===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
即ち、電磁波を照射すると硬化する電磁波硬化型インクを媒体に対して吐出する複数のヘッドと、媒体と前記複数のヘッドとを所定方向に相対移動させる移動機構と、少なくとも異なる色の前記電磁波硬化型インクを吐出する前記ヘッドごとに、前記所定方向の下流側に設けられ、前記ヘッドから吐出された前記電磁波硬化型インクに電磁波を照射する複数の照射器と、を備え、媒体に吐出する前記電磁波硬化型インクの色数に応じて電磁波を照射する前記照射器の数が変化する印刷装置の調整方法であって、媒体に対して前記ヘッドから前記電磁波硬化型インクを吐出することによって、複数の背景画像を形成することと、前記照射器によって各前記背景画像に電磁波を所定回数だけ照射する際に、前記背景画像ごとに前記照射器の照射量を変化させることと、前記照射器によって電磁波が照射された各前記背景画像上に、前記ヘッドから前記電磁波硬化型インクを吐出することによって、パターンを形成することと、複数の前記背景画像上にそれぞれ形成された前記パターンに基づいて、媒体に吐出する前記電磁波硬化型インクの色数に応じた前記照射器の照射量を決定することと、を有することを特徴とする調整方法である。
このような調整方法によれば、照射器の照射量を、画質劣化(ドットサイズが既定サイズよりも小さくなること)を防止する照射量に調整することができる。
かかる調整方法であって、媒体上に前記複数の背景画像を前記所定方向に並べて印刷すること。
このような調整方法によれば、各背景画像に照射する紫外線の照射量を異ならせることができる。
かかる調整方法であって、前記照射器は前記所定方向と交差する方向に並んだ複数の分割照射器を有し、媒体上に前記複数の背景画像を前記交差する方向に並べて印刷すること。
このような調整方法によれば、各背景画像に照射する紫外線の照射量を異ならせることができ、背景画像およびパターンの形成時間を短縮することができる。
かかる調整方法であって、媒体に対して前記ヘッドから前記電磁波硬化型インクを吐出することによって、複数の別の背景画像を形成し、前記照射器によって各前記別の背景画像に電磁波を1回だけ照射する際に、前記別の背景画像ごとに前記照射器の照射量を変化させ、前記照射器によって電磁波が照射された各前記別の背景画像上に、前記ヘッドから前記電磁波硬化型インクを吐出することによって、別のパターンを形成し、前記パターンと前記別のパターンとに基づいて、媒体に吐出する前記電磁波硬化型インクの色数に応じた前記照射器の照射量を決定すること。
このような調整方法によれば、照射器の照射量を、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなることを防止しつつ、画像の滲みを出来る限り抑制する照射量に調整することができる。
かかる調整方法であって、前記パターンはラインであり、複数の前記背景画像上にそれぞれ形成された前記ラインの幅を測定し、前記ラインの幅に基づいて、媒体に吐出する前記電磁波硬化型インクの色数に応じた前記照射器の照射量を決定すること。
このような調整方法によれば、照射器の照射量を、画質劣化を防止する照射量に調整することができる。
かかる調整方法であって、前記パターンは均一濃度の画像であり、複数の前記背景画像上にそれぞれ形成された前記画像の濃淡を判断し、前記画像の濃淡に基づいて、媒体に吐出する前記電磁波硬化型インクの色数に応じた前記照射器の照射量を決定すること。
このような調整方法によれば、照射器の照射量を、画質劣化を防止する照射量に調整することができる。
===インクジェットプリンターの概要===
印刷装置の一例としてインクジェットプリンター(以下、プリンター1と呼ぶ)を例に挙げ、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムにて実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のプリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の概略断面図である。外部装置であるコンピューター60から印刷指令(印刷データ)を受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット30、紫外線照射ユニット40)を制御し、用紙Sに画像を形成する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、メモリー13に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
搬送ユニット20(移動機構に相当)は、用紙を搬送するためのものである。本実施形態のプリンター1では、図2に示すように、ドラム21の外周側にインクを吐出するヘッド31と紫外線を照射する照射器41,42が設けられている。搬送ローラー23が回転することによってドラム21の周囲の搬送ベルト22が搬送方向(所定方向)に移動する。用紙は搬送ベルト22の移動に伴って搬送ベルト22上を搬送される。その為、用紙はヘッド31及び照射器41,42と対向することになる。なお、用紙を搬送ベルト22にバキューム吸着させる等して、用紙の位置ズレを防止するとよい。
ヘッドユニット30は、用紙にインクを吐出するためのヘッド31を有する。図2に示すプリンター1では、ドラム21の外周側に複数のヘッド31が設けられている。各ヘッド31の下面にはインク吐出部であるノズルが複数設けられる。各ノズルには、インクが入った圧力室(不図示)と、圧力室の容量を変化させてインクを吐出させるための駆動素子(例えばピエゾ素子)が設けられている。駆動素子に駆動信号が印加されることにより、駆動素子は変形し、その変形に伴って圧力室が膨張・収縮することによりインクが吐出される。
なお、本実施形態では、インクとして、紫外線が照射されることによって硬化する「紫外線硬化型インク」を用いる。ここで、紫外線硬化型インク(以下、単にインクとも呼ぶ)は、ビヒクル、光重合開始剤及び顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合される。なお、ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。また、インクとしては、水性インクと油性インクの両方を含むものとする。
プリンター1は9色の有色インクと無色透明のクリアインクを吐出可能する。ドラム21の周りに搬送方向の上流側から順に、白インクWを吐出するヘッド31(W)と、ブラックインクKを吐出するヘッド31(K)と、シアンインクCを吐出するヘッド31(C)と、マゼンタインクMを吐出するヘッド31(M)と、イエローインクYを吐出するヘッド31(Y)と、ライトマゼンタインクLmを吐出するヘッド31(Lm)と、ライトシアンインクLcを吐出するヘッド31(Lc)と、オレンジインクOを吐出するヘッド31(O)と、グリーンインクGを吐出するヘッド31(G)と、クリアインクCLを吐出するヘッド31(CL)が設けられている。
紫外線照射ユニット40は、ヘッド31から用紙上に吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射して硬化するための照射器(仮照射器41・本照射器42)を有する。各照射器41,42は、紫外線硬化型インクに紫外線を照射して硬化するランプ(例えばメタルハライドランプやLEDなど)を有する。照射器41,42による紫外線の照射強度(mJ/cm2)や照射時間(s)など、紫外線の照射量を調整することによって、紫外線硬化型インクを完全に硬化させたり完全には硬化させなかったりすることができる(即ち、紫外線硬化型インクの硬化度を調整することができる)。また、照射器41,42による紫外線の照射量を調整することによって、紫外線硬化型インクのドットサイズを調整することも可能である。なお、仮照射器41,本照射器42の照射強度は調整可能であり可変とする。また、紫外線の照射時間は、用紙の搬送速度によって調整可能となる。
本実施形態のプリンター1では、異なる有色インクを吐出するヘッド31の間に(例えば白インク用のヘッド31(W)と黒インク用のヘッド31(K)の間に)、仮照射器41が設けられている。そして、搬送方向の最も下流側(クリアインク用のヘッド31(CL)の下流側)には本照射器42が設けられている。仮照射器41は本照射器42に比べて照射強度の弱い紫外線を照射する。そのため、ヘッド31から吐出された紫外線硬化型インクは、仮照射器41にて照射される紫外線では完全には硬化せず、本照射器42にて照射される紫外線によって完全に硬化する。以下、媒体上の紫外線硬化型インクに対して仮照射器41により完全に硬化しない程度に紫外線を照射することを、「仮照射する」という。
このように、本実施形態のプリンター1では、異なる有色インクを吐出するヘッド31の間に仮照射器41を設け、あるヘッド31から吐出された紫外線硬化型インクを、そのヘッド31の搬送方向の直ぐ下流側に位置する仮照射器41によって仮照射する。そうすることで、カラー印刷の際に、異なる色のインクを重ねたり隣接させたりしても、異なる色インクの混色や画像の滲みを防止できる。また、紫外線硬化型インクは用紙に着弾してから紫外線が照射されるまでの間に用紙表面を流れ広がる(濡れ広がる)。そのため、各ヘッド31から吐出された紫外線硬化型インクを仮照射器41によって仮照射することで、紫外線硬化型インクが用紙表面を広がり過ぎて、ドットサイズが大きくなってしまうことを防止できる。
なお、本実施形態のプリンター1では、図2に示すように、クリアインク用のヘッド31(CL)の搬送方向の直ぐ下流側に本照射器42を設けている。そのため、クリアインク用のヘッド31(CL)の搬送方向下流側には仮照射器41を設けない。
このようなプリンター1において、コントローラー10は、印刷データを受信すると、用紙(媒体)を搬送ベルト22上に給紙する。用紙は、搬送ベルト22上を一定の速度で停まることなく搬送され、ヘッド31及び照射器41,42と対向する。その際に、各ヘッド31から用紙に紫外線硬化型インクが吐出され、その紫外線硬化型インクは照射器41,42によって硬化される。その結果、用紙上に画像が印刷される。
===紫外線硬化型インクの性質について===
図3は、紫外線硬化型インクの性質を説明する図である。図は、媒体S(例えばフィルム等)の上に白インクによって背景画像(下地画像)を形成し、その上に他のカラーインク(例えばYMCK)を吐出した様子を示している。図3の上図では背景画像を形成する白インクが完全には硬化していない「半硬化状態」である。一方、図3の下図では背景画像を形成する白インクが完全に硬化した「完全硬化状態」である。
紫外線硬化型インクには、紫外線の照射によって硬化度が高まるほど(完全硬化状態であると)、その上に吐出されるインク滴をはじき易くなる性質を有する。そのため、図示するように、半硬化状態である背景画像(白インク)の上に吐出されたインク滴は、背景画像の表面を流れ広がる(濡れ広がる)。これに対して、完全硬化状態である背景画像の上に吐出されたインク滴は、背景画像の表面を流れ広がることなく、丸い粒状となる。この状態で照射器41,42により紫外線が照射されると、半硬化状態の背景画像上に吐出されたインク滴のドット径「d1」に比べて、完全硬化状態の背景画像上に吐出されたインク滴のドット径「d2」の方が小さくなってしまう。また、完全硬化状態である背景画像上に吐出されたインク滴よりも、半硬化状態である背景画像上に吐出されたインク滴の方が、背景画像との繋がりが強くなり、上層のインクが剥がれ難くなる。
つまり、下層の紫外線硬化型インク(例えば、背景画像を形成する白インク)に強い強度の紫外線を照射して完全に硬化してしまうと、その上に吐出する紫外線硬化型インクのドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまう。そうすると、巨視的に見た際に、後に吐出された紫外線硬化型インクの濃度が淡くなってしまったり、罫線の幅が狭くなったりしてしまう。ただし、ヘッド41から吐出された紫外線硬化型インクに全く紫外線を照射しないと、前述のように、重ねて吐出されるインクや近傍に吐出されるインク同士において混色や画像の滲みが発生したり、紫外線硬化型インクが用紙表面を流れ広がりドットサイズが既定サイズよりも大きくなってしまったりする。そのため、仮照射器41によって、先に吐出する紫外線硬化型インクを半硬化状態にする。そうすることで、その上に吐出される紫外線硬化型インクのドットサイズが小さくなってしまうことを防止でき、所定の濃度や所定の罫線幅を確保できる。
===印刷モードについて===
図4は、本実施形態のプリンター1が選択可能な印刷モードと最大照射回数の関係を示す図である。図5は、最大照射回数を説明する図である。印刷モードは媒体に吐出可能なインクの色ごとに分類されている。なお、図4に示す表では、全て白インクによる背景画像が印刷される場合の印刷モードを示す。色の発色性を良くするために、白インクにより背景画像を印刷し、その白の背景画像上に有色インクで画像を形成する場合がある。また、「最大照射回数」とは、各印刷モードにおいて最後のインク(有色インク)が吐出される際に、背景画像が仮照射器41により仮照射された回数である。
例えば、「モノクロ印刷モード」では、白の背景画像上に、ブラックインクKのみで画像(テキストなど)が印刷される。この場合、ブラックインクKが最後に吐出されるインクである。そのため、ブラックインクKが吐出される際に、白の背景画像に紫外線が仮照射される回数は「1回」である。ゆえに、図4の表において、モノクロ印刷モードにおける最大照射回数が「1回」となる。
「3色印刷モード」では、白の背景画像上に、3色のインク(イエローインクY・マゼンタインクM・シアンインクC)によってカラー画像が印刷される。図2に示すように、3色のインクYMCを吐出するヘッド31の中で、シアンインクCを吐出するヘッド31(C)が最も搬送方向の下流側に位置する。そのため、3色印刷モードでは、シアンインクCが最後に吐出されるインクである。図5の上図に示すように、シアンインクCが吐出されるまでに、背景画像に対して、白インク用の仮照射器41(W)とイエローインク用の仮照射器41(Y)とマゼンタインク用の仮照射器41(M)によって、紫外線が仮照射される。即ち、3色印刷モードにおける最大照射回数は「3回」となる。
同様に、「5色印刷モード」では、白の背景画像上に、5色のインク(イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、オレンジインクO、グリーンインクG)によってカラー画像が印刷される。この場合、グリーンインクGが最後に吐出されるインクとなる。そして、グリーンインクGが吐出されるまでに、背景画像に対して5個の仮照射器41によって紫外線が仮照射される。即ち、5色印刷モードにおける最大照射回数は「5回」となる。また、「7色印刷モード」では、図5の下図に示すように、白の背景画像上に、ライトマゼンタインクLmとライトシアンインクLcを追加した7色のインクによってカラー画像が印刷される。この場合、グリーンインクGが最後に吐出されるインクとなる。そして、グリーンインクGが吐出されるまでに、背景画像に対して7個の仮照射器41によって紫外線が仮照射される。即ち、7色印刷モードにおける最大照射回数は「7回」となる。
このように印刷モードによって、印刷に使用可能なインクの色数(インクの種類数)が異なり、背景画像に対する最大照射回数が異なる。そして、印刷に使用可能なインクの色数が増えるに従って、背景画像に対する最大照射回数が増える。
ところで、前述の図3に示すように、背景画像の硬化度が高いほど(背景画像が完全硬化状態であると)、その上に吐出されるインク滴は、はじかれ易く、ドットサイズが小さくなる。ここで仮に、最大照射回数(又は印刷モード)に関係なく、仮照射器41の照射強度を一定に比較的に強い強度に設定したとする。この場合、例えば、7色印刷モードのように最大照射回数が多くなると、搬送方向下流側のヘッド31のインク(例:オレンジやグリーンのインクなど)を吐出する際に、背景画像の硬化度が高まり過ぎてしまう(完全に硬化してしまう)。この場合、搬送方向下流側にて後で吐出するインクのドットサイズが、図3の下図のように小さくなり過ぎて(既定サイズよりも小さくなって)、画像濃度が淡くなったり、罫線幅が細くなったりしてしまう。また、搬送方向下流側に位置するヘッド31から後で吐出されるインクほど、背景画像上にてはじかれ易く、ドットサイズが小さくなってしまう。
以上をまとめると、本実施形態のプリンター1では、複数の色の紫外線硬化型インクが吐出可能であり、混色や滲みなどの防止の為に、少なくとも異なる色の紫外線硬化型インクを吐出するヘッド31の搬送方向の下流側には仮照射器41を設け、仮照射器41によってヘッド31から吐出されたインクに対して紫外線を仮照射する。一方、色再現性を高めて高画質な画像を印刷する為に、5色印刷モードや7色印刷モードのように、使用可能なインクの色数(種類数)を増やすと、仮照射器41が背景画像に仮照射する回数が増える。そのため、使用可能なインクの色数(最大照射回数・印刷モード)に関係なく、仮照射器41の照射強度を一定に強い強度に設定してしまうと、後に吐出されるインクのドットサイズが小さくなり、画像が劣化してしまう。逆に、使用可能なインクの色数に関係なく、仮照射器41の照射強度を一定に弱い強度に設定してしまうと、不必要に混色や滲みなどを発生させてしまう。
そこで、本実施形態では、印刷に使用するインクの色数(印刷に使用可能なインクの色数)によらずに、背景画像上に(先に吐出されるインクの上に)、搬送方向の下流側のヘッド31から吐出されるインク(後に吐出されるインク)のドットサイズが既定サイズよりも小さくなることを防止することを目的とする。そうすることで、所望の罫線幅、所望の濃度である画像を印刷することができる。また、異なる色インクによる混色や滲みを出来る限り防止することを目的とする。つまり、本実施形態では、印刷画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
===紫外線強度の調整方法===
前述のように、印刷に使用するインクの色数が増えて、最大照射回数(最後の(有色)インクを吐出するまでに背景画像が仮照射される回数)が増えると、背景画像(下層のインク、先に吐出されるインク)の硬化度が高まり、後に吐出されるインクのドットサイズが小さくなってしまう。そこで、本実施形態では、媒体に吐出するインクの色数によって(言い換えれば、媒体に吐出する可能性のあるインクの色数、最大照射回数、印刷モードによって)、仮照射器41の照射強度を調整する(異ならせる)。なお、本実施形態のプリンター1では、インクを吐出するヘッド31の搬送方向の直ぐ下流側の仮照射器41のみ紫外線を照射する。即ち、媒体に吐出するインクの色数に応じて紫外線を照射する照射器の数が変化する。
具体的には、媒体に吐出するインクの色数が比較的に多い場合、仮照射器41の照射強度を比較的に弱くする。そうすることで、搬送方向下流側のヘッド31からインクが吐出される際にも、背景画像の硬化度が高くなり過ぎてしまうことを防止でき(半硬化状態を保つことができ)、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止できる。逆に、媒体に吐出するインクの色数が比較的に少ない場合、仮照射器41の照射強度を比較的に強くする。そうすることで、背景画像の硬化度が高くなり過ぎる虞がないにも関わらず、仮照射器41の照射強度を弱くして、異なる色のインクによる混色や滲みを発生させてしまうことを防止できる。即ち、不必要に仮照射器41の照射強度を弱くしてしまうことを防止できる。
そのために、本実施形態では、プリンター1の設計・製造工程やメンテナンス時などにおいて、以下に示す調整方法により、印刷に使用するインクの色数に応じた仮照射器41の照射強度を決定する。なお、同じ強度でインクに紫外線を照射したとしても、インクの特性などによって硬化の度合いが異なってくる。ゆえに、プリンター1にて使用するインクの種類を変更した時などは、以下の調整方法を実施し、印刷に使用するインクの色数に応じた仮照射器41の照射強度を再決定することが好ましい。
なお、以下では、印刷に使用するインクの色数によって、仮照射器41の「照射強度(mJ/cm2)」を調整する実施例を説明するが、これに限らない。印刷に使用するインクの色数によって仮照射器41による紫外線の「照射量」を調整するために、「照射時間」を調整してもよい。例えば、背景画像に紫外線を仮照射する時間を長くするほど、背景画像の硬化度が高まる。そこで、印刷に使用するインクの色数が比較的に多い場合、仮照射器41の照射時間を短くすることで、背景画像の硬化度が高くなり過ぎてしまうことを防止し、逆に、印刷に使用するインクの色数が比較的に少ない場合、仮照射器41の照射時間を長くすることで、異なる色インクによる混色や滲みを防止してもよい。
<調整方法1>
図6は、調整方法1にて印刷するテストパターンを説明する図であり、図7は、テストパターンの測定結果を示す図である。図示するテストパターンは、白インクにより印刷された複数の背景画像から構成される。各背景画像上には、有色インクを吐出するヘッド31のうちの最下流側のヘッド31から吐出されるグリーンインクGにより複数の罫線(図中は3本)を印刷する。図6には、仮照射器41が背景画像に紫外線を仮照射する回数が1回であるテストパターンと、仮照射器41が背景画像に紫外線を仮照射する回数が3回であるテストパターンを示す。なお、背景画像を印刷するインクは白インクに限らず、罫線を印刷するインクはグリーンインクに限らない。
調整方法1では、仮照射器41にて設定する照射強度の候補数分だけ背景画像を印刷する。ここでは、仮照射器41にて設定する照射強度の候補数を5個とする(1mJ/cm2・2mJ/cm2・3mJ/cm2・4mJ/cm2・5mJ/cm2)。そのため、図示するテストパターン用紙Sには、それぞれ5個の背景画像が印刷されている。
図6の左のテストパターンは、印刷に使用するインク数が2色(背景画像用の白インクを除くと1色)である時の仮照射器41の照射強度を決定するためのテストパターンである。言い換えると、図6の左のテストパターンは、最大照射回数が1回である時、又は、図4に示すモノクロ印刷モード時の仮照射器41の照射強度を決定するためのテストパターンである。そのため、図6の左のテストパターンにおける5個の背景画像に対して、1個の仮照射器41によってのみ、1回だけ紫外線を仮照射する。例えば、白インク用のヘッド31(W)によって背景画像を印刷し、白インク用の仮照射器41(W)によって背景画像を仮照射する。そして、その背景画像上にグリーンインク用のヘッド31(G)によって罫線を印刷する。ただし、5個の背景画像にそれぞれ紫外線を仮照射する仮照射器41の照射強度を異ならせる。その後、各背景画像上に罫線(ライン・パターンに相当)を印刷する。なお、媒体に吐出するインクの色数に応じて照射時間を調整する場合には、背景画像ごとに、仮照射器41によって紫外線を仮照射する時間を異ならせる。
具体的には、まず、白インクを吐出するヘッド31(W)によって、5個の背景画像を印刷する。そして、白インク用のヘッド31(W)の搬送方向下流側に位置する仮照射器41(W)の照射強度を1mJ/cm2に設定し、1個目の背景画像に対して紫外線を仮照射する。次に、仮照射器41(W)が1個目の背景画像と対向し終わってから2個目の背景画像と対向し始めるまでの間に、仮照射器41(W)の照射強度を2mJ/cm2に設定する。そして、仮照射器41(W)は照射強度2mJ/cm2にて背景画像に対して紫外線を仮照射する。このように、仮照射器41(W)が背景画像の間の用紙部分と対向している時に、仮照射器41(W)の照射強度の設定を変更する。そうして、仮照射器41(W)は、照射強度3mJ/cm2にて3個目の背景画像に対して紫外線を仮照射し、照射強度4mJ/cm2にて4個目の背景画像に対して紫外線を仮照射し、照射強度5mJ/cm2にて5個目の背景画像に対して紫外線を仮照射する。各背景画像は、仮照射器41(W)によって仮照射された後、グリーンインク用のヘッド31(G)によって複数の罫線が印刷される。そして、グリーンインク用のヘッド31(G)の搬送方向下流側の仮照射器41(G)によって複数の罫線は仮照射される。最後に、テストパターンは本照射器42によって本照射される。
同様に、背景画像に対する仮照射の回数を異ならせて、テストパターンを形成する。図6の右のテストパターンは、印刷に使用するインク数が4色(背景画像用の白インクを除くと3色)である時の仮照射器41の照射強度を決定するためのテストパターンである。言い換えると、図6の右のテストパターンは、最大照射回数が3回である時、又は、図4に示す3色印刷モード時の仮照射器41の照射強度を決定するためのテストパターンである。そのため、図6の右のテストパターンにおける5個の背景画像は、それぞれ3個の仮照射器41によって3回仮照射される。例えば、白インク用のヘッド31(W)によって背景画像を印刷し、白インク用の仮照射器41(W)とブラックインク用の仮照射器41(K)とイエローインク用の仮照射器41(Y)によって、背景画像に紫外線を仮照射する。そして、その背景画像上に、グリーンインク用のヘッド31(G)によって、罫線を印刷する。このとき、1つの背景画像に対して仮照射器41が照射する照射強度を一定にし、背景画像ごとに仮照射器41の照射強度を異ならせる。例えば、照射強度を1mJ/cm2に設定した3個の仮照射器41が1個目の背景画像に対してそれぞれ3回仮照射し、照射強度を2mJ/cm2に設定した3個の仮照射器41が2個目の背景画像に対してそれぞれ3回仮照射する。こうして、各背景画像に対して異なる照射強度にて3回仮照射した後に、各背景画像上に複数の罫線を印刷する。
図7の測定結果では、図6に示すテストパターンの結果の他に、背景画像に対する照射回数(最大照射回数)が5回及び7回である時の測定結果を示す。最大照射回数が5回とは、印刷に使用するインク数が6色(背景画像用の白インクを除くと5色)である時であり、図4に示す5色印刷モード時に相当する。最大照射回数が7回とは、印刷に使用するインク数が8色(背景画像用の白インクを除くと7色)である時であり、図4に示す7色印刷モード時に相当する。
このように調整方法1では、異なる照射強度(1〜5mJ/cm2)によって仮照射された背景画像上に、複数の罫線を印刷する。背景画像に紫外線を照射する照射強度が異なれば、罫線を印刷する際の背景画像の硬化度も異なる。図6に示すテストパターンでは、1個目の背景画像ほど硬化度が低く、5個目の背景画像ほど硬化度が高くなる。つまり、調整方法1では、硬化度の異なる背景画像上に、複数の罫線を印刷する。そして、硬化度の異なる背景画像上に印刷された罫線の幅を計測する。そうすることで、仮照射器41の照射強度を、所望の罫線幅が得られる照射強度に決定することができる。なお、図6では、各背景画像上に3つの罫線を印刷しているので、3つの罫線幅の各計測結果を平均値化する。そうすることで、罫線を印刷する時の誤差や罫線の幅を計測する時の誤差が緩和された計測結果が得られる。
図7の計測結果から、背景画像に対する最大照射回数が1回である時に、1個目の背景画像上の罫線幅は110μmであり、2個目の背景画像上の罫線幅は108μmであり、3個目の背景画像上の罫線幅は108μmであり、4個目の背景画像上の罫線幅は106μmであり、5個目の背景画像上の罫線幅は105μmであることが分かる。この結果から、背景画像に紫外線を照射する照射強度が強いほど、即ち、背景画像の硬化度が高くなるほど、罫線幅が狭くなることが分かる。また、この結果から、図3に示すように、背景画像の硬化度が高いほど、その上に吐出されるインク滴をはじきやすく、ドットサイズが小さくなることが分かる。
ここで、例えば罫線幅の計測結果が100μm以上である場合に、罫線幅に関して仮照射器41の照射強度が適正であると判断する。そうすると、背景画像に対する最大照射回数が1回である場合、罫線幅に関して仮照射器41の適正な照射強度は「1〜5mJ/cm2」であると判断される。言い換えれば、印刷に使用するインク数が2色の時(背景画像上に吐出するインクが1色の時)、又は、モノクロ印刷モードである時の仮照射器41の適正な照射強度が「1〜5mJ/cm2」であると判断される。またその一方で、仮照射器41の照射強度が強いほど、背景画像を形成する白インクとその上に吐出されるインクとの滲みや混色を抑制できる。そこで、最大照射回数が1回である時や、背景画像用の白インクも含めて媒体に吐出するインクの色数が2色の時や、モノクロ印刷モードである時の仮照射器41の照射強度を、罫線幅に関する仮照射器41の適正な照射強度(1〜5mJ/cm2)のうちの最大値(5mJ/cm2)に決定するとよい。
同様に、図7の計測結果から、最大照射回数が3回である場合には全ての照射強度(1〜5mJ/cm2)の時に、罫線幅が100μm以上となることが分かる。そのため、最大照射回数が3回である時や、背景画像用の白インクも含めて媒体に吐出するインクの色数が4色の時や、3色印刷モードである時の仮照射器41の照射強度を、「1〜5mJ/cm2」に決定すればよく、また、混色などを考慮すれば、そのうちの最大値「5mJ/cm2」に決定するとよい。
最大照射回数が5回である場合には照射強度が「1〜4mJ/cm2」の時に罫線幅が100μm以上となる。照射強度が5mJ/cm2の時は、背景画像の硬化度が高まり過ぎるため、所望の罫線幅が得られない。そこで、最大照射回数が5回である時や、背景画像用の白インクも含めて媒体に吐出するインクの色数が6色の時や、5色印刷モードである時の仮照射器41の照射強度を、「1〜4mJ/cm2」に決定すればよく、また、混色などを考慮すれば、そのうちの最大値「4mJ/cm2」に決定するとよい。
最大照射回数が7回である場合には照射強度が「1〜3mJ/cm2」の時に罫線幅が100μm以上となる。照射強度が4〜5mJ/cm2の時は、背景画像の硬化度が高まり過ぎるため、所望の罫線幅が得られない。そこで、最大照射回数が7回である時や、背景画像用の白インクも含めて媒体に吐出するインクの色数が8色の時や、7色印刷モードである時の仮照射器41の照射強度を、「1〜3mJ/cm2」に決定すればよく、また、混色などを考慮すれば、そのうちの最大値「3mJ/cm2」に決定するとよい。
このように調整方法1では、複数の背景画像を印刷し、背景画像ごとに照射強度を変化させて、仮照射器41により背景画像に対して紫外線を所定回数仮照射し、その上に(複数の)罫線を印刷する。そして、罫線幅を計測した結果に基づいて、最大照射回数や媒体に吐出するインクの色数や印刷モードに応じた仮照射器41の照射強度を決定する。
そうすることで、印刷に使用するインクの色数が比較的に多く、背景画像に紫外線が仮照射される回数が多くなり、背景画像が硬化され過ぎて背景画像上に形成される罫線の幅が狭くなり過ぎてしまうことを防止できる(ドットサイズが小さくなり過ぎてしまうことを防止できる)。逆に、印刷に使用するインク数が比較的に少なく、背景画像に紫外線が仮照射される回数が少なく、背景画像の硬化度が高まり過ぎないにも関わらず、必要以上に照射強度を弱くし過ぎて、異なる色のインクが滲んでしまうことを防止できる。
なお、図6では、テストパターン用紙Sに、照射回数は同じであるが、照射強度の異なる複数の背景画像を並べて印刷しているが、これに限らない。例えば、テストパターン用紙Sに、照射強度は同じであるが、照射回数の異なる複数の背景画像を並べて印刷してもよい。
また、図4に示す印刷モードでは、有色インクを使用する場合のみを示している。例えば、5色印刷モードでは、白インクの背景画像上に、5色のインク(YMCOG)が吐出されて、印刷物が完成する。しかし、これに限らず、白インクの背景画像上に、5色のインクが吐出され、最後に画像全面に無色透明のクリアインクを吐出する場合もある。この場合、無色透明インクを1色とし、例えば、6色印刷モードと呼ぶ。この6色印刷モードにおいて、背景画像にクリアインク(最後のインク)が吐出されるまでに背景画像が仮照射された回数を最大照射回数(6回)とすれば、6回仮照射した背景画像上に形成した罫線幅を計測し(図7では不図示)、照射強度を決定するとよい。
ただし、クリアインクは無色透明であり最後に画像全面に吐出されるため、背景画像の照射回数が増加し、ドットサイズが小さくなったとしても、大きく画質に影響することはない。そのため、クリアインクではなく有色インクのうちの最後のインクが吐出される際に、背景画像が仮照射された回数を最大照射回数としてもよい。例えば、上述の6色印刷モードであれば、グリーンインクが吐出される際に背景画像が仮照射された回数が最大照射回数に相当し、「5回」となる。この場合、5回仮照射された背景画像上に形成した罫線幅を計測し、照射強度を決定する。つまり、本実施形態では、印刷に使用するインクの色数に応じて仮照射器41の照射強度を変更するが、無色透明のクリアインクを印刷に使用するインクの色数に加えて照射強度を決定してもよいし、無色透明のクリアインクを印刷に使用するインクの色数に加えずに照射強度を決定してもよい。
また、ここまで、背景画像を白インクで印刷する実施例を例に挙げているが、これに限らない。例えば、透明フィルムなどの媒体上に、無色透明のクリアインクCLにて前面画像を印刷し、その上に有色インクを吐出して画像を形成する場合がある。即ち、透明フィルム側から画像を見る印刷物である。この場合においても、印刷に使用するインクの色数が増えるに従って(換言すると、最後のインクを吐出する際に無色透明インクの前面画像が仮照射された回数(最大照射回数)が増えるに従って)、仮照射器41の照射強度を弱い値に設定するとよい。なお、このような印刷物を印刷する場合には、搬送方向の最上流側のヘッド31に充填するインクを白インクWからクリアインクCLに交換するとよい。
<変形例>
図8は、仮照射器41がノズル列方向(所定方向と交差する方向に相当)に分割されている場合のテストパターンを示す図である。前述の図6に示す仮照射器41は、分割されることなく一体であり、ノズル列幅に亘った長さである。この場合、仮照射器41と同じタイミングで対向する領域(換言すると、搬送方向の位置が同じである用紙上の領域)に対して、同じ照射強度でしか紫外線を照射することができない。そのため、図6のテストパターンでは背景画像を用紙の搬送方向に並べて印刷している。そうすることで、先の背景画像に対する仮照射が終了してから次の背景画像に対する仮照射が開始するまでの間に(用紙Sが搬送される間に)、仮照射器41の照射強度の設定を変更することができる。即ち、仮照射器41がノズル列方向に分割されていない場合には、背景画像を用紙の搬送方向に並べて形成し(図6)、各背景画像が仮照射器41と対向する時間をずらすことによって、各背景画像に仮照射する紫外線強度を変更する。
一方、図8では、1個の仮照射器41がノズル列方向に並んだ3個の分割照射器(1)〜(3)から構成されている。分割照射器はそれぞれ異なる紫外線強度に設定可能とする。この場合、搬送方向の位置が同じである用紙S上の領域であっても、異なる分割照射器と対向する領域であれば、異なる照射強度で紫外線を照射することができる。そこで、複数の分割照射器がノズル列方向に並ぶ場合には、図8に示すように、背景画像をノズル列方向に並べて印刷するとよい。ここでは、1つの仮照射器41が3つの分割照射器から構成されるため、3個の背景画像をノズル列方向に並べるとよい。そして、3個の背景画像がそれぞれ異なる分割照射器(1)〜(3)と対向するように、背景画像をノズル列方向に並べて印刷する。
図8では、1個目から3個目の背景画像をノズル列方向に並べて印刷する。そして、1個目の背景画像は分割照射器(1)により照射強度1mJ/cm2にて仮照射し、2個目の背景画像は分割照射器(2)により照射強度2mJ/cm2にて仮照射し、3個目の背景画像は分割照射器(3)により照射強度3mJ/cm2にて仮照射する。また、本実施形態のように、分割照射器の数(3個)よりも多い数の背景画像を印刷する場合には、図8に示すように、4個目の背景画像を1個目の背景画像と搬送方向に並べ、5個目の背景画像を2個目の背景画像と搬送方向に並べて印刷するとよい。そして、分割照射器(1)が1個目の背景画像に対して照射強度1mJ/cm2にて仮照射した後に、分割照射器(1)の照射強度を変更し、4個目の背景画像に対して分割照射器(1)により照射強度4mJ/cm2にて仮照射する。同様に、分割照射器(2)が2個目の背景画像に対して照射強度2mJ/cm2にて仮照射した後に、5個目の背景画像を分割照射器(2)により照射強度5mJ/cm2にて仮照射する。そうすることで、各背景画像に紫外線を仮照射する際の照射強度を異ならせることができる。
このように分割照射器がノズル列方向に並んで1つの仮照射器41を構成する場合には、背景画像をノズル列方向に並べて印刷するとよい。そうすることで、前述の図8に比べて、テストパターンの形成時間を短縮することができ、テストパターンを形成する用紙Sの搬送方向の長さを短縮することができる。
<調整方法2>
図9は、調整方法2にて印刷するテストパターンを説明する図である。調整方法1では、図6に示すように、照射回数、照射強度の異なる背景画像上に、複数の罫線を形成しているが、これに限らない。例えば、この調整方法2のように、照射回数(X回)、照射強度(1〜5mJ/cm2)の異なる背景画像上に、均一濃度の画像(以下、ベタ塗り画像ともいう・パターンに相当)を印刷してもよい。
同じ照射回数(X回)であっても、背景画像に対する仮照射器41の照射強度(1〜5mJ/cm2)が異なると、背景画像の硬化度が異なり、背景画像上に吐出するインク滴のはじき易さ、即ち、ドットサイズが異なる。図9には、弱い照射強度にて仮照射された1個目の背景画像上に形成されたドットと、強い照射強度にて仮照射された5個目の背景画像上に形成されたドットも示す。5個目の背景画像の方が1個目の背景画像に比べて硬化度が高く、背景画像上に吐出されるインク滴ははじかれ易い。そのため、5個目の背景画像上に形成されたドットの方が1個目の背景画像上に形成されたドットよりも小さくなる。そうすると、1個目と5個目の背景画像上にそれぞれ形成されたベタ塗り画像を巨視的に見ると、1個目の背景画像上のベタ塗り画像に比べて5個目の背景画像上のベタ塗り画像の方が、濃度が淡くなる。
そこで、調整方法2では、ある印刷モード(最大照射回数=X回)における仮照射器41の照射強度を決定するために、複数の背景画像を印刷し、背景画像ごとに異なる照射強度にてX回仮照射する。その後、各背景画像に均一の濃度であるベタ塗り画像を印刷することで、テストパターンの形成が完成する。その後、検査者が目視によって所定の濃度よりも淡いベタ塗り画像がどれかを判断し(ベタ塗り画像の濃淡を判断し)、媒体に吐出するインクの色数ごとに、適正な仮照射器41の照射強度を決定する。例えば、図9では、4個目の背景画像上のベタ塗り画像は、5個目の背景画像上のベタ塗り画像に比べて濃度が濃いが、1個目から3個目の背景画像上のベタ塗り画像に比べると濃度が淡い。このことから4個目の背景画像は硬化の度合いが進み過ぎて、4個目の背景画像上に形成されたドットサイズは既定のドットサイズよりも小さことが予測される。そこで、検査者は、ある印刷モードにおいて、所定の画像濃度を得るための仮照射器41の適正な照射強度は「1〜3mJ/cm2」と判断する。そして、その印刷モードである時の仮照射器41の照射強度を、「1〜3mJ/cm2」に決定すればよく、また、混色などを考慮すれば、そのうちの最大値「3mJ/cm2」に決定するとよい。なお、背景画像上のベタ塗り画像の濃度を目視にて判断するに限らず、背景画像上のベタ塗り画像全体を、スキャナーに読み取らせて濃度を取得したり、明度を測定したりしてもよい。
<調整方法3>
図10は、滲み確認パターンを説明する図である。調整方法1および調整方法2では、異なる照射強度にて仮照射した複数の背景画像上に罫線やベタ塗り画像を印刷し、所定の罫線幅や所定の画像濃度が得られる照射強度の範囲を決定している。ただし、所定の罫線幅や所定の画像濃度が得られる照射強度であっても、照射強度を弱く設定し過ぎてしまうと、異なる色のインク同士で滲み等が生じてしまう。そこで、調整方法3では、照射回数および照射強度を異ならせた背景画像上に罫線やベタ塗り画像を印刷するテストパターンの他に、滲み等を確認するための「滲み確認パターン」も印刷する。
図10に示す滲み確認パターンでは、或る色のインクAにより四角い背景画像(別の背景画像に相当)を印刷し、その上にインクAとは異なる別の色のインクB,Cによって「線(四角線、縦線、横線、斜め線/別のパターンに相当)」を印刷する。図中の左側のパターンでは、インクAの背景画像の上にインクBによって線を印刷したパターンであり、図中の右側のパターンでは、インクAの背景画像の上に、インクBとインクCによって合成色の線を印刷したパターンである。なお、単色の線のパターンのみを印刷してもよいし、合成色の線のパターンのみを印刷してもよい。
異なる色のインクによる滲みは、特に、或る色のインクが吐出された直後に別の色のインクが重なって吐出されるか、又は、近傍に吐出される場合に発生する。つまり、或る色のインクの吐出後に仮照射器41によって照射する照射強度を弱くし過ぎると、次に吐出する別の色のインクと或る色のインクとで混色や滲みが生じてしまう。そこで、滲み確認パターンでは、インクAにより形成された背景画像を仮照射器41によって1回だけ仮照射する。ただし、複数の背景画像を印刷し、背景画像によって仮照射器41にて照射する照射強度を変化させる。なお、滲み確認パターンの背景画像に照射する照射強度(1〜5mJ/cm2)は、図6や図9のテストパターンの背景画像に照射する照射強度と同じにするとよい。そうすることで、ある照射強度において、例えば、所望の罫線幅(または所望の画像濃度)は得られるが、滲みが発生し易い事などを判断し易くなる。
図10では、インクAの背景画像上に単色(インクB)の線を印刷した滲み確認パターンと、インクAの背景画像上に合成色(インクB,C)の線を印刷した滲み確認パターンを、それぞれ5個ずつ形成する。そして、インクAにて形成した1個目の背景画像を照射強度1mJ/cm2にて仮照射し、インクAにて形成した2個目の背景画像を照射強度2mJ/cm2にて仮照射するというように、背景画像に仮照射する照射強度を変化させる。
そして、異なる照射強度にて1回仮照射された背景画像(インクA)の上に、インクB又はインクB,Cによって線を印刷する。このように、滲み確認パターンでは、照射回数を1回に固定し、照射強度を変化させた背景画像上に線を印刷し、その線の滲み具合を判断する。例えば、図10の滲み確認パターンの場合、検査者は、インクAによる背景画像とインクBによる線の境界部分、及び、インクAによる背景画像とインクB,Cによる線の境界部分を見て、滲み具合を評価する。
例えば、前述の図7の罫線幅の結果において、背景画像の最大照射回数が5回の場合に、仮照射器41の照射強度を3mJ/cm2に設定する方が、4mJ/cm2に設定するよりも、幅の長い罫線(106μm)が得られる。しかし、背景画像を3mJ/cm2にて仮照射した滲みパターンの方が、背景画像を4mJ/cm2にて仮照射した滲みパターンに比べて、滲みが強く発生していたとする。この場合、背景画像の最大照射回数が5回である時の仮照射器41の照射強度を、4mJ/cm2に設定するとよい。そうすることで、所望の罫線幅を得つつ、滲み等が抑えられた画像を印刷することができる。
このように調整方法3では、照射回数および照射強度を異ならせた背景画像上に複数の罫線(図6)やベタ塗り画像(図9)を印刷するテストパターンの他に、滲み確認パターン(図10)も印刷する。テストパターンと滲み確認パターンに基づいて、媒体に吐出するインクの色数ごとに、仮照射器41の適正な照射強度を決定することで、背景画像の硬化度が進み過ぎてドットサイズが小さくなり過ぎてしまうことを防止しつつ(即ち、所望の罫線幅・画像濃度を得つつ)、異なる色インク同士の滲みや混色などを抑制することができる。
なお、滲み確認パターンにおいて、滲みだけを確認するに限らず、凝集や光沢などの別の項目についての評価を行ってもよい。凝集とは、インクを吐出して印刷を行った際に、表面張力等によって局所的に生ずる同色系の濃度班のことであり、凝集が起こると画質が劣化する。また、印刷画像の表面が滑らかだと光沢が良く、表面が凹凸だと光沢が悪化する。
===印刷実施例===
<印刷実施例1>
図11Aは、プリンター1のメモリー13に記憶された仮照射器41の照射強度に関するテーブルであり、図11Bは、印刷実施例1の印刷フローである。前述の調整方法によって、最大照射回数や媒体に吐出するインクの色数などに応じた仮照射器41の照射強度を決定することができる。印刷実施例1では、コントローラー60(制御部に相当)が、ユーザー等により設定された「印刷モード」に応じて、仮照射器41の照射強度を調整する。言い換えれば、媒体に吐出可能なインクの色数(媒体に吐出するインクの色数)に応じて、仮照射器41の照射強度を調整する。そのために、設計工程やメンテナンス時において、前述の調整方法を実施し、各印刷モードに応じた仮照射器41の照射強度を決定する。そして、図11Aに示すように、印刷モードと仮照射器41の照射強度を対応させたテーブルを、プリンター1のメモリー13に記憶させる。
プリンター1のコントローラー10は、図11Bに示すように、プリンター1に接続されたコンピューター60から印刷指令を受信すると(S1)、その印刷指令と共に受信した印刷データに基づいて、背景画像を印刷するか否かを判断する(S2)。コントローラー10は、受信した印刷データにおいて背景画像を印刷しないと判断した場合に(S2→N)、仮照射器41の照射強度を印刷モードに関係なく固定の照射強度(5mJ/cm2)に設定する(S3)。
例えば、モノクロ印刷で背景画像を印刷しない場合、ブラックのインク滴が媒体上に直接着弾する。カラー印刷の場合であっても(3色・5色・7色)、各色のインク滴が媒体上に直接着弾する場合が多い。仮照射器41が媒体(用紙やフィルムなど)に対して何度も紫外線を仮照射したとしても、媒体上に直接着弾されるインク滴のはじき易さは変わらない(ドットサイズは変わらない)。
カラー印刷では、異なる色のインクが重ねて印刷される場合がある。ただし、背景画像は必ず媒体に最初に吐出されるのに対して、重ねて吐出されるインクのうちの下層のインクは、下層のインクが吐出される搬送方向の位置によって仮照射される回数が変わる。即ち、ある色のインク滴を背景画像上に吐出する際に背景画像が仮照射された回数よりも、ある色のインク滴を別の色インク上に吐出する際に別の色インク滴が仮照射された回数の方が少なくなる。そのため、別の色インク上が仮照射によって硬化され過ぎて、ある色のインク滴をはじき、ある色のインク滴のドットサイズが小さくなってしまう虞が少ない。
つまり、背景画像を印刷しない場合には、背景画像を印刷する場合に比べて、何度も仮照射されたインク上にインク滴を吐出する確率が低い。そのため、背景画像を印刷しない場合には、印刷に使用するインクの色数が多い印刷モードであっても、何度も仮照射されて硬化度の高いインク上にインク滴が吐出され、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまう虞が少ない。そこで、コントローラー10は、背景画像を印刷しない場合には、仮照射器41の照射強度を印刷モードに関係なく、比較的に強い照射強度(5mJ/cm2)に設定する(S3)。そうすることで、背景画像を印刷しない場合には、異なる色インク同士の滲みなどを確実に防止することができる。また、背景画像を印刷しない場合には、コントローラー10は、印刷モードに応じた照射強度を決定しなくてよいため、仮照射器41の制御処理が容易となる。
一方、コントローラー10は、受信した印刷データが背景画像を印刷すると判断した場合(S2→Y)、印刷データから印刷モードに関する情報を取得する。そして、コントローラー10は、取得した印刷モードに関する情報と図11Aの照射強度に関するテーブルを照合し、印刷モードに応じた仮照射器41の照射強度を決定する(S4)。そして、コントローラー10は、仮照射器41の照射強度を印刷モードに応じて決定した照射強度に設定する(S5)。なお、インクを吐出する全てのヘッド31の搬送方向の直ぐ下流側の仮照射器41の照射強度を、決定した同じ照射強度に設定する。こうして仮照射器41の照射強度を設定した後、コントローラー10は印刷を開始する(S6)。なお、ページごとに印刷モードが異なる場合には、ページごとに仮照射器41の照射強度を決定してもよい。
このように、印刷実施例1では、背景画像を印刷する場合には、印刷モードに応じて仮照射器41の照射強度を決定する。そうすることで、モノクロ印刷や3色印刷モードなど比較的に印刷に使用するインクの色数が少ない場合には、背景画像に対する仮照射の回数が少ないので、仮照射器41の照射強度を比較的に高く設定しても、背景画像の硬化度が高まり過ぎることを防止できる。その結果、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止でき、また、異なる色インク同士の滲みや混色などを確実に防止できる。一方、5色印刷モードや7色印刷モードなど比較的に印刷に使用するインクの色数が多い場合には、背景画像に対する仮照射の回数が多いので、仮照射器41の照射強度を比較的に低く設定することで、背景画像の硬化度が高まり過ぎてしまうことを防止できる。その結果、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止できる。
なお、背景画像の印刷の有無に関わらず、印刷モードに応じて仮照射器41の照射強度を決定してもよい。また、プリンター1のコントローラー10が仮照射器41の照射強度を決定し、仮照射器41の照射強度の制御を行うに限らない。例えば、プリンター1に接続されたコンピューター60内のプリンタードライバーが、ユーザーに設定された印刷モードに応じて仮照射器41の照射強度を決定してもよい。そして、プリンタードライバーは仮照射器41の照射強度に関するデータを印刷データとしてプリンター1に送信する。そして、コントローラー10が、仮照射器41の照射強度に関するデータに基づいて、仮照射器41の照射強度を制御してもよい。この場合、プリンタードライバーをインストールしているコンピューター60とプリンター1のコントローラー10が制御部に相当する。また、コントローラーとプリンターが接続された印刷システムが印刷装置に相当する。
<印刷実施例2>
図12Aは、プリンター1のメモリー13に記憶された仮照射器41の照射強度に関するテーブルであり、図12Bは、印刷実施例2の印刷フローである。印刷実施例1では、プリンター1のコントローラー10が、印刷モードに基づいて仮照射器41の照射強度を決定している。ただし、例えば、5色印刷モードが設定されている場合であっても、5色のインクが全て使用されるに限らず、オレンジインクOのみが使用される場合もある。この場合、印刷モードに関係なく、インクを吐出するヘッド31の搬送方向の直ぐ下流側の仮照射器41だけが紫外線を仮照射するプリンター1であれば、オレンジインクOが吐出される際の背景画像の仮照射回数は1回となる。
つまり、印刷実施例1では、印刷モードにより、印刷に使用される可能性のあるインクの色数(最後に(有色)インクが吐出されるまでに背景画像が照射される可能性のある最大数)に応じて、照射強度を決定する。そのため、印刷実施例1では、印刷に使用される可能性のあるインクの色数が多い印刷モード(例えば5色印刷モード)が設定されているが、実際に使用されるインクの色数は少ない場合であっても(例えばオレンジインクOのみが使用される場合であっても)、仮照射器41の照射強度は比較的に弱く設定されてしまう。
そこで、印刷実施例2では、コントローラー10は(又はコンピューター60にインストールされたプリンタードライバーは)、印刷データの中の画像データから実際に媒体に吐出するインクの色数を取得する。そして、コントローラー10は、実際に媒体に吐出するインクの色数に基づいて、最後の(有色)インクが吐出されるまでに背景画像が仮照射される回数(最大照射回数)を取得し、その最大照射回数に基づいて仮照射器41の照射強度を決定する。なお、1つの印刷ジョブごとに照射強度を決定してもよいし、1ページごとに照射強度を決定してもよい。
具体的には、図12Bのフローに示すように、コントローラー10は、印刷指令を受信すると(S11)、まず、背景画像を印刷するか否かを判断する(S12)。背景画像を印刷しない場合には(S12→N)、コントローラー10は仮照射器41の照射強度を固定の照射強度(例えば5mJ/cm2)に設定する(S13)。一方、背景画像を印刷する場合には(S12→Y)、コントローラー10は、画像データに基づいて実際に印刷に使用するインクの色数を取得し、背景画像の最大照射回数を取得する(S14)。例えば、3色印刷モードが設定されていても、印刷に使用するインクがイエローインクYとシアンインクCだけであれば、コントローラー10は印刷に使用するインクの色数を(背景画像の白インクも含めて)3色と判断し、背景画像の最大照射回数を2回と判断する。
次に、コントローラー10は、図12Aの照射強度に関するテーブルと背景画像の最大照射回数を照合し、仮照射器41の照射強度を決定する(S15)。そして、コントローラー10は、仮照射器41の照射強度を、決定した照射強度に設定する(S16)。なお、インクを吐出する全てのヘッド31の搬送方向の直ぐ下流側の仮照射器41の照射強度を、決定した同じ照射強度に設定する。こうして仮照射器41の照射強度が設定されたら、コントローラー10は印刷を開始する(S17)。なお、最後にクリアインクを画像全面に吐出する場合には、クリアインクを最後に吐出するインクとし、クリアインクが吐出されるまでに背景画像が仮照射される回数を最大照射回数としてもよいし、クリアインクは含まずに最後の有色インクが吐出されるまでに背景画像が仮照射される回数を最大照射回数としてもよい。
このように印刷実施例2では、印刷に使用されるインクの色数、言い換えれば、最後のインク(有色インク又は無色インク)が吐出されるまでに背景画像が仮照射される回数(最大照射回数)に基づいて、仮照射器41の照射強度を決定する。そして、使用するインクの色数(最大照射回数)が比較的に少なく、背景画像の硬化度が高まり過ぎる虞がない場合には、仮照射器41の照射強度を比較的に強く設定する。そうすることで、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止でき、また、異なる色インク同士の滲みや混色などを確実に防止できる。一方、使用するインクの色数(最大照射回数)が比較的に多く、背景画像の硬化度が高まり過ぎる虞がある場合には、仮照射器41の照射強度を比較的に弱く設定する。そうすることで、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止できる。
印刷実施例1に比べて印刷実施例2の方が、媒体に吐出される可能性のあるインクの色数ではなく、実際に媒体に吐出されるインクの色数に基づいて、仮照射器41の照射強度が決定されるため、より画像の滲み等を抑制できる。ただし、印刷実施例2のように印刷データ中の画像データから実際に印刷に使用するインクの色数を取得する方が、印刷実施例1のように印刷モードに関する情報を取得するよりも、処理が複雑となる。
<印刷実施例3>
図13は、画像データ上において分割照射器(1)〜(3)ごとに設定した領域を示す図である。印刷実施例3は、1個の仮照射器41が複数の分割照射器によって構成されるプリンター1の印刷実施例である。図13では、1つの仮照射器が3つの分割照射器(1)〜(3)で構成され、3つの分割照射器(1)〜(3)がノズル列方向に並んでいる。仮照射器41がノズル列方向に分割されていない場合には、仮照射器41と同時に対向する媒体上の領域(搬送方向の位置が同じである媒体上の領域)は、同じ照射強度にて紫外線が照射される。これに対して印刷実施例3では、印刷データ中の画像データを分割照射器ごとに3つの領域に区分する。そして、同じ画像データを印刷する時であっても、各分割照射器に対応する領域ごとの吐出インク数に応じて、分割照射器(1)〜(3)の照射強度を異ならせる。
具体的には、図13に示すように、画像データのうち、分割照射器(1)によって紫外線が仮照射される領域を「領域(1)」とし、分割照射器(2)によって紫外線が仮照射される領域を「領域(2)」とし、分割照射器(3)によって紫外線が仮照射される領域を「領域(3)」とする。プリンター1のコントローラー10は、各領域(1)〜(3)に対応する画像データごとに、印刷に使用するインクの色数を取得する。即ち、各領域(1)〜(3)に対応する各背景画像の最大照射回数を取得する。そして、コントローラー10は、各領域(1)〜(3)に対応する各背景画像の最大照射回数と、図12Aの照射強度のテーブルを照合し、各分割照射器(1)〜(3)の照射強度を決定する。
印刷物の中には、背景画像上の一部にカラー画像を印刷し、別の一部に文字だけを印刷する印刷物がある。例えば、領域(1)(2)に対応する画像データは5色のカラー画像(YMCOG)を印刷するように示し、領域(3)に対応する画像データは文字(K)を印刷するように示したとする。この場合、コントローラー10は、領域(1)(2)で使用するインクの色数を5色(背景画像の白インクを含むと6色・第1の色数に相当)、即ち、背景画像の最大照射回数を5回と判断し、領域(3)で使用するインクの色数を1色(背景画像の白インクを含むと2色・第2の色数に相当)、即ち、背景画像の最大照射回数を1回と判断する。この場合、コントローラー10は、分割照射器(1)および分割照射器(2)(第1の分割照射器に相当)の照射強度を比較的に弱い照射強度(図12Aによれば3mJ/cm2)に設定し、分割照射器(3)(第2の分割照射器に相当)の照射強度を比較的に強い照射強度(図12Aによれば5mJ/cm2)に設定する。そうすることで、領域(1)(2)に対応する背景画像の最大照射回数が多くとも、領域(1)(2)の画像においてドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止できる。また、領域(3)の画像に仮照射される紫外線の照射強度が不必要に弱くなることを防止でき、画像の滲みや混色等を確実に防止できる。
このように、印刷実施例3では、異なる分割照射器(1)〜(3)により仮照射される領域(1)〜(3)ごとに、使用するインクの色数(最大照射回数)を判断し、各分割照射器(1)〜(3)の照射強度を決定する。そうすることで、ドットサイズが既定サイズよりも小さくなってしまうことを防止しつつ、出来る限り画像の滲みを抑えることができる(例えば、領域(3)に対応する画像は領域(1)(2)に対応する画像に比べて強い照射強度にて紫外線を仮照射するため、同じ画像内でも領域(3)では滲みなどをより抑制できる)。ただし、各領域(1)〜(3)に対応する画像データごとに、使用するインクの色数(最大照射回数)を取得しなければならず、コントローラー10の処理が複雑となる。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主としてプリンターについて記載されているが、電磁波硬化型インクに照射する電磁波強度の調整などについての開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<仮照射器の照射量の調整について>
前述の実施形態では、同じプリンター1内において、印刷データごとに媒体に吐出するインクの色数を判断し、仮照射器41の照射量を調整しているが、これに限らない。プリンターの機種ごとによっても媒体に吐出可能なインクの色数が異なる。そのため、仮に、吐出可能なインクの色数が多いプリンターと吐出可能なインクの色数が少ないプリンターにおいて、仮照射器の照射量を同じに設定したとする。そうすると、吐出可能なインクの色数が多いプリンターでは、背景画像の硬化度が高まり過ぎて、後に吐出されるインクのドットサイズが小さくなり、逆に、吐出可能なインクの色数が少ないプリンターでは、後に吐出されるインクのドットサイズが小さくなる虞がないにも関わらず、背景画像の硬化度が低く、滲み等が発生してしまう。そこで、前述の調整方法によって、異なる機種のプリンターごとの仮照射器の照射量を決定(調整)してもよい。
<照射強度について>
前述の実施形態では、最大照射回数、即ち、背景画像に最後に吐出するインク(有色インクのうちの最後のインク又は無色インク)を吐出するまでに背景画像が仮照射される回数に応じて、照射強度を決定している。これは、最後のインクを吐出する時に背景画像の硬化度が最も進んでいるからであり、最後のインクのドットが背景画像によって最もはじかれる易いからである。しかし、これに限らず、搬送方向下流側のヘッド31からのインク(例えば最後から2番目に吐出するインク)を吐出するまでに、背景画像が仮照射される回数に応じて照射強度を決定してもよい。
<印刷装置について>
ノズルからのインクの吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式に限らず、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
また、前述の実施形態では、ドラム21の周囲にヘッドと照射器を設け、その下を用紙が搬送方向に停まることなく搬送されるプリンター(図2)を例に挙げているがこれに限らない。例えば、ヘッドと照射器を用紙の搬送方向に水平に並べ、その下を用紙が搬送方向に停まることなく搬送されるプリンターでもよい。また、ヘッドと照射器を移動方向に移動させる動作と、移動方向と交差する方向に用紙を搬送する動作と、を交互に繰り返すプリンターでもよい。
<インクについて>
前述の実施形態では、電磁波硬化型インクとして「紫外線硬化型インク」を例に挙げているがこれに限らない。例えば、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波で硬化するインクであってもよいとする。