JP5558756B2 - 抗菌性ハイパーブランチポリマー - Google Patents
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Description
損傷を引き越して、細菌を死滅させると考えられている。
これらの高分子はすべてリニアーな高分子であり、溶剤への溶解性や他のポリマーに対する相溶性が不十分となる場合があった。
そのため固定した基材から剥離する等の問題が生じことがあり、加工性のさらなる向上が望まれている。
[1]4級ピリジニウム塩からなる部分を有するハイパーブランチポリマーからなる抗菌又は殺菌剤、
[2]前記ハイパーブランチポリマーが、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]記載の抗菌又は殺菌剤、
R2は水素原子、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至3
0の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、4−ニトロスチリル基、又は式(2a)、式(2b)又は式(2c)
む、炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表し、R8乃至R11は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでい
てもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表し、
Y-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、CH3COO-、PhSO3 -、4−MePhSO3 -又はR12SO4 -を表す。(前記式中Phはフェニル
基、Meはメチル基、R12は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。))
で表される構造を表し、
R3乃至R6は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表し、又は
R3又はR5は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造を表し、
X-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、CH3COO-、PhSO3 -、4−MePhSO3 -又はR12SO4 -を表し(前記式中Phはフェニル基
、Meはメチル基、R12は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル
基を表す。)、
A1は式(3)
至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキレン基を表し、
Z1乃至Z4は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。〕
[3]前記A1が、式(4)で表される構造であることを特徴とする前記[2]記載の抗
菌又は殺菌剤、
[5]前記X-及び前記Y-の何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンであり、他方がPhSO3 -又は4−MePhSO3 -であることを特徴とする、前記[2]又は[3]記載の抗菌又は殺菌剤、
[6]前記R7がエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状
のアルキル基である、前記[2]乃至[5]のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤、[7]前記R7が炭素原子数1乃至10のアルコキシ基で置換された直鎖状、分枝鎖状又
は環状の炭素原子数1乃至10のアルキル基である、前記[6]に記載の抗菌又は殺菌剤、
[8]前記R7が炭素原子数1乃至10の分枝鎖状アルコキシ基で置換された炭素原子数
1乃至10のアルキル基であって、該分枝鎖状アルコキシ基が酸素原子に結合する炭素原子において枝分かれしているアルキル基である、前記[7]記載の抗菌又は殺菌剤、
[9]前記R7が2−メトキシエチル基又は2−イソプロポキシエチル基である、前記[
7]記載の抗菌又は殺菌剤、
[10]前記R7が2−メトキシエチル基又は2−イソプロポキシエチル基であり、前記
X-が臭素イオンであり、前記Y-が4−MePhSO3 -であることを特徴とする、前記[99]記載の抗菌又は殺菌剤、
[11]前記R2がメチル基であることを特徴とする、前記[2]乃至[5]のうち何れ
か一項に記載の抗菌又は殺菌剤、
[12]前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500乃至5,000,000であることを特徴とする、前記[2]乃至[11]のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤、
[13]前記ハイパーブランチポリマーの平均粒径が、1nm乃至100nmであることを特徴とする前記[1]に記載の抗菌又は殺菌剤、
[14]前記[1]乃至[13]のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤がその表面に
被覆されるか又はその内部に混練されてなる基材、
[15]前記基材が、木、紙、金属、繊維材料、合成樹脂又はセラミックスであることを特徴とする[14]に記載の基材、
[16]前記[1]乃至[13]のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤が、他の成分又は材料と組み合わせ又は併用されて、溶液、粘凋液、ゲル、スプレー又はカプセルの形態にあることを特徴とする抗菌又は殺菌剤製品、
[17]前記[1]乃至[13]のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤を含む薄膜、[18]前記[17]に記載の薄膜を少なくとも1層有する基板又は支持体、
を提供する。
特に4級ピリジニウム塩からなる部分を有するハイパーブランチポリマーは優れた抗菌又は殺菌作用を有する。
本発明の抗菌又は殺菌剤は、ハイパーブランチポリマーの末端が4級ピリジニウム塩からなる部分を有することで、ハイパーブランチポリマー1分子に多数の4級ピリジニウム塩からなる部分が立体的に配位する微粒子構造をもつこととなり、優れた抗菌又は殺菌作用を発現する。
このように基材への固定化や薄膜化が可能なため、本発明の抗菌又は殺菌剤は、加工性に優れ、広い抗菌製品への応用が可能となる。
例えば、おむつ、生理用品、血液吸収剤、創傷被覆材、その他外用基材などの人体や動物に適用される衛生用品又は医療用品、衣類、寝具、じゅうたん、カーテンなどの繊維への処理、台所や各種食品の加工又は貯蔵などのための用具や装置の表面処理、土木シーリング材などの園芸用品、農業用品又は建築材の処理、加工、船や飛行機、宇宙用材その他の抗菌作用が求められる物、あらゆる箇所に適用することができる。
また、このような抗菌性ハイパーブランチポリマーは疎水性部と親水性部を持ち、かつ、柔軟な粒子であるため、細菌を近づけさせるようその形態を自由に変えることで、菌の増殖を抑制することができる。
光触媒の防汚効果や防菌効果などは、酸化チタンの親水性作用により示すことは良く知られている。他方、フッ素は疎水性に表面改質して抗菌作用を示すことも知られている。ハイパーブランチポリマーはその薄膜形成作用により、表面を改質でき、さらに、末端官能基の種類や組み合わせによって、親水性・疎水性のバランスをコントロールできることから、多彩な特性をもつ抗菌材料となることができる。
本発明に係る抗菌又は殺菌剤は、抗菌又は殺菌性を示す官能基を含有するハイパーブランチポリマーからなるものである。
抗菌又は殺菌性を示す官能基としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、ピリジン化合物、有機ハロゲン化合物、チアゾリン化合物、フェノール類、イミダゾリウム塩、クロロフェノール化合物、ピリジンチオールオキシド塩、ニトロ基含有モルホリン化合物、塩化トリアジン化合物等を含有する官能基が挙げられる。
これらのなかでも、陽イオン性を有する官能基が好適に用いられ、本発明に用いられるハイパーブランチポリマーは、4級ピリジニウム塩からなる部分を有する化合物である。
ハイパーブランチポリマーと同様にデンドリック(樹枝状)な構造を有する高分子であるデンドリマーに対するハイパーブランチポリマーの利点は、その合成の簡便さが挙げられる。特に工業的生産においては有利である。一般にデンドリマーが保護−脱保護を繰り返し合成されるのに対し、ハイパーブランチポリマーは1分子中に二種類の置換基を合計3個以上持つ、いわゆるABX型モノマーの1段階重合により合成される。
ハイパーブランチポリマーのデンドリマーに対する特性の違いとして、不規則な枝分かれ及び分子量分布を有する点が挙げられる。ハイパーブランチポリマーは、線状及び完全に枝分かれした繰り返し単位の混合物を有し、それに対してデンドリマーは、線状の繰り返し単位も有さずに、規則的に枝分かれした繰り返し単位を有する。また、ハイパーブランチポリマーは分子量分布を有し、それに対してデンドリマーは、単一の分子量を有する。
ハイパーブランチポリマーとデンドリマーとのこれらの差異は、球状のデンドリマーと比較してハイパーブランチポリマーの構造にランダム性及び不規則性があるということである。
デンドリマーを堅いポリマーとするとハイパーブランチポリマーは柔らかいポリマーと表現できる。
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、4−ニトロスチリル基を表すか又は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造を表す。R3乃至R6は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表し、又は、R3又はR5は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造を表す。
X-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、CH3COO-、PhSO3 -、4−MePhSO3 -又はR12SO4 -を表す(前記式中Phはフェニル
基、Meはメチル基、R12は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。)。
nは繰り返し単位構造の数であって、2乃至100,000の整数を表す。
また、A1は前記式(3)で表される構造を表す。
む炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。
R8乃至R11は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んで
いてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表す。
そしてY-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、C
H3COO-、PhSO3 -、4−MePhSO3 -又はR12SO4 -を表す(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R12は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。)。
至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキレン基を表す。
Z1乃至Z4は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
さらに、前記環状アルキル基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。
ル結合を含む、炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基とは、例えば、前記段落[0019]で述べた直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基中にエーテル結合又はエステル結合を含む基を挙げることができる。
より好ましくは、R7はエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状
又は環状のアルキル基である。特に得られる化合物の吸湿性、潮解性のなさを考慮すると、特に好ましくは炭素原子数1乃至10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1乃至10のアルキル基、最も好ましくは炭素原子数1乃至10の分枝鎖状アルコキシ基で置換された炭素原子数1乃至10のアルキル基であって、該分枝鎖状アルコキシ基が酸素原子に結合する炭素原子において枝分かれしているアルキル基である。
具体的には、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、イソプロポキシメチル基、2−イソプロポキシエチル基、sec−ブトキシメチル基、2−sec−ブトキシエチル基、シクロヘキソキシメチル基、1−シクロヘキソキシエチル基、シクロペントキシメチル基、1−シクロペントキシエチル基等が挙げられ、好ましくは2−メトキシエチル基及び2−イソプロポキシエチル基であり、特に好ましくは2−イソプロポキシエチル基である。
0のヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基等、アルケニル基の例としてはビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基及びシンナミル基等、アルキニル基の例としてはエチニル基、1−プロピニル基及び1−ブチニル基等、そしてアラルキル基の例としてはベンジル基及び2−フェニルエチル基等が挙げられる。
さらにアリール基の例としてはフェニル基、ビフェニル骨格、ターフェニル基およびナフチル基等、複素環基の例としてはピリジル基及びピペリジニル基等が挙げられる。
ことが好ましい。
或いは、前記X-または式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のY-は、何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンであり、他方がPhSO3 -又は4−MePhSO3 -であることが好ましく、特に、前記X-が臭素イオンであり、前記Y-が4−MePhSO3 -であることが最も好ましい。
また、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキソキシ基及びノルマルペントキシ基等が挙げられる。
上記のZ1乃至Z4において、特に水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基であることが好ましい。
前記基材としては、例えば、木、紙、金属、繊維材料、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
前記抗菌又は殺菌剤がその表面に被覆されるか又はその内部に混練されてなる基材は、本発明の抗菌又は殺菌剤を0.01乃至100質量%濃度になるように溶解した溶液を、前記基材表面に吹きつけ、コーティング、又は蒸着する方法や該溶液に該基材を浸漬させる方法等で該基材表面に該溶液を塗布した後、室温下乃至は加温下にて乾燥させることにより作製することができる。また、本発明の抗菌又は殺菌剤を該基材内部に混練することでも作製することができる。
溶液としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、エタノール、メタノール等の単独溶媒あるいは、これらの混合溶剤が用いられ、なかでもエタノール、メタノールが好ましい。
ゲル及び粘張液としては、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリプロピレングリコールなどの各種合成高分子、セルロース、アルギン酸、キサンタンガム、カラギナン、グァーガム、ペクチン、キトサン、ガードラン、コラーゲン、ゼラチンなどの各種天然高分子、その他の超分子などが挙げられる。
該薄膜は、本発明の抗菌又は殺菌剤を0.01乃至100質量%濃度になるように溶解した溶液を基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることで基材上に抗菌又は殺菌性の薄膜を形
成させることができる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
溶媒の蒸発法としては、特に限定されるものではなく、室温下乃至は加温下にて乾燥させればよい。
前記基板及び支持体としては、ガラス又はプラスチックが用いられる。プラスチックは、フィルム状のものを用いてもよい。使用されるプラスチックとしては、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリノルボルネン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
例えば、前記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、下記式(5)で表されるジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーをハロゲン化した後、4級ピリジニウム塩含有化合物を反応させることによって製造することができる。
下記式(5)で表されるジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、国際公開第2006/093050号パンフレットに記載された方法で製造することができる。
ブロモヒダントインカリウム、N,N'−ジブロモヒダントインナトリウム、N−ブロモ
−N'−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5'−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインナトリウム、1−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインカリウム、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインナトリウム、
3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインカリウム等の臭素化剤、ヨウ素、N−ヨー
ドコハク酸イミド、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸、ヨウ素酸等のヨウ素化剤を使用することができる。ハロゲン化剤の使用量は、ハイパーブランチポリマー内のジチオカルバメート基の数に対して1乃至20倍モル当量、好ましくは1.5乃至15倍モル当量、より好ましくは2乃至10倍モル当量であればよい。置換反応の条件としては、反応時間0.01乃至100時間、反応温度0乃至300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間0.1乃至10時間、反応温度20乃至150℃である。
なお、分子末端にハロゲン原子を含有するハイパーブランチポリマーは、分子末端の一部がジチオカルバメート基として残存していてもよい。
塩、過臭素酸塩、過ヨウ素酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、四フッ化ホウ酸塩、六フッ化リン酸塩、酢酸塩等)等が挙げられる。中でも好ましくは塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、過塩素酸塩、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、スルホン酸塩、四フッ化ホウ酸塩、六フッ化リン酸塩等が挙げられ、最も好ましくは、塩化物塩、臭化物塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、スルホン酸塩、四フッ化ホウ酸塩である。
また下記一般式で表される化合物等も好適な化合物として挙げることができる。
、ヨウ素イオン、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、CH3COO-、PhSO3 -、4−MePhSO3 -又はR12SO4 -を表す(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R12は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。)。
使用する溶剤は、前記4級ピリジニウム塩含有化合物と前記分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを溶解可能なものであればよく、さらに、反応後の高分子化合物を溶解しない溶剤であればより好ましい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系化合物、ジメチルスルホキシド等が使用できる。これらの溶剤は一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、前記分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2乃至1,000倍質量、好ましくは1乃至500倍質量、より好ましくは5乃至100倍質量、最も好ましくは10乃至50倍質量の有機溶剤を使用することが好ましい。
また、この反応では反応開始前には反応系内の酸素を十分に除去する必要があり、窒素
、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。
反応条件としては、反応温度0乃至300℃、反応時間0.01乃至100時間から適宜選択される。好ましくは反応温度20乃至150℃、反応時間0.1乃至10時間である。
なお、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、分子末端の一部がハロゲン原子として残存していてもよい。
以下の実施例において、試料の物性測定には下記の装置を使用した。
装置:Agilent製 1100Series
カラム:Inertsil ODS−2
カラム温度:40℃
溶媒:アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出器:RI
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:Shodex KF−805L+KF−804L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(3)FT−IR
装置:ニコレー・ジャパン(株)製 NEXUS670
(4)熱重量分析
装置:(株)リガク製 TG8120
昇温速度:10℃/分
空気量:60ml/分
(5)融点分析
装置:(株)リガク製 DSC8230
昇温速度:2℃/分
窒素量:60ml/分
(6)元素分析(炭素、水素、窒素)
装置:パーキンエルマー製 PE2400II
燃焼管温度:975℃
(7)元素分析(硫黄)
前処理装置:(株)ダイアンインスツルメンツ製 自動試料燃焼装置 AQF−100型
燃焼管温度:1000℃
分析装置:日本ダイオネクス(株)製 ICS−1500
カラム:Dionex AS12A
溶離液:炭酸ナトリウム2.7mM − 炭酸水素ナトリウム0.3mM
(8)元素分析(ナトリウム)
装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 Vista−Pro
300mlの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g及びトルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯し、内部照射による光重合反応を、撹拌下、温度30℃で12時間行なった。次に、この反応液をメタノール3,000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3,000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の下記式(6)で表されるハイパーブランチポリマー48gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,900、分散度Mw/Mnは4.9であった。元素分析は、炭素64.6質量%、水素7.4質量%、窒素5.0質量%及び硫黄25.3質量%であった。
還流塔を付した300mLの反応フラスコに、参考例1で合成した式(6)で表されるハイパーブランチポリマー10g及びクロロホルム50gを仕込み、反応系内を窒素置換した。これに、臭素[純正化学(株)社製]16.0gをクロロホルム50gに溶解させたものを滴下して加え、3時間還流を行った。温度30℃まで冷却後、生成した橙色沈殿を濾別した。
飽和食塩水及び20質量%チオ硫酸ナトリウムを加えて、有機相を洗浄した。この溶液をメタノール500gに滴下して再沈を行った。得られた黄色粉末を再度クロロホルム40gに溶解し、500gのメタノールに滴下し、再沈を行い、得られた無色粉末を乾燥して、下記式(7)で表されるハイパーブランチポリマー4.6gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,600、分散度Mw/Mnは2.2であった。元素分析は、炭素50.2質量%、水素3.8質量%、窒素1.0質量%未満及び臭素33.2質量%であった。
反応フラスコに、参考例2で合成した式(7)で表されるハイパーブランチポリマー200mg(1.01mmolユニット)と、4−メチルピリジン140mg(1.50mmol)及びクロロホルム100mlを仕込んだ。系内を窒素置換し、温度60℃で24時間、還流撹拌した。室温まで冷却後、析出した固体をろ過した。ろ物をクロロホルムで洗浄した後、乾燥し、下記式(8)で表されるハイパーブランチポリマー283mg(黄色粉末、収率97%)を得た。4−メチルピリジンの導入率は、1H−NMR測定より1
00%であった。
反応器にテトラヒドロフラン(THF)70mL、2.6M−NaOH水溶液50mL、2−(1−メチルエトキシ)エタノール10.468g(101mmol)を加え、0℃で撹拌した。
70mLのTHFに溶解させたp−トシルクロリド20.825g(109mmol、1.1eq)を反応器にゆっくり滴下し、滴下後、室温に戻して終夜撹拌した。希硫酸で溶液を酸性にした後、ジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で3回洗浄後、有機相を硫
酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を濃縮、シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン→クロロホルム)で精製して無色の液体2−イソプロポキシエチル p−トシレート16.059g(62.2mmol)を得た(収率:62%)。
シレートの合成>
窒素雰囲気下、反応器に4,4'−ビピリジル 1.594g(10.2mmol)、
2−イソプロポキシエチル p−トシレート 3.988g(15.4mmol)、N,N'−ジメチルホルムアミド 60mLを加え、室温で30分間撹拌後、続けて60℃で
終夜還流した。
室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラム(溶媒 アセトン→メタノール:アセトン=1:1)で精製して粘性の高い黄色の液体1−(2−イソプロポキシエチル)−[4,4']ビピリジニル−1−イウム p−トシレート 2.132g(5.14mm
ol)を得た(収率:51%)。
窒素雰囲気下、反応器に参考例2で合成した式(7)で表されるハイパーブランチポリマー196mg(0.984mmolユニット)、1−(2−イソプロポキシエチル)−[4,4']ビピリジニル−1−イウム p−トシレート619mg(1.49mmol
、1.5eq)、クロロホルム80mLを加え、室温で30分間撹拌後、続けて60℃で終夜還流した。
室温に戻した後、溶媒を留去し、アセトンで洗浄して黄色固体の下記式(9)で表されるハイパーブランチポリマー459mgを得た。1−(2−イソプロポキシエチル)−[4,4']ビピリジニル−1−イウム基の導入率は、1H−NMR測定より85%であった。
以下の文献に記載されている方法に順じて、下記式(10)で表されるベンジルブロマイドの4−メチルピリジニウム塩を合成した。
非特許文献:Can.J.Chem.,53,2162(1975)
2%グルコース[0.1Mリン酸緩衝液(リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、PH=5)100mLにD(+)−グルコース2gを溶解する]および4%アセテート[0.1Mリン酸緩衝液(リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、pH=5)100mLに酢酸ナトリウム三水和物 4gを溶解する]を含むComplete Supplement Mixture(CSM)培地〔イーストニトロジェンベース 0.85g、W/O アミノ酸―硫酸アンモニウム[DIFCO社製]、CSM 0.31g[BIO 101社製]を、0.1Mリン酸緩衝液(リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、PH=5)1Lに溶解する、pH=7〕10mlを用いて、30℃で3日間前培養した菌液をCSM培地で希釈して菌液を調製した。菌数は、倒立顕微鏡LH50A[オリンパス(株)製、×100−400]下に計測した。
次いで、96穴マイクロプレート[コーニング社製、ポリスチレン]に、参考例3で得られた4−メチルピリジニウム基を有するハイパーブランチポリマーを20μL(最終濃度10μg/mL)添加後、同プレートに希釈した菌液を180μLずつ添加して、25℃で4日間静置培養を行った。各菌の増殖の程度(抗菌活性)は達観判定(90%抑制以上で効果有り)を行った。
試験に供試した菌として、グラム陽性菌の枯草菌Bacillus subtilis(BS)(PCI
−219)(7.4×104個/mL)、グラム陰性菌の大腸菌Escherichia coli(IF
O−3972)(1.6×106個/mL)を用いた。
試験供試溶液は、参考例3で得られた4−メチルピリジニウム基を有するハイパーブランチポリマー1mgを、乳化剤2.5μL(ソルポール[東邦化学工業(株)製 3005XL]:アセトン:ジメチルスルホキシド(DMSO):キシレン=1:3:3:3)を含むアセトン100μLに溶解させた。これを水900μLに混合希釈して供試溶液(1000ppm 1mL)とした。
参考例3で得られた4−メチルピリジニウム基を有するハイパーブランチポリマー(最終濃度10μg/mLおよび100μg/mL)は、枯草菌、大腸菌に対して、抗菌作用を示した。
実施例1において、参考例3で得られた4−メチルピリジニウム基を有するハイパーブランチポリマーを、参考例5で得られたベンジルブロマイドの4−メチルピリジニウム塩に変えたほかは、同様に行った。
参考例5で得られたベンジルブロマイドの4−メチルピリジニウム塩(最終濃度10μg/mLおよび100μg/mL)では、抗菌活性は認められなかった。
LB培地(Yeast 5g/L、トリプトン 10g/L、塩化ナトリウム5g/L
pH=7.0)20mlを用いて、30℃で1日間前培養した菌液をLB培地で希釈して菌液を調製した。菌数は、倒立顕微鏡LH50A[オリンパス(株)製、×100−400]下に計測した。
次いで、96穴マイクロプレート[コーニング社製、ポリスチレン]に、参考例4で得られたビピリジニル基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーを20μL(最終濃度100μg/mL)添加後、同プレートに希釈した菌液を180μLずつ添加して、30℃で1日間静置培養を行った。各菌の増殖の程度(抗菌活性)は達観判定(90%抑制以上で効果有り)を行った。
試験に供試した菌として、グラム陰性菌の大腸菌Escherichia coli(IFO−3972)(8.7×105個/ml)を用いた。
試験供試溶液は、参考例4で得られたビピリジニル基を分子末端に有するハイパーブラ
ンチポリマー1mgを乳化剤2.5μL(ソルポール[東邦化学工業(株)製 3005XL]:アセトン:DMSO:キシレン=1:3:3:3)を含むアセトン100μLに
溶解させた。これを水900μLに混合希釈して供試溶液(1000ppm 1mL)とした。
参考例4で得られたビピリジニル基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(最終濃度100μg/mL)は、大腸菌に対して、抗菌作用を示した。
Claims (17)
- 4級ピリジニウム塩からなる部分を有するハイパーブランチポリマーからなる抗菌又は殺菌剤であって、
前記ハイパーブランチポリマーが、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする、抗菌又は殺菌剤。
R 2 は水素原子、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、4−ニトロスチリル基、又は式(2a)、式(2b)又は式(2c)
Y - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4−MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す。(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。))
で表される構造を表し、
R 3 乃至R 6 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表し、又は
R 3 又はR 5 は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造を表し、
X - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4−MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表し(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基を表す。)、
A 1 は式(3)
Z 1 乃至Z 4 は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。〕 - 前記X-及び前記Y-が、夫々独立して、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンである、請求項1又は請求項2記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記X-及び前記Y-の何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンであり、他方がPhSO3 -又は4−MePhSO3 -であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記R7がエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基である、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記R7が炭素原子数1乃至10のアルコキシ基で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状
の炭素原子数1乃至10のアルキル基である、請求項5に記載の抗菌又は殺菌剤。 - 前記R7が炭素原子数1乃至10の分枝鎖状アルコキシ基で置換された炭素原子数1乃至10のアルキル基であって、該分枝鎖状アルコキシ基が酸素原子に結合する炭素原子において分枝しているアルキル基である、請求項6記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記R7が2−メトキシエチル基又は2−イソプロポキシエチル基である、請求項6記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記R7が2−メトキシエチル基又は2−イソプロポキシエチル基であり、前記X-が臭素イオンであり、前記Y-が4−MePhSO3 -であることを特徴とする、請求項8記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記R2がメチル基であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500乃至5,000,000であることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤。
- 前記ハイパーブランチポリマーの平均粒径が、1nm乃至100nmであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌又は殺菌剤。
- 請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤がその表面に被覆されるか又はその内部に混練されてなる基材。
- 前記基材が、木、紙、金属、繊維材料、合成樹脂又はセラミックスであることを特徴とする請求項13に記載の基材。
- 請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤が、他の成分又は材料と組み合わせ又は併用されて、溶液、粘凋液、ゲル、スプレー又はカプセルの形態にあることを特徴とする抗菌又は殺菌剤製品。
- 請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の抗菌又は殺菌剤を含む薄膜。
- 請求項16に記載の薄膜を少なくとも1層有する基板又は支持体。
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