以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、図示しない外部装置と無線で通信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
また、図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧Vonが印加され、ゲート電極8gにオン電圧Vonが印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内で発生し蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧Voffが印加され、ゲート電極8gにオフ電圧Voffが印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22は、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御するようになっている。
本実施形態では、バイアス線9の結線10に、結線10(バイアス線9)を流れる電流の電流量を検出する電流検出手段43が設けられており、結線10を流れる電流の増減を検出して放射線の照射の開始や終了を検出できるようになっている。
なお、図7や図8および前述した図3等では、各バイアス線9が1本の結線10に結束される場合が示されており、その場合は、電流検出手段43は1本の結線10に1つだけ設けるように構成することが可能であるが、各バイアス線9が複数の結線10に結束されるように構成される場合もある。その場合には、電流検出手段43を各結線10に設けるように構成することも可能であり、また、複数の結線10のうちの何本かに電流検出手段43を設けるように構成することも可能である。
また、本実施形態では、電流検出手段43がバイアス線9や結線10に設けられ、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射によりバイアス線9や結線10を流れる電流を検出するように構成されている場合について説明するが、電流検出手段43は、放射線の照射により装置内を流れる電流を検出することができるものであればよく、バイアス線9やその結線10に設けられる場合に限定されない。
ここで、電流検出手段43の構成について説明する。本実施形態では、電流検出手段43は、バイアス線9の結線10とバイアス電源14との接続部分に設けられ、放射線の照射の開始に伴ってバイアス電源14と放射線検出素子7との間を流れる電流を検出するようになっている。
具体的には、図9に示すように、電流検出手段43は、バイアス電源14と各放射線検出素子7とを結ぶバイアス配線9の結線10に直列に接続される所定の抵抗値を有する抵抗器43aと、それに並列に接続されたダイオード43bと、抵抗器43aの両端子間の電圧Vを測定して制御手段22に出力する差動アンプ43cとを備えて構成されている。
このように、本実施形態では、電流検出手段43は、差動アンプ43cで抵抗器43aの両端子間の電圧Vを測定し、抵抗器43aを流れる電流、すなわちバイアス線9の結線10を流れる電流を電圧値Vに変換して検出して、制御手段22に出力するようになっている。
なお、電流検出手段43に備えられる抵抗器43aとしては、結線10中を流れる電流を適切な電圧値Vに変換可能な抵抗値を有する抵抗器が用いられる。また、抵抗器43aに並列にダイオード42dを接続することで低線量の場合の検出精度が向上される。抵抗器43a或いはダイオード43bのみを配線に直列に接続して、その両端子間の電圧Vを差動アンプ43cで測定するように構成することも可能である。
また、放射線の照射の開始や終了を検出する場合以外の場合には、電流検出手段43でバイアス電源14と各放射線検出素子7の間を流れる電流を検出する必要はなく、電流検出手段43の抵抗器43aはバイアス電源14から各放射線検出素子7へのバイアス電圧の印加の妨げになるため、電流検出手段43には、電流の検出が不要の場合に抵抗器43aの両端子間を必要に応じて短絡するためのスイッチ43dが設けられている。
差動アンプ43cには電源供給手段44から電力が供給されるようになっており、電流検出手段43で電流を検出する際には、電源供給手段44から差動アンプ43cに電力を供給し、スイッチ43dの短絡を解除して電流検出手段43を稼働状態とし、電流を検出しない場合には、スイッチ43dで抵抗器43aの両端子間を短絡するとともに、電源供給手段44から差動アンプ43cへの電力の供給を停止して電流検出手段43の稼働を停止するようになっている。
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、本実施形態では、電源回路15aとゲートドライバ15bとを備えており、本実施形態では、ゲートドライバ15bは、前述したゲートIC12aが複数並設されて形成されている。また、走査駆動手段15は、ゲートドライバ15bに接続されている走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御して、電圧を前述したオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間で切り替えるようになっている。
具体的には、走査駆動手段15の電源回路15aは、ゲートドライバ15bから各走査線5に印加するオン電圧Vonやオフ電圧Voffの各電圧値をそれぞれ所定の電圧値に設定して、ゲートドライバ15bに供給するようになっている。また、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、電源回路15aから供給されるオン電圧Vonとオフ電圧Voffを選択的に切り替えて各走査線5にオン電圧Vonかオフ電圧Voffを印加するようになっている。また、ゲートドライバ15bは、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加するパルス波形のオン電圧Vonのパルス幅を変調させることができるようになっている。
また、本実施形態では、走査駆動手段15の電源回路15aは、走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonの電圧値を調整する機能を有している。そして、後述するように、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理では、最初に、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理時に各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonすなわち最も高い電圧値のオン電圧Vonを各TFT8のゲート電極8gに一斉に印加した後、オン電圧Vonの電圧値を一斉に低下させるようになっている。
なお、以下では、各TFT8のゲート電極8gに最初に印加する、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し時と同等の高いオン電圧VonをVon1と表し、その後、低下されたオン電圧VonをVon2と表す。また、オン電圧Vonを一般的に表す場合はオン電圧Vonと表す。
また、本実施形態では、このように走査駆動手段15の電源回路15a自体にオン電圧Vonの電圧値を調整する機能を持たせるように構成されているが、電源回路15aとは別体に、オン電圧Vonの電圧値を調整する手段を備えるように構成することも可能である。
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、読み出しIC16には所定個数の読み出し回路17が設けられており、読み出しIC16が複数設けられることにより、信号線6の本数分の読み出し回路17が設けられるようになっている。
読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19と、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とで構成されている。なお、図7や図8や後述する図10中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると(すなわち、TFT8のゲート電極8gに走査線5を介して信号読み出し用のオン電圧Von1が印加されると)、当該放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換して増幅するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
すなわち、制御手段22は、放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理においては、まず、各読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを制御してオフ状態にする。その際、電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態にした瞬間に、いわゆるkTCノイズが発生し、増幅回路18のコンデンサ18bにkTCノイズに起因する電荷qが溜まる。
前述したように、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値が増幅回路18のオペアンプ18aの出力端子から出力されるが、上記のようにkTCノイズに起因する電荷qがコンデンサ18bに溜まることにより、図10に示すように、オペアンプ18aの出力端子から出力される電圧値が、電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態にした瞬間(図10では「18coff」と表示)に、前述した基準電位V0から、kTCノイズに起因する電荷qの分だけ瞬間的に変化し、電圧値Vinに変わる。
制御手段22は、この段階で(図10では「CDS保持」(左側)と表示)、相関二重サンプリング回路19に1回目のパルス信号Sp1を送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持させる。
続いて、制御手段22が、走査駆動回路15から1本の走査線5にオン電圧Von1を印加してその走査線5にゲート電極8gが接続されているTFT8をオン状態とすると(図10では「TFTon」と表示)、これらのTFT8が接続されている各放射線検出素子7から蓄積された電荷が各信号線6を介して増幅回路18のコンデンサ18bに流れ込んで蓄積され、図10に示すように、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じてオペアンプ18aの出力側から出力される電圧値が上昇していく。
そして、制御手段22は、所定時間が経過した後、走査駆動回路15から当該走査線5に印加しているオン電圧Von1をオフ電圧Voffに切り替えてその走査線5にゲート電極8gが接続されているTFT8をオフ状態とし(図10では「TFToff」と表示)、この段階で各相関二重サンプリング回路19に2回目のパルス信号Sp2を送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持させる(図10では「CDS保持」(右側)と表示)。
各相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差Vfi−Vinを算出し、算出した差Vfi−Vinを画像データとして下流側に出力するようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、外部装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
また、制御手段22は、各放射線検出素子7のリセット処理時や放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し時に、走査駆動手段15に対して、走査駆動手段15から各走査線5を介して各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Vonとオフ電圧Voffとの間で切り替えさせるためのパルス信号を送信するようになっている。
以下、各放射線検出素子7のリセット処理等における制御手段22の制御構成について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
ここで、図23Aや図23B、図24A、図24Bに示したように、従来の各放射線検出素子7のリセット処理において、領域R1の放射線検出素子7に放射線が被写体を介さずに照射される等して強い放射線が照射されると、領域R1の各放射線検出素子7の影響で、それらに隣接する領域R2、Rhの放射線検出素子7に0ではない有意の値の画像データが生じる原因について説明する。
例えば図23Bに示したように、強い放射線が照射された領域R1の図中上下方向に隣接する領域R2には有意の値の画像データが生じるが、領域R1の図中左右方向に隣接する領域には、領域R1の各放射線検出素子7の影響による有意の値の画像データは生じない。そして、この場合、図23Bでは図示が省略されているが、信号線6は、図中の上下方向に延在するように配置されている。
このことから、隣接する領域R2等の放射線検出素子7に有意の値の画像データが生じる原因は、以下のように考えられる。
すなわち、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理では、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧Von1が印加され、各TFT8のゲートが開かれて各放射線検出素子7に蓄積された暗電荷等の余分な電荷が放出される。そして、前述したように、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧Von1が印加された状態のまま待機し、放射線の照射が開始されて各放射線検出素子7内で電子正孔対が発生し、それがバイアス線9や結線10に流れ出してバイアス線9等を流れる電流の値が上昇することが検出され放射線の照射が開始されたことが検出される。
その際、図8に示した等価回路図を用いて説明すると、放射線の照射により放射線検出素子7内で電子正孔対が発生すると、発生した正孔が放射線検出素子7の第2電極78側からバイアス線9や結線10に流れ出し、電流検出手段43を経てバイアス電源14に流れ込む。また、発生した電子は、放射線検出素子7の第1電極74側からTFT8を通って信号線6に流出し、信号線6中を流れて読み出し回路17等の下流側に流出する。
もともと放射線検出素子7の第2電極78にはバイアス線9を介してバイアス電源14からバイアス電圧(本実施形態では逆バイアス電圧)Vbiasが印加されているが、第2電極78から流出した正孔がバイアス線9や電流検出手段43中を流れる際、バイアス線9自体や、電流検出手段43の抵抗器43aやダイオード43bが抵抗を有するために、V=IRの関係で電圧差が生じる。そのため、バイアス電源14から放射線検出素子7の第2電極78に印加されるバイアス電圧Vbiasが変動する。
同様に、前述したように、もともと放射線検出素子7の第1電極74には信号線6を介して読み出し回路17の増幅回路18から基準電位V0が印加されているが、第1電極74から流出した電子が信号線9や読み出し回路17中を流れる際、信号線6自体や読み出し回路17が抵抗を有するために、やはりV=IRの関係で電圧が生じる。そのため、増幅回路18から放射線検出素子7の第1電極74に印加される基準電位V0が変動する。
そして、図7に示したように、1本の信号線6には複数のTFT8を介して複数の放射線検出素子7の第1電極74が接続されており、それらの放射線検出素子7の各第2電極は、共通の1本のバイアス線9に接続されている。
そのため、1本の信号線6に接続された複数の放射線検出素子7のうちの一部の放射線検出素子7が放射線の照射を受けて電子や正孔を流出させ、上記のようにそれによってその信号線6やバイアス線9の電圧変動が生じると、その信号線6やバイアス線9が第1電極74、第2電極78に接続されているが放射線の照射を受けていない放射線検出素子7においても、第1電極74に印加される基準電位V0や第2電極78に印加されるバイアス電圧Vbiasに変動が生じる。
そのため、これらの放射線の照射を受けていない放射線検出素子7においては、Q=CVの関係に従い、信号線6やバイアス線9の電圧変動に応じて、それらの放射線検出素子7の内部であたかも電荷が発生したような状態となる。
そして、前述したように、各TFT8がオン状態のままでは、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷(画像データ)が各放射線検出素子7から流出してしまうため、電荷(画像データ)を蓄積するモードに切り替えるために各TFT8のゲート電極8gに印加される電圧がオフ電圧Voffに切り替えられるが、上記の放射線検出素子7では、放射線が照射されていないにもかかわらず、信号線6やバイアス線9の電圧変動により発生した電荷が、TFT8がオフ状態とされることにより各放射線検出素子7内に蓄積される。
そのため、その後の画像データの読み出し処理において、各放射線検出素子7から電荷(画像データ)を読み出すと、図23Bに示したように、強い放射線が照射された領域R1の各放射線検出素子7に隣接する領域R2の各放射線検出素子7、すなわち強い放射線が照射された各放射線検出素子7と同じ信号線6やバイアス線9に接続されている放射線が照射されていない各放射線検出素子7からも0ではない有意の値の画像データが読み出されると考えられる。
これは、強い放射線が照射された各放射線検出素子7に隣接する領域の放射線検出素子7であっても、図23Bにおける領域R1の図中左右方向に隣接する領域のように、強い放射線が照射された各放射線検出素子7が接続された信号線6やバイアス線9とは異なる信号線6やバイアス線9に接続されている各放射線検出素子7からは、放射線が照射されていなければ有意の値の画像データが読み出されないことからも分かる。
本実施形態では、上記のような現象の発生を防止し、かつ、各放射線検出素子7のリセット処理におけるリセット効率を高めるために、制御手段22は、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理においては、前述したように、最初に、走査駆動手段15(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに所定の電圧値のオン電圧(すなわち本実施形態では画像データの読み出し処理時に各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonと同等の高い電圧値のオン電圧)Von1を一斉に印加した後、オン電圧Vonの電圧値を一斉に低下させて、オン電圧Von1よりも低い電圧値のオン電圧Von2を印加するようになっている。
具体的には、制御手段22は、例えば、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36が押下されて放射線画像撮影装置1が起動されたり、アンテナ装置39を介して各放射線検出素子7のリセット処理を開始するための信号を受信する等すると、例えば図11に示すように、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに一斉に所定の電圧値(例えば−10[V])のオフ電圧Voffを印加して、各TFT8をオフ状態とする(時刻T0)。
また、制御手段22は、読み出し回路17等を起動させ、バイアス電源14に信号を送信して、バイアス電源14から各バイアス線9や結線10を介して各放射線検出素子7に対して所定の電圧値(例えば−5[V])のバイアス電圧Vbiasを印加させる。
制御手段22は、続いて、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して、各TFT8に対して、通常の、すなわち本実施形態では画像データの読み出し処理時に各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonと同等の高い電圧値(例えば+15[V])のオン電圧Von1を一斉に印加する(時刻T1)。
このように、各放射線検出素子7のリセット処理の最初に、高い電圧値のオン電圧Von1を各TFT8のゲート電極8gに印加することで、各放射線検出素子7内に溜まった暗電荷等の余分な電荷を確実に流出させて各放射線検出素子7のリセット処理におけるリセット効率を高めるようになっている。
そして、本実施形態では、上記のような現象が発生することを防止するために、制御手段22は、各TFT8のゲート電極8gに高い電圧値のオン電圧Von1を印加した後、所定時間が経過した時点T2で、各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonの電圧値をオン電圧Von1よりも低い電圧値のオン電圧Von2に一斉に低下させて、その状態を維持するようになっている。
この場合、上記の所定時間(すなわちT2−T1)は、本実施形態では、予め実験を行う等して、各放射線検出素子7から余分な電荷を確実に流出させるのに必要な十分に長い時間として予め設定されているが、この他にも、例えば、この時点で電流検出手段43を起動させ、電流検出手段43から出力される電流の値(或いはそれに相当する電圧値V)を監視し、その値が、各放射線検出素子7から余分な電荷が十分に流出したことに相当する値まで低下した時点で各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonを低い電圧値のオン電圧Von2に切り替えるように構成することも可能である。
また、本実施形態では、低いオン電圧Von2の電圧値は、このオン電圧Von2をTFT8のゲート電極8gに印加してTFT8をオン状態とした場合にTFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が、通常の放射線検出素子7に流れる、暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるような電圧値に設定される。
すなわち、電圧値がVonのオン電圧をTFT8のゲート電極8gに印加してTFT8をオン状態とした場合に、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von)は、TFT8のゲート電極8gに印加したオン電圧の電圧値Vonに依存して変化し、オン電圧の電圧値Vonが小さくなるほどTFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von)が小さくなる。そして、オン電圧の電圧値Vonが閾値Vthまで小さくなると、TFT8を流れ得る電流量が急激に減少する。
急激に減少したTFT8を流れ得る電流量は、TFT8が通常のシリコン系のトランジスタデバイスの場合でも流れ得るオン電流の電流量と比較して4、5桁程度小さく、本実施形態のような(水素化)アモルファスシリコンTFTの場合には7桁程度小さい。そして、急激に減少したTFT8を流れ得る電流量は、通常の放射線検出素子7に流れる、暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを大きく下回る値となる。
そのため、このようなTFT8を流れ得る電流量が急激に減少する閾値Vthの電圧値をTFT8のゲート電極8gに印加すると、事実上、放射線検出素子7から暗電流はTFT8を介して流れ出なくなり、放射線検出素子7内に蓄積されるようになる。しかし、これでは、放射線の照射が開始されるまでに各放射線検出素子7内に発生する暗電荷等の余分な電荷が各放射線検出素子7内に蓄積されてしまう。
また、TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Von2をこの閾値Vthより上昇させて、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)を増やしても、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が、通常の放射線検出素子7に流れる暗電流を含むリーク電流の電流量ileakよりも小さければ、やはり、放射線検出素子7から流出しきれなかった電荷が放射線検出素子7内に蓄積されるようになる。
そこで、本実施形態では、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が、通常の放射線検出素子7に流れる暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるように、多少余裕をもたせて低いオン電圧Von2の電圧値を設定するようになっている。
このように低い電圧値のオン電圧Von2を設定すると、後述するように、放射線の照射が開始されて各放射線検出素子7内で電子正孔対が発生しても、それが各放射線検出素子7から流出してバイアス線9等を流れる電流の値を、上記のような通常の放射線検出素子7に流れるリーク電流の電流量ileakを少し上回る量に制限することができる。
そして、このように、放射線の照射の開始に伴いバイアス線9等を流れる電流量が制限されるため、上記のように放射線の照射の開始に伴ってバイアス線9や信号線6を電流が流れることにより生じるバイアス線9や信号線6の電圧変動がより小さくなるように制限することが可能となり、電圧変動に伴って各放射線検出素子7内に蓄積される電荷をより小さくすることが可能となる。
上記のように、低い電圧値のオン電圧Von2を、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が通常の放射線検出素子7に流れるリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるような電圧値に設定すると、図23Bの領域R2のように、放射線が直接照射された放射線検出素子7が接続されている信号線6やバイアス線9と同じ信号線6やバイアス線9に接続されているが放射線が照射されていない各放射線検出素子7には、放射線の照射を受けた各放射線検出素子7から電子正孔対が流出して信号線6やバイアス線9に電圧変動が生じたとしても、それによるほとんど電荷が蓄積されず、事実上、それらの放射線検出素子7からは従来のような有意の値の画像データは読み出されない。
このようにして、本実施形態では、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で一旦高い電圧値のオン電圧Von1を各TFT8のゲート電極8gに印加した後で、各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonの電圧値をオン電圧Von1よりも低い電圧値のオン電圧Von2に一斉に低下させて放射線の照射の開始を検出するように構成することで、上記のような現象が発生することを的確に防止することが可能となる。
なお、上記の現象は、放射線が照射された放射線検出素子7に隣接する放射線が照射されていない放射線検出素子7で生じるだけでなく、図24Bに示したように、放射線が照射された領域Rhであっても、放射線が被写体Hを透過する等して弱い放射線が照射された領域Rhの放射線検出素子7に隣接する領域R1に放射線が直接照射されたような場合にも生じ得ることは前述したとおりである。
そして、このような場合にも、本実施形態のような制御構成とすることにより、放射線が直接照射された領域R1の放射線検出素子7が接続されている信号線6やバイアス線9に電圧変動が生じてそれと同じ信号線6やバイアス線9に接続されている領域Rhの各放射線検出素子7に電荷が蓄積されて有意の値の画像データが読み出されてしまうことを的確に防止することが可能となる。
なお、図24A、図24Bでは、図示が省略されているが、信号線6やバイアス線9は、図中の左右方向に延在するように配置されている。また、オン電圧Von2は、上記のように低い電圧値に設定されているが、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が通常の放射線検出素子7に流れる暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるように設定されているため、各放射線検出素子7で暗電荷が発生しても、暗電荷は各放射線検出素子7から信号線6やバイアス線9に流出する。そのため、各放射線検出素子7に暗電荷が蓄積されることはない。
制御手段22は、上記のように、各放射線検出素子7のリセット処理のために走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに一旦高い電圧値のオン電圧Von1を印加させた後、時刻T2(図11参照)でオン電圧Vonの電圧値を一斉に低下させてオン電圧Von1よりも低い電圧値のオン電圧Von2を印加させると、電流検出手段43のスイッチ43dをオフ状態とし、電源供給手段44から差動アンプ43cに電力を供給させて電流検出手段43を起動させる。
そして、各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧を低い電圧値のオン電圧Von2に維持した状態で放射線の照射が開始されると(なお、この放射線の照射開始時刻をt1とする。)、前述したように放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷がバイアス線9や信号線6に流出するため、図12に示すように、時刻t1で電流検出手段43の差動アンプ43cから出力される電流に相当する電圧値Vが増加し始める。
なお、上記のように、低い電圧値のオン電圧Von2は、放射線の照射が開始されて各放射線検出素子7内で電子正孔対が発生してもそれが各放射線検出素子7から流出してバイアス線9等を流れる電流の値を通常の放射線検出素子7に流れるリーク電流の電流量ileakを少し上回る量に制限されているため、バイアス線9を流れる電流の値(本実施形態ではその電流の値に相当する電圧値V)はそれに見合う電流の値(電圧値V)までしか上昇しない。そのため、信号線6やバイアス線9の電圧変動がごく小さい値に抑制できることは前述したとおりである。
このように、放射線の照射の開始により、電流検出手段43から出力される電流の値が上昇するため、制御手段22は、それを監視して、電流検出手段43から出力される電圧値Vが増加し、例えば、予め設定された閾値を越えた場合や、電圧値Vの増加率が予め設定された閾値を越えた場合、或いは、低い電圧値のオン電圧Von2に見合う電圧値まで上昇した場合等に、放射線の照射が開始されたことを検出するようになっている。
また、上記のようにTFT8をオン状態のままにしておくと、各放射線検出素子7内で発生した電荷が信号線6やバイアス線9に流出し、各放射線検出素子7内に蓄積される電荷(画像データ)が減ってしまったり、蓄積されなくなってしまう。そのため、制御手段22は、図11に示すように、電圧値Vが増加して放射線の照射が開始されたことを検出した時点(時刻T3)で、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧を低いオン電圧Von2からオフ電圧Voffに一斉に切り替え、各TFT8をオフ状態として、各放射線検出素子7を電荷蓄積モードとするようになっている。
各TFT8のゲート電極8gに印加される電圧が一斉にオフ電圧Voffに切り替えられると(時刻T3)、図12に示すように、電流検出手段43から出力される電流に相当する電圧値Vは急激に減少する。
なお、図12では、グラフを見やすくするため、放射線の照射が開始される時刻t1と各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧が一斉にオフ電圧Voffに切り替えられる時刻T3との時間間隔が拡大されて表されているが、実際には、その時間間隔は非常に短く、ほぼ同時である。
一方、図12では、減少した電圧値Vが0[V]まで減少する場合を示したが、各TFT8がオフ状態とされた後も、放射線の照射により各放射線検出素子7内で電荷が発生することに起因して、微弱ではあるがバイアス線9や結線10を流れる電流を電流検出手段43で検出できる場合がある。
なお、各TFT8がオフ状態でもバイアス線9に電流が流れる理由は、例えば図8でTFT8がオフ状態とされた場合、走査線5からTFT8と放射線検出素子7を介してバイアス電源14に至る閉じるループが形成され、その中にそれぞれ所定の寄生容量を有するTFT8と放射線検出素子7がコンデンサ状に配置されている状態と見なすことができる。そして、電源放射線の照射により放射線検出素子7のi層76(図5参照)で電子正孔対が発生して蓄積すると、放射線検出素子7内では、所定のバイアス電圧が印加された第2電極78に対する第1電極74の電位(この電位はTFT8のソース電極8s側の電位に等しい。)が下がる。そのため、放射線検出素子7の第1、第2電極74、78やTFT8のゲート電極8gやソース電極8sに蓄積される電荷量が変化するため、それを補うようにバイアス線9や放射線検出素子7−TFT8間の配線、走査線5に電流が流れるのである。
このように、各TFT8がオフ状態とされた後もバイアス線8や結線10を流れる電流(或いはそれに相当する電圧値V)を検出できる場合、放射線の照射が終了すると、電流検出手段43から出力される電流に相当する電圧値Vは、それまでの電圧値Vからさらに減少する。そこで、全TFT8がオフ状態とされた時点で減少した電圧値Vがさらに減少したことを検出して、制御手段22で放射線の照射の終了を検出するように構成することも可能である。
しかし、微弱な電流がバイアス線9や結線10を流れることで、電流検出手段43の抵抗器43aの両端子間に電圧が発生して各放射線検出素子7に供給される所定のバイアス電圧Vbiasが変動したり、電流検出手段43で発生するノイズがバイアス電圧Vbiasに重畳されてしまう場合がある。その場合、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生し蓄積される電荷量(画像データ)に影響する場合もある。
そのため、このような放射線の照射開始後も電流検出手段43を起動状態としておくことの悪影響を排除するため、時刻T3で放射線の照射の開始を検出した後に、電流検出手段43の起動を停止し、スイッチ43dを短絡させて、放射線検出素子7に印加するバイアス電圧Vbiasに電流検出手段43の悪影響が及ばないように制御することも可能である。
しかし、この場合、電流検出手段43から出力される電流に相当する電圧値Vに基づいて放射線の照射の終了を検出することができなくなる。そのため、その場合には、放射線の照射の開始を検出した時刻T3から予め設定した所定時間が経過した時点で放射線の照射が終了したものとして、その後の処理を行うように構成することが可能である。
なお、電流検出手段43から出力される電流の値(或いはそれに相当する電圧値V)に基づいて放射線の照射が終了したことを検出するように構成する場合には、制御手段22は、放射線の照射終了を検出した時点で電流検出手段43の起動を停止し、スイッチ43dを短絡させる。
制御手段22は、放射線の照射が終了したことを検出すると(或いは、放射線の照射開始(時刻T2)から所定時間が経過して放射線の照射が終了したと判断すると)、続いて、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理を行う。読み出し処理では、制御手段22は、走査駆動手段15から信号読み出し用の高い電圧値のオン電圧Von1を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から電荷(画像データ)を読み出し、上記のようにして読み出し回路17で電荷電圧変換する等して各画増データを記憶手段40に保存するようになっている。
また、その他、読み出し処理後のリセット処理や、ダーク読取処理等の種々の処理を行うように構成することも可能であるが、それらは公知の技術であり、説明を省略する。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影前に行う各放射線検出素子7のリセット処理において、各TFT8のゲート電極8gに高い電圧値のオン電圧Von1を一斉に印加した後、オン電圧Vonの電圧値を一斉に低下させて低い電圧値のオン電圧Von2を印加して、その状態を維持しつつ、電流検出手段43から出力される電流の値(電圧値V)を監視して放射線の照射の開始を待つように構成した。
このように、まず、各TFT8のゲート電極8gに高い電圧値のオン電圧Von1を一斉に印加して、各放射線検出素子7から電荷が流出し易い状況を作り出すことで、各放射線検出素子7に溜まった暗電荷等の余分な電荷を確実に流出させて各放射線検出素子7のリセット効率を高めることが可能となる。
また、その後、印加するオン電圧Vonを低い電圧値のオン電圧Von2に切り替えることで、放射線の照射が開始され、各放射線検出素子7内で放射線の照射により電荷が発生し始めた時点で各放射線検出素子7から流出する電荷すなわち電流の値が大きくなり過ぎることを抑制することが可能となる。そして、各放射線検出素子7から流れ出す電流が抑制されるため、それに伴って生じ得る放射線検出素子7の第1電極74に印加される基準電位V0や第2電極78に印加されるバイアス電圧Vbiasの変動を抑制することが可能となる。
そのため、放射線が照射された放射線検出素子7が接続されている信号線6やバイアス線9と同じ信号線6やバイアス線9に接続されているが放射線の照射を受けていない放射線検出素子7(すなわち例えば図23Bの領域R2の放射線検出素子7)や、放射線が直接到達した放射線検出素子7が接続されている信号線6等と同じ信号線6等に接続された、被写体Hを透過した弱い放射線が到達した放射線検出素子7(すなわち例えば図24Bの領域Rhの放射線検出素子7)に、それに近接する放射線の照射を直接受けたり強い放射線の照射を受けたりした領域R1の影響が及ぶことを的確に回避することが可能となる。
そして、例えば図24Aに示したように、患者の手等の被写体Hが撮影された領域Rhに撮影された患者の手の骨格や内部組織等の画像が、それに近接する放射線の照射を直接受けた領域R1の影響を受けなくなり、黒ずむことが回避されるため、例えばもともと放射線画像に写り難い病変部を良好なコントラストで撮影することが可能となり、医師等が病変部の有無等をより的確に判別することが可能となる。
なお、本実施形態のように、低下させる低い電圧値のオン電圧Von2を、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が、通常の放射線検出素子7に流れる、暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるような電圧値に設定すると、各TFT8の製造上の誤差等のために、上記のようなオン電圧Von2をゲート電極8gに印加しても、オン電流の最大電流量imax(Von2)がリーク電流の電流量ileakを少し上回る量にならないTFT8が形成される場合がある。
そして、このようなTFT8では、低い電圧値のオン電圧Von2をゲート電極8gに印加しても十分にオン電流が流れず、そのTFT8が接続されている放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積されてしまう場合が生じ得る。
そこで、このように放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積されることを防止するために、例えば図13に示すように、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonの電圧値を一斉に低下させて低い電圧値のオン電圧Von2を印加した後、放射線の照射の開始が検出されるまでの間に、オン電圧Vonの電圧値を所定の電圧幅で上昇させてVon3とし下降させてVon2に戻す動作を単数回または複数回行わせるように構成することも可能である。
このように構成すれば、ゲート電極8gにオン電圧Von2を印加されてもオン電流の最大電流量imax(Von2)がリーク電流の電流量ileakを少し上回る量にならないTFT8においても、それより所定の電圧幅だけ高いオン電圧Von3を印加されることによってオン電流の最大電流量imax(Von2)がリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になり、そのTFT8が接続されている放射線検出素子7から蓄積された暗電荷を流出させることが可能となる。
そのため、そのようなTFT8が接続された放射線検出素子7においても、他の放射線検出素子7と同様に、放射線の照射の開始前に放射線検出素子7内に残存する暗電荷の量を十分に低減させることが可能となり、放射線画像撮影により得られる放射線画像において、放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積されることによる悪影響が生じることを防止することが可能となる。
[第2の実施の形態]
前述したように、図23Aに示したように強い放射線が照射された領域R1の、図23Aや図23Bでは図示が省略されている信号線6の延在方向(図23Bでは上下方向)に隣接する領域R2に有意の値の画像データが生じてしまう原因は、領域R1の各放射線検出素子7内で発生した電子や正孔が信号線6やバイアス線9に流れ出すために、放射線検出素子7の第1電極74に印加される基準電位V0や第2電極78に印加されるバイアス電圧Vbiasに変動が生じるためであると考えられている。
そのため、上記の第1の実施形態では、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理時に、走査駆動手段15(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに所定の電圧値のオン電圧Von1を一斉に印加して各放射線検出素子7内に溜まった暗電荷等の余分な電荷を確実に流出させた後、オン電圧Vonの電圧値をオン電圧Von1よりも低い電圧値のオン電圧Von2に一斉に低下させて、その状態を維持する。
そして、このように構成することで、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生して流れ出す電荷すなわち電流の値が大きくなり過ぎることを抑制して、放射線検出素子7の第1電極74に印加される基準電位V0や第2電極78に印加されるバイアス電圧Vbiasの変動を抑制することで、強い放射線が照射された領域R1に隣接する領域R2に有意の値の画像データが生じることを防止することについて説明した。
本発明の第2の実施形態では、上記の基準電位V0やバイアス電圧Vbiasのうち、特に基準電位V0に生じる変動をより小さくすることで、強い放射線が照射された領域R1に隣接する領域R2に有意の値の画像データが生じることをより的確に防止することについて説明する。
図7や図8では図示を省略したが、読み出し回路17は、消費電力の低減等を目的として、図14や図15に示すように、増幅回路18のオペアンプ18aの入力端子すなわち反転入力端子が抵抗器Reを介して信号線6に接続されるように構成されている場合が多い。そして、消費電力を低減させるため、抵抗器Reは、通常、その抵抗値が高い値になるように設定されている。
なお、図14に示すように、オペアンプ18aの非反転入力端子には基準電位V0が印加されており、信号線6に電流が流れていない状態では、オペアンプ18aを介して信号線6にも基準電位V0が印加された状態になる。また、図14、図15や後述する図16〜図18では相関二重サンプリング回路19等の記載が省略されている。
上記のように、増幅回路18が抵抗器Reを有しているために生じる現象について、以下、説明する。
図11や図13に示したように、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理時に走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧がオン電圧Von1からオン電圧Von2に一斉に低下され、各TFT8のゲート電極にオン電圧Von2が印加された状態では、前述したように、各TFT8はオン状態であり、各TFT8を介して各放射線検出素子7から信号線6にリーク電流の電流量ileakを少し上回る量の電流が流れ得る状態になっている。
そして、図15に示すように、各放射線検出素子7の第1電極74側や、TFT8のソース電極やドレイン電極、信号線6等にはそれぞれ基準電位V0が印加されており、各放射線検出素子7の第2電極78側やバイアス線9等にはバイアス電圧Vbiasが印加された状態になっている。
なお、図15や後述する図16、図17では、基準電位V0が0[V]に設定されている場合が示されているが、前述したように、基準電位V0を上記の値以外の値に設定することも可能であり、適宜の値に設定される。また、各図15では、各TFT8を介して1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7のみが記載されているが、他の信号線6に接続されている各放射線検出素子7についても同様である。
そして、図15に示した状態で、図16に示すように、例えば検出部Pの領域R1の各放射線検出素子7n、7n+1、…に対して放射線の照射が開始されると、各放射線検出素子7n、7n+1、…内で電子正孔対が発生して、第2電極78側の電位に対して第1電極74側の電位が下がっていく。
また、放射線の照射が開始された時点では、各TFT8にはゲート電極にオン電圧Von2が印加されていて各TFT8がオン状態であるため、上記のように各放射線検出素子7n、7n+1、…の第1電極−第2電極間の電位差が変化すると、各放射線検出素子7n、7n+1、…から本実施形態の場合は電子が信号線6に流出する。電流として見れば、信号線6内を電流(すなわちいわゆる光電流)が流れて各放射線検出素子7n、7n+1、…に流れ込む(図16中の矢印A参照)。
その際、前述したように、信号線6から個々の放射線検出素子7n、7n+1、…にそれぞれ流れ込む電流の量はリーク電流の電流量ileakを少し上回る量とされているため、非常に小さい量であるが、放射線が照射された多数の放射線検出素子7n、7n+1、…に電流が流れ込むため、信号線6内を流れる電流はある程度の大きさを有する電流となる。
そして、このような状況で、前述したように増幅回路18の抵抗器Reの抵抗値が高い値であると、抵抗器Reの両端間に電位差が生じる。すなわち、抵抗器Reのオペアンプ18aに接続されている側の端部は基準電位V0(0[V])のままであるが、抵抗器Reの反対側の端部(信号線6に接続されている側の端部)の電位が例えば−0.5[V]に低下し、信号線6に−0.5[V]の電圧が印加された状態となる。
放射線が照射されていない各放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側の電位はもともと0[V]であるため、各放射線検出素子7n-1、7n-2、…から信号線6に電流が流れる(図16中の矢印B参照)。そして、各放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側の電位が、信号線6の電位と同じ−0.5[V]まで低下する。
そして、放射線の照射が開始された直後のごく僅かな時間内で上記のような現象が生じた後、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧Voffが一斉に印加され、各TFT8が一斉にオフ状態とされて、各放射線検出素子7内に電荷を蓄積する状態(電荷蓄積モード)とされる。
その際、図17に示すように、放射線が照射された領域R1の放射線検出素子7n、7n+1、…では、上記のように放射線の照射が開始されると第2電極78側の電位(すなわちバイアス電圧Vbias)に対して第1電極74側の電位が下がるため、放射線の照射開始後、各TFT8が一斉にオフ状態とされて電荷蓄積状態に移行した段階で、第1電極74側の電位が基準電位V0(0[V])ではなく例えば−3[V]の状態になっている。そして、放射線が照射されることにより、放射線検出素子7n、7n+1、…内ではさらに電子正孔対が発生し、第1電極74側の電位がさらに下がっていく。
一方、領域R1以外の放射線検出素子7n-1、7n-2、…では、放射線が照射されていないにもかかわらず、上記のように、領域R1に対する放射線の照射が開始されると僅かな時間内で第1電極74側の電位が基準電位V0である0[V]から例えば−0.5[V]に変動した後、各TFT8がオフ状態とされる。そのため、図17に示すように、全TFT8がオフ状態とされた時点で、放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側の電位が基準電位V0である0[V]ではなく−0.5[V]の状態のまま固定されてしまう。
そして、放射線の照射後に行われる各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理の際には、信号線6に基準電位V0である0[V]が印加されている状態で各TFT8がオン状態とされると、第1電極74側の電位が基準電位V0(0[V])ではなく−0.5[V]になっている放射線検出素子7n-1、7n-2、…に、信号線6側から電流が流れ込む。そして、それに伴う電荷が読み出し回路17の増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積されて、それに応じた電圧値が増幅回路18から出力される。このようにして、放射線検出素子7n-1、7n-2、…では、放射線が照射されていないにもかかわらず、0ではない有意の値の画像データが読み出されるのである。
放射線の照射が開始された後、全TFT8がオフ状態とされるまでのごく僅かな時間内で生じる上記のような現象において、特に領域R1に強い放射線が照射された場合には、信号線6を流れる電流の値が大きくなり、増幅回路18の抵抗器Reによる電圧降下も大きくなる。そのため、放射線が照射されていない領域の各放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側における電位もより大きく変動し、これらの放射線検出素子7n-1、7n-2、…から読み出される画像データの有意の値も大きくなってしまう。
そして、このような現象が生じると、図23Bに示した場合と同様に、放射線が照射された領域R1の、信号線方向(図中では縦方向)に隣接する放射線が照射されていない領域R2にも有意の値の画像データに基づく像が現れてしまう。
そこで、このような現象が生じることを防止するために、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、図18に示すように、読み出し回路17の増幅回路18の入力端子すなわち反転入力端子が可変抵抗器18eを介して信号線6に接続されるように構成されている。
そして、少なくとも制御手段22が、各放射線検出素子7のリセット処理の後に走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに印加するオン電圧VonをVon1からVon2に一斉に低下させた状態で電流検出手段43から出力される、例えばバイアス線9の結線10を流れる電流(或いはそれに相当する電圧値V)の値を監視して放射線の照射の開始を待つ際には、可変抵抗器18eは、その抵抗値が低い状態に可変されるようになっている。
このように構成すれば、放射線の照射が開始されて、放射線が照射された領域R1の個々の放射線検出素子7n、7n+1、…に信号線6からリーク電流の電流量ileakを少し上回る量の電流が流れ込み、信号線6内を流れる電流がある程度の大きさを有する電流になっても、可変抵抗器18eの両端間に生じる電位差がごく僅かになり、放射線が照射されていない各放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側の電位の降下も非常に小さい値に収まる。
その後、各TFT8がオフ状態とされても、放射線検出素子7n-1、7n-2、…の第1電極74側は基準電位V0(0[V])より僅かに小さい電位の状態で固定されるため、その後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理の際には、放射線検出素子7n-1、7n-2、…からはほとんど0に近い画像データしか読み出されない。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、読み出し回路17の増幅回路18の入力端子側の抵抗器を可変抵抗器18eとし、放射線の照射が開始される時点で可変抵抗器18eの抵抗値を低い状態に可変させておくことで、信号線6に印加されている基準電位V0に生じる変動をより小さくすることが可能となり、強い放射線が照射された領域R1に隣接する領域R2に有意の値の画像データが生じることを的確に防止することが可能となる。
なお、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される直前に、可変抵抗器18eの抵抗値を低くするように構成することも可能であるが、各放射線検出素子7のリセット処理においては、各放射線検出素子7から信号線6に放出される余分な電荷が信号線6中を流れ易くした方がリセット効率が向上することや、放射線の照射が開始されて電荷蓄積モードとされる際に可変抵抗器18eの抵抗値を可変させることで生じるノイズや可変抵抗器18e自体で発生するノイズが各放射線検出素子7内にノイズ電荷として蓄積されてしまう危険性があることを考慮すると、各放射線検出素子7のリセット処理を開始する時点、或いはそれ以前に可変抵抗器18eの抵抗値を低下させておくことが望ましい。
また、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理時には、通常の処理の場合と同様に、可変抵抗器18eの抵抗値を高い値に可変させるように構成することも可能であり、或いは、上記と同様に、可変抵抗器18eの抵抗値を可変させることで生じるノイズや可変抵抗器18e自体で発生するノイズがノイズ電荷として読み出されることを防止するために、可変抵抗器18eの抵抗値を低下させておくように構成することも可能である。
[第3の実施の形態]
ところで、従来の場合、放射線画像撮影装置を電荷蓄積モードに切り替えるために各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧を所定の正の電圧値のオン電圧Von1(図11参照)から所定の負の電圧値のオフ電圧Voffに切り替えていたが、このように切り替えると、各TFT8に電圧を印加するためのゲートドライバ15b(図7参照)内のドライブ回路に過負荷がかかり、ドライブ回路が損傷したり破壊されたりする場合がある。
また、上記の第1および第2の実施形態の場合のように、各TFT8のゲート電極8gに対して、所定の正の電圧値のオン電圧Von1を一斉に印加した後、オン電圧の電圧値Von1を一斉に低下させてオン電圧Von2を印加させるように構成した場合でも、放射線の照射の開始を検出して一斉にオフ電圧Voffに切り替えると、やはりゲートドライバ15b内のドライブ回路に過負荷がかかってドライブ回路が損傷したり破壊されたりする可能性がある。
そこで、本発明の第3の実施形態では、上記の第1の実施形態や第2の実施形態の有効な効果を発揮することが可能であり、さらに、放射線の照射開始の検出時にスイッチ手段に印加する電圧を切り替える際のゲートドライバの損傷や破壊を防止可能な放射線画像撮影装置について説明する。
本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および各機能部の構成等は、上記の第1の実施形態や第2の実施形態の場合と同様であり、各機能部については第1、第2の実施形態の場合と同じ符号を付して説明する。また、各機能部については説明を省略するが、ここで、走査駆動手段15の構成について、より詳しく説明する。
図19に概略的に示すように、走査駆動手段15の電源回路15aは、ゲートドライバ15bから各走査線5に印加するオン電圧Vonとオフ電圧Voffとをゲートドライバ15bに供給するようになっている。また、走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、各スイッチ素子15cの切り替えにより電源回路15aから供給されるオン電圧Vonとオフ電圧Voffとを選択的に切り替えて各走査線5にオン電圧Vonとオフ電圧Voffのいずれかを印加するようになっている。
また、走査駆動手段15の電源回路15aは、オン電圧Vonやオフ電圧Voffの各電圧値を調整する機能を有しており、走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonやオフ電圧Voffの電圧値を調整することができるようになっている。
以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1での各放射線検出素子7のリセット処理時および放射線の照射開始の検出時における各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonおよびオフ電圧Voffの制御等について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
本実施形態においても、制御手段22は、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに所定の電圧値Von1のオン電圧を一斉に印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行い、その後、オン電圧の電圧値Von1を一斉に低下させてVon2とし、その状態を維持しつつ、電流検出手段43から出力される電流(或いはそれに相当する電圧値V)の値を監視して放射線の照射の開始を待つようになっている。この点では、上記の第1および第2の実施形態の場合と同様である。
本実施形態においても、低下させたオン電圧Von2の電圧値は、このオン電圧Von2をTFT8のゲート電極8gに印加してTFT8をオン状態とした場合にTFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が、通常の放射線検出素子7に流れる、暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるような電圧値に設定されるようになっている。
一方、電流検出手段43で検出された電流の値に基づいて制御手段22が放射線の照射の開始を検出すると、今度は、各放射線検出素子7からの電荷の流出を停止させて電荷蓄積モードに切り替えるために、走査駆動手段15は、各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Von2からオフ電圧Voffに切り替えることが必要になる。
しかし、その際、各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Von2から所定の負の電圧値のオフ電圧Voffに一挙に切り替えると、走査駆動手段15のゲートドライバ15b内の図示しないドライブ回路に過負荷がかかり、ドライブ回路が損傷したり破壊されたりする可能性があることは前述したとおりである。なお、ゲートドライバ15bのドライブ回路に過負荷がかかる可能性があるのは、オン電圧Vonからオフ電圧Voffへの切り替えの際であり、オン電圧Von自体やオフ電圧Voff自体の電圧値を変動させる場合には過負荷はかからない。
そこで、本実施形態では、走査駆動手段15は、オン電圧Von2から切り替えられるオフ電圧Voffの電圧値を前もって上昇させておき(以下、この電圧値が上昇されたオフ電圧VoffをVoff2という。)、制御手段22が放射線の照射の開始を検出すると、各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧Von2からこの電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2に切り替えるようになっている。そして、その後でオフ電圧Voffを電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2から本来の所定の負の電圧値のオフ電圧Voff1に低下させて、各TFT8を完全にオフ状態とするようになっている。
この場合、上昇されたオフ電圧Voff2の電圧値は、オン電圧Von2との電圧値の差が、オン電圧Von2からオフ電圧Voff2に切り替えた際にゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されない程度の差になるように設定されるようになっている。
しかし、低下されたオン電圧Von2は、上記のように、TFT8を流れ得るオン電流の最大電流量imax(Von2)が通常の放射線検出素子7に流れる暗電流を含むリーク電流の電流量ileakを少し上回る量になるような電圧値に設定されるため、上昇されたオフ電圧Voff2との電圧値の差が、上記のように切り替えの際にゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されない程度の差になるように設定し難い場合もある。
そのため、低下させたオン電圧Von2の電圧値を、制御手段22が放射線の照射の開始を検出すると、さらに低下させて、より低いオン電圧Von4に低下させた後で、オン電圧Von4から電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2に切り替えるように構成することも可能である。この場合も、その後でオフ電圧Voffを電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2から本来の所定の負の電圧値のオフ電圧Voff1に低下させて、各TFT8を完全にオフ状態とする。
また、この場合、さらに低下させるオン電圧Von4の電圧値は、上昇されたオフ電圧Voff2の電圧値との差が、オン電圧Von4からオフ電圧Voff2に切り替えた際にゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されない程度の差になるように設定される。
以下、上記の本実施形態に係る各放射線検出素子7のリセット処理時および放射線の照射開始の検出時における各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonおよびオフ電圧Voffの制御について、図20のタイミングチャート等を用いて説明する。
本実施形態では、図19に概略的に示したように、走査駆動手段15の電源回路15aからゲートドライバ15bにオン電圧Vonとオフ電圧Voffとが別々に供給され、ゲートドライバ15bは、各スイッチ素子15cの切り替えによりオン電圧Vonとオフ電圧Voffとを選択的に切り替えて走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧Vonとオフ電圧Voffのいずれかを印加する。また、電源回路15aは、ゲートドライバ15に供給するオン電圧Vonやオフ電圧Voffの各電圧値を調整することができるようになっている。
そして、図20に示すように、電源スイッチ36(図1参照)が操作者により押下される等して放射線画像撮影装置1が起動されると、時刻T0に放射線画像撮影装置1が起動されると、電源回路15aから供給されるオン電圧VonやオフVoffは所定の電圧値にセットされる。本実施形態では、この時点で供給されるオン電圧Vonは前述した最も高い所定の正の電圧値のオン電圧Von1にセットされ、オフ電圧Voffは前述した最も低い所定の負の電圧値のオフ電圧Voff1にセットされる。このオフ電圧Voff1は、第1、第2の実施形態におけるオフ電圧Voffと同じ値である。
放射線画像撮影装置1の起動時(時刻T0)には、ゲートドライバ15bはオフ電圧Voffを選択して、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧Voff1を印加する。なお、図20上段にはオン電圧Vonのタイミングチャート、図20中段にはオフ電圧Voffのタイミングチャート、図20下段にはオン電圧Vonとオフ電圧Voffの切り替えにより結果的に各走査線5に印加されている電圧値V5のタイミングチャートが示されている。電圧値V5はその時点で選択的に切り替えられているオン電圧Vonかオフ電圧Voffのいずれかである。
ゲートドライバ15bは、このようにして各TFT8のゲート電極8gに一旦オフ電圧Voff1を印加して全TFT8のゲートを閉じた後、続いて、各放射線検出素子7のリセット処理を行う。すなわち、時刻T1にオン電圧Vonに切り替えて、各TFT8のゲート電極8gに最も高い所定の正の電圧値のオン電圧Von1を一斉に印加して全TFT8のゲートを開き、各放射線検出素子7に溜まった暗電荷等の余分な電荷を信号線6やバイアス線8に流出させて除去する。
そして、走査駆動手段15の電源回路15aは、前述したように、所定時間が経過した後、時刻T2に各TFT8のゲート電極8gに印加するオン電圧Vonの電圧値をオン電圧Von1からより低い所定の電圧値Von2に一斉に低下させる。そして、この状態を維持して放射線の照射開始を待つ。また、電源回路15aは、この段階では走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されていないオフ電圧Voffを、最も低い所定の電圧値Voff1からVoff2に上昇させておく。なお、本実施形態ではオフ電圧Voff2は0[V]に設定されている。
また、制御手段22は、放射線の照射の開始を検出するために、この時点で電流検出手段43のスイッチ43d(図9参照)をオフ状態とし、電源供給手段44から差動アンプ43cに電力を供給させて、電流検出手段43を起動させる。
図12に示したように、時刻t1で放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、前述したように放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷(電子正孔対)がバイアス線9や信号線6に流出するため、時刻t1で電流検出手段43の差動アンプ43cから出力される電流に相当する電圧値Vが増加し始める。
制御手段22は、電流検出手段43から出力される電圧値Vが上昇し例えば、予め設定された閾値を越えた場合や、電圧値Vの増加率が予め設定された閾値を越えた場合等に、放射線の照射が開始されたことを検出する。なお、図20では時刻T3に上記の条件が満たされ放射線の照射開始が検出されたものとする。
走査駆動手段15のゲートドライバ15bは、時刻T3に制御手段22が放射線の照射開始を検出すると、走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧を、オン電圧Von2から、上記のように電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2(すなわち本実施形態では0[V])に一斉に切り替える。
そして、その直後の時刻T4にオフ電圧Voff2を最も低い所定の負の電圧値のオフ電圧Voff1に一斉に低下させて、各TFT8のゲートを完全に閉じて、各放射線検出素子7を電荷蓄積モードに切り替える。なお、図12に示したように、時刻T3に放射線の照射開始が検出されて各TFT8のゲート電極8gに印加される電圧がオフ電圧Voff2に切り替えられると、バイアス線9や結線10を流れる電流は急速に減少する。
また、電源回路15aは、この後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理に備えて、走査線5の各ラインL1〜Lxへの接続が遮断されたオン電圧Vonの電圧値を、最も高い所定の正の電圧値Von1に上昇させておく。また、制御手段22は、電流検出手段43のスイッチ43dをオン状態として抵抗器43aの両端子間を短絡するとともに、電源供給手段44から差動アンプ43cへの電力の供給を停止して電流検出手段43の起動を停止する。
このように、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加される電圧を、時刻T3にオン電圧Von2からオフ電圧Voff2に切り替えた際、オン電圧Von2の電圧値が十分に低く、オン電圧Von2とオフ電圧Voff2(すなわち本実施形態では0[V])との電圧値の差ΔV(図20下段参照)が十分に小さければ、ゲートドライバ15b内のドライブ回路に過負荷がかからず、ゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されたりすることを防止することができる。
しかし、上記のように、本実施形態では、オン電圧Von2は通常の放射線検出素子7に流れるリーク電流の電流量ileakにより規定されるため、オン電圧Von2を必ずしも十分に低い電圧値に設定できない場合もある。
前述したように、このような場合には、図21Aに示すように、時刻T3に制御手段22が放射線の照射の開始を検出すると、オン電圧Vonをさらに低下させて、例えば0[V]等のより低いオン電圧Von4に低下させ、その後、時刻T3*に、このオン電圧Von4から、上記のように0[V]等に設定された電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2に一斉に切り替えるように構成する。そして、その直後の時刻T4にオフ電圧Voff2を最も低い所定の負の電圧値のオフ電圧Voff1に一斉に低下させて、各TFT8のゲートを完全に閉じる。
なお、図21A上段にはオン電圧Vonのタイミングチャート、図21A中段にはオフ電圧Voffのタイミングチャート、図21A下段にはオン電圧Vonとオフ電圧Voffの切り替えにより結果的に各走査線5に印加されている電圧値V5のタイミングチャートが示されており、図21Bには図21A下段の電圧値V5のタイミングチャートの時刻T3*付近を時間軸方向に拡大した図が示されている。
このように構成すれば、例えば0[V]等に設定されたオン電圧Von4から0[V]等に設定されたオフ電圧Voff2に切り替えられるため、切り替える前のオン電圧Von4の電圧値と切り替えた後のオフ電圧Voff2との電圧値の差ΔVが0になり、或いは僅かな差になる。そのため、ゲートドライバ15b内のドライブ回路に過負荷がかからず、ゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されたりすることを防止することが可能となる。
なお、上記のように、さらに低下されたオン電圧Von4の電圧値と、上昇されたオフ電圧Voff2の電圧値とを、ともに0[V]に設定しておけば、ゲートドライバ15b内のドライブ回路に全く過負荷がかからず、ゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されたりすることを確実に防止することが可能となる。
しかし、オン電圧Von4の電圧値とオフ電圧Voff2の電圧値とを必ずしもともに0[V]に設定する必要はなく、例えば、オン電圧Von4の電圧値を小さい正の値の電圧値としてオフ電圧Voff2の電圧値を0[V]に設定したり、或いは、例えば、オン電圧Von4の電圧値を0[V]に設定し、オフ電圧Voff2の電圧値を0[V]より小さい負の値に設定しても、それらの差ΔVを僅かな差とすることが可能となり、ゲートドライバ15bに過負荷がかかることを的確に防止することが可能となる。
オン電圧Von4やオフ電圧Voff2の電圧値をどのような値に設定するかは、ゲートドライバ15bに過負荷がかからないようにするものであればよく、適宜の値に設定される。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、各放射線検出素子7のリセット処理時に各TFT8のゲート電極8gに最も高い所定の正の電圧値のオン電圧Von1を印加した後、オン電圧Vonの電圧値をVon2に低下させ、放射線の照射開始後、この電圧値を低下させたオン電圧Von2、或いは、電圧値を低下させたオン電圧Von2からさらに電圧値を低下させたオン電圧Von4から、電圧値が上昇されたオフ電圧Voff2に切り替える。そして、その後、オフ電圧Voffの電圧値を、本来のオフ電圧Voffである所定の負の値の電圧値Voff1に低下させるように構成した。
そのため、放射線の照射開始の検出時に、走査線5の各ラインL1〜Lxを介して各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧がオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替えられる際に、低下させたオン電圧Von2の電圧値、或いは、電圧値を低下させたオン電圧Von2からさらに低下させたオン電圧Von4の電圧値と、上昇されたオフ電圧Voff2の電圧値との差ΔVを0としたり、僅かな差にすることが可能となる。そのため、走査駆動手段15のゲートドライバ15bに過負荷がかかることを的確に防止して、ゲートドライバ15bが損傷されたり破壊されたりすることを的確に防止することが可能となる。
なお、前述したように、本実施形態の走査駆動手段15のゲートドライバ15bはゲートIC12a(図6参照)等で構成される。しかし、ゲートIC12aの中には、ゲートIC12aに走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に切り替えるように信号を送信しても、電圧を切り替えるタイミングを僅かずつずらして走査線5の各ラインL1〜Lxに印加するように形成されているものもある。
これは、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に一斉にオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替えたりする際に、装置内の各機能部に過剰な負荷がかかって各機能部に故障等が生じることを防止するための構成である。
しかし、このように走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧が同時に一斉にオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替えられず、僅かながらも電圧を切り替えるタイミングがずれると、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続された各TFT8のオン/オフの切り替えタイミングがずれてしまう。
そして、このように各TFT8のオン/オフの切り替えタイミングがずれると、TFT8のゲート電極8gに印加される電圧がオフ電圧Vonに切り替えられるタイミングが遅いほど、電圧の切り替えに伴う過渡的な現象として信号線6等に生じる微弱な電流がTFT8を介して放射線検出素子7に流入する度合いが増す等して、TFT8がオフ状態になった時点で各放射線検出素子7に存在する電荷量に差が生じてしまう。
このようにTFT8がオフ状態になった時点のイニシャルな放射線検出素子7の残存電荷量が異なると、その後、オフセット補正等の画像補正を行ってもその影響が残り、最終的に得られる放射線画像に悪影響が生じる場合がある。
走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に切り替えるように指示する信号を受信した際に、電圧を切り替えるタイミングをずらさずに走査線5の各ラインL1〜Lxに対して同時に切り替えを行うように形成されたゲートIC12aを用いるように構成すれば、上記の問題を解消することができるが、このようなゲートIC12aを用いることができない場合もある。
このような場合には、上記のように電圧を切り替えるタイミングが僅かにずらされたゲートIC12aを用いて、例えば、以下の手法によりタイミングを揃えて、ゲートドライバ15bであるゲートIC12aから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に一斉にオン電圧Vonからオフ電圧Voffに切り替えることが可能となる。
すなわち、オン電圧Vonからオフ電圧Voffへの切り替えに先立って、例えば、ゲートIC12aに接続された走査線5の本数分のアドレスを備える図示しないシフトレジスタに対して、図22に示すように、H(high)の信号(STV)をクロック(CLK)にあわせて送信してシフトレジスタの各アドレスに順次入力する。
そして、前述したように、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に切り替えるように指示する通常の信号に従った場合、ゲートIC12aはタイミングを僅かにずらして電圧を切り替えるように作動してしまうため、上記の通常の信号を例えばイネーブル信号(XOE)に切り替える。
図22の場合、イネーブル信号はローアクティブであり、イネーブル信号がL(low)のとき、シフトレジスタの各アドレスに入力されているH信号がゲートIC12aの各チャネルに送信され、ゲートIC12aから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧Vonを印加する状態になる。イネーブル信号がH(high)のときには、ゲートIC12aから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧Voffが印加される。
そして、通常の信号がイネーブル信号に切り替えられることで、ゲートIC12aの作動状態が上記の通常の信号に従って作動する状態からイネーブル信号に従って作動する状態に引き継がれる。その際、イネーブル信号がL(low)信号であるときに切り替えることで、ゲートIC12aから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧Von2が印加される状態が継続される。
そして、制御手段22が放射線の照射の開始を検出した段階で、イネーブル信号をL(low)からH(high)に切り替えることで、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加される電圧がオン電圧Von2(或いはオン電圧Von4)からオフ電圧Voff2に切り替えられる。この場合、イネーブル信号(XOE)がL(low)からH(high)に切り替えると、タイミングのずれがなく同時に一斉に走査線5の各ラインL1〜Lxに印加される電圧がオン電圧Von2(或いはオン電圧Von4)からオフ電圧Voff2に切り替わる。
このようにして、上記の問題を解消することが可能となる。また、この場合、上記のように走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧を同時に一斉にオン電圧Von2(或いはオン電圧Von4)からオフ電圧Voff2に切り替えても、上記の本実施形態のように、切り替える前のオン電圧Von2やVon4の電圧値と切り替えた後のオフ電圧Voff2との電圧値の差ΔVが僅かな値となり、或いは0になるように構成されていれば、その際に装置内の各機能部に過剰な負荷がかかることを防止することが可能となり、各機能部に故障等が生じることを防止することが可能となる。