本発明は、使用者が仰臥状態で就寝した際に前記使用者の背部に当接する背当て板を備えた敷き寝具の背当て部構造であって、前記背当て板は本体部を使用者背部に対して高い抗力を及ぼす高抗力部に構成すると共に、同高抗力部の周縁に前記使用者の背部に対して前記本体部の高抗力部よりも低い抗力を及ぼす低抗力部を形成したことを特徴とする敷き寝具の背当て部構造を提供するものである。
また、本発明は、上述の敷き寝具の背当て部構造を備えた種々の敷き寝具についても提供する。
以下、図面を参照しながら具体的に説明するが、まず、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えたマット(以下、本実施形態に係るマット又は単にマットともいう。)を例にして説明を行い、その後、その他の敷き寝具について説明する。
〔敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材〕
図1は、ベッド11上に本実施形態に係る背当て部材10を介設して敷き寝具110を配置した説明図である。
この背当て部材10は、使用者が仰臥した際に、撓みすぎによって正しい就寝姿勢を維持することが困難な、換言すれば柔らかすぎるマットレス12上に敷くことにより、使用者が横臥した際のマットレス12による過剰な沈み込みを抑制し、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックス状態を使用者に生起させるものである。
すなわち、背当て部材10は、図1に示すところのマットレス12のような沈み込みの抑制対象となる敷き寝具110(以下、単に対象寝具という。)の就寝面13に配置して、過剰な柔軟性を緩衝するためのものである。
図1に示すように、使用直前の状態において背当て部材10は、ベッド11上に配置したマットレス12の就寝面13に配置されている。
就寝面13上での背当て部材10の配設位置は、仰臥状態で就寝する使用者の首部から背部及び臀部にかけて当接する位置としており、ここでは、就寝面13の左右略中央部で、就寝面13の長手方向の頭側寄り(ヘッドボード寄り)の位置としている。
すなわち、背当て部材10は、図12(b)に示すように、その平面視部分が人の胴体部分内に収まるような大きさを有し、その左右上端部が左右肩部下方に位置し、その左右下端部が左右臀部下方に位置するような大きさを有する。また、背当て部材10は、使用者の背部の幅方向略中央に配置した際に、使用者の左右腋部と接触しない左右腋部非接触領域を備えるものである。
なお、本実施形態では、背当て部材10は、図4に示すように、マットレス12上に、背当て部材10を有するマットレスカバー70を配置し、その上にクッション材101やベッドパッド102を配置しているが、これに限定されるものではなく、マットレス12上に、背当て部材10を配置し、その上にクッション材101及びベッドパッド102の少なくともいずれかをマットレス12の就寝面13上に配置しても良い。又は、背当て部材10を配置し、その上にシーツ111を直接配置しても良い。すなわち、対象寝具と横臥(仰臥)する人体との間に介設される位置であれば良い。また、以下の説明において、就寝面上での方向等を表すために、仰臥した使用者の体を基準として、頭−足方向や、体側方向という場合がある。すなわち、図1において就寝面上における頭−足方向は紙面左上−右下方向であり、体側方向は紙面左下−右上方向である。
背当て部材10は、板材にて形成されており、背当て部材10は、図2に示すように使用者の頭−足方向を長手とし、体側方向を短手とした平面視略矩形状としている。また、背当て部材10は、図2の下部及び右側の断面図に示すように、長手縁部及び短手縁部の厚みが外方に向けて漸次減少する断面視略台形状としている。
このような形状により、横臥する人の左右肩甲骨部分が背当て板の以下に示す低抗力部に位置し、背骨部分が背当て板の以下に示す高抗力部に位置する。
背当て部材10を形成する剛性な板材が好ましく、剛性な板材を使用することで、姿勢が真っ直ぐに矯正される。特に猫背の人は、この剛性な板材により姿勢が真っ直ぐに矯正される。
剛性な板材としては、乾燥させた木製合板が好ましい。
剛性な合板が好みでない人によって、弾性素材を使用してもよい。弾性素材は、横臥(仰臥)した使用者の重量によって偏平状に圧縮変形する素材であって、対象寝具の過剰な沈み込みを抑制することのできる素材であれば特に限定されるものではない。
弾性素材としては、例えば、多孔質素材、より具体的には、樹脂製のスポンジ素材を好適に使用することができる。
また、圧縮変形する割合は、沈み込みの抑制効果をどの程度生起させるかによって適宜変更可能であるが、好ましくは、仰臥した人体により最も圧力がかかる背当て部材10上の位置(以下、最大圧力位置ともいう。)において、その厚みが20分の1以上、2分の1以下で、0.3cm〜2.0cmの範囲内となる程度であるのが望ましい。
圧縮された時の厚みが、無負荷時(自由状態)における厚みの20分の1未満となると、沈み込みの抑制効果や、使用者の体に対する矯正効果が乏しくなるため好ましくない。
また、2分の1を越えると、弾力性が強すぎて、使用者に違和感や不快感を与えるおそれがある。
圧縮変形の割合を、20分の1以上、2分の1以下とすることにより、沈み込みの抑制効果や、使用者に対する矯正効果を生起しつつ、違和感や不快感を与えるおそれを可及的防止することができる。
また、背当て部材10は、上記剛性な板材の上層に柔軟素材からなる板材を積層することもできる。柔軟素材の厚みは特に限定されない。
または、上記剛性な板材の上に一枚の柔軟シートを被せることもできる。この一枚の柔軟シートは、剛性な板材による下からの圧迫感を解消させると共に、高さの微調整も兼ねている。
次に、使用者が横臥(仰臥)した際の最大圧力位置における圧縮変形時の厚みについてであるが、本発明者の研究により、就寝面13と使用者の背面との間がほんの数ミリ変化する程度で、就寝時の快適さや起床時の爽快感がかなり変化することが分かっている。
本実施形態では、高効力部の厚みは限定されないが、例えば6mm〜16mmである。具体的な厚みについては使用者の横臥した印象によって適宜選択される。
高抗力部の厚みは、使用期間によって厚みを増減するようにしてもよい。例えば、高抗力部の厚みが小さいものを所定期間使用して慣れた後に厚みの大きいものに変更して使用するようにしてもよい。その逆でもよい。
また、弾性素材を使用している場合、圧縮変形時の厚みが0.3cmを下回ると、使用者に違和感を感じさせるおそれは回避できるものの、使用者の体に対する矯正効果が乏しくなるため好ましくない。
また、圧縮変形時の厚みが2.0cmを上回ると、使用者に対して違和感を感じさせることとなり、快適な睡眠を妨げるおそれがあるため好ましくない。
最大圧力位置における圧縮変形時の厚みを0.3〜2.0cmの範囲内とすることにより、比較的違和感が少なく、使用者の体に矯正効果を生起させることができる。
図2の説明に戻り、背当て部材10は、その全体が仰臥状態で就寝した際に使用者の背部に当接する背当て板として機能するものであり、上部平面を形成する本体部15と、同本体部15の周縁に形成されたスロープ部16とを有している。
本体部15は、長手方向の長さを少なくとも使用者の首部から臀部までの長さとし、また、短手方向の長さL1を使用者の肩幅よりも狭い長さ、より好ましくは左右脇間の長さ(胸部胴体幅と略同じ長さ)とした矩形状の部位である。
また、スロープ部16は、本体部15から外方へ向けて厚みを漸次減少させつつ形成した部位であり、滑らかな連続斜面としている。なお、本実施形態においてスロープ部16は、連続的な傾斜面によって厚みを漸次減少させているが、これに限定されるものではなく、例えば不連続的(階段状)に厚みを漸次減少させるよう構成しても良い。
また、このスロープ部16の幅、特に長手縁部に形成したスロープ部16の幅L2は、使用者の脇から肩先までの長さと略同じ幅としている。
また、前述の本体部15は、図3に示すように、仰臥した使用者の背部に対して高い抗力を及ぼす部位であり、本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造において高抗力部として機能する部位である。
ここで、高抗力部とは、本体部15と人の背骨部分との接触面に働く力であって、人体の荷重に対して反対に作用する力、すなわち垂直抗力(反力)が作用する部位である。この高抗力部では、人体の荷重が大きいほど、垂直抗力が大きく作用する。また、体重が大きい人ほど荷重がかかるため大きく作用する。
しかも、床面から表面部まで厚みが大きいほど大きく作用する。これは、肩の部分を非接触箇所としており、厚みが増すと本体部15と人体との接触面が前記非接触箇所より上方に位置することになり、前記人体の荷重に対してより垂直抗力が増すからである。
また、スロープ部16は、仰臥した使用者の肩甲骨側に対して、本体部15に比して低い抗力を及ぼす部位であり、本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造において低抗力部として機能する部位である。
ここで、低抗力部とは、スロープ部16の箇所に前記高抗力部とは低い垂直抗力が発生する箇所である。すなわち、低抗力部は、端面から本体部に向かって厚みが増すような構造であるため、高抗力部より低い垂直抗力が作用する部位である。
なお、図3中における白抜きの矢印は、使用者が背当て部材10上に仰臥した際に受ける抗力のイメージを示したものであり、矢印の大きさは必ずしも正確なものではない。
〔本実施形態での敷き寝具〕
次に、背当て部構造を備えた敷き布団として有する敷き寝具110について、図4〜図9を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る敷き寝具110の分解構造を示した説明図である。本実施形態に係る敷き寝具110は、図4に示すように、ベッドフレーム108及びマットレス12の上面側に、本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造を備えた背当て部材10が背当部構造体66として内蔵するマットレスカバー70と、その上方にクッション材101と、さらにその上方にベッドパッド102を備える。
最初に、マットレスカバー70について説明し、クッション材101及びベッドパッド102の順で説明する。
〔敷き寝具の背当て部構造を備えたマットレスカバー〕
本実施形態に係る背当て部構造を備えたマットレスカバー70(以下、本実施形態に係るマットレスカバー70、又は単にマットレスカバー70ともいう。)について、図4、図6〜8を参照しながら説明する。
図4に示すように、本実施形態に係るマットレスカバー70は、短辺側を底面まで延伸させると共にその端部のみにゴム紐71を取り付けて構成し、長辺側はその端部をマットレス下端と面一上にすることで、底面側に開口を備えたボックスシーツのような形状を有し、下方に配設したマットレス12を上方から被せて包み込むような構造を有する。
また、マットレスカバー70には、同マットレスカバー70内に内蔵された背当部構造体76(背当て部材10)の外周縁に沿って、表面布74と裏面布75と(又は表面72の表面布74のみ)が縫い合わせられた縫着部77を形成しており、マットレスカバー70内での背当部構造体76の移動を規制している。
そして、このような本実施形態に係るマットレスカバー70によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することのないマットレスカバー70を提供することができる。
図7は、図4に示すシーツとは異なる形態を有するマットレスカバー70を示した説明図である。
なお、マットレスカバー70は、図4に示すシーツのマットレスカバー70を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図7に示すように、四隅に設けられたゴムバンド71にて敷き布団に係止するマットレスカバー70等であっても良い。
図8は、図7に示すマットレスカバー70の断面を示した説明図である。
特に、本実施形態に係るマットレスカバー70は、図8の断面図に示すように、表面布74と裏面布75との2枚の布地を背当て部材10を介して貼りあわせて形成、又は、表面布74のみをマットレスカバー70の表面72に背当て部材10を介して貼り合わせて形成した本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造を備えた背当て部材10を背当部構造体76として内蔵している点で、一般的なマットレスカバー70と構成を異にしている。
また、マットレスカバー70内に収容した背当部構造体76は、取出し可能に構成しても良く、さらにこの取出し口にファスナーFや面ファスナー等の閉塞係止具を設けて閉塞可能に構成しても良い。
また、本実施形態に係るマットレスカバー70は、背当て部材10を背当部構造体76として内蔵することで本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造を実現したが、これに限定されるものではなく、本実施形態に係る敷き寝具110の背当て部構造を備えた何らかの背当部構造体を表面布74と裏面布75の間に備えていれば良い。
例えば、前述のマットレス50で説明したように、就寝面の略全体に及ぶような平坦部59bが設けられた背当部構造体59を収容することで構成しても良い。
さらに、収容する背当部構造体には、図13に示すような後述の第1の変形例における切欠部23や幅広部24、後述の第2の変形例における隆起部材31等を設けても良く、第3の変形例における構成を適用して高さを調節可能としても良い。
なお、ここに示したマットレスカバー70は一例であり、例えば、敷き布団の全体を収容する袋状のマットレスカバー70や、ベッドパッド102等と一つに取り付けるボックスシーツなど、各種マットレスカバーに同様の構成を設けても良いのは言うまでもない。
また、ここに示したマットレスカバー70の例では、就寝面全体と略同じ面積を有する表面布74と裏面布75で形成したが、これに限定されるものではなく、いずれか一方の布が就寝面全体と略同じ面積を有する布とし、他方を少なくとも縫着部を形成できる程度の面積を有する布として形成しても良い。
〔敷き寝具のクッション材〕
次に、クッション材101について説明する。
図9は、本実施形態に係るクッション材101の構造を示した説明図である。
クッション材101は、マットレスカバー70の上面に載置するものであり、弾力性を有すると共に比較的柔軟性を有する柔軟クッション層101aと、その柔軟クッション層101aよりも硬質であり弾力性を有する硬質クッション層101bとの2層構造を有する。柔軟クッション層101aの厚みは、例えば35mm厚みであり、硬質クッション層101bの厚みは、例えば35mm厚みである。但し、各クッション層の厚みは特に限定されない。
なお、クッション材101は、柔軟クッション層101aと硬質クッション層101bとの組合わせに限られず、柔軟クッション層と柔軟クッション層、又は硬質クッション層と硬質クッション層との組合わせでもよい
柔軟クッション層101a及び硬質クッション層101bは、網目状に編み込まれたカバー部103と、カバー部103の内部に三次元立体編物(図示せず)が充填されている。
カバー部103は、ポリエステル等の素材で蜂の巣のような網目(ハニカムメッシュ)に形成したものであり、伸縮自在に形成されている。
三次元立体編物(図示せず)は、例えば、東洋紡株式会社製のブレスエアー(登録商標)を使用することができる。ブレスエアー(登録商標)は、繊維が三次元状に複雑に絡み合ってできており、その見た目を例えるならば、樹脂でできた白いインスタントラーメンのような構造体を有する。
クッション材101は、カバー部103内に上記ブレスエアー(登録商標)を充填したものに限られず、三次元に構成する編物であればよく、例えば、表裏面を編状に構成し、この表裏面を伸縮自在な素材で編状に連結して三次元に構成する編物でもよい。
また、三次元立体編物(図示せず)の密度は限定されず適宜選択することができる。本実施形態では、柔軟クッション層101aでは構造体の径が小さく高密度を有し、硬質クッション層101bでは構造体の径が大きく低密度である。
この三次元立体編物(図示せず)を使用することで、クッション材101内に空気層が形成され、その空気層が人体からのむれ等を遮断する。また、夏季では、クッション材101は、その内部に形成される空気層内でエアーの循環が活発になり、熱の放出性が高まるので、涼しくして就寝できるように構成できる。これに対して、冬季では、クッション材101の周囲を厚いシーツ材等で覆いその内部の空気層を取り囲むことで保温性を保持できるように構成することができる。
柔軟クッション層101aには、一方の短辺側に所定の大きさの切欠部93aを形成している。また、硬質クッション層101bには、前記柔軟クッション層101aに形成した切欠部93aとは異なる他方の短辺側に所定の大きさの切欠部93bを形成している。
このように構成することで、クッション材101はリバーシブルとすることができる。すなわち、人の好みに応じて、柔軟クッション層101aの表面側を上面にすることができ、または、硬質クッション層101bの表面側を上面にすることもできる。
図9に示すように、柔軟クッション層101aを上面とし頭側に切欠部93aを配置した場合では、この切欠部93aに枕部92を配置することができる。このとき、裏側にある硬質クッション層101bの足側端部は切欠部93bが形成されているので、この切欠部93bに矩形の小片マット部材104を配置させる。硬質クッション層101bの表面側を上面にした場合も同様である。
また、柔軟クッション層101aと硬質クッション層101bとはファスナーFにて連結・取外し自在としている。すなわち、柔軟クッション層101aの硬質クッション層101bとの外周面と切欠部13a及び切欠部13bの端部にまでファスナーFを配設している。
このように、ファスナーFを設けていることで、例えば、長時間使用して柔軟クッション層101a及び硬質クッション層101bのいずれかが劣化した場合に新品と交換できる。
〔敷き寝具のベッドパッド〕
図10は、本実施形態に係るベッドパッド102の構造を示した説明図である。
ベッドパッド102は、クッション材101の上面に載置するものであり、麻製の薄い敷き布団である。ベッドパッド102は、例えば、裏地を綿、中綿を麻で、表地を麻で順次3層に積層してキルティング加工にて形成している。
ベッドパッド102は、中綿材としては前記麻製に限定されず、綿製やウール製でもよい。
ベッドパッド102は、頭部側となる一方の短辺側に所定の大きさの切欠部93cを形成している。この切欠部93c内に枕部92を配置可能としている。すなわち、前述するクッション材101と同じ大きさの切欠部93cを設けており、この切欠部93cには枕部92を配置可能としている。
また、ベッドパッド102には、表地の表面側に、脚部を位置決めすることでベッド上に横臥時の中心位置を位置決めするための位置決め部材105を配設している。
位置決め部材105は、図4,10に示すように、左右一対のポケット部106と、そのポケット部106に挿入可能なクッション材101とからなる。ポケット部106は、長方形の布片の長辺側を前記ベッドパッド102の表地側に縫製することによりトンネル状にしたものである。ポケット部106は、トンネル状にすることで略円柱状のクッション材107を嵌脱可能に構成したものである。
そして、左右一対の位置決め部材105を設けることにより、この間に脚を位置させることで、横臥時のベッド上での略中心位置を決めることができ、背当て部材10の位置を背骨部分に一致させることができる。
位置決め部材105は、位置決め用として使用しない場合には、ポケット部106から中のクッション材107を抜き出すことで、トンネル状のポケット部106を押さえて平坦化させることができるので、位置決め部材105を有しない通常のベッドパッド102と同じ状態にすることができる。
〔枕を備える敷き寝具〕
次に、本実施形態に係る枕について、図11(a)〜(f)を参照しながら説明する。
図11(a)及び図11(b)は、本実施形態に係る敷き寝具110の一形態としての枕の外観を示した斜視図である。
枕部92は、図11(a)及び図11(b)に示すように、頚部当接体96と、後頭部当接体97と、2つの側部規制体98,98とで構成しており、隣接する部材の対向する面の縁部を互いに連結させて一体としている。
図11(c)は、枕の外観を示した平面図である。図11(d)は、図11(c)に示す枕のA−A断面図である。図11(e)は、図11(c)に示す枕のB−B断面図である。図11(f)は、図11(c)に示す枕のC−C断面図である。
また、枕部92は、図11(c)に示すように、底面視において切欠部93a〜93cと同じかやや小さめの(略同じ)形状としている。本実施形態では、枕部92の寸法は例えば体側方向約580mm、頭−足方向約400mmに形成している。
なお、以下の説明において各部の説明と共に理解を容易とすべく寸法について言及する場合があるが、仕様や用途等に応じて適宜変更可能である。
頚部当接体96は、仰臥した使用者の頚部を当接させるための部位である。頚部当接体96は、図11(f)からも分かるように、C−C断面視において略かまぼこ形に形成しており、例えば体側方向約80mm、頭−足方向約150mm、高さ約60mmとしている。
また、頚部当接体96は、布地の内部に籾殻や小豆、プラスチック片などの粒状充填体が充填されている。
粒状充填体は、頚部当接体96内に最大限に粒状充填体を充填した際の量よりも少ない量を充填しており、頚部当接体96内で粒状充填体が流動可能な状態としている。すなわち、使用者の頚部形状に合わせて高さや形状などを変化できるようにしている。
また、枕部92の前側面及び後側面には、図11(a)及び図11(b)に示すように、ファスナーFが設けられている。なお、ファスナーFは、頚部当接体96、後頭部当接体97、側部規制体98,98のそれぞれに設けられており、各内部に収容する粒状充填体の量を調整可能としている。
後頭部当接体97は、仰臥した使用者の後頭部を当接させるための部位であり、頚部当接体96の上部側(頭−足方向における頭側)に連結させて配設している。
後頭部当接体97は、例えば体側方向約80mm、頭−足方向約250mm、高さ約65mm程度に形成しており、頚部当接体96と同様に、内部に粒状充填体を流動可能な状態で充填している。
側部規制体98,98は、頚部当接体96及び後頭部当接体97の体側方向両側に連結させて配設しており、頚部当接体96及び後頭部当接体97よりもやや高い高さを有している。
具体的には、側部規制体98,98は、図11(c)〜図11(f)に示すように、内部に粒状充填体を流動可能な状態で充填しつつ、体側方向約250mm、頭−足方向約400mm、高さ約70mm程度にそれぞれ形成しており、仰臥状態で就寝する使用者の頭部位置が左右に大きくずれてしまうことを防止するように構成している。
そして、上述の構成を備える敷き寝具110によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することがないのは勿論のこと、使用者の頭部位置を穏やかに規制して、使用者の背部が背当て構造部59aから大きく逸脱してしまうことを防止することができる。
しかも、頚部当接体96を後頭部当接体97よりも高く構成しているため、図12に示すように、使用者が仰臥しながら就寝している際の気道を確保することができ、呼吸の阻害やいびきの発生を効果的に抑制することができる。
〔敷き寝具のベッドメイキング〕
次に、ベッドメイキングについて図5〜図10を参照して説明する。
まず、図5に示すように、一般のベッドフレーム108の上に一般のマットレスカバー70を載置する。次に、図6に示すように、そのマットレスカバー70の上に、本発明の背当て部材10を備えるマットレスカバー70を載置し、マットレスカバー70の四隅に係止用のゴムバンド71で係止する。
そして、図9に示すように、マットレスカバー70の上にクッション材101を載置する。クッション材101は、人の好みに応じて柔軟クッション層101a又は硬質クッション層101bのいずれかを上面にするのを選択する。さらに、図10に示すように、クッション材101の上面にベッドパッド102を載置する。最後に、図1に示すシーツ111を載置する。
以上のようにして、図1に示すようなベッドメイキングができる。
このようにベッドメイキングされた寝具で横臥すると以下の効果を奏することができる。
すなわち、横臥状態では背当て部材10により、図12(b)に示すように、頭部より正面視すると、人体の左右の胸面が外方に広がるように、背中面が背骨部分を頂点とし、肩甲骨部分を傾斜面とし、肩部分を底辺側の頂点部とする略台形状に姿勢を矯正することができる。
そして、このように構成した背当て部材10によれば、使用者の就寝時の姿勢を徐々に正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックス状態を生起することができ、しかも、使用者の寝返りが阻害されることを可及的防止できる。
すなわち、図12(a)に示すように背当て部材10を使用していない状態にあっては、使用者Pの背部及び臀部がマットレス12に深く沈み込んでしまい、太線で示す脊椎は、比較的大きく上下方向に蛇行してしまうこととなる。
また、このときの使用者Pの肩は、図12(a)の右図に示すように、背部がマットレス12中に沈み込むことにより相対的に上昇してしまい、脊椎と左右の肩先を結ぶ仮想線の角度αが比較的小さくなってしまう。付言すれば、仰臥状態にある使用者Pは、マットレス12によって両肩がすくめられ、胸が閉じた状態となってしまう。
この状態のまま就寝すると、使用者は、寝苦しさを覚えたり、自然な寝返りをうつことが困難となる。
一方、図12(b)に示すように、本実施形態に係る背当て部材10をマットレス12上に載置し、その上に背当て部材10を備えたマットレスカバー70等の敷き寝具を介して使用者Pが仰臥すると、左下図からも分かるように、図12(a)で示した場合に比して背部及び臀部の沈降が抑制されて、脊椎の上下方向の蛇行は小さく抑えられる。
また、使用者Pの背部の沈み込みが抑制されることにより、背部の位置が使用者Pの後頭部の位置に近くなるため、使用者Pの顎がやや上向きとなり、気道が十分確保されて、いびきの発生が抑制される。
しかも、図12(b)の右下図に示すように、背当て部材10は低抗力部としてのスロープ部16を備えているため、背部中央をせり上げて背部両側の左右腋部が相対的に沈降し、上方凸状で略円弧状の応力分布が掛かることとなる。
それゆえ、脊椎と左右の肩先を結ぶ仮想線の角度αが比較的大きくなり、胸が開くこととなるため、マットレス12によって肩がすくめられることによる寝苦しさを抑制することができる。
また、低抗力部としてのスロープ部16が存在することにより、使用者Pが寝返りをうつ際、左右いずれに寝返った場合でも高抗力部から低抗力部側へ体を回転させることとなるため、極めて容易に寝返りをうつことができる。なお、このことは健常者が就寝する場合に拘わらず、介護の現場等においても極めて有用である。
このように、本実施形態に係る背当て部材10によれば、これらの作用が相俟って、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することがない。
付言すれば、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造、及び、本実施形態に掛かる背当て部材10によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを円滑に行わせることができる。
しかも、図12(b)に示すように、側面視すると、枕部92の頭部接触位置と背骨部分とが略一直線上、又は枕の頭部接触位置が背骨部分より略2cm以内に高く設定することができ、人体を略一直線に保持できる効果を有する。
通常では、枕を載置することで、敷布団上面より上方に位置するが、本発明では、背当て部材10を配設するため、通常の枕位置であると、首部分を下方にした反り返りの状態になる。
そこで、本発明では、ベッドパッド102及びクッション材101に所定大きさの切欠部93a,93bを形成することにより、枕部92の高さ位置を通常より低くなるように設定している。加えて、横臥した状態では、枕部92の後頭部当接体97(図11に示す)を背当て部材10の高抗力部(本体部15)上面より高くしている。
上述してきたように、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造によれば、使用者が仰臥状態で就寝した際に前記使用者の背部に当接する背当て部材10を備えた敷き寝具の背当て部構造であって、前記背当て部材10は本体部を使用者背部に対して高い抗力を及ぼす高抗力部に構成すると共に、同高抗力部の周縁に前記使用者の背部に対して前記本体部の高抗力部よりも低い抗力を及ぼす低抗力部を形成したため、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することのない敷き寝具の背当て部構造を提供することができる。
このように、姿勢を正しくさせて横臥することができるので、安眠することができるのである。
(変形例)
次に、本実施形態に係る背当て部材としてのマットの第1の変形例について、図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、先に説明した背当て部材10と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
本第1の変形例に掛かるマット20は、高抗力部として機能する本体部15と、低抗力部として機能するスロープ部16とを備える点において前述の背当て部材10と同様の構成としているが、本体部15及びスロープ部16を内方へ向けて切り欠いて形成した切欠部23と、本体部15及びスロープ部16を外方へ向けて膨出させて形成した幅広部24とを、左右長手縁部の中途に備えている点で構成を異にしている。
切欠部23は、仰臥した使用者の左右肩甲骨に対応する位置を半円弧状に切り欠いて形成した部位であり、使用者の肩部と接触しない肩部非接触領域をより広くすることで、肩部の沈降をより助長する部位である。
また、幅広部24は、仰臥した使用者の臀部に対応する位置を幅広に形成した部位であり、対象寝具に対する臀部の沈み込みを更に広い範囲で抑制するための部位である。
このような構成を備えたマット20によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することや、使用者の寝返りを円滑に行わせることは勿論のこと、使用者の胸を更に開きつつ、臀部の安定感を確保することができる。なお、本第1の変形例では、切欠部23と、幅広部24との両者を備える構成としたが、いずれか一方を備える構成としても良い。
次に、本実施形態に係るマットの第2の変形例について図14〜図16を参照しながら説明する。第2の変形例に係るマット30は、先に説明した背当て部材10と同様の構成を備えているが、本体部15の頭側寄りで体側方向略中央部に隆起部材31を配置した点で構成を異にしている。
具体的には、図14に示すように、マット30は、本体部15とスロープ部16とを有すると共に、この本体部15の上面に対して着脱自在に構成された隆起部材31を備えている。
隆起部材31は、使用者の脊椎に対向する背面位置(以下、単に脊椎部分ともいう。)に当接させる隆起条を形成するための部材であり、図15に示すように短手方向断面視において扁平な山型形状を有し、その頂部を隆起条としている。また、長手方向の長さL3は、使用者の首の付け根部分から尾てい骨のやや上の腰のくびれの位置程度の長さとしている。
また、隆起部材31の周縁(図15における隆起部材31の裾の部分)は外方へ向けて漸次肉薄となるよう形成しており、本体部15に載置して使用者が仰臥した際に、隆起部材31と本体部15との境目に段差が生じて違和感を感じることがないよう構成している。
また、隆起部材31の本体部15への着脱は、隆起部材31及び/又は本体部15の対向面に配設した係止部材32を介して行うよう構成している。なお、本変形例では、このような係止部材32として面ファスナーを使用している。
そして、このような隆起部材31を備えるマット30によれば、図16に示すように、仰臥した使用者Pの脊椎部分に対し、隆起部材31により形成された隆起条が当接することとなり、脊椎の上下方向(紙面奥行き方向)の蛇行をより小さくすると共に、肩部の相対的な沈降を助長して使用者の胸をより開きやすくすることができる。
したがって、使用者Pの就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することや、使用者の寝返りを円滑に行わせることを更に助長することができる。
なお、本第2の変形例に係るマット30には、前述の第1の変形例における切欠部23や幅広部24を設けるようにしても良い。
次に、本実施形態に係るマットの第3の変形例について図17を参照しながら説明する。本第3の変形例に係るマット40は、先に説明した背当て部材10と同様の構成を備えているが、複数のシート状分割体41を重畳して形成し、マット40の高さを調整可能としている点で構成を異にしている。
具体的には、本第3の変形例では5枚のシート状分割体41(第1シート状分割体41a〜第5シート状分割体41e)を順に重畳してマット40を構成しており、使用者の好みに応じてシート状分割体41の枚数を増減させることにより、マット40の高さを変更可能としている。
したがって、使用者の体に合わせた矯正や、矯正の程度を徐々に増減させることができる。
また、各シート状分割体41の縁部には、外方へ向けて下り傾斜状の分割体スロープ部42が形成されている。
この分割体スロープ部42は、各シート状分割体41を順に重畳(例えば、第1→第2→第3の順や、第3→第4→第5の順のように連続する番号順に、上方から下方へ向けて面積が徐々に広くなるように順に重畳)することにより、マット40の連続的なスロープ部16を形成可能な傾斜としている。
従って、隣り合うシート状分割体41を重畳させることにより、重畳枚数を増減させた場合でも、連続的なスロープが形成されることとなり、マット40の高さの調整を可能とすることができるのは勿論のこと、マット40と就寝面13との間に段差が形成されることを防止できると共に、寝返りの容易性も確保することができる。
なお、本第3の変形例では、各シート状分割体41を単に重ね合わせる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、面ファスナーなどの係止部材を介して互いにずれないように重畳させて構成しても良いし、重畳させたマット40の体積と略同じ容積を有する(マット40にフィットする)袋状の収容体内に収容することで相互のズレを防止すべく構成しても良い。
また、本第3の変形例に係るマット40には、前述の第1の変形例における切欠部23や幅広部24、前述の第2の変形例における隆起部材31等を設けるようにしても良い。
〔敷き寝具の背当て部構造を備えたマットレス〕
次に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えたマットレス(以下、本実施形態に係るマットレス、又は単にマットレスともいう。)について、図18〜図20を参照しながら説明する。
図18は、本実施形態に係るマットレス50を示した説明図である。本実施形態に係るマットレス50は、同マットレス50の内部であって就寝面57側に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材10が、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備える構造体(以下、背当部構造体という。)として内蔵されている点で、一般的なマットレスと構成を異にしている。
すなわち、図19のマットレス50の断面図に示すように、マットレス50は、下層側から裏面布51、第一ウレタン層52a、第一フェルト層53a、ボンネルコイル層54、パーム層55、第二フェルト層53b、第二ウレタン層52bを順次積層して形成しており、第二ウレタン層52bと表面布56との間に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材10を背当部構造体58として配設している。
ここで、背当部構造体58は、弾力性を生起する(過剰な沈み込みの原因となる)ボンネルコイル層54や第二ウレタン層52bよりも就寝面57側であって表面布56よりも内側に配設している。
換言すれば、ボンネルコイル層54や第二ウレタン層52bの如き弾力性を生起するための主たる構成部材(以下、主弾性部材ともいう。)よりも就寝面寄りに本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えることで、主弾性部材による沈み込みを緩衝すべく構成している点に特徴を有している。
それゆえ、本実施形態に係るマットレス50によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することのないマットレス50を提供することができる。
なお、本実施形態に係るマットレス50は、背当て部材10を背当部構造体58として内蔵することで本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を実現したが、これに限定されるものではなく、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた何らかの背当部構造体を就寝面近傍に備えていれば良い。
例えば、図20の断面図に示すように、背当て部材10の形状をベースとした敷き寝具の背当て構造部59aの裾部分を広く引き伸ばし、就寝面57の略全体に及ぶような平坦部59bを設けた背当部構造体59を収容することで構成しても良い。
また、収容する背当部構造体には、前述の第1の変形例における切欠部23や幅広部24、前述の第2の変形例における隆起部材31等を設けても良く、第3の変形例にて示した構成を適用して高さを調節可能としても良い。隆起部材31を着脱自在とした場合や、高さの調整を可能とした場合には、背当部構造体58をマットレス50内部より取出し可能に構成するのが好ましい。
〔敷き寝具の背当て部構造を備えた敷き布団〕
次に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた敷き布団(以下、本実施形態に係る敷き布団、又は単に敷き布団ともいう。)について、図21及び図22を参照しながら説明する。
図21は、本実施形態に係る敷き布団60を示した説明図である。本実施形態に係る敷き布団60は、同敷き布団60の内部であって就寝面61側に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材10が背当部構造体66として内蔵されている点で、一般的な敷き布団と構造を異にしている。
すなわち、図22の敷き布団60の断面図に示すように、敷き布団60は、下層側から裏面布62、第一ウール層63a、ウレタン層64、第二ウール層63b、を順次積層して形成しており、第二ウール層63bと表面布65との間に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材10を背当部構造体66として配設している。
ここで、背当部構造体66は、弾力性を生起する(過剰な沈み込みの原因となる)第一ウール層63a、ウレタン層64、第二ウール層63b、すなわち、主弾性部材よりも就寝面61側であって表面布65よりも内側に配設している。
それゆえ、本実施形態に係る敷き布団60によれば、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することのない敷き布団60を提供することができる。
なお、本実施形態に係る敷き布団60は、背当て部材10を背当部構造体66として内蔵することで本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を実現したが、これに限定されるものではなく、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた何らかの背当部構造体を就寝面近傍に備えていれば良い。
例えば、前述のマットレス50で説明したように、就寝面の略全体に及ぶような平坦部59bを設けた背当部構造体59を収容することで構成しても良い。
また、収容する背当部構造体には、前述の第1の変形例における切欠部23や幅広部24、前述の第2の変形例における隆起部材31等を設けても良く、第3の変形例における構成を適用して高さを調節可能としても良い。
〔ポケット部を備える敷き寝具〕
次に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えたマット等の背当部構造体を収容するポケット部を備えた敷き寝具(以下、単にポケット付敷き寝具ともいう。)について、図23及び図24を参照しながら説明する。
図23は、ポケット付敷き寝具の一形態としてのマットレス80を示した説明図である。マットレス80は、その就寝面81を構成するベース生地としての表面布87に、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えた背当て部材10等の背当部構造体88が収容されるポケット部82を備えている点に特徴を有している。
特に図23においては、背当部構造体88の一例として、背当て部材10を挿入可能としたポケット部82を備える例を示している。
本実施形態においてポケット部82は、相対的に大きな主ポケット82aと、相対的に小さな副ポケット82bとの2つのポケットにより構成している。
主ポケット82aは、主布83を表面布87に対して縫い付けることで形成したものであり、就寝面81上に仰臥した使用者の足方向に開口するポケット状としている。
また、副ポケット82bは、副布84を表面布87に対して縫い付けることで形成したものであり、就寝面81上に仰臥した使用者の頭方向に開口するポケット状としている。
また、ポケット部82は、図23及び図24に示すように、副ポケット82bの開口部分近傍に、主ポケット82aの開口部分を上方から一部重畳させて形成しており、この重畳部85をポケット部82の挿入口86とすると共に、主ポケット82a及び副ポケット82bの内部を、背当て部材10を収容するための収容空間Vとしている。なお、図24では、マットレス80の主弾性部材近傍の内部構造については図示を省略している。
また、ポケット部82を構成する主布83は、図25に示すように、主ポケット82aが形成される就寝面81上の面積よりも大きな面積のものを使用して弛緩させた状態でその周縁に縫着部89を形成して縫着している。なお、図25では、マットレス80の主弾性部材近傍の内部構造や、収容空間V内に配設した背当部構造体88については図示を省略している。
同様に、ポケット部82を構成する副布84もまた、副ポケット82bが形成される就寝面81上の面積よりも大きな面積のものを使用して弛緩させた状態で縫着している。
このようなポケット部82を有するマットレス80によれば、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造を備えたマット等の背当部構造体を容易に収容することができ、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することがない。
また、主ポケット82aを足方向に開口させ、副ポケット82bを頭方向に開口させると共に、主ポケット82aの開口近傍と副ポケット82bの開口近傍とを主布83を上方として一部重合させた状態で縫着してポケット部82を形成しているため、就寝中に背当部構造体88が収容空間Vから離脱することを防止しつつ、使用者が就寝中に足を動かしたとき、具体的には膝を曲げた状態から伸ばした状態に動かした場合でも、ポケット部82に足が引っかかることを可及的防止することができる。
なお、本実施形態では、ポケット付敷き寝具の一形態としてマットレスを例に説明したがこれに限定されるものではなく、例えば、敷き布団やシーツにポケット部を設けるようにしても良い。
上述してきたように、本実施形態に係る敷き寝具の背当て部構造によれば、使用者が仰臥状態で就寝した際に前記使用者の背部に当接する背当て部材を備えた敷き寝具の背当て部構造であって、前記背当て部材は本体部を使用者背部に対して高い抗力を及ぼす高抗力部に構成すると共に、同高抗力部の周縁に前記使用者の背部に対して前記本体部の高抗力部よりも低い抗力を及ぼす低抗力部を形成したため、使用者の就寝時の姿勢を正しつつ、正しい姿勢で寝ることによる快適さやリラックスを生起することができ、しかも、使用者の寝返りを可及的阻害することのない敷き寝具の背当て部構造を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。