ところで、上記シート装置においては、通常、全シートのシートバックが起立状態にあるとき、全シートクッションの着座面は略同じ高さ位置に設定され、全シートバックの背凭れ面はシート前後方向において略同じ位置に設定される。
しかし、上記シート装置においては、複数のシートにおけるシートクッション及びシートバックのうちの少なくとも一方の厚みが複数のシート間で互いに異なる場合がある。例えば、シート装置が、車幅方向に並ぶ2つのシートを備えている場合において、車室の車幅方向中央に相当する部分を含むシートのシートバックにおける該部分に、アームレストを格納可能に構成した場合、2つのシートのシートバックの厚みが互いに異なる。このような場合、全シートのシートクッションを同じ量だけ下側へ移動させると、これらシートの倒伏状態にあるシートバックの背面の高さが一致しなくなる可能性が高くなる。特に車幅方向に連続する少なくとも2つのシートのシートバックの背面の高さが一致しない場合には、それらシートのシートバック間に段差が生じて該シートバックの背面の使い勝手が悪くなる可能性がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のシートを備えた車両用シート装置において、複数のシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の使い勝手を向上させようとすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、車両の車室のフロアを形成するフロアパネル上に車幅方向に並ぶように配設された、シートクッションとシートバックとを有する複数のシートと、該複数のシートのシートクッションを上記フロアパネル上にそれぞれ支持する複数のシートクッション支持部とを備えた車両用シート装置を対象として、上記複数のシートのシートバックは、各々、起立状態と、該シートバックに対応するシートクッション上に倒伏した倒伏状態とに切換え可能に構成され、上記複数のシートは、シートクッション及びシートバックのうちの少なくとも一方の厚みが複数のシート間で互いに異なるものであり、上記複数のシートクッション支持部のうち1つを除くシートクッション支持部、又は全シートクッション支持部が、シートクッションを、該シートクッションに対応するシートバックの起立状態から倒伏状態への切換えに連動して、下側へ移動させる連動機構を有し、上記複数のシートの中で車幅方向に連続する少なくとも2つのシートのうち、上記シートクッション支持部が上記連動機構を有するシートにおけるシートクッションの該連動機構による下側への移動量が、該少なくとも2つのシートの倒伏状態にあるシートバックの背面が略同じ高さ位置に位置するように設定され、上記車幅方向に連続する少なくとも2つのシートのうちの1つは、該車室の車幅方向中央部に相当する部分を含むシートである特定シートであり、上記特定シートのシートクッションを支持するシートクッション支持部が、上記連動機構を有し、上記特定シートのシートバックは、上記車室の車幅方向中央部に相当する部分にアームレストを有し、上記アームレストは、上記シートバック内に格納されかつ該格納されたアームレストの一面が該シートバックの背凭れ面の一部を形成する格納状態と、該シートバックからシート前方に突出してアームレストとして使用可能な使用状態とに切換え可能に構成されている、という構成にした。
上記の構成により、連動機構によるシートクッションの下側への移動量を適切に設定することによって、車幅方向に連続する少なくとも2つのシートの倒伏状態にあるシートバックの背面を略同じ高さ位置に位置させることができ、それらシートバックの背面の使い勝手を向上させることができる。また、上記少なくとも2つのシートの全てをダイブダウン収納可能に構成する必要はなく、それらシートをダイブダウン収納しないと仮定した場合に、倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置が最も低い位置にある1つのシートをダイブダウン収納しないで通常収納しかつ他のシートをダイブダウン収納するようにして、当該ダイブダウン収納するシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置を、該シートのシートクッションを支持するシートクッション支持部の連動機構による該シートクッションの下側への移動量を適切に設定することによって、通常収納するシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置に合わせるようにすればよい。このように1つのシートを通常収納することで、全シートをダイブダウン収納可能に構成する場合に比べてシート装置のコスト及び重量を低減することが可能になる。
特に、特定シートのシートバック内にアームレストを格納するためにシートバックが厚くなったとしても、その特定シートがダイブダウン収納されるので、その特定シートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置を、特定シートのシートクッションを支持するシートクッション支持部の連動機構による該シートクッションの下側への移動量を適切に設定することによって、特定シートに隣接するシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置と略同じにすることができる。
上記車両用シートにおいて、上記車幅方向に連続する少なくとも2つのシートのうちの少なくとも1つは、上記車室の側壁部に隣接するシートであり、上記車室の側壁部に隣接するシートのシートクッション及びシートバックの少なくとも一方における車幅方向外側には、シートクッションの着座面又はシートバックの背凭れ面よりも膨出形成されたサイドサポート部が形成されていることが好ましい。
このことで、車両が曲がる際に生じる遠心力に対して乗員を横揺れしないように保持することを可能にする。一方、このようなサイドサポート部により、車室の側壁部に隣接するシートのシートクッション及びシートバックのうちの少なくとも一方の厚みが、該シートに隣接するシートと異なる可能性が高くなる。しかし、本発明では、このように厚みが異なっても、車室の側壁部に隣接するシート及び該シートに隣接するシートのシートバックの背面の高さ位置を略同じ高さ位置することができ、これらシートバックの背面の使い勝手を向上させることができる。
上記車両用シートにおいて、上記複数のシートは、上記車室の両側側壁部の一方に隣接する一方側シートと、他方に隣接する他方側シートとの、車幅方向に連続する2つのシートであり、上記一方側シートのシートクッションの幅が上記他方側シートのシートクッションの幅よりも大きく、上記一方側シートのシートバックの幅が上記他方側シートのシートバックの幅よりも大きいことが好ましい。
このように車両用シートがシートクッション及びシートバックの幅が異なる2つのシートを備える場合には、幅が大きい一方側シートが、車室の車幅方向中央部に相当する部分を含むことになり、その一方側シート(特定シート)のシートバックにおける該部分に格納式のアームレストが設けられており、また、一方側シートのシートクッションにおける該部分とは異なる部分に、格納式のチャイルドシートが設けられる等して、シートクッションやシートバックの厚みが一方側シートと他方側シートとで異なる可能性が高くなり、よって、本発明の作用効果を有効に発揮させることができるようになる。尚、両シートをダイブダウン収納する場合には、両シートのシートクッションをそれぞれ支持するシートクッション支持部の連動機構による該両シートクッションの下側への移動量を、それぞれ適切に設定することによって、両シートのシートバックの背面を略同じ高さ位置に位置させるようにする。また、両シートのうちの1つを通常収納しかつ残りの1つをダイブダウン収納する場合には、2つのシートをダイブダウン収納しないと仮定した場合に、倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置が高い方のシートをダイブダウン収納するようにして、ダイブダウン収納するシートのシートクッションを支持するシートクッション支持部の連動機構による該シートクッションの下側への移動量を適切に設定することによって、通常収納するシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置に合わせるようにする。
上記車両用シートにおいて、上記複数のシートクッション支持部は全て、上記連動機構を有していてもよい。
このことにより、車幅方向に連続する少なくとも2つのシートの倒伏状態にあるシートバックの背面を略同じ高さ位置に位置させることが容易であるとともに、全シートの倒伏状態にあるシートバックの背面の高さを出来る限り低くすることができ、それらシートバックの背面上への荷物の積載量を増やすことができる。
上記車両用シートにおいて、上記複数のシートクッション支持部のうち、上記特定シートのシートクッションを支持するシートクッション支持部を除く1つのシートクッション支持部が、シートクッションを、該シートクッションに対応するシートバックの倒伏状態において、フロアパネルに対して該シートバックの起立状態と同じ位置に支持する支持部材で構成されており、残りのシートクッション支持部が、上記連動機構を有していることが好ましい。
このことにより、全シートをダイブダウン収納可能に構成する場合に比べてシート装置のコスト及び重量を低減することができる。
上記車両用シートにおいて、上記支持部材で構成されたシートクッション支持部が支持するシートクッションの下側に、上方に開口するボックス状に形成された、物品を収納するための物品収納部が設けられていることが好ましい。
すなわち、支持部材で構成されたシートクッション支持部が支持するシートクッションは下側へ移動しないので、そのシートクッションの下側には空きスペースが存在することになる。この空きスペースを物品収納部として有効に利用することができる。また、乗員の着座の邪魔にならないように、物品を物品収納部の内部に収納しておくことができ、乗員の利便性を向上させることができる。
上記車両用シートは、上記車両の荷室の直前に配設されるものであり、上記複数のシート全てのシートバックが倒伏状態にあるときに、全シートバックの背面が、上記荷室のフロアと略同じ高さ位置に位置していることが好ましい。
これにより、車室及び荷室のユーティリティを向上させることができ、本発明の作用効果を有効に発揮させることができる。
以上説明したように、本発明の車両用シート装置によると、複数のシートにおけるシートクッション及びシートバックのうちの少なくとも一方の厚みが複数のシート間で互いに異なっていても、倒伏状態にある全シートバックの背面の高さを略同じになるようにして、それらシートバックの背面の使い勝手を向上させることができる。特に、特定シートのシートバック内にアームレストを格納するためにシートバックが厚くなったとしても、その特定シートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置を、特定シートのシートクッションを支持するシートクッション支持部の連動機構による該シートクッションの下側への移動量を適切に設定することによって、特定シートに隣接するシートにおける倒伏状態にあるシートバックの背面の高さ位置と略同じにすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用シート装置1の外観を示す。このシート装置1は、車両の後部に設けられた荷室72(図2、図4参照)の直前(車室71(図2、図4参照)の後端部)に配設されるものであって、該車両の車室71のフロアを形成するフロアパネル21(図2〜図5、図7参照)上に車幅方向に並ぶように配設された左シート2及び右シート3を備えている。図1に示す線Lが、左シート2と右シート3との境界線である。尚、各シート2,3の幅方向は車幅方向と一致し、各シート2,3の前側は車両前側であり、各シート2,3の後側は車両後側である。以下、各シート2,3及び車両についての前及び後を、それぞれ単に前及び後という。
車両左側(図1では、右側)に配設された左シート2は、上記車室71の両側側壁部の一方(車両左側の側壁部)に隣接する一方側シートに相当し、車両右側(図1では、左側)に配設された右シート3は、上記車室71の両側側壁部の他方(車両右側の側壁部)に隣接する他方側シートに相当する。
上記左シート2は、シートクッション6と、このシートクッション6の後側位置で起立したシートバック7と、このシートバック7の上端部に車幅方向に並ぶように取り付けられた2つのヘッドレスト8とを有している。以下、左シート2のシートクッション6、シートバック7及びヘッドレスト8を、それぞれ、左シートクッション6、左シートバック7及び左ヘッドレスト8という。左シートバック7は、後述の如く、起立状態と、該左シートバック7に対応する左シートクッション6上に倒伏した倒伏状態とに切換え可能に構成されている。
上記右シート3も、左シート2と同様に、シートクッション11と、このシートクッション11の後側位置で起立したシートバック12と、このシートバック12の上端部に取り付けられたヘッドレスト13とを有している。以下、右シート3のシートクッション11、シートバック12及びヘッドレスト13を、それぞれ、右シートクッション11、右シートバック12及び右ヘッドレスト13という。右シートバック12も、後述の如く、起立状態と、該右シートバック12に対応する右シートクッション11上に倒伏した倒伏状態とに切換え可能に構成されている。
左シートクッション6の幅は右シートクッション11の幅よりも大きく、左シートバック7の幅は右シートバック12の幅よりも大きい。左シートクッション6の幅と左シートバック7の幅とは略同じであり、右シートクッション11の幅と右シートバック12の幅とは略同じである。すなわち、左シートクッション6及び左シートバック7は、各々、車室71の車幅方向中央部に相当する中央部6a,7aと該中央部6a,7aよりも車幅方向外側(車両左側)に位置する側方部6b,7bとからなり、中央部6a,7a及び側方部6b,7bにそれぞれ乗員が車幅方向に並んで着座可能となっている。このように左シート2は、車室71の車幅方向中央部に相当する部分(中央部6a,7a)を含むシートである特定シートに相当する。以下、左シートクッション6の中央部6aにおける着座面を中央着座面6cといい、左シートバック7の中央部7aにおける背凭れ面を中央背凭れ面7cといい、左シートクッション6の側方部6bにおける着座面を側方着座面6dといい、左シートバック7の側方部7bにおける背凭れ面を側方背凭れ面7dという。
左シートクッション6の側方部6bにおける車幅方向外側の端部(中央部6aとは反対側の端部)には、側方着座面6dよりも上側に突出するサイドサポート部6eが形成されている。また、起立状態にある左シートバック7の側方部7bにおける車幅方向外側の端部には、側方背凭れ面7dよりも前側に突出するサイドサポート部7eが形成されている。これらサイドサポート部6e,7eは、乗員を、横揺れしないように保持するものである。尚、左シートクッション6及び左シートバック7のいずれか一方の車幅方向外側の端部のみにサイドサポート部を形成するようにしてもよく、いずれにも形成しないようにしてもよい。
さらに、右シートクッション11における車幅方向外側の端部(左シート2とは反対側の端部)には、着座面11aよりも上側に突出するサイドサポート部11bが形成され、起立状態にある右シートバック12の車幅方向外側の端部には、背凭れ面12aよりも前側に突出するサイドサポート部12bが形成されている。これらサイドサポート部11b,12bも、乗員を、横揺れしないように保持するものである。尚、右シートクッション11及び右シートバック12のいずれか一方の車幅方向外側の端部のみにサイドサポート部を形成するようにしてもよく、いずれにも形成しないようにしてもよい。
上記左シートバック7の中央部7aには、格納式のアームレスト35が設けられている。このアームレスト35は、後にその構成を詳細に説明するが、左シートバック7の中央背凭れ面7cに形成された矩形状の格納凹部7f内に格納された格納状態と、該左シートバック7から前方に突出してアームレストとして使用可能な使用状態とに切換え可能に構成されている。このアームレスト35の格納状態では、アームレスト35の前面(使用状態の下面)が中央背凭れ面7cの一部を形成する。アームレスト35の使用状態では、左シート2の側方部6b,7bに着座する乗員、又は、右シート3に着座する乗員が、アームレストとして使用することが可能になる。
左シートバック7が起立状態にありかつアームレスト35が格納状態にあるとき、中央背凭れ面7cは、側方背凭れ面7dよりも前方に突出している。この中央背凭れ面7cの側方背凭れ面7dに対する突出量は、左シートクッション6のサイドサポート部6eの側方着座面6dに対する突出量と左シートバック7のサイドサポート部7eの側方背凭れ面7dに対する突出量とを足した値よりも大きい。これにより、左シートバック7が起立状態にありかつアームレスト35が格納状態にあるとき、該左シートバック7の中央背凭れ面7cは、側方背凭れ面7dよりも前側でかつサイドサポート部7eの先端よりも前側に位置する。尚、左シートクッション6の中央着座面6cは、側方着座面6dよりも僅かに高い高さ位置にある。
また、左シートクッション6の下面の高さ位置は中央部6aと側方部6bとで略同じであり、起立状態にある左シートバック7の背面の前後位置も中央部7aと側方部7bとで略同じである。
さらに、左シートバック7及び右シートバック12の起立状態において、右シートクッション11の着座面11a及びサイドサポート部11bの先端は、左シートクッション6の側方着座面6d及びサイドサポート部6eの先端とそれぞれ略同じ高さ位置にあり、右シートクッション11の下面は、左シートクッション6の下面と略同じ高さ位置にある。但し、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態においては、後述の如く、左シートクッション6のみが下側へ移動するため、右シートクッション11の着座面11aと左シートクッション6の側方着座面6d(中央着座面6c)との高さは異なるとともに、右シートクッション11の下面と左シートクッション6の下面との高さも異なる。
また、起立状態にある右シートバック12の背凭れ面12a及びサイドサポート部12bの先端(前端)は、前後方向において、起立状態にある左シートバック7の側方背凭れ面7d及びサイドサポート部7eとそれぞれ略同じ位置に位置し、起立状態にある右シートバック12の背面は、前後方向において、起立状態にある左シートバック7の背面と略同じ位置に位置している。
図2〜図5に示すように、上記フロアパネル21は、左シート2及び右シート3に着座した各乗員の足置き場となる第1フロア部21aと、この第1フロア部21aの後側に連続して設けられ、第1フロア部21aよりも上側へ段上げされたキックアップ部21bと、このキックアップ部21bの後側に連続して設けられ、後側へ向かって上昇する傾斜部21cと、この傾斜部21cの後側に連続して設けられた第2フロア部21dとを有している。第2フロア部21dの上側(つまりシート装置1後方におけるフロアパネル21の上側)は、荷室72である。第2フロア部21d上には、不図示のフロアボードを介して、荷室72のフロアを構成する可撓性のフロア部材73が敷設されている。このフロア部材73の前端は、起立状態にある左シートバック7及び右シートバック12の下端部(倒伏状態にあるときには、後端部となる)に固定されている。フロア部材73の前端近傍部は、左シートバック7及び右シートバック12が起立状態にあるときには、下側に弛んでいる一方(図2参照)、左シートバック7及び右シートバック12が倒伏状態にあるときには、真っ直ぐに張った状態となる(図3、図4参照)。
上記左シートクッション6及び右シートクッション11は、フロアパネル21のキックアップ部21bの上側に配設され、左シートバック7及び右シートバック12は、フロアパネル21の傾斜部21cの上側に配設されている。
図2に示すように、左シートバック7は、上記傾斜部21cにおける左シートバック7の両側側部に対応する位置にそれぞれ配設された左右一対の左シートバック支持ブラケット22により、フロアパネル21上に支持されている。すなわち、左シートバック7内には、起立状態にある左シートバック7の上下面及び両側側面にそれぞれ沿うように略矩形枠状に形成されたシートバックフレーム7gが配設されており、このシートバックフレーム7gの両側側部の下端部に、シート幅方向外側へ延びる回動軸7hがそれぞれ一体に設けられている。そして、各回動軸7hが上記各左シートバック支持ブラケット22にそれぞれ回動可能に支持されている。これにより、左シートバック7は、乗員が左シート2に着座可能な起立状態(図2に示す状態)と、該起立状態から回動軸7h回りに回動して、左シートクッション6上に倒伏した倒伏状態(図3に示す状態)とに切換え可能となる。
左シートバック7のシートバックフレーム7gの後部には、バックプレート7iが、該シートバックフレーム7gの枠状開口部を覆うように設けられている。このバックプレート7iにおける回動軸7hの上側近傍に、左右一対のアームレスト支持部材7jがアームレスト35の両側に位置するように取付固定されている。このアームレスト支持部材7jに、格納状態のアームレスト35の下端部が、シート幅方向に延びる軸7k回りに回動可能に支持されている。これにより、アームレスト35は、格納状態(図2に実線で示す状態)と使用状態(図2に二点鎖線で示す状態)とに切換え可能となる。
左シートクッション6は、左シートクッション支持部23によりフロアパネル21上に支持されている。この左シートクッション支持部23は、左シートクッション6の前側部分をフロアパネル21上に支持する前側支持部23aと、左シートクッション6の後側部分をフロアパネル21上に支持する後側支持部23bとを有している。すなわち、左シートクッション6内には、左シートクッション6の前面及び後面並びに両側側面にそれぞれ沿うように略矩形枠状に形成されたシートクッションフレーム6fが配設されており、このシートクッションフレーム6fの両側側部の前端部が前側支持部23aにより支持され、シートクッションフレーム6fの両側側部の後端部が後側支持部23bにより支持されている。
前側支持部23aは、左シートクッション6の下側においてフロアパネル21の第1フロア部21aとキックアップ部21bとに跨って取付固定された左右一対の左シートクッション支持ブラケット24と、該一対の左シートクッション支持ブラケット24に、シート幅方向に延びる軸27回りに回動可能にそれぞれ支持された左右一対の回動部材25と、シートクッションフレーム6fの両側側部の前端部にそれぞれ取付固定された左右一対の取付部材26とからなる。各回動部材25は、各取付部材26に対し、シート幅方向に延びる軸28回りに回動可能にそれぞれ連結されている。尚、左シートバック7が起立状態にあるときには、回動部材25は上下方向に延びていて、上記軸28が上記軸27に対して略真上に位置する。
後側支持部23bは、シートクッションフレーム6fとシートバックフレーム7gとを連結する左右一対の連結部材29からなっていて、シートバックフレーム7g及び左シートバック支持ブラケット22を介して、左シートクッション6の後側部分(シートクッションフレーム6fの両側側部の後端部)をフロアパネル21に対して支持する。一対の連結部材29の一端部は、シートクッションフレーム6fの両側側部の後端部にそれぞれ取付固定されている一方、他端部は、シートバックフレーム7gの両側側部における回動軸7hの上側かつ後側の近傍に、シート幅方向に延びる軸30回りに回動可能にそれぞれ連結されている。
上記左シートクッション支持部23は、左シートバック7の起立状態から倒伏状態への切換えに連動して、左シートクッション6を前側かつ下側へ移動させるように構成されている。すなわち、左シートバック7を、起立状態から回動軸7h回りに前側に倒伏させると、連結部材29の上記他端部も回動軸7h回りに回動して前側に移動する。これにより、回動部材25の上端部が、連結部材29及びシートクッションフレーム6fを介して前側へ押されて、回動部材25が上記軸27回りに、図2で反時計回りに回動する。この結果、左シートクッション6(シートクッションフレーム6f)が前側かつ下側へ移動する。特に左シートクッション6の前側部分が大きく下側へ移動する。このことで、前側支持部23a及び後側支持部23bは、左シートバック7の起立状態から倒伏状態への切換えに連動して、左シートクッション6を下側へ移動させる連動機構を構成することになる。このように左シート2は、この連動機構により所謂ダイブダウン収納可能に構成されている。
そして、図3に示すように、左シートバック7の倒伏状態(アームレスト35は格納状態となっている)では、左シートバック7の中央背凭れ面7cが左シートクッション6の中央着座面6cに当接するとともに、2つの左ヘッドレスト8が左シートクッション6の中央着座面6c及び側方着座面6dの前端部にそれぞれ当接する。尚、基本的には、左シートバック7の中央背凭れ面7cが左シートクッション6の中央着座面6cに当接するようになっており、これら当接した部分の弾性変形によっては、2つの左ヘッドレスト8が左シートクッション6の中央着座面6c及び側方着座面6dの前端部にそれぞれ当接することになる。
図4に示すように、右シートバック12は、左シートバック7と同様に、フロアパネル21の傾斜部21cにおける右シートバック12の両側側部に対応する位置にそれぞれ配設された左右一対の右シートバック支持ブラケット40により、フロアパネル21上に支持されている。
右シートバック12内には、左シートバック7と同様の略矩形枠状に形成されたシートバックフレーム12cが配設されており、このシートバックフレーム12cの両側側部の下端部に、シート幅方向外側へ延びる回動軸12dがそれぞれ一体に設けられている。そして、各回動軸12dが上記各右シートバック支持ブラケット40にそれぞれ回動可能に支持されている。これにより、右シートバック12は、乗員が右シート3に着座可能な起立状態(図4に二点鎖線で示す状態)と、該起立状態から回動軸12d回りに回動して、右シートクッション11上に倒伏した倒伏状態(図4に実線で示す状態)とに切換え可能となる。尚、左シートバック7の回動中心となる回動軸7h及び右シートバック12の回動中心となる回動軸12dは、同一直線上に位置している。
右シートクッション11は、右シートクッション支持部41によりフロアパネル21上に支持されている。この右シートクッション支持部41は、上記左シートクッション支持部23とは構成が異なり、上記のような連動機構を有していない。すなわち、右シートクッション支持部41は、右シートクッション11を、右シートバック12の倒伏状態において、フロアパネル21に対して右シートバック12の起立状態と同じ位置に支持する。このため、右シートバック12を倒伏しても、その倒伏に連動して右シートクッション11が移動することはない(ダイブダウン収納されない)。
具体的には、右シートクッション支持部41は、フロアパネル21のキックアップ部21bに固定されかつ右シートクッション11を支持する支持部材42で構成されている。この支持部材42は、図6に示すように、上方に開口する直方体形状のボックス状に形成された物品収納部42aを有している。一方、右シートクッション11の下端部には、周縁部全周が下側へ突出した逆皿状のシートクッションパン15が固定されており、このシートクッションパン15が上記物品収納部42aの開口を塞ぐように支持部材42上に載せられている。こうして右シートクッション11が、右シートクッション支持部41(支持部材42)によりフロアパネル21上に支持される。このことで、右シートクッション11の下側には、物品収納部42aが設けられていることになる。尚、物品収納部42aは必ずしも必要なものではない。また、物品収納部42aを、中央シートクッション11を支持する支持部材42とは別の部材で構成してもよい。
シートクッションパン15の周縁部におけるシート幅方向両側の前側部分には、貫通孔15aがそれぞれ形成されている。また、物品収納部42aのシート幅方向両側の側面には、貫通孔15aにそれぞれ嵌合する回動軸42bが固定されている。これにより、シートクッションパン15(右シートクッション11)は回動軸42b回りに回動可能に構成されている。そして、物品収納部42aの内部に対して物品を出し入れする際には、右シートバック12が起立状態にあるときに、右シートクッション11の後端部を持ち上げて、右シートクッション11を回動軸42b回りに図4で反時計回りに回動させることで、物品収納部42aの開口を開放させる。
右シートクッション11は、右シートバック12の倒伏に連動して下側へ移動しないので、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態において、右シートクッション11は左シートクッション6よりも高い位置に位置する(図5及び図7参照)。また、右シートクッション11は、右シートバック12の倒伏に連動して前側にも移動しないので、右シートクッション11が右ヘッドレスト13の回動軌跡上に位置せず、このため、右シートバック12の倒伏状態で、右ヘッドレスト13が右シートクッション11の着座面11aの前端部に当接することはなく、右シートバック12のサイドサポート部12bが右シートクッション11のサイドサポート部11bに当接する。
本実施形態では、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態において、両シートバック7,12の背面(上面)が略同じ高さ位置に位置するように、上記連動機構による左シートクッション6の下側への移動量が設定されている。すなわち、左シートバック7の厚み(中央部7aの厚み)が、右シートバック12の厚み(サイドサポート部11bの厚み)よりも大きくて、左シートクッション6が下側へ移動しないと仮定した場合の倒伏状態にある左シートバック7の背面は、倒伏状態にある右シートバック12の背面よりも高い位置に位置する。しかし、実際には、左シートクッション6が下側へ移動し、その移動量は、左シートバック7の背面が右シートバック12の背面と略同じ高さ位置に位置するように設定される。したがって、左シートバック7の背面及び右シートバック12の背面は略同じ高さ位置に位置することになる(図5、図7及び図8参照)。これにより、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面が車幅方向全体に亘って連続した面を形成する。また、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面の後端部は、フロア部材73の上面と略同じ高さ位置にある。本実施形態では、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面は水平に近く、該背面の略全体(元々突出形成されている前端部を除く)がフロア部材73の上面と略同じ高さ位置にあるといえる。尚、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面が、フロア部材73の上面と異なる高さ位置にあってもよく、この場合、フロア部材73の上面よりも低い高さ位置にあることが好ましい。
左シートバック7及び右シートバック12は、起立状態にあるときに、車室71と荷室72とを区画している。各シートバック7,12はそれぞれ独立に倒伏状態にすることができるので、乗員の人数や荷室72に積み込む荷物の大きさ等に応じて種々のシートアレンジが可能になり、車室71及び荷室72のユーティリティが向上する。そして、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態において、両シートバック7,12の背面が略同じ高さ位置に位置する(連続した面を形成する)ので、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面の使い勝手が向上する。しかも、倒伏状態にある左シートバック7及び右シートバック12の背面が、フロア部材73の上面と略同じ高さ位置にあるので、特に幅が大きい大型の荷物を、持ち上げずにフロア部材73上を滑らせながら、両シートバック7,12の背面上に載せることが可能になる。
また、左シート2及び右シート3のうち左シート2のみをダイブダウン収納可能に構成したので、両シート2,3をダイブダウン収納可能に構成する場合に比べてコスト及び重量を低減することができる。
尚、上記実施形態では、左シート2及び右シート3のうち左シート2のみをダイブダウン収納可能に構成したが、両方のシート2,3をダイブダウン収納可能に構成してもよい。この場合、右シートクッション支持部41も、左シートクッション支持部23の連動機構と同様の連動機構を有することになるが、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態において、両シートバック7,12の背面が略同じ高さ位置に位置するように、各連動機構による左シートクッション6及び右シートクッション11の下側への移動量をそれぞれ設定すればよい(左シートクッション6の下側への移動量が、右シートクッション11の下側への移動量よりも大きくなる)。このように両方のシート2,3をダイブダウン収納可能に構成すれば、より低位置でシートバック7,12の背面を略同じ高さ位置にすることができ、それらシートバック7,12の背面上への荷物の積載量を増やすことができる。
また、上記実施形態では、左シートバック7の厚み(中央部7aの厚み)を、右シートバック12の厚み(サイドサポート部12bの厚み)よりも大きくしたが、これに加えて、又はこれに代えて、左シートクッション6の厚みが右シートクッション11の厚みよりも大きいことを前提にして、左シートバック7及び右シートバック12の倒伏状態において、両シートバック7,12の背面が略同じ高さ位置に位置するように、左シート2のみ、又は両シート2,3をダイブダウン収納可能に構成してもよい。例えば、左シートクッション6の側方部7bに格納式のチャイルドシートを設けた場合には、左シートクッション6の側方部7bが右シートクッション11の厚みよりも大きくなる。上記チャイルドシートの上面は、その格納時に側方着座面7dの一部を形成し、使用時には、チャイルドシートとしての着座面となる。
また、上記実施形態では、中央背凭れ面7cの側方背凭れ面7dに対する突出量を、左シートクッション6のサイドサポート部6eの側方着座面6dに対する突出量と左シートバック7のサイドサポート部7eの側方背凭れ面7dに対する突出量とを足した値よりも大きくしたが、これには限られない。例えば、車両用シート装置1が、車幅方向に並ぶ3つのシートを有し、これら3つのシートのうちの中央に位置する中央シートにサイドサポート部が形成されず、その中央シートの両側に位置する側方シートの車幅方向外側の端部にサイドサポート部が形成される場合、参考形態として、中央シートのシートバックに設けられる格納状態のアームレストの、側方シートのシートバックの背凭れ面に対する突出量を、側方シートのシートバックのサイドサポート部の、該シートバックの背凭れ面に対する突出量よりも小さくし、両方の側方シートのシートクッション支持部のみに上記連動機構を設け、それら突出量の差を解消するべく両方の側方シートのシートクッションを上記連動機構により下側へ移動させて、倒伏状態にある中央シートと少なくとも一方の側方シートとのシートバックの背面を略同じ高さ位置に位置させるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、車両用シート装置1が、車幅方向に並ぶ2つのシート2,3を有するものとしたが、3つ以上(特に3つ)のシートを有するものであってもよい。これらのシートは、シートクッション及びシートバックのうちの少なくとも一方の厚みが該シート間で互いに異なり、シートクッションを下側へ移動しないでシートバックを倒伏状態にしたとき、該シートバックの背面の高さ位置が互いに異なる。そこで、上記シートのシートクッションをそれぞれ支持するシートクッション支持部のうち1つ(シートクッションを下側へ移動しないでシートバックを倒伏状態にしたとき、シートバックの背面の高さ位置が最も低い位置にあるシートのシートクッションを支持するシートクッション支持部)を除くシートクッション支持部、又は全シートクッション支持部に、連動機構を設け、上記3つ以上のシートの中で車幅方向に連続する少なくとも2つのシートのうち、上記シートクッション支持部が上記連動機構を有するシートにおけるシートクッションの該連動機構による下側への移動量を、該少なくとも2つのシートの倒伏状態にあるシートバックの背面が略同じ高さ位置に位置するように設定すればよい。特に、上記シートクッション支持部が上記連動機構を有する全シートにおけるシートクッションの該連動機構による下側への移動量を、全シートの倒伏状態にあるシートバックの背面が略同じ高さ位置に位置するように設定することが好ましい。