JP5506442B2 - タイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法 - Google Patents

タイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、タイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法に関し、詳しくは、耐久性が向上した寿命の長いタイヤ製造用ブラダー(以下、単に「ブラダー」とも称する)および該タイヤ製造用ブラダーの製造方法に関する。
一般に、タイヤの製造工程においては、タイヤの各構成部材を組み立てて生タイヤ(未加硫タイヤ)を成型する際に用いるタイヤ成型用ブラダーと、加硫時に最終的な製品タイヤ形状を付与するために用いるタイヤ加硫用ブラダーとの、大きく分けて2種類のブラダーが使用されている。
このうちタイヤ成型用ブラダーとしては、従来、天然ゴム配合物を用いて形成され、加硫された円筒状部材の表面に接着溶剤を塗布し、さらに硬化性シリコーンオイルを塗布したものが用いられている。また、タイヤ加硫用ブラダーには、従来、耐熱性および伸びを確保するためにブチルゴム配合物が用いられているが、ブラダーと加硫前の生タイヤとの密着を防止するために、ブラダー外表面および生タイヤ内面(インナーライナー)の双方に離型剤を塗布することが必要となっていた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、離型剤の使用を必要とすることから、工程増となるとともに加硫時にタイヤ品質に悪影響を及ぼす場合があり、離型剤の使用を抑えることができるブラダーの実現が求められていた。かかる問題の解決手段として、特許文献2および3には、ブラダーの外層をシリコーンゴム、内層をブチルゴムとする方法が、開示されている。
特開平6−339927号公報 特開昭57−181842号公報 特開平5−31724号公報
特許文献2および3に記載の方法は、シリコーンゴムを外層とすることで、離型剤を塗布することなく離型性能を高めることができる。また、シリコーンゴムはスチームと接触すると加水分解してしまうが、内層にブチルゴムを配置することで、シリコーンゴムに直接スチームが接触することを防止し、シリコーンゴムの耐久性を高めている。しかしながら、特許文献2および3に開示されているブラダーは、内層と外層との接着力が十分とは言えず、ブラダーの耐久性の面からも内層と外層との接着力がより強い、タイヤ製造用ブラダーが求められていた。
そこで本発明の目的は、耐久性が向上した寿命の長いタイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記問題を解消するため鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のタイヤ製造用ブラダーは、シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層と、該シリコーンゴム層の内側面をフッ素ゴムでコーティングしてなるコーティング層とを有し、
前記シリコーンゴム層が前記シリコーンゴム組成物をパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、前記コーティング層が前記フッ素ゴムをパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、かつ、
前記シリコーンゴム層が、シリコーンゴム100質量部に対し、1.0〜2.0質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、
前記コーティング層が、前記フッ素ゴム100質量部に対し、0.5〜1.5質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなることを特徴とするものである。
また、本発明のタイヤ製造用ブラダーは、前記フッ素ゴムを有機溶剤で液状にした後に、前記シリコーンゴム層の内側面をコーティングしてなることが好ましく、前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、エタノール、メタノールおよびトルエンよりなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
さらに、本発明のタイヤ製造用ブラダーは、前記シリコーンゴム層の160℃での破断伸びが300%以上であり、前記シリコーンゴム層の180℃での破断伸びが200%以上であることが好ましい。
さらに、本発明のタイヤ製造用ブラダーは、前記シリコーンゴム組成物中のシリコーンゴムの平均重量分子量が、60万以上であることが好ましく、前記フッ素ゴムの平均重量分子量が、10万以上であることが好ましい。
さらにまた、本発明のタイヤ製造用ブラダーは、前記コーティング層の厚みが、20〜100μmであることが好ましい。また、前記シリコーンゴム層を作製後、前記コーティング層が、前記シリコーンゴム層の内側面を前記フッ素ゴムでコーティングした後に前記フッ素ゴムを架橋させてなることが好ましい。
本発明のタイヤ製造用ブラダーの製造方法は、シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層の内側面に、フッ素ゴムをコーティングしてコーティング層を作製するタイヤ製造用ブラダーの製造方法であって、
前記シリコーンゴム組成物をパーオキサイド架橋剤で架橋して前記シリコーンゴム層を作製し、前記フッ素ゴムをパーオキサイド架橋剤で架橋して前記コーティング層を作製し、
前記シリコーンゴム層が、シリコーンゴム100質量部に対し、1.0〜2.0質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、
前記コーティング層が、前記フッ素ゴム100質量部に対し、0.5〜1.5質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなるものとすることを特徴とするものである。
また、本発明のタイヤ製造用ブラダーの製造方法は、前記シリコーンゴム層を作製後、前記フッ素ゴムでコーティングした後に前記フッ素ゴムを架橋させることが好ましい。
本発明によれば、上記構成としたことにより、耐久性が向上した寿命の長いタイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法を提供することができる。
本発明の一つの実施形態に係るタイヤ製造用ブラダーを示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態に係るタイヤ製造用ブラダーを示す図である。図1に示すように、本発明のタイヤ製造用ブラダー3は、シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層1と、該シリコーンゴム層1の内側面をフッ素ゴムでコーティングしてなるコーティング層2とを有することが肝要である。シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層1とすることで、シリコーンゴムの有する離型機能により内面液塗布が不要になる。また、シリコーンゴムは、タイヤ加硫時のスチームの水により加水分解して著しく耐久性が劣るが、本発明ではシリコーンゴム層1の内側面をフッ素ゴムでコーティングしてなるコーティング層2を設けることで、スチームの水が遮断され、シリコーンゴム層1の加水分解を防ぐことができ、従来のブチルゴムを用いたブラダーと同等の耐久性が得られる。なお、本発明において、シリコーンゴム層1の内側面とは、外方から金型、タイヤ等のゴム製品、ブラダー3の順に配置されている成型プレスのなかで、ゴム製品から見て最も遠いブラダー3の面を意味する。
本発明において用いることができるフッ素ゴムとしては、スチームの水を遮断し、シリコーンゴム層1との接着性が良好であれば限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、VDFとトリクロロフルオロエチレン(CTFE)との共重合体、VDFとHFPとテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、TFEとプロピレンとの共重合体、TFEと含フッ素ビニルエーテルとの共重合体、炭化水素系ジエン単量体と含フッ素単量体との共重合体などが例示され、特に、伸び等が良好なVDFとHFPとからなる二元系フッ素ゴムが好ましい。
また、本発明において、フッ素ゴムの平均重量分子量は10万以上であることが好ましく、30万以上60万以下であることが好ましい。フッ素ゴムの平均重量分子量が10万未満であると強度が落ちてクラックが入りやすくなるおそれがある。一方、フッ素ゴムの平均重量分子量は60万を超えるとタイヤ製造用ブラダー3の伸びがなくなるおそれがあり好ましくない。
さらに、本発明において、フッ素ゴムを有機溶剤で液状にした後に、シリコーンゴム層1の内側面をコーティングしてなることが好ましい。これにより、シリコーンゴム層1とコーティング層2との接着性をより良好にできる。
上記有機溶剤としては、フッ素ゴムを液状にすることができれば特に限定されないが、メチルエチルケトン、エタノール、メタノールおよびトルエンよりなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
また、上記フッ素ゴムを液状にしたものには、必要に応じて、従来よりフッ素ゴムの組成物に使用されている各種の添加剤を適宜添加することができる。例えば、後述する架橋剤等を必要に応じて添加することができる。
また、上記コーティング層2の厚みとしては、20〜100μmであることが好ましい。コーティング層2の厚みが20μm未満であるとスチームの水を十分に遮断できないおそれがあり、一方、コーティング層2の厚みが100μmを超えるとタイヤ製造用ブラダー3の伸びがなくなるおそれがあり好ましくない。
本発明において、シリコーンゴム組成物に使用できるシリコーンゴムとしては、本発明の所期の効果が得られれば限定されない。かかるシリコーンゴムとしては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、60万以上であることが好ましく、60万〜150万であることがより好ましく、80万〜100万であることがさらにより好ましい。シリコーンゴムの平均重量分子量が10万未満であると強度が落ちてクラックが入りやすくなるおそれがある。一方、シリコーンゴムの平均重量分子量は60万を超えるとタイヤ製造用ブラダー3の伸びがなくなるおそれがあり好ましくない。
また、本発明において、シリコーンゴム組成物中には、BET吸着法による比表面積が、好ましくは100m/g以上、より好ましくは200〜600m/gである乾式シリカを20〜80質量部含有していることが好ましく、40〜60質量部含有していることがより好ましい。これにより、シリコーンゴム組成物の強度が向上し、摩耗に強く、より耐久性が向上したブラダーを得ることができる。また、シリコーンゴム組成物は、成型加工の観点からミラブル型であることが好ましい。
さらに、本発明に好適に用いられるシリコーンゴム組成物としては、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)平均組成式(RSiO(4−x−y)/2(但し、Rは、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;0.01〜10質量部、
(C)比表面積100m/g以上の乾式シリカ;20〜80質量部、および、
(D)加硫剤を含有するものである。
(A)成分のベースポリマーとして使用する、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、通常の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に主原料(ベースポリマー)として使用されている公知のオルガノポリシロキサンである。
このようなオルガノポリシロキサンは、一般に平均組成式(RSiO(4−a)/2(但し、Rは、通常炭素数1〜10、特には炭素数1〜6の置換または非置換の1価炭化水素基を表し、これは分子中のシロキサン構造を形成するケイ素原子に結合するものであり、また、aは1.9〜2.4、特には1.95〜2.05の数である)で示され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個含有し、また、GPC分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは60万〜150万、より好ましくは80万〜100万程度の、基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
上記組成式において、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基;およびクロロメチル、ブロモエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、シアノエチル等のハロゲン置換またはシアノ基置換炭化水素基から選ばれ、各置換または非置換の1価炭化水素基は、異なっていても同一であってもよい。ここでアルケニル基としては、ビニル基が好ましく、また、その他の炭化水素基としては、メチル基、フェニル基およびトリフルオロプロピル基が好ましく、特にアルケニル基以外の置換または非置換の1価炭化水素基のうち95〜100mol%がメチル基であることが好ましい。アルケニル基の含有量は、全有機基(すなわち、上記の置換または非置換1価炭化水素基)R中、通常0.0001〜20mol%、好ましくは0.001〜10mol%、特には0.01〜5mol%とする。なお、1分子中に2個以上含有されるアルケニル基は、分子鎖両末端のケイ素原子または分子鎖途中のケイ素原子のいずれかに結合したものであっても、双方に結合したものであってもよいが、シリコーンゴム硬化物の物性等の点から、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものであることが好ましい。
上記オルガノポリシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノシロキサンであり、主鎖の一部に若干のRSiO3/2単位および/またはSiO4/2単位を含む分岐状構造を許容するものであるが、通常は、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)のみの繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(RSiO1/2単位)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などが挙げられる。
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、またはこれらの重合体の混合物である。(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、重量平均分子量の異なる2種以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン成分を併用する場合には、これらの2種以上の成分を併用、混合した混合物全体としての重量平均分子量の値が、前記範囲内となることが好ましい。
(A)成分の好適例としては、
Figure 0005506442
等が挙げられる。ここでRは、上記の置換または非置換の1価炭化水素基と同じであり、またp、qは、個々の単一の分子については、それぞれ上記の重量平均分子量を与える正の整数であり、重合度に分布を持った混合物としての均一成分については、平均値として上記の重量平均分子量を与える範囲の正数である。
(B)成分として使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用するものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式(RSiO(4−x−y)/2(但し、Rは、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、25℃における粘度が0.5〜1000cP、特には1〜500cP程度のものが挙げられ、一分子中のケイ素原子の数(または重合度)は2〜300、特には3〜200程度のものを使用することができる。その分子構造には特に制限はなく、従来の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に通常使用されるものと同様、例えば、直鎖状、環状、分岐状および三次元網状(レジン状)構造等各種のものが使用可能であるが、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に2個以上(通常、2〜200個程度)、好ましくは3個以上(例えば、3〜100個程度)含む必要がある。また、この化合物の水素原子以外のケイ素原子に結合する1価の有機基(例えば、上記平均組成式におけるR基)としては、(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換または非置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられるが、特にアルケニル基等の脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基、特にはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられるが、特に、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適である。
この(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、0.01〜10質量部、好適には0.1〜5.0質量部である。この添加量が少なすぎると、架橋密度が低くなりすぎ、その結果、硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与えることがあり、また強度も低下する。一方、多すぎると、表面が鏡面状にならなかったり、少なすぎる場合と同様に耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。なお、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
(C)成分の乾式シリカ(ヒュームドシリカ)は、強度を確保するために添加して強度調整を行うためのものであり、シリコーンゴムの熱による加水分解を抑制するために、乾式シリカを用いている。かかる乾式シリカとしては、シリコーンゴムの補強性充填剤として従来から周知とされているものが使用可能であるが、この目的のためにはBET吸着法による比表面積が100m/g以上であることが必要であり、好ましくは200〜600m/gである。また、これらシリカの表面に多数存在するシラノール基をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してシリカ微粉末の表面をエーテル結合したアルキル基等の有機基で被覆した疎水性シリカがより好ましい。この疎水化処理は、未処理の(C)成分をシリコーンゴム組成物の他の成分の一種以上と配合する前にあらかじめ上記処理剤と加熱下に混合することで行ってもよく、また、組成物を調製する際に未処理の(C)成分を他の成分および上記処理剤とともに加熱下に混合することによって、シリコーンゴム組成物の調製と同時に行ってもよい。これらのシリカは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。疎水性シリカとしては、具体的には、Aerosil R−812、R−812S、R−972、R−974(Degussa 社製)、Rheorosil MT−10(徳山曹達社製)、Nipsil SSシリーズ(日本シリカ(株)製)などを挙げることができる。
この(C)成分のシリカの添加量は、(A)成分100質量部に対し20〜80質量部、好適には40〜60質量部である。この添加量が少なすぎると、十分な強度および硬度が得られず、また、耐クリープ性の改善効果も不十分となる。一方、多すぎると、ゴム組成物の粘度が高くなりすぎ、注型を行うことが困難となる。
(D)成分の加硫剤としては、特に限定されないが、好ましくは、パーオキサイド架橋剤である。パーオキサイド架橋剤は、熱エネルギーでパーオキサイドを活性化させ、ラジカルを生成し、ラジカルによって上記(A)および(B)成分を架橋させることができる。また、パーオキサイド架橋剤で加硫されたゴムは、ゴム網目がポリマー末端のみならず、ポリマー中間に有するビニル基を介してポリマー中間部にも結合生成される。そのため、タイヤ加硫用ブラダーのように高温耐久性が要求される場合でも、ゴム網目を十分に維持でき、高い耐久性が得られる。このパーオキサイド架橋剤としては、例えば、2,5ジメチル2,5ビス(ターシャルブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。
上記シリコーンゴム組成物には、所望に応じ金属粉体を配合することができる。かかる金属粉体としては、ゴム配合組成物中の熱伝導率を高めることのできる金属の粉体であれば特に制限されるものではなく、アルミニウム、金、銀、銅等の純粋金属粉体を好適に使用することができる。かかる金属粉体は、好ましくは10〜500μm、より好ましくは100〜200μmの粒径を有する球状物とする。金属粉体が針状や板状の場合には、得られる架橋物の物性に異方性が現れ、好ましくない。この金属粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。この添加量が少なすぎると、ゴム配合組成物中の熱伝導率を十分に高めることができず、架橋反応の進行が表面と内部とで異なることになるおそれがある。一方、多すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎて、成型時に細部への組成物の充填が困難となるおそれがある。また、注型時間が延びて作業性が悪化する。
また、上記シリコーンゴム組成物には、所望に応じ無機粉体を配合することもできる。無機粉体は、前記(C)シリカおよび金属粉体以外のものであり、上記シリコーンゴム組成物の熱収縮率を調整する作用を有する。無機粉体の種類は特に制限されることはなく、例えば、マイカ、滑石、石こう、方解石、ホタル石、リン灰石、長石等の鉱物性粉体や、カオリン等の粘土、ゼオライト、ガラス粉体等を使用することができる。この無機粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対し、通常5質量部以下(即ち、0〜5質量部)、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜2質量部である。この添加量が少なすぎると、組成物に対する調整効果が不十分となるおそれがあり、一方、多すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎて、所期の効果を奏し得なくなるおそれがある。
その他、上記シリコーンゴム組成物には、必要に応じて、従来よりシリコーンゴム組成物に使用されている各種の添加剤を適宜添加することができる。例えば、常温での可使時間を延長させるなど、硬化時間の調整を行うための制御剤や、シランカップリング剤等を必要に応じて添加することができる。
また、本発明に好適に用いられるゴム組成物の調製は、(A)〜(D)成分および必要に応じて加えられる1種または2種以上の任意成分をプラネタリーミキサー、品川ミキサー等の公知の混合手段を用いて、任意の混合順序で混合することにより行うことができる。
上記シリコーンゴム組成物は、加硫後において以下のような物性を示すものである。すなわち、JIS A硬度が40以上、好適には50〜60であり、引き裂き強度が30kN/m以上、好適には40〜55kN/mであり、引張り強度が7MPa以上、好適には9〜12MPaであり、160℃での破断伸びが300%以上、180℃での破断伸びが200%以上、好適にはそれぞれ600〜900%であって、さらに、300%伸長時の引張り弾性率が2.0MPa以上、好適には3.0〜5.0MPaである。このように、本発明に好適に用いられるシリコーンゴム組成物は、高硬度であって引き裂き強度や引張り強度、破断伸び等に優れることに加えて引張り弾性率が高いものであることから、この組成物よりなるタイヤ加硫用ブラダーは、耐久性に優れるとともに屈曲性能にも優れるものとなる。
本発明のタイヤ製造用ブラダーの製造方法は、シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層1の内側面に、フッ素ゴムをコーティングしてコーティング層2を作製することが肝要である。また、本発明において、シリコーンゴム組成物をパーオキサイド架橋剤で架橋してシリコーンゴム層1を作製し、フッ素ゴムをパーオキサイド架橋剤で架橋してコーティング層2を作製することが好ましい。特に、シリコーンゴム組成物を架橋してシリコーンゴム層1を作製後、シリコーンゴム層1の内側面をフッ素ゴムでコーティングした後にフッ素ゴムを架橋することが好ましい。これにより、上記タイヤ製造用ブラダー3を得ることができる。
さらに、本発明において、シリコーンゴム層1が、シリコーンゴム100質量部に対し、1.0〜2.0質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなることが好ましく、コーティング層2が、フッ素ゴム100質量部に対し、0.5〜1.5質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなることが好ましい。タイヤ加硫時にブラダーは内圧負荷と真空減圧を繰り返し受けるため、シリコーンゴムとバリヤーゴムであるフッ素ゴムとは、密着性がないと剥がれやすく、一度スチームの水によりフッ素ゴムが剥がれるとフッ素ゴムが破れ、この損傷部からスチームの水がシリコーンゴムに透過し、シリコーンゴムの劣化を促進させるおそれがある。そこで、シリコーンゴムとフッ素ゴムとをともにパーオキサイド架橋剤で架橋することにより、シリコーンゴムとフッ素ゴムとの界面で化学的に共架橋でき、シリコーンゴム層1とコーティング層2との接着性をより良好にできる。
本発明において、架橋反応は、175℃以上、好ましくは175〜200℃の温度で、2時間以上、好ましくは2〜4時間にて好適に行うことができる。
本発明のタイヤ製造用ブラダーは、加硫時に最終的な製品タイヤ形状を付与するために用いるタイヤ加硫用ブラダー、あるいはタイヤの製造工程でタイヤの各構成部材を組み立てて生タイヤ(未加硫タイヤ)を成型する際に用いるタイヤ成型用ブラダーとして用いることができる。特に、高温条件でのタイヤとの良好な離型性およびシリコーンゴム組成物の加水分解の防止のため、タイヤ加硫用ブラダーとして使用することに好適である。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の記載により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
下記表1に示す条件でタイヤ製造用ブラダーを作製した。シリコーンゴム組成物として、信越化学工業社製KE1310ST〔組成はビニル基含有ジメチルポリシロキサン(主剤)、シリカ充填剤(30質量%)および白金触媒(加硫剤)(0.3質量%)を含有する〕100質量部に対して、同社製Cat.1310L〔組成はビニル基含有ジメチルポリシロキサン(主剤)およびメチルハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)を含有する〕10質量部と、アルミニウム粉体(粒径100μm)5質量部と、マイカ粉体2質量部と、架橋制御剤(信越化学工業社製:NO6)1.5質量部と、を混合したものを用いて、シリコーンゴム層を作製した。また、フッ素ゴムとして、VDFとHFPとからなる二元系フッ素ゴム(ダイキン工業社製、GLF−213F)100質量部をメチルエチルケトンで液状にし、橋制御剤(信越化学工業社製:NO6)1.0質量部を加えて、シリコーンゴム層の上にコーティングして、層厚が50μmのコーティング層を作製した。
(比較例1)
コーティング層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてタイヤ製造用ブラダーを作製した。
(比較例2)
ブチルゴム組成物として、JSR Butyl 268 100質量部に、クロロプレンゴム(昭和ネオプレン社製:ネオプレンW)を5質量部、カーボンブラック(東芝カーボン社製:600A)を40質量部、酸化亜鉛を5質量部、ステアリン酸を3質量部、樹脂加硫剤(田岡化学工業社:タッキロール201)を5質量部、アロマオイルを5質量部、加えたものを用いて、ブチルゴム層を作製した。また、実施例1で作製したシリコーンゴム組成物をブチルゴム層の上にコーティングしてコーティング層を作製し、タイヤ製造用ブラダーを作製した。
(比較例3)
コーティング層を設けなかったこと以外は、比較例2と同様にしてタイヤ製造用ブラダーを作製した。
(加硫耐久性)
得られたタイヤ製造用ブラダーを用いて、タイヤサイズPSR215/60R15.5のタイヤの加硫を加硫時間15分(13kg/cmスチーム圧で圧入時間5分、その後10分を内圧21kg/cm)でブラダーがパンクするまで繰り返して実施し、その使用寿命(加硫耐久性、回)につき評価した。これらの結果を、比較例2を100とした指数で下記の表1中に併せて示す。なお、指数の数値が大きいほど、加硫耐久性が良好であることを示す。なお、比較例3ではタイヤを製造できなかった。
(密着性)
得られたタイヤ製造用ブラダーとタイヤの密着性を評価した。タイヤがタイヤ製造用ブラダーに密着しない場合を○(無)、密着した場合を×(有)として表1に併記する。
Figure 0005506442
上記表1に示すように、実施例1のタイヤ製造用ブラダーは、比較例1および2のタイヤ製造用ブラダーに比べて非常に高い加硫耐久性が得られることが確かめられた。また、比較例3では、タイヤとタイヤ製造用ブラダーが密着し、タイヤを製造することができなかった。
1 シリコーンゴム層
2 コーティング層
3 タイヤ製造用ブラダー

Claims (10)

  1. シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層と、該シリコーンゴム層の内側面をフッ素ゴムでコーティングしてなるコーティング層とを有し、
    前記シリコーンゴム層が前記シリコーンゴム組成物をパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、前記コーティング層が前記フッ素ゴムをパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、かつ、
    前記シリコーンゴム層が、シリコーンゴム100質量部に対し、1.0〜2.0質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、
    前記コーティング層が、前記フッ素ゴム100質量部に対し、0.5〜1.5質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなることを特徴とするタイヤ製造用ブラダー。
  2. 前記フッ素ゴムを有機溶剤で液状にした後に、前記シリコーンゴム層の内側面をコーティングしてなる請求項1記載のタイヤ製造用ブラダー。
  3. 前記有機溶剤が、メチルエチルケトン、エタノール、メタノールおよびトルエンよりなる群から選ばれる1種である請求項1または2記載のタイヤ製造用ブラダー。
  4. 前記シリコーンゴム層の160℃での破断伸びが300%以上であり、前記シリコーンゴム層の180℃での破断伸びが200%以上である請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のタイヤ製造用ブラダー。
  5. 前記シリコーンゴム組成物中のシリコーンゴムの平均重量分子量が、60万以上である請求項1〜のうちいずれか一項に記載のタイヤ製造用ブラダー。
  6. 前記フッ素ゴムの平均重量分子量が、10万以上である請求項1〜のうちいずれか一項に記載のタイヤ製造用ブラダー。
  7. 前記コーティング層の厚みが、20〜100μmである請求項1〜のうちいずれか一項に記載のタイヤ製造用ブラダー。
  8. 前記シリコーンゴム層を作製後、前記コーティング層が、前記シリコーンゴム層の内側面を前記フッ素ゴムでコーティングした後に前記フッ素ゴムを架橋させてなる請求項1〜のうちいずれか一項に記載のタイヤ製造用ブラダー。
  9. シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴム層の内側面に、フッ素ゴムをコーティングしてコーティング層を作製するタイヤ製造用ブラダーの製造方法であって、
    前記シリコーンゴム組成物をパーオキサイド架橋剤で架橋して前記シリコーンゴム層を作製し、前記フッ素ゴムをパーオキサイド架橋剤で架橋して前記コーティング層を作製し、
    前記シリコーンゴム層が、シリコーンゴム100質量部に対し、1.0〜2.0質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなり、
    前記コーティング層が、前記フッ素ゴム100質量部に対し、0.5〜1.5質量部のパーオキサイド架橋剤で架橋されたものからなるものとすることを特徴とするタイヤ製造用ブラダーの製造方法。
  10. 前記シリコーンゴム層を作製後、前記フッ素ゴムでコーティングした後に前記フッ素ゴムを架橋させる請求項記載のタイヤ製造用ブラダーの製造方法。
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