JP4530491B2 - 生分解性耐熱樹脂組成物およびシート、成形体、発泡体 - Google Patents

生分解性耐熱樹脂組成物およびシート、成形体、発泡体 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、生分解性の機能に加え、耐熱性を有する樹脂組成物、およびこれから得られるシート、成形体、発泡体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、最終ゴミ処理場である埋立処分場が不足しており、特にプラスチック製品の廃棄物処理は深刻な問題となっている。プラスチック製品の中でもプラスチック発泡体は、安価でかつ優れた機能を有することから非常に多くのものに使用されており、また安価な故に殆どのものが使い捨てされている。これらの発泡体として、安価で機械的強度が比較的高いポリスチレン製、ポリエチレン製やポリウレタン製等の発泡体が利用されている。しかし、これらの発泡体は、集積すると嵩が高くなるので回収コストは非常に高くなり、またリサイクルコストも高い為、使用後に少量しかリサイクルされておらず、その大部分が廃棄されている。
【0003】
また、廃棄処理問題に対応するため、紙製の緩衝材や容器が代用されているが、紙製の緩衝材や容器は水濡れに弱く、変形時の復元性が劣り、繰り返し使用には不適である。この為、紙製の緩衝材や容器は使い捨てにせざるをえず、貴重な森林資源の枯渇を助長するものであった。
【0004】
このような環境負荷抑制手段の一つとして、土中や水中の微生物により分解され、自然界の物質循環系に組み込まれ、環境を汚染しない生分解性ポリマーの開発が強く望まれており、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の発泡体が試作検討されている。しかし、上記の生分解性発泡体は機械的強度が不十分であり、また長期使用の際にはカビが発生する為、実用的な発泡体とはいえないものであった。
【0005】
一方、生分解性を有する乳酸系ポリマーは、安全性が高く、燃焼時の燃焼カロリーが低く、近年その開発研究が盛んに行われている。これらの乳酸系ポリマーを利用した発泡体に関しては、特開2000−7813号公報、特開2000−17039号公報が開示されているが、これらの発泡体は、含有する光学異性体の含有率を増すことにより、ポリ乳酸の流動特性を改善し発泡性を向上させたものであった。しかし、これらの乳酸系発泡体は、非晶性のポリ乳酸から構成されるため、高温時には容易に変形したり、また気温が上昇する夏期での保管時には、発泡体同士が固着してしまうという重大な問題が頻発した。また、特開平9-263651号公報では、高分子量化剤を添加して得た超高分子量のポリ乳酸を用いて、発泡時の溶融粘度を改善する方法が開示されている。
しかし、これらのポリ乳酸系発泡体は、結晶性が充分でないため、実用的な耐熱性を有するものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする問題】
本発明は、上記のように現在問題となっているポリスチレン製、ポリエチレン製およびポリウレタン製等の発泡体の廃棄処理問題を解決し、紙製緩衝材や紙製容器のように貴重な森林資源を消費せず、かつ、従来の生分解性樹脂では不可能であった高温環境下に耐えうる生分解性耐熱樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂に高結晶性を付与することにより、上記課題が解決できることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、L体とD体のモル比が96/4以上、又は4/96以下であるポリ乳酸を主成分とする樹脂組成物であって、ポリ乳酸20質量%以上と、結晶核剤7〜40質量%と、架橋剤0.1〜5質量%とからなり、示差走査型熱量(DSC)測定の降温過程において、ポリ乳酸換算で10J/g以上の結晶化由来の発熱ピークが、降温速度30℃/min以上で発生することを特徴とする生分解性耐熱樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物は生分解性樹脂であるポリ乳酸を主成分として用いることが必要である。ポリ乳酸樹脂は、通常の使用環境下では合成樹脂と同等の特性を有し、使用状態も変わらないが、廃棄環境下において分解性を示す。そして、ポリ乳酸樹脂の分解の初期段階は、微生物を必要としない単純な非酵素的加水分解が主体となり分子量が低下するものである。したがって、嵩の高い生分解性耐熱発泡体を加水分解可能な環境下に一定期間放置することで減容化を行うことが可能となり、使用後の収集、運搬およびコンポスト処理が容易となる。
【0009】
本発明に用いられるポリ乳酸としては、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーあるいはこれらの混合物が挙げられる。他のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が用いられる。
【0010】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物はポリ乳酸を主成分とする樹脂組成物であって、かつ結晶化を容易に行えるものであるということが本発明の趣旨であるが、この結晶化の容易さの度合いは示差走査型熱量計(DSC)測定により評価することができる。ここで、示差走査熱量測定とは、試料5〜8mgを常温から200℃に一定の昇温速度で加熱し200℃で5分間保持した後、一定の降温速度で常温まで冷却する一連の動作時に生ずる吸熱量および発熱量を測定するものである。そして、昇温した後の降温過程において、結晶化由来の発熱ピークが、速い降温速度で発生するほど、通常の成形加工時に結晶化が可能となり、熱処理を要せずに耐熱性の成形体が得られる。本発明の生分解性耐熱樹脂組成物では、この結晶化由来の発熱ピークは、ポリ乳酸換算で10J/g以上であることが必要であり、15J/g以上であることが好ましい。この結晶化由来の発熱ピークが、ポリ乳酸換算で10J/g未満であると、ポリ乳酸の大部分が非晶質となって充分な耐熱性が得られない。なお、ここで言うポリ乳酸換算とは、発熱ピークの発熱量を樹脂組成物試料に含まれるポリ乳酸の含有量で除した値である。本発明ではこの結晶化由来の発熱ピークが、降温速度30℃/min以上の降温過程において発生することが必要であり、降温速度50℃/min以上で発生することが特に好ましい。結晶化由来の発熱ピークが、降温速度30℃/min以上で発生しない樹脂組成物では結晶化が充分でなくなり、耐熱性の非常に劣ったものとなる。本発明の生分解性耐熱樹脂組成物に供せられるポリ乳酸には、L体とD体のモル比が96/4以上又は4/96以下である結晶性の高いポリ乳酸を含むことが必要である。L体とD体のモル比が96/4未満である場合、又は4/96を超える場合には、結晶性が低下し耐熱性を付与できなくなる。
【0011】
また、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物には、高結晶性の上記ポリ乳酸を20質量%以上含むことが必要であり、50質量%以上含むことがさらに好ましい。高結晶性のポリ乳酸の含有量が20質量%未満では、結晶性が低下し、充分な耐熱性を付与できなくなる。本発明の生分解性耐熱樹脂組成物には、高結晶性の上記ポリ乳酸以外の成分として、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、低結晶性のポリ乳酸等の生分解性樹脂を含有することが出来る。
【0012】
また、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物には結晶核剤を含有することが必要である。結晶核剤としては無機系粒子と有機系粒子があり、無機系粒子としては珪藻土、焼成バーライト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、シリカ、クレー、ガラス、石灰石、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸第二鉄等が挙げられ、有機系粒子としては木粉、澱粉、セルロース、セルロース誘導体等があげられ、この中で結晶核剤としてはシリカ、タルクを含有することが好ましい。上記結晶核剤は、発泡剤が発生する気泡を樹脂中に均一に分散させる効果も有しており、均質な発泡体を得ることが可能となる。
【0013】
また、結晶核剤は、樹脂組成物に7〜40質量%含むことが必要である。結晶核剤の含有量が7質量%未満では充分な耐熱性が得られず、40質量%を超えると得られた発泡体の強度が急激に低下するからである。また、固体状粒子物質の平均粒径は、0.01〜10μmの範囲であることが好ましい。この中でも0.05〜5μmの範囲がさらに好ましく、0.1〜2μmの範囲が特に好ましい。この範囲を外れると充分な耐熱性が得られず、また均一なセル径の発泡体が得られない。
【0014】
また、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物には、架橋剤を含有することが必要である。架橋剤を含有することで、融点付近の樹脂溶融粘度の急激な減少が緩和され、温度の変動に伴う樹脂の溶融粘度の変動が小さくなる。
【0015】
上記効果を示す架橋剤としては、多価カルボン酸、金属錯体、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、有機過酸化物あるいはこれらの混合物を挙げることができる。この中でも優れた増粘効果と結晶化促進効果を有していることからイソシアネート化合物が好ましい。
【0016】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のイソシアネート化合物があり、例えば、芳香族のイソシアネート化合物としては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂環族のイソシアネート化合物としてはイソホロン水素化ジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂肪族のイソシアネート化合物としてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするイソシアネート化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。この中でも特に結晶性が著しいキシレン、ヘキサメチレンを骨格とするイソシアネート化合物が好ましい。
【0017】
また、イソシアネート化合物のイソシアネート官能基数は2.3当量/モル以上が好ましく、2.7当量/モル以上が特に好ましい。これは、イソシアネート化合物の官能基数が多くなることで、少量の添加で増粘効果が得られるからである。また、これらのイソシアネート化合物は、一種または二種以上を混合させたものを用いてもよい。
【0018】
架橋剤として用いる多価カルボン酸としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、トリメチルアジピン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
架橋剤として用いる金属錯体としては、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシド、プロピオン酸カルシウム、マンガンアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロプキシド、テトラブトキシチタン等が挙げられる
【0020】
架橋剤として用いるエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,14-テトラデカンジカルボン酸グリシジルエステル等を用いることができる。
【0021】
架橋剤として用いる有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネイト、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス-t-ブチルパーオキシバレレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキソネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ(t-ブチルパーオキシ)-m-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル−2,5-t-ブチルパーオキシヘキシン-3、t-ブチルパーオキシクメン、ベンゾイルパーオキサイド等が用いられる。
【0022】
生分解性耐熱樹脂組成物における架橋剤の含有量は、0.1〜5質量%が必要であり、0.5〜3質量%がさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量%未満では架橋の効果が現れず、5質量%を超えると架橋密度が大きくなりすぎ生分解性が低下する。
【0023】
また、上記架橋剤に硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ラウリルメルカプタン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、ピペリジン等を、架橋助剤として硫黄、メタフェニレンビスマレイミド、キノンジオキシム、1,2-ポリブタジエン、トリアリルシアヌラート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌラート等を用いることができる。
【0024】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物を用いて発泡体を製造する場合、樹脂組成物は発泡成形時に特定の溶融特性を有することが好ましい。即ち、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度は、1.0×102〜1.0×105Pa・sが好ましく、より好ましくは3.0×102〜7.0×104Pa・s、5.0×102〜5.0×104Pa・sが特に好ましい。1.0×102Pa・s未満では粘度が低すぎるため、気泡を樹脂中に留めることは出来なくなり、また、1.0×105Pa・sを超えると粘度が高すぎるため、気泡を形成できず、実用的な分解性耐熱発泡体とはなり得ない。なお、溶融粘度の測定には、ノズル径が1.0mmであり、L/Dが10であるノズルを用いた。
【0025】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物の20℃におけるフェノール/四塩化エタン=50/50混合液の0.5質量%溶液を用いて測定した相対粘度は、1.8以上が好ましく、さらに好ましくは2.0〜2.5である。相対粘度が1.8未満であると、生分解性耐熱樹脂組成物より得られる発泡体が容易に破断するため好ましくない。
【0026】
また本発明の生分解性耐熱樹脂組成物の50℃、95%RHにおける加水分解係数は、0.005〜0.15であることが好ましく、0.01〜0.14であることがさらに好ましく、0.02〜0.13であることが特に好ましい。加水分解係数は50℃、95RHの条件で6日間処理し、相対粘度を縦軸に、処理日数を横軸にとり、プロットした直線の傾きをいう。加水分解係数が0.15より大きいと、成形直後から加水分解が進行する為、生分解性耐熱発泡体および成形体として使用中、あるいは使用前に破断してしまう。そして、加水分解係数が0.005未満であると、加水分解に要する時間が増加し、生分解性耐熱発泡体の減容化に要する処理時間が長くなる。
【0027】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物を使用するに際しては、可塑剤等の他、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤、フィラー、顔料なども併用できる。
【0028】
可塑剤としては、ジイソデシルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ-n-アルキルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘイシルアゼレート、ジ-2-ヘキシルアゼレート、アセチルトリブチルシトレート、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジブチル、トリオクチルトリメリテート、フタル酸ジエチル、ポリプロピレングリコールアジピン酸、ポリエチレングリコールアジピン酸、アジピン酸ブタンジオール等があげられる。
【0029】
さらに酸化防止剤としては、p-t-ブチルヒドロキシトルエン、p-t-ブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0030】
熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等、紫外線吸収剤としては、p-t-ブチルフェニルサリシレート、2-ヒドロキシ−4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2'-カルボキシベンゾフェノン、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン等、滑剤としてはステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム等、帯電防止剤としては、n,n-ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ジエタノールアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルホネート等、難燃剤として、ヘキサプロモシクロドデカン、トリス-(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等が挙げられる。、顔料としては酸化チタンやカーボンブラック等が挙げられる。
【0031】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物を用い発泡体を製造するに際して用いる発泡剤としては、特に限定されないが、使用する樹脂の融点及び加工温度で適時選択すればよく、一般の有機系分解性発泡剤、無機系分解性発泡剤等の化学発泡剤や、揮発性液体、不活性ガス、炭化水素、塩化炭素、ハロゲン化炭化水素等の物理発泡剤を用いることができる。
【0032】
化学発泡剤としてはp-トルエンスルホニルヒドラジド、4,4-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、5-フェニルテトラゾール、4-アミノウラゾ−ル、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸マグネシウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、テレフタル酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムフェノキシド、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0033】
物理発泡剤としてはメタン、エタン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロペンタン、ベンゼン、キシレン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、四弗化炭素、弗化エチル、四弗化エタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、エーテル、メチラール、アセタール、1,4-ジオキサン、アセトン、エチルメチルケトン、アセチルアセトン、炭酸ガス、窒素ガス、ネオン、ヘリウム、キセノン等が挙げられる。
【0034】
発泡剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。また、発泡剤の添加割合は0.05〜50質量%の範囲が好ましい。発泡剤の添加割合が0.05%より少ないと、ほとんど発泡を生じないので実用性のある発泡成形品が得られない。また、発泡剤の添加割合が50質量%よりも多いと、溶融樹脂中に発泡剤が入りきらず、ガスが吹き出てしまって所定の形状の発泡体が得難くなるので好ましくない。また、以上の発泡剤に、尿素系、有機酸系、金属塩系等の発泡助剤を併用することが出来る。
【0035】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物は、耐熱温度が70℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。耐熱温度が70℃未満では、高温環境下での保管および輸送時に発泡体および成形体が互いに融着したり、また発泡容器として使用する際、暖かい食品等の熱で容易に変形するからである。
【0036】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物を用いて得られる発泡体は、発泡倍率が2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることが特に好ましい。発泡倍率が2倍未満のものでは、発泡体を緩衝材として使用する場合、充分な緩衝効果を示すことが出来ないからである。また、一般的に発泡体のセル径は外観に影響を与える。本発明で得られる発泡体のセル径は3mm以下であり、より好ましくは1mm以下であり、0.5mm以下が特に好ましい。セル径が3mmを超えるセルがあると外観が良好でなくなる。
【0037】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物よりシートを得る方法としては、Tダイより溶融押出しするTダイ法が一般に用いられる、また、成形体を得る方法としては、インジェクション成形法、押出後のシートを加圧及び真空のもとで加熱し金型内にて成形する方法等いずれの方法も用いることが出来る。
【0038】
例えば、インジェクション成形法では、押出機の先端に取り付けたトレー状の金型に樹脂を押出し、押出しと同時に成形させることで分解性耐熱トレーが得られる。押出機の先端に取り付ける金型形状は、如何なる形状でもよく、例えば対象となる製品の形状に合った窪みを形成することもできる。この窪みの数は、トレー1枚当たり1個でも構わないが、梱包状況に合わせて複数個以上設けてもよい。また、Tダイ法によりシートを成形し、真空成形法、圧空成形法、熱プレス等の2次加工を施し所望の形状の生分解性耐熱成形体を得ることができる。
【0039】
また、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物を用いて発泡体を製造する方法としては、発泡剤を添加し押出成形と同時に発泡させる押出発泡法、インジェクション成形による発泡成形法、押出成形後加圧及び常圧のもとで加熱し発泡させる方法等いずれの方法も用いることが出来る。
【0040】
例えば、インジェクション成形による発泡成形法では、押出機の先端に取り付けたトレー状の金型に樹脂を押出し、押出しと同時に発泡成形させることで生分解性耐熱発泡トレーが得られる。押出機の先端に取り付ける金型形状は、如何なる形状でもよく、例えば対象となる製品の形状に合った窪みを形成することもできる。この窪みの数は、トレー1枚当たり1個でも構わないが、梱包状況に合わせて複数個以上設けてもよい。また、Tダイ発泡成形法によりシート状の発泡体を成形し、真空成形法、圧空成形法、熱プレス等の2次加工を施し所望の形状の生分解性耐熱発泡体を得ることができる。
【0041】
また、ネット状の生分解性耐熱発泡体を製造する一例としては、円周上に多数のノズルを設けた外輪ダイと内輪ダイとが互いに逆方向に回転する円形回転ダイから押出発泡させる方法があり。この方法により、多数の発泡細条を形成し、これをその押出直後に外輪ダイから押し出された多数の発泡ストランドと互いに交差させて融着させることによって、編み目構造の筒型の発泡ネットを形成し、冷却後にこれを所望の形状に切り開いてネット状の生分解性耐熱発泡体を得ることが出来る。
【0042】
また、発泡粒子を得る場合は、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物をペレット状またはビーズ状粒子とした後、発泡剤および発泡助剤を含浸させる。含浸された粒子は通常加熱により第1次の発泡で発泡倍率10〜50倍の発泡粒子とし、次いでこれらを金型に充填し再び加熱して2次発泡させ、所望の成形体とする。1次発泡および2次発泡での加熱方法は、通常の加熱方法を用いることが出来るが、熱容量の大きい水蒸気を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物より得られる成形品および発泡製品は、例えば弁当箱、食器、カップラーメンの様な熱湯を注ぐカップ、コーヒーやお茶のカップ、鮮魚・青果・豆腐・惣菜等の食品用容器やトレイ、トロ箱、乳製品用の容器、家電製品や精密製品および工業製品等の緩衝容器や緩衝材、遮光材、防音材、断熱材、フィルター、クッション材として使用される。
【0044】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例および比較例において用いた試験方法は以下の通りである。
(1)示差走査型熱量測定
パーキンエルマー社製7シリーズDSC測定装置を用い試料量7mgにおいて降温時の結晶化由来の発熱ピークを観察し、ポリ乳酸換算で10J/g以上の発熱ピークが発生する最大降温速度を調べた。
(2)耐熱温度の測定
得られたシートおよび発泡体を幅10mm厚さ3mm長さ125mmに切り出しJIS K7195に準ずる方法で行い、ヒートザグ値が10mm未満となる最高温度を耐熱温度とした。
(3)発泡セルの評価
得られた発泡体の5断面を光顕観察により測定し、全ての発泡セル径が0.5mm未満のものを◎とし、発泡セル径の最大値が0.5mm以上3mm未満のものを○とし、発泡セル径の最大値が3mm以上6mm未満のものを△とし、6mm以上のものが存在する発泡体を×とした。
【0045】
実施例1
表1に示す配合比で、シリンダー直径40mm、L/D=36の単軸押出機で溶融混合し樹脂組成物を得た。次にこれをTダイより押出し、厚さ1mm、幅380mmの組成物シートに成形しを得た。温度条件は、供給ゾーン200℃、可塑化ゾーン120℃、溶融ゾーン190℃、ダイ部105〜215℃であった。得られた樹脂組成物、シートの測定結果を表1に示す。
更に、表1に示す配合比で、シリンダー直径40mm、L/D=36の単軸押出機で溶融混合し、バレル途中から発泡剤としてブタンを5質量%圧入した後、Tダイより押出し、厚さ3mm幅380mmの発泡シートを得た。温度条件は、供給ゾーン200℃、可塑化ゾーン120℃、溶融ゾーン190℃、ダイ部105〜215℃であった。得られた発泡シートの測定結果を表1に示す。
【0046】
実施例2〜22、比較例1〜7
表1、2に示す配合比で、実施例1と同様の方法により、樹脂組成物、シートおよび発泡シートを得た。これら得られたシートおよび発泡シートの測定結果を表1、2に示す。
【0047】
実施例23〜25
表2に示す配合比で、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを10質量%、発泡助剤として尿素を30質量%添加した混合物をバレル途中から混入しTダイより押出し、厚さ0.2mm幅380mmの未発泡シートを得た。温度条件は、供給ゾーン200℃、可塑化ゾーン120℃、溶融ゾーン190℃、ダイ部105〜215℃であった。そして、得られた未発泡シートを一辺が200mmの正方形に切り出し、170℃のオーブン中に10〜60分放置して加熱発泡させることにより発泡体を得た。得られた発泡体の試験結果を表2に示す。
【0048】
実施例26〜28 表2に示す配合比になるように、二軸混練機(PCM30、池貝鉄工社製)を用い、シリンダー温度180℃で混練し、それぞれの樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物を回転式の反応容器に樹脂組成物2000質量部、発泡剤としてイソペンタン1200質量部、メタノール240質量部を仕込み、密封した後、反応容器の回転数10回/分、昇温速度20℃/時間の割合で昇温し、70℃に1時間保持した。その後、室温まで冷却し、発泡剤含浸樹脂組成物を取り出し、乾燥後、水蒸気(92℃、1分)で予備発泡させ、予備発泡粒子を1日熟成後、発泡成形機にて水蒸気圧0.5kg/cm2、加熱時間30秒の条件にて発泡成形体を得た。得られた発泡体の試験結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1〜22で得られたシートおよび発泡体は、耐熱温度がいずれも80℃以上であり、充分な耐熱性を有し、発泡セルも均一微細なものであった。これに対し比較例1〜7では、耐熱温度が70℃以下であり、また、比較例2〜7では、発泡セルが巨大化し、実用性に乏しいものであった。実施例23〜28の方法で得られた発泡体の耐熱温度は、いずれも80℃以上であり充分な耐熱性を有するものであり、発泡セルも均一微細なものであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の生分解性耐熱樹脂組成物は、ポリ乳酸を主成分とする樹脂組成物であって、示差走査型熱量(DSC)測定の降温過程においてポリ乳酸換算で10J/g以上である結晶化由来の発熱ピークが降温速度30℃/min以上で発生することで、高耐熱性の実用性能を有した発泡体を供することが出来る。また、本発明の生分解性耐熱樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂を主原料とするため、コンポストによる分解が可能であるばかりでなく、使用後には加水分解処理を施すことで、減容化が可能となり、運搬や集積が容易になり、現在問題となっているポリスチレン製、ポリエチレン製およびポリウレタン等の発泡体のゴミ処理問題を解決する非常に環境に優しい生分解性耐熱樹脂組成物といえる。

Claims (5)

  1. L体とD体のモル比が96/4以上、又は4/96以下であるポリ乳酸を主成分とする樹脂組成物であって、ポリ乳酸20質量%以上と、結晶核剤7〜40質量%と、架橋剤0.1〜5質量%とからなり、示差走査型熱量(DSC)測定の降温過程において、ポリ乳酸換算で10J/g以上の結晶化由来の発熱ピークが、降温速度30℃/min以上で発生することを特徴とする生分解性耐熱樹脂組成物。
  2. 架橋剤がイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1記載の生分解性耐熱樹脂組成物。
  3. 請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形して得られたシート。
  4. 請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形して得られた成形体。
  5. 請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物を押出発泡法、又はインジェクション成形による発泡成形法を用いることにより得られた発泡体。」
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