフィッシャー微量水分計を用いて測定するものとする。具体的には、JIS K0068−2001に基づくカールフィッシャー滴定法の容量滴定法により、ポリ乳酸系樹脂を試料として測定する。
本発明方法で用いるポリ乳酸系樹脂においては、冷却速度10℃/分での熱流束示差走査熱量測定によって求められる発熱量(ΔHexo:−10℃/分)は20J/g以上であることが好ましく、20〜45J/gであることがより好ましく、更に好ましくは25〜40J/gであり、特に好ましくは30〜38J/gである。該発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上であることにより、発泡パリソンの本発泡パリソン成形時のドローダウンを小さくすることができるため、得られる成形体発泡層の気泡径、発泡倍率、厚みの均一性が向上する。また、得られる発泡成形体を熱処理することにより更に耐熱性を向上させる場合、熱処理時間が短くできる効果もある。一方、該発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が大きすぎる場合には、結晶化速度が速すぎるために、本発泡パリソン成形時に結晶化が進み過ぎ発泡成形体の目的形状によっては金型成形性が低下する虞がある。尚、該発熱量(ΔHexo:−10℃/分)の上限は概ね60J/gである。

該ポリ乳酸系樹脂のMFRは、発泡性向上、発泡パリソンのドローダウン防止等の観点から0.1〜10g/10分であることが好ましく、0.1〜5g/10分であることがより好ましく、0.3〜3g/10分であることが更に好ましい。
本発明方法で用いるポリ乳酸系樹脂は、前述したように、190℃における溶融張力が3cN以上であり、MFRは0.1〜10g/10分であることが好ましい。このようなポリ乳酸系樹脂を得る方法としては、例えば、溶融張力が3cN未満(0は含まず)、MFRが2〜12g/10分のポリ乳酸系樹脂に有機過酸化物を添加して反応せしめ微架橋(ゲル分率が実質的に0%)させて改質ポリ乳酸系樹脂とする方法、該ポリ乳酸系樹脂とイソシアネート、エポキシ化合物、金属錯体、多価カルボン酸、或いはこれらの混合物のような高分子量化剤とを反応させる等して高分子量化させて改質ポリ乳酸系樹脂とする方法等が挙げられる。本発明においては、ポリ乳酸系樹脂に有機過酸化物を添加して反応せしめて改質ポリ乳酸系樹脂とする方法が採用される。


上記の有機過酸化物を使用して改質ポリ乳酸系樹脂を得る方法において、使用する有機過酸化物は、1分間半減期温度(一定温度で有機化酸化物を分解させた際、活性酸素量が1分間で当初の半分になるときのその一定温度)が改質するポリ乳酸系樹脂の融点から10℃低い温度よりも、高いことが望ましい。1分間半減期温度がポリ乳酸系樹脂の融点よりも10℃以上低い温度であると、有機過酸化物とポリ乳酸系樹脂との加熱混練時に両者の均一な混合が行われないうちに有機過酸化物が分解、反応してしまうために、改質効果が不均一となる虞がある。また充分な改質効果を得るためには、該樹脂の融点から10℃低い温度よりも、高い温度の1分間半減期温度を持つ有機過酸化物と較べてより多くの量を添加する必要があり、その結果、後工程の押出発泡工程において架橋反応が必要以上に進み溶融樹脂にゲル分が多く発生する虞があり満足な発泡成形体を得ることが困難になる虞がある。
一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が樹脂の融点よりも著しく高温である場合には、改質反応を高温で行うために、熱分解によって樹脂の分子量が低下して発泡成形体の物性が低下したり、更には発泡成形体が得られなくなる虞がある。従って、有機過酸化物の1分間半減期温度は、ポリ乳酸系樹脂の融点よりも20℃高い温度を超えないことが望ましい。
尚、ポリ乳酸系樹脂の融点は、JIS K7121−1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求められる値である。測定条件の詳細についてはJIS K7121−1987、3.試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度10℃/分。)により試験片を状態調整した試験片を使用して、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得ることとし、得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。但し、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
ポリ乳酸系樹脂の改質において、用いられる有機過酸化物としては、例えば、従来公知の各種のもの、例えば、イソブチルパーオキシド〔85℃〕、クミルパーオキシネオデカノエート〔94℃〕、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン〔82℃〕、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔94℃〕、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート〔88℃〕、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート〔94℃〕、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート〔92℃〕、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート〔92℃〕、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート〔92℃〕、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート〔91℃〕、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート〔101℃〕、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート〔102℃〕、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート〔103℃〕、t−ブチルパーオキシネオデカノエート〔104℃〕、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド〔119℃〕、t−ヘキシルパーオキシピバレート〔109℃〕、t−ブチルパーオキシピバレート〔110℃〕、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド〔113℃〕、オクタノイルパーオキシド〔117℃〕、ラウロイルパーオキシド〔116℃〕、ステアロイルパーオキシド〔117℃〕、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート〔124℃〕、サクシニックパーオキシド〔132℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン〔119℃〕、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔138℃〕、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔133℃〕、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔134℃〕、m−トルオイルベンゾイルパーオキシド〔131℃〕、ベンゾイルパーオキシド〔130℃〕、t−ブチルパーオキシイソブチレート〔136℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン〔142℃〕、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〔147℃〕、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン〔149℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン〔149℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン〔154℃〕、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン〔154℃〕、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン〔153℃〕、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート〔155℃〕、t−ブチルパーオキシマレイン酸〔168℃〕、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート〔166℃〕、t−ブチルパーオキシラウレート〔159℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン〔156℃〕、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート〔159℃〕、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート〔161℃〕、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート〔160℃〕、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン〔158℃〕、ジクミルパーオキサイド〔175℃〕等が例示される。上記有機過酸化物の中でもジクミルパーオキサイドが特に好ましい。尚、上記各有機過酸化物のすぐ後ろの〔 〕内の温度は各有機過酸化物の1分間半減期温度である。前記有機過酸化物は、単独でまたは2種以上を併用して、基材樹脂100重量部当り、通常、0.3〜0.7重量部、好ましくは0.4〜0.6重量部添加して使用される。
尚、本明細書において有機過酸化物の1分間半減期温度は、ラジカルに対して比較的不活性な溶液(例えばベンゼンやミネラルスピリット等)を使用して、0.1mol/L濃度の有機過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管内に密封し、所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させて測定される。
また、上記のように改質されたポリ乳酸系樹脂では、そのゲル分率が実質的に0%である。尚、該ゲル分率とは、次のようにして求めたものである。
150mlのフラスコに、ポリ乳酸系樹脂約1gを精秤した重量W1の試料と100mlのクロロホルムを入れ、約61℃の沸騰クロロホルム中にて10時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理する。得られた金網上の濾過処理物を20℃のオーブン中で30〜40トールの条件下にて24時間乾燥する。この際に得られた乾燥物重量W2を測定する。この重量W2の試料重量W1に対する重量百分率[(W2/W1)×100](%)をゲル分率とする。
そして、本発明においてゲル分率が実質的に0%とは、上記式により求められるポリマーのゲル分率が2%以下、好ましくは0.5%以下であることを意味する。
本発明方法においては、190℃における溶融張力が3cN以上、含有水分量が300ppm未満、特定の発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上のポリ乳酸系樹脂を押出機に供給する代わりに、含有水分量が300ppm未満、且つ熱流束示差走査熱量測定(昇温速度2℃/分)によって求められる、吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上のポリ乳酸系樹脂と、該ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜1重量部の有機過酸化物とを押出機中に供給することにより、発泡層を有する筒状体を形成することもできる。この場合の過酸化物としては、前記の過酸化物を用いることができる。その中でもジクミルパーオキサイドを用いることが好ましく、好ましい添加量としては0.1〜1.0重量部である。ポリ乳酸系樹脂と、特定量の有機過酸化物とを用いて本発泡パリソン成形を行うことにより、ポリ乳酸系樹脂の溶融張力にかかわらず、たとえ該溶融張力が低いものであっても、押出機中にてポリ乳酸系樹脂の改質がなされ溶融張力が向上することにより、断熱性、機械的強度に優れる成形体発泡層を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造することができる。更に、理由は定かではないが得られる成形体発泡層は結晶化速度が速いものとなり、短時間の熱処理にて耐熱性の高いものとなる。また、上記製法は回収ポリ乳酸系樹脂を原料として使用することを容易にする優れた効果を有する。
本発明方法において、ポリ乳酸系樹脂を発泡させる発泡剤としては、低い見掛け密度のものを得るためには、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の低級アルカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化脂肪族炭化水素、二酸化炭素等の無機ガスなどの物理発泡剤が挙げられる。これらの中でも、発泡が容易であることからノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素(CO)が好ましく、環境への影響を考えると二酸化炭素がより好ましい。具体的には、物理発泡剤の50〜100モル%が二酸化炭素であることが好ましい。なお、該二酸化炭素には、発泡パリソン成形時の冷却時間短縮効果、製造時の安全性が高くなる効果、成形品中に可燃性ガスが含まれないことによる難燃性付与が容易となる効果、寸法安定性、機械的強度に優れたものが得られる効果がある。
尚、ポリ乳酸系樹脂を発泡させる発泡剤として、上記物理発泡剤の他、化学発泡剤、或いは物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して使用することもできるが、見掛け密度の小さな成形体発泡層を得るためには発泡剤として物理発泡剤を用いることが好ましく、或いは物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して使用することが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂を発泡させる際、例えばタルク、シリカ等の無機系の気泡調整剤や、ステアリン酸カルシウム等の有機系の気泡調整剤が添加される。また、目的に応じて着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を基材樹脂に添加することもできる。
本発明方法においては、筒状体4を筒状体発泡層3aと非発泡の熱可塑性樹脂層3bで構成することが好ましい。このようにすると、前述したように、熱可塑性樹脂層で覆われた板状発泡成形体や、外側及び/又は内側が熱可塑性樹脂層で覆われた内部に中空部を有する発泡成形体を得ることができる。
非発泡の熱可塑性樹脂層で覆われた発泡成形体を得るには、発泡性溶融樹脂組成物を形成する押出機とは別の押出機に熱可塑性樹脂を供給し、加熱混練して樹脂層形成用の溶融樹脂組成物とし、該溶融樹脂組成物を前記環状ダイ5に供給し、環状ダイ5の中又は出口付近で前記発泡性溶融樹脂組成物の管状流路の外側及び/又は内側に樹脂層形成用の溶融樹脂組成物を合流させてから、これらの組成物を環状ダイ5より低圧域へ押し出せばよい。
上記熱可塑性樹脂層3bに用いる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ナイロン−6やナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレートやポリアクリレート等のポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等、更にこれらの混合物が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−ブテンブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したエチレン系アイオノマー系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。該ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体等が挙げられる。また、前記ポリオレフィン系樹脂にスチレン等のビニルモノマーを含浸させてグラフト重合させて得られるグラフト変性ポリオレフィン系樹脂も使用することができる。
前記ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルが挙げられる。
上記脂肪族ポリエステルとしては、主にグリコールと脂肪族ジカルボン酸から化学合成された、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の生分解性脂肪族ポリエステルや、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。
本発明の発泡成形体は、例えば本発泡パリソン成形における発泡パリソンの金型成形中に熱処理条件として、金型を80〜130℃、更に90〜120℃に温調することが好ましく、該金型内にて発泡成形体を10〜90秒間、更に10〜60秒間保持することが好ましい。また、上記の方法以外にも、金型から取り出された成形後の発泡成形体をポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以上の60〜80℃程度の雰囲気下で好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上養生することが好ましい。この場合の養生時間の上限はないが、生産性の上から概ね36時間以内で行われる。上記熱処理により発泡成形体の耐熱性、剛性を向上させることができる。なお、結晶化促進のための熱処理の温度が低すぎると十分に結晶化させるのに時間がかかり生産性に劣る虞がある。一方、該温度が高すぎると、十分に結晶化させるのが難しくなるばかりか、発泡成形体の強度が低くなる虞がある。
本発明の発泡成形体は、エアコン用のダクト、トランクリッド等として好ましく使用されるものである。
以下、本発明を実施例、比較例により説明する。
実施例、比較例において、ポリ乳酸系樹脂A、B、C、Dを使用した。
ポリ乳酸系樹脂A、Bは、内径47mmの二軸押出機を用いて、次のように製造した。
三井化学株式会社製の結晶性ポリ乳酸樹脂H−100(密度:1260kg/m、吸熱量(ΔHendo:row):49J/g)100重量部と、表1に示す量の過酸化物(DCP:ジクミルパーオキサイド)を二軸押出機に供給し、該樹脂が十分溶融する温度以上に加熱して溶融混練した後、樹脂温度を215℃に調整してから、ストランド状に押出し、該ストランド状の押出物を約25℃の水中に浸漬させることにより冷却した後、ペレット状に切断することによりポリ乳酸系樹脂A及びBを得た。ポリ乳酸系樹脂A及びBの溶融張力及び吸熱量(ΔHendo:row)を表1に示す。
ポリ乳酸樹脂Cとして、三井化学株式会社製の結晶性ポリ乳酸H−100を使用した。ポリ乳酸樹脂Cの溶融張力及び吸熱量(ΔHendo:row)を表2に示す。
ポリ乳酸樹脂Dとして、三井化学株式会社製の非晶性ポリ乳酸H−280を使用した。ポリ乳酸樹脂Dの溶融張力及び吸熱量(ΔHendo:row)を表2に示す。
Figure 0005110615
実施例1〜6、8、比較例1〜4
表2、3に示す基材樹脂(A乃至Dの記号は表1に示す樹脂名に対応する)100重量部に対して、気泡調整剤としてタルク又は炭カル(炭酸カルシウム)を添加して(実施例5では更に樹脂Cと共にジクミルパーオキサイド(DCP)を樹脂C100重量部当たり0.4重量部添加した)、内径65mmの押出機に供給し、溶融混練して溶融樹脂組成物とし、次いで表2、3に示す種類、添加量(この量に係る重量%は、基材樹脂、発泡剤、気泡調節剤の総和を100重量%とした時の重量割合である)の物理発泡剤を押出機内に圧入し、混練して発泡性溶融樹脂組成物とし、該発泡性溶融樹脂組成物をアキュームレーターに充填した。
次いで、アキュームレーターの出口に取付けた環状ダイの出口(押出時には外径90mm、隙間約0.8mmのリング状のリップが形成される)より、発泡性溶融樹脂組成物を表2、3に示す樹脂温度、瞬間吐出量で大気圧中に押出し、発泡させて筒状体を形成した。
次いで、得られた筒状体をダイ直下に位置する2分割式の金型(ダクト製造用金型)内に配置して、型締め後筒状体内部に圧力0.4g/cmの加圧気体(空気)を吹き込んで成形を行ったところ、発泡層のみから構成された良好な中空部を有するダクトを得た。得られたダクトの外形は、長さ650mm、断面形状が楕円形、楕円の長径(外径)150mm、楕円の短径(外径)70mmであった。尚、実施例3の樹脂Aと樹脂Dの混合物からなるポリ乳酸樹脂の吸熱量(ΔHendo:row)は39J/gであった。
実施例7
表2に示す基材樹脂(Aの記号は表1に示す樹脂名に対応する)100重量部に対して、気泡調整剤としてタルクを添加して、内径65mmの押出機に供給し、溶融混練して溶融樹脂組成物とし、次いで表2に示す種類、量(この量に係る重量%は、基材樹脂、発泡剤、気泡調節剤の総和を100重量%とした時の重量割合である)の物理発泡剤を押出機内に圧入し、混練して発泡性溶融樹脂組成物とし、該発泡性溶融樹脂組成物をアキュームレーターに充填した。
次いで、アキュームレーターの出口に取付けた環状ダイの出口(押出時には外径90mm、隙間約0.8mmのリング状の出口が形成される)より、発泡性溶融樹脂組成物を表2に示す樹脂温度、瞬間吐出量で大気圧中に押出し、発泡させて筒状体を形成した。
次いで、得られた筒状体をダイ直下に位置する2分割式の金型(板製造用金型)内に配置して、型締め後筒状体内部に圧力0.4g/cmの加圧気体(空気)を吹き込んで成形を行ったところ、発泡層のみから構成された良好な中空部を有する板状成形体を得た。得られた板状成形体の外形は、断面形状が長方形、長さ400mm、幅250mm、厚み40mmであった。
次いで、得られた成形体を表2、3に示す熱処理条件にて熱処理を行った。尚、この熱処理は、表2、3に示す温度に設定された乾燥オーブン中に、表2、3に示す時間保持することにより実施した。
製造条件及び得られた発泡成形体の諸物性を表2、3に示す。
また、参考までに、発泡成形に使用した基材樹脂に対して測定した発熱量(ΔHexo:−2℃/分)も表2、3の上部に示した。
尚、表2、3中に示されたDSC測定に基づくデータは、株式会社島津製作所の示差走査熱量計「DSC−50」で測定し、同社の熱分析ワークステーション「TA−60WS」とマイクロソフト社のWindows XP Homeが搭載されたパーソナルコンピューターを使用して解析して得られたものである。その解析に使用されたフソトウェアは、TA60 Ver. 1.52(部分面積解析プログラムを含む)である。
Figure 0005110615
Figure 0005110615
表2、3における外観の評価、耐熱性の評価は以下に示す基準に基づいて行った。
外観の評価
○・・・発泡成形体の気泡径、気泡形状がほぼ均一で表面光沢が均一である。
×・・・発泡成形体の表面の凹凸か大きく、気泡径、気泡形状が不均一である。
耐熱性の評価
得られた発泡成形体を、オーブン中で5分間加熱し、該成形体の加熱前後の形状を対比することにより変形を調べて、次の基準で耐熱性を評価した。
◎・・・90℃まで変形がない。
○・・・70℃まで変形がない。
×・・・70℃までに激しく変形する。
比較例1では、溶融張力が0.4cNの結晶性ポリ乳酸系樹脂を用いたため、外観良好な発泡成形体を得ることができなかった。
比較例2では、非晶性のポリ乳酸系樹脂を用いたため、ポリ乳酸系樹脂の溶融張力にかかわらず外観が良好な発泡成形体を得ることはできるものの、得られた発泡成形体は耐熱性に劣るものであった。
比較例3では、含有水分量が2000ppmのポリ乳酸系樹脂を用いたため、外観良好な発泡成形体を得ることができなかった。
比較例4では、成形体発泡層における(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g未満であるため耐熱性良好な発泡成形体とはならなかった。
(a)〜(d)は、それぞれ内部に中空部を有する発泡成形体の縦断面図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められるポリ乳酸系樹脂のΔHendo:rowを示すDSC曲線の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められるポリ乳酸系樹脂のΔHendo:rowを示すDSC曲線の他の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められる成形体発泡層のΔHexo:2℃/分及びΔHendo:2℃/分を示すDSC曲線の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められる成形体発泡層のΔHexo:2℃/分及びΔHendo:2℃/分を示すDSC曲線の他の説明図である。 熱流束示差走査熱量測定により求められる成形体発泡層のΔHexo:2℃/分及びΔHendo:2℃/分を示すDSC曲線の更に他の説明図である。 基材樹脂、成形体発泡層のメルトテンションの測定方法を説明するためのグラフである。 本発明における発泡パリソンを金型により挟んで成形する発泡成形方法の一例を概念的に示す説明図である。 (a)は、本発明における発泡パリソンを金型により挟んで成形する中空部を有する発泡成形体の成形方法の一例を概念的に示す説明図であり、(b)は本発明における発泡パリソンを金型により挟んで成形する中空部を有さない発泡成形体の成形方法の一例を概念的に示す説明図である。
符号の説明
1 成形体発泡層
2 非発泡の樹脂層
3a 筒状体発泡層
3b 非発泡の樹脂層
4 筒状体
5 環状ダイ
6 金型
7 気体吹き込み口

Claims (4)

  1. 結晶性ポリ乳酸系樹脂、又は結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂との混合物であると共に、熱流束示差走査熱量測定によって求められる吸熱量(ΔHendo:row)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂と、物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂組成物をダイより低圧域へ押出して形成した、発泡層を有する筒状体を、金型間に挟んで成形することにより得られた発泡成形体であって、該発泡成形体を構成する成形体発泡層について、熱流束示差走査熱量測定(昇温速度2℃/分)によって求められる、吸熱量(ΔHendo:2℃/分)と発熱量(ΔHexo:2℃/分)との差(ΔHendo:2℃/分−ΔHexo:2℃/分)が10J/g以上であり、190℃における溶融張力が2cN以上であり、該成形体発泡層を構成するポリ乳酸系樹脂が、有機過酸化物により改質された改質ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
  2. 該成形体発泡層の熱流束示差走査熱量測定(冷却速度10℃/分)によって求められる発熱量(ΔHexo:−10℃/分)が20J/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
  3. 該成形体発泡層の見掛け密度が0.03〜0.8g/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
  4. 該ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の内部に中空部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体

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