JP5504514B2 - L−アスパラギン酸製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、常温で高い触媒活性を有するアスパラギン酸脱水素酵素およびこれを用いたL−アスパラギン酸製造方法に関する。
L−アスパラギン酸はタンパク質を構成するアミノ酸のうちの一つであり、生体内できわめて有用なアミノ酸である。実際に、アスパラギン酸を含めて、アミノ酸はアミノ酸輸液などの医薬としても広く用いられている。また、アスパラギン酸に関しては、人工甘味料アスパルテームの原料素材としても広く活用されている。
アスパラギン酸をはじめ各種のアミノ酸は、ケト酸とアンモニアを触媒にアミノ酸脱水素酵素を用いた還元的アミノ化反応により得ることができる。アスパラギン酸の場合は、オキサロ酢酸が原料となる。
自然界に知られるアミノ酸脱水素酵素は、わずかに、アラニン脱水素酵素(AlaDH)、グルタミン酸脱水素酵素(GluDH)、ロイシン脱水素酵素(LeuDH)、バリン脱水素酵素(ValDH)、フェニルアラニン脱水素酵素(PheDH)であり、アスパラギン酸脱水素酵素(AspDH)も、近年ようやく発見されたものである。
一つは、古細菌アーキオグロブス・フルジダス由来のAspDH(特許文献1)であり、もう一つは本発明者らによるバシラス・ズブチリス由来であって変異させて活性を高めたAspDH(特許文献2)である。これらのAspDHを用いれば、L−アスパラギン酸を得ることが可能となる。なお、以降において前者を適宜AfAspDHと表記し、後者を適宜BsAspDHと表記する。
また、L−アスパラギン酸を工業的に得る方法としてアスパルターゼを用いた酵素法も知られている(特許文献3〜特許文献6)。
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
AfAspDHは、安定性はきわめて高いが、酵素活性は高くなく、特に常温における還元活性が低いという問題点があった。ここで、オキサロ酢酸は高温で不安定であるため、反応系の温度を高めるには限界があるという原理的な問題点があった。また、BsAspDHについては、常温で比較的高い活性を示すが、安定性が低く、また、オキサロ酢酸以外にピルビン酸にも反応性を示すという問題点があった。
また、アスパルターゼを用いる特許文献3〜特許文献6に開示される技術では大腸菌等を用いるため、菌中のフマラーゼによりL−リンゴ酸も生成されてしまう。このため、加熱によるフマラーゼ活性の除去操作を必要とするが、加熱処理によりアスパルターゼも一部失活や安定性の低下を招来してしまうという問題点があった。
また、本発明者らによる方法(特許文献2)では、上述のような加熱処理は不要であり、また、オキサロ酢酸より安価なDL−リンゴ酸を原料に用いるが、DL−リンゴ酸も比較的高価な原料であるという問題点があった。また、この方法でL−アスパラギン酸を得ることもできるが、同時にD−リンゴ酸も生成されるため、これを分離する後工程が必要となるという問題点があった。
特開2006−254730号公報 特開2006−254795号公報 特開昭60−133883号公報 特開昭59−113887号公報 特開昭56−26196号公報 特開平10−313888号公報
すなわち、解決しようとする問題点は、常温で酵素活性が高く安定なアスパラギン酸脱水素酵素を用いてL−アスパラギン酸を提供する点である。
また、補酵素としてNAD+の添加を必要とせず安価にL−アスパラギン酸を得る方法を提供する点である。
本発明者らは、上記問題点を解決すべくAfAspDHのアミノ酸配列の相同性検索をおこない、単なる機械検索結果の中から鋭意検討の結果、シュードモナス・エルギノーザ
PA01(Pseudomonas
aeruginosa PA01)およびラルストーニア・ユートロファ
JMP134(Ralstonia
eutropha JMP134)に実際にAspDHが存在することを見いだし本発明を完成するに至った
すなわち本発明は以下のとおりである。
原料として、フマル酸およびアンモニウム塩、または、フマル酸アンモニウム、を供給し、
触媒として、フマラーゼ、Bacillus subtilis 由来リンゴ酸脱水素酵素、並びに、
下記1.若しくは2.に記載のアスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質を加え、
酵素法によりL−アスパラギン酸を得ることを特徴とするL−アスパラギン酸製造方法。
1.
下記(A)又は(B)に示すタンパク質。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、アスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。
2.
下記(C)又は(D)に示すタンパク質。
(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、アスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。
本発明によれば、高価な補酵素NAD+を必要とせず、また、安価な原料であるフマル酸を用いて、L−アスパラギン酸の工業的生産が常温で可能となる。また、D−リンゴ酸も生成されないため、その後の分離処理も必要としない。
AfAspDHとのアミノ酸配列の相同性検索の結果である。 酵素精製の手順を示した図である。 SDS-PAGEの結果を示した図である。 AspDH酵素の反応至適温度の評価結果を示した図である。 アミノ化反応の概要を示した図である。 脱アミノ反応の概要を示した図である。 酵素触媒パラメータを示した図である。 CD熱変成曲線を表した図である。 フマル酸を原料としたL−アスパラギン酸の反応図である。 トルエン処理の手順を示した図である。 反応組成を示した図である。 各種酵素と各種基質との組合せによるL−アスパラギン酸の濃度を示した表である。 3酵素を用いた場合の最適条件を示した図である。 転換効率を測定した表である。 フィードバッチ法の組成を示した図である。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は記載した形態のみに限定されるものではなく、本明細書の記載および当分野で公知の技術に基づいて当業者が容易に修飾および改変し得る技術については本発明の範囲内に含まれるものである。
ここでは、<1>形質転換大腸菌の作成、<2>PaeAspDHおよびReuAspDHの性質ないし評価、<3>L−アスパラギン酸の生産、の順に説明する。
なお、遺伝子の単離およびこの遺伝子を含有する組み換えベクターの作成、組み換えベクターによる形質転換体の作成、並びに形質転換体の培養等に関しては公知の方法、例えばモレキュラー・クローニング(コールドスプリングハーバー出版社、1989年)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(ウィリー・インターサイエンス出版社、1989年)等に挙げられている方法を組み合わせておこなうことができるので、その詳細な記載を省略する。
<1>形質転換大腸菌の作成
図1は、AfAspDHとのアミノ酸配列の相同性検索の結果である。ここでは、相同性検索の結果に基づき、シュードモナス・エルギノーザ
PA01(Pseudomonas
aeruginosa PA01:配列番号1)、ラルストーニア・ユートロファ
JMP134(Ralstonia
eutropha JMP134:配列番号3)および、ブラジリゾビウム・ジャポニクム
USDA 110(Bradyrhizobium japonicum USDA 110:配列番号5)を用いて、クローニングをおこない、単離した後、大腸菌内での発現を試みた。
<1−1:PaeAspDH>
〔PaeAspDHのクローニング:染色体DNAの調製〕
Pseudomonas aeruginosa PA01由来想定上AspDH遺伝子(以降においてpaasdと適宜表記するものとする)をクローニングするため、Pseudomonas aeruginosa PA01を1/10 LB培地3 ml で30℃、18〜20 hr振とう培養を行い、遠心(15000rpm,5分)にて集菌後、CTAB(hexadecyltrimethylammonium bromide)法(Nucleic Acids Research, 8,
4321-4325, 1980)を用いて染色体DNAの調製を行った。
〔PaeAspDHのクローニング:PCRによるAspDH遺伝子の増幅〕
次に、目的遺伝子(paasd)の塩基配列情報に基づきプライマーをデザインし、PCRを用いてpaasd DNA断片の増幅を行った。なお、配列番号7にセンスプライマーを、配列番号8にアンチセンスプライマーの遺伝子配列を示す。
〔PaeAspDHのクローニング:形質転換大腸菌の作製〕
得られたPCR増幅産物(約804 bp)をアガロースゲル電気泳動で確認した後、エタノール沈殿法により精製した。これらのDNA断片を、それぞれpET11-aベクター(Novagen社製)のNdeIおよびBamHIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) BL-21コンピテントセル(STRATAGENE社製)に導入し形質転換した。形質転換株はLBプレート(アンピシリン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をNdeIおよびBamHIで制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。
<1−2:ReuAspDH>
〔ReuAspDHのクローニング:染色体DNAの調製〕
Ralstonia eutropha JMP134由来想定上AspDH遺伝子(以降においてreasdと適宜表記するものとする)をクローニングするため、Ralstonia eutropha JMP134を1/10 LB培地3 ml で30℃、18〜20 hr振とう培養を行い、遠心(15000rpm, 5分)にて集菌後、CTAB法を用いて染色体DNAの調製を行った。
〔ReuAspDHのクローニング:PCRによるAspDH遺伝子の増幅〕
次に、目的遺伝子(reasd)の塩基配列情報に基づきプライマーをデザインし、PCRを用いてreasd DNA断片の増幅を行った。なお、配列番号9にセンスプライマーを、配列番号10にアンチセンスプライマーの遺伝子配列を示す。
〔ReuAspDHのクローニング:形質転換大腸菌の作製〕
得られたPCR増幅産物(約807 bp)をアガロースゲル電気泳動で確認した後、エタノール沈殿法により精製した。これらのDNA断片を、それぞれpColdIVベクター(タカラバイオ社製)のNdeIおよびHindIIIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) BL-21コンピテントセル(STRATAGENE社製)に導入し形質転換した。形質転換株はLBプレート(アンピシリン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をNdeIとHindIIIで制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。
<1−3:BjaAspDH>
〔BjaAspDHのクローニング:染色体DNAの調製〕
Bradyrhizobium japonicum USDA 110由来想定上AspDH遺伝子(以降においてbjasdと適宜表記するものとする)をクローニングするため、Bradyrhizobium japonicum USDA 110を1/10 LB培地3 ml で30℃、18〜20 hr振とう培養を行い、遠心(15000rpm,5分)にて集菌後、CTAB法を用いて染色体DNAの調製を行った。
〔BjaAspDHのクローニング:PCR によるAspDH遺伝子の増幅〕
次に、目的遺伝子(bjasd)の塩基配列情報に基づきプライマーをデザインし、PCRを用いてbjasd DNA断片の増幅を行った。なお、配列番号11にセンスプライマーを、配列番号12にアンチセンスプライマーの遺伝子配列を示す。
〔BjaAspDHのクローニング:形質転換大腸菌の作製〕
得られたPCR増幅産物(約843 bp)をアガロースゲル電気泳動で確認した後、エタノール沈殿法により精製した。これらのDNA断片を、それぞれpET11-aベクター(Novagen社製)のNdeIおよびBamHIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) BL-21コンピテントセル(STRATAGENE社製)に導入し形質転換した。
形質転換株はLBプレート(アンピシリン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をNdeIとBamHIで制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。
<1−4−1:EcFumarase>
〔EcFumaraseのクローニング:染色体DNAの調製〕
後述するように、フマラーゼ(Fumarase)やリンゴ酸脱水素酵素(MDH)も導入した形質転換大腸菌を用いて、酵素法によるL−アスパラギン酸の製造を説明するので、ここで、そのクローニングについて言及しておく。
まず、Escherichia
coli由来Fumarase遺伝子(以降においてfumCと適宜表記するものとする)をクローニングするため、Escherichia
coli MV1184をLB培地3 ml で37℃、18〜20 hr振とう培養を行い、遠心(15000rpm,5分)にて集菌後、CTAB法を用いて染色体DNAの調製を行った。
〔EcFumaraseのクローニング:PCRによるfumC遺伝子の増幅〕
次に、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)登録番号JW1603に記載の目的遺伝子(fumC)の塩基配列情報に基づきプライマーをデザインし、PCRを用いてfumC DNA断片の増幅を行った。
〔EcFumaraseのクローニング:形質転換大腸菌の作製〕
得られたPCR増幅産物(約1.4kb)をアガロースゲル電気泳動で確認した後、エタノール沈殿法により精製した。これらのDNA断片を、それぞれpKF18ベクター(タカラバイオ社製)のSacIおよびKpnIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) MV1184コンピテントセル(日本ジーン社製)に導入し形質転換した。形質転換株はLBプレート(カナマイシン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をSacIとKpnIで制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。大腸菌に導入したこのベクターをpKF18/fumCと適宜表記する。
<1−4−2:BsMDH>
〔BsMDHのクローニング:染色体DNAの調製〕
まず、Bacillus
subtilis由来MDH遺伝子(以降においてmdhと適宜表記するものとする)をクローニングするため、Bacillus
subtilis ATCC 23857をLB培地3 ml で37℃、18〜20 hr振とう培養を行い、遠心(15000rpm, 5分)にて集菌後、CTAB法を用いて染色体DNAの調製を行った。
〔BsMDHのクローニング:PCRによるmdh遺伝子の増幅〕
次に、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)登録番号BSU29120に記載の目的遺伝子(mdh)の塩基配列情報に基づきプライマーをデザインし、PCRを用いてmdh DNA断片の増幅を行った。
〔BsMDHのクローニング:形質転換大腸菌の作製〕
得られたPCR増幅産物(約939 bp)をアガロースゲル電気泳動で確認した後、エタノール沈殿法により精製した。これらのDNA断片を、それぞれpUC18ベクター(タカラバイオ社製)のBamHIおよびPstIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) MV1184コンピテントセル(日本ジーン社製)に導入し形質転換した。
形質転換株はLBプレート(アンピシリン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をSacIとKpnIで制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。大腸菌に導入したこのベクターをpUC18/mdhと適宜表記する。
<1−4−3:fumC-mdhリコンビナント大腸菌の作成>
クローニングより得られたpKF18/fumCとpUC18/mdhに対し、それぞれSacI・KpnIとBamHI・PstIで制限酵素処理し、得られたDNA断片を、それぞれpSTV28ベクター(タカラバイオ社製)のSacIおよびPstIサイトにライゲーションし、組み換えDNAを得た。得られた組み換えDNAを大腸菌(E. coli) MV1184コンピテントセル(日本ジーン社製)に導入し形質転換した。形質転換株はLBプレート(クロラムフェニコール、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、一部をSacI・KpnIとBamHI・PstIの各制限酵素で制限酵素処理し、電気泳動によりインサートDNAを確認した。大腸菌に導入したこのベクターをpSTV28/fumC-mdhと適宜表記する。
<1−4−4:asd-fumC-mdhリコンビナント大腸菌の作成>
作製したpSTV28/fumC-mdh/MV1184形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、塩化カルシウム法により調製した大腸菌pET11-a/asd/BL-21コンピテントセルへ導入し、形質転換した。形質転換株はLBプレート(クロラムフェニコール、アンピシリン、X-Gal、IPTG含有)上でホワイトコロニーを形成することで選択した。この形質転換株からアルカリ-SDS法によりプラスミドDNAを調製し、電気泳動により各プラスミドの導入を確認した。
<2>PaeAspDHおよびAfAspDHの性質ないし評価
次に、得られた想定上PaeAspDH、想定上ReuAspDH、想定上BjaAspDHの酵素活性等を調べることとした。以降では、これらをまとめて、単に想定上AspDHと必要に応じて表記するものとする。
〔想定上AspDH酵素の精製〕
精製にあたっては、E.coli BL-21 /想定上AspDH酵素クローンを、50 mg/ml Amp 3 μl を含むLB培地3 ml で37℃、18〜20 hr振とう培養を行い、次いで50 mg/ml Amp 750 μl、1 M IPTG 150 μl を含むLB 培地750 ml にスケールアップし、18〜20 hr、37℃で振とう培養し、遠心7,000 rpm 15 min で集菌した。最終的には、図2に示した方法(イオン交換(DEAE)カラム工程、色素(Blue)カラム工程、ゲルろ過(Superdex)カラム工程)で精製した。図3に示すSDS-PAGE の結果からほぼ均一に精製されていることが確認された。
なお、この時点で酵素活性を測定したところ、想定上PaeAspDHおよび想定上ReuAspDHにはアスパラギン酸脱水素酵素活性が確認され、想定上BjaAspDHには酵素活性は見られなかった。よって、以降ではPaeAspDHおよびReuAspDHと表記し、まとめて表記する場合は、適宜AspDH酵素と表記するものとする。
〔AspDH酵素の性質〕
次に、精製された変異酵素であるRaeAspDHおよびPaeAspDHの酵素化学的性質を調べた。
〔AspDH酵素の性質:反応至適温度および熱安定性〕
まず、AspDH酵素の反応至適温度の評価を行った。図4(a)のグラフは、各温度下で活性測定を行った際、最大活性を1とした場合の相対活性を示した図である。また、図4(b)のグラフは、各温度で20分間インキュベートした後の残存AspDH活性を、最大残存活性を1とした場合の相対活性を示した図である。
図示したようにPaeAspDH、ReuAspDHは、いずれも、35℃〜40℃に高いアスパラギン酸脱水素酵素(AspDH)活性を示し、常温付近が反応至適温度であることが認められる。また、熱安定性については、45℃で残存活性が半減するようすが示され、これらの結果から常温型の酵素であることが確認できる。
〔AspDH活性測定〕
なお、活性測定ないし評価は以下に従った。
還元型補酵素NADHは340nmに吸収極大をもつ。このことを利用して反応時の340nmにおけるNADH(分子吸光係数6.2 mmol-1・cm-1)の吸収の増減を追跡することにより活性評価を行った。活性(Activity)の表示は、1 分間に1 μmol のNAD+あるいはNADHの生成を触媒する酵素量を1 unit と定義し、比活性は1 mg protein 当たりのunit 数でunits/(mg protein) と表した。
活性の評価式を式1に示す。
この活性を調べるためのアミノ化反応の概要を図5に、脱アミノ反応の概要を図6に示す。なお、タンパク量は、Bio-Rad Protein Assay Kit(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用い、牛血清アルブミンを標準タンパク質として検量線を作成し、そのタンパク量を求めた。
〔酵素の性質:反応速度論的解析〕
次に、変異酵素について、Kinetic Parameter の解析を行った。具体的には、Kcatと Kmを求めた。また、Kcat値は、酵素の代謝回転数(turn number)又は触媒定数と呼ばれ、酵素の活性部位が単位時間(通常1秒)ごとに触媒する反応回数(回転数)を表す。
Kcatと比活性と酵素の分子量の関係は式2で与えられる。

Kcat=比活性×(1/60)×酵素の分子量×(1/1000)・・・(式2)
Km値は、アミノ化反応、脱アミノ反応の両反応でそれぞれの基質をさまざまな濃度で測定し、Lineweaver-Burk の逆数プロットから求めた。結果を図7に示す。Kcat値を見れば分かるように、PaeAspDH、ReuAspDHともに、AfAspDHに比べ活性が大きく増加している。
ここで、Kcat
/ Km 値は見かけの二次反応速度定数であり、遊離の酸素と基質との間の反応性を示すため、酸素の触媒効率を表す指標となる。図7に示したように、PaeAspDHおよびReuAspDHは、37℃で、AfAspDHより、それぞれ約25倍、約60倍高い還元的アミノ化活性を示している。また、NH3のKm値も減少していることから、PaeAspDH、ReuAspDHともに常温にて工業的な利用が可能であることが確認できる。なお、想定上BjaAspDHは、PaeAspDHおよびReuAspDHと同程度の良好な発現が見られたが、アスパラギン酸脱水素酵素活性がないことも再度確認した。図1に示した検索結果では、想定上BjaAspDHはAfAspDHとアミノ酸配列の相同性はかなり高いが、この事実は、単に相同性が高いだけでは、酵素活性は予見できないことを意味している。
〔酵素の性質:CDスペクトルによる耐熱性の検討〕
次に、各酵素を温度コントロールシステムJASCO PTC 343(日本分光社製)とJASCO J-720円二色性分散計(日本分光社製)を用いて222 nmにおける吸光度をモニタリングし、タンパク質の熱変性を測定した。図8に示したように、PaeAspDHとReuAspDHの50%変性温度は、同程度である。また、塩またはグリセロール存在下で50%変性温度がそれぞれ10℃以上上昇することから、条件によっては熱安定性をさらに高めることが可能となる。なお、図7には、これらの結果も反映させている。
以上をまとめると、PaeAspDHおよびReuAspDHは、良好なアスパラギン酸脱水素酵素活性を有しており、かつ、それらは、常温でも活性が高く、熱安定性も良好であることが分かった。反対に、想定上BjaAspDHはアミノ酸配列の相同性は高いもののアスパラギン酸脱水素酵素活性は見られなかった。
<3>L−アスパラギン酸の生産方法
次に、PaeAspDHおよびReuAspDHを用いたL−アスパラギン酸の生産方法について説明する。ここでは、酵素法と発酵法によるL−アスパラギン酸の生産について説明する。図9は、フマル酸を原料としたL−アスパラギン酸の反応図である。図示したように、原料として、フマル酸およびアンモニウム塩(例えば塩化アンモニウムあるいはフマル酸アンモニウム)を供給し、触媒として、上記説明したEcFum、BsMDH、および、PaeAspDH(またはReuAspDH)を加えることで、L−アスパラギン酸を生産可能となる。
<3−1:酵素法>
以降では、PaeAspDHを用いた場合の工業的生産方法について述べるが、ReuAspDHを用いた場合も同様に工業生産可能である。
まず、単独でそれぞれEcFum、BsMDH、PaeAspDHを発現するリコンビナント大腸菌に図10で示すトルエン処理を行い、さまざまな組合せで混合した。これらに対し、フマル酸、L−リンゴ酸、または、DL−リンゴ酸を基質として加えて反応させ、生成したL−アスパラギン酸濃度を測定した。反応組成は図11に示したとおりである。結果を図12に示す。3酵素を混合し、基質をフマル酸とした場合に最も生成量が多くなることが確認できた。また、PaeAspDHを含む系で特に多量のL−アスパラギン酸生成が確認できることから、このL−アスパラギン酸生成はPaeAspDHによるものであるということが確認できた。
図12に示した結果に基づいて、EcFum、BsMDH、PaeAspDHの3酵素を用い、かつフマル酸を基質とした場合の最適条件を検討したところ図13に示す条件が得られた。この条件で、EcFum、BsMDH、PaeAspDHを総て導入したリコンビナント大腸菌を用いてL−アスパラギン酸を生成させた。結果を図14に示す。なお、ここでは、比較のためAfAspDHを用いた場合の比較例も示している。
図示したように、本発明者らにより得られたPaeApsDHを用いた場合、その転換効率は93.1%に達し、これは、従来のAfAspDHを用いた場合の4倍以上の高い値である。また、補酵素NAD+を加えた場合と比較しても大きな差はなく(むしろ添加しない方が良い結果となっている)、大腸菌体中に存在するNADを利用していると考えられる。すなわち、この結果は、常温で反応が進行し、高価な補酵素NAD+の添加を必要とせず、特筆すべき結果といえる。特に、アスパルターゼを用いた工業的生産の転換効率が約90%といわれているので、本発明は同等以上の作用効果を発揮しているといえる。
さらに、多くのアミノ酸発酵で行われているフィードバッチ法を図15に示すような組成ないし手順で行った。機器の制約から6時間までの測定結果ではあるが、反応開始から6時間のところまでで反応速度は2.08 M/hr/g wetであり、転換効率は89.0%という値が得られた。これにより、高効率の連続生産も可能であることが分かった。
<3−2:発酵法>
次に発酵法の検討をおこなった。
リコンビナント大腸菌(pET11a/paasd,pSTV28/fumC-mdh)をグルコースM9培地で24〜26時間培養後(37℃)、50mMコハク酸および界面活性剤トリトンX-100を10mg/mlの濃度で加えさらに6時間培養したところ、反応速度は51.2mM/hr/g wetであり転換効率は61.6%という値が得られた。この結果から、本反応法はアスパラギン酸発酵生産に応用できる可能性が十分あるといえる。なお、原料として、コハク酸に代え、クエン酸やグルコースを用いても、L−アスパラギン酸の生成が認められた。特筆すべきは、原料(炭素源)がフマル酸でなく、コハク酸やクエン酸やグルコースであっても、L−アスパラギン酸の生成が認められる点であって、作成したリコンビナント大腸菌は、原料選択の自由度を高め発酵法による多様な工業的生産に適しているといえる。
本発明のAspDHを用いることにより、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、GOT)の活性を測定することが可能となる。

Claims (1)

  1. 原料として、フマル酸およびアンモニウム塩、または、フマル酸アンモニウム、を供給し、
    触媒として、フマラーゼ、Bacillus subtilis 由来リンゴ酸脱水素酵素、並びに、
    下記1.若しくは2.に記載のアスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質を加え、
    酵素法によりL−アスパラギン酸を得ることを特徴とするL−アスパラギン酸製造方法。
    1.
    下記(A)又は(B)に示すタンパク質。
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、アスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。
    2.
    下記(C)又は(D)に示すタンパク質。
    (C)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、アスパラギン酸脱水素酵素活性を有するタンパク質。
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