JP2005066848A - タイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブラダーに対する複数の要求特性を同時に満足し、かつブラダーのゲージ分布を均一化することを可能にし、更には補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持するようにしタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供する。
【解決手段】グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダー6A,6Bの内側に加熱加圧媒体Mを充填しながら加硫を行う。加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダー6A,6Bの内側に加熱加圧媒体Mを充填しながら加硫を行う。加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラダーを用いてタイヤを加硫する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持するようにしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤを加硫する場合、グリーンタイヤを金型内に投入し、グリーンタイヤの内側でブラダーを膨らませることで、そのグリーンタイヤを金型の内面に押し付けるようにしている。通常、ブラダーは気体透過率が低いブチル系ゴム組成物から構成されているが、ブチル系ゴム組成物からなるブラダーは離型性が悪いという欠点がある。そのため、グリーンタイヤの内面には離型剤が塗布されるのが一般的である。
【0003】
近年、タイヤ製造工程の簡略化を図るために、グリーンタイヤの内面に塗布される離型剤を廃止し、その替わりに、ブラダーの表面にシリコーンのコーティング膜を形成することで離型性を確保することが行われている。しかしながら、シリコーン皮膜は非常に薄いため、ブラダーの構造的な寿命に比べて離型性を良好に保てる期間が極めて短いという欠点がある。そのため、ブラダーの表面に補修液を塗布したり、グリーンタイヤの内面に補修液を塗布して加硫時にブラダーの表面にシリコーン皮膜を転写するなどの補修作業を定期的に行うことが必要とされている。
【0004】
これに対して、表層を離型性が優れたゴム組成物から構成した多層構造のブラダーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、補修作業は殆ど不要である。しかしながら、多層構造のブラダーは各層のゲージ分布を均一にするのが困難であり、実用性に乏しいものである。
【0005】
また、離型性に優れたシリコーン系ゴム組成物だけでブラダーを構成することも考えられるが、その場合、熱源であるスチームによってシリコーン系ゴム組成物が加水分解を起こすため、タイヤ加硫には適していない。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−31724号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ブラダーに対する複数の要求特性を同時に満足し、かつブラダーのゲージ分布を均一化することを可能にしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持するようにしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダーの内側に加熱加圧媒体を充填しながら加硫を行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫装置は、グリーンタイヤの内側に挿入される2枚のブラダーを備え、これらブラダーを重ね合わせた状態で保持するクランプ部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、従来の単一ブラダーとは異なって、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入するので、各ブラダーの材料を要求特性に応じて選択することが可能になり、しかも個々のブラダーのゲージ分布を容易に均一化することができる。
【0012】
本発明において、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成すると良い。特に、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物から構成すると良い。これにより、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。また、2枚のブラダーの総厚さに対して外側のブラダーの厚さを1%以上にすることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す断面図である。図1に示すように、このタイヤ加硫装置は、タイヤのサイドウォール部を成形するための下側サイドプレート1及び上側サイドプレート2と、タイヤのビード部を成形するための下側ビードリング3及び上側ビードリング4と、タイヤのトレッド部を成形するための複数のセクター5を備え、これら金型内でグリーンタイヤTを加硫成形するようになっている。加硫時において、グリーンタイヤTの内側には互いに接着されていない2枚のブラダー6A,6Bが重ね合わせた状態で挿入される。
【0014】
金型中心位置には、鉛直方向に摺動自在な駆動軸7が設置されている。この駆動軸7の下部には、種々のリング状部材8,9,10,11を挟んで下側ブラダークランプリング12(クランプ部材)が配置されている。この下側ブラダークランプリング12は下側ビードリング3と共にブラダー6A,6Bの下端部を把持している。また、リング状部材9には、加熱加圧媒体Mを導入するために孔部9aが形成されている。一方、駆動軸7の上部には、ボルト13、キャップ14、ホルダー15を介して上側ブラダークランプリング16(クランプ部材)が固定されている。この上側ブラダークランプリング16は補助リング17と共にブラダー6A,6Bの上端部を把持している。
【0015】
ここでは、従来と同様のクランプ部材をそのまま利用し、そのクランプ部材によって2枚のブラダー6A,6Bを同時に挟み込んでいるが、ブラダー6A,6Bを別々に保持するように新たなクランプ部材を追加することも可能である。
【0016】
加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成され、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成されている。
【0017】
第1のゴム組成物は、気体透過率が第2のゴム組成物より低く、そのゴム成分として、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることができる。特に、ブチルゴムが好ましい。勿論、第1のゴム組成物には、カーボンブラック等の補強剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の添加剤を配合することができる。
【0018】
内側のブラダー6Aをブチル系ゴム組成物に代表される第1のゴム組成物から構成すれば、加熱加圧媒体Mに含まれる水蒸気の漏出を効果的に抑制し、外側のブラダー6Bの加水分解による劣化を防止することができる。ここで、ブチル系ゴム組成物とはゴム成分中に50重量%以上のブチルゴムを含むゴム組成物を意味する。
【0019】
第2のゴム組成物は、タイヤに対する剥離応力が第1のゴム組成物より小さく、そのゴム成分として、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムを用いることができる。特に、シリコーンゴムが好ましい。勿論、第2のゴム組成物には、カーボンブラック等の補強剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の添加剤を配合することができる。
【0020】
外側のブラダー6Bをシリコーン系ゴム組成物に代表される第2のゴム組成物から構成すれば、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。また、シリコーン系ゴム組成物は熱伝導性も良好である。ここで、シリコーン系ゴム組成物とはゴム成分中に50重量%以上のシリコーンゴムを含むゴム組成物を意味する。
【0021】
また、2枚のブラダー6A,6Bの総厚さに対して外側のブラダー6Bの厚さは、1%以上、好ましくは3〜50%、更に好ましくは5〜20%にすると良い。外側のブラダー6Bの厚さが薄過ぎると外側のブラダー6Bの耐久性が不十分になり、逆に内側のブラダー6Aの厚さが薄過ぎると外側のブラダー6Bの加水分解による劣化を防止することが困難になる。
【0022】
なお、外側のブラダー6Bの外表面の形状は従来から使用されている加硫用ブラダーと同様の形状にすれば良い。一方、内側のブラダー6Aと外側のブラダー6Bの接触面は平滑にし、タイヤ加硫中に空隙が形成されない構造とすることが好ましい。
【0023】
次に、上述したタイヤ加硫装置を用いたタイヤ加硫方法について説明する。先ず、グリーンタイヤTを金型内に投入し、グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入する。そして、内側のブラダー6Aの内部に例えば水蒸気と窒素ガスからなる加熱加圧媒体Mを充填すると共に、金型を介してグリーンタイヤTを加熱することで加硫を行う。加硫後において、金型を開け、上側ブラダークランプリング16を上方に移動させることで、タイヤ内からブラダー6A,6Bを引き抜くようにする。
【0024】
上記タイヤ加硫方法によれば、グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入するので、各ブラダー6A,6Bの材料を要求特性に応じて選択することができる。つまり、加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成することができる。特に、外側のブラダー6Bをシリコーン系ゴム組成物から構成し、内側のブラダー6Aをブチル系ゴム組成物から構成した場合、外側のブラダー6Bが優れた離型性を発揮する一方で、内側のブラダー6Aが水蒸気を遮断し、シリコーンゴムの加水分解を防止する。そのため、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。
【0025】
また、2枚のブラダー6A,6Bは互いに独立し、個別の金型で成形されるので、ゲージ分布を容易に均一化することができる。従って、ブラダー膨張時の形状や圧力分布が不均一になるような不都合を生じることもない。
【0026】
上述した実施形態ではセクショナルタイプの金型を備えたタイヤ加硫装置について説明したが、本発明では金型の分割構造及び金型の開閉装置等は特に限定されるものではない。例えば、上下二つ割りタイプの金型を備えたタイヤ加硫装置にも適用可能である。
【0027】
【実施例】
ブラダーの構造を種々異ならせた比較例1,2及び実施例1のタイヤ加硫装置を用意した。
【0028】
比較例1:
ブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)からなる1枚のブラダーを用い、そのブラダーの外表面にシリコーンのコーティング膜を形成した。ブラダーの厚さは6.0mmとし、コーティング膜の厚さは0.1mmとした。また、100回加硫毎にシリコーンコーティングの補修液を塗布した。
【0029】
比較例2:
ブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)からなる1枚のブラダーを用い、そのブラダーの外表面にシリコーンのコーティング膜を形成した。ブラダーの厚さは6.0mmとし、コーティング膜の厚さは0.1mmとした。ブラダーの補修作業は全く行わなかった。
【0030】
実施例1:
加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物(ゴム成分:シリコーンゴム)から構成し、これら2枚のブラダーを用いた。内側のブラダーの厚さは5.0mmとし、外側のブラダーの厚さは0.5mmとした。ブラダーの補修作業は全く行わなかった。
【0031】
これらタイヤ加硫装置を用いて空気入りタイヤの加硫を繰り返し行った。そして、ブラダーの張り付き障害が発生するまでの加硫回数を計測し、その結果を表1に示した。表1において、ブラダーの寿命まで張り付き障害が発生しなかった場合を「*」で表示した。
【0032】
【表1】
この表1に示すように、実施例1では補修作業を行っていないにも拘らず、加硫回数が300回以上になってもブラダーの張り付き障害を生じることはなかった。これに対して、比較例1ではブラダーの張り付き障害を生じていないものの補修作業を必要とし、比較例2では補修作業を行わないため加硫回数が120回のときブラダーの張り付き障害を生じた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダーの内側に加熱加圧媒体を充填しながら加硫を行うから、ブラダーに対する複数の要求特性を同時に満足し、かつブラダーのゲージ分布を均一化することが可能になる。
【0034】
更に、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーを水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーを離型性を担持する第2のゴム組成物から構成することにより、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す断面図である。
【符号の説明】
6A 内側のブラダー
6B 外側のブラダー
12 下側ブラダークランプリング(クランプ部材)
16 上側ブラダークランプリング(クランプ部材)
M 加熱加圧媒体
T グリーンタイヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラダーを用いてタイヤを加硫する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持するようにしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤを加硫する場合、グリーンタイヤを金型内に投入し、グリーンタイヤの内側でブラダーを膨らませることで、そのグリーンタイヤを金型の内面に押し付けるようにしている。通常、ブラダーは気体透過率が低いブチル系ゴム組成物から構成されているが、ブチル系ゴム組成物からなるブラダーは離型性が悪いという欠点がある。そのため、グリーンタイヤの内面には離型剤が塗布されるのが一般的である。
【0003】
近年、タイヤ製造工程の簡略化を図るために、グリーンタイヤの内面に塗布される離型剤を廃止し、その替わりに、ブラダーの表面にシリコーンのコーティング膜を形成することで離型性を確保することが行われている。しかしながら、シリコーン皮膜は非常に薄いため、ブラダーの構造的な寿命に比べて離型性を良好に保てる期間が極めて短いという欠点がある。そのため、ブラダーの表面に補修液を塗布したり、グリーンタイヤの内面に補修液を塗布して加硫時にブラダーの表面にシリコーン皮膜を転写するなどの補修作業を定期的に行うことが必要とされている。
【0004】
これに対して、表層を離型性が優れたゴム組成物から構成した多層構造のブラダーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、補修作業は殆ど不要である。しかしながら、多層構造のブラダーは各層のゲージ分布を均一にするのが困難であり、実用性に乏しいものである。
【0005】
また、離型性に優れたシリコーン系ゴム組成物だけでブラダーを構成することも考えられるが、その場合、熱源であるスチームによってシリコーン系ゴム組成物が加水分解を起こすため、タイヤ加硫には適していない。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−31724号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ブラダーに対する複数の要求特性を同時に満足し、かつブラダーのゲージ分布を均一化することを可能にしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持するようにしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダーの内側に加熱加圧媒体を充填しながら加硫を行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫装置は、グリーンタイヤの内側に挿入される2枚のブラダーを備え、これらブラダーを重ね合わせた状態で保持するクランプ部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、従来の単一ブラダーとは異なって、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入するので、各ブラダーの材料を要求特性に応じて選択することが可能になり、しかも個々のブラダーのゲージ分布を容易に均一化することができる。
【0012】
本発明において、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成すると良い。特に、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物から構成すると良い。これにより、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。また、2枚のブラダーの総厚さに対して外側のブラダーの厚さを1%以上にすることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す断面図である。図1に示すように、このタイヤ加硫装置は、タイヤのサイドウォール部を成形するための下側サイドプレート1及び上側サイドプレート2と、タイヤのビード部を成形するための下側ビードリング3及び上側ビードリング4と、タイヤのトレッド部を成形するための複数のセクター5を備え、これら金型内でグリーンタイヤTを加硫成形するようになっている。加硫時において、グリーンタイヤTの内側には互いに接着されていない2枚のブラダー6A,6Bが重ね合わせた状態で挿入される。
【0014】
金型中心位置には、鉛直方向に摺動自在な駆動軸7が設置されている。この駆動軸7の下部には、種々のリング状部材8,9,10,11を挟んで下側ブラダークランプリング12(クランプ部材)が配置されている。この下側ブラダークランプリング12は下側ビードリング3と共にブラダー6A,6Bの下端部を把持している。また、リング状部材9には、加熱加圧媒体Mを導入するために孔部9aが形成されている。一方、駆動軸7の上部には、ボルト13、キャップ14、ホルダー15を介して上側ブラダークランプリング16(クランプ部材)が固定されている。この上側ブラダークランプリング16は補助リング17と共にブラダー6A,6Bの上端部を把持している。
【0015】
ここでは、従来と同様のクランプ部材をそのまま利用し、そのクランプ部材によって2枚のブラダー6A,6Bを同時に挟み込んでいるが、ブラダー6A,6Bを別々に保持するように新たなクランプ部材を追加することも可能である。
【0016】
加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成され、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成されている。
【0017】
第1のゴム組成物は、気体透過率が第2のゴム組成物より低く、そのゴム成分として、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることができる。特に、ブチルゴムが好ましい。勿論、第1のゴム組成物には、カーボンブラック等の補強剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の添加剤を配合することができる。
【0018】
内側のブラダー6Aをブチル系ゴム組成物に代表される第1のゴム組成物から構成すれば、加熱加圧媒体Mに含まれる水蒸気の漏出を効果的に抑制し、外側のブラダー6Bの加水分解による劣化を防止することができる。ここで、ブチル系ゴム組成物とはゴム成分中に50重量%以上のブチルゴムを含むゴム組成物を意味する。
【0019】
第2のゴム組成物は、タイヤに対する剥離応力が第1のゴム組成物より小さく、そのゴム成分として、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムを用いることができる。特に、シリコーンゴムが好ましい。勿論、第2のゴム組成物には、カーボンブラック等の補強剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の添加剤を配合することができる。
【0020】
外側のブラダー6Bをシリコーン系ゴム組成物に代表される第2のゴム組成物から構成すれば、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。また、シリコーン系ゴム組成物は熱伝導性も良好である。ここで、シリコーン系ゴム組成物とはゴム成分中に50重量%以上のシリコーンゴムを含むゴム組成物を意味する。
【0021】
また、2枚のブラダー6A,6Bの総厚さに対して外側のブラダー6Bの厚さは、1%以上、好ましくは3〜50%、更に好ましくは5〜20%にすると良い。外側のブラダー6Bの厚さが薄過ぎると外側のブラダー6Bの耐久性が不十分になり、逆に内側のブラダー6Aの厚さが薄過ぎると外側のブラダー6Bの加水分解による劣化を防止することが困難になる。
【0022】
なお、外側のブラダー6Bの外表面の形状は従来から使用されている加硫用ブラダーと同様の形状にすれば良い。一方、内側のブラダー6Aと外側のブラダー6Bの接触面は平滑にし、タイヤ加硫中に空隙が形成されない構造とすることが好ましい。
【0023】
次に、上述したタイヤ加硫装置を用いたタイヤ加硫方法について説明する。先ず、グリーンタイヤTを金型内に投入し、グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入する。そして、内側のブラダー6Aの内部に例えば水蒸気と窒素ガスからなる加熱加圧媒体Mを充填すると共に、金型を介してグリーンタイヤTを加熱することで加硫を行う。加硫後において、金型を開け、上側ブラダークランプリング16を上方に移動させることで、タイヤ内からブラダー6A,6Bを引き抜くようにする。
【0024】
上記タイヤ加硫方法によれば、グリーンタイヤTの内側に2枚のブラダー6A,6Bを重ね合わせた状態で挿入するので、各ブラダー6A,6Bの材料を要求特性に応じて選択することができる。つまり、加熱加圧媒体Mに接する内側のブラダー6Aは水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤTに接する外側のブラダー6Bは離型性を担持する第2のゴム組成物から構成することができる。特に、外側のブラダー6Bをシリコーン系ゴム組成物から構成し、内側のブラダー6Aをブチル系ゴム組成物から構成した場合、外側のブラダー6Bが優れた離型性を発揮する一方で、内側のブラダー6Aが水蒸気を遮断し、シリコーンゴムの加水分解を防止する。そのため、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することができる。
【0025】
また、2枚のブラダー6A,6Bは互いに独立し、個別の金型で成形されるので、ゲージ分布を容易に均一化することができる。従って、ブラダー膨張時の形状や圧力分布が不均一になるような不都合を生じることもない。
【0026】
上述した実施形態ではセクショナルタイプの金型を備えたタイヤ加硫装置について説明したが、本発明では金型の分割構造及び金型の開閉装置等は特に限定されるものではない。例えば、上下二つ割りタイプの金型を備えたタイヤ加硫装置にも適用可能である。
【0027】
【実施例】
ブラダーの構造を種々異ならせた比較例1,2及び実施例1のタイヤ加硫装置を用意した。
【0028】
比較例1:
ブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)からなる1枚のブラダーを用い、そのブラダーの外表面にシリコーンのコーティング膜を形成した。ブラダーの厚さは6.0mmとし、コーティング膜の厚さは0.1mmとした。また、100回加硫毎にシリコーンコーティングの補修液を塗布した。
【0029】
比較例2:
ブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)からなる1枚のブラダーを用い、そのブラダーの外表面にシリコーンのコーティング膜を形成した。ブラダーの厚さは6.0mmとし、コーティング膜の厚さは0.1mmとした。ブラダーの補修作業は全く行わなかった。
【0030】
実施例1:
加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物(ゴム成分:ブチルゴム)から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物(ゴム成分:シリコーンゴム)から構成し、これら2枚のブラダーを用いた。内側のブラダーの厚さは5.0mmとし、外側のブラダーの厚さは0.5mmとした。ブラダーの補修作業は全く行わなかった。
【0031】
これらタイヤ加硫装置を用いて空気入りタイヤの加硫を繰り返し行った。そして、ブラダーの張り付き障害が発生するまでの加硫回数を計測し、その結果を表1に示した。表1において、ブラダーの寿命まで張り付き障害が発生しなかった場合を「*」で表示した。
【0032】
【表1】
この表1に示すように、実施例1では補修作業を行っていないにも拘らず、加硫回数が300回以上になってもブラダーの張り付き障害を生じることはなかった。これに対して、比較例1ではブラダーの張り付き障害を生じていないものの補修作業を必要とし、比較例2では補修作業を行わないため加硫回数が120回のときブラダーの張り付き障害を生じた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダーの内側に加熱加圧媒体を充填しながら加硫を行うから、ブラダーに対する複数の要求特性を同時に満足し、かつブラダーのゲージ分布を均一化することが可能になる。
【0034】
更に、加熱加圧媒体に接する内側のブラダーを水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、グリーンタイヤに接する外側のブラダーを離型性を担持する第2のゴム組成物から構成することにより、補修作業を必要とすることなく、長期間にわたって優れた離型性を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す断面図である。
【符号の説明】
6A 内側のブラダー
6B 外側のブラダー
12 下側ブラダークランプリング(クランプ部材)
16 上側ブラダークランプリング(クランプ部材)
M 加熱加圧媒体
T グリーンタイヤ
Claims (8)
- グリーンタイヤの内側に2枚のブラダーを重ね合わせた状態で挿入し、これらブラダーの内側に加熱加圧媒体を充填しながら加硫を行うタイヤ加硫方法。
- 前記加熱加圧媒体に接する内側のブラダーを水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、前記グリーンタイヤに接する外側のブラダーを離型性を担持する第2のゴム組成物から構成した請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
- 前記加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物から構成し、前記グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物から構成した請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
- 2枚のブラダーの総厚さに対して外側のブラダーの厚さを1%以上にした請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ加硫方法。
- グリーンタイヤの内側に挿入される2枚のブラダーを備え、これらブラダーを重ね合わせた状態で保持するクランプ部材を設けたタイヤ加硫装置。
- 前記加熱加圧媒体に接する内側のブラダーを水蒸気の遮断を担持する第1のゴム組成物から構成し、前記グリーンタイヤに接する外側のブラダーを離型性を担持する第2のゴム組成物から構成した請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
- 前記加熱加圧媒体に接する内側のブラダーをブチル系ゴム組成物から構成し、前記グリーンタイヤに接する外側のブラダーをシリコーン系ゴム組成物から構成した請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
- 2枚のブラダーの総厚さに対して外側のブラダーの厚さを1%以上にした請求項5〜7のいずれかに記載のタイヤ加硫装置。
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Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
JP2011161767A (ja) * | 2010-02-09 | 2011-08-25 | Bridgestone Corp | タイヤ製造用ブラダーおよび該タイヤ製造用ブラダーの製造方法 |
JP2013111885A (ja) * | 2011-11-30 | 2013-06-10 | Sumitomo Rubber Ind Ltd | タイヤ加硫用ブラダ |
JP2017503690A (ja) * | 2013-12-13 | 2017-02-02 | ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー | 様々な熱伝導性を備えた材料からなる硬化用ブラダー |
DE112019005907T5 (de) | 2019-02-01 | 2021-08-12 | The Yokohama Rubber Co., Ltd. | Verfahren zum Herstellen eines Luftreifens |
-
2003
- 2003-08-25 JP JP2003208643A patent/JP2005066848A/ja active Pending
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