JP2010221504A - タイヤ加硫用ブラダー - Google Patents
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Abstract
【課題】離製造時の乱流流動戻りを防止し、界面剥離を生じていない良好なタイヤ加硫用ブラダーを提供する。
【解決手段】シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、(E)加硫剤、および(F)加硫遅延剤を含有するタイヤ加硫用ブラダーである。
【選択図】なし
【解決手段】シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、(E)加硫剤、および(F)加硫遅延剤を含有するタイヤ加硫用ブラダーである。
【選択図】なし
Description
本発明はタイヤ加硫用ブラダーに関し、詳しくは、タイヤ製造における加硫時に、タイヤを拡張するために使用されるタイヤ加硫用ブラダーに関する。
一般に、タイヤの製造工程においては、タイヤの各構成部材を組み立てて生タイヤ(未加硫タイヤ)を成型する際に用いるタイヤ成型用ブラダーと、加硫時に最終的な製品タイヤ形状を付与するために用いるタイヤ加硫用ブラダーとの、大きく分けて2種類のブラダーが使用されている。
このうちタイヤ加硫用ブラダーは、従来、高温高圧の一定の条件で加硫して作製されるものであり、耐熱性および伸びを確保するためにブチルゴム配合物が用いられ、(1)生タイヤの金型への押付けおよび型付けがよい、(2)空気・スチーム透過性が低い、(3)耐スチーム劣化性がよい、(4)耐熱性に優れる、等の特徴を有していた。
しかしながら、ブチルゴムは、空気透過性が小さいためタイヤ最内層にインナーライナーとして使用され、そのため、加硫時にタイヤとブラダーのブチルゴム同士が共架橋し、金型から離型させるにはタイヤ内面もしくはブラダー側に離型効果のある離型剤を塗布することが必須となっていた(例えば、特許文献1参照)。
そこで、離型剤を塗布することが必要とされない技術として、シリコーンゴム組成物を使用することが知られ、例えば、特許文献2には、シリコーンゴム物性を確実に得ることのできる技術が、開示されている。
特開平6−339927号公報(段落[0002]等)
特開2007−2183号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、ブラダー製造における加硫は、金型内にブラダー用の組成物を投入した後、金型内にゴム流動にて未加硫組成物を充填させているが、この際に、特許文献2記載の方法では、金型内に乱流流動戻りが発生する。
また、この乱流流動戻りにより、外側の加硫した部分と内側の未加硫部分とで界面が形成され、かかる界面のブラダー部内への巻き込みによって、該界面で架橋接着不良を起し、タイヤ加硫使用時にブラダーの界面剥離が発生する。
さらに、タイヤ加硫用ブラダーに使用しているシリコーンゴム組成物中に、遊離SiHが存在すると、この遊離SiHによって剥離核が形成され、より顕著に界面剥離が発生する。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、製造時の乱流流動戻りを防止し、界面剥離を生じていない良好なタイヤ加硫用ブラダーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、タイヤ加硫用ブラダーに用いられるシリコーンゴム組成物中に、加硫遅延剤を含有することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、シリコーンゴム組成物からなるタイヤ加硫用ブラダーであって、
前記シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、
(E)加硫剤、および
(F)加硫遅延剤
を含有することを特徴とする。
前記シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、
(E)加硫剤、および
(F)加硫遅延剤
を含有することを特徴とする。
また、本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、前記加硫遅延剤がエチニルメチルデシルカルビノールであることが好ましく、前記加硫剤が、白金族金属系触媒またはパーオキサイド架橋剤であることが好ましい。さらに、前記シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対し、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1.0〜5.0質量部、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ;10〜90質量部
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上;(C)成分の配合量に対し5〜50質量%、
(E)加硫剤が白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の質量換算で0.1〜1000ppm、または、加硫剤がパーオキサイド架橋剤;0.2〜1.0質量部、および
(F)加硫遅延剤;0.1〜1.0質量部
を含有することが好ましい。
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1.0〜5.0質量部、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ;10〜90質量部
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上;(C)成分の配合量に対し5〜50質量%、
(E)加硫剤が白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の質量換算で0.1〜1000ppm、または、加硫剤がパーオキサイド架橋剤;0.2〜1.0質量部、および
(F)加硫遅延剤;0.1〜1.0質量部
を含有することが好ましい。
さらに、本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、前記シリコーンゴム組成物の加硫反応温度160℃における加硫速度T0.9が、7分以上であることが好ましく、前記シリコーンゴム組成物が、加硫反応後に、12〜48時間、140〜175℃で熱処理されてなることが好ましい。
本発明によれば、製造時の乱流流動戻りを防止し、界面剥離を生じていない良好なタイヤ加硫用ブラダーを提供することが可能となった。
以下、本発明の好適実施形態について、詳細に説明する。
本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、シリコーンゴム組成物からなるものであり、かかるシリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、
(E)加硫剤、および
(F)加硫遅延剤
を含有するものである。加硫遅延剤を含有することにより、再架橋が起こるため界面を生じず、乱流流動戻りを防止できる。
本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、シリコーンゴム組成物からなるものであり、かかるシリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、
(E)加硫剤、および
(F)加硫遅延剤
を含有するものである。加硫遅延剤を含有することにより、再架橋が起こるため界面を生じず、乱流流動戻りを防止できる。
本発明において(A)成分のベースポリマーとして使用する、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、通常の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に主原料(ベースポリマー)として使用されている公知のオルガノポリシロキサンである。
このようなオルガノポリシロキサンは、一般に平均組成式(R2)aSiO(4−a)/2(但し、R2は、通常炭素数1〜10、特には炭素数1〜6の置換または非置換の1価炭化水素基を表し、これは分子中のシロキサン構造を形成するケイ素原子に結合するものであり、また、aは1.9〜2.4、特には1.95〜2.05の数である)で示され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個含有し、また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは600000〜1200000、より好ましくは600000〜1000000程度の、基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
前記組成式において、R2はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等のアルキル基;ビニル、アリル、プロぺニル、イソプロペニル、ブテニル等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基;およびクロロメチル、ブロモエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、シアノエチル等のハロゲン置換またはシアノ基置換炭化水素基から選ばれ、各置換または非置換の1価炭化水素基は、異なっていても同一であってもよい。ここでアルケニル基としては、ビニル基が好ましく、また、その他の炭化水素基としては、メチル基、フェニル基およびトリフルオロプロピル基が好ましく、特に、アルケニル基以外の置換または非置換の1価炭化水素基のうち95〜100モル%がメチル基であることが好ましい。アルケニル基の含有量は、全有機基(即ち、上記の置換または非置換1価炭化水素基)R2中、通常0.0001〜20mol%、好ましくは0.001〜10mol%、特には0.01〜5mol%であり、特にビニル基含有量が0.10質量%以下であることが好ましい。なお、1分子中に2個以上含有されるアルケニル基は、分子鎖両末端のケイ素原子または分子鎖途中のケイ素原子のいずれかに結合したものであっても、双方に結合したものであってもよいが、シリコーンゴム硬化物の物性等の点から、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものであることが好ましい。
このオルガノポリシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2単位)の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノシロキサンであり、主鎖の一部に若干のRSiO3/2単位および/またはSiO4/2単位を含む分岐状構造を許容するものであるが、通常は、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2単位)のみの繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R3SiO1/2単位)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などが挙げられる。
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、またはこれらの重合体の混合物である。(A)成分のアルニケル基含有オルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、重量平均分子量の異なる2種以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン成分を併用する場合には、これらの2種以上の成分を併用、混合した混合物全体としての重量平均分子量の値が、前記範囲内となることが好ましい。
(A)成分の好適例としては、
等が挙げられる。ここでRは、上記の置換または非置換の1価炭化水素基と同じであり、またn、mは、個々の単一の分子については、それぞれ上記の重量平均分子量を与える正の整数であり、重合度に分布を持った混合物としての均一成分については、平均値として上記の重量平均分子量を与える範囲の正数である。
等が挙げられる。ここでRは、上記の置換または非置換の1価炭化水素基と同じであり、またn、mは、個々の単一の分子については、それぞれ上記の重量平均分子量を与える正の整数であり、重合度に分布を持った混合物としての均一成分については、平均値として上記の重量平均分子量を与える範囲の正数である。
本発明において(B)成分として使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用するものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、25℃における粘度が0.5〜1000cP、特には1〜500cP程度のものが挙げられ、一分子中のケイ素原子の数(または重合度)は2〜300、特には3〜200程度のものを使用することができる。その分子構造に特に制限はなく、従来の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に通常使用されるものと同様、例えば、直鎖状、環状、分岐状および三次元網状(レジン状)構造等各種のものが使用可能であるが、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に2個以上(通常、2〜200個程度)、好ましくは3個以上(例えば、3〜100個程度)含む必要がある。また、この化合物の水素原子以外のケイ素原子に結合する1価の有機基(例えば、上記平均組成式におけるR1基)としては、(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換または非置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられるが、特にアルケニル基等の脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基、特にはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)1SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられるが、特に、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適である。
この(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、好適には1.0〜5.0質量部である。この添加量が少なすぎると、架橋密度が低くなりすぎ、その結果、硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与えるおそれがあり、また強度も低くなるおそれがある。一方、多すぎると、表面が鏡面状にならなかったり、少なすぎる場合と同様に耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。なお、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明で使用する(C)成分の乾式シリカ(ヒュームドシリカ)は、強度を確保するために添加して強度調整を行うためのものであり、シリコーンゴムの熱による加水分解を抑制するために、乾式シリカを用いている。かかる乾式シリカとしては、シリコーンゴムの補強性充填剤として従来から周知とされているものが使用可能であるが、この目的のためにはBET吸着法による比表面積が100m2/g以上であることが必要であり、好ましくは200〜600m2/gである。また、これらシリカの表面に多数存在するシラノール基をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してシリカ微粉末の表面をエーテル結合したアルキル基等の有機基で被覆した疎水性シリカがより好ましい。この疎水化処理は、未処理の(C)成分をシリコーンゴム組成物の他の成分の一種以上と配合する前にあらかじめ上記処理剤と加熱下に混合することで行ってもよく、また、組成物を調製する際に未処理の(C)成分を他の成分および上記処理剤とともに加熱下に混合することによって、シリコーンゴム組成物の調製と同時に行ってもよい。これらのシリカは1種単独でも2種以上を併用してもよい。疎水性シリカとしては、具体的には、Aerosil R−812、R−812S、R−972、R−974(Degussa社製)、Rheorosil MT−10(徳山曹達社製)、Nipsil SSシリーズ(日本シリカ(株)製)などを挙げることができる。
この(C)成分のシリカの添加量は、好適には(A)成分100質量部に対し10〜90質量部、より好適には60質量部である。この添加量が少なすぎると、十分な強度および硬度が得られないおそれがあり、また、耐クリープ性の改善効果も不十分となる場合もある。一方、多すぎると、ゴム組成物の粘度が高くなりすぎ、注型を行うことが困難となるおそれがある。
本発明で使用する(D)成分は、ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上であり、好ましくはジメチルジシラノールである。また、この(D)成分の添加量は、好適には(C)成分の配合量に対し5〜50質量%であり、より好適には30〜40質量%である。この添加量が少なすぎると、シリカ分散が得られないおそれがあり、一方、多すぎると、成型物の形状維持が困難となるおそれがある。
本発明で使用する(E)成分の加硫剤としては、特に限定されないが、好ましくは、白金族金属系触媒またはパーオキサイド架橋剤である。白金族金属系触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒である。かかる白金族金属系触媒は、ラジカルを発生することなく、熱エネルギーのみで上記(A)および(B)成分を架橋させることができ、タイヤ加硫ブラダーのように高温耐久性が要求される場合でも、ポリマー切断がなく、耐熱性を確保するために使用される。また、白金族金属系触媒で加硫されたゴムは、ゴム網目がポリマー末端でのみ結合生成される。この白金族金属系触媒としては、白金ブラック;塩化白金酸;塩化白金酸のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体等の白金化合物;およびロジウム、パラジウム等の白金族金属を含有する化合物等を挙げることができる。特に好ましくは、(A)成分と(B)成分との相溶性の点から、塩化白金酸(H2PtCl6/nH2O)とビニルシロキサンを混合反応させて生成した白金・ビニルシロキサン錯体等のシラン、シロキサン変性物である。なお、この場合、白金族金属と錯体を形成している配位子としてのビニルシロキサンは白金族金属系触媒の一構成要素であり、上記(A)成分には該当しない。この白金族金属系触媒の配合量は、白金族金属の質量換算で(A)および(B)成分の合計質量に対して好適には0.1〜1000ppm、より好適には1〜200ppmである。この配合量が少なすぎると、架橋開始温度が高くなりすぎ、終了時間の遅延につながるおそれがある。一方、多すぎると、注型が完全に終わる前に架橋が開始されるおそれがある。
パーオキサイド架橋剤は、熱エネルギーでパーオキサイドを活性化させ、ラジカルを生成し、ラジカルによって上記(A)および(B)成分を架橋させることができる。また、パーオキサイド架橋剤で加硫されたゴムは、ゴム網目がポリマー末端のみならず、ポリマー中間に有するビニル基を介してポリマー中間部にも結合生成される。そのため、タイヤ加硫ブラダーのようにスチーム耐久が要求される場合でも、ゴム網目を十分に維持でき高い耐久性が得られる。このパーオキサイド架橋剤としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。さらに、このパーオキサイド架橋剤の配合量は、上記(A)成分100質量部に対し、好適には0.2〜1.0質量部である。この配合量が少なすぎると、架橋開始温度が高くなりすぎ、終了時間の遅延につながるおそれがある。一方、多すぎると、注型が完全に終わる前に架橋が開始されるおそれがある。
本発明で使用する(F)成分の加硫遅延剤は、特に制限されないが、例えば、エチニルメチルデシルカルビノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、2−エチニル−イソプロパノール、2−エチニル−ブタン−2−オール、および3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレンアルコール、トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、ジメチル−ビス−(3−メチル−1−ブチン−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、および((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシランなどのシリル化アセチレンアルコール、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジアリル、およびマレイン酸ビス−(メトキシイソプロピル)などの不飽和カルボン酸エステル、2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、および3−フェニル−3−ブテン−1−インなどの共役エンイン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのビニルシクロシロキサン、ならびに上記の共役エンインと上記のビニルシクロシロキサンの混合物が挙げられる。特に好ましくは、エチニルメチルデシルカルビノールである。
本発明で使用する(F)成分の加硫遅延剤の添加量は、好適には0.1〜1.0質量部であり、より好適には0.4〜0.8質量部である。この添加量が少なすぎると、十分な加硫遅延効果が得られないおそれがあり、一方、多すぎても、所期の性能のさらなる向上効果は発現しにくく、コストが高くなるため、好ましくない。
また、本発明において、シリコーンゴム組成物に、所望に応じ金属粉体を配合することができる。かかる金属粉体としては、ゴム配合組成物中の熱伝導率を高めることのできる金属の粉体であれば特に制限されるものではなく、アルミニウム、金、銀、銅等の純粋金属粉体を好適に使用することができる。かかる金属粉体は、好ましくは10〜500μm、より好ましくは100〜200μmの粒径を有する球状物とする。金属粉体が針状や板状の場合には、得られる架橋物の物性に異方性が現れ、好ましくない。この金属粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対して、通常10質量部以下、即ち、0〜10質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。この添加量が少なすぎると、ゴム配合組成物中の熱伝導率を十分に高めることができず、架橋反応の進行が表面と内部とで異なることになる場合がある。一方、多すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎて、成型時に細部への組成物の充填が困難となる場合がある。また、注型時間が延びて作業性が悪化する。
さらに、本発明において、シリコーンゴム組成物に、所望に応じ無機粉体を配合することもできる。無機粉体は、前記(C)シリカおよび金属粉体以外のものであり、本発明の組成物の熱収縮率を調整する作用を有する。無機粉体の種類は特に制限されることはなく、例えば、マイカ、滑石、石こう、方解石、ホタル石、リン灰石、長石等の鉱物性粉体や、カオリン等の粘土、ゼオライト、ガラス粉体等を使用することができる。この無機粉体の添加量は、(A)成分100質量部に対し、通常5質量部以下、即ち、0〜5質量部、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜2質量部である。この添加量が少なすぎると、組成物に対する調整効果が不十分となる場合があり、一方、多すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎて、所期の効果を奏し得なくなる場合がある。
さらにまた、本発明において、必要に応じて、シリコーンゴム組成物に、従来よりシリコーンゴム組成物に使用されている各種の添加剤を適宜添加することができる。例えば、常温での可使時間を延長させるなど、硬化時間の調整を行うための制御剤や、シランカップリング剤等を必要に応じて添加することができる。
また、本発明において、シリコーンゴム組成物の調製は、(A)〜(F)成分および必要に応じて加えられる1種または2種以上の任意成分をプラネタリーミキサー、品川ミキサー等の公知の混合手段を用いて、任意の混合順序で混合することにより行うことができる。
本発明において、シリコーンゴム組成物の加硫反応は、120〜200℃、好ましくは140〜180℃、より好ましくは160〜170℃の温度、さらにより好ましくは160℃で好適に行うことができる。
また、本発明において、加硫反応の活性化エネルギー(Q=20〜30kcal/mol)を考慮して、シリコーンゴム組成物の加硫速度T0.9が規定されていることが好ましい。ここで、加硫速度T0.9とは、90%加硫するために必要な時間(分)である。
具体的には、シリコーンゴム組成物の加硫反応温度160℃における加硫速度T0.9が、7分以上であることが好ましく、7〜20分であることがより好ましく、7〜15分であることがさらにより好ましい。加硫速度T0.9を7分以上とすることで、再架橋による結合時間をより与えることができ、界面剥離を防止できる。また、加硫の活性化エネルギー(Q=20〜30kcal/mol)を考慮して、加硫反応温度150℃では14分以上が好ましく、加硫反応温度170℃では3.5分以上が好ましい。
本発明において、シリコーンゴム組成物が、加硫反応後に、12〜48時間、140〜175℃で熱処理(ポストキュア)されてなることが好ましい。これにより、残存SiHが共架橋して加水分解を抑制するため、界面剥離を防止することができる。また、熱処理温度が、140℃未満では十分な熱処理効果を得ることができないおそれがあり、一方、175℃を超えると、再結合SiHが分解して遊離SiHを生成して、剥離核が形成されるおそれがある。
本発明のタイヤ加硫用ブラダーにおいて、シリコーンゴム組成物が、加硫後において以下のような物性を示すものであることが好ましい。すなわち、JIS A硬度が40以上、好適には50〜60であり、引き裂き強度が30kN/m以上、好適には40〜55kN/mであり、引張り強度が7MPa以上、好適には9〜12MPaであり、破断伸びが600%以上、好適には600〜900%であって、さらに、300%伸長時の引張り弾性率が2.0MPa以上、好適には3.0〜5.0MPaである。このように、本発明において、シリコーンゴム組成物が、高硬度であって引き裂き強度や引張り強度、破断伸び等に優れることに加えて引張り弾性率が高いものであることから、このシリコーンゴム組成物よりなるタイヤ加硫用ブラダーは、耐久性に優れるとともに屈曲性能にも優れるものとなる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の記載により何ら限定されるものではない。
(実施例1、2、従来例1および比較例1)
下記表1に示す条件でタイヤ加硫用ブラダーをそれぞれ作製した。タイヤ加硫用ブラダー作製において、加硫反応中、温度は160℃で一定とした。得られたタイヤ加硫用ブラダーのブラダー界面剥離の有無について、評価した。また、得られたタイヤ加硫用ブラダーを用いて、タイヤサイズPSR215/60R15.5のタイヤの加硫を加硫時間15分(13kg/cm2スチーム圧で圧入時間5分、その後10分を内圧21kg/cm2)で500回行い、タイヤ加硫用ブラダーの加硫耐久性(タイヤ加硫の可能な回数、回)につき評価した。これらの結果を、下記の表1中に併せて示す。なお、表1中、配合成分の数値は質量部を示し、白金族金属系触媒の数値のみppmを示す。
下記表1に示す条件でタイヤ加硫用ブラダーをそれぞれ作製した。タイヤ加硫用ブラダー作製において、加硫反応中、温度は160℃で一定とした。得られたタイヤ加硫用ブラダーのブラダー界面剥離の有無について、評価した。また、得られたタイヤ加硫用ブラダーを用いて、タイヤサイズPSR215/60R15.5のタイヤの加硫を加硫時間15分(13kg/cm2スチーム圧で圧入時間5分、その後10分を内圧21kg/cm2)で500回行い、タイヤ加硫用ブラダーの加硫耐久性(タイヤ加硫の可能な回数、回)につき評価した。これらの結果を、下記の表1中に併せて示す。なお、表1中、配合成分の数値は質量部を示し、白金族金属系触媒の数値のみppmを示す。
*2)ヒュームドシリカ(商品名:エアロジル300、日本エアロジル社製)
*3)スピンドルオイル(商品名:Super OilY22、日石三菱社製)
上記表1に示すように、本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、乱流流動戻りおよびブラダー界面剥離が発生せず、従来例1および比較例1と比較して、良好な加硫耐久性が得られることが確かめられた。
Claims (6)
- シリコーンゴム組成物からなるタイヤ加硫用ブラダーであって、
前記シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ、
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上、
(E)加硫剤、および
(F)加硫遅延剤
を含有することを特徴とするタイヤ加硫用ブラダー。 - 前記加硫遅延剤がエチニルメチルデシルカルビノールである請求項1記載のタイヤ加硫用ブラダー。
- 前記加硫剤が、白金族金属系触媒またはパーオキサイド架橋剤である請求項1または2記載のタイヤ加硫用ブラダー。
- 前記シリコーンゴム組成物が、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対し、
(B)平均組成式(R1)xHySiO(4−x−y)/2(但し、R1は、脂肪族不飽和基を除く置換または非置換の1価炭化水素基であり、xおよびyはそれぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1、かつ、1.002≦x+y≦3を満足する正数である)で表され、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;1.0〜5.0質量部、
(C)比表面積100m2/g以上の乾式シリカ;10〜90質量部
(D)ジメチルジシラノール、ビニルトリメトキシシランおよびジフェニルジシラノールよりなる群から選ばれる1種以上;(C)成分の配合量に対し5〜50質量%、
(E)加硫剤が白金族金属系触媒;(A)および(B)成分の総量に対し白金族金属の質量換算で0.1〜1000ppm、または、加硫剤がパーオキサイド架橋剤;0.2〜1.0質量部、および
(F)加硫遅延剤;0.1〜1.0質量部
を含有する請求項3記載のタイヤ加硫用ブラダー。 - 前記シリコーンゴム組成物の加硫反応温度160℃における加硫速度T0.9が、7分以上である請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ加硫用ブラダー。
- 前記シリコーンゴム組成物が、加硫反応後に、12〜48時間、140〜175℃で熱処理されてなる請求項1〜5のうちいずれか一項記載のタイヤ加硫用ブラダー。
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JP2017008202A (ja) * | 2015-06-22 | 2017-01-12 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ加硫ブラダー用シリコーンゴム組成物およびこれを用いたタイヤ加硫ブラダー |
WO2022038176A1 (en) * | 2020-08-19 | 2022-02-24 | Bridgestone Europe Nv/Sa | Bladder for pneumatic tyre vulcanization molds |
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