以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納された可搬型(カセッテ型)の装置として構成されている。
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下、放射線入射面Rという。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ40(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、外部装置と無線で通信するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。
また、図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内で発生し蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止し、放射線検出素子7内で発生した電荷を保持して、放射線検出素子7内に蓄積させるようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるX−X線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線10に結束されている。
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bとして機能するゲートIC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルムや異方性導電ペースト等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
本実施形態では、バイアス電源14は、後述する制御部22に接続されており、制御部22は、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を必要に応じて可変させるようになっている。
また、本実施形態では、バイアス線9の結線10とバイアス電源14との接続部分に、放射線の照射の開始に伴ってバイアス電源14と放射線検出素子7との間を流れる電流を検出し、微分等の処理を行う検出部41が設けられている。検出部41の構成等については後で説明する。
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる各走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、本実施形態では、電源回路15aとゲートドライバ15bとを備えており、本実施形態では、ゲートドライバ15bは、前述したゲートIC12aが複数並設されて形成されている。また、走査駆動手段15は、ゲートドライバ15bに接続されている各走査線5を介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧を制御するようになっている。
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、読み出しIC16には所定個数の読み出し回路17が設けられており、読み出しIC16が複数設けられることにより、信号線6の本数分の読み出し回路17が設けられるようになっている。
読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング回路19と、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とで構成されている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御部22に接続されており、制御部22によりオン/オフが制御されるようになっている。電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で、放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると(すなわち、TFT8のゲート電極8gに走査線5を介してオン電圧が印加されると)、当該放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力端子から出力されるようになっている。
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧を出力して電荷電圧変換して増幅するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。
なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。また、図8に示すように、増幅回路18には、電源供給部42から電力が供給されるようになっている。なお、図7では、電源供給部42の図示が省略されている。
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御部22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
すなわち、相関二重サンプリング回路19は、増幅回路18がリセットされ、電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされた後、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し時に、放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積され始めた時点で制御部22から1回目のパルス信号を受信すると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値を保持する。
そして、その時点から所定時間経過した後、放射線検出素子7から放出された電荷がコンデンサ18bに流入して蓄積された時点で制御部22から2回目のパルス信号を受信すると、その時点で再び増幅回路18から出力されている電圧値を保持して、それらの電圧値の差分値を下流側に画像データとして出力するようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶部43に出力されて順次保存されるようになっている。
制御部22は、本実施形態では、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)107、ROM(Read Only Memory)106、や図示せぬ入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータやFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成されている。
図7や図8に示すように、制御部22には、検出部41、記憶部43、バイアス電源14や増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cが接続されており、また、図8では図示が省略されているが、電源供給部42も接続されている。
また、本実施形態では、制御部22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶部43、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ40が接続されている。このように、バッテリ40は、放射線画像撮影装置1のハウジング2内に内蔵されている。
制御部22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。制御部22は、本発明の制御手段である。
また、制御部22は、各放射線検出素子7のリセット処理時や放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し時に、走査駆動手段15に対して、走査駆動手段15から各走査線5を介して各TFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えさせるためのパルス信号を送信するようになっている。
制御部22には、前述した検出部41が接続されており、制御部22には、検出部41から、バイアス線10に流れる電流に応じた電気信号を微分し、比較器96が比較電圧と比較した結果と、バイアス線10に流れる電流に応じた電気信号をA/D変換したデジタル値のデータが入力される。
制御部22のCPU101は、曝射開始判定手段103、オフセット除去手段105、積分手段104、積分値比較手段108と、を有している。
オフセット除去手段105は、電気信号に含まれるオフセットを除去する。積分手段104は、オフセットを除去した後の電気信号を所定の期間積分する。積分値比較手段108は、積分手段104の積分した値が所定の閾値を越えたことを判定し、結果を出力する。
曝射開始判定手段103は、待機モードでは、検出部41から入力された、比較器96の出力と、積分値比較手段108の出力のうち少なくとも一方が変化したことに基づいて放射線の曝射が開始されたことを判定する。
各部の動作については後に詳しく説明する。
次に、図9に示す第1の実施形態の検出部41とその周辺の構成について、図10に示す各部の波形を参照しながら説明する。図9(A)は、検出手段とフィードバック回路の構成を表す等価回路図であり、図9(B)は、フィードバック回路のスイッチが切り替えられた状態を表す図である。図10は、放射線の曝射開始を検出する各部の信号を説明するための説明図である。
本実施形態では、検出部41は、前述したように、バイアス線9の結線10とバイアス電源14との接続部分に設けられ、放射線の照射の開始に伴ってバイアス電源14と放射線検出素子7との間を流れる電流を検出するようになっている。
本実施形態では、検出部41は、図9(A)に示すように、バイアス電流検出手段48とバンドパスフィルタ94、微分手段95、比較電圧電源99、A/D変換器98から成る。図中、バンドパスフィルタ94はBPF、微分手段95は微分、比較電圧電源99はVref電源、A/D変換器98はA/Dと表記する。
図9の例では各放射線検出素子7とバイアス電源14とを結ぶ結線10に直列にフィードバック回路45とバイアス電流検出手段48とが設けられている。
検出部41でバイアス線9の結線10中を流れる電流を検出する際に、結線10中を電流が流れることにより検出部41の例えば検出抵抗90の両端子間に電圧Vが生じ、バイアス電圧Vbiasに変動が生じてしまう場合がある。
そこで、本実施形態では、バイアス電圧Vbiasの変動を抑制するために、検出部41と各放射線検出素子7との間にフィードバック回路45が設けられている。
フィードバック回路45は公知の回路であり、例えば、PNP型のトランジスタ45aのエミッタをバイアス線9や結線10に接続し、コレクタを検出部41側に接続して構成されている。また、トランジスタ45aのエミッタ側すなわちバイアス線9側には反転入力端子が接続され、非反転入力端子にバイアス電源14から所定のバイアス電圧Vbiasが印加されたアンプ45bの出力がトランジスタ45aのベースに入力されるように構成されている。
このように構成することで、各放射線検出素子7の第2電極78側に所定のバイアス電圧Vbiasが印加されるとともに、トランジスタ45aのコレクタ側には結線10と同じ電流が流れる。
また、フィードバック回路45には、バイアス線9の結線10中を流れる電流を検出しない場合に、アンプ45bの反転入力端子と結線10、および非反転入力端子とバイアス電源14との接続を切断し、バイアス線9の結線10とバイアス電源14とを直接接続させるためのスイッチ45cが設けられている。
電流の検出が不要になった場合には、図9(B)に示すようにアンプ45bの入力側のスイッチ45cが切り替わり、バイアス線9の結線10とバイアス電源14とが直接接続される。
本実施形態のバイアス電流検出手段48は、検出抵抗90、検出抵抗92、抵抗値切替手段91、差動アンプ93から構成される。
抵抗値の異なる検出抵抗90、検出抵抗92は、アナログスイッチなどから成る抵抗値切替手段91で切替可能に構成され、検出抵抗90、検出抵抗92の何れか一方がバイアス電源14とフィードバック回路45との間に直列に接続される。本実施形態では初期状態では検出抵抗90がバイアス電源14に接続されており、検出抵抗90より検出抵抗92の抵抗値が高いものとして以下説明する。抵抗値切替手段91によって結線10と接続された検出抵抗90または検出抵抗92には、結線10に流れるバイアス電流と同じ電流が流れる。
なお、本実施形態ではフィードバック回路45を設ける例を説明するが、バイアス電圧の変動が問題にならない場合は、検出抵抗90、検出抵抗92の一端を直接結線10に接続しても良い。また、別法として例えば検出抵抗92の抵抗値を0とし、バイアス電流を検出する時以外は、抵抗値切替手段91を検出抵抗92側に切り替えることにより短絡するように構成しても良い。
アンプ93は、検出抵抗90または検出抵抗92に流れるバイアス電流により発生した電圧を増幅し、電気信号として電圧VAを出力する。
図10(a)は、電圧VAの波形の一例を説明する説明図である。図10の横軸は時間軸であり、t1は放射線の曝射が開始したタイミング、t3は放射線の曝射が終了したタイミングである。放射線の曝射が行われるt1とt3の間は、バイアス電流が増加しステップ状に電圧VAが高くなっている。しかしながら、図10(a)に示すように電圧VAにはずっと高周波のノイズが重畳されているうえ、低周波のノイズのためゆっくりと変動しているので、このままではt1、t3のタイミングを正確に検出することは難しい。
バンドパスフィルタ94は、電圧VAに含まれるこのような低周波のノイズと高周波のノイズを除去するために設けられている。バンドパスフィルタ94に最適な帯域は、実装条件等により異なるが例えば100Hz〜10kHz程度である。なお、低周波のノイズが少なければバンドパスフィルタに限らず、ローパスフィルタや各種ノイズフィルタを用いても良い。
図10(b)は、バンドパスフィルタ94を通過した電圧VLの波形の一例を説明する説明図である。このように、低周波のノイズと高周波のノイズが除去され、t1、t3のタイミングの検出が容易になっている。
微分手段95は、バンドパスフィルタ94を通過した電圧VLを微分して出力する。
図10(c)は、微分手段95の出力の電圧Veの波形の一例を説明する説明図である。図10(c)に示すように、電圧Veの波形は、電圧VLの立ち上がりと立ち下がりを微分した波形である。
比較器96は、いわゆるコンパレータであり、比較電圧電源99の出力する比較電圧と電圧Veとを比較し、結果を出力する。本実施形態では、比較器96は、電圧Veが比較電圧以下では論理値’L’を出力し、電圧Veが比較電圧を越えると論理値’H’を出力するものとする。
図10(c)では、電圧Veと比較電圧電源99の出力する比較電圧VT1とを比較して放射線の曝射が開始したタイミングを検出する例を示している。t1のタイミングで電圧Veは比較電圧VT1を越え、比較器96の出力はその間’H’になる。
なお、比較電圧電源99は、制御部22の指令により複数の比較電圧を切り替えて出力できるように構成されている。
ところで、図10(a)のようにt1、t3のタイミングで電圧VAがステップ状に変化する場合は、微分後の電圧Veは比較電圧VT1を越え、比較器96の出力の変化からt1のタイミングを検知することができるが、図10(d)のように緩やかに変化する場合もある。すると、図10(e)のように、微分後の電圧Veは比較電圧VT1を越えず、比較器96の出力は変化しない。
本発明では、このような場合にも放射線の曝射が開始したことを検知できるよう、電圧VLをA/D変換器98でデジタル値に変換後、オフセット除去手段105でオフセットを除去したデジタル値を積分手段104で積分し、積分値比較手段108が所定の閾値を越えたことを判定している。図10(f)は、積分手段104で積分した電圧値VIが、所定の閾値VTHを越えることで放射線の曝射の開始を検出できることを概念的に示している。
オフセット除去手段105でオフセットを除去したデジタル値を積分手段104で積分し、積分値比較手段108が所定の閾値を越えたことを判定する手順を、図11のフローチャートで説明する。なお、フラッグFX、FYは比較器96と積分値比較手段108の出力の判定結果と、をそれぞれ記憶するフラッグであり、RAM107に記憶される。FX、FYの値は、電源投入時に0に初期化されている。以降で説明するように、FXの値は、微分後の電圧Veが比較電圧VT1を越えると1になり、FYの値は積分値V1が閾値VTHを越えると1になる。
図11は、本実施形態の曝射開始判定手段103が比較器96の出力と積分値比較手段108の出力をそれぞれ判定する手順を説明するためのフローチャートである。
CPU101は、内部タイマーにより所定の時間間隔でタイマー割り込みが発生し、図11のタイマー割り込みルーチンが起動されるものとする。本実施形態では、オフセットによる変動の周期が1秒であるものとして以下の説明をする。また、タイマー割り込みの周期は1ms以下とする。
S10:比較器96の出力が’H’か否かを判定するステップである。
比較器96の出力は、微分手段95で微分した電圧Veが比較電圧電源99の出力する比較電圧VT1を越えると’H’になる。曝射開始判定手段103は比較器96の出力が’H’か否かを判定する。
比較器96の出力が’H’の場合、(ステップS10;Yes)、ステップS11に進む。
S11:FX=1にするステップである。
曝射開始判定手段103は、FXを1にしてステップS12に進む。
比較器96の出力が’L’の場合、(ステップS10;No)、ステップS12に進む。
S12:現在のA/D変換器98の出力するデジタル値V(t)を記憶するステップである。
積分手段104は、A/D変換器98の出力するデジタル値V(t)を取得し、RAM107に現在の時刻の情報とともに一時記憶する。
S13:1秒前にA/D変換器98の出力したデジタル値V(t−1)を読み出すステップである。
オフセット除去手段105は、RAM107から現在の時刻のデジタル値V(t)と、1秒前の時刻に記憶させたデジタル値V(t−1)を読み出す。
S14:ΔV=V(t)−V(t−1)を算出するステップである。
オフセット除去手段105は、現在の時刻のデジタル値V(t)と、オフセットの1周期前の時刻のデジタル値V(t−1)との差分値ΔVを算出する。
S15:ΔV>2mVか否かを判定するステップである。
オフセット除去手段105は、差分値ΔVが例えば2mVを越えるか否かを判定する。本実施形態では、2mVを越える差分値ΔVはオフセット以外の要因による増加分と判定する。判定するレベルは2mVに限らず、実際の回路の実測値から適宜決定すれば良い。
本実施形態では、1秒周期の正弦波状のゆるやかなオフセット変動が発生するものとし、1秒周期のゆるやかなオフセット変動をキャンセルした差分値ΔVを算出し、2mVを越える差分値ΔVを、バイアス電流の増加により1秒前より増加した差分の電圧値として積分している。このように、オフセットによる変動を除去し、バイアス電流の増加により増加した差分の電圧値だけ積分することができる。
差分値ΔVが2mVを越える場合、(ステップS15;Yes)、ステップS16に進む。
S16:V1=V1+ΔVを算出するステップである。
積分手段104は、RAM107に記憶されている積分値V1に差分値ΔVを加算する。
差分値ΔVが2mVを越えない場合、(ステップS15;No)、ステップS17に進む。
S17:V1>VTHか否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は積分値V1が閾値VTHを越えるか否かを判定する。
積分値V1が閾値VTHを越える場合、(ステップS17;Yes)、ステップS18に進む。
S18:FY=1にするステップである。
曝射開始判定手段103はFY=1にして処理を終了し、元のルーチンに戻る。
差分値ΔVが2mVを越えない場合、(ステップS15;No)、元のルーチンに戻る。
タイマー割り込みルーチンの説明は、以上である。
次に、図12と図13を用いて、第1の実施形態の放射線画像撮影装置が、待機モードから放射線の曝射開始を検知して蓄積モードを開始し、放射線の曝射終了を検知して読み出しモードに移行する手順を説明する。図12は、第1の実施形態の放射線画像撮影装置のメインルーチンの手順を説明するフローチャート、図13は、第1の実施形態における待機モードから読み出しモードまでの各部波形の一例である。
図13(a)は、バンドパスフィルタ94を通過した電圧VLの波形の一例、図13(b)は、微分手段95の出力の電圧Veの波形の一例、図13(c)は、積分値V1の変化の一例である。図13では、t1のタイミングで放射線の曝射が開始されるものとする。
以下、図12のフローチャートの順に図13を参照しながら説明する。
S100:初期化するステップである。
放射線画像撮影装置1の電源が投入された後、制御部22は、FX、FY、V1と変数N、Mを0にするとともに各部の初期化を行う。
S101:待機モードを開始するステップである。
待機モードは放射線の曝射を待機するモードである。電源供給部42は、バイアス電源14は各部に電源を供給する。制御部22は、電荷リセット用スイッチ18cをオン状態とするとともに、走査駆動手段15から各走査線5にオン電圧を印加させて、各走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加し、全てのTFT8をオン状態とし、待機モードを開始する。
各放射線検出素子7の第1電極74には基準電位V0が印加され、第2電極78にはVbiasが印加されるが、Vbiasの電圧は基準電位V0(例えば0V)より低く設定されており逆バイアスになっている。したがって、放射線検出素子7の受けた放射線の量に応じて第1電極74から第2電極78に向けてバイアス電流ibが流れる。
制御部22は、比較電圧電源99が比較電圧VT1を出力するように指令するとともに、検出抵抗90がバイアス電源14に接続されるように抵抗値切替手段91に切替を指令する。
次に、制御部22は本ステップでタイマー割り込みをONにする。以降、所定の時間間隔でタイマー割り込みルーチンが起動される。
S102:FX=1か否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、FX=1か否かを判定する。
FX≠1の場合、(ステップS102;No)、ステップS103に進む。
S103:FY=1か否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、FY=1か否かを判定する。
FY≠1の場合、(ステップS103;No)、ステップS104に進む。
S104:M=M+1とするステップである。
曝射開始判定手段103は、変数M=M+1とする。
S105:M=Zか否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、所定時間待機後、変数Mの値が所定の値Zに等しいか否かを判定する。
M≠Zの場合、(ステップS105;No)、ステップS102に戻る。
M≠Zの場合、所定回数Zの判定を行っていないのでステップS102に戻る。
M=Zの場合、(ステップS105;Yes)、ステップS106に進む。
所定回数Zの判定を行ってもFY=0であり、積分値V1がVTHを越えないので曝射開始判定手段103は、再度積分をやり直すためステップS106で積分値V1を初期化する。
S106:M=0、V1=0にするステップである。
曝射開始判定手段103は、M=0、V1=0にしてステップS102に戻る。
FX=1の場合、(ステップS102;Yes)、ステップS110に進む。
FX=1になるのは、タイマー割り込みルーチンで比較器96の出力が’H’になった場合である。例えば、図13(a)のようにt1のタイミングで電圧VLが大きく増加し、図13(b)のように微分後の電圧Veが比較器96の比較電圧であるVT1を越え、比較器96の出力が’H’になった場合である。
曝射開始判定手段103は、放射線曝射開始と判定し、ステップS110に進む。
FY=1の場合、(ステップS103;Yes)、ステップS110に進む。
この場合は、タイマー割り込みルーチンで、積分値V1が閾値VTHを越えた場合である。例えば、微分後の電圧Veは比較器96の比較電圧であるVT1を越えないが、図13(c)のようにtdのタイミングで積分値VIが閾値VTHを越えた場合である。なお、図13にはこの場合の微分後の電圧Veの波形は図示していないが、比較電圧であるVT1を越えないレベルである。
曝射開始判定手段103は、放射線曝射開始と判定し、ステップS110に進む。
S110:蓄積モードを開始するステップである。
制御部22は、走査駆動手段15から各走査線5にオフ電圧を印加させて、各走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gにオフ電圧を印加し、全てのTFT8をオフ状態とし、蓄積モードを開始する。蓄積モードの間、放射線検出素子7に電荷が蓄積される。
図13では、t2のタイミングで蓄積モードが開始されている。
S111:所定時間待機するステップである。
制御部22は、次に放射線曝射の終了の判定を始める前に、微分後の電圧Veが安定するまでTXの間待機する。図13(b)に示すようにt1の直後のt1’では電圧Veにアンダーシュートが発生している。放射線曝射の終了を検出するときは、比較電圧VrefをVT1からVT2に切り替えなければならないが、t1’のタイミングにVT2に切り替えていたとすると誤まって検出してしまう。また、蓄積モードを開始するt2のタイミングでも、電圧VLが大きく変動するため電圧Veも変動する。t1’のタイミングと同様に誤検出の可能性があるので、t2以降も所定の時間放射線曝射の終了の判定を開始しないことが望ましい。
本実施形態では、制御部22は、t2以降TXの間待機してから、次ステップ以降の放射線曝射の終了の判定を開始するステップに進み、判定結果に基づいて読み出しモードに設定する。
S112:比較電圧VrefをVT2に設定するステップである。
制御部22は、比較電圧電源99に微分後の電圧Veの平均電圧より低い比較電圧VT2を出力するように指令する。本ステップで、比較電圧をVT2に変更し、放射線曝射の終了を検出できるようにする。
S113:抵抗値を切り替えるステップである。
制御部22は、抵抗値切替手段91に切替を指令し、検出抵抗90から検出抵抗92に切り替えてバイアス電源14に接続させる。蓄積モードではTFT8はオフであり、第1電極74には基準電位V0が印加されないので結線10に流れる電流ibは少なくなるが、待機モードと同様に第1電極74から第2電極78に向けて放射線検出素子7の受けた放射線の量に応じた電流ibが流れる。
このように本実施形態では、蓄積モードでは検出抵抗を抵抗値の大きい検出抵抗92に切り替えて電流ibの変化の検出を容易にしている。
S114:FX=1にするステップである。
曝射開始判定手段103は、放射線曝射の終了を検出するためFX=1にする。図13のt3のタイミングが放射線曝射の終了タイミングであり、図13(b)のように比較電圧VT2は微分後の電圧Veの平均電圧より低いのでt3のタイミングまで比較器96の出力は’H’である。
S115:FX=0か否かを判定するステップである。
比較器96の出力は、微分後の電圧Veが比較電圧VT2より低くなると’L’になる。曝射開始判定手段103は、FX=0か否かを判定する。
FX≠0の場合、(ステップS115;No)、ステップS116に進む。
S116:タイムアウトか否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、蓄積モード開始から所定時間経過し、タイムアウトになったか否かを判定する。
タイムアウトではない場合、(ステップS116;No)、ステップS115に戻る。
ステップS115に戻り、FX=0になるのを検出する。
タイムアウトの場合、(ステップS116;Yes)、ステップS117に進む。
曝射開始判定手段103は、比較器96の出力からは放射線曝射の終了タイミングは検出できなかったが、放射線曝射の開始から所定時間経過したことから放射線曝射が終了したものとしてステップS117に進む。
FX=0の場合、(ステップS115;Yes)、ステップS117に進む。
曝射開始判定手段103は、放射線曝射が終了したと判定し、ステップS117に進む。
S117:読み出しモードを開始するステップである。
制御部22は、走査駆動手段15から各走査線5に所定の期間オフ電圧からオン電圧になるパルス信号印加させて、各走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gに順次オン電圧を印加し、順次TFT8をオン状態とし、読み出しモードを開始する。
また、制御部22は、所定のタイミングで読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行する。
読み出しモードでは、検出部41やフィードバック回路45が稼働している必要はない。そのため、制御部22は、フィードバック回路45のスイッチ45cを切り替えてスイッチ45cを介してバイアス線9の結線10とバイアス電源14とを直接接続するとともに、検出部41やフィードバック回路45のアンプ45bへの電力の供給を停止して、検出部41やフィードバック回路45の稼働を停止するようにしても良い。
S118:読み出したデータを保存するステップである。
制御部22は、各放射線検出素子7から画像データを読み出して記憶部43に保存させる。
S119:連続撮影か否かを判定するステップである。
制御部22は、当該放射線画像撮影が単独の撮影であるか連続撮影であるかを判定する。
連続撮影の場合、(ステップS119;Yes)、ステップS100に戻る。
ステップS100に戻り、待機モードになる。
単独の撮影の場合、(ステップS119;No)、ステップS120に進む。
アンテナ装置39を介して外部装置に画像データを送信し、処理を終了する。
次に、図14のフローチャートと図15を用いて第2の実施形態について説明する。
図14は、第2の実施形態の放射線画像撮影装置のメインルーチンの手順を説明するフローチャート、図15は、第2の実施形態でノイズにより微分後の電圧Veが比較器96の比較電圧であるVT1を越えた場合の各部波形の一例である。
図15(a)は、バンドパスフィルタ94を通過した電圧VLの波形の一例、図15(b)は、微分手段95の出力の電圧Veの波形の一例、図15(c)は、積分値VIの変化の一例である。図15では、t0のタイミングで、微分後の電圧Veが比較器96の比較電圧であるVT1を越えるノイズが発生し、t1のタイミングで実際の放射線の曝射が開始されるものとする。
図12で説明した第1の実施形態のフローチャートでは、ステップ102でFX=1と判定すると蓄積モードを開始するが、ノイズにより微分後の電圧Veが比較器96の比較電圧であるVT1を越えFX=1になってしまう可能性がある。本実施形態では、このような誤検出を防止するため図15に示すタイミングtaで蓄積モードを開始した後、所定の時間TYまでに積分値VIが閾値VTHを越えない場合は誤検出と判定し、タイミングtbで待機モードに戻している。
以下第2の実施形態のフローチャートを説明するが、図12の第1の実施形態のフローチャートとステップS100〜S110は同じ手順なので説明を省略し図14のステップS201から説明する。なお、第1の実施形態と同じ処理には同番号を付し、説明を省略する。
S201:抵抗値を切り替えるステップである。
制御部22は、抵抗値切替手段91に検出抵抗の切り替えを指令し、検出抵抗92をバイアス電源14に接続させる。蓄積モードではTFT8はオフであり、第1電極74には基準電位V0が印加されないので電流量は少なくなるが、放射線検出素子7の受けた放射線の量に応じて第1電極74から第2電極78に向けて電流ibが流れる。
本実施形態では、蓄積モードでは検出抵抗を抵抗値の大きい検出抵抗92に切り替え、蓄積モードで放射線の曝射が行われている場合の電圧VAが、待機モードで放射線の曝射が行われている場合と同程度の電圧になるようにしている。
S202:FY=1か否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、FY=1か否かを判定する。
FY≠1の場合、(ステップS202;No)、ステップS203に進む。
積分値VIが閾値VTHを越えない場合は、FY≠1である。図15の例ではtaのタイミングで蓄積モードに移行しても、実際には放射線の曝射が行われていないのでタイムアウトのタイミングであるtbまでに積分値VIが閾値VTHを越えることはない。
S203:タイムアウトか否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、蓄積モード開始から所定時間TY経過し、タイムアウトになったか否かを判定する。
タイムアウトではない場合、(ステップS203;No)、ステップS202に戻る。
ステップS202に戻り、FY=1になるのを検出する。
タイムアウトの場合、(ステップS203;Yes)、ステップS100に戻る。
放射線の曝射が行われていないので、制御部22の処理はステップS100に戻り、蓄積モードから待機モードに移行する。
FY=1の場合、(ステップS202;Yes)、ステップS112に進む。
図15の例ではtCのタイミングで積分値VIが閾値VTHを越え、FY=1になる。
S112:比較電圧をVT2に設定するステップである。
制御部22は、比較電圧電源99に微分後の電圧Veの平均電圧より低い比較電圧VT2を出力するように指令する。本ステップで、比較電圧をVT2に変更し、放射線曝射の終了を検出できるようにする。なお、誤検出を防ぐため所定時間待機してから本ステップを実行しても良い。
S114:FX=1にするステップである。
曝射開始判定手段103は、放射線曝射の終了を検出するためFX=1にする。図15のt3のタイミングが放射線曝射の終了タイミングであり、図15(b)のように比較電圧VT2は微分後の電圧Veの平均電圧より低いのでt3のタイミングまで比較器96の出力は’H’である。
以降のステップは、第1の実施形態と同じ手順である。
S115:FX=0か否かを判定するステップである。
比較器96の出力は、微分後の電圧Veが比較電圧VT2より低くなると’L’になる。曝射開始判定手段103は、FX=0か否かを判定する。
FX≠0の場合、(ステップS115;No)、ステップS116に進む。
S116:タイムアウトか否かを判定するステップである。
曝射開始判定手段103は、蓄積モード開始から所定時間経過し、タイムアウトになったか否かを判定する。
タイムアウトではない場合、(ステップS116;No)、ステップS115に戻る。
ステップS115に戻り、FX=0になるのを検出する。
タイムアウトの場合、(ステップS116;Yes)、ステップS117に進む。
放射線曝射が終了したものとしてステップS117に進む。
FX=0の場合、(ステップS115;Yes)、ステップS117に進む。
S117:読み出しモードを開始するステップである。
制御部22は、走査駆動手段15から所定の期間オフ電圧からオン電圧になるパルス信号を各走査線5に印加させて、各走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gに順次オン電圧を印加し、順次TFT8をオン状態とし、読み出しモードを開始する。
また、制御部22は、所定のタイミングで読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行する。
S118:読み出したデータを保存するステップである。
制御部22は、各放射線検出素子7から画像データを読み出して記憶部43に保存させる。
S119:連続撮影か否かを判定するステップである。
制御部22は、当該放射線画像撮影が単独の撮影であるか、連続撮影であるか、を判定する。
連続撮影の場合、(ステップS119;Yes)、ステップS100に戻る。
ステップS100に戻り、待機モードになる。
単独撮影の場合、(ステップS119;No)、ステップS120に進む。
アンテナ装置39を介して外部装置に画像データを送信し、処理を終了する。
次に、第3の実施形態について図16、図17を用いて説明する。
図16は、第3の実施形態の曝射を検知する回路の構成を表す等価回路図であり、図17は、第3の実施形態の各部の信号を説明するための説明図である。
第3の実施形態では、基板4の検出部Pは2つの領域に分割され、それぞれの領域の各放射線検出素子7a、7bの各バイアス線9a、9bは結線10a、10bに結束され、それぞれバイアス電源14に接続されている。以降、それぞれの領域に関連する構成要素をa、bの符号を用いて区別する。なお、本実施形態では検出部Pを2つの領域に分割する例を説明するが、さらに多くの領域に分割する場合にも適用できる。
図16の例では各放射線検出素子7a、7bとバイアス電源14とを結ぶバイアス線9a、9bの結線10a、10bにバイアス電流検出手段48a、48bが接続されている。本実施形態では、フィードバック回路45は設けていないが、図9のようにそれぞれ結線10a、10bに直列にフィードバック回路45a、45bとバイアス電流検出手段48a、48bとを接続しても良い。
バイアス電流検出手段48a、48bの構成は第1の実施形態と同じ構成であり説明を省略する。バイアス電流検出手段48aの出力電圧VAaと、バイアス電流検出手段48bの遅延線110により遅延された出力電圧VAbとは加算器111で加算される。
図17を用いて各部の波形の一例を説明する。図17の横軸は時間軸であり、図17(a)は出力電圧VAaの波形を、図17(b)は出力電圧VAbの波形を、図17(c)は加算器111の出力電圧VKの波形をそれぞれ示している。また、図中150〜153はノイズを示し、154〜156は放射線の曝射によりバイアス電流が流れたときの波形を示している。
図17(a)、図17(b)からわかるように、出力電圧VAbは出力電圧VAaよりΔt遅延している。そのため、出力電圧VAbと出力電圧VAaと加算器111で加算した後の出力電圧VKは、図17(c)のようにノイズ150〜153はそのピークのタイミングがΔtずれるため加算器111で加算した後もピーク電圧は変わらない。一方、放射線曝射時の電圧154、155はピークの期間が長いので、加算器111で加算すると図17(c)の電圧156のようにピーク電圧は約2倍になる。
このように、ノイズ成分に対し放射線曝射時の電圧を約2倍にできるのでS/Nが改善され、放射線曝射のタイミング検出を精度良く行うことができる。特に、微分して放射線曝射のタイミングを検出する際に、誤検出を防止する効果が高い。
なお、本実施形態では、バイアス電流検出手段48bの出力を遅延線110により遅延する例を説明したが、必ずしも遅延線110を設けなくても所定の遅延Δtが生じれば良い。例えばバイアス電流検出手段48bから加算器111までの配線を、バイアス電流検出手段48aから加算器111までの配線より長くすることにより、信号を遅延させても良い。
バンドパスフィルタ94以降の構成と処理は第1の実施形態、第2の実施形態と同様であり説明を省略する。
以上このように、本発明によれば、放射線の照射開始を誤検出することなく確実に検出することが可能な放射線画像撮影装置を提供することができる。