JP4513377B2 - 変異型チロシンリプレッサー遺伝子とその利用 - Google Patents

変異型チロシンリプレッサー遺伝子とその利用 Download PDF

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Description

本発明は、チロシンフェノールリアーゼ遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない変異型チロシンリプレッサー、それをコードする遺伝子及びそれらの利用に関する。これらは、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(以下、「L−ドーパ」ともいう)の製造等、醗酵工学分野において有用である。
L−ドーパは、神経伝達物質であるドーパミンの前駆体であり、パーキンソン病の治療薬等として有用である。L−ドーパは、従来化学合成法により製造されていたが、近年ではチロシン フェノールリアーゼ(TPL)を用いて、カテコール及びセリン、又はカテコール、ピルビン酸及びアンモニアから酵素的に合成されている。
TPLは、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、キサントモナス属、アグロバクテリウム属、アクロモバクター属、エアロバクター属、エルビニア属、プロテウス属、サルモネラ属、シトロバクター属、エンテロバクター属、パントエア属など広範な微生物によって生産されることが知られており(特許文献1または2参照)、酵素学的諸性質についても明らかにされている(非特許文献1参照)。また、TPLを高発現することが知られているエルビニア属細菌においては、TPL遺伝子の構造遺伝子と上流域の塩基配列が報告されている(非特許文献2参照)。
TPLはチロシンリプレッサーによる発現調節を受けることが知られている。すなわち、チロシンがチロシンリプレッサーに結合することにより、チロシンリプレッサーが活性化され、TPL遺伝子の発現が活性化する。チロシンリプレッサー遺伝子の構造は既にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)では明らかになっている(非特許文献3参照)。さらに、本発明者等は、エルビニア(Erwinia)属細菌のチロシンリプレッサーをコードする遺伝子を単離することに成功し、チロシンリプレッサーがTPL遺伝子の発現を正に調節する活性を有することを開示している(特許文献3参照)。
また、微生物菌体を用いたL−ドーパの生産も検討されていた。この場合、L−ドーパを効率よく得るためには、TPLの発現量の多い微生物を用いることが重要であるが、上記のようにチロシンがTPLの発現を活性化することから、TPL高発現株を取得するためには、培地への多量のチロシンの添加が不可欠であった。しかしながら、チロシンの溶解度はきわめて低いため、培養後に菌体を回収してL−ドーパの反応槽に移す際にチロシンが多量に混入し、最終産物のL−ドーパとの精製分離が困難になるという問題点があった。これに対し、チロシンの添加量が少ない状態でTPLを高発現させることのできるチロシンリプレッサーの変異体が知られていた(特許文献4参照)。しかしながら、この変異体においてもチロシン添加時の方がTPLの発現量が多く、チロシン非添加時においてもTPLを高発現させることのできる微生物の開発が望まれていた。なお、特許文献3,4などにおいてエルビニア・ヘルビコーラ(Erwinia herbicola)として開示されている微生物は、現在はパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomelans)に分類されているものである。したがって、上記エルビニア・ヘルビコーラについては、以下、パントエア・アグロメランスと呼ぶことにする。
特許第2521945号公報 特公平6−98003号公報 特開平11−313672号公報 特開2001−238678号公報 Biochem.Biophys. Res. Commun.,33,10(1963) H.Suzuki et al., J, Ferment. Bioeng., 75, No.2, 145-148 (1993) E. C. Cornishet al., J. Biol. Chem., 261, 403-410 (1986)
本発明は、前記チロシンリプレッサー遺伝子を利用した新規な技術を開発すること、具体的には、チロシン非存在下においてチロシンフェノールリアーゼ(TPL)遺伝子を十分量発現させることのできる変異型チロシンリプレッサー及びそれをコードする遺伝子、並びにそれらの利用法を提供することを課題とする。
本発明者等は、チロシンリプレッサー遺伝子に種々の変異を導入し、得られた変異型チロシンリプレッサーについて活性を解析したところ、チロシン非存在下では野生型チロシンリプレッサーによるTPL遺伝子の発現量が少ないのに対し、67位のバリン、72位のチロシン、201位のグルタミン酸、及び324位のアスパラギン等が置換された変異型チロシンリプレッサーではチロシン非存在下でも十分量のTPLを発現させることができることを見出した。さらに、このような変異型チロシンリプレッサーを保持する微生物を使用することによりL−ドーパを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) チロシンフェノールリアーゼ遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない変異型チロシンリプレッサー。
(2) 野生型チロシンリプレッサーのアミノ酸配列において、以下の(イ)〜(ハ)のうちの2群又は3群のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサー、
(イ)67位のバリン、72位のチロシン及び201位のグルタミン酸、
(ロ)324位のアスパラギン
(ハ)503位のアラニン
(3) (イ)67位のバリンを置換するアミノ酸がアラニンであり、72位のチロシンを置換するアミノ酸がシステインであり、201位のグルタミン酸を置換するアミノ酸がグリシンであり、(ロ)324位のアスパラギンを置換するアミノ酸がアスパラギン酸であり、(ハ)503位のアラニンを置換するアミノ酸がスレオニンである、(2)の変異型チロシンリプレッサー。
(4) 前記変異以外の位置において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含み、かつ、チロシンフェノールリアーゼ遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない(2)又は(3)の変異型チロシンリプレッサー。
(5) 野生型チロシンリプレッサーがパントエア・アグロメランスの野生型チロシンリプレッサーである、(1)〜(4)のいずれかの変異型チロシンリプレッサー。
(6) パントエア・アグロメランスの野生型チロシンリプレッサーが配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質である、(5)の変異型チロシンリプレッサー。
(7) (1)〜(6)のいずれかの変異型チロシンリプレッサーをコードするDNA。
(8) (7)のDNAで形質転換されたエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌。
(9) さらにチロシンフェノールリアーゼ遺伝子のプロモーターに発現可能に連結された構造遺伝子を保持する(8)のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌。
(10) (8)又は(9)のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌を培地中で培養してチロシンフェノールリアーゼを生成させる工程、及び該チロシンフェノールリアーゼを精製する工程を含む、チロシンフェノールリアーゼの製造法。
(11) チロシン非存在下で前記微生物を培養することを特徴とする、(10)のチ
ロシンフェノールリアーゼの製造法。
(12) (8)又は(9)のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌をカテコール、ピルビン酸及びアンモニア、又はカテコール及びセリンに作用させてL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンを生成させる工程、及び該L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンを採取する工程を含む、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンの製造法。
(13) 前記微生物がチロシン非存在下で増殖させた微生物である、(12)のL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンの製造法。
なお、本明細書において、前記変異を有するチロシンリプレッサーを変異型チロシンリプレッサー、変異型チロシンリプレッサーをコードするDNAを変異型チロシンリプレッサー遺伝子ということがある。また、前記変異を有しないチロシンリプレッサーを野生型チロシンリプレッサーということがある。
本発明のチロシンリプレッサーを有する微生物は、チロシン非添加条件でチロシンフェノールリアーゼを高発現することができるため、この微生物を用いることにより、チロシンの分離操作をすることなく、純度の高いL−ドーパを製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変異型チロシンリプレッサー(TyrR)は、野生型チロシンリプレッサーのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換された配列を有する変異型チロシンリプレッサーであって、チロシンフェノールリアーゼ(TPL)遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない変異型チロシンリプレッサーである。ここで、「数個」とは、2〜20個が好ましく、2〜10個がより好ましく、2〜5個が特に好ましい。また、「チロシンフェノールリアーゼ(TPL)遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない」とは、例えば、チロシン濃度が0又は極小値のときのTPL遺伝子発現を誘導する活性が、チロシン濃度がTPL遺伝子発現誘導に通常要求される濃度(例えば、0.2%)のときの活性と同等以上であることを意味する。ここで、「極小値」とは、例えば、0.01%以下、好ましくは3.0×10−3%以下を意味する。また、「同等以上」とは、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは100%以上を意味する。TPL遺伝子発現を誘導する活性は、例えば、TPL遺伝子を発現する細胞において、変異型チロシンリプレッサー遺伝子を発現させ、チロシン濃度が0もしくは極小値のとき、又はチロシン濃度が通常濃度のときのTPLのmRNAを定量することによって調べることができる。また、TPL活性を測定することによって間接的に調べることもできる。TPL活性測定は、例えば、実施例に示すような合成基質を用いて370nmでの吸光度を測定する方法によって行うことができる。
本発明の変異型チロシンリプレッサーは、TPL遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としないものあれば特に制限されないが、例えば、次の(イ)〜(ハ)のうちの2群又は3群のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサーを挙げることができる。
(イ)67位のバリン、72位のチロシン及び201位のグルタミン酸、
(ロ)324位のアスパラギン
(ハ)503位のアラニン
すなわち、(1)(イ)67位のバリン、72位のチロシン及び201位のグルタミン酸、並びに(ロ)324位のアスパラギンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサー、(2)(イ)67位のバリン、72位のチロシン及び201位のグルタミン酸、並びに(ハ)503位のアラニンが他のアミノ酸に置換された
アミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサー、(3)(イ)67位のバリン、72位のチロシン及び201位のグルタミン酸、(ロ)324位のアスパラギン、並びに(ハ)503位のアラニンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサー、(4)(ロ)324位のアスパラギン、及び(ハ)503位のアラニンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサーを挙げることができる。
上記部位のアミノ酸を置換するアミノ酸は、TPL遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない変異型チロシンリプレッサーを生じるアミノ酸である限り特に制限されないが、(イ)67位のバリンを置換するアミノ酸はアラニン、72位のチロシンを置換するアミノ酸はシステイン、201位のグルタミン酸を置換するアミノ酸はグリシン、(ロ)324位のアスパラギンを置換するアミノ酸はアスパラギン酸、(ハ)503位のアラニンを置換するアミノ酸はスレオニンであることが好ましい。
本発明において、野生型チロシンリプレッサーとしては、例えば、パントエア・アグロメランス由来のチロシンリプレッサーが挙げられる。ここで、パントエア・アグロメランス由来のチロシンリプレッサーは、以前エルビニア・ヘルビコーラに分類されていた微生物由来のチロシンリプレッサーであってもよい。パントエア・アグロメランス由来のチロシンリプレッサーとしては、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が好ましい。
上記のような変異型チロシンリプレッサーは、野生型チロシンリプレッサーをコードするDNAに、同DNAによってコードされるチロシンリプレッサーに上記アミノ酸置換が生じるような変異を導入することによって取得することができる。変異は、部位特異的変異法等によって計画的に導入することができる。野生型チロシンリプレッサーをコードするDNAとしては、例えば、配列番号1に示す塩基配列を有するパントエア・アグロメランス由来の野生型チロシンリプレッサーをコードするDNAを用いることができる。このDNAは、例えば配列番号1に基づいてオリゴヌクレオチドを作製し、それを用いたPCR法又はハイブリダイゼーションによって、パントエア・アグロメランスの染色体DNA又は染色体遺伝子ライブラリーからチロシンリプレッサー遺伝子を取得することができる。
上述したように、エルビニア・ヘルビコーラに分類されていた微生物は、現在ではパントエア・アグロメランスに分類されているものもある。このようにエルビニア属及びパントエア属は非常に近縁であるため、チロシンリプレッサー遺伝子は、エルビニア属及びパントエア属のいずれに属する微生物からも取得され得る。また、エルビニア属及びパントエア属以外の細菌、例えばエシェリヒア・コリ等のエシェリヒア属細菌からも、上記と同様にしてチロシンリプレッサー遺伝子を取得することができる。
本発明の変異型チロシンリプレッサーは、TPL遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としないものである限り、上記置換アミノ酸以外の位置において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、2〜20個が好ましく、2〜10個がより好ましく、2〜5個が特に好ましい。このように、本発明の変異型チロシンリプレッサーは、上述した置換アミノ酸以外の位置においてさらに改変されたものであってもよく、その場合、TPL遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない限りにおいて、配列番号2のアミノ酸配列と全体として一定以上の相同性、すなわち、80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有する範囲で改変されたものであってもよい。
尚、本発明において、67位のバリン、72位のチロシン、201位のグルタミン酸、324位のアスパラギン、503位のアラニンとは、配列番号2に示す野生型チロシンリプレッサーのアミノ酸配列における位置である。上記のような活性に影響を与えないアミノ酸の欠失、挿入、付加、又は逆位によって位置が前後することがある。例えば、N末端部に1つのアミノ酸残基が挿入されれば本来67位のバリンは68位となるが、そのような67位のバリンに相当するバリンを、本発明においては67位のバリンと呼ぶこととする。
上記のような変異型チロシンリプレッサーと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、チロシンリプレッサーをコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びチロシンリプレッサーをコードするDNAを保持する微生物、例えばパントエア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。さらに、特開2001−238678号公報に開示されているようなエラー・プローン(error-prone)PCR法によっても上記のようなDNAを得ることができる。
また、上記のような塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等には、チロシンリプレッサーを保持する微生物の属、種、又は菌株の個体差に基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)も含まれる。
上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、発現産物のチロシンリプレッサー活性(TPL遺伝子の発現を正に調節する活性)を調べることにより、変異型チロシンリプレッサーと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。また、変異を有するチロシンリプレッサーをコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号442〜2004からなる塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、TPL遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない変異型チロシンリプレッサーをコードするDNAを単離することによっても、変異型チロシンリプレッサーと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、65℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性が低下又は消失したものも含まれるが、それらについては、市販の発現ベクターにつなぎチロシンリプレッサー活性を調べることによって容易に取り除くことができる。
本発明の変異型チロシンリプレッサーが導入された微生物は、組換えTPLの生産に好適に使用することができる。変異型チロシンリプレッサーが導入される微生物としては、エシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌などが挙げられる。また、エシェリヒア属細菌としてはエシェリヒア・コリが、パントエア属細菌としてはパントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティスが例示される。なお、上記パントエア属細菌は、以前エルビニア・へルビコーラなどのエルビニア属細菌に分類されていたものであって、現在パントエア属細菌に分類されている微生物も含む。
前記変異型チロシンリプレッサー遺伝子をエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌等の微生物に導入するには、通常、これらの遺伝子を適当なベクターに連結して組換えDNAを作製する。ベクターとしては、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pACYC177、pACYC184、pMW219、pMW118等が挙げられる。
上記のように調製した組換えDNAをエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、エレクトロポレーション法(Methods for general and molecular bacteriology, 1994, Philipp Gerhardt ed., ASM Press, 14.1.3.3 Electroporation procedure)も利用することができる。
前記変異型チロシンリプレッサー遺伝子は、宿主微生物のプラスミド上に存在させてもよく、相同組換え等によって宿主微生物の染色体DNA上に存在させてもよい。導入される変異型チロシンリプレッサー遺伝子は、チロシンリプレッサー遺伝子固有のプロモーターによって発現制御されてもよく、プロモーターをlacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、amyEプロモーター等の強力なプロモーターと置換し、これらのプロモーターによって発現制御されてもよい。
染色体DNAの調製、染色体DNAライブラリーの作製、ハイブリダイゼーション、PCR、プラスミドDNAの調製、DNAの切断及び連結、形質転換、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設定等の方法は、当業者によく知られている通常の方法を採用することができる。これらの方法は、Sambrook, J.,Fritsch, E. F., and Maniatis, T.,
"Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等に記載されている。
組換えTPLの生産は、例えば、変異型チロシンリプレッサーをコードする遺伝子およびTPL遺伝子を保持する微生物を培地で培養し、培養物又は菌体からTPLを精製することによって行うことができる。培地の種類は特に制限されないが、実施例で示すようなTPL高発現培地を用いることが好ましい。なお、組換え生産されるTPLは精製用のペプチドタグを有するものであってもよい。また、組換えTPLの生産はチロシン非添加条件下で行うことが好ましい。なお、本発明においてチロシン非存在下とは、チロシンが全く存在しない培養条件及び実質的にチロシンが存在しない培養条件を含む。実質的にチロシンが存在しない培養条件として具体的には、例えば、チロシン濃度が0.01%以下、好ましくは3.0×10−3%以下である条件が挙げられる。
このようにして生産された組換えTPLは、酵素法によるL−ドーパの生産に利用することができる。すなわち、得られたTPLを、カテコール、ピルビン酸及びアンモニア、又はカテコール及びセリンに作用させてL−ドーパを生成させ、L−ドーパを採取するこ
とにより、L−ドーパを製造することができる。L−ドーパ生成反応は、例えば、上記化合物を含有する反応液にTPLを添加することによって行うことができる。TPLは粗酵素液として添加してもよい。また、ピルビン酸、アンモニア等は、ピルビン酸塩やアンモニウム塩などのように塩として反応液に含有させることもできる。
さらに、本発明の変異型チロシンリプレッサーをコードする遺伝子を保持する微生物の菌体を直接L−ドーパの製造に用いることもできる。すなわち、適当な培養条件下で増殖させた菌体を直接カテコール、ピルビン酸及びアンモニア、又はカテコール及びセリンに作用させ、生成したL−ドーパを採取することによりL−ドーパを製造することができる。なお、培地中で微生物を増殖させながら作用させることも可能である。エシェリヒア属細菌及びパントエア属細菌においては、通常、TPL遺伝子の発現のインデューサーとしてチロシンが必要であるが、本発明の変異型チロシンリプレッサー遺伝子を保持するエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌は、チロシンを培地に添加しなくても、TPL遺伝子の発現が誘導される。したがって、チロシンの混入を避けるため、菌体はチロシン非存在下で培養して得られた菌体を用いることが好ましい。なお、菌体は、菌体破砕物、菌体分画物又は固定化菌体であってもよい。
さらに、本発明の変異型チロシンリプレッサー及びそれをコードする遺伝子は、目的遺伝子の発現調節にも利用することができる。例えば、TPL遺伝子のプロモーターに目的のタンパク質をコードする構造遺伝子を発現可能に連結し、得られる融合遺伝子を微生物に導入し、さらに、本発明の変異型チロシンリプレッサー遺伝子を同微生物に導入すると、変異型チロシンリプレッサーにより前記タンパク質の発現が正に制御される。したがって、TPL遺伝子のプロモーターと目的のタンパク質の構造遺伝子との融合遺伝子と、変異型チロシンリプレッサー遺伝子が導入された微生物を培地に培養することにより、目的のタンパク質を効率よく産生させることができる。TPL遺伝子のプロモーターの配列としては、例えば、配列番号3の塩基番号482〜800の塩基配列を含む配列を挙げることができる。前記融合遺伝子及び変異型チロシンリプレッサー遺伝子の導入は、別々のベクターを用いて行ってもよく、単一のベクターを用いて同一ベクター上に両遺伝子を保持させてもよい。また、遺伝子の導入の順序は特に制限されない。なお、目的遺伝子としてTPL遺伝子を選択することもできる。この場合、宿主細胞のTPL発現量をさらに増加させることができるため、該細胞をL−ドーパの製造に使用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<1>プラスミドの作製
(i)pAH175(N324D)
図1にしたがって、N324D変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH175を作製した。pMW118(ニッポンジーン社)の3.9 kb PvuIIの断片と、pTK#20(特開2001-238678号公報)の2.4 kb SalI(blunt)-SspIの断片(パントエア・アグロメランスATCC21434株由来野生型TyrR遺伝子)を連結してpTK672を作製した。また、パントエア・アグロメランスATCC21434株由来野生型TyrR遺伝子を含むpTK775(Appl. Environ. Microbiol., 66, 4764-4771 (2000))に、Stratagene社のQuikChange kitを用いた部位特異的変異によってN324D変異を導入し、pTK1108を作製した。次に、上記pTK672を EcoRI で切断した4.7 kbの断片と、上記pTK1108を EcoRI で切断した 1.6 kbの断片を連結し、pAH160とした。パントエア・アグロメランスはアンピシリン耐性であるため、選択マーカーとしてアンピシリンを利用できない。そこで、pAH160のScaIサイトにpBR322由来のテトラサイクリン耐性遺伝子 ( 1.6 kb SspI-PpuMI断片を平滑末端化処理したもの)を挿入し、pAH175とした。
(ii)pAH176(V67A,Y72C,E201G,N324D)
図2にしたがって、V67A,Y72C,E201G及びN324D変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH176を作製した。pTK775のPstI-EcoRI断片(2.3 kb)と、同じくpTK775 のPstI-EcoRV断片(2.6 kb)と、pYG5(特開2001-238678号公報に開示されているtyrR5(V67A,Y72C,E201G)を含むpACYC177)のEcoRI-EcoRV断片(1.1 kb)の3つの断片をligationし、pTK856を作製した。次に、(i)で得たpAH160をNruIで切断した 5.6 kbの断片と、上記pTK856をNruIで切断した 0.7 kbの断片を連結し、pAH163とした。さらに、(i)と同様にテトラサイクリン耐性遺伝子を挿入し、pAH176とした。
(iii)pAH178(V67A,Y72C,E201G,N324D,A503T)
図3にしたがって、V67A,Y72C,E201G,N324D及びA503T変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH178を作製した。pTK775にsite-directed mutagenesisでE275Q変異を導入しpTK815を作製した。これをtemplateとしてエラー・プローン(error-prone)PCRにより増幅したtyrR遺伝子断片をpTK774に挿入し、その中からTPL活性化能の高いクローンを選択した。得られたものの一つが、A503T変異を有するpTK1060であった。なお、pTK774では、error-prone PCRで増幅させた断片を挿入するため、tyrR遺伝子の開始コドンがNdeIになっている。pTK774を使用したライブラリーの作製法は、前述のAppl. Environ. Microbiol., 66, 4764-4771 (2000)のMaterials and Methodsのrandom mutagenesis of the tyrR
gene using error-prone PCRの項に記載されている。また、error-prone PCRの方法については特開2001−238678号公報に開示されている。次に、上記(ii)で得たpAH163をPvuIIで切断した 5.9 kbの断片と、pTK1060をPvuIIで切断した 0.4 kbの断片を連結し、pAH164とした。さらに、(i)と同様にテトラサイクリン耐性遺伝子を挿入し、pAH178とした。
(iv)pAH170(A503T)
図4にしたがって、A503T変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH170を作製した。pTK919(特開2001−238678号公報)をPvuIIで切断した 7.3 kbの断片と、上記(iii)で得たpTK1060をPvuIIで切断した 0.4 kbの断片を連結し、pAH170とした。
(V)pAH172(V67A,Y72C,E201G,A503T)
図5にしたがって、V67A,Y72C,E201G及びA503T変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH172を作製した。pTK922(特開2001−238678号公報)をPvuIIで切断した 7.3 kbの断片と、上記(iii)で得たpTK1060をPvuIIで切断した 0.4 kbの断片を連結し、pAH172とした。
(vi)pAH177(N324D,A503T)
図6にしたがって、N324D及びA503T変異を有するtyrR遺伝子を含むプラスミドpAH177を作製した。上記(i)で得たpAH160をPvuIIで切断した 7.3 kbの断片と、上記(iii)で得たpTK1060をPvuIIで切断した 0.4 kbの断片を連結し、pAH177とした。
<2>野生型又は変異型tyrRのパントエア・アグロメランスへの導入
上記(i)〜(vi)のプラスミド及びV67A,Y72C,E201G 変異を有するtyrR遺伝子を含むpTK922、野生型tyrR遺伝子を含むpTK919を、それぞれ熱ショック法により、tyrR欠失株パントエア・アグロメランス(エルビニア・ヘルビコーラ) YG17株(特開2001-238678)に導入した。すなわち、別途調製したコンピテントセル200μLに上記プラスミドを含む溶液20μLを加え、氷上に30分置いた後、42℃で30秒間熱ショックを与えた。800μLのSOB培地を加えて37℃で1時間インキュベートした後、菌体をプレートに塗布し、30℃で一晩培養した。これによって得られた株を表1に示す。なお、表1の略記号は、V67A,Y72C,E201G 変異をNT、N324DをCen、A503T変異をCTとしている。
Figure 0004513377
<3>変異型tyrR導入株のTPL活性の評価
これらの株及び野生株AJ2985(ATCC21434)を0.2%チロシン含有又は非含有TPL高発現培地100mlで、28℃で28、32、36時間振とう培養した。用いたTPL高発現培地の組成を表2に示す。
Figure 0004513377
大豆タンパク質加水分解物としては、COMPOUND-F(味の素株式会社製)を使用した。本製品中のチロシン含量は、1.5%プラスマイナス0.15%と原料のアミノ酸組成及びその製法から推定される。したがって、チロシン非添加条件においても、培地中には2.25×10−3%の微量のチロシンが含まれている計算になる。ただし、この程度の量はL−ドーパの発酵生産において混入がほとんど問題にならない量である。
培養終了後、菌体を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.2mM PLP(ピリドキサール5'リン酸)、5mM 2-メルカプトエタノール、4mM EDTA(pH7.0)に懸濁し、超音波処理により破砕した。菌体破砕液を、前記緩衝液に対して一夜透析した。こうして得られた酵素液について、タンパク質定量及びTPLの活性測定を行った。
タンパク質の定量は、ウシ血清アルブミンを標準として、ローリー法(Lowry,O.H.et al., J. Biol. Chem. 193, 265 (1951)により行った。TPL活性測定は、下記に従って化学合成したS-o-nitrophenyl-L-cystein(SOPC)を基質に使用して行った。すなわち、0.2mM SOPC、0.1 mM PLP、5mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM PLP、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)からなる反応液を30℃の水浴で 4 分間プレインキュベートした後、この反応液 1 mlと前記酵素液 50 μlを混合した。SOPC は 368 nmで吸収極大を示す。そこで、本実施例では 370 nmの吸光度の減少を測定した (ε= 1,860) 。なお、酵素単位の定義は、 1 分間に 1 μmole の SOPC を消費する酵素の量を 1 unitとした。チロシン添加培地で36時間培養した野生株の菌体重量あたりのTPL活性の値を100としたときの、各株の菌体重量あたりのTPL活性の相対値を表3及び図7に示す。
Figure 0004513377
チロシン添加時においては、AH181株(NT Cen)、AH182株(Cen CT)、AH183株(NT CT)及びAH184株(NT Cen CT)は、野生株(AJ2985)と同等かそれ以上のTPL活性を示した。一方、チロシン非添加時においては、野生株がほとんどTPLを活性化できないのに対し、AH181株(NT Cen)、AH182株(Cen CT)、AH183株(NT CT)及びAH184株(NT Cen CT)は、野生株の10倍以上のTPL活性を示した。このことから、上記の変異型tyrRが導入されたパントエア・アグロメランスは、培地にチロシンを添加しなくても、大量のTPLを発現させることができることがわかった。
なお、TPL活性測定に使用したSOPC の化学合成及び精製は、以下の方法で行った。
(1)10 mM システイン100 ml (in water) と 10 mM o-DNB 100 ml (in EtOH) を混合。
(2)28%アンモニア水を 3 滴加え、50℃で一晩インキュベートした。
(3)50℃でエバポレーションを行い、o-DNBの結晶を得た。
(4)室温において、3,500 rpmで 3 分間遠心分離を行い、結晶を取り除いた。
(5)ペーパークロマトグラフィーを一晩行った。(展開溶液は、1 -ブタノール:水:酢酸=4:1:1)
(6)紙を乾かした後、UV吸収が見られた部分のみ細かく切り、水に浸して一晩抽出を行った。
(7)その溶液をニトロセルロースのフィルター (pore size 5.0 μm) を用いてろ過した。
(8)再び50℃でエバポレーションを行った。
(9)凍結乾燥によって粉状のSOPCを得た。
<4>変異型TyrR導入株を用いたL−ドーパの製造
評価菌株としては、以下の5株を用いた。
control株(pTK631/AJ2985ΔtyrR::kan+)
YG38株(tyrR+/AJ2985ΔtyrR::kan+)
YG40株(tyrR+NT/AJ2985ΔtyrR::kan+)
AH181株(tyrR+NT+Cen/AJ2985ΔtyrR::kan+)
AH184株(tyrR+NT+Cen+CT/AJ2985ΔtyrR::kan+)
Control株に使用したベクターpTK631は、Applied and Environmental Microbiologyの第66巻、p4764−4771(2000年)に記載されている。
まず、上記菌株をリフレッシュスラント(Basal培地にAgar2%添加し、pH7.5に調整したもの)上、31.5℃で24時間培養した。リフレッシュスラント上に生育してきた菌体を、500ml坂口フラスコに100ml入れたチロシン非添加又は0.2%チロシン添加TPL高発現用培地に1エーゼ植菌し、140rpmで攪拌しながら、28℃で17時間培養した。なお、スラントでの生育は、いずれの株も同程度であった。
培養終了後、5mlの培養物を遠心分離(3000rpm、15分)して集菌を行った。得られた菌体を、下記に示す基質溶液5mlに懸濁し、15℃で1時間反応させた。
TPL活性測定用基質溶液
ヒ゜ルヒ゛ン酸Na 1.55g/dl、カテコール 1.0g/dl、塩化アンモニウム 4.7g/dl
硝酸アンモニウム 0.13g/dl、亜硫酸ソータ゛ 0.27g/dl、EDTA-2Na 0.4g/dl
pH 8.0(反応直前にアンモニア水で調整)
反応終了後、反応液を塩酸でpH1以下にし、さらに100倍希釈した後に、HPLCにてL−ドーパ生成量を分析した。培養によって得られた菌体量及びL-ドーパ生成量を表4に示す。チロシン+はチロシン0.2%添加、チロシン−はチロシン無添加を示している。
Figure 0004513377
特開2001−238678記載の変異型チロシンリプレッサー遺伝子(NT)に、本発明のCen、CTの変異を導入することにより、L−ドーパ生成量も菌体当たりのL−ドーパ生成活性のいずれもが飛躍的に増加した。これまで知られていた変異型チロシンリプレッサーの場合(NT)は、チロシンを添加する方が、L−ドーパ生成量、菌体当たりのL−ドーパ生成活性が高く、チロシンによる誘導が完全になくなっているわけではなかった。これに対して、本発明のCen及び/又はCTの変異を導入した場合(NT+Cen、NT+Cen+CT)では、チロシンをいれても入れなくても同等、むしろ無添加の方がL−ドーパ生成量、菌体当たりの活性が高いことが明らかになった。すなわち、本来、L−ドーパ生産に必要なTPLはよく知られているようにチロシンによる誘導が必要であったが、本発明により誘導が完全に不要となった。
<5>変異型tyrRのエシェリヒア・コリ内での評価
本発明の変異型チロシンリプレッサー(TyrR)がエシェリヒア・コリ内においてもパントエア・アグロメランスのTPL遺伝子プロモーターを活性化できるかどうかを調べるために、以下の実験を行った。まず、変異型TyrR の転写活性化能を観察するために β- ga
lactosidase 活性を指標にしようと考え、パントエア・アグロメランスのtpl プロモーターにβ- galactosidase をコードする lacZ 遺伝子をつないだ遺伝子(Φ(tpl ’-‘lacZ) 遺伝子)を有するレポータープラスミドの構築を行った。Φ(tpl ’-‘lacZ) 遺伝子を保持するプラスミドについては、kan+ および bla+ 遺伝子を保持したpTK1004より HindIII - SalI 断片 5.9 kb を切り出し、これを同じく HindIII, SalI で処理した pBR322 の断片とライゲーションさせて図8に示すΦ(tpl ’-‘lacZ) 遺伝子を保持するプラスミド pAH276 を作製した。
なお、上記pTK1004の作製法は以下のとおりである。すなわち、まず、pTK312(特開2001-238678)から切り出した8.6 kb のSacI-SacII(blunt-ended)断片と、pMC1871 (Pharmacia)から切り出した1.1 kb のSacI-BamHI(blunt-ended)断片を連結し、pTK1003を得た。次に、pTrc99A (Pharmacia)から切り出した0.5 kb のXmnI断片を pTK1003のNcoI (blunt-ended)に挿入して、pTK1004とした。
コントロールとなる空のプラスミドpTK631、野生型 tyrR遺伝子をもつpTK919、tyrR(V67A Y72C E201G)遺伝子をもつpTK922、tyrR(V67A Y72C E201G N324D A503T)遺伝子をもつpAH178の計 4 種類のプラスミドで、内因性tyrR遺伝子及びlacZ遺伝子を欠損したエシェリヒア・コリDtyrR、Dlac株 TK743 を形質転換した。これらの形質転換株を、さらに前記 F(tpl’-‘lacZ) レポータープラスミド pAH276 で形質転換した。得られた株を LB
培地、1 mM チロシンを添加した LB 培地、1 mM フェニルアラニンを添加した LB 培地、それぞれにおいて 37℃ で一晩前培養したのち、本培養培地の100 分の 1 量に相当する量を採取し、新たな各培地において 37℃ で本培養を行い、OD600 = 0.5 になった時点で b - galactosidase 活性の測定を行った。
結果は図9に示したように、チロシン非添加LB 培地において、TyrR(V67A Y72C E201G)をもつ株で野生型 TyrR 保持株の約 7 倍、TyrR(V67A Y72C E201G N324D A503T)をもつ株で野生型 TyrR 保持株の約 22 倍の発現がみられた。また、1 mM チロシンを添加した LB 培地においては、それぞれ野生型の約 8 倍、10 倍の発現、1 mM フェニルアラニンを添加した LB 培地においては、それぞれ野生型の約 4.5 倍、17倍の発現がみられた。なお、野生型 TyrR 保持株において、チロシンやフェニルアラニンによる誘導がほとんど観察されないのは、LB 培地にもともとそれらの芳香族アミノ酸が多量に含まれているためであると考えられた。以上のことから、エシェリヒア・コリ内においても、変異型 TyrR は チロシン非添加時にtpl プロモーターからの転写を大きく上昇させることが明らかになった。
本発明の変異型チロシンリプレッサーを用いて得られる組換えTPL又はTPL高発現微生物を用いることにより、パーキンソン病などの治療に有用なL−ドーパを効率よく生産することができる。
プラスミドpAH175の構築を示す図。 プラスミドpAH176の構築を示す図。 プラスミドpAH178の構築を示す図。 プラスミドpAH170の構築を示す図。 プラスミドpAH172の構築を示す図。 プラスミドpAH177の構築を示す図。 チロシン添加時(A)、非添加時(B)における野生型又は変異型tyrR導入株の菌体重量あたりのTPL活性を示す図。 Φ(tpl’-‘lacZ) レポータープラスミドの構築を示す図。 変異型TyrR によるΦ(tpl’-‘lacZ) の転写活性化能を示す図。LB+Yはチロシン添加LB培地を、LB+Fはフェニルアラニン添加LB培地を示す。

Claims (9)

  1. 配列番号2に示すパントエア・アグロメランスの野生型チロシンリプレッサーのアミノ酸配列において、以下の(イ)〜(ハ)のうちの2群又は3群のアミノ酸の置換を含むアミノ酸配列を有する変異型チロシンリプレッサー、
    (イ)67位のバリンからアラニンへの置換、72位のチロシンからシステインへの置換、及び201位のグルタミン酸からグリシンへの置換
    (ロ)324位のアスパラギンからアスパラギン酸への置換、
    (ハ)503位のアラニンからスレオニンへの置換
  2. 前記変異以外の位置において、1〜5個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含み、かつ、チロシンフェノールリアーゼ遺伝子の発現を誘導する活性にチロシンを必要としない、請求項に記載の変異型チロシンリプレッサー。
  3. 請求項1又は2に記載の変異型チロシンリプレッサーをコードするDNA。
  4. 請求項に記載のDNAで形質転換されたエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌。
  5. さらにチロシンフェノールリアーゼ遺伝子のプロモーターに発現可能に連結された構造遺伝子を保持する請求項に記載のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌。
  6. 請求項又はに記載のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌を培地中で培養してチロシンフェノールリアーゼを生成させる工程、及び該チロシンフェノールリアーゼを精製する工程を含む、チロシンフェノールリアーゼの製造法。
  7. チロシン非存在下で前記微生物を培養することを特徴とする、請求項に記載のチロシンフェノールリアーゼの製造法。
  8. 請求項又はに記載のエシェリヒア属細菌又はパントエア属細菌をカテコール、ピルビン酸及びアンモニア、又はカテコール及びセリンに作用させてL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンを生成させる工程、及び該L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンを採取する工程を含む、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンの製造法。
  9. 前記微生物がチロシン非存在下で増殖させた微生物である、請求項に記載のL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンの製造法。
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