JP5499477B2 - ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
Koji Ishizu, Akihide Mori, Macromol. Rapid Commun. 21,665−668(2000) Koji Ishizu, Akihide Mori, Polymer International 50,906−910(2001) Koji Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.35,No.9, 3781−3784(2002) Koji Ishizu, Takeshi Shibuya,Akihide Mori, Polymer International 51,424−428(2002) Koji Ishizu, Takeshi Shibuya,Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002) Koji Ishizu, Takeshi Shibuya,Jaebum Park, Satoshi Uchida, Polymer International 53,259−265(2004)
第1観点として、式(1):
式(2):
第2観点として、前記Xが、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す、第1観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第3観点として、前記A1が、式(3):
第4観点として、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500ないし5,000,000である、第1観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第5観点として、式(4):
第6観点として、前記ジチオカルバメート化合物が、N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンである、第5観点に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法、
第7観点として、前記置換反応が、分子末端にジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーを含有する有機溶剤溶液中で、ハロゲン化剤と分子末端にジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーとを反応させることにより行われる第5観点に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法、
第8観点として、前記ハロゲン化剤に、塩素、N−クロロコハク酸イミド、塩素化イソシアヌル酸、三塩化リン、臭素、N−ブロモコハク酸イミド、N−ブロムグルタルイミド、N,N’,N”−トリブロモイソシアヌル酸、N−ブロモイソシアヌル酸ナトリウム、ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、ヨウ素酸カリウム及び過ヨウ素酸から選ばれる少なくとも一種を用いる、第5観点に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法、
第9観点として、前記ハロゲン化剤に、臭素及びN−ブロモコハク酸イミドのうちの少なくとも一種を用いる、第5観点に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法、
第10観点として、式(5):
第11観点として、前記式(5)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、R4及びR5が水素原子を表す、第10観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第12観点として、前記式(5)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、R1、R4及びR5が水素原子を表し、かつA1が前記式(3)で表される構造である、第10観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第13観点として、式(6):
第14観点として、前記式(6)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、R4、R5及びR6がメチル基を表す、第13観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第15観点として、前記式(6)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、R1が水素原子を表し、R4、R5及びR6がメチル基を表し、Xが臭素原子を表し、かつA1が前記式(3)で表される構造である、第13観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第16観点として、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500ないし5,000,000である、第10観点ないし第15観点に記載のハイパーブランチポリマー、
第17観点として、前記式(1)で表される分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを、水及び/又は有機溶媒溶液中で、塩基の存在下でアミン化合物と反応させる工程を含む、第10観点又は第13観点に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法、
第18観点として、前記式(1)で表される分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを、水及び/又は有機溶媒溶液中で、塩基の存在下でフタルイミドと反応させて該分子末端をフタルイミド基に変換する第1工程と、更に該フタルイミド基を有するハイパーブランチポリマーをヒドラジン化合物で加水分解して前記式(5)中の分子末端
誘導化した例として、分子末端をアミノ基又はアンモウム基に誘導したハイパーブランチポリマーを提供する。分子末端にアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーは、水及びメタノールやエタノールなどのアルコール溶剤に可溶であり、ガラス基体の親水化処理剤としても有用である。また、分子末端をアミン化することによって、カルボン酸基等の酸と反応し得る機能的な様々なハイパーブランチポリマーに誘導することが可能となり、更なる誘導化が期待される。
式(2)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1ないし30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
A2のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、ノルマルプロピレン基、ノルマルブチレン基、ノルマルヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等の枝分かれ状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素原子数3ないし30の単環式、多環式及び架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)ないし(s)を示す。
また、式(1)中のA1としては、式(3)で表される構造であることが好ましい。
本発明の式(1)で表される構造を有するハイパーブランチポリマーは、式(7)で表されるビニル基を有する開始点部分の構造に式(8)で表される繰り返し単位構造が連結した構造をとっている。
そして、繰り返し単位構造の数を表すnが2の場合には、その構造として、式(9)及び式(10):
本発明の式(1)で表される構造を有するハイパーブランチポリマーは、繰り返し単位構造が規則的に3点で結合して枝分かれした構造になる場合、及び2点で結合し、枝分かれせずに線状の構造になる場合のいずれをも包含する。
本発明のハイパーブランチポリマーとしては、その繰り返し単位構造が単一である場合及び二種またはそれ以上である場合とが考えられるが、そのいずれであってもよい。そして、例えば、繰り返し単位構造が二種、すなわちコポリマーである場合、コポリマーの配列様式はランダムコポリマー、交互コポリマー又はブロックコポリマーのいずれであってもよい。
本発明の式(1)で表される構造を有するハイパーブランチポリマーは、式(4)で表されるジチオカルバメート化合物をリビングラジカル重合することによって得られるジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーを、ハロゲン化することによって分子末端がハロゲン原子であるハイパーブランチポリマーを製造することができる。
式(4)中、R1及びA1は前記式(1)に記載の定義と同義である。R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基を表す。また、R2とR3は互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に環を形成していてもよい。
炭素原子数1ないし5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、ノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
R2とR3が互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に形成する環としては四ないし八員環が挙げられる。そして、環としてメチレン基を四ないし六個含む環が挙げられる。また、環として酸素原子又は硫黄原子と四ないし六個のメチレン基とを含む環も挙げられる。R2とR3が互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に形成する環の具体例としては、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環等が挙げられる。
本求核置換反応は、通常上記二種類の化合物を両方溶解できる有機溶媒中で行なうことが好ましい。反応後、水/非水系有機溶剤による分液処理及び再結晶処理を実施することによって式(4)で表される化合物を高純度で得ることができる。また、式(4)で表される化合物は、Macromol. Rapid Commun. 21,665−668(2000)又はPolymer International 51,424−428(2002)に記載の方法を参照して製造することができる。
式(4)で表される化合物の具体例としては、N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンが挙げられる。
溶液重合の場合は、式(4)で表される化合物を溶解可能な溶剤中で、任意の濃度で重合反応を行なうことができる。式(4)で表される化合物の濃度は任意であるが、例えば1ないし80質量%であり、好ましくは2ないし70質量%であり、より好ましくは5ないし60質量%、最も好ましくは30ないし50質量%である。溶剤としては、式(4)で表される化合物を溶解可能な溶剤であれば特に制限はない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は一種を用いてもよいし、二種またはそれ以上を混合して用いてもよい。
式(4)で表される化合物のリビングラジカル重合は、また、Macromolecules Vol.35, No.9, 3781−3784(2002)又はMacromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002)記載の方法を参照して行なうことができる。
また、リビングラジカル重合時には、枝分かれ度及び重合度を調整するために、ジチオカルバメート基を有していない公知のビニルモノマー又は不飽和二重結合を有する化合物を添加することができる。これらは、式(4)で表される化合物に対して50モル%未満の割合で使用することができる。これらの具体例としては、スチレン類、ビニルビフェニル類、ビニルナフタレン類、ビニルアントラセン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルピロリドン類、アクリロニトリル類、マレイン酸類、マレイミド類、ジビニル化合物類及びトリビニル化合物類が挙げられる。
上述のようにして得られるジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーを、ハロゲン原子に置換することによって本発明の分子末端にハロゲン原子を有する式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを得ることができる。
ヌル酸ナトリウム、N,N’−ブロムイソシアヌル酸カリウム、N,N’−ジブロモイソ
シアヌル酸、N−ブロモイソシアヌル酸ナトリウム、N,N’−ジブロムヒダントイン、N−ブロモヒダントインカリウム、N,N’−ブロモヒダントインナトリウム、N−ブロム−N’−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5’−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントインナトリウム、1−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントインカリウム、3−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントインナトリウム、3−ブロモ−5,5’−ジメチルヒダントインカリウム等の臭素化剤、ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸、ヨウ素酸等のヨウ素化剤を使用することができる。ハロゲン化剤の使用量は、ハイパーブランチポリマー内のジチオカルバメート基の数に対して1ないし20倍モル当量、好ましくは1.5ないし15倍モル当量、より好ましくは2ないし10倍モル当量であればよい。置換反応の条件としては、反応時間0.01ないし100時間、反応温度0ないし300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間0.1ないし10時間、反応温度20ないし150℃である。
なお、本発明の分子末端にハロゲン原子を含有するハイパーブランチポリマーは、分子末端の一部がジチオカルバメート基として残存していてもよい。
炭素原子数1ないし5のヒドロキシルアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。炭素原子数6ないし14のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラキノ基、アントラセン基、フルオレン基、フルオレノン基、インダン基、フェナントレン基、キノリン基等が挙げられる。炭素原子数7ないし20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。炭素原子数7ないし20のアルキルアリール基としては、p−n−ブチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−n−オクチルフェニル基、p−n−デシルフェニル基、p−n−ドデシルアニリン基、p−n−テトラデシルフェニル基等が挙げられる。
また、式(5)で表される構造でR4及びR5が互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に形成する環としては、フタルイミド基、ピロール環、ピペリジン環、ピペラジル環、イミダゾール環等が挙げられる。
さらに、式(6)で表される構造でR4、R5及びR6が互いに結合し、それらと結合する窒素原子と共に形成する環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、ピピリジル環等が挙げられる。また、式(6)中のハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
したがって、式(5)又は式(6)で表される構造を有するハイパーブランチポリマーは、式(1)で表される分子末端にハロゲン原子を有するイパーブランチポリマーの構造で詳述したものと同様の構造を有し、ハロゲン原子がアミノ基又はアンモニウム基に置き換わった構造を有するものである。
有機溶剤としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、水及び酢酸等の有機酸系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の脂肪族炭化水素類等が使用できる。これらの溶剤は一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、ハロゲン原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2ないし1,000倍質量、好ましくは1ないし500倍質量、より好ましくは5ないし100倍質量、最も好ましくは10ないし50倍質量の有機溶剤を使用することが好ましい。また、この反応では反応開始前には反応系内の酸素を十分に除去する必要があり、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間0.01ないし100時間、反応温度0ないし200℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1ないし5時間で、反応温度が20ないし150℃である。
塩基の非存在下で、第一級アミン又は第二級アミン化合物と分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーと反応させて分子末端にアミン末端を有するハイパーブランチポリマーを得る際、それぞれに対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化された式(6)で表されるアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。
また、塩基を用いて反応を行った場合においても、有機溶剤中で塩酸、臭化水素、ヨウ化水素等の酸の水溶液と混合することにより、対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化された式(6)で表されるハイパーブランチポリマーが得られる。
なお、本発明の分子末端にアミノ基又はアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーは、分子末端の一部がハロゲン原子として残存していてもよい。
(1)融点分析
装置:(株)リガク製 DSC8230
昇温速度:2℃/分
窒素量:60ml/分
(2)液体クロマトグラフィー
装置:Agilent製 1100Series
カラム:Inertsil ODS−2
カラム温度:40℃
溶媒:アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出器:RI
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー
装置:(株)島津製作所製 SCL−10AVP
カラム:Shodex KF−804L+KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(4)1H−NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−LA400
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン
(5)元素分析(炭素、水素、窒素)
装置:パーキンエルマー製 PE2400X
燃焼管温度:975℃
(6)元素分析(臭素)
前処理装置:株式会社ダイアンインスツルメンツ製 自動試料燃焼装置 AQF−100型
燃焼管温度:1000℃
分析装置:日本ダイオネクス株式会社製 DX500
カラム:AS9HC
溶離液:Na2CO3 9mM
(7)元素分析(硫黄)
前処理装置:株式会社ダイアンインスツルメンツ製 自動試料燃焼装置 AQF−100型
燃焼管温度:1000℃
分析装置:日本ダイオネクス株式会社製 ICS−1500
カラム:Dionex AS12A
溶離液:Na2CO3 2.7mM − NaHCO3 0.3mM
(8)熱重量分析
装置:セイコー電子工業(株)製 TG/DTA320
昇温速度:10℃/分
空気量:300ml/分
(9)接触角測定
装置:協和界面科学株式会社製 全自動接触角計CA−W型
温度:23.0℃
湿度:50%
液量:3μL
着液後の安定化時間:5秒
<N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンの合成>
2Lの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]120g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]181g及びアセトン1400gを仕込み、撹拌下で、温度40℃で1時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去し、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解し、トルエン/水系で分液後、零下20℃の冷凍庫内でトルエン相から目的物を再結晶した。再結晶物を濾過、真空乾燥して、白色粉末の目的物206g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(相対面積百分率)は100%であった。また、DSC測定での融点は56℃であった。
<ジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
300mLの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g及びトルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、温度30℃で12時間行なった。次に、この反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物48gを得た。1H−NMRスペクトルの測定結果を図1に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,900、分散度Mw/Mnは4.9であった。元素分析は、炭素64.6質量%、水素7.4質量%、窒素5.0質量%及び硫黄25.3質量%であった。
<ハロゲン原子を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
還流塔を付した300mLの反応フラスコに、参考例2で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー10g及びクロロホルム50gを仕込み、反応系内を窒素置換した。これに、臭素[純正化学社製]16.0gをクロロホルム50gに溶解させたものを滴下して加え、3時間還流を行った。温度30℃まで冷却後、生成した橙色沈殿を濾別した。
飽和食塩水及び20質量%チオ硫酸ナトリウムを加えて、有機相を洗浄した。この溶液をメタノール500gに滴下して再沈を行った。得られた黄色粉末を再度クロロホルム40gに溶解し、500gのメタノールに滴下し、再沈を行い、得られた無色粉末を乾燥して、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーのジチオカルバメート基部分が臭素原子に置換されたハイパーブランチポリマー4.6gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,600、分散度Mw/Mnは2.2であった。元素分析は、炭素50.2質量%、水素3.8質量%、窒素1.0質量%未満及び臭素33.2質量%であった。1H−NMRスペクトルの測定結果を図2に示した。図1に示されていた4.0ppm及び3.7ppmのジチオカルバメート基のメチレン基由来のピークが消失しており、また、1.3ppmのジチオカルバメート基のメチル基由来のピークが減少したことが観測された。これより、参考例2で得られたハイパーブランチポリマーの末端のジチオカルバメート基は、ほぼ100%ハロゲン原子(臭素原子)に置換されていることが明らかとなった。得られたハイパーブランチポリマーは式(23)で表される構造を有する。
<トリメチルアンモニウム基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
還流塔を付した300mLの反応フラスコに、実施例1で得た臭素原子を分子末端に有する式(23)で表されるハイパーブランチポリマー0.50g及びN,N’−ジメチルホルムアミド3.0gを仕込み、30質量%トリメチルアミン水溶液[東京化成社製]0.59gを加えた。このとき系内は懸濁した。系内を窒素置換し温度80℃で6時間加熱した。温度30℃まで冷却後、生じた沈殿をアセトンにて洗浄した。この固体を水3.0gに溶解し、20gのアセトンにて再沈を行い、乾燥すると薄茶色粉末0.33gを得た。この粉末は、メタノールや純水に10質量%以上可溶であった。1H−NMRスペクトルの測定結果を図3に示した。図2に示されていた4.4ppmのベンジル基のメチレン基由来のピークが、4.7ppmにシフトしており、新たに3.3ppmにメチル基由来のピークが観測された。これより、実施例1で得られたハイパーブランチポリマーの末端の臭素原子がほぼ100%トリメチルアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。得られたハイパーブランチポリマーは式(24)で表される構造を有する。
<第三級アミノ基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
還流塔を付した50mLの反応フラスコに、実施例1で得た臭素原子を分子末端に有する式(23)のハイパーブランチポリマー1.0g、N,N’−ジメチルホルムアミド10.0gを仕込み、フタルイミドカリウム[東京化成社製]1.1gを加えた。系内を窒素置換し温度80℃で4時間加熱した。温度30℃まで冷却後、得られた茶褐色溶液をイオン交換水10gにより再沈を行った。得られた茶色固体をクロロホルム10gに溶解し、メタノール100gにより再沈を行い、これを乾燥すると薄茶色粉末1.3gが得られた。1H−NMRスペクトルの測定結果を図4に示した。図2に示されていた4.4ppmのベンジル基のメチレン基由来のピークが、4.7ppmにシフトしており、新たに7.5ppmないし7.8ppmに芳香環由来のブロードのピークが観測された。これより、実施例1で得られたハイパーブランチポリマーの末端の臭素原子がほぼ100%フタルイミド化されていることが明らかとなった。得られたハイパーブランチポリマーは式(25)で表される構造を有する。
<第二級アミノ基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
還流塔を付した50mLの反応フラスコに、実施例1で得た臭素原子を分子末端に有する式(23)のハイパーブランチポリマー0.2g、N,N’−ジメチルホルムアミド2.0gを仕込み、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン[東京化成社製]0.2gを加えた。系内を窒素置換し温度80℃で4時間加熱した。温度30℃まで冷却後、得られた茶褐色溶液をイオン交換水80gにより再沈を行った。これを乾燥すると薄茶色粉末0.2gが得られた。1H−NMRスペクトルの測定結果を図5に示した。1.3ppmに末端メチル基由来のピークが鋭く現れており、3.0ppm、3.3ppmにエチレンジアミン部位のメチレン基由来のピークが観測されたことから、実施例1で得られたハイパーブランチポリマーの末端の臭素原子がほぼ100%アミノ化されていることが明らかとなった。得られたハイパーブランチポリマーは式(26)で表される構造を有する。
<第一級アミノ基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
還流塔を付した50mLの反応フラスコに、実施例3で得た式(25)のハイパーブランチポリマー0.2g、N,N’−ジメチルホルムアミド2.0gを仕込み、ヒドラジン一水和物[関東化学社製]0.12gを加えて反応系内を窒素置換した。溶液を3時間加熱攪拌し、室温まで冷却した後、得られた茶褐色溶液をアセトン10gにより再沈を行った。これを乾燥すると薄茶色粉末0.1gが得られた。1H−NMRスペクトルの測定結果を図6に示した。図4に現れていた7.5ppmないし7.8ppmの芳香環由来のブロードのピークが消失していることから、実施例3で得られたハイパーブランチポリマーの末端のフタルイミド部位がほぼ100%アミンに変換していることが明らかとなった。得られたハイパーブランチポリマーは式(27)で表される構造を有する。
実施例2で合成したハイパーブランチポリマーを10質量%となるようにメタノールに溶解させた溶液を作製した。この溶液を0.45μmのシリンジフィルターで処理し、洗剤およびイオン交換水によって洗浄したガラス基体にスピンコーター(300rpm×5秒間、2500rpm×25秒間)を用いて全面に塗布し、ホットプレートで温度150℃にて5分間乾燥した。ハイパーブランチポリマーで表面処理されたガラス基体に対する純水の接触角は21.0°であった。また、未処理のガラス基体に対する純水の接触角は41.9°であった。このことから、ガラス基体表面を実施例2で合成したハイパーブランチポリマーで被覆することにより親水化していた。
Claims (6)
- 式(5):
R 1 は水素原子又はメチル基を表し、
A 1 は式(2):
0の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y 1 、Y 2 、Y 3 又はY 4 は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
R4及びR5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1ないし20の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数1ないし5のヒドロキシルアルキル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数7ないし20のアリールアルキル基、炭素原子数7ないし20のアルキルアリール基、−(CH2)m−NH(CO)−O−C(CH3)3(但し、mは2ないし6の整数を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2ないし100,000の整数を表す。]で表されるハイパーブランチポリマー。 - 前記式(5)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、R4及びR5が水素原子を表す、請求項1に記載のハイパーブランチポリマー。
- ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500ないし5,000,000である、請求項1ないし請求項3に記載のハイパーブランチポリマー。
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