JP5515789B2 - 透明パターン電極、該電極の製造方法、該電極を用いた有機電子デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性及び透明性に優れた透明パターン電極、該電極の製造方法、該電極を用いた有機電子デバイスおよびその製造方法に関する。
近年、薄型TV需要の高まりに伴い、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと呼ぶ。)、フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。また、テレビ以外でもタッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。
従来、透明電極として、Au、Ag、Pt、Cu等の各種金属薄膜や、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等の金属酸化物薄膜、TiN、ZrN、HfN等の導電性窒化物薄膜、LaB等の導電性ホウ素化物薄膜が知られており、またこれらを組み合わせたBi/Au/Bi、TiO/Ag/TiO等の各種電極も知られている。無機物以外にも、CNT(カーボンナノチューブ)や導電性高分子を使用した透明電極も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、上述した金属薄膜、窒化物薄膜、ホウ素物薄膜及び導電性高分子薄膜は、光透過性と導電性の特性が両立し得ないため、電磁波シールド等の特殊な技術分野や、比較的高い抵抗値でも許容されるようなタッチパネル分野においてのみ使用されていた。
一方、金属酸化物薄膜は光透過性と導電性との両立が可能で耐久性にも優れるため、透明電極の主流となりつつある。特にITOは光透過性と導電性とのバランスがよく、酸溶液を用いたウェットエッチングによる電極微細パターン形成が容易であることから、各種オプトエレクトロニクス用の透明電極として多用されている。上記のITO等に代表される酸化物導電体は、スパッタリング法等の真空プロセスやゾル−ゲル法等の液相法により基体表面に透明導電膜を形成する。スパッタリング法等の真空プロセスで透明導電膜を形成するには、高価な設備が必要である。一方、液相法では、高い導電性を得るためには500℃以上の高温処理が必要である。
それ以外の透明電極としては、金属ナノワイヤを用いた微細メッシュからなる透明電極が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特に銀を用いた金属ナノワイヤでは、塗布等の簡便な形成方法で、銀本来の高い導電率により良好な導電性と透明性を両立することができる。
透明電極を、LCD、EL素子、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル等の各種デバイス用電極として用いるためには、透明電極のパターン形成が必須である。金属ナノワイヤを用いた透明電極のパターン形成方法としては、電気伝導性マイクロワイヤを含む印刷インキを用いる方法(例えば、特許文献2参照。)、フォトリソグラフィーを用いたナノワイヤのパターニング方法等が挙げられる。
しかし、直接金属ナノワイヤをパターン印刷する方法では、バインダーに起因する金属ナノワイヤ間の接触抵抗増大により導電性が低下したり、従来のフォトリソグラフィーを用いたエッチングによるパターニングでは、レジストパターンを形成し、露光、現像、エッチング、レジスト剥離、後処理とエッチングの前工程及び後工程が多く、エッチング溶液中で行うため、レジストの膨張、剥離によるエッチング精度低下を呈することがある。また、厳密な溶液の温度管理も必要である。さらに、金属ナノワイヤの微細メッシュ間に入り込んだレジストの除去が不十分になることがあり、その結果透過率が低下したり、また現像やレジスト除去等の液処理で金属ナノワイヤも一緒に脱離したりして、従来のパターン形成方法では満足いくものではなかった。透明電極のパターン形成方法としては、有機溶剤に可溶な導電性高分子を無機導電層にパターン印刷し、エッチングしてパターン形成する方法について記載があるが(特許文献3参照)、導電層はインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛、酸化錫等の無機酸化物が主であり、銀を用いた金属ナノワイヤについては一切触れられていない。
米国特許出願公開第2007/0074316号明細書 特表2003−515622号公報 特開2006−236626号公報
「透明導電膜の技術」第80頁(オーム社出版局)
本発明の目的は、前記事情に鑑みてなされたものであり、導電性及び透明性に優れたパターン電極、該電極を用いた有機電子デバイスおよびそれらの製造方法を簡便に提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.透明支持体上に、金属繊維を含有する導電性金属層を有し、更にπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーおよび下記ポリマー(A)を含有する導電性ポリマー層を有する透明パターン電極において、該導電性金属層と該導電性ポリマー層が、パターン像様の積層構造を有することを特徴とする透明パターン電極。
Figure 0005515789
〔式中、X、X、Xはそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。ポリマー(A)を構成する全モノマーのモル数の合計を100としたとき、l、m、及びnは、当該ポリマー(A)を構成するそれぞれのモノマーの構成率(モル%)を表し、50≦l+m+n≦100であり、l、m、nはそれぞれ0〜100である。〕
2.前記金属繊維が、金属ナノワイヤであることを特徴とする前記1に記載の透明パターン電極。
3.前記1または2に記載の透明パターン電極の製造方法であって、透明支持体上に、導電性金属層を一様に形成する工程、次に導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成する工程、該導電性ポリマー層を固定化する工程、次に該支持体上の導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層を除去する工程、を少なくとも有することを特徴とする透明パターン電極の製造方法。
4.前記導電性ポリマー層を固定化する工程が加熱処理工程であることを特徴とする前記3記載の透明パターン電極の製造方法。
5.前記導電性金属層を除去する工程が、物理的除去によって行われることを特徴とする前記3または4に記載の透明パターン電極の製造方法。
6.前記導電性金属層を除去する工程が、化学エッチング処理によって行われることを特徴とする前記3または4に記載の透明パターン電極の製造方法。
7.前記3〜6の何れか1項に記載の透明パターン電極の製造方法により形成された電極を第一電極とし、該第一電極の上に有機機能層を形成する工程、該有機機能層の上に対向電極として第二電極を形成する工程、を少なくとも有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
8.前記7に記載の有機電子デバイスの製造方法によって形成されたことを特徴とする有機電子デバイス。
本発明により、平滑性、導電性及び透明性に優れた透明パターン電極、および該電極を用いた有機電子デバイスおよびそれらの製造方法を簡便に提供することができる。
本発明の透明パターン電極の形成工程を示す断面構成図である。 本発明の透明パターン電極の形成工程を示す平面構成図である。
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
〔透明パターン電極〕
本発明の透明パターン電極は、導電性金属層と導電性ポリマー層が、像様の積層構造を有することを特徴とする。
本発明の透明パターン電極の形成工程を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の透明パターン電極の形成工程を示す構成断面図であり、図2は、本発明の透明パターン電極の形成工程を示す構成平面図である。
図1,2において、透明支持体10上に、導電性金属層1を形成し、次に導電性金属層の上に導電性ポリマー層2をパターン状に形成した後、熱処理を施すことに導電性ポリマー層を固定化し、導電性ポリマー層のない部分の導電性金属層を除去することにより、導電性金属層と導電性ポリマー層が、像様の積層構造を有する透明パターン電極20を形成することが出来る。
像様の積層構造を形成する方法としては、例えば、透明支持体上に導電性金属層を一様に形成し、次に導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成したのち、導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層を物理的除去または化学エッチング処理により除去する方法が挙げられる。
導電性金属層を一様に形成する方法としては、金属繊維を含む分散液を塗布、乾燥して膜形成する液相成膜法であれば特に制限はなく、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の塗布法を用いることが好ましい。
導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成する方法としては、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーとポリマー(A)と水系溶媒とを少なくとも含んでなる塗布液をパターン状に塗布、乾燥することで形成することが好ましい。
導電性ポリマーとポリマー(A)を含んでなる塗布液中の固形分の濃度は0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが、液の停滞安定性、塗布膜の平滑性や、リーク防止効果の発現の視点で、より好ましい。
パターン状に塗布する方法としては、凸版(フレキソ)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。四角形等の単純なパターンであれば、ダイコーターを用いた間欠塗布等で行ってもよい。
導電性ポリマーとポリマー(A)を含有する導電性ポリマー層の塗布乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。100nmを切る領域では導電性の低下が大きくなることから100nm以上であることがより好ましく、対向電極との電極間電流リーク防止を高める視点からは200nm以上であることがさらに好ましい。また、高い透過率を維持する視点から1000nm以下であることがより好ましい。
塗布した後、適宜乾燥処理を施す。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電性ポリマー含有層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80から150℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。
続く導電性ポリマー層のない部分の導電性金属層を除去する際に、該導電性ポリマー層を有する部分と有しない部分との領域を区分することが必要であり、導電性ポリマー層を固定化することが必要である。
固定化方法としては、導電性ポリマー層を全く溶解しなくする方法や、より難溶性にする方法が挙げられる。本発明における固定化方法としては、導電性ポリマー層を加熱処理により、難溶性或いは不溶性化する方法が好ましい。この加熱処理は、前述の乾燥処理と同時に行ってもよい。
特に、ポリアニオンがアニオン性基として、スルホ基を有するポリアニオンである場合、塗布後乾燥処理により、膜を形成した後に、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上の追加の加熱処理を施すことが好ましい。これにより、導電性ポリマー層の固定化が行われ、洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上する。
本発明における導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層を除去する方法としては、物理的除去または化学エッチング処理により行うのが好ましい。導電性ポリマー層は導電性金属層を被覆して金属繊維の脱落を防ぎ、導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層のみが除去される。
物理的に除去する方法としては特に限定はなく、例えば面状又はロール状のスポンジを使って水中で手動又は自動的に擦って除去する方法や、面状の布ブラシ又は線状に起毛された枠付きのブラシを固定して、これに電極面を水中で当接して、上下に手動又は自動的に擦りながら除去する方法、洗浄液を満たした洗浄槽内に電極基板を垂直に保持した後、当該洗浄槽の底壁または側壁に設けてある超音波振動子を振動させ、前記洗浄液を介して伝搬する超音波エネルギーで洗浄する超音波洗浄方法、直線移動する基板に洗浄液を供給するとともに、当該洗浄液に適宜の周波数の超音波を伝搬させて洗浄する流水式の超音波洗浄方法、あるいは、前記した流水式の超音波洗浄における洗浄液供給手段に加えて高圧液体を噴射する高圧洗浄ノズルを設けた組み合わせの洗浄方法等を用いることができる。
化学エッチング処理により除去する方法としては、導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成した電極基板をエッチング液で処理することにより、導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層のみをエッチングすることで得られる。エッチング液の組成としては、一般的な金属エッチング用処理液を用いることができるが、取り扱いの安全性および、金属繊維特に銀を用いた金属ナノワイヤのエッチング性の観点から、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理に使用する漂白定着液を好ましく用いることができる。溶液は水溶液であることが好ましいが、下記に記載される漂白剤や定着剤等を溶解することができれば、エタノール等の有機溶媒でもよい。
漂白定着液において用いられる漂白剤としては、公知の漂白剤も用いることができ、特に鉄(III)の有機錯塩(例えばアミノポリカルボン酸類の錯塩)、またはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、過硫酸塩、過酸化水素等が好ましい。
これらのうち、鉄(III)の有機錯塩は迅速処理と環境汚染防止の観点から特に好ましい。鉄(III)の有機錯塩を形成するために有用なアミノポリカルボン酸、またはそれらの塩を列挙すると、生分解性のあるエチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、メチルイミノジ酢酸をはじめ、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸等のほか、欧州特許0789275号公報の一般式(I)または(II)で表される化合物を挙げることができる。
これらの化合物はナトリウム、カリウム、チリウムまたはアンモニウム塩のいずれでもよい。これらの化合物の中で、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸はその鉄(III)錯塩が好ましい。これらの第2鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用してもよいし、第2鉄塩、例えば硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄等とアミノポリカルボン酸等のキレート剤とを用いて溶液中で第2鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤を、第2鉄イオン錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄錯体の中でもアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましく、その添加量は0.01〜1.0モル/リットル、好ましくは0.05〜0.50モル/リットル、さらに好ましくは0.10〜0.50モル/リットル、さらに好ましくは0.15〜0.40モル/リットルである。
漂白定着液に使用される定着剤は、公知の定着剤、即ちチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール等のチオエーテル化合物及びチオ尿素類等の水溶性のハロゲン化銀溶解剤であり、これらを1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウムの如きハロゲン化物等の組み合わせからなる特殊な漂白定着剤等も用いることができる。本発明においては、チオ硫酸塩特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。1リットル当たりの定着剤の量は、0.3〜2モルが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0モルの範囲である。
本発明に使用される漂白定着液のpH領域は、3〜8が好ましく、さらには4〜7が特に好ましい。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。
本発明の透明パターン電極における導電部の全光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上であることが望ましい。全光線透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
本発明の透明パターン電極における導電部の電気抵抗値としては、表面比抵抗として1000Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
〔透明支持体〕
本発明に用いられる透明支持体としては、特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、高い光透過性を有していることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明支持体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。フィルム基材が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、フィルム基材には必要に応じてガスバリア層が予め形成されていてもよいし、ハードコート層が予め形成されていてもよい。ガスバリア層の形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物が使用できる。これらの材料は、水蒸気バリア機能のほかに酸素バリア機能も有する。特にバリア性、耐溶剤性、透明性が良好な窒化シリコン、酸化窒化シリコンが好ましい。また、バリア層は必要に応じて多層構成とすることも可能である。ガスバリア層の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
前記ガスバリア層を構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層当たり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層当たり10nm〜200nmである。
ガスバリア層は支持体の少なくとも一方の面に設けられ、電極層側に設けられるのが好ましく、両面に設けられるのがより好ましい。
〔導電性金属層〕
本発明の導電性金属層は、金属繊維を含有することを特徴とする。
本発明の金属繊維において、繊維径の短径がnmサイズであれば、ロッド状やワイヤ状であってもよいが、導電性及び透明性の観点からワイヤ状の金属ナノワイヤであることが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする、原子スケールからnmサイズの直径を有する線状構造体のことをいう。
本発明に用いられる金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。導電性金属層の金属ナノワイヤは相互に接触していることが好ましく、さらにメッシュ状に接触していることが好ましい。金属ナノワイヤを相互に接触、またはメッシュ状に接触させた導電性金属層は、前記液相成膜法を用いれば容易に得ることができる。金属ナノワイヤの目付け量は5mg/m以上500mg/m以下であるのが好ましく、10mg/m以上200mg/m以下であるのがより好ましい。金属ナノワイヤの目付け量を5mg/m以上とすることで、金属ナノワイヤ同士の接触が良くなり導電性が向上し、500mg/m以下とすることで、金属ナノワイヤにより遮光される部分が減少し透明性が向上する。
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等を参考にすることができる。銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
〔導電性ポリマー層〕
本発明における導電性ポリマー層は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーおよびポリマー(A)を含有することを特徴とする。
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン性基を有する構成単位とアニオン性基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン性基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン性基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホ基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で5分以上の加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン性基を有さないポリマーにアニオン性基を直接導入する方法、アニオン性基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン性基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン性基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン性基含有重合性モノマーにアニオン性基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。アニオン性基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
2nd.ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシル基(水酸基)含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。前記ヒドロキシル基(水酸基)含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
(ポリマー(A))
本発明におけるポリマー(A)は、前記(繰り返し)単位構造を有する。
前記式中、X、X、Xはそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。ポリマー(A)を構成する全モノマーのモル数の合計を100としたとき、l、m、及びnは、当該ポリマー(A)におけるそれぞれのモノマーの構成比率(モル%)を表し、50≦l+m+n≦100であり、l、m、nはそれぞれ0〜100である。
本発明の実施態様としては、ポリマー(A)の数平均分子量が5000〜100000の範囲内であり、かつ分子量が1000以下の含有率が0〜5質量%の範囲内であることが好ましい。さらに、前記ポリマー(A)において、前記構成率mが、70≦m≦100の範囲内であることが好ましい。また、前記ポリマー(A)が、水系溶媒に可溶であることが好ましい。水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒をいう。勿論、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶剤であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
このポリマー(A)において、分子量が1000以下の分子の含有量が0〜5質量%以下とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、又は低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適性から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
本発明に係るポリマー(A)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、当該ポリマーが溶解すれば特に制限はなく、THF、DMF、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
本発明に係るポリマー(A)の数平均分子量は、3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
本発明に係るポリマー(A)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。
本発明に係る数平均分子量、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略す。)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
なお、分子量1000以下の含有量は、GPCにより得られた分布において、分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。
リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
導電性ポリマーとポリマー(A)の比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(A)が30〜900質量部であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。これにより、透過率を低下させることなく、ポリマー(A)の導電性ポリマーに対する導電性アシスト効果が発現され、高い透明性と導電性が両立できる。
また、本発明の透明パターン電極においては、導電性ポリマー層自身にも導電性を有するので、導電性ポリマー層が導電性金属層の金属繊維からなるメッシュ間隙を埋めることで、透明パターン電極における導電部の面内電流分布が、導電性金属層の高い導電性を維持したまま均一化される。
導電性ポリマー層を塗布した後、固定化処理として、適宜加熱乾燥処理を施すことが好ましい。加熱乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電性ポリマー含有層が損傷しない範囲の温度で加熱乾燥処理することが好ましい。特に、導電性ポリマーが有するポリアニオンがスルホン酸を有するポリアニオンである場合、塗布乾燥により、膜を形成した後に、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上の追加の加熱処理を施すことが好ましい。これにより、導電性ポリマー含有層の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上する。また、保存性も向上する。
この導電性ポリマー含有層の耐久性が向上する技術的理由は定かではないが、導電性ポリマーと本発明のポリマー(A)が混在する中で、加熱処理を施すことにより、脱水反応が進行し、架橋構造を形成するものと考えられる。本発明は、ポリマー(A)を構成するモノマーのl、m、nの合計が50%以上であることが必要であることを見いだしたものであるが、架橋密度が関与しているものと推定している。
処理温度としては110〜160℃であることがより好ましく、処理時間としては15分以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性を考えると120分以下であることが好ましい。
〔有機電子デバイス〕
本発明における有機電子デバイスの製造方法としては、透明支持体上に、導電性金属層を一様に形成する工程、次に導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成する工程、加熱処理する工程、次に該導電性ポリマー層がない導電性金属層を除去し第一電極を形成する工程、該第一電極の上に有機機能層を形成する工程、該有機機能層の上に対向電極として第二電極を形成する工程、を少なくとも有することを特徴とする。
本発明に係る有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
以下、本発明の有機電子デバイスが、有機EL素子および有機光電変換素子である場合のその構成要素について説明する。
<有機機能層構成>
(有機EL素子)
〔有機発光層〕
本発明において有機発光層を有する有機電子素子は、有機発光層に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層、ホールブロック層、電子ブロック層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。本発明の導電性ポリマー含有層はホール注入層として働くことも可能であるので、ホール注入層を兼ねることも可能だが、独立にホール注入層を設けても良い。
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第一電極部)/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(ii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(iii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第二電極部)
(iv)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
(v)(第一電極部)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
ここで、発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
〔第二電極部〕
本発明の第二電極は有機EL素子においては陰極となる。本発明の第二電極部は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
第二電極部の導電材として金属材料を用いれば第二電極側に来た光は反射されて第一電極部側にもどる。第一電極部の金属ナノワイヤは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが第二電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となりより取り出しの効率が向上する。
<有機光電変換素子>
有機光電変換素子は、第一電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、第二電極部が積層された構造を有する。
光電変換層と第二電極部との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換―無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
本発明の光電変換素子を、太陽電池などの光電変換材料として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層(タンデム型)して利用してもよい。
また、光電変換材料は、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
実施例1
《透明パターン電極の作製》
〔透明パターン電極TCF−1の作製;比較例〕
金属繊維として、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、ポリビニルピロリドンK30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
調製した銀ナノワイヤ分散液を、両面にガスバリア層を設けた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、銀ナノワイヤの目付け量が50mg/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液をスピンコーターを用いて塗布し、乾燥させた。続いて、銀ナノワイヤの塗布層にカレンダー処理を施した後、公知のフォトリソグラフィー法により導電部パターン辺長20mm・パターン間隔10mmの正方形タイル状透明パターン電極TCF−1を作製した。作製した透明パターン電極TCF−1の導電部を目視で確認したところ、レジスト残りと思われる導電部の着色および部分的に金属繊維の脱離が認められた。
〔透明パターン電極TCF−2の作製;比較例〕
グラビア塗布機Kプリンティングプルーファー(松尾産業株式会社製)に、印刷パターン辺長20mm・パターン間隔10mmの正方形タイル状パターンを形成した版を取り付け、TCF−1の作製で用いた銀ナノワイヤ分散液の粘度をカルボキシメチルセルロースナトリウム(SIGMA−ALDRICH社製;C5013 以下、CMCと略記する)で0.1Pa・s(100cP)に調整し、両面にガスバリア層を設けた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、銀ナノワイヤの目付け量が50mg/mとなるように印刷回数を調整してグラビア印刷を行い、正方形タイル状透明パターン電極TCF−2を作製した。
〔透明パターン電極TCF−3の作製;本発明〕
TCF−1の作製で用いた銀ナノワイヤ分散液を、両面にガスバリア層を設けた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、銀ナノワイヤの目付け量が50mg/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液をスピンコーターを用いて塗布し、乾燥させた。続いて、銀ナノワイヤの塗布層にカレンダー処理を施した後、下記の方法で調製した導電性ポリマー液P−1を、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファー(松尾産業株式会社製)に、印刷パターン辺長20mm・パターン間隔10mmの正方形タイル状パターンを形成した版を取り付け、銀ナノワイヤ塗布層の上に乾燥膜厚が300nmとなるように印刷回数を調整してグラビア印刷を行い、ホットプレートで120℃20分間加熱処理を施して正方形タイル状の導電性ポリマー層パターンを形成した。さらに、得られたフィルムの導電性ポリマー層のない部分の銀ナノワイヤ塗布層を、ロール状のスポンジを用いて水中で手動で擦って除去したのち、水洗、乾燥させて、正方形タイル状透明パターン電極TCF−3を作製した。
(導電性ポリマー液P−1の調製)
(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、更に4時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分液ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50 v/v% メタノール/水混合溶媒を5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行った。この操作を3回行った後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、数平均分子量<1000の含量0%、の水溶性バインダー樹脂1を2.60g(収率84%)得た。
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
<GPC測定条件>
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
得られた水溶性バインダー樹脂1を純水に溶解し、固形分50%の水溶性バインダー樹脂1水溶液を調製した。
次いで、下記のようにして導電性ポリマー液P−1を調製した。
(導電性ポリマー液P−1)
水溶性バインダー樹脂1水溶液(固形分50%水溶液) 0.14g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
〔透明パターン電極TCF−4の作製;本発明〕
TCF−3において、得られたフィルムの導電性ポリマー層のない部分の銀ナノワイヤ塗布層を、超音波洗浄機US−10PS(SND社製)を用いて、水中で5分間超音波洗浄を行い除去したのち、水洗、乾燥させた以外はTCF−3と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−4を作製した。
〔透明パターン電極TCF−5の作製;本発明〕
TCF−3において、得られたフィルムの導電性ポリマー層のない部分の銀ナノワイヤ塗布層を、下記の方法で調製した銀エッチング液BF−1に10秒間浸漬して除去したのち、水洗、乾燥させた以外はTCF−3と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−5を作製した。
〈銀エッチング液BF−1の調製〉
エチレンジアミン4酢酸第2鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5g
純水で1Lに仕上げ、硫酸またはアンモニア水でpHを5.5に調整し、銀エッチング液BF−1を調製した。
〔透明パターン電極TCF−6の作製;本発明〕
TCF−5において、銀ナノワイヤの目付け量が100mg/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液をスピンコーターを用いて塗布した以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−6を作製した。
〔透明パターン電極TCF−7の作製;本発明〕
TCF−5において、導電性ポリマー液P−1を、下記の様にして調製した導電性ポリマー液P−2に変更する以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−7を作製した。
(導電性ポリマー液P−2)
ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(数平均分子量2万、固形分50%水溶液)
0.14g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
〔透明パターン電極TCF−8の作製;本発明〕
TCF−5において、導電性ポリマー液P−1を、下記の様にして調製した導電性ポリマー液P−3に変更する以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−8を作製した。
(導電性ポリマー液P−3)
ポリヒドロキシエチルビニルエーテル(数平均分子量2万、固形分50%水溶液)
0.14g
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
〔透明パターン電極TCF−9の作製;比較例〕
TCF−5において、水溶性バインダー樹脂をヒドロキシエチルアクリレート(49mol%)、メチルアクリレート(51mol%)の共重合ポリマーとした導電性ポリマー液P−5とした以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−9を作製したところ、銀エッチング液BF−1に10秒間浸漬中に導電性ポリマー層ごと溶出し、パターン電極を作製することが出来なかった。
〔透明パターン電極TCF−10の作製;本発明〕
TCF−5において、導電性ポリマー液を下記の様にして調製した導電性ポリマー液P−4とした以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−10を作製した。
(PEDOT/ナフィオン分散液の作製)
142.68g(16.03ミリモルのナフィオンモノマー単位SE−10072:Dupont社製)及び173.45g脱イオン水を500mlフラスコへ注ぎ込んだ。
0.0667g硫酸第二鉄水和物を脱イオン水で12.2775gの総質量へ溶解することによって硫酸第二鉄溶液を調製した。
次に1.40gの硫酸第二鉄溶液及び1.72g(7.224ミリモル)の過硫酸ナトリウムをフラスコに加えて、良く撹拌した。フラスコ内容物を、500ml3首フラスコ中へ注ぎ込んだ。次に、混合物を反応容器中で30分間撹拌した。0.63ml(5.911ミリモル)の3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応混合物に撹拌しながら加えた。重合を約23℃で撹拌しながら進行させた。1時間7分後に、重合液体は非常に濃い青色に変わった。
この水性PEDOT/ナフィオン重合液体100gに陰イオン交換体(Bayre AG社製;Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG社製;Lewatit S100)5.0gを添加し、8時間攪拌した。イオン交換体をろ過によって取除いた。
乾燥固体の質量分析に基づいて固形分1.89質量%の10gのPEDOT/ナフィオン分散液を作製した。
(導電性ポリマー液P−4)
水溶性バインダー樹脂1水溶液(固形分20%水溶液) 0.35g
PEDOT/ナフィオン分散液(固形分1.89%) 1.59g
〔透明パターン電極TCF−11の作製;本発明〕
グラビア塗布機Kプリンティングプルーファー(松尾産業株式会社製)に、印刷パターン辺長20mm・パターン間隔10mmの正方形タイル状パターンを形成した版を取り付け、銀ナノワイヤからなる正方形タイル状透明パターン電極TCF−2の上に、丁度重なるように、導電性ポリマー液P−1を乾燥膜厚が300nmとなるように印刷回数を調整してグラビア印刷を行い、正方形タイル状の導電性ポリマー層パターンを形成した後、ホットプレートで120℃20分間加熱処理を施して正方形タイル状透明パターン電極TCF−11を作製した。
〔透明パターン電極TCF−12の作製;本発明〕
TCF−5において、水溶性バインダー樹脂をヒドロキシエチルアクリレート(70mol%)、メチルアクリレート(30mol%)の共重合ポリマーとした導電性ポリマー液P−6とした以外はTCF−5と同様にして、正方形タイル状透明パターン電極TCF−12を作製した。
《透明パターン電極の測定及び評価》
下記方法で、作製した各透明パターン電極の導電部の透過率、表面比抵抗について測定し評価した。
(透過率)
透過率は、東京電色社製AUTOMATICHAZEMETER(MODEL TC−HIIIDP)を用いて、透明電極の全光線透過率を測定した。
(表面比抵抗)
表面比抵抗は、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて透明電極の表面比抵抗を四端子法で測定した。
《有機EL素子の作製》
作製した各透明パターン電極において、パターン辺長20mmの正方形タイル状透明パターン一個が中央に配置される様に30mm角に切り出し、第一電極(陽極)に用いて、以下の手順でそれぞれ有機EL素子を作製した。
切り出した透明パターン電極を市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、以下の手順で各発光層を設けた。
まず、真空度1×10−4Paまで減圧した後、下記α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
下記Ir−1が13質量%、下記Ir−14が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−14及び下記化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
次いで、下記E−66が10質量%になるように、E−66及び化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
その後、下記M−1を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成し、更にCsFを膜厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
各層形成に用いた化合物を下記に示す。
Figure 0005515789
形成した電子輸送層の上に、第一電極用外部取り出し端子および15mm×15mmの第二電極(陰極)形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの第二電極を形成した。
さらに、第一電極及び第二電極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き第二電極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子を作製した。
作製した各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して輝度が1000cd/mになるよう発光させ、発光状態を目視評価した。
測定及び評価の結果を表1に示す。
Figure 0005515789
表1に示した結果から明らかなように、本発明の構成を取らない透明パターン電極では、導電性が低かったり、透過率の低下が見られ、また本発明の構成を取らない透明パターン電極を用いて作製した有機EL素子は、電流リークにより発光しなかったり、電界集中による不均一な発光になる。一方、本発明の透明パターン電極では、透明性及び導電性に優れており、また本発明の透明パターン電極を用いた有機EL素子は、導電性ポリマー層による電流リーク防止と導電部の面内電流分布均一化の効果により、いずれも発光エリア内で均一に発光することができる。
1 導電性金属層
2 導電性ポリマー層
10 透明支持体
20 透明パターン電極

Claims (8)

  1. 透明支持体上に、金属繊維を含有する導電性金属層を有し、更にπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーおよび下記ポリマー(A)を含有する導電性ポリマー層を有する透明パターン電極において、該導電性金属層と該導電性ポリマー層が、パターン像様の積層構造を有することを特徴とする透明パターン電極。
    Figure 0005515789
    〔式中、X、X、Xはそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。ポリマー(A)を構成する全モノマーのモル数の合計を100としたとき、l、m、及びnは、当該ポリマー(A)を構成するそれぞれのモノマーの構成率(モル%)を表し、50≦l+m+n≦100であり、l、m、nはそれぞれ0〜100である。〕
  2. 前記金属繊維が、金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の透明パターン電極。
  3. 請求項1または2に記載の透明パターン電極の製造方法であって、透明支持体上に、導電性金属層を一様に形成する工程、次に導電性金属層の上に導電性ポリマー層をパターン状に形成する工程、該導電性ポリマー層を固定化する工程、次に該支持体上の導電性ポリマー層がない部分の導電性金属層を除去する工程、を少なくとも有することを特徴とする透明パターン電極の製造方法。
  4. 前記導電性ポリマー層を固定化する工程が加熱処理工程であることを特徴とする請求項3記載の透明パターン電極の製造方法。
  5. 前記導電性金属層を除去する工程が、物理的除去によって行われることを特徴とする請求項3または4に記載の透明パターン電極の製造方法。
  6. 前記導電性金属層を除去する工程が、化学エッチング処理によって行われることを特徴とする請求項3または4に記載の透明パターン電極の製造方法。
  7. 請求項3〜6の何れか1項に記載の透明パターン電極の製造方法により形成された電極を第一電極とし、該第一電極の上に有機機能層を形成する工程、該有機機能層の上に対向電極として第二電極を形成する工程、を少なくとも有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
  8. 請求項7に記載の有機電子デバイスの製造方法によって形成されたことを特徴とする有機電子デバイス。
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