JP2017046673A - γ−グルタミルバリン合成酵素、及び、γ−グルタミルバリルグリシンの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】γ-Glu-Valを生成するのに好適なγ-Glu-Val合成酵素、及びそれを用いたγ-Glu-Val-Glyの製造法を提供する。【解決手段】エシェリヒア・コリのybdK遺伝子にコードされるタンパク質(YBDK)等のγ-Glu-Val合成酵素を利用して、Glu、Val、及びGlyを原料としてγ-Glu-Val-Glyを製造する。【選択図】なし
Description
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素(γ-Glu-Val合成酵素)、及びそれを用いたγ−グルタミルバリルグリシンの製造法に関する。γ−グルタミルバリルグリシンは、食品及び医薬品等の分野で有用である。
γ−グルタミルバリルグリシン(L-γ-glutamyl-L-valyl-glycine;以下、「γ-Glu-Val-Gly」ともいう。)のようなある種のペプチドは、カルシウム受容体活性化作用を有している(特許文献1)。このようなカルシウム受容体活性化作用を有するペプチドは、飲食品にコク味を付与できること(特許文献2)、低脂肪食品の呈味、特に脂肪様濃厚感及び滑らかさ、を改善できること(特許文献3)、及び、甘味物質のボディー感を改善し、甘味物質特有の苦味を改善できること(特許文献4)が知られている。
また、前記のようなペプチドは、下痢(特許文献5)、糖尿病(特許文献6)の予防又は治療効果、及び、消化管の重炭酸分泌促進効果(特許文献7)を有することが知られている。
一般に、γ−グルタミルトリペプチドの製造法としては、化学合成法および酵素法が知られている。化学合成法としては、N-保護グルタミン酸無水物を利用して、ジペプチドから選択的にγ−グルタミルトリペプチドを得る方法が知られている(特許文献8)。酵素法としては、グルタミン酸−システインリガーゼ(GSHA)およびグルタチオン合成酵素(GSHB)を利用する方法が知られている(特許文献9、10)。また、酵素法としては、γ−グルタミルトランスフェラーゼを利用し、Val-Glyをγ−グルタミル化してγ-Glu-Val-Glyを生成する方法も知られている(特許文献11)。
グルタミン酸−システインリガーゼ(GSHA)は、GluとCysとATPを基質として、γ-Glu-CysとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を有する酵素(EC 6.3.2.2)として知られている。GSHAは、通常、酵素反応にMg2+やMn2+等の2価の金属イオンを要求する。
エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)のGSHAは、Mg2+またはMn2+の存在下でGluと各種のアミノ酸およびATPを基質としてγ−グルタミルジペプチドを生成するが、補因子となる金属イオンの種類が基質特異性に影響することが知られている(非特許文献1)。具体的には、Mg2+を補因子とした場合には、γ-Glu-Gly生成活性は、Vmax = 251 mol/mg/hr, Km = 17.6 mMであるのに対して、γ-Glu-Val生成活性は、Vmax = 59 mol/mg/hr, Km = 27.1 mMであると報告されている。すなわち、Vmax/Kmを活性の指標として比較すれば、Mg2+を補因子とした場合のγ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率は0.15と算出できる。一方、Mn2+を補因子とした場合には、γ-Glu-Gly生成活性は、Vmax = 39 mol/mg/hr, Km = 1.7 mMであるのに対して、γ-Glu-Val生成活性は、Vmax = 95 mol/mg/hr, Km = 21 mMであると示されている。すなわち、Vmax/Kmを活性の指標として比較すれば、Mn2+を補因子とした場合のγ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率は0.20と算出できる。また、エシェリヒア・コリ由来GSHAの基質特異性に関しては、他の活性測定例も挙げることができる(非特許文献2)。同文献では、Mg2+の存在下でGluと各種のアミノ酸およびATPを基質として反応を行い、γ-Glu-Gly生成活性を100%とした場合には、γ-Glu-Val生成活性は52%程度であると報告されている。すなわち、これら相対活性に基づいて比較をすれば、γ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率は0.52と算出できる。このように、エシェリヒア・コリのGSHAのγ-Glu-Gly生成活性に対するγ
-Glu-Val生成活性の比率は0.15〜0.5程度であると言える。また、エシェリヒア・コリのGSHAに各種変異を導入することにより、γ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率が高い変異型GSHAを取得したことが報告されている(特許文献12)。
-Glu-Val生成活性の比率は0.15〜0.5程度であると言える。また、エシェリヒア・コリのGSHAに各種変異を導入することにより、γ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率が高い変異型GSHAを取得したことが報告されている(特許文献12)。
また、グラム陰性細菌の1種であるプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)由来のGSHAは、Mg2+またはMn2+を補因子とし、Gluと各種のアミノ酸およびATPを基質としてγ-グルタミルジペプチドを生成することが知られている(非特許文献3)。プロテウス・ミラビリス由来のGSHAについて、γ-Glu-Cys生成活性を100%とした場合には、γ-Glu-Gly生成活性は14.5%、γ-Glu-Val生成活性は7.2%であると報告されている。すなわち、これら相対活性に基づいて比較をすれば、γ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率は0.50と算出できる。
また、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)由来のγ-glutamylcysteine synthetase-glutatione synthetase(γ-GCS-GS)は、Mg2+の存在下でGluと各種のアミノ酸およびATPを基質としてγ−グルタミルジペプチドを生成することが知られている。ストレプトコッカス・アガラクチア由来のγ-GCS-GSについて、γ-Glu-Gly生成活性を100%とした場合に、γ-Glu-Val生成活性は21%程度であると報告されている(非特許文献2)。すなわち、これら相対活性に基づいて比較をすれば、γ-Glu-Gly生成活性に対するγ-Glu-Val生成活性の比率は0.21と算出できる。
また、ミクロコッカス・グルタミカス(Micrococcus glutamicus)の培養液を各種カラムにかけペプチド等を分離し、γ-Glu-Glu、γ-Glu-Val、γ-Glu-Leuを単離したと報告されている(非特許文献4)。しかしながら、これらγ−グルタミルジペプチドの生合成経路については報告されていない。
エシェリヒア・コリのybdK遺伝子にコードされるタンパク質(YBDK)は、γ-Glu-Cys生成活性を有することが報告されている(非特許文献5)。しかしながら、エシェリヒア・コリのYBDKのγ-Glu-Cys以外のγ−グルタミルジペプチド生成活性については報告されていない。
Brenda S. Kelly et al., J. Biol. Chem., 277, 50-58, 2002
Kino, K. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 352, 351-359, 2007
Kumagai, H. et al., Agric. Biol. Chem., 46, 1301-1309, 1982
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Lehmann C. et al., Proteins. 2004 Aug 1;56(2):376-83.
グルタミン酸−システインリガーゼ(GSHA)は、生体内において、グルタチオンの前駆体であるγ-Glu-Cysを生成する役割を担っている。GSHAは、Cys以外にも種々のアミノ酸を基質として利用し得るが、通常、Cysと比較して、分岐鎖アミノ酸の1種であるValを基質とする活性が相対的に低い。そのため、GSHAおよびグルタチオン合成酵素(GSHB)を利用し、Glu、Val、Glyを原料としてγ-Glu-Val-Glyを製造する場合、γ-Glu-Val-Glyの収量が低いという問題がある。そこで、本発明は、γ-Glu-Valを生成するのに好適なγ-Glu-Val生成活性を有するタンパク質(γ-Glu-Val合成酵素)、及びそれを用いたγ-Glu-Val-Glyの製造法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エシェリヒア・コリのYBDKがγ-Glu-Val生成活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下のとおり例示できる。
[1]
下記工程(A)を含む、γ-Glu-Valおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[2]
下記工程(A)および(B)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程;および
(B)グルタチオン合成酵素を工程(A)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyに作用させることによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[3]
下記工程(C)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(C)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質およびグルタチオン合成酵素を、Glu、Val、およびGlyに作用させることにより、γ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[4]
前記タンパク質におけるγ−グルタミルグリシン合成酵素活性に対するγ−グルタミルバリン合成酵素活性の比率が2.0以上である、前記方法。
[5]
前記タンパク質が、精製酵素である、前記方法。
[6]
前記タンパク質が、固定化酵素である、前記方法。
[7]
前記タンパク質が、該タンパク質を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[8]
前記グルタチオン合成酵素が、該酵素を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[9]
前記タンパク質およびグルタチオン合成酵素が、両酵素を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[10]
前記微生物が、gshA遺伝子にコードされるタンパク質の活性が低下するように改変されている、前記方法。
[11]
前記微生物が、γ−グルタミルトランスフェラーゼの活性が低下するように改変されている、前記方法。
[12]
前記微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属細菌またはコリネ型細菌である、前記方法。
[13]
前記微生物が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、前記方法。
[14]
前記工程がATPの存在下で実施される、前記方法。
[15]
前記工程が2価の金属イオンの存在下で実施される、前記方法。
[16]
前記工程がMn2+の存在下で実施される、前記方法。
[1]
下記工程(A)を含む、γ-Glu-Valおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[2]
下記工程(A)および(B)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程;および
(B)グルタチオン合成酵素を工程(A)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyに作用させることによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[3]
下記工程(C)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(C)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質およびグルタチオン合成酵素を、Glu、Val、およびGlyに作用させることにより、γ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。
[4]
前記タンパク質におけるγ−グルタミルグリシン合成酵素活性に対するγ−グルタミルバリン合成酵素活性の比率が2.0以上である、前記方法。
[5]
前記タンパク質が、精製酵素である、前記方法。
[6]
前記タンパク質が、固定化酵素である、前記方法。
[7]
前記タンパク質が、該タンパク質を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[8]
前記グルタチオン合成酵素が、該酵素を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[9]
前記タンパク質およびグルタチオン合成酵素が、両酵素を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、前記方法。
[10]
前記微生物が、gshA遺伝子にコードされるタンパク質の活性が低下するように改変されている、前記方法。
[11]
前記微生物が、γ−グルタミルトランスフェラーゼの活性が低下するように改変されている、前記方法。
[12]
前記微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属細菌またはコリネ型細菌である、前記方法。
[13]
前記微生物が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、前記方法。
[14]
前記工程がATPの存在下で実施される、前記方法。
[15]
前記工程が2価の金属イオンの存在下で実施される、前記方法。
[16]
前記工程がMn2+の存在下で実施される、前記方法。
本発明のγ-Glu-Val合成酵素は、Valを選択的に基質とし、γ-Glu-Val生成反応を触媒する。したがって、本発明によれば、本発明のγ-Glu-Val合成酵素を利用して、Glu及びValを原料としてγ-Glu-Valを効率よく製造することができ、さらにγ-Glu-Val及びGlyを原料としてγ-Glu-Val-Glyを製造することができる。また、本発明によれば、本発明のγ-Glu-Val合成酵素を利用して、Glu、Val、及びGlyを原料としてγ-Glu-Val-Glyを効率よく製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、アミノ酸は特記しない限りL−体である。
<1>γ−グルタミルバリン合成酵素(γ-Glu-Val合成酵素)
「γ−グルタミルバリン合成酵素(γ-glutamylvaline synthethase)(γ-Glu-Val合
成酵素(γ-Glu-Val synthethase))」とは、GluとValとATPを基質として、γ-Glu-ValとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。同活性を、「γ−グルタミルバリン合成酵素活性」、「γ-Glu-Val生成活性」、または「γ-Glu-Val合成活性」ともいう。
「γ−グルタミルバリン合成酵素(γ-glutamylvaline synthethase)(γ-Glu-Val合
成酵素(γ-Glu-Val synthethase))」とは、GluとValとATPを基質として、γ-Glu-ValとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。同活性を、「γ−グルタミルバリン合成酵素活性」、「γ-Glu-Val生成活性」、または「γ-Glu-Val合成活性」ともいう。
また、GluとGlyとATPを基質として、γ-Glu-GlyとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を、「γ−グルタミルグリシン合成酵素(γ-glutamylglycine synthethase)活性」、「γ-Glu-Gly生成活性」、または「γ-Glu-Gly合成活性」ともいう。
また、GluとCysとATPを基質として、γ-Glu-CysとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を、「γ−グルタミルシステイン合成酵素(γ-glutamylcysteine synthetase)活性」ともいう。
これらの酵素活性は、例えば、適切な条件で酵素を基質に作用させた際のγ−グルタミルジペプチドの生成に基づいて測定することができる。これらの酵素活性は、例えば、2価の金属イオンの存在下で測定することができる。2価の金属イオンとしては、Mg2+やMn2+が挙げられる。
Mn2+存在下でのγ−グルタミルバリン合成酵素活性およびγ−グルタミルグリシン合成酵素活性の測定条件としては、実施例4に記載の条件が挙げられる。すなわち、具体的な活性測定条件は以下の通りである。γ−グルタミルバリン合成酵素活性は、反応液(10mM グルタミン酸、10mM バリン、10mM ATP、10mM MnS04、100mM Tris-HCl (pH7.0〜9.0))に適切な量の酵素を添加し、30℃で30分間反応を行い、生成したγ-Glu-Val量に基づいて測定することができる。本発明においては、本条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Valを生成する酵素活性を1 Uのγ−グルタミルバリン合成酵素活性(Mn2+存在下)とする。同様に、γ−グルタミルグリシン合成酵素活性は、反応液(10mM グルタミン酸、10mM グリシン、10mM ATP、10mM MnS04、100mM Tris-HCl (pH7.0〜9.0))に適切な量の酵素を添加し、30℃で30分間反応を行い、生成したγ-Glu-Gly量に基づいて測定することができる。本発明においては、本条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Glyを生成する酵素活性を1 Uのγ−グルタミルグリシン合成酵素活性(Mn2+存在下)とする。
また、10mM MnS04に代えて10mM MgS04を含有する反応液を用いることで、Mg2+存在下でのγ−グルタミルバリン合成酵素活性およびγ−グルタミルグリシン合成酵素活性を測定することができる。すなわち、同反応液を用いて上記と同様の条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Valを生成する酵素活性を1 Uのγ−グルタミルバリン合成酵素活性(Mg2+存在下)とする。同様に、同反応液を用いて上記と同様の条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Glyを生成する酵素活性を1 Uのγ−グルタミルグリシン合成酵素活性(Mg2+存在下)とする。
また、γ−グルタミルグリシン合成酵素活性(比活性)に対するγ−グルタミルバリン合成酵素活性(比活性)の比率(すなわち、γ−グルタミルバリン合成酵素活性の比活性/γ−グルタミルグリシン合成酵素活性の比活性)を「Val選択性」ともいう。Val選択性は、γ−グルタミルバリン合成酵素活性およびγ−グルタミルグリシン合成酵素活性を測定し、算出できる。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有する限り、γ−グルタミルバリン以外のγ−グルタミルジペプチドを生成する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。すなわち、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルグリシン合成酵素活性を有し
ていてもよく、有していなくてもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルグリシン合成酵素活性を有さないのが好ましい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、適切な条件でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していればよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、Mg2+またはMn2+の存在下、特にMn2+の存在下、でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していてよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、pH7.0〜9.0の少なくともいずれかのpH、特にpH7.0、でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していてよい。
ていてもよく、有していなくてもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルグリシン合成酵素活性を有さないのが好ましい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、適切な条件でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していればよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、Mg2+またはMn2+の存在下、特にMn2+の存在下、でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していてよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、pH7.0〜9.0の少なくともいずれかのpH、特にpH7.0、でγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有していてよい。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、高いVal選択性を示すのが好ましい。γ−グルタミルバリン合成酵素において、Val選択性は、例えば、2.0以上、2.5以上、3.0以上、4.0以上、または5.0以上であってよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素において、Val選択性は、例えば、100以下、または50以下であってよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素において、Val選択性は、例えば、それらの組み合わせの範囲であってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、適切な条件で上記例示したVal選択性を示すものであってよい。γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、Mg2+またはMn2+の存在下、特にMn2+の存在下、で上記例示したVal選択性を示すものであってよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、pH7.0〜9.0の少なくともいずれかのpH、特にpH7.0、で上記例示したVal選択性を示すものであってよい。
特に、Val選択性が高いγ−グルタミルバリン合成酵素をグルタチオン合成酵素と組み合わせて利用することにより、Glu、Val、およびGlyを原料として、γ−グルタミルグリシンの副生を低減しつつγ−グルタミルバリルグリシンを効率的に生産できると期待される。また、特に、γ−グルタミルバリン合成酵素活性(比活性)が高いγ−グルタミルバリン合成酵素を利用することにより、GluおよびValを原料としてγ−グルタミルバリンを効率的に生産できると期待される。
γ−グルタミルバリン合成酵素としては、ybdK遺伝子にコードされるタンパク質(「YBDK」ともいう)が挙げられる。ybdK遺伝子としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌のybdK遺伝子が挙げられる。すなわち、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌に由来するタンパク質であってよい。
E. coli K-12 MG1655のybdK遺伝子の塩基配列およびそれによりコードされるYBDKのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号3および4に示す。すなわち、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、配列番号3に示す塩基配列を有する遺伝子にコードされるタンパク質であってよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」場合および当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合を包含する。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、元の機能が維持されている限り、上記例示したγ−グルタミルバリン合成酵素(例えば、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質)のバリアントであってもよい。同様に、γ−グルタミルバリン合成酵素をコードする遺伝子(「γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子」ともいう)は、元の機能が維持されている限り、上記例示したγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子(例えば、配列番号3に示す塩基配列を有する遺伝子)のバリアントであってもよい。なお、このような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。なお、「ybdK遺伝子」という用語は、上記例示したybdK遺伝子に加えて、その保存的バリアントを包含するものとする。同様に、「YBDK」という用語は、上記例示したYBDKに加えて、その保存的バリアントを包含するものとする。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したγ−グルタ
ミルバリン合成酵素やそれをコードする遺伝子のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
ミルバリン合成酵素やそれをコードする遺伝子のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
「元の機能が維持されている」とは、遺伝子やタンパク質のバリアントが、元の遺伝子やタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。すなわち、「元の機能が維持されている」とは、γ−グルタミルバリン合成酵素にあっては、タンパク質のバリアントが、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有することをいう。同バリアントがγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有する限り、基質特異性、2価の金属イオンの要求性、pH依存性等の、同バリアントの酵素学的性質は、いずれも、元のタンパク質の酵素学的性質と同一であってもよく、同一でなくてもよい。例えば、同バリアントは、γ−グルタミルバリン以外のγ−グルタミルジペプチドを生成する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、例えば、同バリアントは、上記例示したVal選択性を示してもよい。また、「元の機能が維持されている」とは、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質(すなわちγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質)をコードすることをいう。
以下、保存的バリアントについて例示する。
上記γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子またはγ−グルタミルバリン合成酵素のホモログとしては、例えば、上記塩基配列またはアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから取得される遺伝子またはタンパク質が挙げられる。また、上記γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のホモログは、例えば、各種微生物の染色体を鋳型にして、これら公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列(例えば、配列番号4に示すアミノ酸配列)において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入
、付加、または逆位等には、タンパク質が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
、付加、または逆位等には、タンパク質が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、元の機能が維持されている限り、上記塩基配列(例えば、配列番号3に示す塩基配列)から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるタンパク質であってもよい。そのようなプローブは、例えば、上記塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、上記塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。また、例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
2つの配列間の配列同一性のパーセンテージは、例えば、数学的アルゴリズムを用いて決定できる。このような数学的アルゴリズムの限定されない例としては、Myers 及び Miller (1988) CABIOS 4:11 17のアルゴリズム、Smith et al (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman及びWunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443 453のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson及びLipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444 2448の類似性を検索する方法、Karlin 及びAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873 5877に記載されているような、改良された、Karlin及びAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264のアルゴリズムが挙げられる。
これらの数学的アルゴリズムに基づくプログラムを利用して、配列同一性を決定するための配列比較(アラインメント)を行うことができる。プログラムは、適宜、コンピュータにより実行することができる。このようなプログラムとしては、特に限定されないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics, Mountain View, Calif.から入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、並びにWisconsin Genetics Software Package, Version 8(Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Drive, Madison, Wis., USAから入手可能)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAが挙げられる。これらのプログラムを用いたアライメントは、例えば、初期パラメーターを用いて行うことができる。CLUSTALプログラムについては、HigGlns et al. (1988) Gene 73:237 244 (1988)、HigGlns et al. (1989) CABIOS 5:151 153、Corpet et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:10881 90、Huang et al. (1992) CABIOS 8:155 65、及びPearson et al. (1994) Meth. Mol. Biol. 24:307 331によく記載されている。
対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相同性があるヌクレオチド配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTヌクレオチド検索を、BLASTNプログラム、スコア
=100、ワード長=12にて行うことができる。対象のタンパク質と相同性があるアミノ酸配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3にて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索やBLASTタンパク質検索については、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、比較を目的としてギャップを加えたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)を利用できる。また、PSI-BLAST (BLAST 2.0)を、配列間の離間した関係を検出する反復検索を行うのに利用できる。Gapped BLASTおよびPSI-BLASTについては、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、またはPSI-BLASTを利用する場合、例えば、各プログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、アミノ酸配列に対してBLASTX)の初期パラメーターが用いられ得る。アライメントは、手動にて行われてもよい。
=100、ワード長=12にて行うことができる。対象のタンパク質と相同性があるアミノ酸配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3にて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索やBLASTタンパク質検索については、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、比較を目的としてギャップを加えたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)を利用できる。また、PSI-BLAST (BLAST 2.0)を、配列間の離間した関係を検出する反復検索を行うのに利用できる。Gapped BLASTおよびPSI-BLASTについては、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、またはPSI-BLASTを利用する場合、例えば、各プログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、アミノ酸配列に対してBLASTX)の初期パラメーターが用いられ得る。アライメントは、手動にて行われてもよい。
2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大一致となるように整列したときに2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、他のペプチドとの融合タンパク質であってもよい。「他のペプチド」は、γ−グルタミルバリン合成酵素がγ−グルタミルバリン合成酵素活性を有する限り、特に制限されない。「他のペプチド」は、その利用目的等の諸条件に応じて適宜選択できる。「他のペプチド」としては、ペプチドタグ、シグナルペプチド、プロテアーゼの認識配列が挙げられる。「他のペプチド」は、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素のN末端、若しくはC末端、またはその両方に連結されてよい。「他のペプチド」としては、1種のペプチドを用いてもよく、2種またはそれ以上のペプチドを組み合わせて用いてもよい。
ペプチドタグとして、具体的には、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグ、Mycタグ、MBP(maltose binding protein)、CBP(cellulose binding protein)、TRX(Thioredoxin)、GFP(green fluorescent protein)、HRP(horseradish peroxidase)、ALP(Alkaline Phosphatase)、抗体のFc領域が挙げられる。Hisタグとしては、6xHisタグが挙げられる。ペプチドタグは、例えば、発現したγ−グルタミルバリン合成酵素の検出や精製に利用できる。
シグナルペプチドは、γ−グルタミルバリン合成酵素を発現させる宿主で機能するものであれば、特に制限されない。シグナルペプチドとしては、Sec系分泌経路で認識されるシグナルペプチドやTat系分泌経路で認識されるシグナルペプチドが挙げられる。Tat系分泌経路で認識されるシグナルペプチドとして、具体的には、E. coliのTorAシグナル配列、E. coliのSufIシグナル配列、Bacillus subtilisのPhoDシグナル配列、Bacillus subtilisのLipAシグナル配列、Arthrobacter globiformisのIMDシグナル配列が挙げられる(WO2013/118544)。シグナルペプチドは、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素の分泌生産に利用できる。シグナルペプチドを利用してγ−グルタミルバリン合成酵素を分泌生産する場合、分泌時にシグナルペプチドが切断され、シグナルペプチドを有さないγ−グルタミルバリン合成酵素が菌体外に分泌され得る。
プロテアーゼの認識配列として、具体的には、Factor Xaプロテアーゼの認識配列やproTEVプロテアーゼの認識配列が挙げられる。プロテアーゼの認識配列は、例えば、発現したγ−グルタミルバリン合成酵素の切断に利用できる。具体的には、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素をペプチドタグとの融合タンパク質として発現させる場合、γ−グルタミルバリン合成酵素とペプチドタグの連結部にプロテアーゼの認識配列を導入することにより、発現したγ−グルタミルバリン合成酵素からプロテアーゼを利用してペプチドタグを切断し、ペプチドタグを有さないγ−グルタミルバリン合成酵素を得ることができる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、上記例示したγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子またはその保存的バリアントの塩基配列において、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。具体的には、例えば、開始コドンがATG以外である場合に、開始コドンをATGに改変することができる。
なお、本発明において、「遺伝子」という用語は、目的のタンパク質をコードする限り、DNAに限られず、任意のポリヌクレオチドを包含してよい。すなわち、「γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子」とは、γ−グルタミルバリン合成酵素をコードする任意のポリヌクレオチドを意味してよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、その組み合わせであってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、一本鎖DNAであってもよく、一本鎖RNAであってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、二本鎖DNAであってもよく、二本鎖RNAであってもよく、DNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッド鎖であってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、単一のポリヌクレオチド鎖中に、DNA残基とRNA残基の両方を含んでいてもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子がRNAを含む場合、上記例示した塩基配列等のDNAに関する記載は、RNAに合わせて適宜読み替えてよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の態様は、その利用態様等の諸条件に応じて適宜選択できる。
<2>γ−グルタミルバリン合成酵素の製造
γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主にγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を発現させることにより製造できる。なお、「γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する」ことを、「γ−グルタミルバリン合成酵素を有する」ともいう。すなわち、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を、「γ−グルタミルバリン合成酵素を有する宿主」ともいう。また、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現を、「γ−グルタミルバリン合成酵素の発現」ともいう。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることによっても製造できる。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主にγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を発現させることにより製造できる。なお、「γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する」ことを、「γ−グルタミルバリン合成酵素を有する」ともいう。すなわち、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を、「γ−グルタミルバリン合成酵素を有する宿主」ともいう。また、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現を、「γ−グルタミルバリン合成酵素の発現」ともいう。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることによっても製造できる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主は、本来的にγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有するものであってもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有するように改変されたものであってもよい。
本来的にγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主としては、上記のようなγ−グルタミルバリン合成酵素が由来する細菌、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、が挙げられる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有するように改変された宿主としては、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子が導入された宿主が挙げられる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を導入する宿主は、機能するγ−グルタミルバリン合成酵素を発現できるものであれば特に制限されない。宿主としては、例えば、細菌、放線菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞が挙げられる。好ましい宿主としては、細菌や酵母等の微生物が挙げられる。より好ましい宿主としては、細菌が挙げられる。細菌としては、グラム陰性細菌やグラム陽性細菌が挙げられる。グラム陰性細菌としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、エンテロバクター(Enterobac
ter)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌が挙げられる。グラム陽性細菌としては、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌等のコリネ型細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。コリネ型細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)やコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))が挙げられる。宿主としては、中でも、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)を好適に用いることができる。
ter)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌が挙げられる。グラム陽性細菌としては、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌等のコリネ型細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。コリネ型細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)やコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))が挙げられる。宿主としては、中でも、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)を好適に用いることができる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する生物からのクローニングにより取得できる。クローニングには、同遺伝子を含むゲノムDNAやcDNA等の核酸を利用できる。また、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
また、取得したγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を適宜改変してそのバリアントを取得することもできる。遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。すなわち、例えば、部位特異的変異法により、コードされるタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加を含むように、遺伝子のコード領域を改変することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を宿主に導入する手法は特に制限されない。宿主において、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、当該宿主で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。宿主において、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、プラスミドのように染色体外で自律複製するベクター上に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。宿主は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を1コピーのみ有していてもよく、2またはそれ以上のコピーで有していてもよい。宿主は、1種類のγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のみを有していてもよく、2またはそれ以上の種類のγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有していてもよい。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を発現させるためのプロモーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。「宿主において機能するプロモーター」とは、宿主においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の固有のプロモーターよりも強力なプロモーターであってもよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において機能する強力なプロモーターとしては、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、PRプロモーター、およびPLプロモーターが挙げられる。また、コリネ型細菌において機能する強力なプロモーターとしては、人為的に設計変更されたP54-6プロモーター(Appl.Microbiol.Biotechnolo., 53, 674-679(2000))、コリネ型細菌内で酢酸、エタノール、ピルビン酸等で誘導できるpta、aceA、aceB、adh、amyEプロモーター、コリネ型細菌内で発現量が多い強力なプロモーターであるcspB、SOD、tuf(EF-Tu)プロモーター(Journal of Biotechnology 104 (200
3) 311-323, Appl Environ Microbiol. 2005 Dec;71(12):8587-96.)、lacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーターが挙げられる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。例えば、プロモーター領域内の−35、−10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(WO2010/027045)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu.
Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
3) 311-323, Appl Environ Microbiol. 2005 Dec;71(12):8587-96.)、lacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーターが挙げられる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。例えば、プロモーター領域内の−35、−10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(WO2010/027045)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu.
Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
また、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の下流には、転写終結用のターミネーターを配置することができる。ターミネーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。ターミネーターは、宿主由来のターミネーターであってもよく、異種由来のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の固有のターミネーターであってもよく、他の遺伝子のターミネーターであってもよい。ターミネーターとして、具体的には、例えば、T7ターミネーター、T4ターミネーター、fdファージターミネーター、tetターミネーター、およびtrpAターミネーターが挙げられる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、例えば、同遺伝子を含むベクターを用いて宿主に導入することができる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を含むベクターを、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現ベクターまたは組み換えベクターともいう。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現ベクターは、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を含むDNA断片を宿主で機能するベクターと連結することにより、構築することができる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現ベクターで宿主を形質転換することにより、同ベクターが導入された形質転換体が得られる、すなわち、同遺伝子を宿主に導入することができる。ベクターとしては、宿主の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであるのが好ましい。また、ベクターは、形質転換体を選択するために、抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーターやターミネーターを備えていてもよい。ベクターは、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等であってよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pBR322、pSTV29(いずれもタカラバイオ社より入手可)、pACYC184、pMW219(ニッポンジーン社)、pTrc99A(ファルマシア社)、pPROK系ベクター(クロンテック社)、pKK233‐2(クロンテック社製)、pET系ベクター(ノバジェン社)、pQE系ベクター(キアゲン社)、pACYC、広宿主域ベクターRSF1010が挙げられる。コリネ型細菌で自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pHM1519(Agric, Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));pAM330(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));これらを改良した薬剤耐性遺伝子を有するプラスミド;特開平3-210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2-72876号公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1-191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58-192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57-134500号公報に記載のpCG1;特開昭58-35197号公報に記載のpCG2;特開昭57-183799号公報に記載のpCG4およびpCG11が挙げられる。発現ベクターの構築の際には、例えば、固有のプロモーター領域を含むγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子をそのままベクターに組み込んでもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を上記のようなプロモーターの下流に結合してからベクターに組み込んでもよく、ベクター上にもとも
と備わっているプロモーターの下流にγ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を組み込んでもよい。
と備わっているプロモーターの下流にγ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を組み込んでもよい。
各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」に詳細に記載されており、それらを利用することが可能である。
また、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、例えば、宿主の染色体上へ導入することができる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(MillerI, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor
Laboratory)。相同組み換えを利用する遺伝子導入法としては、例えば、Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、ファージを用いたtransduction法が挙げられる。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、トランスポゾンの両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。また、本発明の実施に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入することもできる(特開平2-109985号公報、US5,882,888、EP805867B1)。染色体への遺伝子の導入の際には、例えば、固有のプロモーター領域を含むγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子をそのまま染色体に組み込んでもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を上記のようなプロモーターの下流に結合してから染色体に組み込んでもよく、染色体上にもともと存在するプロモーターの下流にγ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を組み込んでもよい。
Laboratory)。相同組み換えを利用する遺伝子導入法としては、例えば、Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、ファージを用いたtransduction法が挙げられる。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、トランスポゾンの両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。また、本発明の実施に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入することもできる(特開平2-109985号公報、US5,882,888、EP805867B1)。染色体への遺伝子の導入の際には、例えば、固有のプロモーター領域を含むγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子をそのまま染色体に組み込んでもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を上記のようなプロモーターの下流に結合してから染色体に組み込んでもよく、染色体上にもともと存在するプロモーターの下流にγ−グルタミルバリン合成酵素のコード領域を組み込んでもよい。
染色体上に遺伝子が導入されたことは、例えば、同遺伝子の全部又は一部と相補的な塩基配列を有するプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、または同遺伝子の塩基配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCRによって確認できる。
形質転換法は特に限定されず、従来知られた方法を用いることができる。形質転換法としては、例えば、エシェリヒア・コリ K-12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A.,J. Mol.
Biol. 1970, 53, 159-162)、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C. H., Wilson, G. A. and Young, F. E.., 1997. Gene 1: 153-167)などが挙げられる。また、形質転換法としては、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S.and Choen, S.N., 1979. Mol. Gen. Genet. 168: 111-115; Bibb, M. J., Ward, J. M. and Hopwood, O. A. 1978. Nature 274: 398-400; Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. 1978. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929-1933)も応用できる。また、形質転換法としては、コリネ型細菌について報告されているような、電気パルス法(特開平2-207791号公報)を利用することもできる。
Biol. 1970, 53, 159-162)、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C. H., Wilson, G. A. and Young, F. E.., 1997. Gene 1: 153-167)などが挙げられる。また、形質転換法としては、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S.and Choen, S.N., 1979. Mol. Gen. Genet. 168: 111-115; Bibb, M. J., Ward, J. M. and Hopwood, O. A. 1978. Nature 274: 398-400; Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. 1978. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929-1933)も応用できる。また、形質転換法としては、コリネ型細菌について報告されているような、電気パルス法(特開平2-207791号公報)を利用することもできる。
また、本来的にγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現が増大するよう改変してもよい。「遺伝子の発現が増大する
」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変株と比較して増大することを意味する。ここでいう「非改変株」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照株を意味する。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現を増大させる手法としては、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のコピー数を増加させることやγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率や翻訳効率を向上させることが挙げられる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のコピー数の増加は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を宿主に導入することにより達成できる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の導入は、上述したように実施できる。なお、導入されるγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、同種由来であってもよく、異種由来であってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、プロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、およびRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の、遺伝子の発現調節配列の改変により達成できる。例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率の向上は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。より強力なプロモーターとしては上述したような強力なプロモーターが挙げられる。
」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変株と比較して増大することを意味する。ここでいう「非改変株」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照株を意味する。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の発現を増大させる手法としては、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のコピー数を増加させることやγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率や翻訳効率を向上させることが挙げられる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のコピー数の増加は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を宿主に導入することにより達成できる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の導入は、上述したように実施できる。なお、導入されるγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子は、同種由来であってもよく、異種由来であってもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、プロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、およびRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の、遺伝子の発現調節配列の改変により達成できる。例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の転写効率の向上は、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。より強力なプロモーターとしては上述したような強力なプロモーターが挙げられる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主は、γ−グルタミルシステイン合成酵素の活性が低下するように改変されていてもよい。「γ−グルタミルシステイン合成酵素」とは、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有するタンパク質をいう。γ−グルタミルシステイン合成酵素を、「グルタミン酸−システインリガーゼ」または「GSHA」ともいう。γ−グルタミルシステイン合成酵素は、さらに、γ−グルタミルバリン合成酵素活性やγ−グルタミルグリシン合成酵素活性等の、γ−グルタミルシステイン以外のγ−グルタミルジペプチドを生成する活性を有し得る。γ−グルタミルシステイン合成酵素は、γ−グルタミルバリン合成酵素よりも低いVal選択性を示すものであってよい。γ−グルタミルシステイン合成酵素において、Val選択性は、例えば、2.0未満であってよい。γ−グルタミルシステイン合成酵素としては、gshA遺伝子にコードされるGshAタンパク質が挙げられる。一例として、エシェリヒア・コリのgshA遺伝子の塩基配列及び同遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号5及び6に示す。γ−グルタミルシステイン合成酵素は、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性を有する限り、上記γ−グルタミルシステイン合成酵素のバリアントであってもよい。γ−グルタミルシステイン合成酵素やそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素やそれをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。なお、「gshA遺伝子」および「GshAタンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したgshA遺伝子およびGshAタンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主は、γ−グルタミルペプチドの分解に関与するタンパク質の活性が低下するように改変されていてもよい。γ−グルタミルペプチドの分解に関与するタンパク質としては、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)が挙げられる。GGTの活性が低下することにより、γ-Glu-Valおよびγ-Glu-Val-Glyの分解を抑制することが出来る。GGTとしては、ggt遺伝子にコードされるGgtタンパク質が挙げられる。一例として、エシェリヒア・コリのggt遺伝子の塩基配列及び同遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号7及び8に示す。GGTは、GGT活性を有する限り、上記GGTのバリアントであってもよい。GGTやそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素やそれをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。なお、「ggt遺伝子」および「Ggtタンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したggt遺伝子およびGgtタンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を構築するための改変の順序は特に制限されない。
以下、GSHAやGGT等のタンパク質の活性を低下させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の細胞当たりの活性が非改変株と比較して減少していることを意味し、活性が完全に消失している場合を含む。ここでいう「非改変株」とは、標的のタンパク質の活性が低下するように改変されていない対照株を意味する。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。「タンパク質の活性が低下する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が低下していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が低下していることをいう。すなわち、「タンパク質の活性が低下する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)または翻訳量(タンパク質の量)を意味してもよい。なお、「タンパク質の細胞当たりの分子数が低下している」ことには、同タンパク質が全く存在していない場合が含まれる。また、「タンパク質の分子当たりの機能が低下している」ことには、同タンパク質の分子当たりの機能が完全に消失している場合が含まれる。タンパク質の活性は、非改変株と比較して低下していれば特に制限されないが、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより達成される。「遺伝子の発現が低下する」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が野生株や親株等の非改変株と比較して減少することを意味する。「遺伝子の発現が低下する」とは、具体的には、遺伝子の転写量(mRNA量)が低下すること、および/または、遺伝子の翻訳量(タンパク質の量)が低下することを意味してよい。「遺伝子の発現が低下する」ことには、同遺伝子が全く発現していない場合が含まれる。なお、「遺伝子の発現が低下する」ことを、「遺伝子の発現が弱化される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タンパク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のコード領域に遺伝子の発現が低下するような変異を導入することによっても達成できる。例えば、遺伝子のコード領域のコドンを、宿主においてより低頻度で利用される同義コドンに置き換えることによって、遺伝子の発現を低下させることができる。また、例えば、後述するような遺伝子の破壊により、遺伝子の発現自体が低下し得る。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより達成できる。「遺伝子が破壊される」とは、正常に機能するタンパク質を産生しないように同遺伝子が改変されることを意味する。「正常に機能するタンパク質を産生しない」ことには、同遺伝子からタンパク質が全く産生されない場合や
、同遺伝子から分子当たりの機能(活性や性質)が低下又は消失したタンパク質が産生される場合が含まれる。
、同遺伝子から分子当たりの機能(活性や性質)が低下又は消失したタンパク質が産生される場合が含まれる。
遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることにより達成できる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1〜2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272: 8611-8617 (1997), Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515 (1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839 (1991))。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、遺伝子の部分配列を欠失し、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該欠失型遺伝子を含む組換えDNAで宿主を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の野生型遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の野生型遺伝子を欠失型遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。欠失型遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97: 6640-6645 (2000))、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組み合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法などがある(米国特許第6303383号、特開平05-007491号)。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、それら複数のサブユニットの全てを改変してもよく、一部のみを改変してもよい。すなわち、例えば、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。また、タンパク質
に複数のアイソザイムが存在する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、複数のアイソザイムの全ての活性を低下させてもよく、一部のみの活性を低下させてもよい。すなわち、例えば、それらのアイソザイムをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。
に複数のアイソザイムが存在する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、複数のアイソザイムの全ての活性を低下させてもよく、一部のみの活性を低下させてもよい。すなわち、例えば、それらのアイソザイムをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が低下したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が低下したことは、同遺伝子の転写量が低下したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が低下したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子が破壊されたことは、破壊に用いた手段に応じて、同遺伝子の一部または全部の塩基配列、制限酵素地図、または全長等を決定することで確認できる。
γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を培養することにより、γ−グルタミルバリン合成酵素を発現させることができる。その際、必要に応じて、遺伝子の発現誘導を行う。宿主の培養条件や遺伝子の発現誘導の条件は、マーカーの種類、プロモーターの種類、および宿主の種類等の諸条件に応じて適宜選択すればよい。培養に用いる培地は、宿主が増殖でき、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素を発現できるものであれば特に制限されない。培地としては、例えば、炭素源、窒素源、イオウ源、無機イオン、及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、糖蜜、でんぷんの加水分解物等の糖類、グリセロール、エタノール等のアルコール類、フマル酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類が挙げられる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水が挙げられる。
イオウ源としては、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫黄化合物が挙げられる、
無機イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、カリウムイオン、鉄イオン、リン酸イオンが挙げられる。
その他の有機成分としては、有機微量栄養源が挙げられる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1などの要求物質や、それらを含む酵母エキス等が挙げられる。
培養温度は、例えば、20℃〜45℃、好ましくは24℃〜45℃、より好ましくは30℃〜37℃であってよい。培養は、通気培養が好ましい。その際の酸素濃度は、例えば、飽和濃度に対して5〜50%に、好ましくは10%程度に調節してよい。培養中のpHは、5〜9が好ましい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば炭酸カルシウム、アンモニアガス、アンモニア水等、を使用することができる。
上記のような条件下で、好ましくは10時間〜120時間程度培養することにより、γ−グルタミルバリン合成酵素を含む培養物が得られる。γ−グルタミルバリン合成酵素は、例えば、宿主の菌体内に蓄積し得る。「菌体」は、宿主の種類に応じて、適宜「細胞」と読み替えてよい。尚、使用する宿主及びγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の設計によっては、ペリプラズムにγ−グルタミルバリン合成酵素を蓄積させることや、菌体外にγ−グルタミルバリン合成酵素を分泌生産させることも可能である。
γ−グルタミルバリン合成酵素は、菌体等に含まれたまま使用してもよく、適宜、菌体等から分離精製し粗酵素画分又は精製酵素として使用してもよい。また、γ−グルタミルバリン合成酵素は、遊離の状態で利用されてもよいし、樹脂等の固相に固定化された固定化酵素の状態で利用されてもよい。
例えば、宿主の菌体内にγ−グルタミルバリン合成酵素が蓄積する場合、適宜、菌体を破砕、溶解、または抽出等し、γ−グルタミルバリン合成酵素を回収することができる。菌体は、遠心分離等により培養物から回収することができる。細胞の破砕、溶解、または抽出等は、公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、例えば、超音波破砕法、ダイノミル法、ビーズ破砕、フレンチプレス破砕、リゾチーム処理が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、例えば、培地にγ−グルタミルバリン合成酵素が蓄積する場合、遠心分離等により培養上清を取得し、培養上清からγ−グルタミルバリン合成酵素を回収することができる。
γ−グルタミルバリン合成酵素の精製は、酵素の精製に用いられる公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点沈殿が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。γ−グルタミルバリン合成酵素の精製は、所望の程度に行うことができる。例えば、GGT等のγ−グルタミルペプチドの分解に関与する成分がγ−グルタミルバリン合成酵素と共存している場合には、そのような成分を除去するのが好ましい。
精製されたγ−グルタミルバリン合成酵素は、本発明の方法における「γ−グルタミルバリン合成酵素」として利用できる。
また、精製されたγ−グルタミルバリン合成酵素に限られず、γ−グルタミルバリン合成酵素を含有する任意の画分を本発明の方法における「γ−グルタミルバリン合成酵素」として利用してもよい。すなわち、本発明の方法における「γ−グルタミルバリン合成酵素」とは、そのような画分に含有されるものであってよい。γ−グルタミルバリン合成酵素を含有する画分は、γ−グルタミルバリン合成酵素がGluおよびValに作用できるように含有される限り特に制限されない。そのような画分としては、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主(γ−グルタミルバリン合成酵素を有する宿主)の培養
物、同培養物から回収した菌体(培養菌体)、同菌体の破砕物、同菌体の溶解物、同菌体の抽出物(無細胞抽出液)、同菌体をアクリルアミドやカラギーナン等の担体で固定化した固定化菌体等の菌体処理物、同培養物から回収した培養上清、それらの部分精製物(粗精製物)、それらの組み合わせが挙げられる。これらの画分は、いずれも、単独で利用されてもよいし、精製されたγ−グルタミルバリン合成酵素と共に利用されてもよい。
物、同培養物から回収した菌体(培養菌体)、同菌体の破砕物、同菌体の溶解物、同菌体の抽出物(無細胞抽出液)、同菌体をアクリルアミドやカラギーナン等の担体で固定化した固定化菌体等の菌体処理物、同培養物から回収した培養上清、それらの部分精製物(粗精製物)、それらの組み合わせが挙げられる。これらの画分は、いずれも、単独で利用されてもよいし、精製されたγ−グルタミルバリン合成酵素と共に利用されてもよい。
<3>グルタチオン合成酵素およびその製造
「グルタチオン合成酵素(glutathione synthase)」は、通常、γ-Glu-CysとGlyとATPを基質として、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)とADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を有する酵素(EC 6.3.2.3)として知られている。同活性を、「グルタチオン合成酵素活性」ともいう。
「グルタチオン合成酵素(glutathione synthase)」は、通常、γ-Glu-CysとGlyとATPを基質として、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)とADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を有する酵素(EC 6.3.2.3)として知られている。同活性を、「グルタチオン合成酵素活性」ともいう。
また、γ-Glu-ValとGlyとATPを基質として、γ-Glu-Val-GlyとADPとリン酸を生成する反応を触媒する活性を、「γ−グルタミルバリルグリシン合成酵素(gamma-Glutamylvalylglycine synthethase)活性」または「γ-Glu-Val-Gly生成(合成)活性」ともいう。
本発明において、グルタチオン合成酵素としては、γ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性を有するものを用いる。すなわち、本発明において、「グルタチオン合成酵素」とは、γ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性を有するタンパク質をいう。
本発明において、グルタチオン合成酵素は、γ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性を有する限り、γ−グルタミルバリルグリシン以外のγ−グルタミルトリペプチドを生成する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。すなわち、例えば、グルタチオン合成酵素は、グルタチオン合成酵素活性を有していてもよく、有していなくてもよい。
グルタチオン合成酵素のγ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性は、例えば、反応液組成を12.5 mMγ-Glu-Val、12.5 mM Gly、12.5 mM ATP、12.5 mM MgS04、2 mMジチオスレイトール、100 mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、反応温度37℃、反応時間1分〜50時間として、適切な量のグルタチオン合成酵素を用いて測定することができる。本条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Val-Glyを生成する酵素活性を1 Uのγ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性とする。
グルタチオン合成酵素としては、gshB遺伝子によりコードされるGshBタンパク質やGSH2遺伝子によりコードされるGsh2タンパク質が挙げられる。gshB遺伝子としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌のgshB遺伝子が挙げられる。GSH2遺伝子としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属酵母のGSH2遺伝子が挙げられる。また、グルタチオン合成酵素としては、WO2013/054447に記載の変異型グルタチオン合成酵素も挙げられる。エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のgshB遺伝子の塩基配列は、GenBank accession NC_000913.3としてNCBIデータベースに登録されているゲノム配列中の3,089,900〜3,090,850位の配列に相当する。MG1655株(エシェリヒア・コリK-12 W3110株においても同一)のgshB遺伝子の塩基配列を配列番号9に示す。また、同遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号10に示す。すなわち、グルタチオン合成酵素は、例えば、配列番号9に示す塩基配列を有する遺伝子にコードされるタンパク質であってよい。また、グルタチオン合成酵素は、例えば、配列番号10に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。グルタチオン合成酵素は、γ−グルタミルバリルグリシン合成酵素活性を有する限り、上記グルタチオン合成酵素のバリアントであってもよい。グルタチオン合成酵素やそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素やそれをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。なお、「gshB遺伝子」および「GshBタンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したgshB遺伝子およびGshB
タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。また、「GSH2遺伝子」および「Gsh2タンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したGSH2遺伝子およびGsh2タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。グルタチオン合成酵素は、他のペプチドとの融合タンパク質であってもよい。融合タンパク質については、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素における融合タンパク質に関する記載を準用できる。
タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。また、「GSH2遺伝子」および「Gsh2タンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したGSH2遺伝子およびGsh2タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。グルタチオン合成酵素は、他のペプチドとの融合タンパク質であってもよい。融合タンパク質については、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素における融合タンパク質に関する記載を準用できる。
グルタチオン合成酵素は、グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子(「グルタチオン合成酵素遺伝子」ともいう)を有する宿主にグルタチオン合成酵素遺伝子を発現させることにより製造できる。なお、グルタチオン合成酵素遺伝子を有する宿主を、「グルタチオン合成酵素を有する宿主」ともいう。また、グルタチオン合成酵素遺伝子の発現を、「グルタチオン合成酵素の発現」ともいう。グルタチオン合成酵素遺伝子を有する宿主は、本来的にグルタチオン合成酵素遺伝子を有するものであってもよく、グルタチオン合成酵素遺伝子を有するように改変されたものであってもよい。本来的にグルタチオン合成酵素遺伝子を有する宿主としては、上記gshB遺伝子を有するエシェリヒア・コリや上記GSH2遺伝子を有するサッカロマイセス・セレビシエ等の微生物が挙げられる。グルタチオン合成酵素遺伝子を有するように改変された宿主としては、グルタチオン合成酵素遺伝子が導入された宿主が挙げられる。また、本来的にグルタチオン合成酵素遺伝子を有する宿主を、グルタチオン合成酵素遺伝子の発現が増大するよう改変してもよい。グルタチオン合成酵素遺伝子の導入等の宿主の改変については、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の導入等の宿主の改変に関する記載を準用できる。グルタチオン合成酵素遺伝子を発現するための宿主は、γ−グルタミルシステイン合成酵素の活性が低下するように改変されていてもよい。また、グルタチオン合成酵素遺伝子を発現するための宿主は、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)等のγ−グルタミルペプチドの分解に関与するタンパク質の活性が低下するように改変されていてもよい。また、グルタチオン合成酵素は、グルタチオン合成酵素遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることによっても製造できる。
グルタチオン合成酵素遺伝子を有する宿主を利用したグルタチオン合成酵素の製造については、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する宿主を利用したγ−グルタミルバリン合成酵素の製造に関する記載を準用できる。製造されたグルタチオン合成酵素(精製されたグルタチオン合成酵素やグルタチオン合成酵素を含有する画分)は、本発明の方法における「グルタチオン合成酵素」として利用できる。なお、グルタチオン合成酵素は、単独で製造してもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素とまとめて製造してもよい。例えば、グルタチオン合成酵素遺伝子とγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子の両方を有する宿主にそれらの遺伝子を発現させることにより、グルタチオン合成酵素とγ−グルタミルバリン合成酵素をまとめて製造することができる。
<4>γ−グルタミルバリルグリシン(γ-Glu-Val-Gly)の製造法
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用したγ-Glu-Valの製造法やγ−グルタミルバリン合成酵素を利用したγ-Glu-Val-Glyの製造法を提供する。これらの方法を総称して、「本発明の方法」ともいう。
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用したγ-Glu-Valの製造法やγ−グルタミルバリン合成酵素を利用したγ-Glu-Val-Glyの製造法を提供する。これらの方法を総称して、「本発明の方法」ともいう。
<4−1>酵素法
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用してγ-Glu-Val-Glyを酵素的に製造する方法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(酵素法)」ともいう。
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用してγ-Glu-Val-Glyを酵素的に製造する方法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(酵素法)」ともいう。
本発明においては、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用することにより、GluとValとを反応させ、γ-Glu-Valを生成することができる。すなわち、本発明は、(A)γ−グル
タミルバリン合成酵素をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程、を含むγ-Glu-Valの製造法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Valの製造法(酵素法)」ともいう。生成したγ-Glu-Valは、適宜、反応液から回収することができる。
タミルバリン合成酵素をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程、を含むγ-Glu-Valの製造法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Valの製造法(酵素法)」ともいう。生成したγ-Glu-Valは、適宜、反応液から回収することができる。
さらに、生成したγ-Glu-Valを原料としてγ-Glu-Val-Glyを製造することができる。γ-Glu-Valを原料としてγ-Glu-Val-Glyを製造する方法としては、グルタチオン合成酵素を利用する方法が知られている(特開2012-85637)。具体的には、グルタチオン合成酵素を利用することにより、γ-Glu-ValとGlyとを反応させ、γ-Glu-Val-Glyを生成することができる。すなわち、本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(酵素法)の一態様(「第1の態様」ともいう)は、(A)γ−グルタミルバリン合成酵素をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程、および(B)グルタチオン合成酵素を工程(A)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyに作用させることによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法である。
第1の態様において、工程(A)と工程(B)は、それぞれ別個に実施してもよく、一部または全部の期間において同時に実施してもよい。すなわち、例えば、工程(A)と工程(B)を同時に開始してもよく、工程(A)の進行中または完了後に工程(B)を開始してもよい。反応開始時にγ−グルタミルバリン合成酵素、グルタチオン合成酵素、Glu、Val、およびGlyを反応系に共存させることで、工程(A)と工程(B)を同時に開始することができる。また、グルタチオン合成酵素および/またはGlyが反応系に共存していない条件下で工程(A)を開始し、工程(A)の進行中または完了後にグルタチオン合成酵素および/またはGlyを反応系に共存させることで、工程(B)を開始することができる。また、工程(A)で生成したγ-Glu-Valを回収し、回収したγ-Glu-Valを用いて工程(B)を実施してもよい。γ-Glu-Valは、適宜、精製、希釈、濃縮、乾燥、溶解等の処理に供してから、工程(B)に用いてもよい。
なお、本発明のγ-Glu-Valの製造法(酵素法)の工程(A)は、例えば、第1の態様の工程(A)を単独で実施するのと同様の態様で実施できる。
また、本発明においては、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を利用することにより、GluとValとGlyとを反応させ、γ-Glu-Val-Glyを生成することができる。すなわち、本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(酵素法)の別の態様(「第2の態様」ともいう)は、(C)γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を、Glu、Val、およびGlyに作用させることにより、γ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法である。第2の態様においては、γ−グルタミルバリン合成酵素、グルタチオン合成酵素、Glu、Val、およびGlyを反応系に共存させることにより、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を、Glu、Val、およびGlyにまとめて作用させ、γ-Glu-Val-Glyを製造することができる。
本発明の方法において、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を総称して「酵素」ともいう。Glu、Val、およびGlyを総称して「アミノ酸」ともいう。γ-Glu-Valおよびγ-Glu-Val-Glyを総称して「ペプチド」ともいう。Glu、Val、Gly、およびγ-Glu-Valを総称して「基質」ともいう。「基質」には、特記しない限り、さらにATPを含めてよい。酵素とそれに対応する基質との反応を「酵素反応」ともいう。
本発明の方法に用いられる各酵素の態様は上述した通りである。すなわち、各酵素としては、例えば、精製された酵素、酵素を含有する任意の画分、またはそれらの組み合わせを用いることができる。各酵素としては、1種の酵素を用いてもよく、2種またはそれ以上の酵素を組み合わせて用いてもよい。
アミノ酸としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。アミノ酸の製造方法は特に制限されず、例えば、公知の方法を利用できる。アミノ酸は、例えば、化学合成、酵素反応、またはその組み合わせにより製造することができる。また、アミノ酸は、例えば、当該アミノ酸の生産能を有する微生物を培養し、培養物から当該アミノ酸を回収することにより、製造することができる。アミノ酸の生産能を有する微生物としては、例えば、後述するようなアミノ酸生産菌を利用できる。また、アミノ酸は、例えば、当該アミノ酸を含有する農水畜産物から回収することにより、製造することができる。アミノ酸としては、所望の程度に精製された精製品を用いてもよく、当該アミノ酸を含有する素材を用いてもよい。アミノ酸を含有する素材は、酵素が当該アミノ酸に作用できる態様で当該アミノ酸を含有する限り特に制限されない。アミノ酸を含有する素材として、具体的には、例えば、当該アミノ酸の生産能を有する微生物を培養して得られた培養物、該培養物から分離した培養上清、該培養物から分離した菌体、それらの濃縮物(濃縮液)や濃縮乾燥物等の処理物が挙げられる。
本発明の方法において、アミノ酸およびペプチドは、いずれも、特記しない限り、フリー体、もしくはその塩、またはそれらの混合物であってよい。すなわち、「アミノ酸」という用語は、特記しない限り、フリー体のアミノ酸、もしくはその塩、またはそれらの混合物を意味してよい。また、「ペプチド」という用語は、特記しない限り、フリー体のペプチド、もしくはその塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩は、化学的に許容されるものであれば特に制限されない。また、製造されるγ-Glu-Val-Glyを経口用途(例えば飲食品への添加用途)に用いる場合、γ-Glu-Val-Glyの塩は、化学的に許容される可食性のものであれば特に制限されない。「化学的に許容される可食性の塩」として、具体的には、例えば、カルボキシル基等の酸性基に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミン酸との塩を挙げることができる。また、「化学的に許容される可食性の塩」として、具体的には、例えば、塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
酵素反応は、酵素と基質を反応液中に共存させることにより達成できる。すなわち、酵素反応は、適当な反応液中で実施できる。酵素反応は、バッチ式で実施してもよく、カラム式で実施してもよい。バッチ式の場合は、反応容器内の反応液中で、酵素と基質を混合することにより、酵素反応を実施できる。酵素反応は、静置で実施してもよく、撹拌や振盪下で実施してもよい。カラム式の場合は、固定化菌体又は固定化酵素を充填したカラムに基質を含有する反応液を通液することにより、酵素反応を実施できる。反応液としては、必要な成分を含有する、水や緩衝液等を用いることができる。反応液は、例えば、酵素、基質、ATP、2価の金属イオンを含有していてよい。酵素反応に用いられる成分の組み合わせは、実施する工程の種類およびその実施態様(複数の工程を同時に実施するか等)に応じて適宜選択することができる。
γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素は、いずれも、酵素反応にATPを利用する。よって、反応系には、ATPを適宜供給する。すなわち、反応系(反応液)は、ATPを含有していてよい。前記工程(A)〜(C)は、いずれも、ATPの存在下で実施することができる。ATPの供給方法は、酵素反応にATPを利用できる限り特に制限されない
。ATPは、例えば、粉末あるいは水溶液等の任意の形態で、反応液に添加することができる。また、ATPは、例えば、ATPを生成または再生する方法により反応系に供給されてもよい。ATPを生成または再生する方法としては、コリネバクテリウム属細菌を利用して炭素源からATPを供給させる方法(Hori, H et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 48(6): 693-698 (1997))、酵母菌体とグルコースを利用してATPを再生する方法(Yamamoto, S et
al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 69(4): 784-789 (2005))、ホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼを利用してATPを再生する方法(C. Aug'e and Ch. Gautheron,
Tetrahedron Lett. 29:789-790 (1988))、ポリリン酸とポリリン酸キナーゼを利用してATPを再生する方法(Murata, K et al., Agric. Biol. Chem. 52(6): 1471-1477 (1988))等が知られている。
。ATPは、例えば、粉末あるいは水溶液等の任意の形態で、反応液に添加することができる。また、ATPは、例えば、ATPを生成または再生する方法により反応系に供給されてもよい。ATPを生成または再生する方法としては、コリネバクテリウム属細菌を利用して炭素源からATPを供給させる方法(Hori, H et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 48(6): 693-698 (1997))、酵母菌体とグルコースを利用してATPを再生する方法(Yamamoto, S et
al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 69(4): 784-789 (2005))、ホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼを利用してATPを再生する方法(C. Aug'e and Ch. Gautheron,
Tetrahedron Lett. 29:789-790 (1988))、ポリリン酸とポリリン酸キナーゼを利用してATPを再生する方法(Murata, K et al., Agric. Biol. Chem. 52(6): 1471-1477 (1988))等が知られている。
また、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素は、通常、酵素反応に2価の金属イオンを要求する。よって、反応系(反応液)は、2価の金属イオンを含有していてよい。前記工程(A)〜(C)は、いずれも、2価の金属イオンの存在下で実施することができる。2価の金属イオンは、γ−グルタミルバリン合成酵素活性が得られるものであれば特に制限されない。2価の金属イオンとしては、Mg2+やMn2+が挙げられ、好ましい2価の金属イオンとしては、Mn2+が挙げられる。2価の金属イオンの濃度は、例えば、1〜200mMであってよい。
反応条件(反応液のpH、反応温度、反応時間、基質や酵素等の各種成分の濃度等)は、γ-Glu-Val-Glyが生成する限り特に制限されない。
反応液のpHは、例えば、通常6.0〜10.0、好ましくは6.5〜9.0であってよい。
反応温度は、例えば、通常15〜50℃、好ましくは15〜45℃、より好ましくは20〜40℃であってよい。
反応時間は、第1の態様の工程(A)および工程(B)のそれぞれについて、例えば、5分〜200時間であってよい。反応時間は、第2の態様の工程(C)について、例えば、5分〜200時間であってよい。反応液の通液速度は、例えば、反応時間が上記例示した反応時間の範囲となるような速度であってよい。
反応液中の各基質の濃度は、例えば、通常0.1〜2000mM、好ましくは1〜2000mM、より好ましくは10〜1000mMであってよい。
反応液中の各基質のモル比は、第1の態様の工程(A)については、例えば、通常、Glu:Val:ATP=1:1:1であってよく、任意の基質の比率を0.1〜10に変化させてもよい。すなわち、例えば、Glu:Val:ATP=0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10であってよい。反応液中の各基質のモル比は、第1の態様の工程(B)については、例えば、通常、γ-Glu-Val:Gly:ATP=1:1:1であってよく、任意の基質の比率を0.1〜10に変化させてもよい。すなわち、例えば、γ-Glu-Val:Gly:ATP=0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10であってよい。反応液中の各基質のモル比は、第2の態様の工程(C)については、例えば、通常、Glu:Val:Gly:ATP=1:1:1:2であってよく、任意の基質の比率を0.1〜10に変化させてもよく、ATPの比率を0.2〜20に変化させてもよい。すなわち、例えば、Glu:Val:Gly:ATP=0.1〜10:0.1〜10:0.1〜10:0.2〜20であってよい。なお、第1の態様において工程(A)と工程(B)を同時に実施する場合、第1の態様における各基質のモル比については、適宜、第2の態様における各基質のモル比を参考にしてもよい。
酵素の使用量は、例えば、酵素活性に基づいて設定することができる。γ−グルタミルバリン合成酵素の使用量は、GluおよびValの合計量1 mmolに対して、例えば、γ-Glu-Val
生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。ここでいう「γ-Glu-Val生成活性」とは、適切な条件、例えば、Mg2+またはMn2+の存在下、特にMn2+の存在下、pH7.0〜9.0、特にpH7.0、で測定されたγ-Glu-Val生成活性であってよい。グルタチオン合成酵素の使用量は、第1の態様の工程(B)については、γ-Glu-ValおよびGlyの合計量1 mmolに対して、例えば、γ-Glu-Val-Gly生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。グルタチオン合成酵素の使用量は、第2の態様の工程(C)については、Gluの半量、Valの半量、およびGlyの全量の合計量1 mmolに対して、例えば、γ-Glu-Val-Gly生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。なお、第1の態様において工程(A)と工程(B)を同時に実施する場合、第1の態様におけるグルタチオン合成酵素の使用量については、適宜、第2の態様におけるグルタチオン合成酵素の使用量を参考にしてもよい。
生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。ここでいう「γ-Glu-Val生成活性」とは、適切な条件、例えば、Mg2+またはMn2+の存在下、特にMn2+の存在下、pH7.0〜9.0、特にpH7.0、で測定されたγ-Glu-Val生成活性であってよい。グルタチオン合成酵素の使用量は、第1の態様の工程(B)については、γ-Glu-ValおよびGlyの合計量1 mmolに対して、例えば、γ-Glu-Val-Gly生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。グルタチオン合成酵素の使用量は、第2の態様の工程(C)については、Gluの半量、Valの半量、およびGlyの全量の合計量1 mmolに対して、例えば、γ-Glu-Val-Gly生成活性に換算して、通常0.01〜1000 U、好ましくは0.1〜500 U、より好ましくは0.1〜100 Uであってよい。なお、第1の態様において工程(A)と工程(B)を同時に実施する場合、第1の態様におけるグルタチオン合成酵素の使用量については、適宜、第2の態様におけるグルタチオン合成酵素の使用量を参考にしてもよい。
いずれの態様においても、酵素反応の過程において、基質、酵素、および/またはその他の成分を単独で、あるいは任意の組み合わせで、追加的に反応系に添加してもよい。これらの成分は、1回または複数回添加されてもよく、連続的に添加されてもよい。また、反応条件は、酵素反応の開始から終了まで均一であってもよく、酵素反応の過程において変化してもよい。「反応条件が酵素反応の過程において変化する」とは、反応条件が時間的に変化することに限られず、反応条件が空間的に変化することを含む。「反応条件が空間的に変化する」とは、例えば、カラム式で酵素反応を実施する場合に、反応温度や酵素濃度等の反応条件が流路上の位置に応じて異なっていることをいう。
このようにして酵素反応を実施することにより、γ-Glu-Val-Glyを含有する反応液が得られる。γ-Glu-Val-Glyが生成したことは、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、HPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。γ-Glu-Val-Glyは、適宜、反応液から回収することができる。γ-Glu-Val-Glyの回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー、溶液からの結晶化、再結晶が挙げられる。これらの手法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。回収されるγ-Glu-Val-Glyは、γ-Glu-Val-Gly以外の成分、例えばγ-Glu-Val-Glyの製造に用いられた成分や水分等、を含んでいてもよい。γ-Glu-Val-Glyは、所望の程度に精製されていてよい。γ-Glu-Val-Glyは、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上の純度に精製されてよい。また、γ-Glu-Valの回収も、γ-Glu-Val-Glyの回収と同様に行うことができる。
<4−2>発酵法
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用してγ-Glu-Val-Glyを発酵により製造する方法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(発酵法)」ともいう。
本発明は、γ−グルタミルバリン合成酵素を利用してγ-Glu-Val-Glyを発酵により製造する方法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(発酵法)」ともいう。
本発明においては、γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物を利用することにより、GluとValからγ-Glu-Valを発酵生産することができる。すなわち、本発明は、(A)γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物を培地で培養することによりGluおよびValからγ-Glu-Valを生成する工程、を含むγ-Glu-Valの製造法を提供する。同方法を、「本発明のγ-Glu-Valの製造法(発酵法)」ともいう。生成したγ-Glu-Valは、適宜、培養物から回収することができる。
さらに、グルタチオン合成酵素を有する微生物を利用することにより、γ-Glu-ValとGlyからγ-Glu-Val-Glyを発酵生産することができる。すなわち、本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(発酵法)の一態様(「第3の態様」ともいう)は、(A)γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物を培地で培養することによりGluおよびValからγ-Glu-Valを生成する工程、および(B)グルタチオン合成酵素を有する微生物を培地で培養することにより工程(A)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyからγ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法である。
第3の態様において、工程(A)と工程(B)は、それぞれ別個に実施してもよく、一部または全部の期間において同時に実施してもよい。すなわち、例えば、工程(A)と工程(B)を同時に開始してもよく、工程(A)の進行中または完了後に工程(B)を開始してもよい。また、第3の態様において、工程(A)と工程(B)は、γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物と、それとは別個の、グルタチオン合成酵素を有する微生物を用いて実施してもよく、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素の両方を有する単一の微生物を用いて実施してもよい。例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素の両方を有する微生物を利用し、Glu、Val、およびGlyが利用可能な状態で培養を実施すれば、工程(A)と工程(B)を同時に実施することができる。また、工程(A)で生成したγ-Glu-Valを回収し、回収したγ-Glu-Valを培地に添加して工程(B)を実施してもよい。γ-Glu-Valは、適宜、精製、希釈、濃縮、乾燥、溶解等の処理に供してから、工程(B)に用いてもよい。
なお、本発明のγ-Glu-Valの製造法(発酵法)の工程(A)は、例えば、第3の態様の工程(A)を単独で実施するのと同様の態様で実施できる。
また、本発明においては、γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素の両方を有する微生物を利用することにより、GluとValとGlyとからγ-Glu-Val-Glyを発酵生産することができる。すなわち、本発明のγ-Glu-Val-Glyの製造法(発酵法)の別の態様(「第4の態様」ともいう)は、(C)γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を有する微生物を培地で培養することによりGlu、Val、およびGlyからγ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法である。
発酵法において、酵素、アミノ酸、ペプチド、基質、酵素反応等の用語は、酵素法と同様の意味で使用する。また、γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物、グルタチオン合成酵素を有する微生物、およびγ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を有する微生物を総称して「微生物」ともいう。
基質となる各アミノ酸の供給方法は、酵素反応に当該アミノ酸を利用できる限り特に制限されない。各アミノ酸は、例えば、各工程で用いられる微生物により生合成されてもよく、培地に添加されてもよく、その組み合わせであってもよい。すなわち、例えば、Glu、Val、およびGlyの全てが微生物により生合成されてもよく、Glu、Val、およびGlyの全てが培地に添加されてもよい。また、例えば、Glu、Val、およびGlyの内、1種または2種のアミノ酸が微生物により生合成され、他のアミノ酸が培地に添加されてもよい。Glu、Val、およびGlyのいずれも、微生物により生合成され、且つ、培地に添加されてもよい。
すなわち、本発明のγ-Glu-Valの製造法(発酵法)の一態様は、例えば、(A1)γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物をGluおよびValを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程、を含むγ-Glu-Valの製造法であってもよく、(A2)γ−グルタミルバリン合成酵素を有し、且つ、GluおよびValの生産能を有する微生物を培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程、を含むγ-Glu-Valの製造法であって
もよい。
もよい。
また、第3の態様の一態様は、例えば、(A1)と(A2)のいずれか、および、(B1)と(B2)のいずれかを含むγ-Glu-Val-Glyの製造法であってもよい:
(A1)γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物をGluおよびValを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程;
(A2)γ−グルタミルバリン合成酵素を有し、且つ、GluおよびValの生産能を有する微生物を培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程;
(B1)グルタチオン合成酵素を有する微生物を工程(A1)または(A2)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程;
(B2)グルタチオン合成酵素を有し、且つ、Glyの生産能を有する微生物を工程(A1)または(A2)で生成したγ-Glu-Valを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程。
(A1)γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物をGluおよびValを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程;
(A2)γ−グルタミルバリン合成酵素を有し、且つ、GluおよびValの生産能を有する微生物を培地で培養することによりγ-Glu-Valを生成する工程;
(B1)グルタチオン合成酵素を有する微生物を工程(A1)または(A2)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程;
(B2)グルタチオン合成酵素を有し、且つ、Glyの生産能を有する微生物を工程(A1)または(A2)で生成したγ-Glu-Valを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程。
また、第4の態様の一態様は、例えば、(C1)γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を有する微生物をGlu、Val、およびGlyを含有する培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法であってもよく、(C2)γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を有し、且つ、Glu、Val、およびGlyの生産能を有する微生物を培地で培養することによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程、を含むγ-Glu-Val-Glyの製造法であってもよい。
γ−グルタミルバリン合成酵素を有する微生物としては、上述したようなγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子を有する微生物を、そのまま、あるいは適宜改変して用いることができる。グルタチオン合成酵素を有する微生物としては、上述したようなグルタチオン合成酵素遺伝子を有する微生物を、そのまま、あるいは適宜改変して用いることができる。γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素を有する微生物としては、上述したようなγ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子とグルタチオン合成酵素遺伝子の両方を有する微生物を、そのまま、あるいは適宜改変して用いることができる。
アミノ酸の生産能を有する微生物は、本来的にアミノ酸の生産能を有するものであってもよく、アミノ酸の生産能を有するように改変されたものであってもよい。アミノ酸の生産能を有する微生物は、微生物にアミノ酸生産能を付与することにより、または、微生物のアミノ酸生産能を増強することにより、取得できる。γ−グルタミルバリン合成酵素遺伝子および/またはグルタチオン合成酵素遺伝子の導入等の酵素生産能の付与または増強と、アミノ酸生産能の付与または増強とは、いずれを先に実施してもよい。すなわち、γ−グルタミルバリン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素を有し、且つ、アミノ酸の生産能を有する微生物は、γ−グルタミルバリン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素を有する微生物を、アミノ酸生産能を有するように改変することにより取得してもよく、アミノ酸生産能を有する微生物を、γ−グルタミルバリン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素を有するように改変することにより取得してもよい。L−アミノ酸生産能の付与または増強は、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法により行うことができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。そのような方法としては、例えば、栄養要求性変異株の取得、L−アミノ酸のアナログ耐性株の取得、代謝制御変異株の取得、L−アミノ酸の生合成系酵素の活性が増強された組換え株の創製が挙げられる。また、L−アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL−アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL−アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下させることによっても行うことができる。
L−グルタミン酸生産菌としては、コリネバクテリウム・グルタミカム(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム)ATCC13869株より取得されたodhA欠損株に、V197M変異を有するmviN遺伝子を導入した組換え株(特開2010-161970)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来gltA(クエン酸シンターゼ)遺伝子を導入したパントエア・アグロメランスAJ13355株(特許第4285582号)、グルタミンシンセターゼの397位のチロシン残基が他のアミノ酸残基に置換されたグルタミンシンセターゼを有するエシェリヒア属細菌(米国特許出願公開第2003-0148474号明細書)などが例示できる。L−バリン生産菌としては、エシェリヒア・コリVL1970株(米国特許第5658766号)、エシェリヒア属に属し、生育のためにリポ酸を要求する変異および/またはH+-ATPaseを欠損する変異を有するエシェリヒア属細菌、および、これらの性質に加えて、少なくともilvG、ilvM、ilvE、およびilvDの各遺伝子を発現し、且つ、スレオニンデアミナーゼ活性を発現しないilvGMEDAオペロンを含むDNA断片が細胞内に導入されたエシェリヒア属細菌(WO96/06926)などが例示できる。すなわち、例えば、これらの改変を微生物に導入することにより、アミノ酸生産能を付与または増強できる。
また、微生物は、培地中に添加されたアミノ酸を取り込む能力が向上するよう改変されていてもよい。また、微生物は、その利用態様に応じて、生成したγ-Glu-Valを菌体外に排出する能力が向上するよう改変されていてもよく、培地中に添加されたγ-Glu-Valを取り込む能力が向上するよう改変されていてもよい。また、微生物は、生成したγ-Glu-Val-Glyを菌体外に排出する能力が向上するよう改変されていてもよい。
培養条件は、微生物が増殖でき、γ-Glu-Val-Glyが生成する限り、特に制限されない。培養条件については、上述したγ−グルタミルバリン合成酵素の製造法における培養条件の記載を参照できる。
γ−グルタミルバリン合成酵素およびグルタチオン合成酵素は、いずれも、酵素反応にATPを利用する。よって、反応系には、ATPを適宜供給する。すなわち、反応系は、ATPを含有していてよい。前記工程(A)〜(C)は、いずれも、ATPの存在下で実施することができる。ATPの供給方法は、酵素反応にATPを利用できる限り特に制限されない。ATPは、例えば、各工程で用いられる微生物により生成されてもよく、上述したようなATPを生成または再生する方法により反応系に供給されてもよい。ATPの供給には、例えば、通常のエネルギー代謝によるATP再生系が強化された微生物やポリリン酸キナーゼの作用でATPを再生する能力を有する微生物を培養液中に共存させる方法等の共培養系(特公平7-16431、特公平6-69386)が好適に利用できる。
また、例えば、γ−グルタミルバリン合成酵素は、通常、酵素反応に2価の金属イオンを要求する。よって、反応系は、2価の金属イオンを含有していてよい。前記工程(A)〜(C)は、いずれも、2価の金属イオンの存在下で実施することができる。
アミノ酸を含有する培地を用いる場合、アミノ酸は、培養開始時から培地に含まれていてもよく、培養途中の任意の時点で培地に添加されてもよい。添加のタイミングは、培養時間等の諸条件に応じて適宜変更できるが、一例としては、培養終了時の好ましくは0〜50時間前、より好ましくは0.1〜24時間前、特に好ましくは0.5〜6時間前であってよい。アミノ酸は、1回または複数回添加されてもよく、連続的に添加されてもよい。培地中の各アミノ酸の濃度は、例えば、通常0.1〜2000mM、好ましくは1〜2000mM、より好ましくは10〜1000mMであってよい。また、培地中の各基質のモル比については、酵素法における反応液中の各基質のモル比に関する記載を準用してもよい。
このようにして培養を行うことにより、γ-Glu-Val-Glyを含む培養物が得られる。γ-Glu-Val-Glyが生成したことは、上述したように、化合物の検出または同定に用いられる公
知の手法により確認することができる。γ-Glu-Val-Glyは、適宜、培養物から回収することができる。γ-Glu-Val-Glyの回収は、上述したように、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。なお、菌体内にL−アミノ酸が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から、イオン交換樹脂法などによってγ-Glu-Val-Glyを回収することができる。
知の手法により確認することができる。γ-Glu-Val-Glyは、適宜、培養物から回収することができる。γ-Glu-Val-Glyの回収は、上述したように、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。なお、菌体内にL−アミノ酸が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から、イオン交換樹脂法などによってγ-Glu-Val-Glyを回収することができる。
また、微生物が酵母であり、γ-Glu-Val-Glyが菌体内に蓄積する場合、同酵母は、例えば、γ-Glu-Val-Glyを含有する酵母エキスの製造に利用できる。すなわち、本発明は、同酵母を原料として用いて酵母エキスを調製することを含む、γ-Glu-Abuを含有する酵母エキスの製造法を提供する。酵母からの酵母エキスの調製は、通常の酵母エキスの調製と同様にして行えばよい。酵母エキスは、酵母菌体を熱水抽出したものを処理したものでもよいし、酵母菌体を消化したものを処理したものでもよい。また、必要に応じて、得られた酵母エキスを濃縮してもよいし、乾燥し粉末の形態にしてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
〔実施例1〕ybdK遺伝子発現プラスミドの構築
エシェリヒア・コリMG1655(ATCC 47076)のybdK遺伝子の発現プラスミドpSF12-EcybdKを以下の手順で構築した。ybdK遺伝子の塩基配列およびそれによりコードされるYBDKアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および配列番号4に示す。なお、pSF12-EcybdKによれば、YBDKはC末端にHisタグが付加された形態で発現する。
エシェリヒア・コリMG1655(ATCC 47076)のybdK遺伝子の発現プラスミドpSF12-EcybdKを以下の手順で構築した。ybdK遺伝子の塩基配列およびそれによりコードされるYBDKアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および配列番号4に示す。なお、pSF12-EcybdKによれば、YBDKはC末端にHisタグが付加された形態で発現する。
初めに、エシェリヒア・コリW3110株(ATCC 27325)由来のγ-グルタミルトランスペプチダーゼをコードするggt遺伝子とrpoHプロモーターを含むpUC18由来プラスミドpSF12_ggt(WO2013/051685A1)をNdeI/PstI消化し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社製)にて精製し、約3.0kbの断片を得た。
次に、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型として、PrimeSTAR Maxポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用して、製造元のプロトコールに従ってPCRを行い、ybdK遺伝子を含む約1.2kbの断片を得た。プライマーとしては、配列番号1および配列番号2のプライマーの組み合わせ(表1)を使用した。
次に、pSF12_ggtをNdeI/PstI消化して得られた約3.0kbの断片とPCRで得られたybdK遺伝子を含む約1.2kbの断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて、製造元のプロトコールに従って融合させた。該反応液でエシェリヒア・コリJM109株を形質転換し、100μg/mLのアンピシリンナトリウム(Amp)を含むLB寒天培地(1.0%(w/v)ペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、1.0%(w/v)NaCl、1.5%(w/v)寒天)に塗布後、30℃で20時間培養した。生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、3130ジェネティックアナライザー(Life Technologies社製)を用いて塩基配列の確認を行い、目的の構造を持つプラスミドをpSF12-EcybdKと命名した。
〔実施例2〕C末端にHisタグ付加されたエシェリヒア・コリMG1655株由来YBDKの精製
実施例1で取得したpSF12-EcybdKプラスミドを有するJM109株を100μg/mLのAmpを含むLB培地3 mLに接種し、30℃、120往復/分で20時間振とう培養することで前培養液を得た。得られた前培養液150μLを、100μg/mLのAmpを含むTB培地(1.2%(w/v)トリプトン、2.4%(w/v)酵母エキス、0.4%(w/v)グリセロール、0.23%(w/v)KH2PO4、1.25%(w/v)K2HPO4)15 mLを張り込んだ70 mL容の試験管(φ25mm)に接種し、30℃、120往復/分で20時間振とう培養した。遠心分離(4℃、12,000×g、5分)によって集菌し、得られた菌体を0.2 mLの緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)に懸濁し、冷却しながら超音波破砕処理に供して菌体を破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(4℃、29,100×g、10分)し、得られた上清を無細胞抽出液とした。
実施例1で取得したpSF12-EcybdKプラスミドを有するJM109株を100μg/mLのAmpを含むLB培地3 mLに接種し、30℃、120往復/分で20時間振とう培養することで前培養液を得た。得られた前培養液150μLを、100μg/mLのAmpを含むTB培地(1.2%(w/v)トリプトン、2.4%(w/v)酵母エキス、0.4%(w/v)グリセロール、0.23%(w/v)KH2PO4、1.25%(w/v)K2HPO4)15 mLを張り込んだ70 mL容の試験管(φ25mm)に接種し、30℃、120往復/分で20時間振とう培養した。遠心分離(4℃、12,000×g、5分)によって集菌し、得られた菌体を0.2 mLの緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)に懸濁し、冷却しながら超音波破砕処理に供して菌体を破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(4℃、29,100×g、10分)し、得られた上清を無細胞抽出液とした。
得られた無細胞抽出液を、予め緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)で平衡化したNi Sepharose 6 Fast Flowビーズ(GEヘルスケア社製)にアプライし、溶離緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl,
250 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)により酵素を溶出し、活性画分を得た。この活性画分を精製YBDKとして、以降の実験に用いた。
250 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)により酵素を溶出し、活性画分を得た。この活性画分を精製YBDKとして、以降の実験に用いた。
〔実施例3〕C末端にHisタグ付加されたエシェリヒア・コリW3110株由来GSHBの精製
エシェリヒア・コリW3110株(ATCC 27325)のグルタチオン合成酵素をコードするgshB遺伝子の発現プラスミドpET-EcgshBを特開2012-85637に記載の方法で構築した。続いて、pET-EcgshBを用いてエシェリヒア・コリBL21(DE3) (Life Technologies社製)を形質転換し、エシェリヒア・コリBL21(DE3)/pET-EcgshBを得た。gshB遺伝子の塩基配列およびそれによりコードされるGSHBのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9および配列番号10に示す。なお、pET-EcgshBによれば、GSHBはC末端にHisタグが付加された形態で発現する。
エシェリヒア・コリW3110株(ATCC 27325)のグルタチオン合成酵素をコードするgshB遺伝子の発現プラスミドpET-EcgshBを特開2012-85637に記載の方法で構築した。続いて、pET-EcgshBを用いてエシェリヒア・コリBL21(DE3) (Life Technologies社製)を形質転換し、エシェリヒア・コリBL21(DE3)/pET-EcgshBを得た。gshB遺伝子の塩基配列およびそれによりコードされるGSHBのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9および配列番号10に示す。なお、pET-EcgshBによれば、GSHBはC末端にHisタグが付加された形態で発現する。
本菌株を特開2012-85637と同様の方法で培養した。遠心分離(12,000×g、10分)により集菌し、生理食塩水(0.85%(w/v)NaCl)で洗菌した後、緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH
8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)を用いて菌体懸濁液を調製した。菌体懸濁液を超音波破砕処理に供して菌体を破砕し、遠心分離(29,100×g、15分)し、得られた上清を無細胞抽出液とした。
8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)を用いて菌体懸濁液を調製した。菌体懸濁液を超音波破砕処理に供して菌体を破砕し、遠心分離(29,100×g、15分)し、得られた上清を無細胞抽出液とした。
得られた無細胞抽出液を、予め緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl, 10 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)で平衡化したHisTALON 5 mLカラム(クロンテック社製)にアプライし、溶離緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 8.0), 300 mM NaCl, 200 mM イミダゾール, 15 % グリセロール)により酵素を溶出し、活性画分を得た。得られた活性画分を、PD-10カラム(GE ヘルスケア社製)を用いマニュアルに従ってバッファー交換(20 mM Tris-HCl(pH8.0), 300 mM NaCl, 15%グリセロール)した。バッファー交換後の酵素溶液を精製GSHBとして以降の実験に用いた。
〔実施例4〕精製YBDKによるγ−グルタミルジペプチドの生成
実施例2で取得した精製YBDKについて、γ-Glu-Val合成活性およびγ-Glu-Gly合成活性を測定した。
実施例2で取得した精製YBDKについて、γ-Glu-Val合成活性およびγ-Glu-Gly合成活性を測定した。
γ-Glu-Val合成活性の測定条件は以下の通りである。反応液組成は10 mM グルタミン酸、10 mM バリン、10 mM ATP、10 mM MnS04、100 mM Tris-HCl (pH7.0)とした。反応液量は0.2 mLとし、精製酵素を添加することによって酵素反応を開始した。この時、精製YBDKは0.1 g/Lとなるように反応液に添加した。反応温度は30℃とし、反応時間は30分間とした。反応を停止する際には、反応液0.2 mLに対して、0.2 mLの200 mM 硫酸を添加した。反応終了後に、HPLCにて生成したγ-Glu-Valを定量した。本条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Valを生成する酵素活性を1 Uのγ-Glu-Val合成活性とした。
γ-Glu-Valの定量条件は以下の通りである。カラムには、Phenomenex社製Synergi 4μ Hydro-RP 80A(粒子径4μm、内径4.6 mm、長さ250 mm)を用いた。溶離液には、溶離液A(50 mMリン酸二水素ナトリウム(pH2.5、リン酸によってpH調整))、及び、溶離液B(溶離液Aとアセトニトリルの1:1(v/v)の混合液)を93:7(v/v)の比率で混合した混合液を用いた。流速は1.0 mL/min、カラム温度は40℃、UV検出波長は210 nmとした。
γ-Glu-Gly合成活性を測定する場合には、上記反応液中のバリンをグリシンに置き換え、精製YBDKを0.025 g/Lとなるように反応液に添加し、酵素反応を実施した。上記の手順で反応を停止した後、生成したγ-Glu-Glyを定量した。本条件で1分間に1μmolのγ-Glu-Glyを生成する酵素活性を1 Uのγ-Glu-Gly合成活性とした。
γ-Glu-Glyの定量条件は以下の通りである。カラムには、ジーエルサイエンス社製Inertsil ODS-3(粒子径5μm、内径4.6 mm、長さ250 mm)を用いた。溶離液には、溶離液C(100 mMリン酸二水素カリウム、5 mMオクタンスルホン酸ナトリウム(pH2.2、リン酸によってpH調整))を用いた。流速は1.5 mL/min、カラム温度は40℃、UV検出波長は210 nmとした。
以上の方法により、γ-Glu-Val生成量及びγ-Glu-Gly生成量を定量し、比活性を算出した。結果を表2に示す。表中、「反応(A)」はγ-Glu-Gly合成活性の比活性、「反応(B)」はγ-Glu-Val合成活性の比活性、「(B)/(A)」は、γ-Glu-Gly合成活性の比活性に対するγ-Glu-Val合成活性の比活性の比率をそれぞれ示す。
〔実施例5〕精製YBDKおよび精製GSHBを用いたアミノ酸からのγ-Glu-Val-Glyの生成
実施例2で取得した精製YBDKおよび実施例3で取得した精製GSHBを用い、アミノ酸からのγ-Glu-Val-Gly(CAS 38837-70-6、Gluvalicineとも呼ぶ)の生成を検討した。γ-Glu-Val-Glyの構造式を下記式(I)に示す。
実施例2で取得した精製YBDKおよび実施例3で取得した精製GSHBを用い、アミノ酸からのγ-Glu-Val-Gly(CAS 38837-70-6、Gluvalicineとも呼ぶ)の生成を検討した。γ-Glu-Val-Glyの構造式を下記式(I)に示す。
反応液組成は10 mM グルタミン酸、10 mM バリン、10 mM グリシン、20 mM ATP、10 mM
MnS04、100 mM Tris-HCl (pH7.0)とした。反応液量は0.2 mLとし、精製YBDKを0.1 g/L、精製GSHBを0.05 g/Lとなるように反応液に添加することによって酵素反応を開始した。反応温度は30℃とし、反応時間は24時間とした。反応を停止する際には、反応液0.2 mLに対して、0.2 mLの200mM 硫酸を添加した。反応停止後、実施例4におけるγ-Glu-Valの定量と同様の方法でγ-Glu-Val-Glyを定量し、生成量を算出した。その結果と、実施例4の表2で示したγ-Glu-Gly合成活性に対するγ-Glu-Val合成活性の比率(B)/(A)を表3に示す。
MnS04、100 mM Tris-HCl (pH7.0)とした。反応液量は0.2 mLとし、精製YBDKを0.1 g/L、精製GSHBを0.05 g/Lとなるように反応液に添加することによって酵素反応を開始した。反応温度は30℃とし、反応時間は24時間とした。反応を停止する際には、反応液0.2 mLに対して、0.2 mLの200mM 硫酸を添加した。反応停止後、実施例4におけるγ-Glu-Valの定量と同様の方法でγ-Glu-Val-Glyを定量し、生成量を算出した。その結果と、実施例4の表2で示したγ-Glu-Gly合成活性に対するγ-Glu-Val合成活性の比率(B)/(A)を表3に示す。
<配列表の説明>
配列番号1,2:プライマー
配列番号3:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のybdK遺伝子の塩基配列
配列番号4:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のYBDKのアミノ酸配列
配列番号5:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のgshA遺伝子の塩基配列
配列番号6:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のGSHAのアミノ酸配列
配列番号7:エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のggt遺伝子の塩基配列
配列番号8:エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のGGTのアミノ酸配列
配列番号9:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のgshB遺伝子の塩基配列
配列番号10:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のGSHBのアミノ酸配列
配列番号1,2:プライマー
配列番号3:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のybdK遺伝子の塩基配列
配列番号4:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のYBDKのアミノ酸配列
配列番号5:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のgshA遺伝子の塩基配列
配列番号6:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のGSHAのアミノ酸配列
配列番号7:エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のggt遺伝子の塩基配列
配列番号8:エシェリヒア・コリK-12 MG1655株のGGTのアミノ酸配列
配列番号9:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のgshB遺伝子の塩基配列
配列番号10:エシェリヒア・コリK-12 W3110株のGSHBのアミノ酸配列
Claims (16)
- 下記工程(A)を含む、γ-Glu-Valおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。 - 下記工程(A)および(B)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(A)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質をGluおよびValに作用させることによりγ-Glu-Valを生成する工程;および
(B)グルタチオン合成酵素を工程(A)で生成したγ-Glu-ValおよびGlyに作用させることによりγ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。 - 下記工程(C)を含む、γ-Glu-Val-Glyおよび/またはその塩の製造方法:
(C)下記(a)、(b)、又は(c)に記載のタンパク質およびグルタチオン合成酵素を、Glu、Val、およびGlyに作用させることにより、γ-Glu-Val-Glyを生成する工程:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対し90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、γ−グルタミルバリン合成酵素活性を有するタンパク質。 - 前記タンパク質におけるγ−グルタミルグリシン合成酵素活性に対するγ−グルタミルバリン合成酵素活性の比率が2.0以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質が、精製酵素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質が、固定化酵素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質が、該タンパク質を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記グルタチオン合成酵素が、該酵素を有する微生物の培養物、培養菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質およびグルタチオン合成酵素が、両酵素を有する微生物の培養物、培養
菌体、または該菌体の処理物に含有されるものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。 - 前記微生物が、gshA遺伝子にコードされるタンパク質の活性が低下するように改変されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記微生物が、γ−グルタミルトランスフェラーゼの活性が低下するように改変されている、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属細菌またはコリネ型細菌である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記微生物が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記工程がATPの存在下で実施される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記工程が2価の金属イオンの存在下で実施される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記工程がMn2+の存在下で実施される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
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JP2015175105A JP2017046673A (ja) | 2015-09-04 | 2015-09-04 | γ−グルタミルバリン合成酵素、及び、γ−グルタミルバリルグリシンの製造法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP3345996A4 (en) * | 2015-09-04 | 2019-03-06 | Ajinomoto Co., Inc. | METHOD FOR PRODUCING GAMMA-GLUTAMYL-VALYL-GLYCIN |
JP2021524260A (ja) * | 2018-05-23 | 2021-09-13 | 味の素株式会社 | 腸内細菌科を用いたトリペプチドγ−GLU−VAL−GLYの製造方法 |
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2015
- 2015-09-04 JP JP2015175105A patent/JP2017046673A/ja active Pending
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EP3345996A4 (en) * | 2015-09-04 | 2019-03-06 | Ajinomoto Co., Inc. | METHOD FOR PRODUCING GAMMA-GLUTAMYL-VALYL-GLYCIN |
US11788109B2 (en) | 2015-09-04 | 2023-10-17 | Ajinomoto Co., Inc. | Microorganism and method for producing gamma-glutamyl-valyl-glycine |
JP2021524260A (ja) * | 2018-05-23 | 2021-09-13 | 味の素株式会社 | 腸内細菌科を用いたトリペプチドγ−GLU−VAL−GLYの製造方法 |
JP7447810B2 (ja) | 2018-05-23 | 2024-03-12 | 味の素株式会社 | 腸内細菌科を用いたトリペプチドγ-GLU-VAL-GLYの製造方法 |
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