JP5402447B2 - 有機電子デバイスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層構成を有する有機電子デバイスとその製造方法に関する。より詳しくは、デバイスの効率や保存性を劣化させることなく、電極間の短絡やダークスポットの発生の防止、及びデバイスの寿命を改善した有機電子デバイスであって、さらに、大面積化にも対応可能な有機電子デバイスに関し、またその製造方法に関する。
π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーは、帯電防止材料として利用されたり、あるいは、有機EL素子や有機太陽電池の、ホール注入材料、ホール輸送材料として各種電極の一部として利用されたりしている。
有機EL素子や有機太陽電池のような有機電子デバイスにおいては、その膜厚が100nm程度であるために、電極に数十nmをこえるようなナノレベルの突起があると電極間でリークが生じたり、リークしなくても、その部分に電界が集中してダークスポットや素子寿命低下の原因となったりする。
有機EL素子や有機太陽電池のような有機電子デバイスにおいては、その電極として、表面凹凸を制御したITOやZnOにホール注入材料、ホール輸送材料としてπ共役系導電性高分子層を積層することが多い。しかし、電極のイレギュラーな突起や異物付着によるトラブルは十分には防げてはいない。特に、デバイスを大面積化するには、その発生頻度が大きく影響するため、問題が大きい。
さらに、大面積化を考えた場合、ITOやZnOでは導電性が足りず、給電端子や集電端子から遠くなるとITOやZnOでの電圧降下が大きくなり、十分な電荷を運べない。こうした大面積化の課題に対しては、光不透過の導電部と透光性窓部を有する金属グリッドなどの補助電極の使用が考えられるが、通常、こうしたグリッドは、ミクロンオーダーの凹凸がり、ナノオーダーの平滑性が要求される有機電子デバイスへの適用は難しい。
こうした電極の表面平滑性の課題に対して、導電性ポリマーを含有する層の膜厚をアップすることでイレギュラーな突起や異物付着などを埋めることが考えられるが、導電性ポリマーは通常可視光域にも吸収があるために、膜厚をアップすると透過率が低下してしまう(例えば特許文献1参照)。透過率の低下は、デバイスの効率の低下につながる。
特許文献2には、非水系で固有導電性ポリマー、ドーパント、合成ポリマー平坦化剤を含む、正孔注入層について開示さている。この合成ポリマーを併用する構成であれば透過率低下を抑えつつ、膜厚を厚くすることができる。しかし、非水系の合成ポリマーは通常導電性をアシストする効果がないため、少量混合するだけでも膜の導電性が大きく低下してしまい、膜厚を稼ぐレベルまでは増やせない。
さらに、導電性ポリマーと合成ポリマーを混合した溶剤系の塗布加工では、特に、膜厚を上げた際、ナノレベルで見たときの平滑性が悪く、リークや寿命に影響することがあった。また、有機機能層は塗布型の場合、通常、非水系の溶媒が用いられるが、非水系に溶解可能な合成ポリマーを用いると上層を塗布する際にダメージを受けやすい問題があった。
帯電防止に関する技術であるが、特許文献3には、(i)ポリチオフェン系重合体及びポリアニオンを含有し、かつ水性溶媒に溶解又は分散可能な導電性ポリマーと、(ii)水性溶媒に溶解又は分散可能なバインダー樹脂とで構成される帯電防止被覆層が開示されている。しかしながら、水性のバインダー樹脂であっても特許文献3で推奨される酸基含有ポリマーなどの大半のポリマーでは、非水系の合成ポリマーと同様に通常導電性をアシストする効果がないために、少量混合するだけでも膜の導電性が大きく低下してしまい、帯電防止膜としては問題ないが、電子デバイスの電極としては使えない。そのため、膜厚を稼ぐレベルまではポリマー成分を増やすことはできない。また、水性溶媒に分散可能なバインダー樹脂、例えば、水分散ポリエステルやアクリルラテックスでは、ポリチオフェン系重合体及びポリアニオンと混合すると分散が破壊されて液中に沈降を生じたり、塗布膜にした時に失透したりすることがあった。失透しない膜が形成できた場合も電子デバイスの電極として要求されるナノレベルで表面を見た場合は、分散粒子に起因すると思われる凹凸が見られ、リークや寿命に影響することがあった。水性溶媒に溶解可能なバインダー樹脂でも、例えば、セルロース系のバインダー樹脂ではポリアニオンとのインタラクションが強くて、混合すると液がゲル化したりすることがあった。また、わずかな相溶性の不足やインタラクションで、塗布膜の表面をナノレベルで見た場合には、凹凸が見られ、リークや寿命に影響することがあった。
さらに、電子デバイスの電極においては、電極上に機能層を形成する前に、異物除去などの目的で洗浄処理がなされるが、特許文献3で推奨される酸基含有ポリマーなど大半のポリマーでは、塗布膜を数十秒水につけるだけで膜が溶けてしまうことがあった。このように、電子デバイスの電極に利用できる導電性ポリマーと併用する水性溶媒に溶解可能なバインダー樹脂は見いだせていなかった。
同じく帯電防止に関する技術であるが、特許文献4には、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、特定の架橋点形成化合物と、溶媒とを含む帯電防止塗料が開示されている。この技術においては、特に、特定の架橋点形成化合物として文献記載の(b)化合物を利用する場合は、導電性をアシストする効果があり、架橋点形成化合物を大幅に増量しても、導電性は添加しない場合に比べて大きく劣化することはない。また、架橋点形成化合物を含有するためか、ある程度の洗浄耐性も有していた。
しかしながら、特許文献4に記載の技術は、面方向の導電性は良好であるが、本発明のような多層構成を有する有機電子デバイスの電極に適用した場合、層に対して垂直方向に電荷をやりとりせねばならないが、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動(有機ELにおいては駆動電圧の上昇)が見られた。さらに、架橋点形成化合物を利用しない場合に比べて保存性も劣化することが分かってきた。
また、特許文献3で推奨される酸基含有ポリマーを用いた場合も、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動が見られた。
特開2003−045665号公報 特表2008−533701号公報 特開2006−198805号公報 特開2006−143922号公報
本発明は、上記問題・事情にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、デバイスの効率や保存性を劣化させることなく、電極間の短絡やダークスポットの発生を防止し、デバイスの寿命、電極の洗浄耐性、透過率、及び駆動電圧を改善した有機電子デバイスであって、さらに、グリッド電極などの補助電極を併用可能とし、大面積化にも対応可能な有機電子デバイスを提供すること、また、その製造方法を提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段1〜8により解決される。
具体的に本発明によれば、手段7による有機電子デバイスの製造方法が提供される。
1.基板上に、対向する第1及び第2電極を有し、当該電極間に少なくとも一層の有機機能層を有する有機電子デバイスであって、少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層を有し、当該導電性ポリマー含有層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと、下記(繰り返し)単位構造を有するポリマー(A)とを含有することを特徴とする有機電子デバイス。
Figure 0005402447
式中、Xは水素原子又はメチル基、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、及びnは、当該ポリマー(A)を構成する全モノマーのモル数の合計を100としたときのそれぞれの構成率(モル%)を表し、50≦l+m+n≦100である。
2.前記ポリアニオンが、アニオン性基として、スルホ基を有することを特徴とする前記1に記載の有機電子デバイス。
3.前記ポリマー(A)の数平均分子量が5000〜100000の範囲内であり、かつ分子量が1000以下である同族体(分子)の含有率が0〜5質量%の範囲内であることを特徴とする前記1又は前記2に記載の有機電子デバイス。
4.前記ポリマー(A)において、前記構成率mが、70≦m≦100の範囲内であることを特徴とする前記1から前記3までのいずれか一項に記載の有機電子デバイス。
5.前記ポリマー(A)が、水系溶媒に可溶であることを特徴とする前記1から前記4までのいずれか一項に記載の有機電子デバイス。
6.前記導電性ポリマー含有層を有する電極が、さらに光不透過性の導電部と透光性窓部とから成る補助電極を有することを特徴とする前記1から前記5までのいずれか一項に記載の有機電子デバイス。
7.前記1から前記6までのいずれか一項に記載の有機電子デバイスを製造する有機電子デバイスの製造方法であって、前記π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと、前記ポリマー(A)と水系溶媒とを含んでなる塗布液を、基板上に塗布し、乾燥することによって形成することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
8.前記塗布液を前記基板上に塗布し、乾燥することによって形成された有機電子デバイスを、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上加熱処理を施すことを特徴とする前記7に記載の有機電子デバイスの製造方法。
本発明の上記手段により、デバイスの効率や保存性を劣化させることなく、電極間の短絡やダークスポットの発生を防止し、デバイスの寿命、電極の洗浄耐性、透過率、及び駆動電圧を改善した有機電子デバイスであって、さらに、グリッド電極などの補助電極を併用可能とし、大面積化にも対応可能な有機電子デバイスを提供することができる。また、その製造方法を提供することができる。
本発明は、特定の構造を有する水系溶媒に可溶なポリマー(A)を用いることにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと併用しても自身の膜としてナノレベルで平滑な膜を形成できる。これは、特定の構造を有することにより、導電性ポリマーとの相溶性が高く、かつ、塗布液や塗布液の乾燥過程では過度なインタラクションを有さないことで電子デバイスにも対応できるレベルの平滑性を有する塗布膜を形成できると考えている。特に、水系溶媒で塗布膜を形成する場合に有効である。さらに、本発明においては、基板や併用する電極に起因するイレギュラーな突起や異物起因のリークや寿命低下を防止する効果も顕著であった。
特許文献4は、仕上がった膜の構成としては、一見、本発明に近いと思われるが、特許文献4で開示されている技術は、ヒドロキシ基を有するモノマーを塗布してポリアニオンと架橋点を形成した後にUV照射などによりポリマー化する技術である。このように、後からポリマー化する技術では、このような、基板や併用する電極に起因するイレギュラーな突起や異物起因のリークや寿命低下を防止する効果は特に優れたものではなかった。これは、モノマーを利用する系ではモノマーが乾燥過程で異物や突起の無い部分に回り込み、沈み込みながら乾燥するために、異物や突起を包み込む効果が小さいためと思われる。
一方、本発明においては、塗布液の段階ですでにポリマーであって、且つ、特定の構造を有する水系溶媒に可溶なポリマー(A)であることから顕著な効果が得られていると考えている。メカニズムはよく分からないが、ポリマー(A)が疎水的な直鎖部分と親水的な側鎖部分を有していることから種々のイレギュラーな突起や異物に対して適度に親和性を有し、かつ、ポリマー形態であり、かつ、導電性ポリマーとも適度にインタラクションがあることから、乾燥過程で、ある程度溶媒が揮発すると固形分の移動が抑えられ、導電性ポリマー含有層として微細な突起の表面を滑らかに覆うように乾燥して膜を形成しているのではないかと考えている。さらに、水系溶剤を用いることで、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーとの相溶性より高くなり、こうした効果が得られていると考えている。この効果は、グリッドなど、大きな凹凸のある電極と併用する場合にさらに顕著で、通常サブミクロンからミクロンオーダーの凹凸を有するグリッド電極は特殊な平滑化を行わないと有機電子デバイスには利用できない(例えば、特開2009−146640号公報、特開2009−140750号公報など)。
しかし、本発明においては、ミクロに見ると、サブミクロンからミクロンオーダーの凹凸は残るが、ナノレベルで見るとグリッドなどの補助電極表面は鋭い突起ではなく、なだらかなうねり状になっており、これによりリーク等が生じないようになったと思われる。
さらに、本発明に係る導電性ポリマー含有層においては、ポリマー(A)による、導電性ポリマーの導電性をアシストする効果が大きく、これにより、導電性を劣化させることなく、また、透過率を低下させることなく、膜厚を大幅にアップすることが可能となり、前述のリーク防止効果にも大きく寄与している。
また、本発明に係る導電性ポリマー含有層は、水系材料から形成された膜であるが、電極上に機能層を形成する前に、実施される異物除去目的の水系の洗浄処理に対しても耐性を有している。これは、メカニズムはよく分かっていないが、特許文献4と同様にポリマー(A)のヒドロキシ基とポリアニオンと架橋点を形成しているのか、強い水素結合を形成していることによるのではないかと考えている。さらに、本発明に係る導電性ポリマー含有層は、有機系の溶剤に対しても耐性を有している。これにより、有機機能層が塗布により形成される場合も、その塗布溶剤によらず、溶剤による膜の乱れを生じない。これによって、有機機能層で使用する溶剤にも制約を与えない。ポリアニオンがスルホン酸を有し、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で5分以上の加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性の効果は著しく顕著なものになる。これは、加熱により水分が少なくなった塗布膜において、スルホン酸が脱水作用を示すようになり、ポリマー(A)のヒドロキシ基がポリマー間で脱水反応が起こり、エーテル結合で3次元的に結合され強固な膜を形成するためではないかと考えている。
また、前述したように、特許文献4の技術では、架橋点形成化合物を利用しない場合に比べて保存性も劣化することが分かってきたが、本発明においては、こうした保存性の低下もなかった。これは、特許文献4で具体的に開示されている技術は、ヒドロキシ基を有するモノマーを塗布して膜を形成し、ポリアニオンと架橋点を形成した後にUV照射などによりポリマー化する技術であるために、架橋時にモノマーの移動が限られるために、低分子成分が多数存在することが考えられる。さらに、重合触媒も膜中に残ることになる。そのために、保存時に低分子成分や重合触媒残が有機機能層に拡散して素子を劣化させるのだと思われる。
さらに、特許文献4の技術では、面方向の導電性は良好である。しかし、前述のように、本発明のような多層構成を有する有機電子デバイスの電極に適用した場合、層に対して垂直方向に電荷をやりとりせねばならないが、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動(有機ELにおいては駆動電圧の上昇)が見られた。これは、特許文献4で開示している、モノマーを塗布している系では、塗布乾燥持に最後まで塗布溶媒中に溶けているモノマー成分が塗布膜表面に集まる傾向にあり、表面に電気を流しにくい極薄い層を形成しているのではないかと考えている。また、特許文献3で推奨されている酸ポリマーの場合も、垂直方向に障壁があるような挙動が見られた。これは、酸ポリマーとポリアニオンでは陰イオン部でわずかに反発があり、膜中に均一に混ざれなかったポリアニオンが表面に電気を流しにくい極薄い層を形成しているのではないかと考えている。
本発明においては、ポリマー(A)がイオン性ではなく、かつ、特定の構造を有する水系溶媒に可溶で、かつポリマーであることから、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと相分離せず、表面近傍を含めて、導電性ポリマー含有層全てにおいて、均一に混合された膜を形成しており、表層にも電気を流しにくい層を形成しにくいのではないかと考えている。
有機電子デバイスの構成例を示す断面模式図;(a)第1電極が、導電性ポリマー含有層(単層)である例、(b)第1電極が、導電性ポリマー含有層と他の導電性層からなる二層構成である例、(c)補助電極(金属ワイヤ)を併用する例、(d)補助電極(金属グリッド)を併用する例 補助電極の形状例を示す模式図 電極のパターンの例を示す模式図
本発明の有機電子デバイスは、基板上に、対向する第1及び第2電極を有し、当該電極間に少なくとも一層の有機機能層を有する有機電子デバイスであって、少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層を有し、当該導電性ポリマー含有層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと、前記(繰り返し)単位構造を有するポリマー(A)とを含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記ポリアニオンが、アニオン性基として、スルホ基を有することが好ましい。また、前記ポリマー(A)の数平均分子量が5000〜100000の範囲内であり、かつ分子量が1000以下である同族体(分子)の含有率が0〜5質量%の範囲内であることが好ましい。さらに、前記ポリマー(A)において、前記構成率mが、70≦m≦100の範囲内であることが好ましい。また、前記ポリマー(A)が、水系溶媒に可溶であることが好ましい。
本発明の実施においては、前記導電性ポリマー含有層を有する電極が、さらに光不透過性の導電部と透光性窓部とから成る補助電極を有する態様であることが好ましい。
本発明の有機電子デバイスの製造方法としては、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと、ポリマー(A)と水系溶媒とを含んでなる塗布液を、基板上に塗布し、乾燥することによって形成する態様の製造方法であることが好ましい。
この場合、当該塗布液を前記基板上に塗布し、乾燥することによって形成された有機電子デバイスを、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上加熱処理を施すことが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
(導電性ポリマー)
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン性基を有する構成単位とアニオン性基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン性基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン性基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホ基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で5分以上の加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン性基を有さないポリマーにアニオン性基を直接導入する方法、アニオン性基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン性基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン性基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン性基含有重合性モノマーにアニオン性基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン性基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
2nd.ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシル基(水酸基)含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。前記ヒドロキシル基(水酸基)含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
(水系溶媒)
本願において、「水系溶媒」とは、50質量%以上が水である溶媒をいう。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶剤であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
(ポリマー(A))
水系溶媒に可溶とは、前述の水系溶媒に1質量%以上溶解することを表す。それ以下の溶解性では、膜を形成する際に失透したり、平滑性が劣化したりする。
主たる共重合成分が下記a1〜a3で表されるモノマーであるとは、共重合成分の50mol%以上の成分が下記a1〜a3のいずれか、あるいは、下記a1〜a3の成分の合計が50mol%以上ある共重合ポリマーであり、下記a1〜a3の成分の合計が80mol%以上であることがより好ましく、さらに、下記a1〜a3いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、また、好ましい実施形態である。
Figure 0005402447
ただし、X=H又はCH、R=炭素(C)数が5以下のアルキレンを表す。
ポリマー(A)においては、水系溶媒に可溶である範囲において、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。
また、ポリマー(A)は、分子量の異なる同族体分子の混合物であるが、分子量が1000以下の分子の含有量が0〜5質量%以下であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、素子の保存性や、導電層に対して垂直方向に電荷をやりとりする際の、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
なお、本願において、「同族体」とは、上記成分からなる前記単位構造を有するポリマー(A)に属するポリマーであって、分子量が相互に異なるポリマー分子をいう。
このポリマー(A)において、分子量が1000以下の分子の含有量が0〜5質量%以下とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、又は低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適正から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
本発明に係るポリマー(A)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行なうことができる。使用する溶媒は、当該ポリマーが溶解すれば特に制限はなく、THF、DMF、CH2Cl2が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
本発明に係るポリマー(A)の数平均分子量は、3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
本発明に係るポリマー(A)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。
本発明に係る数平均分子量、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略す。)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
なお、分子量1000以下の含有量は、GPCにより得られた分布において、分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。
リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
(塗布/乾燥)
導電性ポリマー含有層は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと主たる共重合成分が前記1−3で表されるモノマーである水系溶媒に可溶なポリマー(A)と水系溶媒とを少なくとも含んでなる塗布液を塗布、乾燥することで形成することが好ましい。導電性ポリマーとポリマー(A)の比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(A)が30〜900質量部であることが好ましく、リーク防止、ポリマー(A)の導電性アシスト効果、透明性の視点からは、ポリマー(A)が100質量部以上であることがより好ましい。
塗布液中の固形分の濃度は0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが、液の停滞安定性、塗布膜の平滑性や、リーク防止効果の発現の視点で、より好ましい。
塗布法としては、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
導電性ポリマー含有層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。本発明に係る導電層は100nmを切る領域では導電性の低下が大きくなることから100nm以上であることがより好ましく、リーク防止効果をより高める視点からは200nm以上であることがさらに好ましい。また、高い透過率を維持する視点から1000nm以下であることがより好ましい。
塗布した後、適宜乾燥処理を施す。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電性ポリマー含有層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80から150℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。
特に、ポリアニオンがスルホン酸を有するポリアニオンである場合、塗布乾燥により、膜を形成した後に、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上の追加の加熱処理を施すことが好ましい。これにより、導電性ポリマー含有層の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上する。また、保存性も向上する。処理温度としては110〜160℃であることがより好ましく、処理時間としては15分以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性を考えると120分以下であることが好ましい。
(有機電子デバイスの構成)
本発明の有機電子デバイスの基本的構成の態様例を図1((a)〜(d))に示す。当該図1に示されているように、本発明の有機電子デバイスは、基本的構成要素として、基板(10)上に対向する第1電極(11)と第2電極(12)を有し、第1電極(11)と第2電極(12)電極間に少なくとも1層の有機機能層(13)を有する。
本発明において、第1電極(11)と第2電極(12)の少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層(21)を含む。少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層(21)を含むとは、少なくとも一方の電極が本発明に係る導電性ポリマー含有層(21)単体で形成されている、あるいは、ITO、ZnOなど、公知の他の導電性電極層に本発明に係る導電性ポリマー含有層(21)が積層されている、あるいは、後述のストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状電極等に本発明に係る導電性ポリマー含有層(21)がオーバーコートされている、あるいは、本発明に係る導電性ポリマー含有層(21)にストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状電極等が埋め込まれている形態などを挙げることができるが、少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層(21)を含んでいれば、これらに限定はされない。
本発明に係る有機機能層(13)としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
(補助電極)
大面積化に対応するためには、導電性ポリマー含有層を有する電極が、さらに、光不透過の導電部と透光性窓部とからなる補助電極を有することが好ましい。
補助電極の光不透過の導電部は導電性が良い点で金属であることが好ましく、金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。また導電部の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。
補助電極の形状は特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状である(図2参照)。
導電部がストライプ状、あるいはメッシュ状の補助電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1或いは2以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状、あるいはメッシュ状に加工できる。
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の段落番号0076−0112、及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
(ランダムな網目構造)
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
金属ナノワイヤに用いられる金属としては銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
〔基材〕
本発明に係る電極に用いられる透明基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はない。例えば、基材としての硬度に優れ、またその表面への導電層の形成のし易さ等の点で、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルムなどが好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
本発明で透明基材として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
(有機機能層の構成)
以下、本発明の有機電子デバイスが、有機EL素子である場合のその構成要素について説明する。
〔有機発光層〕
本発明において有機発光層を有する有機電子デバイスは、有機発光層に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層、ホールブロック層、電子ブロック層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。本発明に係る導電性ポリマー含有層はホール注入層として働くことも可能であるので、ホール注入層を兼ねることも可能だが、独立にホール注入層を設けても良い。
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第1電極部)/発光層/電子輸送層/(第2電極部)
(ii)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第2電極部)
(iii)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第2電極部)
(iv)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第2電極部)
(v)(第1電極部)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第2電極部)
ここで、発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも三層の発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに、発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明に係る有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚さは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
〔第2電極部〕
本発明に係る第2電極は、有機EL素子においては陰極となる。本発明に係る第2電極部は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第2電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
第2電極部の導電材として金属材料を用いれば第2電極側に来た光は反射されて第1電極部側にもどる。第1電極部の金属ナノワイヤは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが第2電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となりより取り出しの効率が向上する。
(有機光電変換素子)
有機光電変換素子は、第1電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層及びn型半導体層)を有する光電変換層(以下「バルクヘテロジャンクション層」とも呼ぶ。)、第2電極部が積層された構造を有する。
光電変換層と第2電極部との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。
p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換―無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)−過塩素酸錯体、(BEDT−TTF)−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクへテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクへテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクへテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
本発明に係る光電変換素子を、太陽電池などの光電変換材料として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層して(タンデム型)利用してもよい。
また、光電変換材料は、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
合成例
<ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization )法を用いたリビングラジカル重合>
「開始剤の合成」
合成例1(メトキシキャップされたオリゴエチレングリコールメタクリレート1の合成)
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、更に4時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分駅ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSO4により乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
「リビング重合(ATRP)による水溶性バインダー樹脂の合成」
合成例2 (ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50 v/v% メタノール/水混合溶媒を5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行なった。この操作を3回行なった後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、分子量1000以下の分子(同族体)の含量0%、の水溶性バインダー樹脂1を2.60g (収率84%)得た。
構造、分子量は各々1H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
<GPC測定条件>
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
同様にしてポリヒドロキシブチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(数平均分子量約2万、分子量1000以下の分子(同族体)の含量0%)を得た。
合成例3(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.0g、43mmol)、AIBN(1.4g、8.5mmol)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量22100、分子量分布1.42、分子量1000以下の分子(同族体)の含量12%、の水溶性バインダー樹脂を4.50g(収率90%)得た。
実施例1
導電性ポリマー含有層単独での評価
下記の導電性ポリマー含有層塗布液を調整し、相溶性を目視により確認した。相溶性OKの塗布液について、片面易接着加工を施された二軸延伸PETフィルムA4100(東洋紡社製)の易接着加工を施されていない面に、12W・min/mのコロナ放電処理を施し、スピンコーターを用いて乾燥膜厚が表1及び表2記載の厚さになるように回転数を調整して塗布した。さらに、ホットプレートで120℃−20分の熱処理を施し、導電性ポリマー含有層評価用試料を作製した。
導電性ポリマー含有層塗布液101及び102(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製)単独
導電性ポリマー含有層塗布液103(本発明用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリヒドロキシエチルアクリレート(合成例2、固形分20%水溶液) 0.35g
導電性ポリマー含有層塗布液104(本発明用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリヒドロキシブチルアクリレート(分子量2万、水/IPA=7/3 20%液)
0.35g
導電性ポリマー含有層塗布液105(本発明用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリヒドロキシエチルビニルエーテル(分子量2万、固形分20%水溶液)
0.35g
導電性ポリマー含有層塗布液106(本発明用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(分子量2万、固形分20%水溶液)
0.35g
導電性ポリマー含有層塗布液107(本発明用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリヒドロキシエチルアクリレート(合成例2、固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド 0.10g
導電性ポリマー含有層塗布液108(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 60SH−50(信越化学工業製)固形分2%水溶液 3.50g
導電性ポリマー含有層塗布液109(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
メチルセルロース SM−100(信越化学工業製)固形分2% 水溶液3.50g
導電性ポリマー含有層塗布液110(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
水系ポリエステル バイロナールMD1400(固形分15%)(東洋紡製)
0.47g
導電性ポリマー含有層塗布液111(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
水系ポリエステル バイロナールMD1400(固形分15%)(東洋紡製)
0.47g
ジメチルスルホキシド 0.10g
導電性ポリマー含有層塗布液112(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
アクリル系エマルジョン ボンコートAC−501(固形分60%)(DIC製)
0.12g
導電性ポリマー含有層塗布液113(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
アイオノマー系水系ポリウレタン ハイドランHW−161(固形分35%)(DIC製) 0.20g
導電性ポリマー含有層塗布液114(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
アイオノマー系水系ポリウレタン ハイドランAP−40N(固形分35%)(DIC製) 0.20g
導電性ポリマー含有層塗布液115(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
カチオン系水系ポリウレタン ハイドランCP−7060(固形分20%)(DIC製) 0.35g
導電性ポリマー含有層塗布液116(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ノニオン系水系ポリウレタン ボンディック2250(固形分35%)(DIC製)
0.20g
導電性ポリマー含有層塗布液117(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリビニルアルコール PVA−235(クレハ製)固形分2% 水溶液
3.50g
導電性ポリマー含有層塗布液118(比較用塗布液)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製) 1.59g
ポリアクリル酸 AC−10P(東亞合成製)水/IPA=5/5 固形分2%
3.50g
導電性ポリマー含有層評価用試料の透過率、表面抵抗、表面粗さ、洗浄耐性を下記により評価した。
(透過率)
東京電色社製 HAZE METER NDH5000により評価した。
なお、素子での光ロスから、80%以上であることが好ましい。
(導電性)
抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。レンジオーバーで測定不可の試料については、3cm×3cmの試料を作製して、導電性ポリマー含有層上の対向する2辺に端から約2mmの幅で銀ペーストを塗布し、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、1Vの直流電圧を印加し、その時の電流値から1v/電流値を面抵抗値とした。
補助電極の構成にもよるが、1×10Ω/□以下であることが好ましい。
(平滑性)
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)は、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域10μm角を、走査周波数1Hzで測定する。JIS B601(1994)に準じて求めた算術平均粗さRaで平滑性を評価した。導電性ポリマー含有層単独としては、3nm以下であることが好ましい。
(洗浄耐性評価)
各試料の表面抵抗率を上記方法で測定した。引き続き、洗浄処理として、セミコクリーン56(フルイチ化学社製)にフィルムを浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。乾燥後に再び表面低効率を測定し、洗浄前の表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値の値からで洗浄耐性を評価した。0.5以上であることが好ましい。
ポリマー含有層の内容と上記各種性能の評価をまとめて表1及び表2に示す。
Figure 0005402447
Figure 0005402447
表1及び表2に示す結果から明らかなように、導電性ポリマー単独で膜厚をアップすると透過率が低下してしまう。また、洗浄耐性を有さない。本発明で使用するポリマー(A)でのみ、導電性ポリマーとの相溶性、導電性、平滑性、洗浄耐性すべてを満足させることができることが分かる。
実施例2
(有機EL素子201の作製)
30mm×30mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した基板にフォトリソ法により図3(A−1)のパターニングを行った後、イソプロピルアウコールに基板を浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。
導電性ポリマー含有層として、PEDOT−PSS CLEVIOS P AI 4083(固形分1.5%)(H.C.Starck社製)をスピンコーターを用いて乾燥膜厚が30nmとなるように回転数を調整して塗布した。純水を浸した綿棒を用いて図3(A−2)以外の領域を拭き取った後、ホットプレートで150℃、30分の熱処理を施して第1電極を形成した。
正孔輸送層以降は蒸着により形成した。市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
〈正孔輸送層の形成〉
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で第1電極上の図3(A−2)の領域に蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
〈発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13質量%、化合物3が3.7質量%の濃度になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で図3(A−2)の領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
次いで、化合物4が10質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で図3(A−2)の領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
〈正孔ブロック層の形成〉
さらに、形成した発光層上、図3(A−2)の領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層上、図3(A−2)の領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
第2電極
Figure 0005402447
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて図3(A−3)の領域に蒸着し、厚さ100nmのカソード電極を形成した。
〈封止膜の形成〉
形成した電子輸送層の上に、ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を使用した。接着剤を塗り、可撓性封止部材を図3(A−4)の領域に貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させて封止した。封止部材の外に出たITOをアノード電極及びカソード電極の外部取り出し端子とし、有機EL素子201を作製した(比較素子)。
電性ポリマー含有層を実施例1の101と同様の構成にした以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子202を作製した(比較素子)。
導電性ポリマー含有層の膜厚を300nmとした以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子203を作製した(比較素子)。
ITOのパターンを図3(A−5)(取り出し電極として)、導電性ポリマー含有層を実施例1の107と同様の構成にした以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子204を作製した(本発明素子)。
導電性ポリマー含有層を実施例1の103から106と同様の構成とし、正孔輸送層の形成前に、セミコクリーン56(フルイチ化学社製)にフィルムを浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施し、流水で5分洗い流した後、ホットプレートで150℃−30分の加熱処理を行った以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子205から208を作製した(本発明素子)。
有機EL素子205から208において、導電性ポリマーをPEDOT−PSS CLEVIOS P AI 4083(固形分1.5%)(H.C.Starck社製)とした以外は同様にして有機EL素子209から212を作製した(本発明素子)。
有機EL素子209において、ポリマー(A)と導電性ポリマーの含有量比を表3の内容となるように調整した以外は同様にして有機EL素子213から215を作製した(本発明素子)。
有機EL素子209において導電性ポリマー含有層の膜厚を表3の内容となるように調整した以外は同様にして有機EL素子216、217を作製した(本発明素子)。
数平均分子量<1000の含量が7%、4%となるように合成例2,3のポリマーを混合した以外は材料を用いた以外は有機EL素子209と同様にして有機EL素子218、219を作製した(本発明素子)。
ポリマー(A)をヒドロキシエチルアクリレート(60mol%)、メチルアクリレート(40mol%)の共重合ポリマーとした以外は有機EL素子209と同様にして有機EL素子220を作製した(本発明素子)。
導電性ポリマーをPEDOT−PSS 483095(Aldrich社製)とした以外は有機EL素子209と同様にして有機EL素子221を作製した(本発明素子)。
導電性ポリマーをポリアニリン ORMECON D1033W(日産化学社製)とした以外は有機EL素子209と同様にして有機EL素子222を作製した(本発明素子)。
有機EL素子209において導電性ポリマー含有層の膜厚を実施例1の110,111と同様の構成とした以外は同様にして有機EL素子223、224を作製した(比較素子)。
比較素子225の作製
1000mlのイオン交換水に145g(1mol)のアリルスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14g(0.005mol)の過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、さらに12時間攪拌を継続した。
得られた溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml加え、限外ろ過法を用いて約1000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形分を得た。
続いて、14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと21.8g(0.15mol)のポリアリルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第2鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、5時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色ポリアリルスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)溶液を得た。この溶液300mlに111g(ポリアリルスルホン酸に対して50モル当量)のヒドロキシメチルアクリレートを添加し、均一に分散させた。その後、エバポレーションにより水分を除去し、トリメチロールプロパントリアクリレートを添加し、さらに、重合開始剤であるイルガキュア754(チバ・ジャパン社製)を添加した。導電性ポリマー含有層を、この塗布液を用いて乾燥膜厚で300nmの膜厚で形成し、高圧水銀灯の露光により硬化することにより形成した以外は、有機EL素子209と同様にして有機EL素子225を作製した(比較素子)。
比較素子226の作製
取り出し電極としてITOのパターンを図3(A−5)とし、銀ナノワイヤからなる補助電極を図3(A−6)のパターンで下記の方法により形成し、その上から導電性ポリマー含有層を形成した以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子226を作製した(比較素子)。
金属微粒子として、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
調製した銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液をスピンコーターを用いて塗布、乾燥させて銀ナノワイヤ塗布フィルムを作製した。
下記、金属微粒子除去液BF−1の粘度をカルボキシメチルセルロースナトリウム(SIGMA−ALDRICH社製;C5013 以下、CMCと略記する)で10Pa・s(10000cP)に調整し、銀ナノワイヤ層の上に塗布膜厚30μmとなるよう図3(A−6)の逆パターンでスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで30秒水に浸漬して水洗処理を行った。
〈金属微粒子除去液BF−1の作製〉
エチレンジアミン4酢酸第2鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5.0g
純水で1Lに仕上げ、硫酸又はアンモニア水でpHを5.5に調整し金属ナノワイヤ除去剤BF−1を作製した。
導電性ポリマー層を有機EL素子209と同様にした以外は有機EL素子226と同様にして有機EL素子227を作製した(本発明素子)。
補助電極として、下記を用いて、銀粒子の自己組織化膜を作製した以外は有機EL素子226、227と同様にして有機EL素子228(比較素子)、有機EL素子229(本発明素子)を作製した。
銀ナノワイヤを用いた代わりに、銀粉末(最大粒径が0.12ミクロン未満)4g、1,2−ジクロロエタンの30g、分子量が100,000〜200,000のエチルセルロースの尿素変性セルロースの結合剤0.2gを混合し、出力180Wの超音波で1.5分間均質化し、蒸留水を15g混合し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波で30秒間均質化したものを用いた。
補助電極として、下記により、銅メッシュを金属微粒子除去液BF−1によるパターン形成フリーで作製した以外は有機EL素子226、227と同様にして有機EL素子230(比較素子)、有機EL素子231(本発明素子)を作製した。
パラジウムナノ粒子を含有する森村ケミカル社製の触媒インクJIPD−7を用い、それにCabot製の自己分散タイプカーボンブラック溶液CAB−O−JET300を、触媒インクに対するカーボンブラック比率が10.0質量%になるように添加し、更にサーフィノール465(日信化学工業株式会社)を添加して、25℃における表面張力が48mN/mである導電性インクを調製した。
導電性インクを、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiのピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、基材上に線幅10μm、乾燥後膜厚0.5μm、線間隔300μmの格子状の導電性細線を図3(A−6)部分に形成した後、乾燥した。
次いで、メルテックス社製の高速無電解銅メッキ液CU−5100を用い、温度55℃で10分間浸漬した後、水洗して、無電解メッキ処理を施して、メッキ厚3μmの補助電極を作製した。
有機EL素子205において、PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製)を用いる代わりに、下記で合成したPEDOT/ナフィオン分散液を用いた以外は同様にして、有機EL素子232を作製した(本発明素子)。
142.68g(16.03ミリモルのナフィオンモノマー単位SE−10072:Dupont社製)及び173.45g脱イオン水を500mlフラスコへ注ぎ込んだ。
0.0667g硫酸第二鉄水和物を脱イオン水で12.2775gの総質量へ溶解することによって硫酸第二鉄溶液を調製した。
次に、1.40gの硫酸第二鉄溶液及び1.72g(7.224ミリモル)過硫酸ナトリウムをフラスコに加えて、良く撹拌した。フラスコ内容物を、500ml3首フラスコ中へ注ぎ込んだ。次に、混合物を反応容器中で30分間撹拌した。0.63ml(5.911ミリモル)の3,4−エチレンジオキシチオフェンを反応混合物に撹拌しながら加えた。重合を約23℃で撹拌しながら進行させた。1時間7分後に、重合液体は非常に濃い青色に変わった。
この水性PEDOT/ナフィオン重合液体100gに陰イオン交換体(Bayre AG社製;Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG社製;Lewatit S100)5.0gを添加し、8時間攪拌した。イオン交換体をろ過によって取除いた。
乾燥固体の重量分析に基づいて固形分1.89質量%の10gのPEDOT/ナフィオン分散液を調製した。
(有機EL素子評価)
得られた各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して1000cd/mで発光させた。
各基板5個作製した。基板1個につき2個の発光部があるので、計10個の発光部で評価した。
(整流比)
印加電圧のプラスマイナスを反転させる。(反転時の電流の絶対値)/(発光時の電流の絶対値)を整流比とした。異物や突起の影響があるとこの比率が大きくなる。この比率が1だと完全にリーク状態、100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。以下の指標で評価した。大面積化に対応するためには、3以上のレベルであることが必須で、4以上が好ましい。
5: 8個以上が1000以上、100未満なし
4: 5個以上が1000以上、100未満なし
3: 発光しない素子はないが、100未満が1個
2: 100未満、あるいは発光しない素子が1−4個
1: 100未満、あるいは発光しない素子が5個以上
(駆動電圧)
発光した素子の平均値を各素子の駆動電圧とし、素子201の駆動電圧に対する比率を求め、以下の指標で評価した。3以上が好ましく、4以上であることがより好ましい。
5: 105%未満
4: 110%未満
3: 120%未満
2: 130%未満
1: 130%以上
(寿命)
任意に素子を選び、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、輝度が半減するまでの時間を求めた。素子201の駆動電圧に対する比率を求め、以下の指標で評価した。3以上が好ましく、4以上であることがより好ましい。
5: 90%以上
4: 70%以上
3: 50%以上
2: 10%以上
1: 10%未満
(保存性)
任意に素子を選び、80℃のサーモ器で保存。12時間毎にサーモ器から取り出し、初期の1000cd/m発光時の電圧を印加し、その時の輝度を測定。輝度が半減した時間を評価した。素子201の駆動電圧に対する比率を求め、以下の指標で評価した。3以上が好ましく、4以上であることがより好ましい。
5: 90%以上
4: 70%以上
3: 50%以上
2: 10%以上
1: 10%未満
有機EL素子の内容と上記各種性能の評価結果をまとめて表3及び表4に示す。
Figure 0005402447
Figure 0005402447
表4に示した結果から明らかなように、本発明に係る有機EL素子は、整流比、駆動電圧、寿命、及び保存性において優れていることが分かる。すなわち、本発明の手段により、有機電子デバイス(有機EL素子)の効率や保存性を劣化させることなく、電極間の短絡やダークスポットの発生を防止し、デバイスの寿命、及び駆動電圧を改善した有機電子デバイスであって、さらに、グリッド電極などの補助電極を併用可能とし、大面積化にも対応可能な有機電子デバイスを提供することができることが分かる。
10 基板
11 第1電極
12 第2電極
13 有機機能層
14 他の導電性層
21 導電性ポリマー含有層
22 補助電極(金属ワイヤ)
23 補助電極(金属グリッド)
A−1 ITO電極
A−2 導電性ポリマー含有層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層
A−3 カソード電極
A−4 封止部材
A−5 ITO取りだし電極
A−6 補助電極

Claims (6)

  1. 基板上に、対向する第1及び第2電極を有し、当該電極間に少なくとも一層の有機機能層を有するとともに、前記第1及び第2電極のうち少なくとも一方の電極が導電性ポリマー含有層を有する有機電子デバイスを製造する有機電子デバイスの製造方法であって、
    π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと、下記(繰り返し)単位構造を有するポリマー(A)と水系溶媒とを含んでなる塗布液を、基板上に塗布し、乾燥することによって、前記導電性ポリマー含有層を形成することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
    Figure 0005402447
    式中、Xは水素原子又はメチル基、R 〜R はそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、及びnは、当該ポリマー(A)を構成する全モノマーのモル数の合計を100としたときのそれぞれの構成率(モル%)を表し、50≦l+m+n≦100である。
  2. 前記塗布液を前記基板上に塗布し、乾燥することによって形成された有機電子デバイスを、100〜200℃の範囲内の温度で5分以上加熱処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の有機電子デバイスの製造方法。
  3. 前記ポリアニオンが、アニオン性基として、スルホ基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電子デバイスの製造方法
  4. 前記ポリマー(A)の数平均分子量が5000〜100000の範囲内であり、かつ分子量が1000以下である同族体(分子)の含有率が0〜5質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法
  5. 前記ポリマー(A)において、前記構成率mが、70≦m≦100の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法
  6. 前記ポリマー(A)が、水系溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法
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