JP5501976B2 - 癌治療薬としてのキネシン阻害剤 - Google Patents

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Description

本発明はKSP阻害剤を投与することにより癌のような増殖障害を処置するための方法に関する。
キネシン類は微小管に沿って移動するときにアデノシン三リン酸を加水分解し、機械的力を産生するモータータンパク質である。これらのタンパク質は約350個のアミノ酸残基を有するモータードメインを含有することを特徴とする。いくつかのキネシンモータードメインの結晶構造が解明されている。
現在では約100個のキネシン関連タンパク質(KRP)が同定されている。キネシン類は細胞小器官および小胞の輸送ならびに小胞体の維持を含む種々の細胞生物学的過程に関与する。いくつかのKRPは紡錘体の微小管と、または染色体と直接的に相互作用し、そして細胞周期の有糸分裂段階の間で中心的な役割を果たすと思われる。これらの有糸分裂性KRPは癌治療薬の開発のために特に興味深い。
キネシンスピンドルタンパク質(KSP)(Eg5、HsEg5、KNSL1またはKIF11としても公知)は紡錘体に局在し、そして双極性紡錘体の形成および/または機能に必要であることが知られているいくつかのキネシン様モータータンパク質のうちの1つである。
1995年に、KSPのC末端に対して指向する抗体を使用するKSPの枯渇が、単一星状体(monoastral)微小管配列を伴う有糸分裂におけるHeLa細胞を抑止することが示された(Blangy et al., Cell 83:1159-1169(1995))。KSPの相同体であると考えられるbimCおよびcut7遺伝子における変異は、アスペルギルス・ニデュランス(Enos, A.P., and N.R. Morris, Cell 60:1019-1027(1990))および分裂酵母(Hagan, I., and M. Yanagida, Nature 347:563-566(1990))における中心体分離の失敗を引き起こす。タンパク質レベルでKSP発現を低減するATRA(オールトランスレチノイン酸)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するKSPの枯渇のいずれかでの細胞の処置により、DAN−G膵臓癌細胞における有意な成長阻止が表され、KSPがオールトランスレチノイン酸の抗増殖作用に関与し得ることが示された(Kaiser, A., et al., J. Biol. Chem. 274, 18925-18931(1999))。興味深いことに、アフリカツメガエルオーロラ関連タンパク質キナーゼpEg2は、XlEg5と会合し、そしてリン酸化することが示された(Giet, R., et al., J. Biol. Chem. 274:15005-15013(1999))。オーロラ関連キナーゼの潜在的基質は癌薬物開発にとりわけ興味深い。例えばオーロラ1および2キナーゼはタンパク質およびRNAレベルで過剰発現され、そして遺伝子は結腸癌患者において増幅される。
KSPに関する第1の細胞透過性小型分子阻害因子「単一星状体(monoastral)」は、タキサン類およびビンカアルカロイドのような従来の化学療法剤で行われるような微小管重合化に影響を及ぼすことなく、単極紡錘体を伴う細胞を抑止することが示された(Mayer, T.U., et al., Science 286:971-974(1999))。単一星状体は表現型ベースのスクリーニングにおいて阻害剤として同定され、そしてこの化合物は抗癌薬の開発のリード化合物として役立ち得ることが示唆された。この阻害はKSPとのアデノシン三リン酸相互作用に関して競合しないと決定され、そして急速な可逆性であることが見出された(DeBonis, S., et al., Biochemistry 42:338-349(2003);Kapoor, T.M., et al., J. Cell Biol. 150:975-988(2000))。
改良された化学療法剤の重要性に鑑みて、KSPおよびKSP関連タンパク質のインビボで有効な阻害剤であるKSP阻害剤が必要とされている。いくつかのKSP阻害剤が以前に報告されている。例えば第WO06/002236号およびPCT/US2006/031129号はKSPの阻害剤であることが示されたあるクラスの化合物を開示している。イスピネシブ(SB−715992)はKSP阻害剤として作用することが示されているCytokineticsの臨床候補である。本発明は改善された活性を有する新しいKSP阻害剤およびこれらのKSP阻害剤を使用する新しい方法を提供する。加えて流出ポンプとして作用するP糖タンパク質のその発現のために、パクリタキセルのようなその他の治療薬に対して耐性である癌細胞に対して有効である新規KSP阻害剤を提供する。
発明の要旨
本発明は哺乳動物に治療上有効量の構造Iの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここで構造Iの化合物は:
Figure 0005501976
(式中、
は所望によりヒドロキシまたはハロで置換されたアミノアシル、アシルアミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アリールおよびアルキルからなる群から選択され;
は水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され;
はL−Aであり;
Lは−S(O)−(ここでqは1または2である)および所望によりヒドロキシ、ハロまたはアシルアミノで置換されたCからCアルキレンからなる群から選択され;
はアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルからなる群から選択され;
は複素環式、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、その全ては所望により−(R)(ここでRはここに定義されるとおりであり、そしてmは1から3までの整数である)で置換されていてよく;
はシアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CF、アルコキシ、ハロおよびヒドロキシからなる群から選択され;ただしmが2または3である場合、各Rは同じかまたは異なってよく;
はRまたはRのいずれかであり;
は水素、直鎖アルキル、−アルキレン−アミノアシル、−アルキレン−オキシアシル、−アルキレン−アシルオキシ、−アルキレン−ヒドロキシ、−[アルキレン]−窒素含有複素環式、−[アルキレン]−窒素含有置換複素環式、−[アルキレン]−窒素含有ヘテロアリール、−[アルキレン]−窒素含有置換ヘテロアリールおよび−[アルキレン]−NR1011(ここでpは0または1である)からなる群から選択され、そしてRアルキレンは所望によりアミノ、置換アミノ、ヒドロキシ、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、カルボキシルエステル、オキソ、スピロシクロアルキルおよびハロからなる群から選択される前記の置換基の1つで一または二置換された直鎖状アルキレンであり;
10およびR11は独立して水素、アルキル、置換アルキル、−S(O)−アルキル、−S(O)−置換アルキル、−S(O)−アルキル、−S(O)−置換アルキル、複素環式、置換複素環式、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルからなる群から選択されるか、またはR10が水素である場合、R11はヒドロキシ、アルコキシもしくは置換アルコキシであり;
は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環式、置換複素環式、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
はRおよび−C(O)−N(R13)(R14)からなる群から選択され;
は水素および−X−A(ここでXは−C(O)−、−C(S)−、−S(O)−、−S(O)−および−S(O)−N(R)−(ここでRは水素またはアルキルである)からなる群から選択される)からなる群から選択され;
Aは水素、所望により置換されたアルキル、所望により置換されたアルコキシ、所望により置換されたアリール、カルボキシル、カルボキシルエステル、アミノアシル、所望により置換されたヘテロアリール、所望により置換された複素環式および所望により置換されたシクロアルキルからなる群から選択され、ここで所望により置換された基はアルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シアノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルエステル、オキソ(Aが所望により置換されたアリールまたは所望により置換されたヘテロアリールである場合を除く)、ハロ、ヒドロキシ、−S(O)−R(ここでRはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールである)およびニトロからなる群から選択される1から4個の置換基で置換され;そして
13およびR14は独立して水素、ヒドロキシ、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式からなる群から選択され、ただしR13もしくはR14のうちの1つのみがヒドロキシであるか;またはR13およびR14はそこに懸垂する窒素原子と一緒に結合して複素環式もしくは置換複素環式を形成する)
である。
1つの態様では、本発明は哺乳動物に治療上有効量の構造Iの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここで該固形腫瘍は肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、上咽頭癌、扁平上皮癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌、膵臓癌、頭頸部扁平上皮癌および肉腫からなる群から選択される。
別の態様では固形腫瘍は乳癌である。さらなる態様では乳癌は転移性乳癌である。
1つの態様では本発明は哺乳動物に治療上有効量の構造Iの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここで該固形腫瘍は胃癌である。
別の態様では固形腫瘍は前立腺癌である。1つの態様では、本発明は腫瘍が多剤耐性腫瘍である処置の方法を提供する。別の態様では、多剤耐性腫瘍は上昇したレベルのP−糖タンパク質を発現する。いくつかの態様では、処置は式(I):
(式中、
はC1−C6アルキルもしくはシクロアルキルであり;そして/または
はHもしくはC1−C4アルキルであり;そして/または
は所望により置換されたアリール基であり;そして/または
は所望により置換されたベンジルもしくはアリールメチル基であり;そして/または
はアミノ置換C2−C6アルキレンであり、それはさらにヒドロキシ、C1−C4アルキル、C1−C4ハロアルキル、C1−C4ヒドロキシアルキル、オキソもしくはハロで置換されていてよく;そして/または
は−X−A(ここで−Xは−C(O)であり、そしてAはアルキルである)であり、それはアミノ、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、置換アミノもしくはS(O)(ここでRはC1−C4アルキルである)から選択される4つまでの基で置換されていてよい)
の化合物の使用を含む。
1つの態様では、本発明は哺乳動物に治療上有効量の構造Iの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここで該血液癌はホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、毛様細胞白血病および多発性骨髄腫からなる群から選択される。哺乳動物はヒトであり得る。
さらなる態様では血液癌は急性骨髄性白血病である。別の態様では血液癌は多発性骨髄腫である。
好ましい態様では、式Iの化合物は以下の好ましい構造的特色のうちの少なくとも1つを有する:
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRはC1−C6アルキルまたはシクロアルキル基である。
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRはHまたはC1−C4アルキルである。
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRは所望により置換されたアリール基であり;ある態様ではそれはハロ置換フェニル環である。
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRは所望により置換されたベンジルまたはアリールメチル(−CH−アリール)基であり;ある態様ではそれは非置換ベンジルである。
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRはアミノ置換C2−C6アルキレンであり、それはさらにヒドロキシ、C1−C4アルキル、C1−C4ハロアルキル、C1−C4ヒドロキシアルキル、オキソまたはハロで置換されていてよい。
これらの好ましい態様のいくつかでは、式Iの化合物におけるRは−X−A(ここで−Xは−C(O)であり、そしてAはアルキルである)であり、それはアミノ、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、置換アミノもしくはS(O)(ここでRはC1−C4アルキルである)から選択される4つまでの基で置換されていてよい。
具体的な好ましい態様では、式Iの化合物はR、R、R、R、RおよびRに関して前記で定義された好ましい基のうちの少なくとも2つを含む。さらなる態様ではそれはこれらの好ましい基のうちの少なくとも3つを含む。さらなる態様では、式Iの化合物はその好ましい基のうちの少なくとも4つを含む。
本発明の方法における使用に関して企図される化合物のさらなる態様は、「置換イミダゾール誘導体」と題され、そして2006年5月1日公開の第WO2006/002236号にて開示され、その公報をその全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。化合物のなおさらなる態様は「KSP阻害剤としての置換イミダゾール化合物」と題された2006年8月9日出願のPCT/US2006/031129号にて開示され、それをその全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。化合物のなおさらなる態様は「EG−5阻害剤としての環化誘導体」と題され、そして2007年1月5日出願の米国仮出願第60/883740号にて開示され、それをその全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。
別の態様では、哺乳動物に治療上有効量の式IIの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選ばれる増殖性疾患を処置するための方法が提供され、ここで式IIの化合物は:
Figure 0005501976
(式中、
1cはエチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、−CH(CH)O(オキセタン−3−イル)および−CCH(CH)O(3−メチルオキセタン−3−イル)からなる群から選択され;
2cは水素またはメチルであり;
15、R16、R17およびR18は各々独立してH、ハロ、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキルおよびCNから選択され;
19、R20およびR21は各々独立してHまたは所望により置換されたC1−C10アシルであり;
22はC1−C4ハロアルキルであり;
pは1から3までの整数であり;そして
qは1−3の整数である)
または薬学的に許容されるその塩である。
式IIの化合物のいくつかの態様では、
1cはエチル、イソプロピルおよびt−ブチルからなる群から選択され;
2cはHであり;
15、R17およびR18は各々独立してH、ハロ、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキルおよびCNから選択され;
16はHまたはC1−C4アルキルであり;
19、R20およびR21は各々独立してHまたは所望により置換されたC1−C10アシルであり;
22はC1−C4ハロアルキルであり;
pは2であり;そして
qは1である。
これらの化合物はまた対応する薬学的に許容される塩をも含む。
式IIおよび式IIa−IIc(下記)の化合物は式Iの化合物のサブセットであり、そしてアシル部分における遊離ヒドロキシル基または遊離ヒドロキシル基のプロドラッグ型の存在を特徴とし、すなわちこれらの化合物においてR19はHであるか、またはR19は、インビボで加水分解してR19がHである化合物を提供することができるアシル基である。R19が適当なアシル基である化合物は、体内で容易に加水分解してR19がHである化合物を生成するプロドラッグである。R19がHである化合物は、前立腺癌のようなある症状を処置するために驚くほど良好な活性を有することが見出されており、そしてP−gpが発現される腫瘍に対して、およびある血液癌においてとりわけ有効である。とりわけこれらの化合物は、一般的な耐性メカニズムであるP−gpを発現する薬物耐性腫瘍に対して有効であるが、ヒドロキシルを伴わない極めて類似する化合物でさえかかる薬物耐性腫瘍に対してほとんど効果がない。遊離ヒドロキシルは、酸化およびグリコシル化のような代謝の問題のために薬物候補において望ましくない特色であることは一般的であるが、驚くべきことに、式IIまたはIIa、IIbもしくはIIcの化合物は、遊離ヒドロキシルを含有せず、そして容易に加水分解して遊離ヒドロキシル(R19=H)を提供することができない類似の化合物よりも、ある腫瘍に対してインビボでさらに有効であることが見出された。薬物耐性腫瘍に対するその有効性により、これらの式IIの化合物は癌の処置にとりわけ有用になる。
さらなる態様では、哺乳動物に治療上有効量の式IIの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法が提供され、ここで固形腫瘍は肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、上咽頭癌、扁平上皮癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌、膵臓癌、脳癌、頭頸部扁平上皮癌および肉腫からなる群から選択される。ある態様では、腫瘍は多剤耐性のもの、または上昇したレベルのP−糖タンパク質(P−gp)を発現するものである。
さらなる態様では、固形腫瘍が乳癌である方法が提供される。さらなる態様では、乳癌は転移性乳癌である。
別の態様では、固形腫瘍は胃癌である。さらなる態様では、固形腫瘍は前立腺癌である。1つの態様では、本発明は式IIの投与を含む、固形または血液癌から選択される増殖性疾患の処置の方法が提供され、ここで腫瘍は多剤耐性癌である。いくつかの態様では、血液悪性腫瘍は急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキキンリンパ腫(NHL)およびホジキキンリンパ腫(HL)から選択される。ある態様では、悪性腫瘍は多剤耐性のもの、または上昇したレベルのP−糖タンパク質(P−gp)を発現するものである。
さらなる態様では、哺乳動物に治療上有効量の式IIの化合物、その化合物の互変異性体、その化合物の薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法が提供され、ここで血液癌はホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、毛様細胞白血病および多発性骨髄腫からなる群から選択される。
さらなる態様では、該血液癌が急性骨髄性白血病である方法が提供される。別の態様では、血液癌は多発性骨髄腫である。
別の態様では、哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法が提供され、ここでその方法は式(I)または式(II)のKSP阻害剤のある量を該哺乳動物に投与することを含み、そしてさらに第2の抗癌治療薬を投与することを含む。1つの態様では、第2の抗癌治療薬は式(I)または式(II)のKSP阻害剤での処置の前に、それと一緒にまたはそれに続いて与えられる。
第2の抗癌治療薬はイリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン(gemictabine)、イマチニブ、トラスツズマブ、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、テザシタビン、シクロホスファミド、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン系、リツキシマブおよびニロチニブから選択することができる。
いくつかの態様では、第2の化合物はBcr−Abl阻害剤である。
ある態様では、Bcr−Abl阻害剤はイマチニブおよびニロチニブの群から選択される。
なおさらなる態様ではKSP阻害剤は式(I)の化合物であり、ここで:
はC1−C6アルキルもしくはシクロアルキルであり;そして/または
はHもしくはC1−C4アルキルであり;そして/または
は所望により置換されたアリール基であり;そして/または
は所望により置換されたベンジルもしくはアリールメチル基であり;そして/または
はアミノ置換C2−C6アルキレンであり、それはさらにヒドロキシ、C1−C4アルキル、C1−C4ハロアルキル、C1−C4ヒドロキシアルキル、オキソもしくはハロで置換されていてよく;そして/または
は−X−A(ここで−Xは−C(O)であり、そしてAはアルキルである)であり、それはアミノ、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、置換アミノもしくはS(O)(ここでRはC1−C4アルキルである)から選択される4つまでの基で置換されていてよい。
本発明は式(II):
Figure 0005501976
(式中、
1cはエチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、−CH(CH)O(オキセタン−3−イル)および−CCH(CH)O(3−メチルオキセタン−3−イル)からなる群から選択され;
2cは水素またはメチルであり;
15、R16、R17およびR18は各々独立してH、ハロ、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキルおよびCNから選択され;
19、R20およびR21は各々独立してHまたは所望により置換されたC1−C10アシルであり;
22はC1−C4ハロアルキルであり;
pは1から3までの整数であり;そして
qは1−3の整数である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
1つの態様では、R22はフルオロメチルである。
別の態様では、pは2である。
さらなる態様では、qは1である。
別の態様では、R2cおよびR15は各々Hである。
さらなる態様では、R17およびR18は各々ハロである。
なお別の態様では、R19、R20およびR21は各々Hである。
さらなる態様では、R19はHである。
別の態様では、R19は所望により置換されたC1−C10アシルである。
いくつかの態様では、化合物はR22、p、q、R2cおよびR17−R21に関して前記で記載された構造的特色のうちの2つまたはそれより多くを含む。いくつかの態様では化合物はこれらの構造的特色のうちの少なくとも3つを含む。これらの化合物のいくつかの好ましい態様では、R22はフルオロメチルであり、そしてpは2であり、そしてqは1であり、そしてR2cおよびR15は各々Hである。いくつかのかかる態様では、R17およびR18は各々Fを表す。そしてこれらの好ましい態様のいくつかでは、R19、R20およびR21は各々Hである。好ましくはこれらの態様では、R1cはエチル、イソプロピルおよびt−ブチルから選択される。
本発明はまた式IIa:
Figure 0005501976
の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
本発明はまた式IIb:
Figure 0005501976
の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
本発明はまた式IIc:
Figure 0005501976
の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
1つの態様では、本発明は哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここでその方法は該哺乳動物に治療上有効量の式II、IIa、IIbまたはIIcのいずれか1つの化合物、これらの化合物のうちのいずれか1つの互変異性体、これらの化合物のうちのいずれか1つの薬学的に許容される塩、その互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む。
さらなる態様では、固形腫瘍は肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、上咽頭癌、扁平上皮癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌、膵臓癌、頭頸部扁平上皮癌、脳癌および肉腫からなる群から選択される。ある態様では、固形腫瘍はその他の癌薬物に対して耐性である腫瘍である。それは薬物耐性を促進するP−gpのような流出ポンプを発現する癌、またはパクリタキセルもしくはSB−715992のような薬物での処置に対して耐性を示している癌でよい。癌細胞による流出ポンプ、とりわけP−糖タンパク質(P−gp)の過剰発現のためにパクリタキセルのような薬物に対して耐性である癌は本明細書にて実証されるような式IIの化合物に対して感受性であるが、式IIの化合物のヒドロキシルを欠如する類似の化合物はこれらの薬物耐性腫瘍において有効ではないかもしれない。式IIa、IIbおよびIIcの化合物は、P−gpを発現し、そしてその他の治療薬に対して耐性を呈する腫瘍の処置に特に有用である。これらの化合物は薬物耐性腫瘍を処置するこの予期されなかった能力のために有利である。薬物耐性腫瘍におけるその活性は式IIのアミド部分の遊離ヒドロキシルに関連すると考えられる。
別の態様では固形腫瘍は乳癌である。さらなる態様では乳癌は転移性乳癌である。
別の態様では固形腫瘍は胃癌である。
別の態様では固形腫瘍は前立腺癌である。
これらの態様の各々では、腫瘍はときにその他の薬物に対して耐性であるものである。いくつかの態様では、腫瘍は腎臓、肝臓、結腸、脳または乳癌から選択される。ある態様では、それは上昇したレベルのP−gpを発現する腫瘍である。かかる発現上昇したP−gpは自然に、またはその他の薬物での処置の結果として生じ得る。
別の態様では、本発明は哺乳動物に治療上有効量の式IIa、IIbまたはIIcのいずれか1つの化合物、これらの化合物のうちのいずれか1つの互変異性体、これらの化合物のうちのいずれか1つの薬学的に許容される塩、互変異性体の薬学的に許容される塩またはその混合物を投与することを含む、該哺乳動物における固形腫瘍または血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための方法を提供し、ここで該血液癌はホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、毛様細胞白血病および多発性骨髄腫からなる群から選択される。
別の態様では、血液癌は急性骨髄性白血病である。
別の態様では、血液癌は多発性骨髄腫である。
血液悪性腫瘍から誘導された細胞系に関する化合物IIaに対する相対感度。血液悪性腫瘍パネルにおける細胞系のCellTiter Glo(登録商標)アッセイに基づく相対感度を、パネル全体に関するlog(GI50)(GI50は50%阻止の濃度)値の代表値と、各細胞系に関するlog(GI50)値の間の差異をプロットすることにより示す;正の値(右側の棒)は代表値よりも感度が高い細胞系を示し、そして負の値(左側の棒)は代表値よりも感度が低い細胞系を示す。 化合物IIaで処理されたSUDHL−4およびRL細胞系に関するFACSによる細胞段階評価:第1欄は未処理細胞を示し、第2欄は化合物IIaを伴って24時間の後の細胞を示し、そして第3欄は化合物IIaを伴って48時間の後の細胞を示す。 化合物IIaがAML患者からのAML芽細胞に対して細胞毒性であることを示すデータ。パネルAは投薬量の関数として生存%を示す。パネルBは2週間の成長時間の後の細胞培養物を示す。パネルCは<2N、2Nまたは4N段階における細胞のパーセントを示し、化合物IIaの効果をパクリタキセルの効果と比較する。 MV4;11皮下腫瘍異種移植片モデルにおいて4日に1回を3回の用量スケジュールで投与された化合物IIaの有効性。MV4;11腫瘍は雌胸腺欠損nu/nuマウスにおいて1:1の比率のHBSSおよびMatrigel(商標)0.2ml中10セルの各マウス右側腹部への皮下注射により確立された。腫瘍が250mmに到達したとき、細胞移植後およそ24日に、マウスを腫瘍の体積に従って処置群(n=9)に無作為化した。動物にベヒクル(Captisol(登録商標))、化合物IIaまたはSB−715992(イスピネシブ、臨床試験中であるCytokineticsによるKSP阻害剤)を静脈内投与した。全て4日に1回を3回のスケジュールで投与した。(A)処置群の有効性/腫瘍体積対無作為化後の日数;(B)無作為化の日の初期体重に相対した体重変化パーセント。 KB8.5腫瘍異種移植片モデルにおいて4日に1回を3回の用量スケジュールで投与された化合物IIaの有効性。KB8.5腫瘍は雌胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories)において1:1の比率のHBSSおよびMatrigel(商標)0.2ml中5×10セルの各マウス右側腹部への皮下注射により確立された。腫瘍が300mmに到達したとき、細胞移植後およそ10日に、マウスを腫瘍の体積に従って処置群(n=9/群)に無作為化した。動物に化合物IIaまたはSB−715992を静脈内投与した。パクリタキセルを30mg/kgで腹腔内投与した。全て4日に1回を3回のスケジュールで投与した。(左)処置群の有効性/腫瘍体積対投与開始後の日数;(右)無作為化/投与開始の日の初期体重に相対した体重変化パーセント。ベヒクルおよびSB−715992と比較してp<0.05(ANOVA/Dunn法)。 KB8.5腫瘍異種移植片モデルにおいて4日に1回を3回の用量スケジュールで投与された化合物IIcの有効性。KB8.5腫瘍は雌胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories)において1:1の比率のHBSSおよびMatrigel(商標)0.2ml中5×10セルの各マウス右側腹部への皮下注射により確立された。腫瘍が代表値339mmに到達したときに、マウスを腫瘍の体積に基づいて処置群(n=9)に無作為化した。動物に化合物IIcまたはSB−715992を静脈内投与した。パクリタキセルを30mg/kgで腹腔内投与した。全て4日に1回を3回のスケジュールで投与した。(左)処置群の有効性/腫瘍体積対投与開始後の日数;(右)無作為化/投与開始の日の初期体重に相対した体重変化パーセント。化合物IIcは1.25mg/kgで第11日のベヒクル群とは統計的に異なった(p<0.05、ANOVA/Tukey検定)。 KB8.5腫瘍異種移植片モデルにおいて4日に1回を3回の用量スケジュールで投与された化合物Iaの有効性。KB8.5腫瘍は雌胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories)において1:1の比率のHBSSおよびMatrigel(商標)0.2ml中5×10セルの各マウス右側腹部への皮下注射により確立された。腫瘍が代表値285mmに到達したときに、マウスを腫瘍の体積に基づいて処置群(n=10)に無作為化した。動物に化合物IaまたはSB−715992を静脈内投与した。パクリタキセルを30mg/kgで腹腔内投与した。全て4日に1回を3回のスケジュールで投与した。(左)処置群の有効性/腫瘍体積対投与開始後の日数;(右)無作為化/投与開始の日の初期体重に相対した体重変化パーセント。ベヒクル群とは統計的に異なった群はなかった(順位によるANOVA(ANOVA on Ranks))。
本発明の態様
A.定義および概要
本明細書で使用される用語集は特定の態様を記載するだけの目的のためであり、そして本発明の範囲を限定することを意図しないことは理解されるべきである。単数表現は、文脈から他の解釈が明確に指示されない場合、複数表現を含む。本明細書および添付する請求の範囲において多くの用語が言及されているが、それは以下の意味を有すると定義されることとする:
本明細書で使用される際には「アルキル」とは1から10個の炭素原子およびさらに好ましくは1から4個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族直鎖、分岐鎖または環状ヒドロカルビル基を指す。この用語はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル等のような基により例示される。
「直鎖アルキル」なる用語は分岐していないアルキル基を指す。
「置換アルキル」とは1個以上の置換基、頻繁には1から4個、および好ましくは1から2個の置換基を有するアルキル基を指す。アルキル基に関する適当な置換基は置換または非置換アルコキシ、置換または非置換アシル、置換または非置換アシルアミノ、置換または非置換アシルオキシ、置換または非置換アミノ、置換または非置換アミノアシル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、オキソ、ヒドロキシイミノ、置換または非置換アルコキシイミノカルボキシルC1−C4エステル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換または非置換スピロシクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、−SO−アルキル、−SO−置換アルキルからなる群から選択され、ここで該置換基は本明細書で定義される。アルキル基に関する好ましい置換基にはアルコキシ、ヒドロキシ、ハロ(好ましくはFまたはCl)、シアノ、オキソ、置換または非置換アミノ、置換または非置換アシルオキシおよび置換または非置換アシルアミノが含まれる。
「ハロアルキル」なる用語は少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置き換えられているアルキル基を指す。1つの態様では、その用語はフルオロメチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル(trifluromethyl)等を指す。
「ヒドロキシアルキル」なる用語は少なくとも1個の水素原子がヒドロキシ基で置き換えられているアルキル基を指す。1つの態様では、その用語はヒドロキシメチル、1−または2−ヒドロキシエチル、1−、2−または3−ヒドロキシプロピル(hydoxypropyl)等を指す。
「アルキレン」とは好ましくは1から5個およびさらに好ましくは1から3個の直鎖または分岐鎖のいずれかである炭素原子を有する二価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語はメチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、n−プロピレン(−CHCHCH−)、イソプロピレン(−CHCH(CH)−)等のような基により例示される。「置換アルキレン」とはアルキル基に適当な置換基から選択される1個以上の置換基、好ましくは1−4個およびさらに好ましくは1−2個の置換基を有するアルキレン基を指す。
「アルコキシ」とは基「アルキル−O−」を指し、実例を挙げるとそれにはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ等が含まれる。
「置換アルコキシ」とは基「置換アルキル−O−」を指す。
「アシル」とは基H−C(O)−、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、置換アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、置換アルキニル−C(O)−シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、置換アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、置換ヘテロアリール−C(O)−、複素環式−C(O)−および置換複素環式−C(O)−を指し、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式は本明細書で定義されるとおりである。
「アミノアシル」とは基−C(O)NRRを指し、ここで各Rは独立して水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式からなる群から選択され、そしてここで2個のR基はそれらが結合する窒素原子と一緒に結合して複素環式または置換複素環式環を形成することができ;ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式は本明細書で定義されるとおりである。2個のR基が結合して環を形成する場合、頻繁にはそれは、所望によりR基上にできる置換基に従って許容されるように置換される5−6員環であり;しばしばそれはピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリンおよびピペラジンから選択される。
「アシルオキシ」とは基アルキル−C(O)O−、置換アルキル−C(O)O−、アルケニル−C(O)O−、置換アルケニル−C(O)O−、アルキニル−C(O)O−、置換アルキニル−C(O)O−、アリール−C(O)O−、置換アリール−C(O)O−、シクロアルキル−C(O)O−、置換シクロアルキル−C(O)O−、ヘテロアリール−C(O)O−、置換ヘテロアリール−C(O)O−、複素環式−C(O)O−および置換複素環式−C(O)O−を指し、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式は本明細書で定義されるとおりである。
「オキシアシル」または「カルボキシルエステル」とは基−C(O)O−アルキル、置換−C(O)O−アルキル、−C(O)O−アルケニル、−C(O)O−置換アルケニル、−C(O)O−アルキニル、−C(O)O−置換アルキニル、−C(O)O−アリール、−C(O)O−置換アリール、−C(O)O−シクロアルキル、−C(O)O−置換シクロアルキル、−C(O)O−ヘテロアリール、−C(O)O−置換ヘテロアリール、−C(O)O−複素環式および−C(O)O−置換複素環式を指し、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式は本明細書で定義されるとおりである。
「アルケニル」とは2から6個の炭素原子および好ましくは2から4個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つおよび好ましくは1つから2つの部位のアルケニル不飽和を有するアルケニル基を指す。かかる基はビニル、アリル、ブタ−3−エン−1−イル等により例示される。
「置換アルケニル」とは1個以上の、好ましくは1から4個の置換基、およびさらに好ましくは1から2個の置換基を有するアルケニル基を指す。適当な置換基にはアルキル基に関して本明細書にて記載されたものが含まれる。
「アルキニル」とは2から6個の炭素原子および好ましくは2から3個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つおよび好ましくは1つから2つの部位のアルキニル不飽和を有するアルキニル基を指す。
「置換アルキニル」とは1個以上の、好ましくは1から4個の置換基およびさらに好ましくは1から2個の置換基を有するアルキニル基を指す。適当な置換基にはアルキル基に関して本明細書にて記載されたものが含まれる。「シアノ」とは基−CNを指す。
「アミノ」とは基−NHを指す。
「置換アミノ」とは基−NR’R”を指し、ここでR’およびR”は独立して水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、−SO−アルキル、−SO−置換アルキルからなる群から選択され、そしてここでR’およびR”は、所望によりそれらに結合した窒素と一緒体となって複素環式または置換複素環式基を形成する;ただしR’およびR”は双方共に水素ではない。R’が水素であり、そしてR”がアルキルであるとき、置換アミノ基はときに本明細書ではアルキルアミノと称される。R’およびR”がアルキルである場合、置換アミノ基はときに本明細書ではジアルキルアミノと称される。一置換アミノに言及する場合、それはR’またはR”のいずれかが水素であるが、双方共にではないことを意味する。二置換アミノに言及するとき、それはR’もR”も水素ではないことを意味する。
「アシルアミノ」とは基−NRC(O)アルキル、−NRC(O)置換アルキル、−NRC(O)シクロアルキル、−NRC(O)置換シクロアルキル、−NRC(O)アルケニル、−NRC(O)置換アルケニル、−NRC(O)アルキニル、−NRC(O)置換アルキニル、−NRC(O)アリール、−NRC(O)置換アリール、−NRC(O)ヘテロアリール、−NRC(O)置換ヘテロアリール、−NRC(O)複素環式および−NRC(O)置換複素環式を指し、ここでRは水素またはアルキルであり、そしてここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式は本明細書で定義されるとおりである。
「ニトロ」とは基−NOを指す。
「シアノ」とは基−CNを指す。
「アリール」または「Ar」とは単環(例えばフェニル)または多縮合環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する6から14個までの炭素原子の一価芳香族炭素環式基を指し、ここで縮合環は、結合点が芳香族炭素原子である限り、芳香族であってもなくてもよい(例えば2−ベンゾオキサゾリノン、2H−1,4−ベンゾキサジン−3(4H)−オン−7−イル等)。好ましいアリールにはフェニルおよびナフチルが含まれる。
「置換アリール」とは1個以上の、好ましくは1から3個の置換基、およびさらに好ましくは1から2個の置換基で置換されたアリール基を指す。適当な置換基にはヒドロキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、ヘテロアリールチオ、置換ヘテロアリールチオ、シクロアルキルチオ、置換シクロアルキルチオ、複素環式チオ、置換複素環式チオ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、アミノスルホニル(NH−SO−)および置換アミノスルホニルが含まれる。
「アリールオキシ」は、例としてフェノキシ、ナフトキシ等を含む、基アリール−O−を指す。
「置換アリールオキシ」とは置換アリール−O−基を指す。
「ベンジル」とは基−CH−フェニルを指す。
「アリールメチル」とは基−CH−アリールを指す。
「カルボキシル」とは−COOHまたはその塩を指す。
「カルボキシルエステル」とは式−COORを有する基を指し、ここでRは置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである。頻繁にはRは所望により置換されたメチル、エチル、イソプロピルまたはメトキシエチルのようなC1−C4アルキル基である。
「シクロアルキル」は、例としてアダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等を含む、単または多環式環を有する3から10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。
「スピロシクロアルキル」とは以下の構造により例示されるようなスピロ結合系(唯一の共通の環員である単一原子により形成される結合系)を伴うシクロアルキル環を有する3から10個の炭素原子の環状基を指し、ここで2つの空いた結合価は一緒に接続されて環を形成する:
Figure 0005501976
「置換シクロアルキル」とはアルキル、置換アルキル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環式からなる群から選択される1から5個の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
「ハロ」または「ハロゲン」とはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指し、そして好ましくはフルオロまたはクロロである。
「ヒドロキシ」とは基−OHを指す。
「オキソ」とは基=Oを指す。
「ヘテロアリール」とは環員として酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される1から4個のヘテロ原子を含む5から10個の環原子を有する芳香族基を指す。かかるヘテロアリール基は単環(例えばピリジニルまたはフリル)または多縮合環(例えばインドリジニルまたはベンゾチエニル)を有することができ、ここで縮合環は芳香族であってもなくても、および/またはヘテロ原子を含有してもしなくてもよく、ただし付着点は芳香族ヘテロアリール基の原子を介する。1つの態様では、ヘテロアリール基の(複数の)窒素および/または硫黄環原子は所望により酸化されてN−オキシド(N→O)スルフィニルまたはスルホニル部分を提供する。好ましいヘテロアリールにはピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、オキサゾリル(ozaxolyl)、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリルおよびフラニルが含まれる。
「置換ヘテロアリール」とは置換アリールに関して定義された置換基の同じ群から選択される1から3個の置換基、好ましくは1または2個の置換基で置換されたヘテロアリール基を指す。
「窒素含有ヘテロアリール」および「窒素含有置換ヘテロアリール」とは環メンバーとして少なくとも1個の窒素環原子を含み、そして所望により硫黄、窒素または酸素等のようなその他のヘテロ原子を含むヘテロアリール基および置換ヘテロアリール基を指す。
「ヘテロアリールオキシ」とは基−O−ヘテロアリールを指し、そして「置換ヘテロアリールオキシ」とは基−O−置換ヘテロアリールを指し、ここでヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールは本明細書で定義されるとおりである。
「複素環」または「複素環式」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」とは環メンバーとして窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される1から4個のヘテロ原子を含む3から10個の環原子の融合架橋およびスピロ環系を含む単環または多縮合環を有する飽和または不飽和基を指し;融合環系では、1個以上の環は、結合点が複素環式環を介する限り、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールでよい。1つの態様では、複素環式基の(複数の)窒素および/または硫黄原子は所望により酸化されてN−オキシド、スルフィニル、スルホニル部分を提供する。
「置換複素環式」または「置換ヘテロシクロアルキル」または「置換ヘテロシクリル」とは本明細書に記載された置換基から選択される1個以上のおよび好ましくは1から3個の置換基で置換されたヘテロシクリル基を指す。適当な置換基にはアルキルおよびシクロアルキル基に関して本明細書にて記載されたものが含まれる。
ヘテロシクリルおよびヘテロアリールには、限定するものではないがアゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも称される)、1,1−ジオキソチアモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル等が含まれる。
「窒素含有複素環式」および「窒素含有置換複素環式」とは少なくとも1個の窒素環原子を含み、そして所望により環原子として硫黄、酸素等から選択されるその他のヘテロ原子を含む複素環式基および置換複素環式基を指す。
「チオール」とは基−SHを指す。
「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」とは基−S−アルキルを指す。
「置換アルキルチオ」または「置換チオアルコキシ」とは基−S−置換アルキルを指す。
「アリールチオ」とは基−S−アリールを指し、ここでアリールは前記で定義される。
「置換アリールチオ」とは基−S−置換アリールを指し、ここで置換アリールは前記で定義される。
「ヘテロアリールチオ」とは基−S−ヘテロアリールを指し、ここでヘテロアリールは前記で定義される。
「置換ヘテロアリールチオ」とは基−S−置換ヘテロアリールを指し、ここで置換ヘテロアリールは前記で定義される。
「複素環式チオ」とは基−S−複素環式を指し、そして「置換複素環式チオ」とは基−S−置換複素環式を指し、ここで複素環式および置換複素環式は前記で定義されたとおりである。
「ヘテロシクリルオキシ」とは基ヘテロシクリル−O−を指し、そして「置換ヘテロシクリルオキシ」とは基置換ヘテロシクリル−O−を指し、ここでヘテロシクリルおよび置換ヘテロシクリルは前記で定義されたとおりである。
「シクロアルキルチオ」とは基−S−シクロアルキルを指し、そして「置換シクロアルキルチオ」とは基−S−置換シクロアルキルを指し、ここでシクロアルキルおよび置換シクロアルキルは前記で定義されたとおりである。
本明細書で使用される際には「生物学的活性」とは、実施例1−13において概説するアッセイの少なくとも1つで試験される場合の阻止濃度を指す。
本明細書で使用される際には「薬学的に許容される塩」なる用語は式(I)および(II)の化合物の無毒性の酸またはアルカリ土類金属塩を指す。これらの塩を式(I)および(II)の化合物の最終の単離および精製の間にインサイチュで、または塩基もしくは酸官能基を各々適当な有機もしくは無機酸もしくは塩基と別個に反応させることにより調製することができる。代表的な薬学的に許容される塩には、限定するものではないが以下のものが含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンホラート、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバロアート(pivaloate)、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびアンデカン酸塩。また塩基性窒素含有基を塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなアルキルハロゲン化物;ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸のようなジアルキル硫酸、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルのような長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジルおよびフェネチルのようなアリールアルキルハロゲン化物等のような薬剤で第四級化することができる。それにより水溶性、油溶性または分散性生成物が得られる。
薬学的に許容される酸付加塩を形成するために用いることができる酸の例は、塩酸、硫酸およびリン酸のような無機酸ならびに酢酸、馬尿酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、コハク酸およびクエン酸のような有機酸を含む。塩基性付加塩を式(I)および(II)の化合物の最終の単離および精製の間にインサイチュで、または別個にカルボン酸部分を薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩のような適当な塩基と、またはアンモニアまたは有機第一級、第二級もしくは第三級アミンと反応させることにより調製することができる。薬学的に許容される塩には、限定するものではないがナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩等のようなアルカリおよびアルカリ土類金属ベースのカチオン、ならびに限定するものではないがアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含むアンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれる。塩基付加塩の形成に有用なその他の代表的な有機アミンにはジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等が含まれる。
本明細書で使用される際には「薬学的に許容されるエステル」なる用語は、インビボで加水分解されるエステルを指し、そしてヒト体内で分解されて親化合物またはその塩を遊離するものを含む。適当なエステルには、例えば薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、とりわけアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から誘導されるものが含まれ、ここで各アルキルまたはアルケニル部分はせいぜい6個の炭素原子を有するのが有利である。特定のエステルの代表的な例は、限定するものではないがギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルを含む。
本明細書で使用される際には「薬学的に許容されるプロドラッグ」なる用語は妥当な医学的判断の範囲内であり、過度な毒性、刺激、アレルギー性応答等を伴わずにヒトおよび下等動物の組織と接触した使用に適当であり、合理的なリスク対効果比と相応し、そしてその意図される使用に関して有効である本発明の化合物のこれらのプロドラッグ、ならびに可能な場合、本発明の化合物の双性イオン形態を指す。「プロドラッグ」なる用語は例えば血中の加水分解により、インビボで急速に変換されて前記の式の親化合物を生じる化合物を指す。考察はT. Higuchi and V. Stella, PRO−DRUGS AS NOVEL DELIVERY SYSTEMS, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびEdward B. Roche, ed., BIOREVERSIBLE CARRIERS IN DRUG DESIGN, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987(双方共に出典明示により本明細書の一部とする)にて提供される。
本明細書で使用される際には「抗癌剤」または「癌の処置のための薬剤」または「癌治療薬」とは、例として、アポトーシスを誘起する薬剤;ポリヌクレオチド(例えばリボザイム);ポリペプチド(例えば酵素);薬物;生物学的擬似物質;アルカロイド;アルキル化剤;抗腫瘍抗生物質;代謝拮抗剤;ホルモン;白金化合物;モノクローナル抗体;抗癌薬、毒素および/または放射性核種に抱合されたモノクローナル抗体;生物学的応答修飾物質(例えばインターフェロンおよびインターロイキン等);養子免疫療法剤;造血性成長因子;腫瘍細胞分化を誘起する薬剤(例えばオールトランスレチノイン酸等);遺伝子治療試薬;アンチセンス治療試薬およびヌクレオチド;腫瘍ワクチン;血管新生の阻害剤等を含む薬剤を指す。数多くのその他の薬剤が十分に当業者の範疇である。
前記で定義された全ての置換された基において、それ自体に対するさらなる置換基を伴う置換基を定義することにより到達した重合体(例えば置換アリール基でそれ自体置換された置換基として置換アリール基を有する置換アリール等)は本明細書に含まれるとは意図されない。かかる事例では、かかる置換基の最大数は3である。換言すると、前記の定義の各々は、例えば「置換アリール」基が−置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限定される限定により制限される。
同様に、前記の定義は許容できない置換パターン(例えば5個のフルオロ基で置換されたメチルまたはエテニルもしくはアセチレン型の不飽和におけるヒドロキシル基またはフェニル環上のオキソのような二価基)を含むとは意図されないことは理解される。かかる許容できない置換パターンは当業者に周知である。
本発明の化合物はその化合物における1つまたはそれより多い不斉またはキラル中心の存在のために立体異性を呈し得る。本発明は種々の立体異性体およびその混合物の各々を企図する。本発明のある化合物は不斉置換された炭素原子を含む。かかる不斉置換された炭素原子は特定の不斉置換された炭素原子での立体異性体の混合物または単一の立体異性体を含む本発明の化合物に至り得る。結果的に本発明の化合物のラセミ混合物、ジアステレオマーの混合物、単一の鏡像異性体および単一のジアステレオマーは本発明に含まれる。「S」および「R」立体配置は本明細書で使用される際には、IUPAC 1974「RECOMMENDATIONS FOR SECTION E, FUNDAMENTAL STEREOCHEMISTRY」Pure Appl. Chem. 45:13-30(1976)により定義されるとおりである。望ましい鏡像異性体を当分野において周知の方法により市販により入手可能なキラル出発材料からのキラル合成により得ることができるか、または公知の技術を用いることにより望ましい鏡像異性体を分離することにより鏡像異性体の混合物から得ることができる。式(II)の化合物のいくつかの態様に関して、化合物における少なくとも1つの立体中心に関して単一の異性体を描き;ここで特定の立体中心の単一の異性体が描かれる場合、描かれた絶対相対立体化学が好ましい態様である。具体的な立体化学が示されない場合、立体中心はRもしくはS立体配置でよいか、またはラセミ混合物を含む2つの任意の混合物でよい。
本発明の化合物はまた幾何異性を呈し得る。幾何異性体にはアルケニル、オキシム、イミンまたはアルケニレニル部分のような二重結合を有する本発明の化合物のシスおよびトランス形態が含まれる。本発明は個々の幾何異性体および立体異性体およびその混合物を含む。
本発明の化合物を当分野において公知の、およびさらに本明細書にて記載される方法により調製することができる。例えば式(I)および式(II)の化合物を作成するための方法は公開された出願PCT/US2005/022062号(第WO06/002236号)および対応する米国特許出願に記載される。式(II)の化合物の調製に適用可能なさらなる合成方法の実例を本明細書にて提供する。
式Iおよび/または式IIのあるKSP阻害剤の調製の実例を以下のスキーム1で示す。
Figure 0005501976
化合物1.1および1.2を、KIを含有するアセトン中でKCOと反応させた。KCOがより低価格であるために、および化合物1.3は水の添加でアセトン溶液から沈澱し、1.3を抽出するために水性後処理の必要性が除かれたので、KCO/アセトンの使用はCsCO/エタノールよりも優れていることが見出された。次いでケトエステル1.3をトルエン中酢酸アンモニウム(NHOAc)と共に還流してイミダゾール1.4が得られた。トルエンの使用は、Dean Starkトラップを伴うキシレン中での還流と比較して、イミダゾールのより高い収率が得られることが見出されたが、後者の方法は反応混合物からトラップへの酢酸アンモニウムの除去に至るためである。ジメチルホルムアミド中1.4の臭化ベンジルおよびKCOとの反応により1.5が得られ、それを水の添加で反応溶液から沈澱させることができる。1.5のメタノールおよび塩化アセチルでの処理により1.6のHCl塩が得られ、それを次にNaOH/メタノール溶液で滴定したときにその遊離塩基に変換した。1.1および1.2からの1.6の形成は高い純度(HPLCにより測定して>97%)および高い光学純度(>99%ee)で収率81%で進むことが見出された。
化合物1.6を還元的アミノ化条件下でアルデヒドHC(O)Rb'と、またはY−R(ここでYは離脱基である)と反応させてアミン窒素にアルキルを導入することができ、それを次にアシル化して式(I)または(II)の化合物を提供することができる。スキーム2は、還元的アミノ化工程で使用して式(I)および/または式(II)の化合物、およびとりわけ式IIaまたはIIbまたはIIcの化合物を調製することができるアルデヒドの調製を説明する。
Figure 0005501976
還元的アミノ化の後、公知のアシル化剤および条件を用いて第二級アミンをアシル化して式(I)または(II)の化合物を提供する。スキーム3はVIIIaを提供するための還元的アミノ化を説明する。アミンのアシル化、続いてフタルイミドの脱保護および遊離ヒドロキシル基上の保護基の除去により化合物IIaが提供される。ヒドロキシルに関する適当な保護基には、例えば水素化分解により除去することができるベンジルエーテルおよびヨウ化トリメチルシリルのような試薬で選択的に除去することができる炭酸アルキルが含まれる。高分解能質量分析により決定される化合物IIaの質量の測定値は[M+H]イオンに関して503.2609であったが、それは分子式C2733に合致する。
Figure 0005501976
この化合物をさらに3500−2700(br)、1641、1591、1508、1491、1162および1088cm−1での吸収帯を有するIRスペクトルを特徴とする。それはさらに以下のNMRデータを特徴とする:
Figure 0005501976
多重度:AB(AB四重線)、b(広幅)、d(二重線)、dd(二重線の二重線)、m(多重線)、s(一重線)、t(三重線)。
**19F結合した多重線の中点シフト
この分子のキラル中心の絶対立体化学は公知の出発材料または中間体のキラリティーに基づいて同定されることに留意されたい。HPLCおよびNMRデータは上記方法が化合物を単一の異性体として提供するという結論を支持する。
同じ方法を用いて、公知のキラルα−ヒドロキシアシル化剤の使用により化合物IIcを調製した。それはm/z=517.3で分子イオンM+H、および分析用HPLC Rt=3.70分(逆相)を含む割り当てられた構造に関して予期されるマススペクトルを呈した。デュアルエレクトロスプレーイオン化供給源およびAgilent1100液体クロマトグラフを伴うWaters LCT Premier質量分析器を使用してLC/ESI−MSデータを記録した。MS系の分解能はおよそ12000(FWHM定義)であった。流速1.0ml/分で、2.5分で10%から95%のグラジエントでHPLC分離を実施した。10mMギ酸アンモニウムを水相における修飾物質添加剤として使用した。スルファジメトキシン(Sigma;プロトン化分子m/z311.0814)を参照として使用し、そしてLockSpray(商標)チャネルを通して3回目のスキャン毎に獲得した。系の質量の精度は<5ppmになることが見出されている。
アシル化工程のための適当なアシル化剤および酸には適切なR基(式I参照)を有するアシルハロゲン化物、無水物および酸が含まれる。適当なアミドカップリング条件には、カルボジイミド類N−N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−N'−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)および1−エチル−3−(3'−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)のような、アミド基を形成するための種々のアミドカップリング試薬の使用が含まれる。カルボジイミド類をジメチルアミノピリジン(DMAP)または7−アザ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(Cl−HOBt)のようなベンゾトリアゾール類のような添加剤と併せて使用でき;かかるアミド結合形成のための条件は当分野において周知である。
さらなるアミドカップリング試薬にはウロニウムおよびホスホニウムベースの試薬もまた含まれる。ウロニウム塩にはN−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルウロニウムヘキサフルオロリン酸N−オキシド(HATU)、N−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルウロニウムヘキサフルオロリン酸N−オキシド(HBTU)、N−[(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルウロニウムヘキサフルオロリン酸N−オキシド(HCTU)、N−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルウロニウムテトラフルオロホウ酸N−オキシド(TBTU)およびN−[(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルウロニウムテトラフルオロホウ酸N−オキシド(TCTU)が含まれる。ホスホニウム塩にはベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(BOP)、7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyAOP)およびベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyBOP)が含まれる。
アミド形成工程をジメチルホルムアミド(DMF)のような極性溶媒中で行うことができ、そしてまたジイソプロピルエチルアミン(DIEA)またはジメチルアミノピリジン(DMAP)のような有機塩基を含むこともできる。
式IIの化合物の調製の間のヒドロキシルに関する適当な保護基の選択、組み込みおよび除去のための方法は当分野において周知である。前記の反応スキームに基づいて式IIの化合物は、望ましい生成物を提供するための適当な出発材料の選択の仕方を知っている当業者により容易に調製される。
「KSP阻害剤」はキネシンスピンドルタンパク質(KSP)の任意の測定可能な活性を阻止することができる化合物である。好ましくはKSP阻害剤は100μM未満、さらに好ましくは10μM未満、および頻繁には1μM未満のIC50を有する。
「増殖性疾患」には過剰なまたは望ましくない増殖細胞を特徴とする脊椎動物に影響を及ぼす任意の疾患または症状が含まれる。本発明による「増殖性疾患を処置する方法」には、有効量のKSP阻害剤を単独で、または有効量の化学療法剤および/もしくは放射線照射と組み合わせて、併用的にまたは逐次的に投与することにより、かかる処置を必要とする患者(例えばヒトのような哺乳動物)において形質転換細胞を含む細胞の異常な成長を処置(阻止)するための方法が含まれる。細胞の異常な成長とは、腫瘍細胞またはその他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常な成長を含む正常な調節メカニズムとは独立した細胞成長(例えば接触阻止の喪失)を意味する。
「癌」および「癌性」なる用語は典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは記載する。
本明細書で使用される際には「腫瘍」とは、悪性でも良性でも全ての新生物性細胞成長および増殖ならびに全ての前癌性および癌性細胞および組織を指す。「固形腫瘍」なる用語は血液、骨髄およびリンパ系以外の身体組織の癌または癌腫を指す。固形腫瘍の例は、限定するものではないが、肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、膵臓癌、腎細胞癌、上咽頭癌、扁平上皮癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌および肉腫であり得る。
「血液癌」なる用語は本明細書で使用される際には血液の癌を指し、そしてとりわけ白血病および悪性リンパ球増殖性障害を含む。「白血病」とは、あまりに多くの白血球または赤血球が作製され、故に血小板および正常赤血球のような血液を構成するその他の部分が締め出される血液の癌を指す。白血病の症例は急性または慢性に分類されることは理解される。急性白血病における癌細胞は未成熟段階で遮断されるが、それらは増加し続ける。結果的に非機能性未成熟細胞が多く蓄積され、そして機能性細胞が随伴的に喪失する。慢性白血病は緩徐に進行し、癌細胞は完全な成熟まで発達する。さらに白血球は骨髄性またはリンパ系でよい。故に白血病のある形態は、例として、急性リンパ球性(またはリンパ芽球性)白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ球性白血病(CLL);または慢性骨髄性白血病(CML);および骨髄異形成症候群であり得る。「悪性リンパ球増殖性障害」とはとりわけホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫のようなリンパ腫または多発性骨髄腫を指すことができる。
本明細書に記載されるいくつかの腫瘍は種々の治療薬に対して耐性であり得る。「耐性」とは、癌がその通常の投与量の、または患者により耐容される量の治療薬により実質的に影響されないことを意味する。種々の抗新生物剤に対する耐性の主要な形態は、これらの細胞毒性分子を追い出す膜タンパク質ポンプの一群の機能を伴う。「多剤耐性ポンプ」とは細菌からヒトまでの生物に存在するATP結合カセット(ABC)タンパク質のスーパーファミリーを指すことができる。ABCトランスポーターポンプは細胞の細胞膜または異なる細胞オルガネラの膜に位置し、そしてこれらのバリヤをわたる種々の分子の転位置を媒介する。たいていのABCポンプはこの輸送活性(能動的トランスポーター)のためにATP加水分解のエネルギーを利用するが、いくつかのABCポンプは特異的な膜チャネルを形成する。
数多くの臨床研究により、腫瘍における多剤耐性表現型は多剤耐性(MDR)タンパク質と称されるあるABCポンプの過剰発現に随伴されることが確認されている。P−糖タンパク質(P−gp、MDR1またはABCB1と称される)媒介多剤耐性が最初に発見され(Juliano,R.L.and Ung, v., Biochim.Biophys.Acta, 455:152-162(1976);Chen,D. et al., Cell,47:381-389(1986);Ueda,K. et al., Proc.Natl.Acad.Sci., 84:3004−3008(1987))、そして恐らく依然臨床多剤耐性において最も広く観察されるメカニズムである(Endicott, JA and Ling,v., Annu. Rev. Biochem., 58:137−171(1989);Higgins, C.E, Ann. Rev. Cell Biol., 8:67-113(1992);Gottesman, MM. and Pastan, I., Annu. Rev. Biochem., 62:385−427(1993);Gottesman, M.M et al., Nat. Rev. Cancer, 2:48-58(2002))。2つのその他のABCポンプがあり、それは腫瘍の多剤耐性に関与することが実証されている:多剤耐性タンパク質1(MRP1、ABCC1)およびミトキサントロン耐性タンパク質(MXR/BCRP、ABCG2)(Gottesman, M.M ibid, Cole, S.P.c. et al., Science, 258:1650-1654(1992);Borst, P. et al., J. Natl. Cancer. Inst., 92:1295-1302(2000);Deeley, R.G.and Cole, S.P.c., Sem. Cancer Bio I., 8:193-204(1997);Litman, l et al., Cell. Mol. Life Sci., 58:931-959(2001))。さらに細胞の外に種々の化合物を能動的に輸送することが可能であるその他のヒトABCポンプもまた、多剤耐性の選択された症例において役割を果たし得る。これらにはABCB4(MDR3)およびABCB11(姉妹P−gpまたはBSEP)が含まれ、2つのポンプは各々ホスファチジルコリンおよび胆汁酸の分泌に関与する機能を伴い、肝臓に優勢的に存在する(Lecureur, V. et al., Toxicol.,152:203-219(2000);Paulusma, c.c. et al., Science, 271:1126-1128(1996);Paulusma, c.c. et al., Hepatology, 25:1539-1542(1997))。MDR3は同様にある薬物を輸送することが既に示されている(Smith, AJ. et al., J. Bioi.Chem., 275:23530-23539(2000))。MRP1に加えて、5つの相同体(MRP2−MRP6)がクローン化されている。MRP2(疎水性化合物を追い出すこともできる有機アニオントランスポーター)の過剰発現が確実に癌MDR9をもたらすことが示された(Kool, M et al., Cancer Res., 57:3537-3547(1997))。有機抱合トランスポーターポンプであるMRP3およびヌクレオシドトランスポーターポンプであるMRP5もまたある形態の薬物耐性を引き起こすための候補タンパク質である(Borst, P. et al. ibid)。
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は抗原に対して結合特異性を呈するが、免疫グロブリンには抗体および抗原特異性を欠如するその他の抗体様分子の双方を含む。後者の種類のポリペプチドは例えばリンパ系により低レベルで、および骨髄腫により増大したレベルで生成される。
「標識」なる語句は本明細書で使用される場合、「標識された」抗体を作成するために抗体の直接的または間接的に抱合された検出可能な化合物または組成物を指す。標識はそれ自体検出可能でよい(例えば放射性同位体標識または蛍光標識)か、または酵素標識の事例では、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学的改変を触媒できる。検出可能な標識として役立ち得る放射性核種には、例えばI−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212およびPd−109が含まれる。標識はその生物学的または生化学的活性により検出可能である毒素のような非放射活性物質でもよい。
「アンタゴニスト」なる用語は広義で用いられ、そして本明細書に開示される天然の標的の生物学的活性を部分的または十分に遮断、阻止または中和する任意の分子またはその転写もしくは翻訳を含む。
「担体」には本明細書で使用される際には、用いられる投薬量および濃度でそれに暴露されている細胞または哺乳動物に無毒性である薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤が含まれる。生理学的に許容される担体はしばしばpH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の実例はリン酸、クエン酸、コハク酸およびその他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類およびその他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;および/またはTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)およびPluronicsのような非イオン性界面活性剤を含む。1つまたはそれより多いさらなる治療薬「と組み合わされた」投与には、任意の順序の同時(併用)および連続投与が含まれる。好ましくはかかる方法で組み合わされるべき治療薬は双方共に処置される対象の体内で同時に治療的に関連性のあるレベルで存在する。
「宿主細胞」とは本明細書で使用される際には、組換えベクターまたはその他の伝達ポリヌクレオチドに関するレシピエントとして使用できるかまたは使用されている単細胞性の実体として培養される微生物または真核細胞または細胞系を指し、そしてトランスフェクトされている元来の細胞の子孫を含む。単一の細胞の子孫は天然、偶発的または計画的な変異のために、元来の親と形態学的に、またはゲノムもしくは全DNA相補性において必ずしも完全に同一でなくてよい。
「処置」とは本明細書では対象へのKSP阻害剤の適用もしくは投与、または対象から単離された組織もしくは細胞系へのKSP阻害剤の適用もしくは投与として定義され、ここで対象は固形腫瘍もしくは血液癌、固形腫瘍もしくは血液癌に関連する病徴、または固形腫瘍もしくは血液癌を発達させる素因を有し、ここで目的は固形腫瘍もしくは血液癌、固形腫瘍もしくは血液癌の任意の関連する病徴、または固形腫瘍もしくは血液癌を発達させる素因を治癒する、治す、緩和する、軽減する、改変する、矯正する、寛解させる、改善する、または影響することである。対象は哺乳動物でよく、いくつかの態様では対象はヒトである。頻繁には対象は、本明細書にて本発明の化合物および方法での処置に適当であるとして記載される少なくとも1つの症状を伴うと診断されているヒトである。具体的な態様では、対象はP−gpのような薬物耐性を促進する流出ポンプを発現する癌を有するものでよいか、またはパクリタキセルもしくはSB−715992のような薬物に対する耐性が実証されている腫瘍を有しているものでよい。
「処置」とはまた対象へのKSP阻害剤を含む医薬組成物の適用もしくは投与、または対象から単離された組織もしくは細胞系への、KSP阻害剤を含む医薬組成物の適用もしくは投与を意図し、その対象は固形腫瘍もしくは血液癌、固形腫瘍もしくは血液癌に関連する病徴、または固形腫瘍もしくは血液癌を発達させる素因を有し、ここで目的は固形腫瘍もしくは血液癌、固形腫瘍もしくは血液癌の任意の関連する病徴、または固形腫瘍もしくは血液癌を発達させる素因を治癒する、治す、緩和する、軽減する、改変する、矯正する、寛解させる、改善するまたは影響することである。
「抗腫瘍活性」とは悪性細胞増殖または蓄積の速度の低減、およびしたがって既存の腫瘍の成長速度における、もしくは治療の間に生じる腫瘍における減少、ならびに/または既存の新生物(腫瘍)細胞もしくは新たに形成された新生物細胞の破壊、およびしたがって治療の間の腫瘍の全体的なサイズの低下を意図する。少なくとも1つのKSP阻害剤での治療は、ヒトにおける固形腫瘍の処置に関して有益である生理学的応答を引き起こす。少なくとも1つのKSP阻害剤での治療は、ヒトにおける血液腫瘍の処置に関して有益である生理学的応答を引き起こす。本発明の方法は治療の間に生じるさらなる腫瘍の増生を防御するのに有用であり得ることは認識される。
本発明の方法にしたがって、本明細書の他の箇所で定義されるような少なくとも1つのKSP阻害剤を使用して固形腫瘍または血液癌に関する陽性治療応答を促進する。癌処置に関する「陽性治療応答」とは、これらの抗体もしくはそのフラグメントの抗癌活性に関連する疾患における改善、および/またはその疾患に関連する病徴における改善を意図する。すなわち抗増殖効果、さらなる腫瘍の増生の防御、腫瘍サイズの低減、癌細胞の数の低減および/または癌細胞の刺激により媒介される1つもしくはそれより多い病徴における低下を観察することができる。故に例えば疾患における改善を完全寛解として特徴付けることができる。「完全寛解」とは任意の以前の異常なX線撮影研究、骨髄および脳脊髄液(CSF)の正常化を伴う臨床上検出可能な疾患の不在を意図する。かかる応答は本発明の方法による処置後少なくとも1か月持続しなければならない。これに代えて疾患における改善を部分的応答であるとして分類できる。「部分的応答」とは新しい病変の不在下で全ての測定可能な腫瘍負荷量(すなわち対象に存在する腫瘍細胞の数)における少なくとも約50%低下を意図する。かかる応答は測定可能な腫瘍にのみ適用可能である。
磁気共鳴造影(MRI)スキャン、X線放射線造影、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、生物発光造影、例えばルシフェラーゼ造影、骨スキャン造影および骨髄穿刺(BMA)を含む腫瘍生検試料採取のようなスクリーニング技術を用いて腫瘍形態学(すなわち全腫瘍負荷、腫瘍サイズ等)における変化に関して腫瘍応答を評価することができる。これらの陽性治療応答に加えて、KSP阻害剤での治療を受けている対象は疾患に関連する病徴における改善の有益な効果を経験できる。
「治療上有効な用量または量」または「有効量」とは、投与された場合に固形腫瘍または血液癌を伴う患者の処置に関して陽性治療応答をもたらすKSP阻害剤の量を意図する。処置の方法は阻害剤の治療上有効な用量の単回投与または治療上有効な用量の多回投与を含み得ることは認識される。
Bcr−Ablチロシンキナーゼ遺伝子は融合タンパク質をコードし、そしてBCRおよびABL遺伝子の異常接合により創成される。この融合はABLチロシンキナーゼの無秩序な発現を引き起こすBcr−Abl融合遺伝子の形成に至る相互転座t(9:22)により引き起こされる、いわゆるフィラデルフィア染色体上に見出される。フィラデルフィア染色体の存在はCMLおよびALL双方における原因因子の1つと考えられる(Abraham, Community Oncology 4(1):11-14(2007))。現在では、Bcr−Ablチロシンキナーゼはイマチニブ(Gleevec(登録商標)、Novartis)、ダサチニブ(Sprycel(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)およびニロチニブ(AML107、Novartis)のような新しいクラスのBcr−Abl阻止治療用化合物の標的である。Bcr−AblチロシンキナーゼはKSPタンパク質の上流で作用する。
いくつかの好ましい態様では、KSP阻害剤を少なくとも1つのその他の「活性化合物」と組み合わせて投与し、それは限定するものではないが、外科的手術、放射線照射治療、化学療法、サイトカイン治療または目的の固形腫瘍の処置における使用が意図されるその他のモノクローナル抗体を含む癌治療でよく、ここでさらなる癌治療はKSP阻害剤治療の前に、その間またはそれに続いて投与され、そして双方の治療薬は対象において同時発生的に治療レベルで存在する。故に組み合わせ治療が化学療法、サイトカイン治療またはその他のモノクローナル抗体とのような別の治療薬の投与と組み合わされたKSP阻害剤の投与を含む場合、本発明の方法は別個の処方または単一の医薬用処方を使用する共投与およびいずれかの順序の連続投与を包含し、ここで双方(または全ての)活性薬剤がその治療活性を同時に発揮する時間が存在するのが好ましい。本発明の方法が組み合わせ治療計画を含む場合、これらの治療を同時に与えることができる、すなわちKSP阻害剤を併用的にまたはその他の癌治療と同じ時間枠内に投与する(すなわち治療は同時発生的に進行しているが、KSP阻害剤はその他の癌治療と正確に同じ時間に投与されるわけではない)。これに代えて処置された対象が治療の第1コースに応答して緩解の可能性が低下するかまたは再燃するかどうかに関わらず、本発明のKSP阻害剤をその他の癌治療の前に、または続いて投与することもできる。異なる癌治療の逐次的投与を実施できる。
本発明のいくつかの態様では、本明細書に記載されるKSP阻害剤を、化学療法またはサイトカイン治療と組み合わせて投与し、ここでKSP阻害剤および(複数の)化学療法剤または(複数の)サイトカインをいずれかの順序で逐次的に、または同時に(すなわち併用的に、または同じ時間枠内に)投与できる。適当な化学療法剤の実例には、限定するものではないがCPT−11(イリノテカン)(例えば結腸直腸癌および非小細胞肺癌の処置において使用することができる);ゲムシタビン(例えば肺癌、乳癌および上皮性卵巣癌の処置において使用することができる);および固形腫瘍の処置に適当なその他の化学療法剤が挙げられる。目的のサイトカインには、限定するものではないがアルファインターフェロン、ガンマインターフェロン、インターロイキン−2(IL−2)、IL−12、IL−15およびIL−21、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)またはこれらのサイトカインの生物学的に活性な種々のバリアントが含まれる。
本発明のその他の態様では、本明細書に記載されるKSP阻害剤を固形腫瘍の処置のために意図されたモノクローナル抗体と組み合わせて投与する。故に例えば対象が胃または結腸癌のための処置を受けている場合、治療には有効量のErbitux(登録商標)(セツキシマブとしても公知;ImClone Systems Incorporated(New York, New York)およびBristol Meyers Squibb(Princeton, New Jersey))のようなモノクローナル抗体の投与と組み合わされた有効量の本明細書に記載されるKSP阻害剤の投与が含まれ得る。類似して、対象が結腸直腸癌の処置を受けている場合、治療には有効量のヒト化モノクローナル抗体Avastin(商標)(ベバシズマブとしても公知;Genentech, Inc.(San Francisco, California))(血管内皮成長因子(VEGF)に結合し、そして阻止する腫瘍血管新生において重大な役割を果たすタンパク質)の投与と組み合わされた有効量の本明細書に記載されるKSP阻害剤の投与が含まれ得る。これに代えて乳癌ための処置を受けている対象では、治療には有効量のヒト化モノクローナル抗体ヘルセプチン(登録商標)(トラスツズマブとしても公知;Genentech Inc.(San Francisco, California))と組み合わされた有効量の本明細書に記載されるKSP阻害剤の投与が含まれ得る。本発明のKSP阻害剤と組み合わせて使用することができる固形腫瘍の処置のために意図されるモノクローナル抗体のその他の実例には、限定するものではないが上皮成長因子受容体をターゲティングする抗EGFR抗体(例えばIMC−C225(ImClone Systems(New York, New York))(例えばMendelsohn and Baselga, Oncogene 19:6550-6565(2000)およびSolbach et al., Int. J. Cancer 101:390−394(2002)参照);IGF−1受容体タンパク質をターゲティングする抗IGF−1受容体抗体(例えばMaloney et al. , Cancer Res. 63:5073−5083(2003)およびHailey et al., Mol. Cancer. Ther. 1:1349-1353(2002)参照);腫瘍関連抗原MUC1をターゲティングする抗MUC1抗体;これらの各々のインテグリンをターゲティングする抗α5β1、抗αvβ5および抗αvβ3(細胞付着ならびに細胞増殖および生存に関与するシグナリング過程を調節する)(例えばLaidler et al. , Acta Biochimica Polonica 47(4):1159-1170(2000)およびCruet−Hennequart et al. , Oncogene 22(11):1688-1702(2003));このカドヘリンファミリーメンバーをターゲティングする抗P−カドヘリン抗体(例えば同時係属の米国特許出願第20030194406号参照);ならびにこの内皮細胞特異的付着分子の血管新生関連機能をターゲティングする抗VE−カドヘリン抗体(例えばLiao et al. , Cancer Res. 62:2567-2575(2002)参照)が挙げられる。これらの組み合わせの好ましい態様では、KSP阻害剤は式(II)の化合物であり、そしてそれは式IIa、IIbまたはIIcの化合物でよい。
本発明のKSP阻害剤およびモノクローナル抗体をいずれかの順序で逐次的に、または同時に(すなわち併用的に、または同じ時間枠内に)投与することができる。1種以上のモノクローナル抗体が投与されるとき、本発明の方法はさらに、処置を受けている癌に正当であるような、および管理する医療担当者により推奨されるような放射線照射および/または化学療法への暴露を含むことができる。
実施例1:KSP活性を決定するためのアッセイ
ウシの脳から得られた精製された微小管をCytoskeleton Inc.(Denver, Colorado, USA)から購入した。ヒトKSPのモータードメイン(Eg5、KNSL1)をクローン化し、発現させ、そして均一性が95%を超えるまで精製した。Biomol Green(商標)をAffinity Research Products Ltd.(Matford Court(Exeter, Devon, United Kingdom))から購入した。微小管およびKSPモータータンパク質(すなわちKSPモータードメイン)をアッセイバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM MgCl、10mM DTTおよび0.25mg/ml BSA)で最終濃度35μg/ml微小管および45nM KSPまで希釈した。次いで微小管/KSP混合物を37℃で10分間プレインキュベートして、KSPの微小管に対する結合を促進した。
DMSO(または対照の事例ではDMSOのみ)中阻害剤または被験化合物1.25μlが入った被験プレート(384ウェルプレート)の各ウェルにATP溶液(アッセイバッファーで300μMの濃度まで希釈されたATP)25μlおよび前記された微小管/KSP溶液25μlを添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーションの後、Biomol Green(商標)(無機リン酸の放出を検出するマラカイトグリーンベースの色素)65μlを各ウェルに添加した。プレートをさらに5−10分間インキュベートし、次いでVictor IIプレートリーダーを使用して630nmでの吸光度を決定した。630nmでの吸光度の量は試料中のKSP活性の量に相当する。次いでExcelに関するXLFitまたはGraphPad Software Inc.によるPrismデータ分析ソフトウェアのいずれかを用いる非線形回帰により、各阻害剤または被験化合物のIC50を各濃度での630nmでの吸光度における低下に基づいて決定した。
本発明の好ましい化合物は約1mM未満のIC50により測定される生物学的活性を有し、好ましい態様は約25μM未満の生物学的活性を有し、とりわけ好ましい態様は約1000nM未満の生物学的活性を有し、そして最も好ましい態様は約100nM未満の生物学的活性を有する。このアッセイで式IIの化合物を試験し、そしてこのアッセイに関する限界値を下回るIC50値を有することが見出された(2−4nMであると概算される)。
実施例2:化合物IIaで処理された腫瘍細胞系における細胞増殖の阻止
以下のような細胞系を使用した:HCT−116(国立癌研究所のDCTD腫瘍貯蔵所(Tumor Repository)(Rockville, MD)、カタログ番号NCI502568)、HCT−15(国立癌研究所のDCTD腫瘍貯蔵所(Tumor Repository)(Rockville, MD)、カタログ番号NCI502711、American Type Tissue Collectionから入手可能、カタログ番号CLL−225)、KB−3−1(DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(ドイツ微生物および培養細胞コレクション)から入手可能、カタログ番号ACC158)、KB−V1(DSMZから入手可能、カタログ番号ACC149)、AGS(American Type Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号CRL−1739(商標))、N87(American Type Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号CRL−5822)、Hel92.1.7(American Type Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号TIB180)、K562(American Type Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号CRL−243(商標))、MV4;11(American Type Culture Collection(Manassas VA)、カタログ番号CRL−9591)およびU937(American Type Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号CRL−1593.2)。
細胞を96ウェルプレートの各ウェルあたり約500セルの密度で96ウェルプレートに蒔き、そして24時間成長させた。次いで細胞を種々の濃度の化合物で72時間処理した。次いでCellTiter−Glo(登録商標)試薬100μlを添加した(Promega Corporation)。ATPを検出するために単一のCellTiter−Glo(登録商標)試薬を使用して生存細胞の数を決定する均一法においてCellTiter−Glo(登録商標)を使用する(米国特許第6602677号および第7241584号)(Promega製品カタログ番号G7570参照)。CellTiter−Glo(登録商標)試薬の添加の後、細胞を暗中で30分間インキュベートした。Wallac Triluxプレートリーダーを使用して各ウェルに関して発光の量を決定し、それはウェルあたりの細胞の数に相関する。DMSO(0.5%)のみが与えられたウェルにおける生存細胞の数は0%阻止の指標として役立つが、細胞を伴わないウェルは細胞成長の100%阻止として役立つ。50%成長阻止(GI50)に至った化合物濃度を、72時間の化合物連続暴露での対数変換された用量値対細胞数(対照のパーセント)の用量−応答のS字曲線のグラフから決定した。データを以下の表1にて提示する。試験された全ての細胞系において広い抗増殖効果(GI50値0.1−6.5nM)が観察された。この広い活性は有糸分裂阻害剤である化合物と合致する。
Figure 0005501976
P−糖タンパク質(P−gp、MDR1としても公知)はそれを発現する細胞においていくつかの細胞毒性薬に対する多剤耐性を媒介するABCトランスポーターである流出ポンプである。この研究に使用されるいくつかの細胞系(HCT−15、KBV1およびKB8.5)はP−gpを発現し、そして表1から観察できるように、これらの細胞系は式IIのKSP阻害剤に対して感受性である。以下の実施例12により、アシル部分のヒドロキシルを欠如する式Iの類似の化合物はかかる腫瘍に対してインビボで活性ではないことが実証される。
実施例3:癌細胞系における細胞周期プロフィールに及ぼすKSP阻害剤のインビトロ効果
リンパ腫細胞系細胞を本発明のKSP阻害剤で処理し、そしてFACS分析により分析した。およそ2×10セルを収穫し、細胞ペレットを冷PBSで2回洗浄し、そして冷PBS500μlに再懸濁した。緩徐にボルテックスしながら冷80%エタノール8mlを添加することにより細胞を固定した。15分間のインキュベーションの後、固定細胞をPBSで2回洗浄し、そして細胞ペレットをPI/RNASE染色バッファー(BD Pharmingen(商標)、カタログ番号550825)1mlに再懸濁し、そして光から保護して37℃で15分間インキュベートした。ヨウ化プロピジウム(PI)はDNAおよびRNAの双方を染色する蛍光生体色素である。それ故にRNAをリボヌクレアーゼ(RNase)での消化により除去しなければならない。FACS分析の前に染色細胞はセルストレイナーを通してFACS管(BD Falcon番号352235)に入れ、細胞凝集物の数を低減させた。固定および染色細胞のDNA含量をBD FACSCaliburフローサイトメーターによりCellQuestソフトウェアを用いて分析した。
KSP阻害剤での癌細胞の処置は有糸分裂停止に至ったが、停止の程度、その持続時間および停止に続く結果は細胞系間で異なり得る。有糸分裂停止の後、細胞は停止の判明および正常な分割、直接的なアポトーシスの経験または細胞質分裂(有糸分裂スリッページと称される現象)を伴わない既存の有糸分裂を含むいくつかの選択肢を有する。細胞が有糸分裂スリッページを経験する場合、それらは偽性G1に入ることができ、そして次に周期を続けるか、老化するかまたはアポトーシスを経験するかのいずれかである。これらの差異のいくつかは、KSP阻害剤でのリンパ腫細胞系SUDHL−4(DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)(ドイツ微生物および培養細胞コレクション)から入手したB細胞リンパ腫細胞系、カタログ番号ACC495)およびRL(ヒト非ホジキンリンパ腫細胞系、American Type Culture Collection(Manassas VA)、カタログ番号CRL−2261(商標))の処置において強調される。
双方の細胞系は化合物IIaに応答して有糸分裂を停止したが、SUDHL−4細胞は48時間処理の後に、DNA含量<2Nの細胞の増加により示されるようにアポトーシスを経験したが、一方RLリンパ腫細胞は有糸分裂を停止したままであり、そしてアポトーシスの誘導も有糸分裂スリッページも生じなかった。図2参照。
実施例4:KSP阻害剤スクリーニングアッセイ
いくつかの細胞ベースのアッセイを用いる不偏研究法を用いて本発明のKSP阻害剤に対して最も感受性である腫瘍型の同定を達成することができる。選択されたアッセイは以下のとおりであった:
・CellTiter−Glo(登録商標)
これは細胞培養物中のATP濃度を測定するように設計されたアッセイであり、そして細胞数に相関し得る。簡単にはCellTiter−Glo(登録商標)(Promega Corporation)はATPを検出するために単一のCellTiter−Glo(登録商標)試薬を使用する均一法であり、ここでアッセイにおけるATPが熱安定性ルシフェラーゼの活性を後押しして発光シグナルを創成し、それを次いで測定し、そして生存細胞の数と相関させることができる。簡単には、付着細胞に関しては1000から5000細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き(100μl/ウェル)、そして薬物で処理する前に24時間付着させた。非付着細胞に関しては1000から10000細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き(100μl/ウェル)、そして即座に薬物で処理した。DMSOで最終濃度の1000倍で薬物希釈物を調製した。次いでこれらの希釈物を成長培地で1/100に希釈した後、細胞に添加して(11μl/ウェル)望ましい最終濃度を達成した。37℃の組織培養インキュベーター中で48時間の後、製造者の説明書に従ってプレートをCellTiter−Glo(登録商標)アッセイのために加工した。72時間細胞増殖アッセイのためのプロトコール:以下の修飾を除いて48時間アッセイと同じ方式で72時間アッセイを実施した:付着細胞に関しては、500から5000細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き(細胞成長培地90μl/ウェル)、そして薬物で処理する前に24時間付着させた。非付着細胞に関しては1000から10000細胞/ウェルを96ウェルプレートに蒔き(細胞成長培地90μl/ウェル)、そして即座に薬物で処理した。提示されたデータ値は成長の50%低減に必要な被験化合物の濃度を示す。
・LDH放出
細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)アッセイ(Roche Diagnostics(Manheim, Germany))は瀕死の細胞により培地に放出されたLDHの量を測定する;LDHは乳酸のピルビン酸への変換を触媒する。テトラゾリウムを使用して赤色であるホルマザンを形成する化学反応と酵素反応を連関させ、そして490nmでその吸光度を検出することができる。このアッセイは薬物処理後の細胞死の量を測定する。細胞を10000細胞/ウェルでを96ウェルプレートに蒔いた(100μl/ウェル)。付着細胞を薬物で処理する前に24時間付着させたが、非付着細胞は即座に薬物で処理した。DMSOで最終濃度の1000倍で薬物希釈物を調製した。次いでこれらの希釈物を成長培地で1/100に希釈した後、細胞に添加して(11μl/ウェル)望ましい最終濃度を達成した。37℃の組織培養インキュベーター中で48時間の後、製造者の説明書に従ってプレートを細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)アッセイのために加工した。分析前に培地のみの値を全てのデータ点から減じた。提示されたデータ値は化合物濃度に相当し、ここでLDH結果は最大半量レベルである。
・Caspase−Glo(登録商標)3/7
Caspase−Glo(登録商標)3/7アッセイ(Promega Corporation)はカスパーゼ−3/7活性を測定する均一発光アッセイである。アッセイはカスパーゼ−3/7活性、ルシフェラーゼ活性および細胞溶解に関して最適化された試薬中に発光前(proluminescent)カスパーゼ−3/7DEVD−アミノルシフェリン基質および熱安定性ルシフェラーゼを提供する。単一のCaspase−Glo(登録商標)3/7試薬の添加により細胞溶解、続いて基質のカスパーゼ切断に至る。これは遊離アミノルシフェリンを遊離し、それはルシフェラーゼにより消費され、発光シグナルを作成する。シグナルはカスパーゼ−3/7活性に比例する。提示されたデータ値は化合物濃度に相当し、ここでカスパーゼ3/7活性は最大半量レベルである。
スクリーニングアッセイの予測される性質を実証する目的で本発明のKSP阻害剤に対して公知の異なる感度を有する5つの細胞系を選択した。系は以下のとおりである:
HCT−116およびHT29。HCT−116はヒト結腸上皮癌から誘導された細胞系であり、そしてインビボで本発明のKSP阻害剤に対して感受性であることが示されている。HT29(American Tissue Culture Collection(Manassas VA)から入手可能、カタログ番号HTB−38)もまたヒト結腸上皮癌から誘導されるが、KSP阻害剤に対してあまり感受性ではない。
MV4;11(American Tissue Culture Collection(Rockville, MD)、カタログ番号CRL−9591)は急性骨髄性白血病(AML)細胞系である。
Colo205(American Tissue Culture Collection(Rockville, MD)、カタログ番号HB−8307)はヒト結腸直腸癌細胞系である。
T47D(American Tissue Culture Collection(Rockville, MD)から入手可能、カタログ番号HTB−133)は紡錘体チェックポイントに欠損を有すると思われるヒト乳管癌から誘導された細胞系である。
化合物IIaに関するデータを以下の表2に提示する。結果により、一般的にアッセイは互いに良好に一致し、そして異なる細胞型の広いスクリーニングにおいて使用してKSP阻害剤をスクリーニングし、そして感受性な細胞型に関してスクリーニングすることができる。
Figure 0005501976
実施例5:細胞系のNCI60パネルに対するKSP阻害剤の活性
NCI−60パネルは、異なる起源からの腫瘍の所定の薬剤に対する感度を調査するためにしばしば用いられる腫瘍細胞系の標準的なパネルである(Shoemaker,Nat Rev Cancer,6:813-23(2006))。前記で記載されたCellTiter−Glo(登録商標)アッセイを用いて多くの腫瘍誘導細胞系のKSP阻害剤化合物に対する感度を測定した。化合物IIaに関するデータを以下の表3にて提示し、そして多くの腫瘍誘導細胞系が本発明のKSP阻害剤に対して感受性であることが実証される。
Figure 0005501976
Figure 0005501976
Figure 0005501976
GI50値は50%生存率に至る化合物濃度(nMで表現)である。
差:平均Log(GI50)(0.331)と各細胞系のLog(GI50)との間の差。
平均:GI50値に関しては幾何平均およびLog(GI50)値に関しては相加平均。
実施例6:血液悪性腫瘍から誘導された細胞系に対するKSP阻害剤の活性
表3に提示されるデータにより、白血病細胞系が本発明のKSP阻害剤に対して最も感受性であることが実証された。故に血液悪性腫瘍から誘導されたいくつかの細胞系のパネルを前記で記載されたCellTiter−Glo(登録商標)において試験し、そして以下の表4および図1に提示する。
Figure 0005501976
Figure 0005501976
GI50値は50%生存率に至る化合物濃度である。
差:平均Log(GI50)(−0.470)と各細胞系のLog(GI50)との間の差。
平均:GI50値に関しては幾何平均およびLog(GI50)値に関しては相加平均。
(KMS−11、Namba et al,In Vitro Cell Dev. Biol.:25 (8)723-729(1989)参照)
実施例7:KSP阻害剤に対する一次芽細胞の感度
表4からのデータにより、いくつかの型の血液癌細胞系が本発明のKSP阻害剤に対して感受性であることが実証される。以下に示されるようにAML患者からの一次芽細胞を化合物IIaに対する感度に関して試験した。末梢血からの凍結AML芽細胞をAllCell LLC(Emeryville, CA)から入手した。約1×10PBMCが入った3つの凍結バイアルを購入した。高いパーセンテージの芽細胞を有する新たに診断された3人のAML患者からの末梢血単核細胞(PBMC)(番号06−188、80%;番号06−366、88%;番号06−503、73%)を数週間培養し、そしてKSP阻害剤で処理した。バイアルを急速に解凍し、そして10%FBSおよび以下のサイトカイン:GM−CSF、G−CSF、SCF、IL−3およびIL−6(全てR&D Systemsから);を全て10ng/mlで補充したIscoveのDMEM中で細胞を培養した。以下のように3つのアッセイを細胞において実施した:
・AML芽細胞に関するCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ。PBMC含有AML芽細胞を96ウェルプレートに播種し(5000/ウェル)、そして種々の濃度の化合物IIa(10pMから10nM)で48時間処理した後、前記で記載されたように生存細胞を測定した。GI50値(nM)を細胞系に関して計算した。
・ヨウ化プロピジウム染色を用いる細胞周期分析。PBMC含有AML芽細胞を6ウェルプレートに播種し(0.6から×10細胞/ウェル)、そして以下のうちの1つで処理した:DMSO(ベヒクル)、0.2もしくは2nMの化合物IIa、または100nMパクリタキセル。およそ2×10セルを収穫し、細胞ペレットを冷PBSで2回洗浄し、そして冷PBS500μlに再懸濁した。緩徐にボルテックスしながら冷80%エタノール8mlを添加することにより細胞を固定した。15分間のインキュベーションの後、固定細胞をPBSで2回洗浄し、そして細胞ペレットをPI/RNASE染色バッファー(BD Biosciences番号550825)1mlに再懸濁し、そして光から保護して37℃で15分間インキュベートした。ヨウ化プロピジウム(PI)はDNAおよびRNAの双方を染色する蛍光生体色素である。それ故にRNAをリボヌクレアーゼ(RNase)での消化により除去しなければならない。FACS分析の前に染色細胞はセルストレイナーを通してFACS管(BD Falcon番号352235)に入れ、細胞凝集物の数を低減させた。固定および染色細胞のDNA含量をBD FACSCaliburフローサイトメーターによりCellQuestソフトウェアを用いて分析した。
・メチルセルロース含有培地中のコロニー形成アッセイ。メチルセルロース含有半固体培地をStemCell Technologies Inc.(Methocult(商標)GF+H4435、カタログ番号04435)から購入した。芽細胞を1×10から1×10細胞/ウェルの範囲の密度で非組織培養処理6ウェルプレートに播種した。DMSO(ベヒクル)または化合物IIa(0.1、0.2、0.5、1および2nM)を細胞と同時に培地に添加した。2週間後に顕微鏡下でコロニーを計数した。生存細胞を1mg/ml P−ヨードニトロテトラゾリウム(Sigmaカタログ番号I8377)750μl/ウェルで染色し;37℃で一晩インキュベートした後に写真撮影した。
結果
これらの芽細胞の見かけの倍化時間はたいていのAML細胞系よりも緩徐であった(50−70時間対30−50時間)が、化合物IIa(0.12、0.28および0.34nM)に関して得られた、GI50値はAML細胞系に関して前記で示されたものと合致した。コロニー形成アッセイを用いて類似の結果が得られ、ここでコロニーの数は0.2nMで著明に低減し、そして試料番号06−366に関してコロニーは0.5nM以上で不在であった。試料番号06−188および番号06−503に関して類似の結果が得られ、全ての事例でコロニーは0.5nM以上で不在であった。細胞周期プロフィールにより、試料番号06−366に関して24時間で有糸分裂が停止した細胞(4N集団)の数が増大し、続いて48時間で瀕死の細胞(<2N集団)の数が増大したことが示された。これらの変化は低濃度(0.2nM)よりも最高濃度(2nM)でさらに著明であり、それはGI50に近い。パクリタキセルの高用量(100nM)を強力な有糸分裂停止のための陽性対照として用いた。試料番号06−188および番号06−503に関して類似の結果が得られた。試料番号06−503に関して48および72時間の時点でデータを収集した。48時間でのパターンは試料番号06−366に関して観察されたものに類似し、そして72時間での瀕死の細胞(<2N集団)の数の増大が、特に2nMでさらに著明である。図2参照。GI50値が依然非常に低いという事実により、細胞周期に入る細胞は化合物IIaにより非常に効果的に死滅することが示される。
実施例8:KSP阻害剤のインビボ有効性決定
細胞系HCT−116は微小管攪乱物質、有糸分裂キナーゼ阻害剤およびKSP阻害剤のような有糸分裂阻害剤の評価において広く使用されている。1日4回を3日間の(q4d×3)投与スケジュールでの多回投与有効性研究を実施した。およそ6−8週齢の非近交系の胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories(Hollister, CA))を使用して実験を実施した。到着時に動物は個体の同定のために肩甲下領域に皮下マイクロチップ移植(AVID(Folsom, LA))を受けた。任意の実験手順を始める前に動物を1週間順化させた。マウスを透明なポリカーボネートマイクロアイソレーターケージに、ケージあたり4−5匹収容し、12時間明、12時間暗の周期で華氏70−80度の間の温度および相対湿度30−70%にした。飼料(Purinaげっ歯類用固形ペレット)および水は自由に摂取させた。Novartis ACUC規制およびガイドラインならびにILAR実験動物の管理および使用に関するガイドに従ってマウスを取り扱った。AAALAC認定施設においてACUC承認プロトコールの下で実験を実施した。
化合物IIa(遊離塩基)およびSB−715992(イスピネシブ、臨床試験中であるCytokineticsによるKSP阻害剤;その遊離塩基として)を、前記の用量全てに関して20%Captisol(登録商標)中用量容量8ml/kgとして処方した。用量を各動物の体重に合わせた。研究の始めに処方を一度に作成し、そして室温で保存した。Cremophorベースのベヒクル(Mayne Pharma、現在はHospira(Lake Forest, IL)、カタログ番号NDC−6170334209)中で予混合された臨床等級のパクリタキセルを購入し、そして滅菌生理食塩水で希釈して、30mg/kg用量を腹腔内投与するために用量容量16ml/kgを提供した。
ヒトHCT116結腸癌細胞を国立癌研究所のDCTD腫瘍貯蔵所(Tumor Repository)(Rockville, MD)(カタログ番号NCI502568)から入手し、そしてIMPACT1 PCRアッセイパネル(RADIL、ミズーリ大学(Columbia, MO))においてマイコプラズマ種およびネズミウイルスを不含であることを試験した。HCT116細胞を10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences、カタログ番号12003−1000M)を補充した2mM L−グルタミン(Mediatech Inc.、カタログ番号15−040−CV)を伴うRPMI1640中で成長させた。これらの細胞を付着培養として5%二酸化炭素を含有する加湿湿雰囲気下、37℃で維持して成長させた。使用前に細胞を10継代未満で培養した。95%コンフルエントで細胞を収穫し、そして約800×gで4℃で5分間遠心し、そして次に皮下移植用に冷HBSS(Mediatech Inc.、カタログ番号21−021−CV)中5千万細胞/mlの濃度で再懸濁した(注射容量0.1ml)。
雌nu/nuマウス(Charles River(Hollister, CA))の右側腹部にハンクス液(HBSS)に懸濁した5百万個のHCT−116腫瘍細胞を全容量0.1ml/マウスで皮下注射した。有効性研究のために、移植後10日にマウスを無作為化した。研究1では72匹のマウス、および研究2では81匹のマウスを参加させ、平均腫瘍体積およそ300mmであった。デジタルキャリパーで腫瘍異種移植片を二次元(LおよびW)で投与開始の0日から週2回測定した。腫瘍体積を(L×W2)/2として計算した。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。腫瘍体積および体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。以下の式を用いて処置/対照(T/C)パーセント値を計算した:
%T/C=100×ΔT/ΔC
式中:
T=研究の最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積;
ΔT=研究の最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積−投与の開始日の薬物処置群の平均腫瘍体積;
C=研究の最終日の対照群の平均腫瘍体積;および
ΔC=研究の最終日の対照群の平均腫瘍体積−投与の開始日の対照群の平均腫瘍体積。
全データを平均およびSEMとして表現した。一方向ANOVA対分析を用いて最終腫瘍測定値に関する群間比較を実施した。Kruskal−Wallisの順位による一方向ANOVAおよび複数の対比較のためのDunn法を用いて有意性を決定した。SigmaStat(Systat Software Inc.(San Jose, CA))を用いて統計分析を実施した。
q4d×3スケジュールでの多回投与有効性研究を行って化合物IIaの抗腫瘍活性をSB−715992およびパクリタキセルと比較した。結果を表5に示す。この研究では動物を最高用量の5mg/kgの化合物IIaおよび15mg/kgのSB−715992で処置された動物は有意な体重減少のために計画されたq4d×3のスケジュールの最初の2用量のみを与えられ、マウスはそこから回復した。2用量のみでさえ、類似の様式で有意な腫瘍退縮があった(73%退縮、各々でp<0.05)。q4d×3で与えられた2つの低用量2.5および1.25mg/kgの化合物IIaおよび7.5mg/kgのSB−715992もまた類似してHCT116腫瘍異種移植片の退縮を引き起こした(各々82%、66%、65%退縮、p<0.05)。全体としては、パクリタキセルは化合物IIaよりも有効性が低く;腫瘍は最初は退縮し、投与の休止後速やかに成長が再開した。
Figure 0005501976
q4d×3スケジュールの1.25mg/kgほどの低用量によりHCT116異種移植片の退縮が誘起されたので、用量応答性を観察するため、および腫瘍退縮を誘起するためにどの程度低用量を与えることができるかを決定するために2から0.125mg/kgの用量範囲で有効性研究を繰り返した。表6の結果により、投与の期間中に化合物IIa 1mg/kgほどの低さで腫瘍の退縮が観察され(46%退縮、p<0.05、第17日)、そして0.25mg/kgほどの低さで腫瘍滞留が観察されたが、ベヒクル対照群と比較して統計的に有意には至らなかったことが示された。化合物IIa 0.125mg/kgでの抗腫瘍効果はベヒクル対照とは有意に異ならなかった。SB−715992 7.5mg/kg用量のみが腫瘍退縮を誘起した。加えて最後の投与の72時間後、血液を収集して循環好中球レベルを群間比較した。好中球は腫瘍有効性効果に類似して用量応答性の様式で低減した。
Figure 0005501976
実施例9:HCT15腫瘍異種移植片モデルにおけるKSP阻害剤の有効性
HCT15はP−gpポンプを発現することも公知であるヒト腺癌細胞系である。故に実施例10の結果を検証するためにこの細胞系を使用して異種移植片腫瘍モデルを実施した。
およそ6−8週齢の非近交系の胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories)を使用して実験を実施した。到着時に動物は個体の同定のために肩甲下領域に皮下マイクロチップ移植(AVID(Folsom, LA))を受けた。任意の実験手順を始める前に動物を1週間順化させた。日常的な動物の管理および保護の保証は前記で記載されたとおりであった。
ヒトHCT15結腸癌細胞を国立癌研究所のDCTD腫瘍貯蔵所(Tumor Repository)(Rockville, MD)(カタログ番号NCI502568)から入手した。HCT15細胞を10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences、カタログ番号12003−1000M)を補充した2mM L−グルタミン(Mediatech Inc.、カタログ番号15−040−CV)を伴うRPMI1640中で成長させた。IMPACT1 PCRアッセイパネル(RADIL、ミズーリ大学(Columbia, MO))において細胞がマイコプラズマ種およびマウスウイルスを不含であることを試験した。
これらの細胞を付着培養として5%二酸化炭素を含有する加湿湿雰囲気下、37℃で維持して成長させた。使用前に細胞を10継代未満で培養した。95%コンフルエントで細胞を収穫し、そして約800×gで4℃で5分間遠心し、そして次に皮下移植用にHBSS(Mediatech Inc.、カタログ番号21−021−CV)+Matrigel(商標)(1:1比率)中5千万細胞/mlの濃度で再懸濁した(注射容量0.2ml)。
有効性研究のための処置を腫瘍細胞移植後10日に開始し、そのとき腫瘍はおよそ300mmであった。化合物IIaおよびSB−715992を、指示された用量を8ml/kgの容量で尾静脈を介して静脈内(i.v.)投与した。パクリタキセルを、30mg/kgを16ml/kgの容量で腹腔内(i.p.)投与した。
有効性研究のために、移植後10日にマウスを無作為化し、そして平均腫瘍体積およそ300mmを有するものを参加させた。デジタルキャリパーで腫瘍異種移植片を二次元(LおよびW)で投与開始の0日から週2回測定した。腫瘍体積を(L×W2)/2として計算した。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。腫瘍体積および体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。データを前記のとおり分析した。
表7に示された結果により、化合物IIaがパクリタキセルよりも大きな抗HCT15腫瘍有効性を実証することが示された;4mg/kg用量、T/C%は26%であった(p<0.05対ベヒクルおよび類似の対パクリタキセル)。データによりKSP阻害剤4mg/kgならびにSB−715992 7.5および15mg/kgの用量群の間の区別が示されるが、このモデルにおける腫瘍体積の変動性のために統計的な有意性には到達しなかった。第10日に化合物IIa 4mg/kgとSB−715992 7.5mg/kg用量との間に統計的に有意な差異が観察された(p<0.05)。P−gpに関する公知の基質であるパクリタキセルはこのモデルでは非常に低い抗腫瘍活性を有する。有意な体重減少または毒性の外的徴候はいずれの処置マウスにおいても観察されなかった。HCT15モデルにおける抗腫瘍活性の増大は、高レベルのP−gpを発現する腫瘍異種移植片モデルにおける化合物IIaの有効性を実証する。
Figure 0005501976
実施例10:急性骨髄性白血病(AML)異種移植片モデルにおけるKSP阻害剤の有効性
胸腺欠損マウスにおいてMV4;11腫瘍異種移植片モデル(O'Farrell, et al 2003)に対する化合物IIaの有効性を評価した。マウスの皮下MV4;11腫瘍異種移植片モデルにおいて最初に有効性を試験し、そしてまた骨髄微小環境がAML細胞成長および生存において重要な役割を果たすので、マウスのMV4;11−luc散在性疾患モデルにおいてさらに有効性を評価し、ここで細胞は骨髄およびいくつかの軟器官に戻り、そして成長する。腫瘍細胞によるルシフェラーゼ発現のために、生物発光造影を用いて白血病病変の成長の連続的な包括的モニタリングを決定した。
およそ6−8週齢の非近交系の胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories(Hollister, CA))を使用して皮下腫瘍有効性研究を実施した。およそ7−8週齢の免疫不全NOD−SCID雌マウス(Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME))を使用して散在性疾患モデルにおいて有効性研究を実施した。到着時に動物は個体の同定のために肩甲下領域に皮下マイクロチップ移植(AVID(Folsom, LA))を受けた。任意の実験手順を始める前に動物を1週間順化させた。日常的な動物の管理および保護の保証は前記で記載されたとおりであった。
ヒトMV4;11急性骨髄性白血病細胞をAmerican Tissue Culture Collection(Rockville, MD)(カタログ番号CRL−9591)から入手し、そしてIMPACT1 PCRアッセイパネル(RADIL、ミズーリ大学(Columbia, MO))においてマイコプラズマ種およびネズミウイルスを不含であることを試験した。散在性疾患モデルに関して、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するMV4;11細胞の安定したプール(MV4;11−luc)をNovartis研究財団ゲノム研究所(San Diego, California)のFangxian Sunから受け取った。10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences、カタログ番号12003−1000M)、4mML−グルタミンおよび5ng/ml組換えヒト顆粒球M−CSF(GM−CSF)(R&D Systems、カタログ番号215−GM)を補充したIscove改変ダルベッコ培地(Mediatech Inc.、カタログ番号15−016−CV)中でMV4;11細胞をを成長させた。MV4;11−lucを同じ培地中で成長させたが、ルシフェラーゼ発現の選択のために2μg/mlピューロマイシンを添加した。これらの細胞を懸濁培養物として成長させ、5%二酸化炭素を含有する加湿雰囲気下、37℃で維持した。使用前に細胞を10継代未満で培養した。およそ2百万細胞/mlで細胞を収穫し、そして約800×gで4℃で5分間遠心し、そして次に皮下移植用に冷HBSS(Mediatech Inc.、カタログ番号21−021−CV)中2千5百万細胞/ml(50%Matrigel(商標)含有、BD Biosciences、カタログ番号354234)の濃度で(注射容量0.2ml)、または尾静脈を介する静脈内(i.v.)移植のために1億細胞/mlの濃度で(注射容量0.1ml)再懸濁した。i.v.細胞移植の1日前にマウスに3グレイを3分間照射した。
化合物IIa(遊離塩基)およびSB−715992(遊離塩基)を20%Captisol中、用量容量8ml/kgとして処方した。用量を各動物の体重に合わせた。研究の始めに処方を一度に作成し、そして室温で保存した。Cremophorベースのベヒクル(Mayne Pharma、現在はHospira(Lake Forest, IL)、カタログ番号NDC−6170334209)中に予混合された臨床等級のパクリタキセルを購入し、そして滅菌生理食塩水で希釈して、30mg/kg用量を腹腔内投与するために用量容量16ml/kgを提供した。
皮下腫瘍モデルにおける2つの有効性評価のために、HBSSおよびMatrigel(商標)の1:1混合物と組み合わせた1千万セルを全容量0.2ml/マウスで右側腹部に皮下注射した。移植後17日にマウスを無作為化し、そして平均腫瘍体積およそ250mmのマウスを参加させた。デジタルキャリパーで腫瘍異種移植片を二次元(LおよびW)で投与開始の0日から週2回測定した。腫瘍体積を(L×W2)/2として計算した。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。腫瘍体積および体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。
散在性疾患モデルにおける有効性評価のために、雌NOD−SCIDマウスはHBSS0.1ml中1千万セルの尾静脈注射の前日に3グレイの全身照射を受けた。生物発光造影により決定されるように平均光子数(背側図+腹側図)およそ5x10光子/秒を伴う40匹のマウスを無作為化し、そして移植後28日に参加させた。造影のおよそ10分前に、マウスにルシフェリン(Xenogen Corporation(Alameda, CA))150mg/kgを腹腔内注射し、続いてイソフルランで麻酔した。IVIS造影系(Xenogen Corporation)で電荷結合素子カメラを使用して光子放出を測定した。簡単にはマウスのグレイスケールの画像を捕捉し、続いてルシフェラーゼを発現する癌細胞において切断ルシフェリンから検出される光子の空間分布を表す生物発光マップを重ね合わせる。Living Imageバージョン2.50.2(Xenogen)と称されるIGOR Proバージョン4.09Aソフトウェア(aveMetrics, Inc.(Lake Oswego, OR))のカスタマイズ版を使用してシグナル強度を定量した。背側図+腹側図から検出された全ての光子数の合計を決定した。最初のマウスが疾患の負荷による後肢麻痺を発達させるまで、動物における癌細胞の生物発光を指定された日の造影により測定し、主な終点はマウスを人道的に安楽死させたときである。各マウスに関する安楽死の日を記録し、そして生存するマウスの残存パーセンテージを時間に対してプロットした(Kaplan−Meier生存分析)。ログランク検定(GraphPad Prism 4.0ソフトウェア)を用いてP値を計算して処置群と対照群との間の差異を評価した(p<0.05が有意と考えられた)。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。前記で記載されたようにデータ分析を実施した。
結果、皮下腫瘍モデル:
皮下腫瘍モデルにおける有効性研究を行って、q4d×3で投与された化合物IIaの用量の範囲の活性を比較した。第1の研究では、nu/nuマウスにおける最も高い耐容用量が評価された;化合物IIa 4mg/kg、SB−715992 15mg/kgおよびパクリタキセル30mg/kg。腫瘍を伴って残存する4匹のマウスに同じスケジュールでKSP阻害剤0.625mg/kgを投与した。結果を表8に示す。全処置群で投与期間中に腫瘍退縮が観察され、高用量の化合物IIa、SB−715992およびパクリタキセルで処置された群で各々9/9、6/9および7/9匹のマウスが100日間にわたる持続した完全な腫瘍退縮(CR)を伴った。化合物IIa 0.625mg/kgで処置された群において腫瘍が退縮したが、最後の投与後およそ10日にそれらは再度成長した。被験薬剤の用量は一般的に最大平均体重減少<10%で十分に耐容性であるが、SB−715992処置群において2匹のマウスが最大体重減少>20%であった。
Figure 0005501976
皮下腫瘍モデルにおいて第2の有効性研究を行って、q4d×3で投与された化合物IIaの低用量の範囲の活性を比較した。使用された最高用量は2mg/mgであり、それはヌードマウスにおける最高耐容用量の半分である。化合物IIaの活性をSB−715992 7.5mg/kgと比較し、それはその最高耐容用量の半分である。結果を表9および図2に示す。化合物IIa 0.5、1および2mg/kg用量ならびにSB−715992 1.75、3.5および7.5mg/kgで異なった程度までの腫瘍退縮が観察された。化合物IIa 0.5mg/kgおよびSB−715992 1.75mg/kgで処置された群において、最後の投与後5日までに腫瘍は成長を開始した。次いでSB−715992 7.5mg/kg処置群において投与後30日までに腫瘍は成長を開始した。化合物IIa 1および2mg/kg用量により、各々6および5つの完全な腫瘍退縮を伴う100日間にわたる長期間退縮が引き起こされた。被験薬剤の用量は一般的に最大平均体重減少<10%で十分に耐容性であった。
Figure 0005501976
結果、散在性AML疾患モデル:腫瘍細胞を静脈内に移植したMV4;11−lucの散在性AML疾患モデルにおいて化合物IIaの活性を評価した。細胞移植後28日に処置投与を開始し、その時点で動物は大量の生物発光シグナルにより示されるように疾患の進行した段階にある。表10に結果を示す。初期造影で、骨(下顎骨、頭蓋骨、脊椎および長管骨)において生物発光シグナルが観察されたが、肺および肝臓を含む身体全体にも散在した。それ故に続いて全身からの光子放出を記録した(背側図+腹側図)。これらの病変は究極的には腫瘍負荷のために偶発的に有意な体重減少を伴う後肢麻痺に至り、その時点でマウスを屠殺した。これを「条件付生存」と称した。
最初のマウスが疾患のために死ぬまで(研究の12日後に起こった)マウスにおけるMV4;11−lucからの光子放出の連続全身モニタリングを行った。q4d×3で投与された化合物IIaの0.5および1mg/kg用量は、ベヒクル処置群と比較して疾患負荷の測定値である生物発光シグナルを有意に低減したが(p<0.05)、0.25mg/kg処置の効果はベヒクルのものと有意に異ならなかった。化合物IIaはこれらの用量で十分に耐容性であった。化合物IIaは後肢麻痺の誘導を有意に遅延させ、そしてベヒクル処置集団と比較して3つ全ての用量のマウスの生存率を高めた(p<0.05)。ベヒクル処置群の生存の中央値は15日であったが、化合物IIa 0.25、0.5および1mg/kg処置群のものは各々27、31および30日であった。投与の期間中に生じた腫瘍負荷(生物発光)における早期用量依存性の低減は、生存における用量依存性の増大に結びつかなかった。化合物の効果が一度尽きると、疾患は全群で急速に進行したようである。
Figure 0005501976
実施例11:ヒト多発性骨髄腫KMS−11−luc腫瘍異種移植片におけるKSP阻害剤の有効性の評価
ヒト多発性骨髄腫KMS−11−luc腫瘍異種移植片に対する化合物IIaの有効性を評価した。この系を有するマウスの皮下腫瘍異種移植片モデルにおいて有効性を最初に試験し、ここで化合物IIaは著明な抗腫瘍効果を誘起した。骨髄微小環境が骨髄腫細胞成長および生存において重要な役割を果たすので、マウスのKMS−11−luc散在性疾患モデルにおいてさらに有効性を評価し、ここで細胞は骨髄の同所性部位に戻り、そして成長する。細胞におけるルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現のために、生物発光造影による骨髄腫病変の成長の連続的な包括的モニタリングが可能になった。
およそ7−8週齢の免疫不全SCID−Beige雌マウス(harles River Laboratories(Wilmington, MA))を使用して実験を実施した。到着時に動物は個体の同定のために肩甲下領域に皮下マイクロチップ移植(AVID(Folsom, LA))を受けた。任意の実験手順を始める前に動物を1週間順化させた。日常的な動物の管理および保護の保証は前記で記載されたとおりであった。
ヒトKMS−11−luc多発性骨髄腫細胞をトロント大学(Ontario, Canada)のSuzanne Trudelの実験室から入手し、そしてIMPACT1 PCRアッセイパネル(RADIL、ミズーリ大学(Columbia, MO))においてマイコプラズマ種およびネズミウイルスを不含であることを試験した。この細胞系を受け取る前に、pGC−gfp/lucベクターのレトロウイルストランスフェクションにより、それが安定してルシフェラーゼを発現するように操作されていた。2ミリモル/l L−グルタミン(Mediatech, Inc.(Herndon, VA))および10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences、カタログ番号12003−1000M)を補充したIscove改変培地中でKMS−11−luc細胞を成長させた。これらの細胞を懸濁培養物として成長させ、5%二酸化炭素を含有する加湿雰囲気下、37℃で維持した。使用前に細胞を10継代未満で培養した。およそ2百万細胞/mlで細胞を収穫し、そして約800×gで4℃で5分間遠心し、そして次に皮下移植用に冷ハンクス液(HBSS)およびMatrigel(商標)(各々Mediatech Inc.、カタログ番号21−021−CV;BD Biosciences、カタログ番号354234)の1:1混合物中5千万細胞/mlの濃度で再懸濁した(注射容量0.2ml)。これに代えて散在性疾患モデルに関しては、尾静脈を介する静脈内(i.v.)移植のために細胞を冷HBSSのみで1億細胞/mlの濃度で調製した(注射容量0.1ml)。
化合物IIaおよびSB−715992(遊離塩基)を20%Captisol中、用量容量8ml/kgとして処方した。用量を各動物の体重に合わせた。研究の始めに処方を一度に作成し、そして室温で保存した。Cremophorベースのベヒクル(Mayne Pharma、現在はHospira(Lake Forest, IL)、カタログ番号NDC−6170334209)中に予混合された臨床等級のパクリタキセルを購入し、そして滅菌生理食塩水で希釈して、30mg/kg用量を腹腔内投与するために投与容量16ml/kgを提供した。
皮下腫瘍モデルにおける有効性評価のために、HBSSおよびMatrigel(商標)の1:1混合物と組み合わせた1千万セルを全容量200ml/マウスで右側腹部に皮下注射した。移植後11日にマウスを無作為化し、そして平均腫瘍体積およそ140mmの54匹のマウスを参加させた。デジタルキャリパーで腫瘍異種移植片を二次元(LおよびW)で投与開始の0日から週2回測定した。腫瘍体積を(L×W2)/2として計算した。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。腫瘍体積および体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。データ分析は上記で記載されたとおりであった。
散在性疾患モデルにおける有効性評価のために、HBSS中1千万セルを全容量100ml/マウスで尾静脈を介して静脈内注射した。生物発光造影により決定されるように下肢の骨(右+左)に平均光子数およそ9x10光子/秒を伴う40匹のマウスを無作為化し、そして移植後10日に参加させた。造影のおよそ10分前に、マウスにルシフェリン(Xenogen Corporation(Alameda, CA))150mg/kgを腹腔内注射し、続いてイソフルランで麻酔した。IVIS造影系(Xenogen Corporation)で電荷結合素子カメラを使用して光子放出を測定した。簡単にはマウスのグレイスケールの画像を捕捉し、続いてルシフェラーゼを発現する癌細胞において切断ルシフェリンから検出される光子の空間分布を表す生物発光マップを重ね合わせる。Living Imageバージョン2.50.2(Xenogen)と称されるIGOR Proバージョン4.09Aソフトウェア(WaveMetrics, Inc.(Lake Oswego, OR))のカスタマイズ版を使用してシグナル強度を定量した。右下肢+左下肢から検出された全ての光子数の合計を決定した。最初のマウスが疾患の負荷による後肢麻痺を発達させるまで、動物における癌細胞の生物発光を指定された日の造影により測定し、主な終点はマウスを人道的に安楽死させたときである。各マウスに関する安楽死の日を記録し、そして生存するマウスの残存パーセンテージを時間に対してプロットした(Kaplan−Meier生存分析)。ログランク検定(GraphPad Prism 4.0ソフトウェア)を用いてP値を計算して処置群と対照群との間の差異を評価した(p <0.05が有意と考えられた)。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。データ分析は上記で記載されたとおりであった。
結果、皮下KMS−11−luc腫瘍異種移植片モデル
皮下腫瘍モデルにおける有効性研究により、q4d×3スケジュールで投与された化合物IIaの用量の範囲の活性を評価し、高用量1mg/mgでそれはSCID-Bgマウスにおける最高耐容用量のおよそ半分である。化合物IIa活性をその最高耐容用量の半分である7.5mg/kgのSB−715992(イスピネシブ、臨床試験中であるCytokineticsによるKSP阻害剤)およびその最高耐容用量の30mg/kg q4d×3のパクリタキセルと比較した。結果を表11に示す。投与期間中の全処置群で異なる程度までの腫瘍退縮が観察された;しかしながら投与完了後に腫瘍成長は再開した。腫瘍成長は早期に始まり、そして化合物IIaの低用量で処置されたマウスにおいてより急速に進んだ。パクリタキセルおよび化合物IIa 0.25mg/kg処置群において、処置終了後8日までに腫瘍の再成長が観察された。処置後13日までに化合物IIa 0.5mg/kgで処置された群において腫瘍の再成長が観察された。化合物IIa 1mg/kgおよびSB−715992 7.5mg/kgの用量はKMS−11−luc腫瘍の各々56%および49%(p<0.05)までの最大退縮に至り、そして処置の終了後およそ4週間まで腫瘍再成長は生じなかった。被験薬剤の用量は一般的に最大平均体重減少<10%で十分に耐容性であるが、化合物IIaの1mg/kg用量は例外で、それは投与開始後10日で12%の平均体重減少に至った。この群の1匹のマウスは20%の体重減少し、そして研究から除いた。その群の全てのその他のマウスは最終投与後にいずれの体重減少も回復した。
Figure 0005501976
散在性KMS−11−luc腫瘍モデルの結果
細胞移植後の10日に薬物処置を開始した。生物発光造影により、ベヒクル処置群で経時的にシグナルが増大したことが示され、これは肺、肝臓および脾臓を含む骨外性の領域における局在を示唆している。しかしながら大部分のマウスで優勢な生物発光シグナルは、多起源のシグナルを伴う長管骨、頭蓋骨、歯根/下顎骨、骨盤および脊椎を含む骨格にあるようである。このモデルを用いる以前の研究から収集された大腿骨の組織学的分析により、骨髄への骨髄腫細胞の浸潤が確認されている(Xin, et al.,Clin. Cancer Res. Aug 15;12(16):4908-15(2006))。疾患進行は一次的に腫瘍負荷のために偶発的に有意な体重減少を伴う後肢麻痺に至り、その時点でマウスを人道的に安楽死させた。これを「条件付生存」と称した。
結果を表12に示す。q4d×3で投与された化合物IIa 0.5および1mg/kg用量は、全体的な疾患負荷の測定値である生物発光シグナルを低減したが、0.25mg/kg処置群はベヒクル処置群とは統計的に異ならなかった。この群の1匹で1mg/kg用量で処置されたマウスの13日のシグナルの47%退縮は13日までの>20%体重減少を伴った。その群のその他の全ての動物はこの用量で耐容性であった。低用量では、化合物IIは十分に耐容性であった。
生物発光により測定されるような疾患負荷のこの用量依存性の阻止は、全群のベヒクル処置集団と比較して後肢麻痺の類似の遅延に至り、そして故にマウスの条件付生存を強化した。ベヒクル処置群における生存の中央値は19日であったが、化合物IIa 0.25、0.5および1mg/kg処置群のものは各々29、35および52日であった。
Figure 0005501976
実施例12:式IIの化合物は薬物耐性腫瘍に対して有効である
前臨床インビボ実験により、アシル部分にヒドロキシル基またはヒドロキシルプロドラッグ基を有さない構造的に類似する化合物よりも式IIの化合物が予期せず優れていることが示されている。細胞膜P−糖タンパク質(P−gp)である流出ポンプを発現する腫瘍モデルを、式IIの化合物および式IIの化合物に存在するヒドロキシル基(またはアシルオキシ基)を欠如する構造的に類似する化合物を含むその他の薬物に対する感度に関して試験した。P−gpは腫瘍耐性の1つのメカニズムであり、そして恐らく流出耐性メカニズムの最も理解された、および最も古典的な実例である。マウスのKB8.5ヒト子宮頸癌皮下異種移植片モデルを薬理学的スクリーニングならびにそれに続くこれらの化合物の選択および評価のために選択した;それはKB3.1細胞系に相当し、そして流出ポンプを有することのみにより異なる。式IIの化合物をその他のKSP阻害剤と、およびP−gpにより影響を受けることが知られているパクリタキセルと比較した。本明細書に記載される研究により、式IIの化合物(例えば化合物IIaおよびIIc)はP−gpを発現し、そしてその他の薬物に耐性である腫瘍に対してインビボで有効であるが、ヒドロキシル基を欠如する式Iの類似の化合物はこの腫瘍に対して活性ではなかった。
材料
Figure 0005501976
およそ6−8週齢の非近交系の胸腺欠損nu/nuマウス(Charles River Laboratories)を使用して実験を実施した。到着時に動物は個体の同定のために肩甲下領域に皮下マイクロチップ移植(AVID(Folsom, LA))を受けた。任意の実験手順を始める前に動物を1週間順化させた。
維持条件
マウスを透明なポリカーボネートマイクロアイソレーターケージに、ケージあたり4−5匹収容し、12時間明、12時間暗の周期で華氏70−80度の間の温度および相対湿度30−70%にした。飼料(Purinaげっ歯類用固形ペレット)および水は自由に摂取させた。
実験条件
KB8.5細胞を10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences、カタログ番号12003−1000M)を補充した2mM L−グルタミン(Mediatech Inc.、カタログ番号10−013−CV)を伴うDMEM中で成長させた。一度KB8.5細胞が良好な成長速度を実証すると、P−gp発現レベルを維持するために10ng/mlコルヒチンを添加した。
これらの細胞を付着培養として成長させ、5%二酸化炭素を含有する加湿湿雰囲気下、37℃で維持した。使用前に細胞を10継代未満で培養した。95%コンフルエントで細胞を収穫し、そして約800×gで4℃で5分間遠心し、そして次に皮下移植用にHBSS(Mediatech Inc.、カタログ番号21−021−CV)+Matrigel(商標)(1:1比率)中KB8.5系に関して2千5百万細胞/mlの濃度で再懸濁した(注射容量0.2ml)。
化合物および製剤
化合物IIa、化合物IIc、化合物Ia(以下で示す)およびSB−715992をCaptisol(登録商標)ベースの製剤に製剤した。用量を静脈内(i.v.)投与し、そして各動物の体重に合わせた。研究の始めに処方を一度に作成し、そして室温で保存した。Cremophorベースのベヒクル(Mayne Pharma、現在はHospira(Lake Forest, IL)、カタログ番号NDC−6170334209)中に予混合された臨床等級のパクリタキセルを購入し、そして滅菌生理食塩水で希釈して、30mg/kg用量を腹腔内(i.p.)投与するために投与容量16ml/kgを提供した。
Figure 0005501976
化合物Iaは式IIの化合物に構造的に類似するが、ヒドロキシ基またはアシルオキシ基よりもむしろメトキシ基を有し、そしてKSPに対するそのインビトロ活性はIIaおよびIIcの活性に非常に類似する。例えばCellTiter−Glo(登録商標)アッセイでは、HCT−15細胞において化合物Iaに関して測定されたGI50値は0.3nMであったが、それは化合物IIaと均等である(実施例2参照)。類似して、化合物Iaに関してはKB3.1およびKB8.5細胞系で0.4nMの値が測定されたが、化合物IIaに関してはこれらの細胞系で0.6nMおよび0.5nMの値が測定された(実施例2参照)。しかしながら式IIの化合物はアシル基に遊離ヒドロキシル(または遊離ヒドロキシルに関するプロドラッグであるアシルオキシ基)を有するが、Iaは代わりにメチルエーテルを有する。メチルエーテルはインビトロでのその活性により実証されるように、活性部位により十分に耐容性であり、そしてまたとりわけインビトロでp−GP耐性細胞系において非常に有効である。加えて、インビボで式IIの化合物よりも代謝不活化に対して感受性が低いことが予期され得る。実際に、以下の表のデータにより例証されるように、薬物動態パラメーターの比較により化合物Iaは、式IIaおよびIIcの化合物ほどにより高度な暴露および代謝安定性の増大を呈することが示される。しかしながら驚くべきことに、式IIの化合物は先行技術で公知の化合物と相対して、P−gpを発現する癌に対してインビボで有利であり、それはP−gp耐性異種移植片癌が式IIの化合物に対して感受性であるが、化合物Iaに対しては感受性でないためである。
興味深いことに、式IIの化合物はヒドロキシルを完全に欠如する化合物、例えば式Ibの化合物:
Figure 0005501976
よりも有意にさらに有効であることも見出された。
化合物Ibは式IIの化合物よりもインビトロでなおさらに活性が低く、各々1nM未満のIC50を有するIIaおよびIIcと比較して、IC50 22nMである。化合物Ibはその薬物動態およびそのインビトロ活性があまりに好ましくなく、インビボ有効性を予期できなかったために異種移植片モデルにおいて試験しなかった。それがより高いクリアランス速度およびより低いAUC(「曲線下面積」、被験対象の化合物に対するインビボ暴露を測定する標準的な方式)を呈することを示すデータに基づいてそれはなおさらに低いインビボ利用性を有することが示されており、そしてそのより高いIC50により示されるように、それはまた標的部位でなおさらに活性が低かった。比較により、化合物Ia、IIaおよびIIcは各々インビボでより良好な薬物動態効果および優れたインビトロ活性を呈し、そして異種移植片癌において試験された。
Figure 0005501976
故に式IIの化合物は化合物Ibよりもインビトロでさらに有効であり、そしてインビボでさらに持続性であり、そして予期せずに多剤耐性(MDR)流出ポンプを発現する薬物耐性癌において有効であることが示されたが、化合物Iaはp−GP細胞系におけるインビトロでのその均等な効力および被験動物におけるより高い利用性(より低いクリアランス速度およびより高いAUC)に関わらず、同じMDR癌に対して無効であった。
研究方法
有効性研究のために、平均腫瘍体積およそ300mmのマウスを参加させた。デジタルキャリパーで腫瘍異種移植片を二次元(LおよびW)で投与開始の0日から週2回測定した。腫瘍体積を(L×W)/2として計算した。体重を週2回測定し、そして臨床観察を毎日記録した。腫瘍体積および体重をStudyDirectorソフトウェア(StudyLog(South San Francisco, CA))により捕捉および保存した。
データ分析
以下の式を用いて腫瘍体積に関する処置/対照(ΔT/ΔC)パーセント値を計算した:
%ΔT/ΔC=100×ΔT/ΔC
式中:
T=研究の最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積;
ΔT=研究の最終日の薬物処置群の平均腫瘍体積−投与の開始日の薬物処置群の平均腫瘍体積;
C=研究の最終日の対照群の平均腫瘍体積;および
ΔC=研究の最終日の対照群の平均腫瘍体積−投与の開始日の対照群の平均腫瘍体積。
全データを平均およびSEMとして表現した。一方向ANOVA対分析を用いて最終腫瘍測定値に関する群間比較を実施した。Kruskal−Wallisの順位による一方向ANOVA、続いて複数の対比較のために適切なポストホック検定(Dunn法およびTukey検定)を用いて有意性を決定した。SigmaStat(Systat Software Inc.(San Jose, CA))を用いて統計分析を実施した。
P−gp発現異種移植片モデルにおける有効性評価
これらのモデルにおいて同じ5mg/kg用量のq4d×3スケジュールで多回投与有効性研究を行い、化合物IIaおよび化合物Iaの活性を比較した。化合物IIcに関して、2.5mg/kgは十分な耐容性がなく、そしてそのために有効性比較は1.25mg/kgの用量レベルに対してであった。図3および表13における結果により、化合物IIaはモデルにおいて有意な抗腫瘍有効性を実証し、KB8.5異種移植片モデルにおいて第11日でΔT/ΔCのパーセントは19%(p<0.05)であった。
Figure 0005501976
同様に、図4および表14の結果により、このモデルにおいて化合物IIcが有意な抗腫瘍有効性を実証することが示され、第11日でΔT/ΔCパーセントは39%(p<0.05)であった。
Figure 0005501976
対照的にアシル部分でヒドロキシルを欠如し、そして代わりにメトキシを有する類似の化合物である化合物Iaは図5および表15で示されるようにKB8.5腫瘍異種移植片モデルにおいて有効ではなかった。
Figure 0005501976
化合物IIc 2.5mg/kg処置群での有意な体重減少を除いて、いずれかの処置群で有意な体重減少または毒性の外的徴候は観察されなかった。P−gp陽性KB8.5モデルにおいて認められた抗腫瘍活性の増大により、式IIの化合物を特徴付けるヒドロキシル官能性を欠如する式Iの化合物を超えて、式IIの化合物の予期されない利点が実証される。
実施例13:式IIの化合物は多くの腫瘍外植片に対して有効である
Fiebig, H.H., Maier,A., and Burger,A.M. Eur. J. Cancer 40:802−820(2004)「確立されたヒト腫瘍異種移植片でのクローン形成アッセイ:抗癌創薬の基礎としてのインビトロのインビボに対する相関性」に記載されるように、軟寒天アッセイで細胞系および腫瘍外植片のパネルに対して化合物IIaを試験した。表16は癌の型、試料の名前、アッセイにおけるそのGI50(50%成長阻止を達成するために必要な濃度)値、GI50の対数(log(GI50))および各試料の相対感度(差)を列挙する。パネル全体にわたって各細胞系に関するlog(GI50)を代表値log(GI50)から減じることにより差を計算する(この事例では0.236);正の値は試料が代表値よりも感受性であることを示すが、負の値は代表値よりも感受性でないことを示す。
たいていの適応症は感受性である試料を有する。このアッセイに基づいて最も感受性な癌は:血液癌(白血病およびリンパ腫、5/5)、小細胞肺癌(SCLC;5/5)、乳房(7/10)、膀胱(4/6)および肉腫(4/7);である。
Figure 0005501976
Figure 0005501976
Figure 0005501976
Figure 0005501976
実施例14:式IIの化合物は多くの固形腫瘍細胞系に対して有効である
McDermott,U., Sharma, S.V., Dowell, L., Greninger, P., Montagut, C., Lamb, J., Archibald, H., Raudales, R., Tam, A., Lee, D., Rothenberg, S.M., Supko, J.G., Sordella, R., Ulkus, L.E., Iafrate, A.J., Maheswaran, S., Njauw, C.N., Tsao, H., Drew,L., Hanke,J.H., Ma,X.J., Erlander,M.G., Gray,N.S., Haber,D.A., and Settleman,J., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 104, 19936−19941(2007)「ハイスループット腫瘍細胞系プロファイリングを使用することよる選択的キナーゼ阻害剤に対する遺伝子型に相関する感度の同定」)に記載されるように化合物IIaを固形腫瘍から誘導された細胞系のパネルに対して試験し、これもまた参照されたい。細胞を化合物で72時間処理し、そして生存細胞の分画を未処置対照と比較して報告した。表17に細胞系の名前、起源の器官、3つの試験された濃度(0.2nM、2.0nMおよび20nM)での生存細胞の分画および感度スコアを列挙する。感度スコアは5(最も感受性)から1(最も感受性でない)までであり、そしてスコア化は以下のとおりであった:5=0.2nMで生存分画≦0.2;4=0.2nMで0.2<生存分画≦0.5;3=0.2nMで生存分画>0.5および2.0nMで≦0.5;2=2.0nMで生存分画>0.5および20nMで≦0.5;1=20nMで生存分画>0.5。
全ての適応症は感受性である試料を有する。感度に関してこれらの癌を順序付けるための多くの可能な方式のうちの1つは各適応症に関する感度スコア代表値を計算することである(感度スコア/試料の数の合計)。3以上の代表値スコアを用いて非常に厳密な基準を取る場合、このアッセイに基づいて最も感受性な癌は:卵巣(3.38)、胃(3.32)、脳(3.21)、皮膚(3.02)、子宮頸部(3.00)および甲状腺(3.00);である。
Figure 0005501976
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実施例14:式IIの化合物は多くの固形腫瘍細胞系に対して有効である
CellTiter−Glo(登録商標)を用いる細胞生存アッセイにおいて化合物の存在下で48時間後の読み出しとして、血液悪性腫瘍から誘導される細胞系のパネルに対して化合物IIaを試験した。表18は血液悪性腫瘍の型、試料の名前、アッセイにおけるそのGI50(50%成長阻止を達成するために必要な濃度)値、GI50の対数(log(GI50))および各試料の相対感度(差)を列挙する。パネル全体にわたって各細胞系に関するlog(GI50)を代表値log(GI50)から減じることにより差を計算する(この事例では0.236);正の値は試料が代表値よりも感受性であることを示すが、負の値は代表値よりも感受性でないことを示す。
感受性な血液悪性腫瘍は:急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)およびホジキンリンパ腫(HL);である。
Figure 0005501976
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Claims (21)

  1. 式II:
    Figure 0005501976
    〔式中、
    1cはエチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、−CH(CH)O(オキセタン−3−イル)および−CCH(CH)O(3−メチルオキセタン−3−イル)からなる群から選択され;
    2cは水素またはメチルであり;
    15、R16、R17およびR18は各々独立してH、ハロ、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキルおよびCNから選択され;
    19、R20およびR21は各々独立してHまたは所望により置換されたC1−C10アシルであり;
    22はC1−C4ハロアルキルであり;
    pは1から3に等しい整数であり;そして
    qは1−3に等しい整数である〕
    の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  2. 22がフルオロメチルである、請求項に記載の化合物。
  3. pが2である請求項または請求項に記載の化合物。
  4. qが1である、請求項1−3のいずれかに記載の化合物。
  5. 2cおよびR15が各々Hである請求項1−4のいずれかに記載の化合物。
  6. 17およびR18が各々ハロである請求項に記載の化合物。
  7. 19、R20およびR21が各々Hである、請求項に記載の化合物。
  8. 19がHである、請求項1−7のいずれかに記載の化合物。
  9. IIb:
    Figure 0005501976
    の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  10. 式IIa:
    Figure 0005501976
    の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  11. 式IIc:
    Figure 0005501976
    の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  12. 請求項10または11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、該哺乳動物における固形腫瘍および血液癌から選択される増殖性疾患を処置するための薬剤。
  13. 該増殖性疾患が肺癌、乳癌、卵巣癌、皮膚癌、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、上咽頭癌、扁平上皮癌、甲状腺乳頭状癌、子宮頸癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌、膵臓癌、頭頸部扁平上皮癌および肉腫からなる群から選択される固形腫瘍である、請求項12に記載の薬剤。
  14. 固形腫瘍が乳癌である、請求項13に記載の薬剤。
  15. 固形腫瘍が胃癌である、請求項13に記載の薬剤。
  16. 固形腫瘍が前立腺癌である、請求項13に記載の薬剤。
  17. 腫瘍が多剤耐性腫瘍である、請求項13−16のいずれかに記載の薬剤。
  18. 該増殖性疾患がホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、毛様細胞白血病および多発性骨髄腫からなる群から選択される血液癌である、請求項12に記載の薬剤。
  19. 該血液癌が急性骨髄性白血病である、請求項18に記載の薬剤。
  20. 該血液癌が多発性骨髄腫である、請求項18に記載の薬剤。
  21. 請求項1〜11のいずれかに記載の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
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