JP2021525809A - プロドラッグおよびその医学的使用 - Google Patents

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Abstract

プロドラッグおよびその医学的使用本発明は、置換ピペラジンカルボキサミドを有する窒素マスタード、および腫瘍を標的とする細胞毒性剤としてのそれらの対応する薬学的に許容可能な塩、ならびにそれらの単独での、または他の癌治療と組み合わせた使用方法に関する。

Description

発明の詳細な説明
〔本発明の技術分野〕
本発明は、置換ピペラジンカルボキサミドを有する窒素マスタード、および腫瘍を標的とする細胞毒性剤としてのそれらの対応する薬学的に許容可能な塩、ならびにそれらの単独での、または他の癌治療と組み合わせた使用方法に関する。
〔本発明の背景〕
腫瘍選択性プロドラッグ(すなわち、細胞代謝によって、および/または腫瘍微小環境内で、治療活性化合物に選択的に変換され得る治療不活性化合物)の使用は、低酸素症などの癌に特異的な特徴を示す細胞を標的とするために癌療法において利用されてきたアプローチである。特に、低酸素腫瘍区画のみに対して細胞毒性剤となる低酸素活性化プロドラッグ(HAP)は、特に有害な予後、薬物の組み合わせ、および/または標準的な医療治療に対する耐性の場合に有望な抗腫瘍剤として示唆される(Hunter Fら、2016;Mistry INら、2017;Phillips R、2016;Silva VLおよびAl−Jamal WT、2017)。
ほとんどの腫瘍、特に、非常に悪性および/または薬剤耐性である固形腫瘍は、非効率的な血管網の発達から生じる、多少広範な低酸素領域を示す。窒素マスタードなどのアルキル化基を有するHAPは、低酸素領域内にDNA損傷を誘発することにより低酸素腫瘍中の癌細胞を選択的に排除し、活性化時の再分布の結果としてそのような領域を超えて細胞毒性活性を広げる(バイスタンダー効果)一方で、正常組織においては最小限の毒性しか有しないように設計されている。
HAPの中で、例えば窒素マスタードおよびそれらの化学的誘導体が、前臨床モデルにおいて試験されている(WO2009140553;WO2014031012;Baran NおよびKonopleva M、2017)。しかしながら、このような化合物は、癌患者において、または癌動物モデルにおいて、少なくとも潜在的な広域スペクトル細胞毒性剤としては、および/または特定のタイプの腫瘍において治療に有用であるものとしては、それらの臨床的有効性を未だ確認していない。これらの研究は、腫瘍低酸素症およびHAPの薬理学の理解および評価が不完全であったため、おそらく失敗に終わっている。実際、HAPの治療特性は、実際には癌細胞を細胞毒性剤に対して本質的に感応性(または非感応性)にする、それら自体の物理化学的特徴および腫瘍特異的特性の両方に依存する。さらに、このようなHAPは、弱い水溶安定性、低い最大許容投与量、低いバイスタンダー効果、ヒト好気性還元酵素による非機構的活性化、および/または経口的に生体摂取できないなどの、好ましくない医薬特性を示し得る。
したがって、少なくとも乳癌、肺癌、および膵臓癌などの特定の癌において、一般的には、および特にこれらの特性が特定のサブタイプの癌に適用され、かつ/または標準的な治療を改善する場合には、窒素マスタードの中で適切な医薬特性および治療特性を示すものを特性付けることは、価値があり有用であろう。
〔発明の概要〕
本発明は、いくつかの態様において、抗癌剤および免疫療法を包含する併用療法およびレジメンを含む、癌治療に有用な組成物および方法を提供し、当該癌治療は、置換ピペラジンカルボキサミドを有する窒素マスタード、特に対称または非対称ハロアルカンスルホネート含有マスタード(または以下の本文に示されるような、単なるハロアルカンスルホネートマスタード)の使用を含む。特に、本発明は、それを必要とする患者において、乳癌、膵臓癌、または肺癌の治療方法において使用するための、本明細書において以下に定義される化合物、もしくはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体に関する。そうでなければ定式化され、本発明は、乳癌、膵臓癌、または肺癌を有する患者の治療方法に関し、当該方法は、それを必要とする患者に、有効量の本発明の化合物、もしくはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体を投与することを含む。
この方法は、患者に存在する1つ以上の癌(乳癌、膵臓癌、肺癌、加えてそれらの転移、もしくは胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌などの他のタイプの癌、または軟組織肉腫)がハロアルカンスルホネートマスタードおよび/またはその代謝産物の投与に感応性である測定可能な、または他の方法で検出可能な低酸素領域によって特性付けられ、その1つまたはグループがインビボにおいて無酸素状態または正常酸素状態で修飾されるか、または化学合成によって利用可能になる状態において、好ましく適用される。関連する癌に特異的な低酸素状態は、非侵襲的技術(磁気共鳴または放射線学など)を使用することによって、または患者から得られた生物学的試料の分析を必要とする技術(腫瘍生検または血液分析など)によって、患者を治療する前、最中および後に決定され得、このような試料内の特定の遺伝子発現基準(遺伝子発現シグネチャーなど)によって、癌に特異的な低酸素状態を関連づけ、または予測する。
いくつかの態様において、対称または非対称ハロアルカンスルホネートマスタード、ならびにその塩、その溶媒和物、または立体異性体は、本発明による癌の治療のための組成物および方法において使用され、式(I)によって定義される構造を有する。
Figure 2021525809
および、その塩、その溶媒和物、または立体異性体。
Wは、Cl、Br、I、OSOを表す。
Xは、Cl、Br、I、OSOを表す。
、R、およびRのそれぞれは、独立してHまたはC1〜6のアルキルを表す。
本発明による方法および組成物において使用される好ましい式(I)の化合物は、少なくとも1つ(ただし、好ましくはすべて)のR、R、およびRがC1〜6アルキルを表し、より好ましくはWがBrまたはIであり、XがOSOMeまたはBrである化合物である。さらに、Rは、好ましくはメチルまたはエチルであり、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。例えば、好ましい式(I)の化合物は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11、またはCpd.11)である。好ましい式(I)の化合物は、RおよびRのそれぞれにおいて特異的な組み合わせを示す非対称または対称ハロアルカンスルホネート含有マスタードとして定義され、グループ化され得る。
好ましくは、式(I)の化合物は、メタンスルホネート塩などの薬学的に許容可能な塩の形態で、本発明による方法および組成物において使用される。例えば、好ましい式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネートのメタンスルホネート塩(化合物11Ms、またはCpd.11Ms)である。
式(I)の化合物は、生物学的に活性であってもよく、および/または別の式(II)の下で提供されてもよい。
Figure 2021525809
式中、W、X、R、R、およびRは、式(I)と同一の一般的定義および好ましい定義を有し、Zは、NHOH(ヒドロキシルアミン)またはNH(アミン)であり得る。好ましい式(I)の化合物は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)の代謝産物または誘導体であり、Zは、NHOH(化合物11c、またはCpd.11cにおいて)またはNH(化合物11d、またはCpd.11dにおいて)である。このような好ましい化合物の代謝は、WまたはXのいずれかがClであり(またはWおよびXの両方がClであり)、核酸、特に染色体DNAなどの特定の細胞成分と反応し得、次いで細胞毒性DNA付加物を形成し得る化合物をもたらし得る。
一般に、式(I)(または式(II))の化合物は、癌の低酸素領域に存在する細胞を含むヒト癌細胞において、低酸素依存性細胞毒性を発揮する。この細胞毒性は、乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、および軟組織肉腫から発見、単離または選択される癌細胞において、評価され得る。このような癌細胞は、生検からの初期癌細胞、腫瘍スフェロイド、またはインビトロまたはエキソビボで試験され得る株化癌細胞株(例えば、マウス癌モデルにおける異種移植片として)に由来し得る。本発明において提供される式(I)(または式(II))の化合物の実験的特性付けを考慮すると、前記化合物は、インビボまたはエキソビボにおける適切な技術を使用して、例えば特異的マーカー、トレーサー、および/または肺癌、膵臓癌、もしくは乳癌に由来する癌細胞を使用して、既に行われているように、低酸素腫瘍細胞を有する対象に投与され得る。
本発明による方法および組成物において使用される式(I)(または式(II))の化合物は、低酸素状態において測定される生物学的活性に関連する基準に関して、正常酸素状態において(または酸素の存在とは関係なく)観察されるものと比較して、または比較しないで、さらに定義され得る。例えば、このような基準は、低酸素細胞毒性比(HCR)であってもよく、これは、腫瘍生検または癌細胞株(上記に示すように、特に低酸素領域を示す場合には、乳癌細胞、肺癌細胞、膵臓癌細胞、胃腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、脳癌細胞、頭頸部癌細胞、および/または軟組織肉腫細胞から選択されるヒト癌細胞など)を使用してインビトロにおいて測定され得、ある値の範囲(例えば、2〜250、5〜250、または5〜150もしくは4〜190などの任意の中間の範囲)に含まれ得る。
好ましくは、式(I)(または式(II))の化合物は、特に低酸素領域を示す場合に、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫を治療、改善、または予防するための、本発明による組成物および方法において使用される。特定のサブタイプのこのような癌または変異体は、臨床的または生物学的に関連する基準(特定の形態、由来、病期、薬剤耐性、再発、予備療法的治療、転移特性、上皮間葉転換、免疫回避、癌再発、および/または癌に特異的な分子マーカーなど)によってさらに定義され得る。本発明によって治療され得るサブタイプのこのような癌は、(肺癌に対しての)小細胞肺癌または非小細胞肺癌であり、同様に(乳癌(など)に対しての)三種陰性乳房腫瘍、または(膵臓癌に対しての)膵臓腺癌であり、さらに、以下の詳細な説明および実施例に列挙されているものである。
このような癌のいずれかに罹患している対象は、式(I)(または式(II))の化合物ならびに関連する組成物および方法を使用する治療の前に、標準的な医療手順(放射線療法、化学療法、および/または免疫療法など)で以前に治療されたことがあってもよい(またはなくてもよい)。このような治療は、薬剤耐性(上記に列挙された標準的な医療治療の効力の減少または不足を含む)、癌再発(recurrence)または再発(relapse)、免疫回避(免疫拒絶に対する癌細胞の耐性)、または転移を回避する(または予防する)ことを意図されてもよく、そして、癌細胞増殖、腫瘍退縮、または他の臨床的に関連する基準に関して評価されてもよい。当該他の臨床的に関連する基準は、適切なさらなる治療または臨床手順を定義することを可能にする。このような治療は、式(I)(または式(II))の化合物をやはり含む(または含まない)。
式(I)(または式(II))の化合物または関連する薬学的に許容可能な塩の使用を包含する医薬組成物および方法は、特に非経口投与(および、より好ましくは皮下投与または静脈投与)、腫瘍内投与、経動脈塞栓投与、または経口投与のために、このような化合物を(薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント、担体、緩衝液、希釈剤、または安定剤と共に、または無しに)製剤化することによって、達成され得る。このような組成物は、癌(特に、肺癌、膵臓癌、または乳癌)を治療されるべき対象に対して、治療有効量で、好ましくは40〜4000mg/m以上の間に含まれる投与量、4000〜10,000mg/mの投与量(または代わりに、1〜100mg/Kg以上、100mg/Kg〜250mg/Kg以下として定義される)で、投与され得る。化合物または医薬組成物は、1ヶ月あたり1日、または、1ヶ月あたりもしくは各サイクル(2、3、または4週間にわたる)あたり2、3、4、または5日間連続して(または非連続で)毎日の頻度で、投与され得る。このレジメンは、他の抗腫瘍療法、特に標準的な医療手順(放射線療法、化学療法、および/または免疫療法など)のさらなる投与を含むか含まないかにかかわらず、1ヶ月以上、例えば、12ヶ月まで継続され得る。
本発明のさらなる目的は、式(I)(または式(II))の化合物、または関連する薬学的に許容可能な塩、組成物、もしくは製剤を、別の治療剤または療法、特に乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、ならびに/もしくは軟組織肉腫(およびサブタイプのこのような癌の任意の特定の変異体)の治療に有用な治療剤または療法と組み合わせて、使用することである。これらの薬剤および治療法は、放射線療法、化学療法、免疫療法、および/または薬剤の使用を含む任意の他のアプローチから選択され、当該薬剤は、癌、特に低酸素領域を示す場合には、特に乳癌、肺癌、膵臓癌、または上記に列挙した他のタイプもしくはサブタイプの癌、に関連する1つ以上の生物学的標的を調節する。これらの組み合わせは、癌治療を改善(腫瘍退縮、生存期間の延長、転移の減少または欠如など)するため、および/または他の薬剤または療法の効果を改善(減少した投薬量、副作用の限定、より広い治療濃度域、薬物特異的耐性の減少など)するために、特に有用であり得る。これらの組み合わせは、式(I)(または式(II))の化合物の、このような他の薬剤または治療との同時、交互、または連続投与のための組成物およびレジメンにおいて、提供され得る。
癌(一般的または特定の癌サブタイプ)を治療するための組成物および方法における式(I)または式(II)の化合物の使用、好ましい式(I)または式(II)の化合物、このような化合物および関連する製剤の調製、特定の投与量およびレジメン、ならびに他の薬剤または療法との特定の組み合わせ、に関する本発明のさらなる実施形態は、以下の詳細な説明および実施例において提供される。
〔図面の簡単な説明〕
図1:本発明によって使用され得る式Iの対称または非対称ハロアルカンスルホネートマスタード。Cpd.8〜Cpd.19の構造、特定の式(I)の対称または非対称ハロアルカンスルホネート含有マスタードが提供される(A)。Cpd.11Msと命名された式Iの参照非対称ハロアルカンスルホネートマスタードの合成プロセス(B)は、WO2014031012に記載されている最初の工程を含み、3,4−ジフルオロベンズアルデヒド(化合物1)から出発して、ナトリウムスルフィネートで処理され、対応するアルキルスルホン(化合物2)を得、次いで、酸化させて、結果として対応する安息香酸(化合物3)となる。古典的ニトロ化により、化合物4が得られ、これを対応する酸塩化物(化合物5)に変換し、さらに1−エチルピペラジンと反応させて、中間体アミド(化合物6)を得る。臭化リチウムおよびアジリジンエタノールとさらに反応させ、化合物7が得られ、次いでこれをメタンスルホン無水物で官能化して、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネートを得、これを化合物11(Cpd.11)として同定する。メタンスルホン酸との塩形成により、化合物11Ms(Cpd.11Ms;4−(5−((2−ブロモエチル)(2−((メチルスルホニル)オキシ)エチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロベンゾイル)−1−エチルピペラジン−1−メタンスルホネート)が得られる。式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードは、インビボにおいてヒト酵素によって代謝され得、化合物11で例示されるような一連の細胞毒性化合物になり、これは、中間体化合物11a(Cpd.11a)に、次いで腫瘍環境内に存在する低酸素状態において化合物11b(Cpd.11b)に、次いで酸素非依存性機構によって細胞毒性化合物11c(Cpd.11c)および11d(Cpd.11d)に、修飾される(C)。これらの代謝産物は、インビボにおいて生理学的塩の存在によりさらに修飾され得、臭素および/またはOM基が塩素原子によって置換され、一または二塩化物誘導体を生成する。
図2:特定のCpd.11cおよびCpd.11d代謝産物、ならびにその重水素化変異体の合成。図1Bに記載されているCpd.11Msと命名された式Iの参照非対称ハロアルカンスルホネートマスタードの合成プロセスは、ピペラジン環中の8個の水素原子がすべて重水素化されている重水素化形態のCpd.11Ms−d8を生成するように適合させることができ、これは、化合物5から化合物6を生成するための反応において、1−エチルピペラジンを対応する重水素化バージョンで置換することによるものであり、後のすべての反応は同じままである(A)。元々のメシレート塩(Cpd.11Ms)および重水素化メシル化塩(Cpd.11Ms−d8)は、還元され得、代謝産物Cpd.11cおよびCpd.11d、または、それらの対応する重水素化形態Cpd.11c−d8およびCpd.11d−d8を生成する(B〜E)。
図3:ヒト癌細胞株のパネルにおける、正常酸素状態および無酸素状態でのCpd.11Msおよび代謝産物の細胞毒性。それぞれの関連する癌タイプを代表する5つの細胞株は、正常酸素(NRX)状態または無酸素(ANX)状態のいずれかでCpd.11Ms(4時間薬物曝露)に曝露され、Cpd.11Msの無酸素特異的細胞毒性を示す関連するIC50およびHCR値は、インビトロATPベースの有効性アッセイを使用して計算された(A)。同じパネルの細胞株を使用して、Cpd.11cおよびCpd.11d代謝産物の形成速度が計算された(B)。肺癌(A−427、A459、NCI−460、NCI−H1975)、膵臓癌(Hs766T、BxPC−3、Capan−1)、および乳癌(MDA−MB−453、SK−BR−3、EFM−19、Hs578t)から単離されたヒト細胞株のパネルは、Cpd.11cおよびCpd.11d代謝産物の合成バージョンに曝露され、正常酸素状態においても細胞毒性特性を示す(C)。薬物を含まないコントロールウェルにおける平均プレーティング効率は、正常酸素状態下では43%、無酸素状態では30%であった。
図4:MDA−MB−436乳癌細胞株を使用して確立された三種陰性乳癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の強い効果が、大きな体重減少なしに観察される。
図5:NCI−H69肺癌株を使用して確立された肺癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。図2におけるように、腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の強い効果が、大きな体重減少(C)なしに観察される。
図6:PANC−1膵臓癌株を使用して確立された膵臓癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の効果が、大きな体重減少(C)なしに観察される。
図7:Cpd.11Msの有効性、および癌細胞特異的細胞毒性に関連するCpd.11Msの生物学的活性と癌低酸素状態との関係。ヒト癌細胞株から作製した腫瘍異種移植片のパネルにおける低酸素フラクションは、ピモニダゾール(PIMO+)染色を使用して評価された。2つの膵臓腫瘍異種移植モデルは、低酸素領域を示さなかった(A)。ヒト癌肺モデルDMS114におけるCpd.11Msの抗腫瘍有効性(B)は、確立されており、pH2AX染色によって評価されたようなDNA損傷は、対応する腫瘍異種移植片内でピモニダゾール染色によって評価されたような低酸素領域において、ほとんど検出された(C)。Cpd.11Msのこの抗腫瘍効果は、低酸素が検出されない膵臓癌モデルからのMiaPaca−2(D)およびSW1990(E)異種移植片においては、これらの細胞株がインビトロ、細胞培養モデルを使用して確立された無酸素状態において高いCpd.11Ms感応性であることが示されたにもかかわらず、観察されない。D0はDMS114モデルにおける腫瘍接種の28日後、SW1990モデルにおける14日後、MiaPaCa−2モデルにおける16日後である。
〔発明の詳細な説明〕
本発明による方法および組成物において使用される、式(I)または式(II)で定義される化合物の中で好ましい化合物は、W、X、R、R、R、およびZとして定義される位置における置換基の特定の組み合わせを示す化合物、および関連するその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体である。これらの化合物は、関連する細胞ベースの動物モデルを使用する実施例において示されるように、例示的な式(I)の化合物に曝露された場合に特に感応性および退行性である選択された癌のタイプにおいて、治療活性であると定義される。これらの証拠は、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、もしくは軟組織肉腫、ならびに臨床および/または分子レベルで、特に低酸素領域の存在に関して定義される特定のサブタイプを有する患者の治療における、本発明の化合物、またはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体の使用を支持する。
本発明によるこれらの治療方法は、有効量の式(I)または式(II)の化合物の投与を含み、さらに、特に癌を治療するための、放射線療法、化学療法、免疫療法、または癌関連標的を調節する化合物の投与を含む任意の療法を含む、別の治療活性化合物の事前の、同時の、交互の、連続的な投与を含んでもよい。併用療法は、低酸素症から独立した、特に乳癌、肺癌、および/または膵臓癌において、さらなる補完的な治療効果を提供し得る療法または薬剤を含んでもよい。
本明細書中で使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、疾患または状態の少なくとも1つの症状を緩和、減衰または改善すること、さらなる症状を予防すること、状態の進行を予防すること、疾患または状態を阻害すること、例えば、疾患または状態の進行を停止すること、疾患または状態を軽減すること、疾患または状態の後退を引き起こすこと、疾患または状態によって引き起こされる状態を軽減すること、あるいは疾患または状態の症状を停止することを含む。一実施形態において、治療は予防的治療である。一実施形態において、治療は療法的治療に言及する。前記実施形態のいずれかにおいて、治療は、任意の好ましい臨床的に準拠した投与量またはレジメンにしたがって、疾患または状態の改善を、単独、または標準的な医療治療と組み合わせて、提供し得る。
本発明による使用のための式(I)の化合物の中で、Rは、好ましい化合物がRおよび/またはRとしてC1〜6アルキルを有することを表す。本発明による使用のためのこれらの好ましい式(I)の化合物の中で、非対称ハロアルカンスルホネートマスタードとして提供されるものは、RとしてC1〜6アルキルを有する。
本明細書中で使用される場合、R、R、およびR基を定義する「C1〜6アルキル」は、1〜6個の炭素原子から構成される脂肪族炭化水素基に言及する。C1〜6アルキルへの言及は、「飽和C1〜6アルキル」および/または「不飽和C1〜6アルキル」を含む。C1〜6アルキル基の定義は、飽和、不飽和に関わらず、分枝、直鎖、または環状基を含む。単なる例示として、C1〜6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含む。
本発明による癌治療のための組成物および方法において使用される式(I)で定義される化合物の中で好ましい化合物は、RおよびRのそれぞれにおいて同一のC1〜6アルキルを表すものとして定義およびグループ分けされ得、ここで、Rは好ましくはメチルまたはエチルであり、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。これらの好ましい化合物は、対称または非対称(ハロアルカンスルホネート含有)ハロアルカンスルホネートマスタードとして提供され得る。前者の場合、WおよびXの両方はCl、Br、またはIを表す(好ましくはWおよびXの両方は臭素である)。後者の場合、WはCl、Br、またはI(好ましくはWは臭素)を表し、RはC1〜6アルキルを表し(好ましくはメチルを表し)、RはC1〜6アルキルを表す(好ましくはメチルを表す)。
この好ましい実施形態によれば、好ましい式(I)による化合物は、RおよびRのそれぞれにおいて、以下の組み合わせを表す非対称または対称ハロアルカンスルホネート含有マスタードから選択される(図1Aを参照)。
(a)RおよびRの両方がメチルである場合、化合物は、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)(4−メチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物8)、または2−((2−ブロモエチル)(5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物9)である。
(b)RがエチルでありRがメチルである場合、化合物は、5−(ビス(2ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)(4−エチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物10)、または2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)である。
(c)RがイソプロピルでありRがメチルである場合、化合物は、(5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−イソプロピルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物12)、または2−((2−ブロモエチル)(5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物13)である。
(d)RがメチルでありRがエチルである場合、化合物は、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(エチルスルホニル)(2−ニトロフェニル)(4−メチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物14)、または2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物15)である。
(e)RおよびR2の両方がエチルである場合、化合物は、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(エチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−エチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物16)、または2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(エチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物17)である。
(f)RがイソプロピルでありRがエチルである場合、化合物は、5−(ビス(2ブロモエチル)アミノ)4(エチルスルホニル)−(2ニトロフェニル)(4−イソプロピルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物18)、または2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物19)である。
代替的には、本発明による癌治療のための組成物および方法において使用される式(I)で定義される化合物の中で好ましい化合物は、代わりのRおよびR置換基を有する対称または非対称のハロアルカンスルホネートマスタードのいずれかであるとして定義およびグループ分けされ得る。前者の場合、WおよびXの両方はCl、Br、またはIを表し(好ましくはWおよびXの両方は臭素である)、好ましくはRおよびRのうち少なくとも1つ(より好ましくはRおよびRの両方)はC1〜6アルキルを表す。
対称ハロアルカンスルホネートマスタードに関してさらに好ましい実施形態において、Rは、好ましくはメチルまたはエチルであり、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルである。後者の場合、WはCl、Br、またはIを表し(好ましくはWは臭素である)、RはC1〜6アルキルを表し(好ましくはメチルを表し)、好ましくはRおよびRのうち少なくとも1つ(より好ましくはRおよびRの両方)はC1〜6アルキルを表す。非対称ハロアルカンスルホネートマスタードに関して好ましい実施形態において、Rは好ましくはメチルまたはエチルであり、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。この実施形態によれば、最も好ましい式(I)による化合物は以下から選択される。
(a)5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)(4−メチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物8)、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)(4−エチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物10)、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−イソプロピルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物12)、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(エチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−メチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物14)、5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(エチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−エチルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物16)、および5−(ビス(2−ブロモエチル)アミノ)−4−(エチルスルホニル)−(2−ニトロフェニル)(4−イソプロピルピペラジン−1−イル)メタノン(化合物18)。
(b)2−((2−ブロモエチル)(5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物9)、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物13)、2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物15)、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(エチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物17)、および2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物19)。
上記で定義される好ましい式(I)による化合物(RおよびRにおける置換基の組み合わせを有する非対称または非対称のいずれかであるハロアルカンスルホネートとして、またはXにおける置換基のために非対称または非対称のいずれかであるRおよびRの組み合わせを有するハロアルカンスルホネートマスタードとして)のいずれかの定義とは独立に、本発明による癌(特に低酸素領域を示す場合に、特に乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫)治療のための組成物および方法において使用される好ましい式(I)の化合物は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)、任意の塩、任意の溶媒和物、または任意の立体異性体である。
さらに、上記で定義される好ましい式(I)による化合物のいずれかの定義とは独立に、これらの化合物は、さらなる代替法のもとで提供され得、対応する式(II)の化合物は、式(I)における−NO置換基の、代替的な窒素ベースの置換基(例えば、ヒドロキシルアミンまたはアミン)への修飾から生じる代謝産物である。
式(I)の化合物、またはその塩、その溶媒和物、もしくはその立体異性体は、インビボにおいてそれらの投与後に代謝されるプロドラッグとして、特に式(II)の化合物として提供され得る。好ましい式(II)の化合物は、式(I)の化合物であり、ここで、Zは、図1Cにおける化合物11について示されるようにNHOHまたはNHであり得、その投与後に代謝産物を、癌細胞に対して細胞毒性である活性代謝産物化合物11cおよび化合物11dの形態で、もたらし得る。式(II)の化合物はまた、例えば、式(I)の化合物の合成における中間体化合物から出発して、式(I)の誘導体化合物を生成するための任意の代替プロセスによって、提供され得る。
本明細書中で開示される化合物の「代謝産物」は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の誘導体である。用語「活性代謝産物」は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の生物学的に活性な誘導体に言及する。本明細書中で使用される場合、用語「代謝される」は、特定の物質が生物によって変化するプロセス(加水分解反応、および酸化反応などの酵素によって触媒される反応、またはニトロレダクターゼによって触媒される還元などを含むが、これらに限定されない)の全体に言及する。したがって、酵素は、化合物に対して特定の構造変化を生じ得る。例えば、シトクロムP450は種々の酸化および還元反応を触媒し、ウリジンジホスフェートグルクロニルトランスフェラーゼは活性化グルクロン酸分子の芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンおよび遊離スルフヒドリル基への転移を触媒する。代謝に関するさらなる情報は、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(第13版、2017;McGraw−Hill)から得ることができる。本明細書中で開示される化合物の代謝産物は、化合物を宿主に投与すること(次いで、ヒトまたは動物モデルである宿主からの組織サンプルの分析)によって、または化合物をインビボ/エキソビボ状態での細胞培養においてヒトまたは動物細胞とインキュベートすること(次いで、細胞抽出物および/または細胞培養培地の分析)によって、のいずれかによって、同定され得る。両方の方法は、当技術分野で公知である。本発明による特定の薬理学的に活性な代謝産物は、式(I)の化合物のニトロ部分の還元によって形成され、それによって、式(II)によって同定されるような、活性なヒドロキシルアミン−およびアミン−含有代謝産物を生成する。さらに、塩素原子は、式(I)の化合物の代謝産物中に、生理学的塩とインビボで反応した後、代替のW基、X基(またはその両方)として存在し得る。
以下で使用される場合はいつでも、語句「式(I)の化合物」、「式(II)の化合物」、「本化合物」もしくは「本化合物」、または類似の用語は、式(I)または式(II)の化合物、その塩、その溶媒和物、およびその立体化学異性体形態を含むことを意味する。式(I)または式(II)の化合物は、特に分枝である場合、R、RまたはR基に関してキラリティーの中心を有してもよく、立体化学異性体形態として存在してもよい。
本発明はまた、本化合物上に生じる原子のすべての同位体を含むことを意図する。同位体は、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。限定するものではなく一般的な例として、水素の同位体は、三重水素および重水素を含む。炭素の同位体は、C−13およびC−14を含む。式(I)または式(II)の化合物の例は、ピペラジン環の水素原子が重水素によって置換されている重水素化変異体として、実施例1において提供される(Cpd.11−d8、Cpd.11s−d8、およびCpd.11d−d8の構造および合成方法で例示される)。
本明細書中で使用される場合、用語「立体化学異性体形態」は、式(I)の化合物が有し得る、同じ結合順によって結合されるが非互換性である異なる三次元構造を有する、同じ原子から構成されるすべてのあり得る化合物を定義する。(R)または(S)が置換基内のキラル原子の絶対配置を表示するために使用される場合を参照すると、当該表示は、単離した置換基ではなく、化合物全体を考慮して行われる。別段の言及または示唆がない限り、化合物の化学的表示は、前記化合物が有し得る、すべてのあり得る立体化学異性体の混合物を包含する。前記混合物は、前記化合物の基本分子構造のすべてのジアステレオマーおよびエナンチオマーを含有してもよい。純粋な形態または互いに混合された両方の本発明の化合物のすべての立体化学異性体形態は、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
式(I)または式(II)の化合物および本明細書中で言及される中間体の純粋な立体異性体形態は、前記化合物または中間体の同じ基本分子構造の他のエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に、用語「立体異性的に純粋である」は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち、1つの異性体が最小80%、他のあり得る異性体が最大20%)から100%の立体異性体過剰率(すなわち、1つの異性体が100%、他の異性体がない)までを有する化合物または中間体、さらに特に90%〜100%の立体異性体過剰率を有する化合物または中間体、よりさらに特に94%〜100%の立体異性体過剰率を有する化合物または中間体、最も特に97%〜100%の立体異性体過剰率を有する化合物または中間体、に関する。用語「エナンチオマー的に純粋である」および「ジアステレオマー的に純粋である」は、同様の方法で理解されるべきである。
式(I)または式(II)の化合物および本明細書中で言及される中間体の純粋な立体異性体形態は、当技術分野で公知の手順の適用によって、得てもよい。例えば、エナンチオマーは、光学活性な酸または塩基を有するそれらのジアステレオマー塩を選択的に結晶化することによって、互いに分離してもよい。その例は、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸およびカンファースルホン酸である。
代替的には、エナンチオマーは、キラル固定相を使用するクロマトグラフィー技術によって分離されてもよい。前記純粋な立体化学異性体形態はまた、反応が立体特異的に起こるならば、対応する適切な出発物質の純粋な立体化学異性体形態から誘導されてもよい。好ましくは、特定の立体異性体が所望される場合、前記化合物は、立体特異的な調製方法によって合成されることがある。これらの方法は、エナンチオマー的に純粋な出発物質を有利に使用することがある。式(I)または式(II)の化合物のジアステレオマーラセミ体は、従来の方法によって別々に得ることができる。有利に使用され得る適切な物理的分離方法は例えば、選択的結晶化およびクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーである。
上記で定義される好ましい式(I)による化合物(すなわち、R、R、Rの組み合わせを有する非対称または非対称ハロアルカンスルホネートマスタードのようなもの、またはRのために非対称または非対称のいずれかであるRおよびRの組み合わせを有するハロアルカンスルホネートマスタードのようなもの)のいずれかは、好ましくは、薬学的に許容可能な塩の形態で、本発明による癌治療のための組成物および方法において提供される。
上記で言及される薬学的に許容可能な酸および塩基付加塩は、式(I)または式(II)の化合物が形成することができる治療的に活性な非毒性の酸および塩基付加塩形態を含むことが意図される。薬学的に許容可能な酸付加塩は、塩基形態を、アニオン形態のこのような適切な無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)または有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸など)を用いて処理することによって、簡便に得ることができる。適切なアニオンは、例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホネート、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、カルシウムエデテート、カンシレート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデテート、エストレート、エシレート、フマレート、グルコネート、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフタレート、ヨウ化物、イセチオネート、乳酸塩、ラクトビオネート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メシレート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムケート、硝酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロネート、サリチル酸塩、ステアリン酸、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トリエチオダイド、メタンスルホネート、トシレート、などを含む。代わって、前記塩形態は、適切な塩基を用いた処理によって遊離塩基形態へと変換され得る。より好ましくは、塩はメタンスルホネート塩である。例えば、式(I)の化合物の好ましい薬学的に許容可能な塩は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネートのメタンスルホネート塩(化合物11Ms)である。
酸性プロトンを含有する式(I)または式(II)の化合物は、カチオン形態の適切な有機塩基および無機塩基を用いて処理することによって、それらの非毒性金属またはアミン付加塩形態へと変換され得る。適切な塩基性塩は、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカインなどの有機カチオンで形成される塩;およびアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの金属カチオンで形成される塩を含む。代わって、前記塩形態は、適切な酸を用いた処理によって遊離形態へと変換され得る。式(I)または式(II)の化合物のいくつかは、互変異性体形態で存在してもよい。このような形態は、上記で明示的には示されていないが、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
いくつかの実施形態において、式(I)または式(II)の化合物は、非溶媒和形態、または水、エタノール、アルコールなどの薬学的に許容可能な溶媒に溶媒和形態で存在する。式(I)または式(II)の化合物の溶媒和形態もまた、本明細書中に開示されると考えられる。治療用途のために、式(I)または式(II)の化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容可能なものであり、この塩は、薬学的に許容可能な酸および塩基付加塩として言及され得る。薬学的に許容可能でない酸および塩基の塩はまた、例えば、薬学的に許容可能な化合物の調製または精製における使用を見出し得る。すべての塩は、薬学的に許容可能であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
本発明の式(I)の化合物は、WO2014031012に記載の手順によって調製されてもよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。WO2014031012の図8に示されるように、3,4−ジフルオロベンズアルデヒド(100)とナトリウムアルカンスルフィネートとの反応はアルキルスルホン(III)を提供し、これは、過酸化水素を含有するリン酸緩衝液中においてナトリウムクロライトで酸化されて、酸(IV)を得ることができる。これらをニトロ化するとニトロ酸(V)が得られ、ジエタノールアミンと直接反応してジアール(VI)を得ることができる、あるいは最初に保護してtert−ブチルエステル(VIII)を得ることができ、その後、ジエタノールアミンと反応してジアール(IX)が得られる。ジアール(VI)の塩化チオニル媒介塩素化、および次いで得られた酸塩化物中間体と脂肪族アミンとの反応により、1−カルボキサミドジクロロマスタード(VII)が得られ、これは、メチルエチルケトン中、還流下でハロゲン化リチウム媒介ハロゲン交換を受けて、式(I)の化合物を与えることができる。代替的には、ジアール(IX)を、適切なアルキルスルホニルクロライドとの反応により、それらのビス−アルカンスルホネートエステル(X)に変換することができる。ビス−アルカンスルホネートエステル(X)をトリフルオロ酢酸でtert−ブチルエステル脱保護すると、酸(XI)が得られる。酸化マグネシウムの存在下でこれらを塩化オキサリルと反応させると、酸塩化物中間体が得られ、さらに脂肪族アミンと反応させることができ、ビス−アルカンスルホネート1−カルボキサミド誘導体(XII)が得られる。これらをアセトン中、室温で過剰量のハロゲン化リチウムと反応させると、式Iの対称マスタードを得ることができ、一方、アセトン中、室温で1当量のハロゲン化リチウムと反応させると、式(I)の非対称ハロアルカンスルホネートマスタードが得られる。
式(I)の対称ハロアルカンスルホネートマスタードに関して、WO2014031012の図11に示されるように、酸化マグネシウムの存在下でのビスメタンスルホネートエステル109と塩化オキサリルとを反応させると酸塩化物中間体が得られ、これをさらに1−メチルピペラジンと反応させて、ビスメタンスルホネート1−カルボキサミド124が得られた。これと過剰量の臭化リチウムとをアセトン中、室温で反応させると、化合物22が得られた。ジオール104の塩化チオニル媒介塩素化、次いで得られた酸塩化物中間体と1−エチルピペラジンおよび1−イソプロピルピペラジンとの反応により、ジクロロマスタード131および132がそれぞれ得られた。次いで、メチルエチルケトン中での還流で臭化リチウム媒介ハロゲン交換させて、それぞれ化合物23および24を得た。酸化マグネシウムの存在下、ビス−メタンスルホネートエステル119と塩化オキサリルとの反応により酸クロリド中間体が得られ、これを1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジンおよび1−イソプロピルピペラジンと反応させて、それぞれ、ビス−メタンスルホネート1−カルボキサミド133、134および135が得られた。アセトン中、室温で過剰量の臭化リチウムと反応させると、化合物25、26および27がそれぞれ得られた。
上記で定義される好ましい式(I)による化合物(すなわち、R、R、Rの組み合わせを有する非対称または非対称ハロアルカンスルホネートマスタードのようなもの、またはX基のために非対称または非対称のいずれかであるRおよびRの組み合わせを有するハロアルカンスルホネートマスタードのようなもの)のいずれかはまた、アジリジンエタノール(または他のアジリジンアルコール)の使用を含む、図1Bに要約されるような代替方法を、そのままに、または保護基化学を使用して改変して、使用することによって、生成され得る。一般的な保護基は、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS/TBDMS)およびトリイソプロピルシリル(TIPS)であるシリルエーテルであり、これらは穏和な条件下で選択的に導入および除去することができるので特に有用である。上記で定義される好ましい式(II)による化合物のいずれかは、代替的には、化合物1、2、3、または4(図1B)から出発して、上記で概説したプロセスを、そのままに、または最終生成物において所望のZ置換基を有するように改変して、改変することによって得てもよい。
式(I)の化合物は、ヒトの癌細胞、好ましくは癌の低酸素領域の細胞において、低酸素依存性細胞毒性(さらなるバイスタンダー効果の有無にかかわらず)を発揮することによって、好ましくはその代謝(例えば、式(II)の化合物への)を通して、インビボでその治療活性を発揮することが意図される。この細胞毒性は、乳癌、肺癌、および膵臓癌だけでなく、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、および軟組織肉腫から発見、単離または選択される癌細胞において評価され得る。このような癌細胞は、生検からの初期癌細胞、腫瘍スフェロイド、またはインビトロもしくはエキソビボで試験され得る株化癌細胞株(例えば、マウス癌モデルにおける異種移植片として)に由来してもよい。特に、ヒト固形腫瘍に見られる病的低酸素症の存在下では、ヒドロキシルアミンおよびアミン細胞毒性代謝産物への還元が起こってもよい。ニトロレダクターゼまたは他の酵素による代謝に加えて、式(I)の化合物はまた、腫瘍領域内に見られ得る低酸素領域においても代謝される。
本明細書中で言及される場合、「低酸素の」または「低酸素」は、正常な生理学的酸素濃度よりも有意に低い、身体または身体の領域が十分な酸素レベルを奪われている状態(その領域または組織中の供給と消費との間の不均衡から生じる)の、特に酸素圧が約1%未満(10,000ppm酸素;7.6mmHg)未満の場合の、組織中の酸素濃度に言及する。正常細胞または癌細胞内(単層または多層中、ならびに腫瘍スフェロイド中の接着細胞として)のインビトロにおける低酸素を、インビボおよび特定の組織または組織内で評価する手段は、文献から公知である。式(I)(または式(II))の化合物の効果は、このようなモデルにおける酸素濃度の関数として評価され得、特に、γH2AXリン酸化の細胞毒性または低酸素依存性誘導の酸素阻害、DNA損傷に関連する修復および応答、薬物−DNA付加物およびDNA架橋物の存在、ならびに/または細胞周期停止を評価することができる。この範囲においては、欠けている(または増強された)低酸素依存性活性および/または代謝活性(1つ以上の特定の還元酵素等)を示す細胞株は、式(I)(または式(II))の化合物の代謝活性化が、関連する低酸素依存性細胞毒性および有意なバイスタンダー効果をどのように誘発するのかを同定するために、使用され得る。式(I)(または式(II))の化合物は、トレーサー、放射線標識または蛍光プローブを含む細胞および組織試料中の酸素および低酸素と並行して代謝産物生成を画像化または評価するための技術および装置の手段、または組織学的解析によって、インビボまたは三次元モデルにおいて評価され得る(Meng Fら,2012;Dhingra VKら,2015;Papkovsky DBおよびDmitriev RI,2018;Stornetta Aら,2018;Mirabello Vら,2018)。
「バイスタンダー効果」または「バイスタンダー効果」は、標的細胞を細胞毒性プロドラッグ代謝産物を用いて処理することによって誘発される効果に言及し、標的細胞に対する局所微小環境中の細胞または組織に対する二次的アブレーション効果に言及する。
理論に束縛されることを望むものではないが、バイスタンダー効果は、産生部位からの細胞毒性プロドラッグ代謝産物(活性化プロドラッグ)の拡散によって引き起こされ、標的細胞から離れた未修飾細胞に影響を及ぼすと考えられる。バイスタンダー効果(BEE、バイスタンダー効果効率とも定義される)は、文献および実施例(Wilson Wら,2002;Hunter Fら,2014)に記載される方法によって、定量化され得る。試験プロドラッグのバイスタンダー効果は、アルゴリズム((LogC10T−LogC10Tc)/(LogC10T−LogC10Ac))を使用して算出され得るバイスタンダー効果効率により測定される。約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満のBEE値は「十分に小さい」と考えられ、一方、約20%、50%、70%、それ以上より高いBEE値は「十分」であると考えられる。
さらに、本発明による方法および組成物において使用される式(I)(または式(II))の化合物は、低酸素状態において決定される生物学的活性に関連する基準に関して、正常酸素状態において(または酸素の存在から独立して)観察されるものと比較して、または比較しないで、さらに定義されてもよい。例えば、このような基準は、癌細胞株(上記に示すように、乳癌細胞、肺癌細胞、膵臓癌細胞、胃腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、脳癌細胞、頭頸部癌細胞、および/または軟組織肉腫細胞から選択されるヒト癌細胞などにおいて)を使用してインビトロにおいて測定され得、値域に含まれ得る、低酸素細胞毒性比(HCR)であってよい。「低酸素細胞毒性比」または「HCR」は、所定の化合物が正常酸素状態および無酸素状態において癌細胞の50%を死滅させる濃度(IC50)を計算し、レサズリンまたはスルホローダミンB(SRB)アッセイ、またはATPベースの生存率アッセイなどの別の生存率アッセイに基づく文献に記載されているように、このような値を除算することによって、得られる。このような値を計算するための例示的なアッセイは、実施例1にて提供される。特に、式(I)(または式(II))の化合物は、1nM〜500μM、または任意の中間範囲(10nM〜100μM、または100nM〜50μMなど)の低酸素細胞毒性の値(IC50)、および5(またはさらには2)〜1000、または任意の中間範囲(2〜250、5〜250、4〜190、または5〜150など)に含まれる低酸素細胞毒性比の値を示してもよい。実施例は、異なる起源を有するか、または異なる癌サブタイプに対応する癌細胞株において測定された中間範囲または他のIC50のさらなる例を提供する。
モデル(インビトロ、エキソビボ、または動物モデルである)の選択は、特定の癌細胞株(ヒトまたは動物、天然またはhTERT不死化のいずれか)の間の関係、またはインビトロもしくはエキソビボで試験した場合には初期癌細胞生検の間の関係を記述した文献に基づいて、行われ得る。免疫ブロット、RT−PCR、免疫細胞化学、免疫沈降、RNAマイクロアレイ、RNA−seq、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、マルチウェルリーダーなどによって分析され得る細胞増殖、プログラム細胞死、アポトーシス、ネクローシス、遺伝子活性化または不活性化、および他の癌の特徴を含む、式(I)(または式(II))の化合物の使用の結果である腫瘍に対する低酸素関連効果を評価するために、多くの機能アッセイが利用可能である(MenyhaRTら、2016)。
式(I)(または式(II))の化合物は、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫を治療するための、本発明による組成物および方法において使用される。薬物への暴露後の癌系統の遺伝子型、表現型、および臨床的関連性にわたる関係性を記載する文献の具体例は、膵臓癌(Deer ELら、2010)、肺癌(Cai Zら、2015)、および乳癌(Dai Xら、2017)について、利用可能である。さらに、ATCC(https://www.atcc.org)およびDSMZ(https://www.dsmz.de)は、このような生物学的材料を調達する組織であり、例えば、特定の遺伝子変異(APC、EGFR、BRAF、PTEN、RAS、RB1、またはTP53など)、サブタイプ、起源、および/または病理学(例えば、ATCCカタログ番号CB−0915−02、CB−1015−07、CB−0513−01、ならびに実施例2に示されるように、ATCCまたはDFMZのいずれかから入手可能な他のものを参照)によって系統立てられたATCC癌細胞株(乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、および軟組織肉腫を含む)に関するATCCレポートおよびリソースブックにおいて、機能アッセイにおけるそれらの使用、および/またはヒト癌についての関連性の具体的説明を提供する組織である。
特定のサブタイプまたは変異体のこのような癌は、臨床的または生物学的に関連する基準(特定の形態、起源、病期、薬剤耐性、再発、転移特性、および/または分子マーカーなど)によって、上記に示すように定義され得、1つ以上の癌(サブ)タイプおよび/または患者集団にわたって適用可能であってよい。このような癌のいずれかに罹患している対象は、式(I)(または式(II))の化合物ならびに関連する組成物および方法を使用する治療の前に、標準的な医療(放射線療法、化学療法、および/または免疫療法など)を用いて治療されていてもよく(またはされていなくてもよく)、その結果、前記被験体における癌の薬剤耐性、免疫回避、再発、または転移が回避、予防、または遅延され得る。
本発明において提供される式(I)の化合物の実験的特性付けを考えると、前記化合物は、例えば特異的マーカー、トレーサー、および/または肺癌、膵臓癌、もしくは乳癌に由来する癌細胞(動物モデルにおける患者の癌細胞の生検および異種移植を利用することによることを含む)を使用して、インビボまたはエキソビボにおける適切な技術を使用して確立されるように、低酸素腫瘍細胞を有する対象に投与され得る。代替的には、癌(サブ)タイプは、癌細胞もしくは免疫細胞(T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球など)に関して、標準的な医療に対する耐性、量の変化、および/もしくは分子マーカーによって、さらに定義される。これらの細胞は、腫瘍内、腫瘍微小環境、または生物学的流体(血液など)において、標準的な技術(免疫細胞化学、フローサイトメトリー、または免疫組織化学など)を使用して、特定の細胞集団(またはサブ集団)として検出されてもよく、癌または他のバイオマーカーの特定の免疫学的プロファイルを考慮して、式(I)(または式(II))の投与の治療効果を評価することを補助してもよい。
本発明によって治療され得る肺癌のサブタイプは、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、または中皮腫である。NSCLCの例は、扁平上皮細胞癌、腺癌、および大細胞癌を含む。ある場合には、中皮腫は、肺と胸腔との内面(胸膜)または腹部の内面(腹膜)の癌性腫瘍である。中皮腫は、アスベスト曝露によるものであってもよい。
本発明によって治療され得る膵臓癌のサブタイプは、1)外分泌膵臓癌、例えば膵臓の腺房細胞癌、腺癌、腺扁平上皮癌、巨細胞癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腺癌、膵臓芽細胞腫、および漿液性嚢胞腺癌など、ならびに、2)内分泌膵臓癌、例えばガストリノーマ(ゾリンジャー−エリソン症候群)、インスリノーマ、非機能性島細胞腫瘍、ソマトスタチノーマ、血管作用性腸ペプチド放出腫瘍(VIPomaまたはヴェルナー−モリソン症候群)、または膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)、を含む。好ましい実施形態において、膵臓癌は、腺癌(すなわち、膵管癌)、浸潤性膵管癌、固体−偽乳頭腫瘍(SPT)、グルカゴノーマ、または多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)(ウェルマー症候群)である。
本発明によって治療され得る乳癌のサブタイプは、三種陰性乳房腫瘍および癌のようなものである。本明細書中で使用される場合、「乳癌」は、乳房細胞の任意の悪性腫瘍を意味する。三種陰性乳癌(TNBC)は、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体を欠く細胞を特徴とする乳癌であり、その表面には過剰量のHER2タンパク質を有しない。TNBCは、他の乳癌よりもより浸潤性であることが多い。腫瘍細胞はエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体を欠くので、ホルモン療法(タモキシフェンなど)単独では、効果的ではない。さらに、細胞はHER2タンパク質を欠くので、HER2を標的とする薬は効果がなく、したがってより効果的な特定の治療を必要とする。
乳癌の主要な4つのサブタイプは、Luminal A(ERポジティブ、HER2ネガティブ、増殖マーカーKi67を低発現、ホルモン療法または化学療法に感応性であることが多い)、Luminal B(ERポジティブ、HER2ポジティブ、増殖マーカーKi67を高発現、ホルモン療法、化学療法または抗HER2抗体療法に可変的に感応性である)、Basal(ER/PR/HER2トリプルネガティブ、増殖マーカーKi67およびEGFRを高発現、ホルモン療法には感応性でないが化学療法には感応性であることが多い)、HER2増幅(ERネガティブ、HER2ポジティブ、増殖マーカーKi67を高発現、ホルモン療法、化学療法または抗HER2抗体療法に変わりやすく反応性である)など、分子マーカーと薬剤反応とを組み合わせることによって、定義されてもよい。
代替的には、乳癌のサブタイプは、組織形態学的異常によって、さらに定義され得、これに限定されるものではないが、インシチュ腺管癌(DCIS、最も一般的な非浸潤性乳癌)、インシチュ小葉癌(LCIS)、浸潤性(または浸透性)小葉癌(ILC)、浸潤性(または浸透性)腺管癌(IDC)、微小浸潤性乳癌(MIC)、炎症性乳癌、腺様嚢胞(腺嚢胞)癌、低悪性度腺扁平上皮癌、髄様癌、粘液性(またはコロイド)癌、乳頭癌、管状腺癌、化生性癌、乳房の篩状癌、男性乳癌、正常様乳癌、乳頭のパジェット病、乳房の葉状腫瘍、転移性乳癌、または微小乳頭癌を含む。単一の乳癌腫瘍は、これらのタイプの組み合わせであり得、浸潤性癌およびインシチュ癌の混合物であり得る。乳癌のこれらのサブタイプは、外科手術、放射線療法、化学療法(例えば、パクリタキセル)、ホルモン療法(例えば、タモキシフェン)、癌抗原を標的とする免疫療法もしくは他の抗体ベース(例えば、トラスツズマブ、HER2受容体を標的とする)の療法、または化学療法と免疫療法との併用(例えば、タモキシフェンおよびトラスツズマブ)(または非併用)を含む、所定の乳癌サブタイプに対する標準的な治療と考えられる1つまたはアプローチを使用することによって、治療されてもよい。
代替的には、乳癌の傾向の多少の前兆である乳房組織の過形成および他の良性病変のサブタイプは、乳管過形成、小葉過形成、異常乳管過形成、および異常小葉過形成を含む(さらなる組織形態学的異常を伴わない)このような異常細胞増殖の位置から、さらに定義され得る。
さらなるタイプおよびサブタイプの癌は、低酸素領域を示してもよく、明細書中に記載されるように式(I)(または式(II))の化合物を使用することによって治療されてもよい。消化器癌のサブタイプは、咽頭癌、胃癌、神経内分泌腫瘍(NET)、小腸癌、胆嚢および胆道癌、胃腸間質腫瘍(GIST)、結腸直腸癌、および肛門癌を含むが、これらに限定するものではない。前立腺癌のサブタイプは、腺房腺癌、腺管腺癌、移行細胞(または尿路上皮)癌、扁平上皮細胞癌、および小細胞前立腺癌を含むが、これらに限定するものではない。卵巣癌のサブタイプは、上皮卵巣癌、胚細胞卵巣腫瘍、性索間質腫瘍、または境界型卵巣腫瘍を含むが、これらに限定するものではない。脳癌のサブタイプは、聴神経腫、星状細胞腫、脊索腫、CNSリンパ腫、頭蓋咽頭腫、脳幹膠腫、上衣細胞腫、混合性神経膠腫、視神経膠腫、上衣下腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、乏突起膠腫、下垂体部腫瘍、未分化神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、若年性毛嚢腫性星状細胞腫(JPA)、松果体腫瘍、またはラブドイド腫瘍を含むが、これらに限定するものではない。頭頸部癌のサブタイプは、喉頭癌、口唇および口腔癌、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、上咽頭癌、口腔咽頭癌、副鼻腔および鼻腔癌、または唾液腺癌を含むが、これらに限定するものではない。軟組織肉腫のサブタイプは、血管肉腫、皮膚線維肉腫、類上皮肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、胃腸間質腫瘍、カポジー肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫を含むが、これらに限定するものではない。
式(I)(または式(II))の化合物または関連する薬学的に許容可能な塩の使用を含む医薬組成物および方法は、特に肺癌、膵臓癌、乳癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫を治療するための、対象における投与に適した(薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント、担体、緩衝液、希釈剤、または安定剤を伴って、または伴わずに)このような化合物を製剤することによって、確立され得る。好ましくは、このような組成物は、非経口投与(より好ましくは皮下または静脈内投与)、腫瘍内投与、経動脈塞栓投与、または経口投与を目的とする。投与経路の選択は、特定の癌(サブ)タイプ、その低酸素状態、位置、または同時に行われる治療などの種々の因子によって、決定され得る。
本発明の医薬組成物は、薬学的に使用される調製物へと活性化合物を処理することを容易にする1つ以上の薬学的に許容可能な不活性成分を使用して、従来の様式において製剤化されてもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書中に記載される医薬組成物および製剤の概略は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第21版,2005;Lippincott Williams & Wilkins),Encyclopedia of Pharmaceutical Science and Technology(第4版,2013;CRC Press,Taylor & Francis Group)、および、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(第11版,2017;Wolters Kluwer)などの書籍に見られ、このような開示については、参照により本明細書中に組み込まれる。
本明細書中で使用される場合、「投与する」または「投与」は、治療を提供すること、例えば、治療を処方すること、治療を適用すること、または治療を割り当てること、を意味する。ある場合には、投与することは、患者が適用する(例えば、患者が装置を適用し、薬物を消費し、または薬物を注射する)治療を医学専門家が処方することを意味する。医学的治療の投与は、医学専門家の直接の、または常時の監督を必要としない。
本明細書中に記載される任意の組成物は、任意に、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解度増強剤、希釈剤、ならびに、例えば、ナトリウムアセテート、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートおよびシクロデキストリンなどの他のこのような剤を含む。組成物は、ラクトース、デキストロース、マンニトール、pH緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、等張化剤、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上をさらに含んでもよい。必要に応じて使用される薬学的に許容可能な担体の例は、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、局所麻酔薬、懸濁および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学的に許容可能な物質を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、単独で、または薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物において投与される。本明細書中に記載される化合物および組成物の投与は、作用部位への化合物の送達を可能にする任意の方法によって行われ得る。これらの方法は、腸内経路(口、胃または十二指腸栄養チューブ、直腸座薬および直腸浣腸を含む)、非経口経路(注射または輸液、動脈内、心臓内、真皮内、十二指腸内、髄内、筋肉内、骨内、腹腔内、鞘内、血管内、静脈内、硝子体内、硬膜外および皮下を含む)、吸入、経皮、経粘膜、舌下、頬部、および局所(表皮、真皮、浣腸、点眼、点耳、鼻腔、膣を含む)の投与を介した送達を含むが、これらに限定されず、最も適した経路は例えば受容者の状態および障害に依存してもよい。単なる例として、本明細書中に記載される化合物は、例えば手術中の局所輸液、クリームまたは軟膏などの局所塗布、注射、カテーテル、またはインプラントによって、治療を必要とする領域に局所的に投与され得る。投与はまた、疾患組織または臓器の部位への直接注射による、または腫瘍細胞への直接注入(腫瘍中の低酸素領域を事前に同定することを伴う、または伴わない)によるものでもあり得る。全身投与は、経口、静脈内、腹腔内及び筋肉内投与によって、行われてもよい。
いくつかの実施形態において、経口投与に適した医薬組成物は、それぞれが所定量の本化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの別個の単位として、粉末または顆粒として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして、与えられる。式(I)または式(II)の本化合物、特にCpd.11d(比較的高い経口生体利用能を有すると予め特性付けられた)は、ボーラス、舐剤またはペーストとして与えられてもよい。口内または舌下投与のために、組成物は、錠剤、トローチ剤、香剤、ゲル、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤(従来の様式で製剤化されたグリセロールまたはソルビトールなど)製の軟質密封カプセル剤の形態をとってもよい。このような組成物は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどのフレーバーベース中に本化合物を含んでもよい。
錠剤の形態における医薬組成物は、任意に1つ以上の補助成分と共に、圧縮または成形によって作製されてもよい。圧縮錠剤は、任意に結合剤、不活性希釈剤、または潤滑剤、界面活性剤もしくは分散剤と混合して、粉末または顆粒などの自由流動形態の本化合物を適切な機械において圧縮することによって、調製されてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって、作製されてもよい。錠剤(または糖衣錠)は、本化合物の緩やかな、または制御された放出を提供するようにコーティングまたは製剤化される。適切なコーティング(糖溶液などが使用されてもよく、任意にアラビアゴム、タルク、またはポリビニルピロリドンを含有してもよい)および染料または顔料は、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。錠剤は、本化合物を、非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤、例えば:炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;微結晶性セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸などの顆粒化剤および崩壊剤;例えばデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ラクトース、例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、アカシア、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの他の剤;と混合して、含んでもよい。錠剤は、味覚をマスキングするために、または胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、より長期間にわたる持続作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされていなくてもよいし、またはコーティングされていてもよい。味覚マスキング材料は、ヒドロキシプロピルメチルもしくはヒドロキシプロピルセルロース、またはエチルセルロースなどの時間遅延材料であってもよい。経口使用のための製剤はまた、本化合物が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン、と混合される硬質ゼラチンカプセル剤として与えられてもよいし、または本化合物がポリエチレングリコールまたは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの担体、と混合される軟質ゼラチンカプセル剤として与えられてもよい。
本発明の医薬組成物はまた、注射、例えば、ボーラス注射または連続輸液による非経口投与のために、製剤化されてもよい。注射用製剤は、単位剤型で、例えばアンプルまたは複数回用量容器で、添加した防腐剤と共に与えられてもよい。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有してもよい。適切な有機溶媒(エタノール、DMSO、またはジメチルアセトアミドなど)または溶媒混合物は、長期貯蔵、高濃度、および/またはバッチの医薬組成物を生成するために使用されてもよく、当該医薬組成物は、本化合物を含み、非経口投与の直前に、(予め充填されたシリンジ、バイアル、またはキット中の他の構成要素によって)適切な水性緩衝液(グルコース、塩化ナトリウム、リンガー溶液、リン酸緩衝食塩水、または無菌注射水溶液中に希釈された他の賦形剤を含む)を使用することによって、活性成分の所望の濃度または1日の用量にまで、希釈されてもよい。組成物は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルにおいて与えられてもよく、使用の直前に、生理食塩水または発熱物質を含まない滅菌水などの滅菌液体担体の添加のみを必要とする、粉末形態または凍結乾燥(凍結乾燥)状態にて保存されてもよい。即席の注射溶液および懸濁液は、既に記載されたように、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。好ましい薬剤調製物は、ガンマ線照射下で滅菌される粉末充填バイアルである。式(I)(または式(II))の化合物は、デキストロース輸液バッグへのさらなる添加のために、投与(例えば、注射による)の直前に、適切な希釈率(10mg/mL、100mg/mL、またはさらに濃縮される)で注射用水中の希釈物を調製するために使用されるために、十分に安定かつ水溶性である粉末の形態で提供され得る。選択された投与経路(例えば、静脈内投与または他の種類の注射)に許容可能であるpHを確実にするために、酢酸ナトリウムが添加され得る。
非経口投与のための医薬組成物は、活性化合物の水性および非水性(油性)滅菌注射溶液を含み、当該溶液は、抗酸化剤、緩衝液、静菌化合物、および製剤を目的の受容者の血液と等張にする溶質を含有してもよく、水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁剤および増粘剤を含んでもよい。適切な親油性溶媒または媒体は、ゴマ油などの脂肪油、またはエチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤を含有してもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される本化合物は、リポソームなどの小胞において送達される。さらなる実施形態または代替的な実施形態において、本明細書中に記載される化合物および医薬組成物は、制御された放出システムにおいて送達されるか、または制御された放出システムが治療標的の近傍に配置され得る。
医薬組成物はまた、デポー調製物として製剤化されてもよい。このような長期作用性製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、本化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂と共に製剤化されてもよく、あるいは難溶性塩として製剤化されてもよい。
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性成分を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ガムトラガカントおよびガムアカシアであり、分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレン−オキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えばエチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸塩、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤、例えばスクロース、サッカリンまたはアスパルテームを含有してもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性溶液の形態である。採用される許容可能な媒体および溶媒は、水、リンガー溶液、リン酸緩衝生理食塩水、USPおよび生理食塩水、等張性塩化ナトリウム溶液、エタノール、ならびに1,3−ブタンジオールを含むが、これらに限定されない。さらに、滅菌された不揮発性油(任意の無菌性不揮発性油など、合成モノまたはジグリセリドを含む)は、溶媒または懸濁媒体として、採用されてもよい。適切な親油性溶媒または媒体は、ゴマ油などの脂肪油、またはエチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含み、あるいは他の微粒子系が、薬剤を血液成分または1つ以上の臓器に標的化するために使用されてもよい。滅菌された注射可能な調製物は、滅菌された注射可能な水中油型マイクロエマルジョンであってもよく、ここで、本化合物は、油相に溶解される。本化合物は、まず、大豆油およびレシチンの混合物に溶解されてもよい。次いで、油溶液は、水/グリセロール混合物に導入され、処理されてマイクロエマルジョンを形成する。さらなる実施形態において、注射可能な溶液またはマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって対象の血流に導入される。
他の実施形態において、医薬組成物は、筋肉内および皮下投与のための滅菌された注射可能な水性または油性懸濁液の形態である。さらなる実施形態または追加の実施形態において、この懸濁液は、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、製剤化される。滅菌された注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液、であってもよい。さらに、滅菌された不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として従来採用される。この目的のために、いくつかの実施形態において、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無菌性不揮発性油は、任意に採用される。さらに、注射可能物質の製造において、オレイン酸などの脂肪酸が使用される。
適切な医薬担体は、不活性希釈剤または充填剤、水および種々の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、香料、結合剤、賦形剤などの追加成分を含有する。したがって、経口投与のための、クエン酸などの種々の賦形剤を含有する錠剤は、デンプン、アルギン酸および特定の複合ケイ酸塩などの種々の崩壊剤と共に、ならびにスクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの結合剤と共に、採用される。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの潤滑剤は、錠剤化の目的に有用であることが多い。他の実施形態において、同様のタイプの固体組成物は、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤において、採用される。したがって、好ましい材料は、ラクトースもしくは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液またはエリキシル剤が経口投与のために所望される特定の実施形態において、その中の活性化合物は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせなどの希釈剤と共に、種々の甘味剤もしくは香味剤、着色剤もしくは染料、および所望であれば、乳化剤もしくは懸濁剤と組み合わされる。
いくつかの実施形態において、油性懸濁液は、活性成分を植物油中に、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油中に、または鉱油中に、例えば流動パラフィン中に懸濁することによって、製剤化される。特定の実施形態において、油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有する。さらなる実施形態において、上記に記載されるような甘味剤、および香味剤は、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加される。他の実施形態において、これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはα−トコフェロールなどの抗酸化剤の添加によって、保存される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態である。いくつかの実施形態において、油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはそれらの混合物である。
医薬組成物は、局所的に、すなわち非全身投与によって、投与されてもよい。これは、本発明の化合物を表皮または口腔へと外部から適用すること、およびこのような化合物を、化合物が血流に有意に入らないように、耳、眼および鼻に点滴注入することを含む。局所投与に適した医薬組成物は、液体、または、ゲル、糊膏、ローション、クリーム、軟膏もしくはペーストなどの皮膚を通る浸透に適した半液体調製物、および、眼、耳または鼻への投与に適した点滴剤を含む。医薬組成物は、局所投与のために、0.001重量%〜10重量%、例えば1重量%〜2重量%の製剤を含んでもよい。局所使用のために、本化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液、マウスウォッシュおよびうがい剤などが使用される。
吸入による投与のための医薬組成物は、吹き入れ器、噴霧器加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達する他の好都合な手段から、好都合に送達される。加圧パックは、ジクロロもしくはトリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、定量を送達するバルブを提供することによって、決定されてもよい。代替的には、吸入または吹き入れによる投与のために、医薬調製物は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基材との粉末混合物の形態をとってもよい。粉末組成物は、例えば、カプセル剤、カートリッジ、ゼラチンまたはブリスターパックなどの単位剤型で与えられてもよく、そこから、粉末は、吸入器または吹き入れ器を用いて投与されてもよい。
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉体および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の防腐剤と混合された活性成分を提供する。適切な甘味剤、香味剤、防腐剤、抗酸化剤、分散もしくは湿潤剤、および懸濁剤は、既に上記したものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤が存在してもよい。さらなる実施形態または追加の実施形態において、これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって、保存される。適切な乳化剤は、天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、ならびに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される医薬組成物は、濃度(w/v)は約0.001%〜約50%の範囲の濃度で、シクロデキストリンをさらに含む。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、シクロデキストリンをさらに含む組成物を提供し、ここで、当該シクロデキストリンは、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(Captisol(登録商標))である場合、約15%、20%、22%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、または38%の濃度(w/v)を有する。一実施形態において、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(Captisol(登録商標))である場合、シクロデキストリンは約30%の濃度(w/v)を有する。別の実施形態において、シクロデキストリン誘導体がSBE7−β−CD(Captisol(登録商標))である場合、溶解度増強剤は約29.4%の濃度(w/v)を有する。本明細書中に記載される静脈内組成物における使用に適切なさらなるシクロデキストリン誘導体は、当技術分野で公知であり、例えば、US5134127、US5376645、「Modified Cyclodextrins: Scaffolds and Templates for Supramolecular Chemistry」(CJEaston、SFLincoln編、Imperial College Press)中に記載され、これらの各々は、このような開示のために本明細書中に参照として組み込まれる。本明細書中に記載される組成物、方法およびキットの特定の実施形態において使用するための適切なシクロデキストリン誘導体の例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンおよびそれらの誘導体、SAE−CD誘導体を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される医薬組成物は、正確な用量の単回投与に適した単位剤型である。単位剤型において、製剤は、適切な量の1つ以上の活性成分を含有する単位用量へと分割される。いくつかの実施形態において、単位用量は、別個の量の製剤を含有するパッケージの形態である。非限定的な例は、パッケージングされた錠剤またはカプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の粉末である。いくつかの実施形態において、水性懸濁組成物は、単回用量の再密封不可能な容器にパッケージングされる。代替的には、複数回用量の再密封可能な容器が使用され、この場合、組成物中に防腐剤を含むことが典型的である。単なる例として、非経口注射用の製剤は、アンプルを含むがこれに限定されない単位剤型で、または防腐剤が添加された複数回用量容器で、与えられる。
いくつかの実施形態において、単位剤型である記載される医薬組成物は、液体または固体形態の別個の量の医薬組成物を含有するキットまたは他のパッケージの形態で与えられてもよい。キットは、すぐに使用できる、または濃縮された医薬組成物(および/または関連する緩衝液もしくは希釈剤)のための、単回または複数回用量のための容器、投与のための装置(シリンジ、針、チューブまたはフィルターなど)、および説明書を含んでもよい。キットは、特に低温での、長期保存に適合されてもよい。
本化合物は、癌、特に乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫の予防的および/または治療的治療のために投与される。特定の治療的用途において、本化合物は、癌の症状の少なくとも1つを治癒または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で、このような癌に既に罹患している対象に投与される。この使用に有効な量は、癌の重症度と経過、これまでの療法、対象の健康状態、性別、体重、食生活、薬に対する反応、治療担当医の判断に依存する。治療有効量は、用量漸増および/または用量設定臨床試験を含むがこれらに限定されない方法によって、任意に決定される。このような量に対応する所定の薬剤の量は、特定の化合物(その生体利用能および代謝または排泄速度を含む)、癌病期および低酸素特性などの因子、または適切な製剤ならびに投与経路に応じて、変化する。
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合、治療される疾患または状態の症状の1つ以上をある程度軽減する、投与される化合物の十分な量に言及する。結果は、癌の徴候、症状、もしくは原因の減少および/もしくは緩和、または生物学的系の任意の他の所望の改変であり得る。例えば、治療的使用のための「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本化合物を含む組成物の量である。
用語「対象」または「患者」は、哺乳類および非哺乳類を包含する。「哺乳類」は、哺乳類クラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジー、ならびに他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの畜産動物;ウサギ、イヌおよびネコなどの家庭動物;ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;などを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、哺乳類は、ヒトである。
予防的用途において、本明細書中に記載される本化合物を含有する組成物は、特定の癌に罹患しやすい、またはそうでなければ特定の癌の危険性がある患者に投与される。このような量は、「予防有効量または用量」と定義される。この使用において、正確な量もまた、患者の健康状態、体重などに依存する。一態様において、予防的治療は、癌の再発を予防するために、治療されている疾患の少なくとも1つの症状を以前に経験し、現在は寛解している哺乳類に対して、本明細書中に記載される化合物を含む医薬組成物、またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを包含する。
このような組成物は、癌(特に、肺癌、膵臓癌、または乳癌)について治療される対象に、治療有効量で投与され得る。活性薬剤に適切な1日の用量は、約0.1mg〜約3000mg、または約100〜6000mgであり、好都合には、1日4回までを含むがこれに限定されない分割用量で、または徐放形態で、投与される。経口投与のための適切な単位剤型は、約1〜6000mgの活性成分、約100〜3000mg、約500〜3000mg、約1〜2500mg、約0.1〜500mg、約1〜250mg、約1〜約100mg、約1〜約50mg、約1〜約30mg、約1〜約20mgの本化合物を含む。このような用量は、使用される化合物の活性、投与様式、対象の要件、治療される癌の重症度、および実行者の判断に限定されない多くの変数に依存して、任意に変更される。一実施形態において、所望の用量は、好都合には、単回用量で、または分割用量で、同時にまたは適切な間隔で、例えば、1日当たり1時間、2時間、3時間、3時間、4時間、6時間、9時間などごとに2、3、4またはそれ以上の副用量で、治療のために、または維持もしくは予防的使用のために、特定の癌(サブ)タイプも考慮して、投与され、与えられる。
一実施形態において、本明細書中に記載される化合物またはその薬学的に許容可能な塩について適切な用量は、好ましくは40〜10,000mg/m、40〜4000mg/m、または1200〜2400mg/m(または代替的には、1〜100mg/Kg/体重、またはそれ以上、100mg/Kgまで、として定義される)、および中間範囲または値(例えば、約0.01〜約50mg/kg、約5mg/kg〜約30mg/kg、例えば、約25mg/kg、約20mg/kg、約15mg/kg、または約10mg/kg、または4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、または1mg/kg)に含まれる用量にて投与される。いくつかの実施形態において、用量または剤形中の活性化合物の量は、個々の治療レジメンに関する多くの変数に基づいて、本明細書中に示される範囲よりも低いかまたは高い。種々の実施形態において、単位用量は、使用される化合物の活性、治療される疾患または状態、投与様式、個々の対象の要件、治療される癌の重症度、および実行者の判断を含むがこれらに限定されない多くの変数に依存して、適合される。
医薬組成物は、1、2、3もしくは4週間ごとに、または月ごとに定義される複数回投与(サイクル)で、例えば1日/週(または週ごとに、2、3、4、または5日間の連続の、または非連続の日に、毎日の頻度で)、または1日/月(または月ごとに、2、3、4、または5日間の連続の、または非連続の日に、毎日の頻度で)で、好ましくは1日当たり2時間にわたって3日間連続で投与される静脈内注入を用いて、規則的なレジメンで投与され得る。このレジメンは、例えば2、4、8、12、26または52週間まで、または最大2、4、6、8、10、または12ヶ月までの、1以上の連続した週または月の間、対象および/または癌病期によって必要とされ得るものと同じ用量で、またはより高いもしくはより低い用量で、推進され得る。
患者の状態が改善する特定の実施形態において、投与されている薬物の用量は、特定の長さの時間(すなわち、「休薬期間」)の間、一時的に減少されるか、または一時的に中断される。特定の実施形態において、休薬期間の長さは、1日〜1年であり、単なる例として、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、19日、20日、21日、28日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、300日、320日、350日、または365日を含む。休薬期間中の用量減少は、単なる例として、10%〜100%であり、単なる例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む。
患者の状態に改善が生じた場合、必要であれば維持用量が投与される。次いで、特定の実施形態において、用量もしくは投与頻度、またはその両方が、症状の関数として、改善された疾患、障害または状態が保持されるレベルまで、減少される。しかしながら、特定の実施形態において、患者は、症状の任意の再発に基づいて、長期的に断続的な治療を必要とする。患者の状態が改善しない特定の実施形態において、医師の判断により、化合物の投与は、癌の症状を改善するか、さもなければ制御するかまたは制限するために、慢性的に、すなわち長期間にわたって(患者の生涯を通して、を含む)、投与される。
前述の態様のいずれかは、さらなる実施形態であり、本化合物またはその薬学的に許容可能な塩の有効量は:(a)対象に全身投与される;および/または(b)対象に経口投与される;および/または(c)対象に静脈内投与される;および/または(d)対象に注射によって投与される;および/または(e)対象に局所投与される;および/または(f)対象に非全身または局所投与される。乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫の治療方法において、有効量の本化合物を複数回投与することを含むさらなる実施形態のいずれかにおいて、本化合物は、連続的にまたは断続的に、単剤としてまたは併用療法において、対象に投与され、ここで、本化合物または他の治療薬のいずれかは、類似のまたは異なる頻度で投与される。さらなる実施形態において、当該方法は、休薬期間を含み、ここで、本化合物の投与は、一時的に中断されるか、または投与される用量は一時的に減少される。休薬期間の終わりに、化合物の投薬は、例えば、1日、1週間、1ヶ月、またはそれ以上の連続した月、1年まで、の後に再開される。
式(I)(または式(II))の化合物、および乳癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫を治療するために使用するための医薬組成物は、臨床操作または(前)臨床開発において決定されるように、別の治療剤または療法と、特に乳癌、肺癌、および/または膵臓癌を治療するために有用な治療剤または療法と、同時にまたは連続して、対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、他の治療薬または療法は、低酸素症とは独立してその活性を発揮する。腫瘍における低酸素領域を標的とする式(I)(または式(II))の化合物の細胞毒性活性が治療活性を改善し、用量を減少させ、および/または異なるメカニズムを介して作用する別の薬物の治療期間を短縮し得ることを考慮すると、式(I)(または式(II))の化合物は、好ましくは、このような他の薬物、治療薬または療法の前に、特に標準的な治療手順(放射線療法、化学療法、または免疫療法など)を開始する前に、投与されるであろう。
本明細書中に記載される治療の医学的使用および方法のいずれかは、個体または患者に追加の癌治療を投与することをさらに含む。特定の実施形態において、癌療法は、非限定的な例として、少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法剤)、放射線療法、または手術、特に肺癌、膵臓癌、乳癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、および/または軟組織肉腫のための標準的な医療治療である。いくつかの実施形態において、(1)有効量の本化合物の投与、および(2)(i)追加の有効量の抗癌剤の投与、(ii)有効量のホルモン治療剤の投与、および(iii)手術および/または放射線療法を含む、より効果的に癌を予防および/または治療する非薬物療法、からなる群から選択される1〜3の療法の組み合わせ。
「同時投与」、「併用療法」または「併用治療」は、2つ以上の薬剤または療法の使用、すなわち、任意の様式で癌を治療するための1つ以上の化合物と共に、本明細書中に記載される低酸素活性化プロドラッグの使用に言及し、ここで両方の薬理学的効果は対象において可視であるか、またはそうでなければ測定可能である。組み合わせての投与は、単一の医薬組成物、同じ剤形、同じ投与経路が両方の薬剤の投与のために使用されること、または2つの薬剤が正確に同時に、同じ順序で、および/または同じ頻度で投与されることを必要としない。いくつかの実施形態において、本化合物は、薬剤または治療の投与後にのみ投与される。いくつかの実施形態において、本化合物は、薬剤または治療の投与前にのみ投与される。いくつかの実施形態において、本化合物および他の薬剤または治療は、サイクルで、連続的に、または交代で投与され、ここで、投与の頻度は、2つの薬剤について同一であるか、またはいずれかの薬剤が他の薬剤より頻繁に投与される。いくつかの実施形態において、本化合物は、第二選択療法のみとして、または第一選択療法のみとして、投与される。いくつかの実施形態において、腫瘍内の低酸素領域に対する他の薬剤または治療の効果は、本化合物の投与前に、評価される。いくつかの実施形態において、腫瘍内の低酸素領域に対する本化合物の効果は、他の療法または薬剤の投与前に、評価される。
種々の実施形態において、治療は、第一、第二、または第三選択治療または療法として、言及される。別の実施形態において、治療は、第一、第二、または第三選択治療である。本明細書で使用される場合、語句「第一選択療法」または「第二選択治療」は、対象によって受容される治療の順序に言及する。例えば、一次治療は、手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの療法の組み合わせであり得る。典型的には、対象が第一選択療法に対して陽性の臨床的反応を示さなかったか、または亜臨床的反応のみを示したため、対象は、続くレジメンを与えられる。いくつかの実施形態において、式(I)(または式(II))の化合物および関連する医薬組成物は、第一選択療法または第二選択治療として使用される。
投与を含む併用療法のための好ましい薬剤または療法は、化学療法である。投与され得る化学療法剤の中で、非限定的な例は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、またはドキソルビシンである。さらに、化学療法剤の非限定的な例は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌抗生物質、植物由来抗癌剤などを含む。
アルキル化剤は、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、ニムスチン塩酸塩、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、ナトリウムエストラムスチンホスフェート、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロホスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチンなどが含むが、これらに限定されない。
代謝拮抗薬は、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスフェート、アンシタビン塩酸塩、5−FUドラッグ(例えば、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフルなど)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、クラドリビン、エミテフル、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドクスウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリンなどを含むが、これらに限定されない。
抗癌抗生物質は、アクチノマイシン−D、アクチノマイシン−C、マイトマイシン−C、クロモマイシン−A3、ブレオマイシン塩酸塩、ブレオマイシン硫酸塩、ペプロマイシン硫酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩、アクラルビシン塩酸塩、ピラルビシン塩酸塩、エピルビシン塩酸塩、ネオカルジノスタチン、ミトラマイシン、サルコマイシン、カルジノフィリン、ミトタン、ゾルビシン塩酸塩、ミトキサントロン塩酸塩などを含むが、これらに限定されない。
植物由来または他の天然抗癌剤は、エトポシド、ビンブラスチン硫酸、ビンクリスチン硫酸塩、ビンデシン硫酸塩、テニポシド、パクリタキセル、ビノレルビン、トラベクテジン、ルルビネクテジンなどを含むが、これらに限定されない。
投与を含む併用療法のための好ましい薬剤または療法は、免疫療法であり、本化合物の特性付けを考慮すると、好ましくは癌に関して、より好ましくは肺癌、膵臓癌、乳癌、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、および/または軟組織肉腫に関して、免疫応答を調節し得る細胞、組織、および/またはタンパク質を標的とする多種多様な薬剤および療法を含む。免疫療法剤の性質および構造は、異なるものであり得、細胞、タンパク質、ペプチド、小分子、または核酸を含む。
免疫療法剤は、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、リンホトキシン、または、細胞成長因子もしくは細胞成長因子受容体の作用を阻害するか、そうでなければ標的化する他のタンパク質(抗体を含む)を含むが、これらに限定されない。細胞成長因子の作用を阻害する免疫療法の標的薬剤は、HER2抗体(例えば、トラスツズマブ)、イマチニブメシレート、ZD1839またはEGFR抗体(例えば、セツキシマブ)、VEGFに対する抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGFR抗体、VEGFR阻害剤、およびEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ)を含むが、これらに限定されない。
特に、本発明の医学的使用および治療方法はまた、式(I)の化合物が、抗体治療剤または抗癌抗体などの他の抗癌剤と組み合わせて使用されてもよいことを意図する。さらなる実施形態において、追加の薬物は、標的抗癌抗体、すなわち、特定の腫瘍タイプを標的とする抗体である。用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを、それらが所望の生物学的活性を示す限り、網羅する。用語「抗体フラグメント」は、完全な抗体の一部、好ましくは完全な抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;線形抗体を含む。単一特異性または二重特異性のいずれかの抗体を産生することを可能にする技術および製品は、文献において広範に概説されるように、代替の形式、抗体−薬物結合体、抗体設計方法、インビトロスクリーニング方法、定常領域、翻訳後および化学修飾、癌細胞死を誘発するための改善された特徴(例えば、Fc工学、腫瘍関連抗原、および対応する治療に有用な抗腫瘍抗体剤)に関して、当技術分野において公知である(Tiller KおよびTessier P,2015;Weiner G,2015.;Fan Gら,2015;Sliwkowski & Mellman,2013)。
一態様において、標的抗癌抗体は、中でも、ゲムツズマブ(Mylotarg)、アレムツズマブ(CAMPATHTM)、リツキシマブ(Rituxin、Mabthera)、トラスツズマブ(HerceptinTM)、ニモツクスマブ、セツキシマブ(Erbitux)、エルロチニブ(TARCEVATM、Genentech/OSI Pharm.)、ベバシズマブ(AvastinTM)、ペルツズマブ(OMNITARGTM、rhuMab 2C4、Genentech)、ブレンツキシマブベドチン(AdcetrisTM)、イピリムマブ(MDX−101、およびYervoyとしても知られる)、オファツムマブ(Arzerra)、パニツムマブ(Vectibix)、およびトシツモマブ(Bexxar)のうちの1つ以上である。別の態様において、標的抗体は、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネウズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツスシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、およびビシリズマブのうち1つ以上である。別の実施形態において、少なくとも1つの追加の薬物は、中でも、CTLA−4、4−1BBおよびPD−1を含むがこれらに限定されない免疫共刺激分子に対する抗体、サイトカインに対する抗体(IL−10、TGF−βなどを含むがこれらに限定されない)、およびCCR2、CCR4などを含むがこれらに限定されないケモカイン受容体を含む。
いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、共刺激分子または共阻害分子である。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)および/または免疫チェックポイント活性剤(CPA)である。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、T細胞共刺激分子または共阻害分子、B7ファミリーのメンバー、TNF受容体またはTNFリガンドスーパーファミリーのメンバー、TIMファミリーのメンバー、およびガレクチンファミリーのメンバー、のうちの1つ以上を標的とする薬剤である。種々の実施形態において、免疫調節剤は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CD137(4−1BB)、CD137リガンド(4−1BBリガンド)、CTLA−4、OX−40、OX−40リガンド、HVEM、GITR、GITRリガンド、CD27、CD28、CD30、CD30リガンド、CD40、CD40リガンド、LIGHT(CD258)、CD70、B7−1、B7−2、ICOS、ICOSリガンド、TIM−1、TIM−3、TIM−4、BTLA、ガレクチン−1、ガレクチン−9、CEACAM−1、CEACAM−4、CEACAM−5、LAG−3、B7−H1、B7−H2、B7−H3、B7−H4、B7−H5、B7−H6、HHLA2、HMGB1、BTLA、CRTAM、CD200、CCR4、およびCXCR4のうちの1つ以上を標的とする薬剤である。
いくつかの実施形態において、PD−1およびPD−L1もしくはPD−L2、ならびに/またはPD−1とPD−L1もしくはPD−L2との結合(およびCTLA−4に結合するもの)を、これらの細胞表面タンパク質のいずれかの細胞外ドメインに結合することによって、ブロック、減少および/または阻害する免疫療法剤。非限定的な例として、これらの抗体は、ニボルマブ(ONO−4538/BMS−936558、MDX1106、OPDIVO、BRISTOL MYERS SQUIBB)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck)、MK−3475(MERCK)、BMS−36559(BRISTOL MYERS SQUIBB)、MPDL3280A(ROCHE)、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI−4736、MSB−0010718C、MDX−1105、MDX−1105、MSB0010718C、AMP−224、トレメリムマブ(Ticilimumab、CP−675,206);およびイピリムマブ(MDX−010、Yervoy)のうちの1つ以上を含む。他の抗癌抗体は、ダラツムアブ(抗CD38)、ウレルマブ(BMS−663513、抗4CD137抗体)、オファツムマブ(抗CD20)である。
上記の薬物に加えて、他の抗癌剤は、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、プロカルバジン塩酸塩、プロトポルフィリン−コバルト複合塩、水銀性ヘマトポルフィリン−ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ソブゾキサンなど)、分化誘導剤(例えば、レチノイド、ビタミンDなど)、α−ブロッカー(例えば、タムスロシン塩酸塩、ナフトピジル、ウラピジル、アルフゾシン、テラゾシン、プラゾシン、シロドシンなど)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例えば、アダボセルチブ、アファチニブ、アフリベルセプト、アキシチニブ、ベバシズマブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エントレクチニブ、エルダフィニチブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ラニビズマブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、su6656、トファシチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブなど)、エンドセリン受容体拮抗薬(例えば、アトラセンタンなど)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブなど)、Hsp90阻害剤(例えば、17−AAGなど)、スピロノラクトン、ミノキシジル、11α−ヒドロキシプロゲステロン、骨吸収阻害/転移抑制剤(例えば、ゾレドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、クロドロン酸)、などを含むが、これらに限定されない。
ホルモン治療剤の非限定的な例は、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、クロルマジノンアセテート、サイプロテロンアセテート、ダナゾール、ジエノゲスト、アソプリスニル、アリルエストレノール、ゲストリノン、ノメゲストロール、タデナン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェンシトレート、トレミフェンシトレートなど)、ERダウンレギュレーター(例えば、フルベストラントなど)、ヒト更年期性腺刺激ホルモン、リンパ腺刺激ホルモン、ピル調製物、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチミド、LH−RHアゴニスト(例えば、ゴセレリンアセテート、ブセレリン、ロイプロレリンなど)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、エチニルエストラジオールスルホネート、アロマターゼ阻害剤(例えば、ファドロゾール塩酸塩、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、ホルメスタンなど)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミドなど)、5α−レダクターゼ阻害剤(例えば、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリドなど)、副腎皮質ホルモン薬(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)、アンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロンなど)、レチノイドおよびレチノイド代謝を遅延させる薬物(例えば、リアロゾールなど)など、ならびにLH−RHアゴニスト(例えば、ゴセレリンアセテート、ブセレリン、ロイプロレリン)を含む。
別の実施形態において、癌治療は、プロバイオティック細菌、天然物質および栄養補助食品(例えば、緑茶エピガロカテキンガレート(EGCG)、およびレセルバトロール)、ホルモン治療(例えば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)、例えば、エノボサム(オスタリン、MK−2866、GTx−024)、BMS−564,929、LGD−4033、AC−262,356、JNJ−28330835、LGD−3303、S−40503およびS−23)、抗炎症剤(例えば、COX−2阻害剤ならびに非ステロイド抗炎症薬、例えばセレキシコブ(Celebrex)、Vioxx、メロキシカム、イブプロフェン、ナプロキセン(Anaprox、Naprosyn)、ジクロフェナク(Cambia、Cataflam、Voltaren)、エトドラク(Lodine)、フェノプロフェン(Nalfon)、フルルビプロフェン(Ansaid)およびオキサプロジン(Daypro))、スタチンなどのコレステロール低下薬(例えば、アトルバスタチン、セリバトスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンなど)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤(例えば、イニパリブ(BSI201)、BMN−673、オラパリブ(AZD−2281)、ルカパリブ(AG014699、PF−01367338)、ベリパリブ(ABT−888)、MK4827、BGB−290および3−アミノベンズアミド)、ラパマイシン(mTOR)の哺乳類標的の阻害剤、PI3KおよびIGF1R、ならびにレチノイドを含んでもよい。
他の実施形態において、少なくとも1つの追加の薬物は、標的薬物である。本明細書中で使用される場合、用語「標的薬物」は、腫瘍成長に必要とされる特定の「標的」分子に干渉することによって癌細胞増殖をブロックする治療薬に言及する。参照:上記Pasquettoを参照のこと。これは、参照によって、本明細書中に組み込まれる。一態様において、標的薬物は、限定するものではないが、中でも、ダサトニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ボストニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、クリゾチニブ、バンデタビブ、カボザンチニブ、デニロイキンジフチトックス、エベロリムス、およびテモシロリムスを含む。
他の化学療法剤または抗癌剤は、例えば、抗腫瘍酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物応答修飾剤、成長阻害剤、造血成長因子、免疫モジュレーター、ケモカイン、サイトカイン(例えば、インターロイキン2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)またはFLT3−リガンド)、細胞移動ブロッカー、および脈管形成の阻害剤を含む。脈管形成阻害剤は、アンジオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、インターロイキン−12、メタロプロテイナーゼ1、2および3の組織阻害剤(TIMP−1、TIMP−2、およびT1MP−3)、ならびに抗VEGFを含むが、これらに限定されない。
別の態様において、少なくとも1つの追加の薬物は、ビタミンD異化の阻害剤、例えば酵素24−ヒドロキシラーゼの阻害剤を含んでもよい。24−ヒドロキシラーゼは、活性型ビタミンDの循環レベルのレベルを、主に糞便によって排泄される活性の低い型へと、低下させる。このような阻害剤の非限定的な例は、大豆イソフラボンおよびゲニステインを含む。式(I)または(II)の化合物を投与することができる追加の組み合わせは、ゲムシタビンおよびナブ−パクリタキセル、ならびにエトポシドおよびシスプラチンを含む、これらに限定されない。
別の態様において、本明細書中に開示される式(I)の化合物と組み合わせて対象に投与される少なくとも1つの追加の薬物は、マイクロRNA(miRNA)、miRNAのアップレギュレーターもしくはダウンレギュレーター、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。miRNAプロファイリングに関する最近の研究により、それらの正常組織対応物と比較して、乳癌種におけるmiRNAの差次的発現が明らかにされている。例えば、miR−155、miR−21、miR−27、miR10bは、天然にアップレギュレートされ、発癌性であるが、一方でmiR−125(aおよびb)、miR145およびmiR205は、ダウンレギュレートされた。他の研究では、miR−140発現の消失により乳癌の進行が増加することが示されている。非限定的な例として、本発明の組成物は、miR−125a、miR−125b、miR−200、miR−145、miR−205、miR−146a、let−7a−d、miR−26a、miR−34、miR−31、miR−101、miR−200b、miR−335、miR−126、miR−206、miR−17−5pおよびmiR−140またはそれらのアップレギュレーターと組み合わせて、対象に投与されてもよい。他の非限定的な例では、本発明の組成物は、miR−155、miR−10b、miR21、miR−27およびmiR−520c、ならびにmiR−373のダウンレギュレーターと組み合わせて、対象に投与されてもよい。
別の態様において、本明細書中に開示される式(I)の化合物と組み合わせて対象に投与される少なくとも1つの追加の薬物は、DNAメチル化モジュレーターを含んでもよい。DNAメチル化の異常およびDNAメチル化に関与するタンパク質の異常は、癌において起こることが公知である。したがって、本発明は、本発明の式(I)の化合物と組み合わせてDNAメチル化モジュレーターを投与することを含む組成物および治療方法を包含する。いくつかの実施形態において、DNAメチル化モジュレーターは、DNAメチル化阻害剤である。DNAメチル化阻害剤の例は、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、MG98、またはS−アデノシルメチオニン(SAM)などのDNAメチル化活性剤を含むが、限定されない。
非薬物療法は、手術、放射線療法、遺伝子療法、温熱療法、凍結療法、レーザ焼灼など、およびそれらの任意の組み合わせによって、例示される。
〔実施例〕
以下の実施例は、例示の目的のみで提供され、本明細書中に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
実施例1:Cpd.11Msおよび主な細胞毒性の代謝物の生成。
材料および方法
Cpd.11Msの合成および代謝
出発化合物1(3,4−ジフルオロベンズアルデヒド)を使用して、WO2014031012に記載されている方法に従って、中間体化合物2(3−フルオロ−4−(メチルスルホニル)ベンズアルデヒド)、化合物3(3−フルオロ−4(メチルスルホニル)安息香酸)、および化合物4(5−フルオロ−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロ安息香酸)を調製した。化合物1〜4は、商業的に入手することもできる。均質な溶液をもたらすDMFおよび塩化オキサリルの添加前に、化合物4をジクロロメタンおよびアセトニトリルに懸濁させることによって、酸塩化物化合物5を得た。溶媒および過剰の塩化オキサリルを除去した後、得られた粗製の酸塩化物化合物5をジクロロメタンおよびTHFに溶解し、1−エチルピペラジンのジクロロメタン溶液を添加する前に−10℃に冷却した。反応混合物を周囲温度で撹拌し、得られた沈殿物を濾過によって集め、次いで乾燥させて、化合物6の粗塩酸塩((4−エチルピペラジン−1イル)(5−フルオロ−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)メタノン)を得、これを酢酸エチルに懸濁し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液で処理した。得られた水相をさらに酢酸エチルで抽出し、混合性の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、得られた固体を、ジクロロメタンに溶解し、ジイソプロピルエーテルの添加によって沈殿させた。沈殿物を濾過により集め、乾燥させて、化合物6((4−エチルピペラジン−1−イル)(5−フルオロ−4(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)メタノン)を得た。
化合物6をDMFに溶解し、0℃に冷却する前に臭化リチウムを添加した。いくらかの未溶解の臭化リチウムを含有する粘性の赤い溶液が形成された。反応混合物を−5℃に冷却し、1−アジリジンエタノールを添加してペーストを形成した。TLC(24:1のジクロロメタン/メタノール)が、残されている出発物質を示さなくなるまで、反応混合物を撹拌した。脱イオン水を2.5℃で加え、得られた暗黄色の溶液を酢酸エチルで抽出し、混合性の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、得られた黄色の油状物をさらに濃縮して、残存する微量のDMFを除去した。残余物を、酢酸エチルに溶解し、シリカゲルカラムにのせ、副生成物を集めるための65:1および24:1のジクロロメタン/メタノール、ならびに所望の生成物を集めるための19:1のジクロロメタン/メタノールを用いる勾配溶離によるクロマトグラフィーにかけた。生成物を含有する混合性の画分を濃縮して、化合物7(5−((2−ブロモエチル)(2−ヒドロキシエチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロフェニル)(4−エチルピペラジン−1−イル)メタノンを黄色固体の形態で得た。
化合物7をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミンおよびメタンスルホン酸無水物(前もってジクロロメタンに溶解した)を添加する前に−5℃に冷却した。反応混合物を重炭酸ナトリウムの飽和溶液で処理し、水相をジクロロメタンで抽出した。混合性の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残余物を、酢酸エチルに溶解し、シリカゲルカラムにのせ、副生成物を集めるための32:1および19:1の酢酸エチル/メタノール、ならびに化合物11(黄色ガラス状固体の形態における、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−1−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート)を含んでいる画分を、集め、混合し、かつ濃縮するための19:1のジクロロメタン/メタノールを用いる勾配溶離によるクロマトグラフィーにかけた。化合物11をジクロロメタンおよびメタノールに溶解し、0℃に冷却した。メタンスルホン酸を添加して溶液を形成した。反応混合物を0℃で撹拌し、撹拌しながら室温に温めて放置した。溶媒を除去した後、得られた黄色ガラス状固体を濃縮し、化合物11Ms(黄色粉末の形態における4−(5−(2−ブロモエチル)(2−((メチルスルホニル)オキシ)エチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロベンゾイル)−1−エチルピペラジン−1−イウム メタンスルホネート)を得た。
反応中の出発物質または中間体の完全な変換、以上に挙げられている得られた化合物の純度および分子量を、TLC、1H NMRまたはHPLCなどの一般的な分析手法を適用することによって確認した。
Cpd.11の重水素化変種Cpd.11Ms−d8の合成
市販の重水素化ピペラジン(Pip−d8)のBoc−保護を、文献の手順に従って行った。簡単に述べると、Pip−d8(2.00g、21.23mmol)をメタノール(80mL)に溶解して、無色の溶液を得た。TFA(1.626mL、21.23mmol)を一度に加え、混合物を15分間撹拌し、それによって白色の薄い懸濁物が形成された。反応温度を20℃から23℃に上げた。その後、水(80mL)を加え、それによって混合物を透明な無色の溶液に変え、反応温度を28℃にさらに上げた。混合物を室温に冷却しながら30分間撹拌した。ジ−tert−ブチルジカーボネート(4.63g、21.23mmol)およびヨウ素(0.109mL、2.123mmol)のメタノール(160mL)溶液を、2時間以内に混合物に滴下した。反応を室温で一晩継続し、Boc−Pip−d8(83.9%)およびジ−Boc−Pip−d8副生成物(14.6%)の混合物を、GCMS分析にしたがって形成し、ジ−Boc副生成物が形成された。反応混合物(暗赤色から褐色の透明な溶液)を真空中で濃縮して、メタノールおよびヨウ素を除去した。これにより、わずかに黄色の懸濁物(〜50mL)を得た。撹拌した懸濁物に、pH11〜12に達するまで水酸化ナトリウムの水溶液(20%(w/v)、7mL)を添加した。懸濁物をP3ガラスフィルターに通して濾過し、残余物(おそらくジ−Boc副生成物を含有する)を、水酸化ナトリウム水溶液(6%(w/v)、10mL)で洗浄した。濾過物を酢酸エチルで抽出(3x100mL)し、混合性の有機相をブライン(60mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮して、3.43gのBoc−Pip−d8を無色の透明な油状物として生じ、静置によって結晶化した。GCMS分析は、99.6%のBoc−Pip−d8調製物の純度を示した。
重水素化1−エチルピペラジン(Boc−Epip−d8)の調製を、Boc−Pip−d8(3.44g、17.70ミリモル)を用いて行い、Boc−Pip−d8を1つ口フラスコ(100mL)中でアセトニトリル(33mL)と混合し、濁った溶液を得た。混合物を氷浴上で15分間冷却した後、DIPEA(4.63mL、1.5当量)および1−ブロモエタン(1.98mL、1.5当量mmol)を添加した。冷却浴を取り外し、混合物を室温で一晩撹拌した。GCMS分析は、完全な変換およびBoc−Epip−d8の97.3面積%形成を示した。反応混合物(濁った溶液)を、ブライン(150mL)および酢酸エチル(50mL)の撹拌混合物に注いだ。透明な2相系が形成されるまで、撹拌混合物に水(10mL)を加えた。層を分離し、有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮乾固して、濁った非常に薄い黄色の油状物として3.61gの粗Boc−EPip−d8を得た。この材料をヘプタン/酢酸エチル(1:1、5mL)で希釈し、得られた懸濁液を濾過した。濾液をReveleris(登録商標)フラッシュクロマトグラフィー(80gシリカ;ヘプタン中20〜100% EtOAc)によって精製した。全生成物を含んでいる画分を回収し、濃縮乾固し、DCMでチェイスし、3.04gのBoc−EPip−d8を透明な無色の油状物として得た。GCMS分析は>99%の純度を示し、1H−NMR分析は構造を確認した。
その後、Boc−EPip−d8を得るためのBoc脱保護を、Boc−EPip−d8(3.04g、13.67mmol)をジクロロメタン(90mL)に溶解し、次いで、水浴冷却下で、反応温度を20℃未満に保ちながら、5分間にわたってトリフルオロ酢酸(15mL、14当量)を滴下して加えることによって行った。反応を室温で2時間続けた。GCMS分析は、所望の生成物への完全な変換を示した。混合物を真空中で濃縮し、ジクロロメタン(3x5mL)でチェイスして、無色油状物としてBoc−EPip−d8の粗TFA塩9.65gを得た。この粗物質のうち、1gを、飽和炭酸カリウム水溶液(30mL)およびジクロロメタン(2×30mL)で遊離塩基にした。ジクロロメタン/メタノール(9:1;3×20mL)によるさらなる抽出により、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した後、210mgの粗遊離塩基を得た。この材料は、多量の固形分の存在している無色の油状物であった(GCMS分析による純度は>98%)。Boc−EPip−d8の粗TFA塩の残部(8.65g)を、MTBE(150ml)中で一晩粉砕し、ろ過および乾燥後に白色粉末として3.95gのTFA塩Boc−EPip−d8を得た。1H−NMRの分析によれば、この材料はdi−TFA塩であり、高純度であった。溶媒および遊離塩基化のための損失について補正されたこの単離収率は92%であった。この純粋なBoc−EPip−d8・2TFA500mgを、飽和炭酸ナトリウム水溶液(20mL)およびジクロロメタン(3×30mL)で遊離塩基にし、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した後に140mgの遊離塩基Epip−d8を得た(T<40℃、p>150mbar)。この材料は、固形物の存在しない無色透明の油であった。GCMS分析は>98%の純度を示し、1H−NMR分析は構造と一致した。次いで、EPip−d8を、上記の化合物5に基づく反応において使用し、重水素化中間体Cpd.6〜d8を生成し、続いて反応させて、Cpd.7−d8、Cpd.11−d8、およびCpd.11Ms−d8を生成した。
Cpd.11の代謝産物であるCpd.11c、Cpd.11dおよびそれらの重水素化変異体の合成
Cpd.11を、水(5mL)に溶解すること、ジクロロメタン(10mL)の添加、および飽和NaHCO3溶液による洗浄によって、Ms(0.50g)を遊離塩基にした。水相を逆抽出し、混合性の有機層を真空中で濃縮して、Cpd.11遊離塩基(0.470g;HPLCによる純度:96.6%)を生成した。
Cpd.11cを、EtOH(7.5mLおよびTHF(5mL))中に溶解した遊離塩基Cpd.11によって生成し、脱気し、Pd/C(10重量%; Sigma Aldrich、6モル%)を添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で2.5時間撹拌した。所望の生成物の63%が形成された。過度の還元が観察されたので、反応を停止した。混合物を0.45umフィルターで濾過し、真空中で濃縮して、Cpd.11c遊離塩基を黄色油として生成した(0.485g、収率95%)。
Cpd.11dは、Pt/C触媒される水素化を用いたニトロ還元によって製造されている。ガラスバイアルに、磁気撹拌機、遊離塩基Cpd.11(100mg、0.17ミリモル)、酢酸エチル(1ml)および炭素上の白金(5重量%、80mg、0.12当量)を装填した。バイアルを穴の開いた隔壁で閉じ、並列オートクレーブに入れ、20℃で40psiの水素圧で一晩撹拌した。続いて、反応混合物を、EtOAc(2mL)ですすいだ珪藻土の小さなパッドを通して濾過した。濾液を濃縮乾固し、60mgの粗Cpd.11dを遊離塩基として得た。HPLCおよびLCMS分析は、87%の純度を示した。いくつかの不純物は、prep−LCMS(溶離液:MeCN/重炭酸アンモニウム水)により除去された。生成物を含んでいる画分を、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した(T<30℃)。Pt/C触媒された水素化によるさらなるニトロ還元の後、次いで、生成物をPrep−SFC(溶離剤:CO/メタノール+20mMアンモニア)によって再精製し、オフホワイトの発泡物としてCpd.11dを得た。HPLC分析は98.9%の純度を示した。
重水素化された変種Cpd.11c−d8およびCpd.11d−d8を、Cpd.11dMs−d8およびCpd.11cおよびCpd.11dについて上述しされているプロトコルを用いて生成した。
結果
WO2014031012に開示されている化合物を用いて行われた前臨床試験は、合成され、かつHPLC、MS、NMRおよび元素分析によって特徴付けられた一連のニトロフェニルマスタードプロドラッグを同定した。しかし、この文献は、医療用途に最適な化合物も、最適な医療用途も開示していない。実際、より大規模な前臨床的な検証はまた、癌を処置するために有用なHAPとしてのそれらの開発に十分な量および質で所望の化合物を得ることを可能にする、化合物の合成のためのプロセスを確立することを、必要とする。
WO2014031012における式(I)の4−アルキルスルホンプロドラッグの中で(特に図1Aに示されるもの中で)、本発明の特定の化合物は、水溶性、許容される用量、および/または生体利用能に関して最も有望である。WO2014031012は、式(I)の対称性および非対称性のハロアルカンスルホネートマスタードの合成のための、一般的ないくつかのプロトコルを開示している。このような選択された化合物の細胞毒性に対してより感応性な癌細胞のより広範な特徴付けを実施するために、化合物11(Cpd.11、WO2014031012において化合物311として同定されている)は、好ましい塩(Cpd.11Msと命名されたメタンスルホン酸塩である)および生産のための改良されたプロセスを明確に示すための、参照化合物として選択されている。関連する中間生成物と共に図1Bにまとめられているこのプロセスは、一般化されて、関連する細胞および動物に基づく癌モデルにおいて化合物を試験するため、ならびに前臨床アッセイにおけるさらなる検証を目的とする特定の用途を評価ために十分な量の式Iの非対称ハロアルカンスルホネートマスタードを提供し得る。
一般にプロドラッグの生物活性、および特に式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードの生物活性は、細胞毒性化合物への、低酸素状態でのヒト酵素によるそれらの代謝から生じる。しかし、このプロセスにおける特定のステップは、酸素正常状態、すなわち酸素非依存性の状態と関連し得る。図1Cに示されるCpd.11構造に基づくプロセスにおいて例示されるように、他の構造(Cpd.11a、Cpd.11b、Cpd.11c、およびCpd.11dは、変化し得るが、一般的にインビボでの短い半減期を有する)は、酸化状態、ならびに正常組織、腫瘍の酸素正常状態の領域および腫瘍の無酸素領域において不定に発現されている活性なヒト酵素とのCpd.11の相互作用から生じ得る。後者では、酸素の非存在は、Cpd.11aからCpd.11bへの重要な変化を起こし、移行を引き起こし、細胞毒性化合物の生成を可能にする。細胞毒性化合物は、そのとき、それらの活性をその場で発揮し、免疫学的な抗癌応答と共同してもしくは単独で腫瘍全体の破壊に、または処置(例えば、放射線療法、化学療法および/または他の薬剤)に、寄与し得るだろう。
式(I)の追加の化合物は、インビボで生成される代謝産物に対応する合成化合物として、または重水素原子がピペラジン環におおて水素原子と置き換わっている重水素化変種として、調製され得る(図2)。これらの変種は、それらの治療活性のほかに、式(I)の化合物の局在、代謝、蓄積および/または生物活性を評価するために使用され得る。
実施例2:低酸素条件において活性な抗癌剤としてのCpd.11MsおよびCpd.11c、およびCpd.11dのインビトロ検証。
Cpd.11Mを用いた、癌細胞株に基づくアッセイ
示されている結果をともなったインビトロ試験および/またはインビボ試験に使用された、試験される癌細胞株は、ATCCまたはDSMZ(Leibniz-Institut-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)を介して入手可能であり、癌のタイプによって分類され、表Iにまとめられている。
Figure 2021525809
インビトロの無酸素に基づく細胞毒性についてのみ試験され、Cpd.11d感応性を確かめた他の癌細胞株は、これらの他のサブタイプ:乳癌について、EFM−192A(Luminal B)、EVSA−T(PR+/ER)、およびJIMT−1(HER2+);肺癌について、いくつかの他のNSCLCまたはSCLC癌細胞株;膵臓癌について、癌腫(AN−G、YAPC)、腺癌(HUP−T4)に及んだ。全ての細胞株を、供給者の指示にしたがった完全培地を用いて、細胞培養フラスコにおいて維持した。
Cpd.11Ms、Cpd.11cおよびCpd.11dを用いた細胞に基づくアッセイ
IC50値を、無酸素状態(<0.01% O)および/または酸素正常状態(21% O)で、レザズリンに基づく力価アッセイを用いて得た。低酸素細胞毒性率(HCR)は、正常酸素下のIC50値に対する無酸素下のIC50値の割合として計算される(HCR=IC50 酸素正常状態/IC50 無酸素)。
無酸素状態について、各細胞株の完全培地(T25では25mlまたはT80では80ml)を、1日1回および使用直前にフラスコを撹拌しながら、使用前の48時間にわたって無酸素チャンバーにおいて平衡化して、培地と大気との間の可能な限り大きな交換を可能にした。細胞播種のための96ウェルプレート、および適切な濃度で試験される化合物(例えば、Cpd.11Ms)を含んでいるマザープレートの調製のための96ウェルプレート、ならびに無酸素状態での細胞播種に必要な使い捨ての、試薬リザーバおよびピペットチップを、使用前の少なくとも72時間、無酸素状態においた。無酸素における細胞処理にとってのマザープレートを、インキュベート前のプラスティック内で、無酸素培地によって調製した。酸素正常状態における細胞処理にとってのマザープレートを、標準的な細胞培養フード内で酸素正常状態の培地によって調製した。
細胞播種は、細胞懸濁液(細胞の70%コンフルエントなフラスコ)から始めて、行った。適切な細胞数/体積を、増殖曲線実験を行うことによって決定されるような所定の細胞密度(典型的には100μl/ウェル)で使用し、計算した。無酸素状態について、適切な数の細胞を無酸素チャンバーに移し、無酸素完全培地において適切な細胞濃度に希釈した。細胞を、37℃の無酸素チャンバー中で2時間接着させた。酸素正常条件において、通常の細胞播種および完全培地プロトコル(96ウェルプレートにおける100μl/ウェルの体積)を使用した。細胞を、通常の細胞培養COインキュベーター中、37℃で2時間接着させた。両方の条件において、96ウェルプレート中の残りの空のウェルを、蒸発を防ぐために、200μlの無酸素培地または酸素正常培地で満たした。
新鮮なCpd.11Msストック溶液を、実験の直前に解凍し、遮光した。96ウェルマイクロタイタープレートを、第1列において176.4μlの完全酸素正常(RT)培地または無酸素培地、およびウェルの他の列について2% DMSOを含む120μlの完全酸素正常培地または完全無酸素培地で満たした。3.6μl/ウェルの化合物ストック溶液(Cpd.11、Cpd.11Ms、Cpd.11c、またはCpd.11d;150mM)を第1列に添加した。第1列の溶液をピペッテイングし、60μlを第2のカラムに移して、各移し替えの間に3回のピペッテイングをしながら、1/3段階希釈を実施した。これを11番目の列まで繰り返した。12番目の列にはCpd.11Msを添加しなかった。プレートを、使用前の30分以内に調製し、直射日光への曝露から保護した。細胞を播種した2時間後に、マザープレートのうち100μlを各ウェルに添加し、プレートを無酸素チャンバーまたは37℃の細胞培養インキュベーターに4時間とどめた。4時間後に無酸素チャンバーにあるプレートを正常酸素に移した。顕微鏡下で全プレート(プレート当たりランダムな数ウェル)の目視検査を行い、吸引により全プレートから培地を除去した。細胞を200μlのPBS(RT)で1回洗浄し、200μlの新鮮な酸素正常完全培地(RT)を各ウェル(細胞を含まない全ウェルを含む)に添加した。全プレートを、37℃の酸素正常中で96時間、標準的な細胞培養インキュベーターの中でインキュベートした。
細胞生存率アッセイのために、レザズリン最終操作溶液を、レザズリンストック溶液(0.1mg/ml)を各細胞株の完全培地(RT)において1/10に希釈して、0.01mg/mlレザズリンの最終濃度を得ることによって、新たに調製した。酸素正常状態における96時間のインキュベーション後に、全プレート(プレート当たりランダムな数ウェル)の目視検査を顕微鏡下で行い、各ウェル中の培地を吸引により除去した。レザズリン最終操作溶液(200μl)を、ウェル(細胞を含まない全てのウェルを含む)ごとに添加し、細胞を37℃で2時間、CO2インキュベーターでインキュベートした。プレートの読み取りを、TECAN蛍光リーダーを用いること、ならびに励起535/35nmおよび発光610/20nmにおける蛍光を測定することによって、行った。RFU(Relative Fluorescence Unit)値を、得られた複数のRFU値の平均として計算し、各プレートについてブランク値(各ウェルについて得られたRFU値から差し引かれる)を得るための同じ培地を有する細胞なしのプレートごとのウェルと、比較した。統計データ分析を、Graphpadプリズムを用いて行った。
ATPに基づく力価の、商業的なインビトロアッセイ(CellTiter-Glo 2.0 luminesent cell viability; Promega)を使用して、酸素正常状態および無酸素状態でのIC50測定に適した乳癌細胞株、膵臓癌細胞株および肺癌細胞株を含む51のヒト癌細胞株のパネルにおける化合物有効性を評価した。
結果
化合物(I)の第1種の検証を、低酸素状態または酸素正常状態における細胞毒性活性が、特に、酸素正常および低酸素についての阻害濃度中央値(IC50)、ならびにTH−302(Meng Fら、2012)のような他のHAPにも使用されるような低酸素選択的な細胞殺傷を反映する低酸素細胞毒性率(HCR)を計算することによって、確立されている癌細胞株のパネルにおいて実施した。
Figure 2021525809
Cpd.11Ms細胞毒性特性を、異なる分子特性を示す癌から単離された癌細胞株外分泌膵臓腺腫細胞(BxPC−3およびPANC−1について)、非小細胞肺癌細胞(NCI−H1650およびNCI−H1975について)ならびに小細胞肺癌細胞(DMS114について)、HER2陽性乳癌細胞(BT−474用)、Basal基底様乳癌細胞(HCC1937について)ならびに間葉様乳癌細胞(MDA−MB−231について)を検証した。さらなるデータを、乳癌細胞株、肺癌細胞株、および膵臓癌細胞株のパネルについての別のアッセイ(ATPに基づく有効性アッセイ)を用いて生成し、このような化合物の細胞毒性の、無酸素に基づく依存性および特異性を追認するIC50およびHCR値を得た(図3A)。
このアッセイは、式(I)の対称および非対称ハロアルカンスルホネートマスタードから選択された化合物のいずれかを検証すること、および/または腫瘍特異的な低酸素状態と関連して細胞毒性誘導体(例えば、図1CのCpd.11Mについて例示される誘導体)に対して特に感応性な癌細胞株、他の種または他のサブタイプの選択に依存することを、可能にし得る。例えば、Cpd.11Msは、全身投与後にCpd.11として生物学的に利用可能になり、1電子還元酵素によって酸素感知性の中間体Cpd.11aに変換され得る。この中間体は、低酸素状態(腫瘍の特定の領域に見られる状態)下に生成されるとき、酸素非感応性ニトロソ誘導体Cpd.11bにさらに変換され得、それから速やかに、酸素非依存性の還元酵素によって、ヒドロキシルアミン細胞毒素Cpd.11cおよびアミン細胞毒素Cpd.11d(低酸素領域において、および活性化によって近傍の細胞に対する細胞毒性代謝物の再分配もしくは拡散に関して(バイスタンダー効果)、生物学的に活性な)にさらに変換され得る。実際、癌細胞株の同じパネルは、ヒドロキシルアミン細胞毒Cpd.11cおよびアミン細胞毒Cpd.11d(いずれも化学合成によって調製され、それから、酸素正常状態において当該細胞株に対して直接的に試験されるとき、癌細胞株のパネルに対して細胞毒性であると確認されている(図3C))への、Cpd.11Mの高くかつ速やかな変換率を示した(図3B)。
Cpd.11Msに対する感応性が細胞株間で変化する場合、低酸素ではるかに大きい(10以上の低酸素細胞毒性率の値を得る)ことは、常に一貫していた。これらの証拠は、単層を成長させるか、またはスフェロイドを形成するさらなる癌細胞株(低酸素状態および薬物作用もしくは薬物代謝が顕微鏡法、蛍光プローブ、およびまたは抗体を使用してより詳細に評価され得る)において確認され得る。
実施例3:肺癌、膵臓癌、乳癌にとっての動物モデルにおけるCpd.11Msの有効性。
材料および方法
動物モデル
すべての動物モデルは、承認されているIACUC(Institutional Animal Care and Use Committees)プロトコルに従い、BALB/cヌードマウス(6〜8週齢、17〜23g、標準的な条件および飼料において維持される)における異種移植モデルとして確立した。Cpd.11Msを、Cpd.11Ms主調製物(注射用水中の2% DMSOにおける100〜60mg/ml)をもとにして、2%ジメチルスルホキシド(注射用水中のDMSOを用いて製剤化した。
腫瘍細胞の接種後に、罹患率および死亡率について動物を毎日、確認したチェックした。処理の開始前に、全ての動物の体重を測定し、ノギスを用いて腫瘍体積を測定した。平均腫瘍サイズが約250mmに達したときに処理を開始した。各処理群/対照群は、無作為に割り当てられ、5日間毎日注射された10匹のマウスを含んでいた。腫瘍細胞接種日を0日とした(したがって、注射を1、2、3、4、および5日目に実施した)。日常的な観察時に、正常な振る舞い(例えば、運動性、摂食量および摂水量の目測、体重増加/減少(5日の処理の間には毎日、処理後には週3回、体重を測定した)、眼/毛のマッティングおよびその他の異常な影響)に対する腫瘍増殖および処理の、影響について、動物を確認した。死亡および観察された臨床徴候を、各部分集合内の動物の数に基づいて記録した。腫瘍体積を、5日の処理の間には毎日および処理後には週3回、ノギス用いて複数の2次元で測定し、体積を、式:V=0.5a×b2(ここで、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)を使用してmm3で表した。投薬、腫瘍測定および体重測定の全手順を、層流キャビネット内で行った。個々のマウスを、腫瘍サイズが1400〜1600mm3に達したときに、頸部脱臼により安楽死させた。生存の代わりになる終点を、TVx4(最初の腫瘍体積×4)と計算し、示した。群の間における腫瘍体積の差の統計分析を、独立標本T検定を用いて実験の終了時に行った。すべてのデータを、SPSS(Statistical Product and Service Solutions)バージョン18.0(IBM、Armonk、NY、U.S.)で分析した。P値を、小数第3位までを四捨五入し、0.001未満である元のP値をP<0.001と記述した。全ての検定は両側であった。P<0.05を統計学的に有意とみなした。
MDA−MB−436腫瘍(ATCC:HTB−130;継代数:P4)について、細胞を、10%熱非働化ウシ胎児血清を補ったL−15培地、100%空気の雰囲気、37℃において、単層培養物としてインビトロで維持した。NCI−H69(ATCC:HTB−119;継代:P3)について、腫瘍細胞を、0%ウシ胎児血清を補った補充したRPMI1640培地、空気中5%COの雰囲気、37℃において、インビトロで維持した。PANC−1(ATCC:CRL−1469;継代:P2)について、腫瘍細胞を、10%熱非働化ウシ胎児血清を補ったDMEM培地、空気中5%COの雰囲気、37℃において、単層培養物としてインビトロで維持した。腫瘍細胞を、トリプシン−EDTA処理によって週2回、定期的に継代培養した。指数増殖期にある増殖している細胞を、腫瘍接種のために回収し、数えた。各マウスに、腫瘍発生のためにマトリゲル(1:1、コーニング、#354234)と混合した0.1mlのPBSにおける1×10の腫瘍細胞(MDA−MB−436モデルには、右乳房の脂肪パッドの同じ位置に、NCI−H69モデルおよびPANC−1モデルには、右側腹部の皮下に)を接種した。これらの材料および方法を、以下の表IIIにまとめられている特定のヒト癌細胞株にとっての他の異種移植片癌細胞モデルに適用した。
異種移植片癌モデルにおける低酸素状態およびDNA損傷の評価
DNA損傷の誘導に対するCpd.11Ms処理の影響を評価するために、pH2AX染色、ならびにpH2AXおよびピモニダゾール染色の詳細に調べた共局在化の組織学的分析を、小細胞肺癌モデルDMS114において実施した。DNA損傷を、600mg/kgでのCpd.11Msの単回投与の6時間後に評価した。ピモニダゾール塩酸塩、およびpH2AX(Histone H2A.X、Phospho S139)抗体は市販されている(抗ピモニダゾール塩酸塩、HP FITC Mab-1、HPI Hypoxyprobe Inc; Anti-Histone H2A.X(Phospho S139)抗体[EP854(2)Y]ChIP Grade、ab81299、Abcam)。各異種移植片試料から、各レベル間に50μmの間隔を有する3つの非連続的な5μm切片レベルを得た。各レベルから、2つまたは3つの連続切片を作製し、必要な染色i)H&Eおよびピモニダゾール、またはii)H&E、ピモニダゾールおよびpH2AXに応じて2つまたは3つのスライド上に回収した。次いで、切片を、染色の前に約37℃で一晩乾燥させた。H&Eは、harrisヘマトキシリンおよび1%エオシンを使用して、Leica ST4040染色プラットフォームによって実施した。抗原賦活およびその後のタンパク質ブロッキングに続いて、pH2AX抗体を、1:48000の濃度で60分間、試験組織切片上でインキュベートした。3%過酸化水素(水溶液)を用いた内因性ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)活性の抑制に続いて、ポリマーに基づくHRPによって作動する検出システム、および抗体結合部位に褐色の反応生成物を与えるImmPACT DAB色素原を用いて、pH2AXの結合を可視化した。次に、ヘマトキシリンによる核の対比染色を組織切片に適用した。ピモニダゾール(FITC結合)抗体を、1:5000の濃度で60分間、試験組織切片上でインキュベートした。3%過酸化水素(水溶液)を用いて内因性ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)活性の抑制に続いて、HRP結合ウサギ抗FITC二次抗体(HPI Hypoxyprobe Inc、抗FITC−HRP)、および抗体結合部位に褐色反応生成物を与えるImmPACT DAB色素原を用いて、ピモニダゾールの結合を可視化した。次に、ヘマトキシリンによる核の対比染色を組織切片に適用した。プロトコルの他の工程は、文献または製造業者からの指示に従って行った。
結果
細胞に基づくアッセイおよび腫瘍における低酸素の全体的な知見は、乳癌、肺癌、および膵臓癌におけるCpd.11Msの有効性を詳細に検証するために、一連の異種移植モデルを選択することを示唆していた。このようなモデルで得られた結果は、式(I)の対称および非対称ハロアルカンスルホネートマスタードの細胞毒性誘導体に感応性である癌の(サブ)タイプの記述において、さらに解釈され得る。
MDA−MB−436ヒト細胞(アルキル化剤またはシスプラチンに感応性であるTNBC、三種陰性乳癌にとっての、相対的に緩やかに増殖する腫瘍モデル)を用いて、Cpd.11Msによる単回の処理サイクルに対する強い応答が、体重に対する影響なしに、媒体処理された動物と比べて、腫瘍の有意な退行および2倍以上の対応する平均の代理生存指標をともなって観察された(図4)。同等の有効性および非毒性データが、さらなる三種陰性乳癌異種移植モデル(アルキル化剤に対してむしろ感応性の低い、相対的に速やかに増殖するMDA−MB−231TNBC腫瘍モデル)において、MDA−MB−231乳癌細胞株を用いて、観察された。単回の処理サイクルが、腫瘍増殖速度の低下を誘導した。
同様に、NCI−H69ヒト細胞(SCLC、小細胞肺癌にとっての、アルキル化剤に感応性の、相対的に速やかに増殖する腫瘍モデル)を用いて、単回の処理サイクルによる類似の強い反応が、体重に対する影響なしに、媒体処理された動物と比べて、初期の増殖速度の低下後に腫瘍の有意な退行をともなって観察された。Cpd.11Ms処理動物の平均の代理生存指数も、この腫瘍モデルにおける媒体処理された動物と比べて2倍であった(図5)。同等のデータが、シスプラチンを含むアルキル化剤に対してむしろ感応性の低い、相対的に速やかに増殖するさらなる肺癌異種移植モデルにおいて、NCI−H1650肺癌細胞株を用いることによって得られた。Cpd.11Msによる単回の処理サイクルは、平均の代理生存指数に対する有意な影響を生じた。
最後に、PANC−1ヒト細胞(アルキル化剤に対する感応性に乏しい、または非感応性の、PDAC、膵腺癌にとっての、相対的に緩やかに増殖する腫瘍モデル)を用いて、単回の処理サイクルによる応答が、約50%までの平均の代理生存指数の有意な増加(P=0.0018)を生じる有意な腫瘍増殖の遅延をともなって、観察された(図6)。
NCI−H69ヒト肺癌モデルを用いて、治療応答のレベル(腫瘍サイズおよび生存率に関する)が、1週間または3週間にわたる、連続する複数日(1日目、2日目、3日目、4日目、および5日目;1日目、2日目、3日目)または連続しない複数日(1日目、4日目および7日目)の投与による代替の投与計画を用いて試験された。この応答には、連続する投与の回数との相関が認められ、3週間にわたる反復投与は、より長い期間の腫瘍制御をもたらし、末期腫瘍の逸脱または転移から解放し得る。
分析は、さらなる乳癌細胞株、肺癌細胞株または膵臓癌細胞株(無酸素細胞培養条件においてCpd.11Msに対してすべて感応性)に基づく他の異種移植モデルまで拡大されたが、このような細胞により誘導される腫瘍の低酸素状態と観察された抗腫瘍効果との間の任意の関係を並行して評価した。主な結果を表IIIにまとめる。
Figure 2021525809
主な結論は、癌の種類またはシスプラチンのような一般的な薬物に対する感応性と独立して、低酸素状態が、少なくとも重要な抗腫瘍退行と関連するが、一方で低酸素領域を示さなかった膵腫瘍異種移植モデル(実験間に本来ある変動、および腫瘍接種の特定の位置におそらく起因する)が、Cpd.11Ms細胞毒性活性に対しても非感応性であることである。Cpd.11Mによって特異的に標的化されと思われるこれらの低酸素領域はまた、DNA損傷および付加生成物の集中を示す領域であり、おそらく化合物の細胞毒性を説明している(図7)。有意に高いDNA損傷は、酸素正常(ピモニダゾール陰性)の部位を、低酸素(ピモニダゾール陽性)の部位と比較したときに、Cpd.11Ms処置動物において観察されたが(P=0.023)、そのような統計的有意差は、媒体処理されたコントロールについて認められなかった。加えて、低酸素(ピモニダゾール陽性)の部位におけるDNA損傷の有意な増大は、Cpd11Ms処理された動物を、媒体処理された動物と比較したときに、観察され(P=0.038)、酸素正常の部位における差異は、統計学に有意に異ならなかった。したがって、これらの結果は、低酸素に特異的な活性化および続くDNA損傷をさらに支持している。低酸素に対するCpd.11Ms投与の明確な影響はまた、種々の処理計画(400〜800mg/kg、1〜5の連続日)によるMDA−MB−46841腫瘍異種移植片モデルにおいても、ピモニダゾール免疫組織化学染色によって確認された。
これらのデータはさらに、単独で、または放射線療法または複数の化合物と組み合わせて、同じCpd.11Msについての他の動物モデルにおいて検証され得、および/または式(I)の他の対称および非対称ハロアルカンスルホネートマスタードを用いた他のモデルにおいて生成されたデータと比較され得る。当該複数の化合物は、例えば、エルロチニブ(非小細胞肺癌、膵臓癌およびいくつかの他の種類の癌を処置するための薬物として使用される、上皮成長因子受容体に作用する、受容体チロシンキナーゼ阻害剤)、ドクソルブシン(乳癌、膀胱癌、カポジー肉腫またはリンパ腫のようないくつかの種類の癌を処置するために使用される化学療法薬)、PD−1阻害剤およびPD−L1阻害剤(チェックポイント阻害剤の新規な一群、主に、細胞の表面に存在するこれらのタンパク質およびいくつかの種類の癌にとっての第一処置として分かっている免疫チェックポイント阻害剤のいずれかに結合する抗体)、PARP阻害剤(すなわちヒト細胞におけるDNA修復に影響する他の化合物)、またはインターロイキン−2(癌(例えば悪性の黒色腫または腎臓癌)の処置のために、異なる組換え体として使用される、細胞性免疫において活性な、サイトカイン)である。式(I)の対称および非対称ハロアルカンスルホネートマスタード(例えば、Cpd.11M)の、これらの化合物(または同じ分類の薬物に入る化合物)のいずれかとの、同時のまたは連続的な、組み合せ投与は、低酸素の特徴を示す癌における治療応答を、1つ以上の基準(例えば、相乗作用、減少または投与の用量および/または頻度、より広い治療範囲、耐性の克服(または回避)、向上した癌特異的な免疫応答、および/または望ましくない副作用の減少)にしたがって改善し得る。
実施例4:抗癌剤としてのCpd.11Msの臨床的な検証。
これまでの実施例2および3は、Cpd.11Msなどの式(I)の化合物およびCpd.11cおよびCpd.11dなどの式(II)の化合物を用いて生成された生物および治療に関連する前臨床的なデータを示しており、固形腫瘍(特に腫瘍が低酸素領域を呈すると特徴付けられるとき)を有するヒトにおける抗腫瘍剤としての当該化合物(および特にCpd.11Ms)の評価を支持する。Cpd.11Ms(およびその代謝産物)の薬物動力学、薬理学および毒性学と共に、式(I)Cpd.11Msのハロアルカンスルホネートマスタードを用いた前臨床試験からのこれらのデータは、癌患者および特定の癌の種類を処置するための臨床環境における臨床的な検証を確立するために使用され得る。特に、Cpd.11Mのような化合物が最も適切な有効性をもたらすであろう対象および臨床状態の選択は、腫瘍微小環境の特徴、および特に、固形腫瘍の大部分における低酸素症の部分領域の原因になる酸素分布および酸素消費の変化度を基準になされ得る。酸素供給および需要の間におけるこの不均衡への腫瘍の適応は、不良な臨床予後と関連し、類似の低酸素の特徴は、頭頸部、肺、子宮頸部、前立腺、軟組織肉腫、および脳腫瘍を含む複数の種類の癌における有害な予後に関する強力な特徴として証明されている。さらに、低酸素症は、血液の悪性腫瘍だけでなく、さらに多種の固形腫瘍(乳癌、卵巣癌及び膵臓癌が挙げられるが、これらに限定されない)における負の因子として示されている。
低酸素は、全体的な腫瘍生物学だけでなく、治療法に対する応答性(例えば、放射線療法に対する抵抗性(イオン化放射線によってもたらされるDNA損傷を修復するために必要とされる酸素の欠乏によって引き起こされる))または化学療法もしくは免疫療法(文献に記載されている複数の生物学的機序(低酸素下での、免疫反応答の抑制、腫瘍血管新生の誘導、浸潤および転移の腫瘍生存誘導に有利な遺伝型の選択)を介した)に対する応答性に対する影響について述べられている。前臨床モデルに示されるように、Cpd.11Mなどの化合物は、このような低酸作動性の機構を阻害または遮断でき、かつプロドラッグに対する高い暴露が低酸素部位における治療に関連する濃度でのその活性化を可能にする毒性学および薬物動態学的なインビボ特性をともなう相対的に高い濃度において調合および投与され得る。Cpd.11Msのような化合物は、癌に対する直接的(または間接的)な治療効果を患者に特に条件または患者(他の標準的な対処処置の結果に対する低酸素の負の影響を弱める薬剤が、必要とされ、かつ当該薬剤が、近傍細胞に対する活性化代謝物の再分布(バイスタンダー効果)によって腫瘍の低酸素領域において選択的に活性化されるプロドラッグとして安全に投与され得る)において、もたらし得る。
Cpd.11Mなどの式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードの有効な使用および投与は、これらの化合物のために一般的に利用可能な、または特に開発されたもの(CP−506のための液体生検(血液)に基づく遺伝子シグネチャーを含む)であり得る患者の選択または層別(低酸素、および/またはアルキル化ファルマコフォアに対する感応性に基づく)のための手段に関連し得る。Cpd.11Msなどの式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードの臨床使用および投与の実現可能性を評価するために、エボホスファミド(TH−302)およびPR−104などの他の低酸素活性化プロドラッグ(HAP)との比較がなされ得る。これらの手法のうち、酸素増感造影磁気共鳴画像およびダイナミック造影磁気共鳴画像(OE−MRIおよびDCE−MRI)、ポジトロン断層撮影法(PET)およびその他の放射線学に基づくアプローチは、非侵襲的に患者において腫瘍の低酸素の程度を検出および定量可能な、種々の癌に適用可能な技術であり、患者の層別化または患者の選択を可能にする。さらに、処置の間に腫瘍の進展を経過観察する(酸素化および/または壊死に関して)ことに、トレーサーありまたはなしで、これらのラジオミクスに基づく画像技術を適用することは、標準的な用量または増加した用量のCpd.11Msにおける処置の、繰り返しサイクルの最適なタイミングを定めることに役立ち得る。好ましい薬物レジメン、患者、臨床段階、および/または癌のサブタイプを明確にするために使用され得る、低酸素の臨床的な画像化は、いくつかの最近の刊行物(Challapalli Aら、2017; Crispin−Ortuzar Mら、2018; Liu JNら、2017; Pujara ACら、2019; Salem Aら、2018)において総説されている。
非侵襲的な手法に代えて、または非侵襲的な手法に加えて、腫瘍生検は、腫瘍の酸素化および壊死を決定するため、ならびに他の目的(例えば、Cpd.11Msの活性および局在のため(Cpd.11cまたはCpd.11d代謝産物または特異的なDNA付加生成物の存在、ならびに腫瘍におけるDNA損傷の誘導を定量するため)の構想の証明)のために分析されるCpd.11Msによる処置期間の前および間に、患者から入手され得る。さらに、Cpd.11Mによって処置されている1人以上の患者における腫瘍のなかで、事後の癌特徴付けは、Cpd.11Mに対する癌の感応性を、例えば、文献(Oda Kら、2017; Sunada Sら、2018; Sztupinszki Zら、2018; Talens Fら、2017; von Wahlde MKら、2017; Yang LおよびWest CM、2018)に記載されるように所定の腫瘍における低酸素の遺伝子シグネチャー、または相同組換えおよびDNA修復機構状態を評価することによって、または特定の遺伝子変異を網羅している、BRCA関連またはHRD関連試験のようなすでに市販されている試験(例えば、Myriad Genetics Inc、Utah USAによって市販されている試験)を用いることによって、予測させる特徴を明らかにすることに役立ち得る。これらの部分的に重複する目的はまた、2つの異なる種類のサンプルおよび/または手法を使用して得られた結果の相関を許容ことによって、液体生検を用いたCpd.11Msに特異的な遺伝子シグネチャーの開発を補助し得る。腫瘍生検の利用可能性は、個々の患者におけるCpd.11Ms治療有効性(の欠如)を予測させ、かつそれ以上の癌(サブ)タイプにおけるCpd.11Msの全体的な臨床開発を支持する任意のシグネチャーを検出するために、液体生検を用いることの実現性を臨床的に確認することを可能にするだろう。
3週間サイクルにおける連続する3日の投与からなる投薬計画(QDx3/サイクル)にしたがう、ラットおよびイヌにおけるCpd.11Msの静脈内投与の予備的な毒性試験は、骨髄、胸腺およびリンパ節(低酸素の間隙を有していると知られている)などの組織における潜在的な血液毒性が、ラットでは400mg/kg以下の量に、イヌでは100mg/kg以下の量に最少化され得ることを示している。したがって、これらの濃度は、ヒト対象ではそれぞれ2360mg/mおよび2000mg/mに相当する。連続する3日(QDx3)または5日(QDx5)のうち単回サイクルとして、600mg/kg(ヒトにおける1800mg/mに相当)を典型的に使用しているマウスモデルにおける有効性試験は、癌に対する高い有効性を示しており、これは、反復サイクルによってさらに明らかにされた。また、別の投与レジメンとして、3または4の週1回のサイクルのそれぞれのうち、連続する3または4回までの週1回の投与が挙げられる。加えて、QDx3またはQDx5のうち初回の用量は、腫瘍の成長および発生に対する治療効果を依然として可能にし得るより低い頻度の投与スケジュール(適切な標準による並行した処置のありまたはなしで適用され得る、3または4の週1回サイクルにおける3または4の週1回用量まで)と、組み合わせられ得る。
Cpd.11Msのような式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードが投与され得る用量レベルは最小の毒性および高い治療有効性をともなって投与され得る投与レベルは、1200〜2400mg/m(マウスにおける400〜800mg/kgに相当する)の範囲に含まれる。当該投与量およびより大きい(8000mg/m)は、単剤療法では患者によって十分に許容されると予想される。より低い投与量(4000mg/m)が、患者の安全性を確保するために、例えば従来の化学療法または放射線療法との、組み合せの条件において、必要とされ得るが、これらは依然として治療有効性を有すると予想される。これらの標準治療アプローチは、速く増殖する細胞を標的にし、細胞周期に依存する活性を、非常によく有している。しかし、腫瘍の低酸素領域は、典型的には栄養素および酸素の欠乏のために、はるかにわずかに増殖する細胞を有し、このような腫瘍細胞は、典型的に、多くの化学療法に対してはるかに抵抗性である。さらに、前臨床モデルは、Cpd.11Msなどの式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードがシスプラチンおよび/またはクロラムブシルに耐性である特定の癌細胞株に対して非常に細胞毒性であることを示した。したがって、その性質および生物学的な作用(すなわち、低酸素選択的な活性化および非常に強力なアルキル化活性)により、式(I)のハロアルカンスルホネートマスタード(例えば、Cpd.11M)は、特に他のアルキル化剤と比べて、非常に異なる治療部分を示し、標準的な治療処置(例えば化学療法)に関する癌の単剤療法およびより好ましくは癌の組み合わせ投与計画の両方に利用され得、これらの患者におけるより良好な応答を誘導し、進行なしの生存率、生活の質、および最終的に全体の生存を向上させる。
Cpd.11Msのような式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードのこの前臨床開発および検証段階は、臨床検証研究に適合するGMP条件において、例えば、ガンマ線照射下で滅菌されている粉末充填バイアルとして製造され得る特定の好ましい薬物調製物を明らかにすることを可能にした。Cpd.11Msは、このような滅菌状態に対して十分に安定であり、またデキストロース注入バッグに添加するための100mg/mLの注射用水における十分に安定な希釈物を直ちに調製するために十分に水溶性である。NaOAcは、pHが静脈内投与に許容されることを確実にするために加えられ得る。Cpd.11Msのような式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードの前臨床的な検証および毒性学の間に得られた知見は、選択される小さな患者集団における臨床試験を計画するための基準として使用され得、それから、このような抗癌療法の大部分の利益を受ける患者集団をより良く特徴付けるためにさらに患者の導入基準およびプロファイルが規定されている、より大きな臨床試験を確立するために使用され得る。実際、低酸素は、腫瘍の攻撃性または悪性度と相関し、増殖および腫瘍増殖を促すのではなく、標準的な対処処置に対する耐性を誘導することが知られており、したがって、式(I)のハロアルカンスルホネートマスタード(例えば、Cpd.11Ms)は、その効力を最大にするために、酸素を十分に供給されている増殖細胞を標的とする他の治療と組み合わせられ得る。
予備試験は、Cpd.11MsのフェイズI/II試験、非盲検、非対照、多施設、反復投与漸増試験として設計され得る。試験の最初の部分(フェイズIaパート)は、既存の処置選択肢をすべて使い果たした任意の固形腫瘍を有している患者を対象とした単剤療法における用量漸増試験である。最大耐量(MTD)および薬物動態プロファイルを明らかにするために、用量コホートデザインごとに最初の3+3の被験者を用いることができる。ここでは、各患者は、連続する3日にわたる2時間の静脈内注入を介して、Cpd.11Mの開始用量、続く18日間の観察期間(QDx3投薬計画、3週間ごと)を受ける。これはヒトを対象とした最初の試験であるため、安全性の問題を防ぐために、各コホートの最初の患者を処置し、次の2人の患者を募集する前に1週間追跡する。3人の患者がサイクルを終えたら、臨床試験者をともなった会議を開き、処置の安全性および耐容性を評価する。用量制限毒性(DLT)が認められないとき、次の用量段階が、24患者にまで拡大して評価される。1/3の被験者がDLTを生じたとき、そのコホートは6被験者に拡大される。2/3以上の被験者または2/9以上の被験者が用量コホートにおいてDLTを経験したとき、MTDが第1サイクルにおいて1/6以下の被験者にDLTを経験させる最高の用量レベルと規定されているので、この投与レベルは耐容性なしとみなされる。用量漸増は、連続コホートにおける修正Fibonacci系列に従って増分を漸減しながら行われる。各患者は、治験担当医師が患者に有益と判断する限り、割り当てられた用量のCpd.11Msを21日ごとに投与される。
フェイズIa部分の第3のコホートが十分に許容されていると評価されると、フェイズIb部分は、フェイズIaと並行して実行するように開始され得る。この第2部はまた、用量漸増計画であるが、特定のQDx3投薬計画(3週間ごとに繰り返される)を受けている最大15人の患者を含む併用設定(特にプラチナ−エトポシド(抗PD1または抗PD−L1を併用するまたは併用しない))であり得る。Cpd.11Msとプラチナ−エトポシドとの患者の安全性および耐容性は、最も悪性度の高い癌の1つであり、5%未満の5年生存率を有している小細胞肺癌(SCLC)を有している患者における一次または二次治療として評価され得る。複数の研究は、SCLC腫瘍に低酸素の存在を強調しており、それは、治療歴のない患者でも再発/難治性疾患の患者の両方において、ES−SCLCにおいてプラチナ−エトポシドと併用する抗PD−L1の最近のFDA承認を除いて、30年以上にわたって標準治療に変更のない、未対処の要求である。SCLCの一次処置は、依然としてプラチナ−エトポシド化学療法であり続けており、疾患の進行を遅らせ、および/または健康に関連するQOLのパラメータを大きくする毒性の低い治療法は、依然として強く求められており、SCLCは、薬剤承認に対するより速く熱心な進路を意味する希少疾病(ORPHA70573)である。
Cpd.11Msの投与は、不完全な標的化および/または反復処置による耐性の上昇のために、高い再発率を有することが知られている患者集団において最も価値有用であり得る。上述の3+3の臨床デザインは、拡大コホート(3週間ごとに繰り返すQDx3投薬計画の下で最大50人の患者を含む)を処置するために後に使用され得る、推奨されるフェイズII用量(RP2D)を決定するために使用されて、併用の耐容性および安全性をさらに評価し、対応するより長い寛解期間、無増殖生存期間、および全生存期間を伴う腫瘍退縮による予備的な有効性評価をさらに実施する。類似の臨床開発プログラムが、膵臓癌(ゲムシタビン+/n−アブラキサンとの併用)、三種陰性乳癌(n−アブラキサンとの併用)およびNSCLC(抗PD1療法または抗PD−L1療法との併用)にも考えられている。
フェイズa/Ib試験およびフェイズII試験の間、またはその後のより大規模な無作為化試験において、治療に関連する結果の評価および比較は、患者および臨床検体に既存の手法を用いて試験され得、かつ所定の患者集団および癌の種類または段階により適応した投薬計画、用量、および/または組み合わせの選択を導き得る、代替エンドポイント、バイオマーカー、薬物代謝物、その他の生物学的特徴の評価と組み合わせられる。これらの臨床的および生物学的知見に基づいて、Cpd.11Msまたは式(I)の他のハロアルカンスルホネートマスタードの組み合わせ使用のための他の潜在的設定は、臨床的実現可能性および期待される有効性を確認するために、Cpd.11Msの投与量およびレジメンに適合する標準的な対処処置を現在受けている、種々のより広い患者集団を用いた臨床的設定において評価され得る。一部の動物モデルにおいて既に部分的に検証されているように、Cpd.11Msが治療に関する作用をもたらし得る癌の例は、三種陰性乳癌(TNBC;タキサンまたはアントラサイクリンとの併用、さらにシクロホスファミドまたはPARP阻害剤との併用)、小細胞肺癌(NSCLC;タキサン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、エトポシド、または抗PD−L1抗体などのチェックポイント阻害剤との併用)小細胞肺癌(SCLC;抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体などのチェックポイント阻害剤、PARP阻害剤、カルボプラチン、ルルビネクテジン、イリノテカン)、膵管腺癌(PDAC;ゲムシタビンおよびアブラキサン、FOLFOXまたはFOLFINIROXとの併用)、転移性性腺摘除抵抗性前立腺癌(mCRPC;抗アンドロゲン薬、タキサン系薬剤、プラチナ製剤、アビラテロンまたはエンザルタミドに加えてドセタキセル/カルバジタキセルと併用)、卵巣癌(プラチナ、カルボプラチン、および/またはPARP阻害剤との併用)である。さらに、このようなレジメンはまた、放射線療法を含み得る。
動物モデルを用いたさらなる研究を必要とし得る、Cpd.11Msまたは式(I)の他のハロアルカンスルホネートマスタードとの併用で調べられ得る、追加の標準的な対処処置は、放射線療法(例えば、NSCLCまたは前立腺癌における限局性または局所浸潤性治療のため)、または手術前のネオアジュバント(例えば、mCRPC)である。有効性が確認されれば、このアプローチは、低酸素領域(例えば、胃腸癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、頭頸部癌、または軟組織肉腫)の存在を考慮すると、以上に挙げられている癌または他の癌(以前にCpd.11Ms感応性として挙げられている癌)である癌の初期段階において、Cpd.11Msまたは式(I)の他のハロアルカンスルホネートマスタードを前もって処理し、かつ適応させることによって、臨床開発のためのヒト癌における広範な指標を開くことができる。このような状況では、治療戦略および薬物レジメンは、治療前および治療中に(例えば、血液サンプルまたは腫瘍生検において)測定され得る、特定の癌および/または患者の生物学的特徴を考慮して、合わせられ得る。
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本発明によって使用され得る式Iの対称または非対称ハロアルカンスルホネートマスタード。Cpd.8〜Cpd.19の構造、特定の式(I)の対称または非対称ハロアルカンスルホネート含有マスタードが提供される(A)。Cpd.11Msと命名された式Iの参照非対称ハロアルカンスルホネートマスタードの合成プロセス(B)は、WO2014031012に記載されている最初の工程を含み、3,4−ジフルオロベンズアルデヒド(化合物1)から出発して、ナトリウムスルフィネートで処理され、対応するアルキルスルホン(化合物2)を得、次いで、酸化させて、結果として対応する安息香酸(化合物3)となる。古典的ニトロ化により、化合物4が得られ、これを対応する酸塩化物(化合物5)に変換し、さらに1−エチルピペラジンと反応させて、中間体アミド(化合物6)を得る。臭化リチウムおよびアジリジンエタノールとさらに反応させ、化合物7が得られ、次いでこれをメタンスルホン無水物で官能化して、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−1−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネートを得、これを化合物11(Cpd.11)として同定する。メタンスルホン酸との塩形成により、化合物11Ms(Cpd.11Ms;4−(5−((2−ブロモエチル)(2−((メチルスルホニル)オキシ)エチル)アミノ)−4−(メチルスルホニル)−2−ニトロベンゾイル)−1−エチルピペラジン−1−メタンスルホネート)が得られる。式(I)のハロアルカンスルホネートマスタードは、インビボにおいてヒト酵素によって代謝され得、化合物11で例示されるような一連の細胞毒性化合物になり、これは、中間体化合物11a(Cpd.11a)に、次いで腫瘍環境内に存在する低酸素状態において化合物11b(Cpd.11b)に、次いで酸素非依存性機構によって細胞毒性化合物11c(Cpd.11c)および11d(Cpd.11d)に、修飾される(C)。これらの代謝産物は、インビボにおいて生理学的塩の存在によりさらに修飾され得、臭素および/またはOM基が塩素原子によって置換され、一または二塩化物誘導体を生成する。 特定のCpd.11cおよびCpd.11d代謝産物、ならびにその重水素化変異体の合成。図1Bに記載されているCpd.11Msと命名された式Iの参照非対称ハロアルカンスルホネートマスタードの合成プロセスは、ピペラジン環中の8個の水素原子がすべて重水素化されている重水素化形態のCpd.11Ms−d8を生成するように適合させることができ、これは、化合物5から化合物6を生成するための反応において、1−エチルピペラジンを対応する重水素化バージョンで置換することによるものであり、後のすべての反応は同じままである(A)。元々のメシレート塩(Cpd.11Ms)および重水素化メシル化塩(Cpd.11Ms−d8)は、還元され得、代謝産物Cpd.11cおよびCpd.11d、または、それらの対応する重水素化形態Cpd.11c−d8およびCpd.11d−d8を生成する(B〜E)。 ヒト癌細胞株のパネルにおける、正常酸素状態および無酸素状態でのCpd.11Msおよび代謝産物の細胞毒性。それぞれの関連する癌タイプを代表する5つの細胞株は、正常酸素(NRX)状態または無酸素(ANX)状態のいずれかでCpd.11Ms(4時間薬物曝露)に曝露され、Cpd.11Msの無酸素特異的細胞毒性を示す関連するIC50およびHCR値は、インビトロATPベースの有効性アッセイを使用して計算された(A)。同じパネルの細胞株を使用して、Cpd.11cおよびCpd.11d代謝産物の形成速度が計算された(B)。肺癌(A−427、A459、NCI−460、NCI−H1975)、膵臓癌(Hs766T、BxPC−3、Capan−1)、および乳癌(MDA−MB−453、SK−BR−3、EFM−19、Hs578t)から単離されたヒト細胞株のパネルは、Cpd.11cおよびCpd.11d代謝産物の合成バージョンに曝露され、正常酸素状態においても細胞毒性特性を示す(C)。薬物を含まないコントロールウェルにおける平均プレーティング効率は、正常酸素状態下では43%、無酸素状態では30%であった。 MDA−MB−436乳癌細胞株を使用して確立された三種陰性乳癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の強い効果が、大きな体重減少なしに観察される。 NCI−H69肺癌株を使用して確立された肺癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。図2におけるように、腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の強い効果が、大きな体重減少(C)なしに観察される。 PANC−1膵臓癌株を使用して確立された膵臓癌異種移植モデルにおけるCpd.11Msの有効性。腫瘍サイズ(A)および動物生存(B;TVx4として表される)の両方に対するCpd.11Ms(腹腔内投与)の効果が、大きな体重減少(C)なしに観察される。 Cpd.11Msの有効性、および癌細胞特異的細胞毒性に関連するCpd.11Msの生物学的活性と癌低酸素状態との関係。ヒト癌細胞株から作製した腫瘍異種移植片のパネルにおける低酸素フラクションは、ピモニダゾール(PIMO+)染色を使用して評価された。2つの膵臓腫瘍異種移植モデルは、低酸素領域を示さなかった(A)。ヒト癌肺モデルDMS114におけるCpd.11Msの抗腫瘍有効性(B)は、確立されており、pH2AX染色によって評価されたようなDNA損傷は、対応する腫瘍異種移植片内でピモニダゾール染色によって評価されたような低酸素領域において、ほとんど検出された(C)。Cpd.11Msのこの抗腫瘍効果は、低酸素が検出されない膵臓癌モデルからのMiaPaca−2(D)およびSW1990(E)異種移植片においては、これらの細胞株がインビトロ、細胞培養モデルを使用して確立された無酸素状態において高いCpd.11Ms感応性であることが示されたにもかかわらず、観察されない。D0はDMS114モデルにおける腫瘍接種の28日後、SW1990モデルにおける14日後、MiaPaCa−2モデルにおける16日後である。

Claims (31)

  1. 式(I)の化合物、もしくはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体であって、
    Figure 2021525809

    Wは、Cl、Br、I、OSOを表し、
    Xは、Cl、Br、I、OSOを表し、および、
    、R、およびRのそれぞれは、独立してHまたはC1〜6アルキルを表し、
    乳癌、膵臓癌、または肺癌の治療方法において使用され、
    前記化合物は、乳癌細胞、肺癌細胞、および/または膵臓癌細胞から選択されるヒト癌細胞において低酸素依存性細胞毒性を発揮する、
    式(I)の化合物、もしくはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体。
  2. は、C1〜6アルキルを表す、請求項1に記載の使用のための式(I)の化合物。
  3. は、C1〜6アルキルを表す、請求項1または2に記載の使用のための式(I)の化合物。
  4. は、C1〜6アルキルである、請求項2または3に記載の使用のための式(I)の化合物。
  5. Wは、臭素またはヨウ素であり、
    Xは、OSOMeまたは臭素である、請求項2または3に記載の使用のための式(I)の化合物。
  6. は、メチルまたはエチルであり、
    は、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである、請求項4または5に記載の使用のための式(I)の化合物。
  7. 前記化合物は、
    2−((2−ブロモエチル)(5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物9)、
    2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)、
    2−((2−ブロモエチル)(5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物13)、
    2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−メチルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物15)、
    2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(エチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物17)、および、
    2−((2−ブロモエチル)(2−(エチルスルホニル)−5−(4−イソプロピルピペラジン−l−カルボニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物19)、
    からなる群から選択される、請求項6に記載の使用のための式(I)の化合物。
  8. 前記化合物は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネート(化合物11)である、請求項6に記載の使用のための式(I)の化合物。
  9. 前記化合物の薬学的に許容可能な塩である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  10. 前記塩は、メタンスルホネート塩である、請求項8に記載の使用のための式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩。
  11. 前記化合物は、2−((2−ブロモエチル)(5−(4−エチルピペラジン−l−カルボニル)−2−(メチルスルホニル)−4−ニトロフェニル)アミノ)エチルメタンスルホネートのメタンスルホネート塩(化合物11Ms)である、請求項10に記載の使用のための式(I)の化合物。
  12. 式(I)の前記化合物はまた、胃腸癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、脳癌細胞、頭頸部癌細胞、および軟組織肉腫細胞から選択されるヒト癌細胞において低酸素依存性細胞毒性を発揮する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  13. 前記化合物は、低酸素腫瘍細胞を有する対象に投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  14. 前記化合物は、5〜250の低酸素細胞毒性比(HCR)を示す、請求項12または13に記載の使用のための式(I)の化合物。
  15. 前記肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、または大細胞癌である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  16. 前記乳癌は、三種陰性乳房腫瘍である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  17. 前記化合物は、放射線療法、化学療法、および/または免疫療法で以前に治療されたことがある対象に投与される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  18. 前記化合物は、前記対象における癌の薬剤耐性、免疫回避、再発、または転移を防止する、請求項17に記載の使用のための式(I)の化合物。
  19. 前記化合物は、非経口投与、腫瘍内投与、経動脈塞栓投与、または経口投与のために製剤化される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物。
  20. 治療有効量の、請求項1〜11のいずれか1項において定義される式(I)の化合物、もしくはその塩、その溶媒和物、またはその立体異性体、あるいはそれらの組み合わせ、および薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント、担体、緩衝液、希釈剤、あるいは安定剤を含む、
    乳癌、膵臓癌、または肺癌の治療方法において使用するための、医薬組成物。
  21. 前記化合物は、40〜10,000mg/mの間に含まれる投与量で投与される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物、または請求項20に記載の使用のための医薬組成物。
  22. 前記化合物または前記医薬組成物は、1ヶ月当たり2、3、4、または5日間連続して投与される、請求項21に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  23. 前記化合物または前記医薬組成物は、1〜12ヶ月間投与される、請求項21または22に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  24. 前記化合物は、別の治療剤または療法と同時に、または連続して、対象に投与される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  25. 前記他の治療剤または療法は、乳癌、肺癌、および/または膵臓癌の治療に有用である、請求項24に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  26. 式(I)の前記化合物または前記医薬組成物は、第一選択療法または第二選択療法である、請求項24または25に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  27. 前記他の療法は、放射線療法である、請求項24または25に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  28. 前記他の療法は、化学療法である、請求項24または25に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  29. シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビンおよびナブ−パクリタキセル、または、エトポシドおよびシスプラチンが投与される、請求項28に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  30. 前記他の療法は、免疫療法である、請求項24または25に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。
  31. 前記免疫療法は、PD−1およびPD−L1もしくはPD−L2を、ならびに/またはPD−1とPD−L1もしくはPD−L2との結合を、ブロック、減少および/または阻害する、請求項30に記載の使用のための式(I)の化合物または医薬組成物。

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