JP5525699B2 - 高分子イオン性化合物 - Google Patents

高分子イオン性化合物 Download PDF

Info

Publication number
JP5525699B2
JP5525699B2 JP2008137546A JP2008137546A JP5525699B2 JP 5525699 B2 JP5525699 B2 JP 5525699B2 JP 2008137546 A JP2008137546 A JP 2008137546A JP 2008137546 A JP2008137546 A JP 2008137546A JP 5525699 B2 JP5525699 B2 JP 5525699B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
organic
polymerizable functional
ionic liquid
ionic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008137546A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009286699A (ja
Inventor
文宏 花阪
徹也 佐村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai Research Institute KRI Inc
Original Assignee
Kansai Research Institute KRI Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai Research Institute KRI Inc filed Critical Kansai Research Institute KRI Inc
Priority to JP2008137546A priority Critical patent/JP5525699B2/ja
Publication of JP2009286699A publication Critical patent/JP2009286699A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5525699B2 publication Critical patent/JP5525699B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、重合性の有機の重合性官能基に加え、異なる重合性を有するアルコキシシリル基を有する新規なイオン液体およびその高分子イオン性化合物に関する。
従来、イオン液体は蒸気圧を持たないため揮発性がない、イオン伝導性がある、200から300℃の高温でも分解が少ない、難燃性であるなどの特徴を有しているため、化学反応の媒体や電解液、電解質膜、帯電防止剤、含窒素複素環式カルベン配位子などとして、様々な分野において使用されている。
これらのイオン液体の大半はイオン液体自身が重合性官能基を有しておらず、前記イオン液体の諸特性を発現させるために、高分子化合物中にイオン液体を配合しているものがほとんどである。
しかし、近年、1種類の重合性官能基を有するイオン液体として、例えば特開2005−255843号公報(特許文献1)には、(メタ)アクリル基を有するイオン液体が開示され、他の低分子化合物とともにもしくは単独で重合できることが記載されている。
一方、分子内に重合性を示す無機官能基を有するイオン液体としては、主に触媒とするために無機酸化物上に固定化することを目的とした化合物が特表2007−501815号公報(特許文献2)に開示されているが、無機官能基を縮合させて高分子のイオン性化合物を創生することは意図しておらず、有機及び無機の重合性官能基を合わせもつイオン液体については特許文献1及び特許文献2にはなんら開示されていない。
特開2005−255843号公報 特表2007−501815号公報
特許文献1には高分子イオン性化合物が開示されているが、この化合物は無機成分を含んでおらず有機化合物であるので、近年開発が進んでいる有機−無機ハイブリッド材料の特性である高透明性、高耐熱性、高摩耗性並びに撥液性などの特性は持ち合わせていないと推察される。
近年有機−無機ハイブリッド材料は、高透明性、高耐熱性、高摩耗性並びに撥液性などの特性を有することから工業上幅広く応用され、例えば電子材料、光学材料、塗料、接着剤、レジスト材料、医療材料などに使用されている。また、背景技術にも前記したようにイオン液体も有用な特性を種々備えており、イオン液体と有機−無機ハイブリッド材料の両方の性質を併せもつ新しい高分子材料の開発が期待されている。
さらに、前記のイオン液体と有機−無機ハイブリッド材料の両方の性質を併せもつ新しい高分子材料の原料となるイオン液体についてもこれまでに合成されていない。
したがって、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物の生産およびその原料となる新規なイオン液体の合成が課題であった。
有機−無機ハイブリッド高分子化イオン化合物の原料となる新規なイオン液体としては、窒素上に有機の重合性官能基を含む置換基を有するイミダゾール誘導体と重合性の無機構造としてアルコキシシリル基を有するハロゲン化アルキルとを反応させることおよび、得られたイオン液体の1価アニオンの置換反応により、前記記載の重合性官能基として有機の重合性官能基とアルコキシシリル基を同一分子内に有する新規なイオン液体が得られることを見出した。
さらに、重合性官能基として有機の重合性官能基とアルコキシシリル基を同一分子内に有する新規なイオン液体の有機の重合性官能基を重合させて有機の重合性官能基の重合が進行した高分子イオン性化合物の生成を確認した。また、アルコキシシリル基を酸もしくは塩基触媒で加水分解縮合させてシロキサン結合を有する高分子イオン性化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の高分子イオン性化合物は、(1)機の重合性官能基(RX)とアルコキシシリル基を同一分子内に有する下記一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物を単独若しくは2種以上を混合したもの又は下記一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物を単独若しくは2種以上と他の有機重合性化合物を混合したものを重合させて、有機の重合性官能基が重合した高分子イオン性化合物である。
Figure 0005525699
式中、RXは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基またはグリシジル基から選ばれるいずれかの有機の重合性官能基であり、
R1は、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基から選ばれるいずれかのアルキレン基であり、
R2は、メチル基又はエチル基であり、
また、R3、R4およびR5はお互いに独立して、水素、メチル基及びエチル基から選ばれるいずれかであり、
Xは、1価に帯電された塩素、臭素またはヨウ素のいずれかの塩形成アニオンであり、
Yは、Yは1価に帯電されたBF 、PF 、AsF 、SbF 、AlCl 、FeCl 、(CF SO 、(NC) 、CF SO 、CH SO 、HSO 、CF CO 、CH CO 、CF SO 及びCH SO 3− から選ばれるいずれかの有機または無機の塩形成アニオンである。
上記の構成によれば、イオン液体自身が有機の重合性官能基と無機の重合性アルコキシシリル基を同時に有することにより、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を提供することができる。
本発明の高分子イオン性化合物は、(2)前記一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物(以下「本発明のイオン液体」と称することがある。)を単独若しくは2種以上を混合して、加水分解縮合させてアルコキシシリル基を縮合した高分子イオン性化合物を単独若しくは2種以上を有機の重合性官能基を重合させて、又は前記高分子イオン性化合物を単独若しくは2種以上と他の有機重合性化合物を混合したものを有機の重合性官能基を重合させて、重合した高分子イオン性化合物である。
加水分解縮合させてアルコキシシリル基を縮合して高分子イオン性化合物を生成するには、本発明のイオン液体を酸性条件下で酸触媒を用いて加水分解縮合するか又は塩基性条件下で塩基触媒を用いて加水分解縮合することによってアルコキシシリル基が縮合し高分子イオン性化合物が生成する。
本発明でいう加水分解縮合とは、アルコキシシリル基上のアルコキシ基が酸もしくは塩基触媒と水により水酸基に変換され、生成したシラノールがアルコキシシリル基もしくは別のシラノールから脱アルコールもしくは脱水し、シロキサン結合に変換されることおよびこの反応の繰り返しによりアルコキシシリル基を有するイオン液体の高分子化が進行することである。また、加水分解縮合させてアルコキシシリル基を縮合した高分子イオン性化合物は、加水分解縮合にあたってアルコキシル基を完全に縮合させた高分子イオン性化合物であってもよいし、加水分解縮合を途中で止めて部分的に縮合させた高分子イオン性化合物であっても良い。
上記の構成によれば、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を提供することができる。
本発明により、イオン液体と有機−無機ハイブリッド材料の両方の性質を併せもつ新しい高分子材料の原料となる新規なイオン液体を提供することができるとともに、それを原料とする種々の新規な
有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を提供することができる。
そして、本発明のイオン液体のアルコキシシリル基を縮合させて高分子イオン性化合物を合成するに場合に加水分解縮合を一度途中で止めることもでき、中間体として単離し、再度可溶化して完全に縮合させて製膜することができる。本発明における前記中間体をいろいろな用途に対応した中間体として目的物に塗布することができ、塗布する際に、施工者は前記中間体を製造元から仕入れ、現場で溶かして塗るだけでいろいろな用途に対応した膜を製膜できるという簡便さを教授することができ、産業上においても大変利用価値の高いものである。
また、本発明の重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体はアルコキシシリル基のみを加水分解縮合することができるため、側鎖にさらに重合可能なビニル基を持つ高分子イオン性化合物を提供できるという効果を奏する。
さらに、アルコキシシリル基を加水分解縮合した後ビニル基を重合することができるため、より強度の高い有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を提供できるという効果を奏する。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るイオン液体は、少なくとも2種類の重合性官能基を有しておりその一方は有機の官能基であり、他方は無機の官能基であることを特徴とする。
有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を創出するために用いられる異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体としては、有機の重合性官能基と無機の重合性官能基が導入されたイオン液体であれば特に限定されるものではないが、前記一般式(1)から(4)で示される4級塩型イオン液体から選ばれる少なくとも1種類であることが望ましい。中でも、製造コストを考慮すると、原料が安価で入手しやすく、比較的合成が簡便な前記一般式(1)および(3)で示される異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体、特に電子材料等での利用においてはハロゲンアニオンが含有された化合物の使用を避けるため、1価のアニオンとしてハロゲンアニオンを含まない前記一般式(3)で示される異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体を用いることが好適である。
なお、有機の重合性官能基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、複数組み合わせて使用することができ、有機の重合性官能基もしくはアルコキシシリル基の一方を持つ公知のイオン液体も使用でき、重合度を調整できる。
前記各式において、有機の重合性官能基としては、重合に関与しえる基であれば特に制限されない。例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、アジリジン環、イソシアネート基、共役ジエン、酸無水物、酸塩化物、カルボニル基、水酸基、アミド基、アミノ基、クロロメチル基、エステル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等が挙げられるが、原料が入手し易いこと、イオン液体の製造が容易なことから、特に、ビニル基を使用することが好適である。
前記各式において、無機の重合性官能基としては、重合に関与しえる基であれば特に制限されない。例えば、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン化シラン、ポリシラン、金属アルコキシドとその誘導体等が挙げられるが、原料が入手し易いこと、イオン液体の製造が容易なことから、特に、アルコキシシリル基を使用することが好適である。
アルキレンオキサイド単位を含んでも良い炭素数1から10の直鎖状または分岐鎖状炭化水素基R1としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン等の炭化水素基およびエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加してなる基等が挙げられる。
また、アルコキシシリル基のアルコキサイドR2としては、加水分解性があれば特に制限されない。例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ等が挙げられる。
R3、R4およびR5は、お互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環等が上げられるがこれらに限定されるものではなく、例えば、アクリル基等の官能基を有していても良い。
ビニルイミダゾールとその誘導体と反応させる下記一般式(7)のハロゲン化アルキルトリアルコキシシランにおける置換基Xとしては、Cl、Br、Iである。
Figure 0005525699
一般式(1)および(2)の重合性官能基として有機の重合性官能基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は1価アニオンを他の1価のアニオンに置き換えるために使用する下記一般式(8)の金属塩MY(M=金属イオン、Y=好ましくは1価のアニオン、mはMの化学量論的価数であり、好ましくは1、2または3)における1価に帯電したカチオンMとしては、例えばLi、Na、K、Al、Cu、AgおよびAuが挙げられる。また、アニオンYとしては、異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体を形成し得る限りにおいて、とくに限定されず、例えば、BF 、PF 、AsF、SbF 、AlCl 、FeCl 、(CFSO、(NC)、CFSO 、CHSO 、HSO 、CFCO 、CHCO 、CFSO 、CHSO3−等が挙げられる。異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体の製造し易さ、粘度の低下、イオン伝導性、特に電子材料等での利用においてはハロゲンアニオンが含有された化合物の使用を避けるため、1価のアニオンとしてハロゲンアニオンではないアニオンを用いることが好適である。これらの観点から、BF 、PF 、(CFSO、CHSO3−とLi、Na、KおよびAlとの塩が好適である。
Figure 0005525699
下記一般式(5)のイミダゾール環窒素原子、または下記一般式(6)の4,5−ジヒドロイミダゾール環窒素原子上で起こる一般式(7)のハロゲン化アルキルトリアルコキシシランのハロゲン原子の置換反応は、反応物と接触する全ての器具等が使用する化学薬品に不活性であり、腐食または溶出を起こさない製造装置において簡便に実施できる。
製造装置において重要な因子は、反応装置が反応温度の制御をできること、反応物および反応生成物が安全に供給および排出できること、反応混合物を均一に混合できることであるが、ハロゲン化アルキルトリアルコキシシランの化学的性質上、反応装置は窒素等の不活性ガス雰囲気下で操作することができ、揮発性化合物の安全な排出が可能であることが望まれる。従って反応は撹拌装置、原料等の供給および排出を行える装置を備えたガラス機器内で、また反応溶媒を用いてその反応溶媒の沸点以上の温度で反応を行うときには還流コンデンサーを用いることもできる。しかし反応は適切に行われる場合においてはステンレス製および他の好適な不活性材料を用いて製造され、かつ、温度制御ならびに、反応物の供給および反応生成物の排出のための器具を有する工業的な製造装置においても行うことができる。
Figure 0005525699
一般式(1)および(2)で示される重合性官能基として有機の重合性官能基(RX)とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、一般式(5)および(6)で示される有機の重合性官能基(RX)を有するイミダゾール誘導体と一般式(7)で示される塩素、臭素、ヨウ素化アルキルトリアルコキシシランとを無溶媒条件下、反応させることにより得られる。
以下、一般式(5)、(6)の有機の重合性官能基(RX)がビニル基であるとして発明の内容を説明するが、ビニル基以外の有機の重合性官能基を有するイオン液体を合成する場合も同様の手法によって合成することができる。
Figure 0005525699
一般式(5)で示される1−ビニルイミダゾール誘導体は、特許明細書US−A−6,177,575に記載の方法と同様にして得ることができる。
一般式(6)で示される1−ビニル−4,5−ジヒドロイミダゾール誘導体の基本骨格は、化学学術雑誌(Tetrahedron Letter, 32, 5031-5034 (1991))に記載の方法と同様にして得ることができる。
一般式(5)および(6)で示される1−ビニルイミダゾール誘導体と一般式(7)で示されるハロゲン化アルキルトリアルコキシシランとの反応では、出発原料を任意の方式で、加える順序に関係なく混合でき、不活性ガス雰囲気下で所定の反応温度まで加熱することができる。出発原料は予め反応溶媒に溶解もしくは懸濁させておくことができる。反応溶媒を用いても良いが、使用するハロゲン化アルキルトリアルコキシシランを反応試剤および反応溶媒兼用として過剰に用いることができる。
上記反応は反応温度が20から200℃の範囲において行うことができる。一般にイオン液体から不純物を除くことは困難を伴うことから、副生成物を避けるためになるべく低い反応温度で反応を実施する方が良く、好適には20から90℃の範囲で行うことができる。
上記反応は1−ビニルイミダゾール誘導体の反応性に応じて、反応時間を延長することができる。反応時間は3時間から5日間とすることができ、好適には1日から3日間である。
上記反応を行うことのできる反応溶媒は導入する出発原料および生成するイオン液体と反応することのない液体ならば限定されないが、無溶媒条件でも反応を行うことができる。そのような溶媒としては不活性の非プロトン性溶媒が考えられる。例えば、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、酢酸エチル等が挙げられる。好適には、無溶媒、ジオキサン、トルエンである。
上記反応の出発原料の1−ビニルイミダゾール誘導体とハロゲン化アルキルトリアルコキシシランとの化学量論比は、1:1から1:10、好適には、1:1から1:3である。特に好ましくは1:1から1:2である。
上記反応で得られる異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体は、反応混合物を室温に戻した後、未反応のハロゲン化アルキルトリアルコキシシランを分離し、組成生物をジエチルエーテルで複数回洗浄した後、乾燥するだけの簡単な操作により単離することができる。
一般式(1)のイミダゾリウム塩または一般式(2)の4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩の1価アニオンを他の1価のアニオンに置き換えるための反応は反応物と接触する全ての器具等が使用する化学薬品に不活性であり、腐食または溶出を起こさない製造装置において簡便に実施できる。製造装置において重要な因子は、反応装置が反応温度の制御をできること、反応物および反応生成物が安全に供給および排出できること、反応混合物を均一に混合できることであるが、アルコキシシリル基を有するイオン液体の化学的性質上、反応装置は窒素等の不活性ガス雰囲気下で操作することができ、揮発性化合物の安全な排出が可能であることが望まれる。従って反応は撹拌装置、原料等の供給および排出を行える装置を備えたガラス機器内で、また反応溶媒を用いてその反応溶媒の沸点以上の温度で反応を行うときには還流コンデンサーを用いることもできる。しかし反応は適切に行われる場合においてはステンレス製および他の好適な不活性材料を用いて製造され、かつ、温度制御ならびに、反応物および反応生成物の供給、排出のための器具を有する工業的な製造装置においても行うことができる。
一般式(1)および(2)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体と一般式(8)で示される金属塩MY(M=金属イオン、Y=好ましくは1価のアニオン、mはMの化学量論的価数であり、好ましくは1、2または3)とによる1価のアニオンを置き換えるための反応では、出発原料および反応溶媒を任意の方式で、加える順序に関係なく混合でき、不活性ガス雰囲気下で所定の反応温度まで加熱することができる。出発原料は予め反応溶媒に溶解および懸濁させておくことができる。
上記反応は反応温度が20から80℃の範囲において行うことができる。一般にイオン液体から不純物を除くことは困難を伴うことから、副生成物を避けるためになるべく低い反応温度で反応を実施する方が良く、好適には20から40℃の範囲で行うことができる。
上記反応は一般式(1)および(2)で示される異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体の反応性に応じて、反応時間を延長することができる。反応時間は1日から7日間とすることができ、好適には4日から6日間である。
上記反応を行うことのできる反応溶媒は導入する出発原料および生成するイオン液体と反応することがなく、使用する金属塩を程よく溶解させる液体ならば限定されない。そのような溶媒としては極性の強い溶媒が考えられる。例えば、アセトニトリル、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。好適には、アセトニトリル、メタノールである。
上記反応の出発原料の一般式(1)および(2)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体と金属塩MYとの化学量論比は、1:1から1:2、好適には、1:1から1:1.1である。
上記反応で得られる一般式(3)および(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、反応時間経過後、セライトを用いて反応中に析出した塩をろ過し、脱溶媒を行い得られたイオン液体を塩化メチレンで抽出後、活性炭で処理する簡単な操作により単離できる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、酸触媒もしくは塩基触媒の存在下で加水分解縮合を行うことができる。
例えば、パラトルエンスルホン酸等のブレンステッド酸を酸触媒として使用し、アルコキシシリル基を加水分解縮合させることによりシロキサン結合を有する有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。また、水酸化ナトリウム等の塩基触媒でもアルコキシシリル基を加水分解縮合させることができ、シロキサン結合を有する有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。
上記のようにして得た有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物をジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に溶解し、塗布し乾燥させることにより有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物からなる膜を得ることができる。酸加水分解により得た有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物から作製した膜は表面に粘着性が残るため、粘着性を必要とする場合を除き好適にはアルカリ加水分解により得た高分子イオン性化合物から作製した膜を用いる方が良い。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、有機のビニル基と無機のアルコキシシリル基をそれぞれ別々に重合することができる。
アルコキシシリル基をパラトルエンスルホン酸等のブレンステッド酸触媒により加水分解縮合させて、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。加水分解縮合後、未反応のビニル基を重合させて、より強度が高い有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、有機のビニル基と無機のアルコキシシリル基をそれぞれ別々に重合することができる。
アルコキシシリル基を水酸化ナトリウム等の塩基触媒により加水分解縮合させて、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。加水分解縮合後、未反応のビニル基を重合させて、より強度が高い有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、有機のビニル基と無機のアルコキシシリル基を同時に重合することができる。
有機のビニル基とアルコキシシリル基を湿気中でラジカル重合または光重合と加水分解縮合させて強度が高い有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を得ることができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、他の重合性官能基を有する低分子および高分子化合物を用いることなく、重合および製膜することができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体に、2重量パーセントの2,2'−アゾビスイソブチロニトリルと反応溶媒としてジメチルホルムアミドを混合し80℃に加熱することにより、反応溶媒の揮発とともに重合が進行し、黄色透明の硬化膜を得ることができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は、電荷を有するカチオンとアニオンからなるため、表面電荷を有するナノ粒子との静電相互作用により、ナノ粒子の分散剤として使用することができる。ここで、ナノ粒子とはその組成を限定するものではなく、ナノサイズにある粒子とする。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は前記記載のように他の重合性の低分子および高分子を使用することなく重合・製膜できるため金属酸化物、色素、導電性化合物、イオン伝導性化合物を内包するポリマーコンポジットを作製できる。ここで、ポリマーコンポジットとは、高分子化合物とそれとはまったく異なる組成を有する化合物の複合化物の意味である。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体から得られる有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物は有機高分子の柔軟性、加工性形成の良さと無機高分子の高い剛性、耐熱性、耐候性を両立できるため、高輝度発光ダイオードなどの発光材料および蛍光を発するセンサーなどのマトリックス材料として使用することができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体から得られる有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物はポリカチオン型高分子イオン性化合物と呼ばれ、イミダゾリウムカチオン部分は高分子鎖中に固定化さている。このため、アニオン部分のシングルイオン伝導による導電性を示す。また、前記記載のように有機−無機ハイブリッドの利点を有するため、水や湿気に強い、安定性に優れた高イオン伝導電解質膜を作製することができる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体でも、特にアニオンが常磁性を示すFeCl イオンを含有するものは室温で磁石にくっつく性質を示す。このようなイオン液体は磁性流体として利用できる。また、その重合物は磁性体として利用できる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体およびその有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物は電荷を有するカチオンとアニオンからなるため、帯電防止の機能を有している。これらのイオン液体もしくは有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を混錬もしくは表面にコートすることにより、帯電防止の効果を得ることができる。
アクチュエーターとは電気エネルギーなどをもとにして機械的な仕事をする装置であるが、一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体およびその有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物は電荷を有するカチオンとアニオンを含有するため、交流電場で振動するアクチエーターを作製することができる。
バイオエタノールの原料として期待されている植物繊維のセルロースを代表とする生体由来材料を溶解する溶媒は限られており、環境的観点から揮発性がなく難燃性の溶媒の開発が注目されている。一般にアニオンがハロゲンイオンのイオン液体は生体高分子の溶解に優れているが、アニオンが塩素、臭素イオンのイオン液体は融点と粘度が高く、工業的使用において問題を有している。一般式(1)から(4)で示される異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体は常温で液体であるため、生体由来材料の溶媒として使用できる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は含窒素複素環式カルベン錯体の配位子である含窒素複素環式カルベンの合成原料でもある。また、固定化できるイミダゾリウム塩の含窒素複素環式カルベン錯体としての利用は特表2007−501815号公報に開示されているが、ビニル基に代表される有機重合性官能基を含んでいない。今回の異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体はアルコキシシリル基の他にビニル基においてもイミダゾリウム塩部分を固定化でき、含窒素複素環式カルベン錯体の原料として使用できる。
さらに、ビニル基のようなオレフィン部位は含窒素複素環カルベン錯体における中心金属の触媒活性を維持させるために効果的であることが知られており、今回の異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体はアルコキシシリル基で固定化を行い、ビニル基のオレフィン部位で触媒活性の維持を行うため、繰り返し利用可能な含窒素複素環式カルベン固体触媒を提供することができる。
イオン液体は電荷を有するカチオンとアニオンからなるため、極性の低い化合物とは混和しないと考えられるが、非極性の二酸化炭素ガス等を物理的吸着することが知られている。一方、イオン液体は窒素や水素のガスは吸着しないことから、イオン液体含有膜は二酸化炭素分離膜として地球温暖化の抑制に役立つ可能性がある。
このように、一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体も二酸化炭素の吸着に使用できる。さらに、有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物はイオン液体のみで構成されているため、膜としてのイオン液体含量が高くなっており、高効率な二酸化炭素分離膜を作製できる。
電気二重層キャパシタは分極性電極とイオン導電性電解液との界面に形成される蓄電デバイスであるが、イオン液体を電気二重層キャパシタの電解液として使用できることが知られている。また、電気二重層キャパシタにおけるイミダゾリウム系イオン液体を使用する上での問題点は電気化学的安定性にある。一般式(1)から(4)を原料とする有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を溶解させた電解液は有機−無機ハイブリッド高分子の特徴である高い安定性により、従来のイミダゾリウム系イオン液体にあった電気化学的な不安定性を解決できる。
一般式(1)から(4)で示される重合性官能基としてビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体は常温で液体であり、揮発性を持たないため、化学反応の反応溶媒として使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1] 1−ビニル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)イミダゾールクロライド(1)の合成
1−ビニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)4.98gと3−クロロプロピルトリメトキシシラン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)20mLを混合し、窒素雰囲気下90℃で60時間撹拌した。この反応溶液を室温に戻した後、ジエチルエーテル50mLを加えてエーテル層を分離した。この操作をあと2回繰り返した後、減圧ポンプで減圧乾燥させ、ビニル基とトリメトキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(1)12.74gを得た。
上記のようにして得たビニル基とアルコキシシリル基を有するイオン液体は下記のようなスペクトルを示した。
1H NMR (CDCl3):d 0.6-0.7(m,
2H, CH2Si), 2.08(qin, 2H, CH2CH2CH2),
3.57(s, 9H, Si(OCH3)3), 4.46(t, 2H, NCH2),
5.39(dd, 1H, CH2=CH-), 6.26(dd, 1H, CH2=CH-),
7.61(dd, 1H, CH2=CH-), 7.93(s, 1H, NCHCHNCH2),
8.49(s, 1H, VyNCHCHN), 10.92(s, 1H, NCHN). 13C NMR (CDCl3):d 4.6(CH2Si),
22.7(CH2CH2CH2), 49.3(OCH3),
50.5(NCH2), 107.9(CH2=CH-), 118.7(NCHCHN),
121.6(NCHCHN), 127.0(CH2=CH-), 134.2(NCHN).
FT-IR(neat): 1651(dvinyl), 1072(SiOCH3).
[合成例2] 1−ビニル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)イミダゾールテトラフルオロボレート(3)の合成
合成例1で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(1)10.06gとテトラフルオロホウ素ナトリウム(ナカライテスク(株)製)3.87gにアセトニトリル200mLを加えて、懸濁液を窒素雰囲気下室温で5日間撹拌した。白色析出物をセライトでろ過した後、アセトニトリルを減圧留去した。得られた油状生成物を塩化メチレン40mLで抽出し、活性炭処理を行った。塩化メチレンを減圧留去して、塩素アニオンがテトラフルオロホウ素アニオンに変換されたビニル基とトリメトキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)9.17gを得た。
上記のようにして得たテトラフルオロホウ素アニオンを有するイオン液体は下記のようなスペクトルを示した。
1H NMR (CDCl3):d 0.6-0.7(m, 2H, CH2Si), 2.01(qin, 2H, CH2CH2CH2),
3.56(s, 9H, Si(OCH3)3), 4.28(t, 2H, NCH2), 5.40(dd,
1H, CH2=CH-), 5.88(dd, 1H, CH2=CH-), 7.16(dd,
1H, CH2=CH-), 7.57(s, 1H, NCHCHNCH2),
7.81(s, 1H, VyNCHCHN), 9.03(s, 1H, NCHN). 13C NMR (CDCl3):d 5.4(CH2Si),
23.4(CH2CH2CH2), 50.2(OCH3),
53.4(NCH2), 109.2(CH2=CH-), 119.2(NCHCHN),
122.7(NCHCHN), 127.7(CH2=CH-), 133.7(NCHN).
FT-IR(neat): 1656(dvinyl), 1030(SiOCH3).
[1] 有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物
[実施例1]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.20gにジメチルホルムアミド(ナカライテスク(株)製)1.95gを加えた後、1重量パーセントに調製した2,2'−アゾビスイソブチロニトリルのジメチルホルムアミド溶液2.42gを加えた。反応溶液をポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、高分子イオン性化合物の硬いフィルムが得られた。
[実施例2]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.17gにアセトニトリル3.07gを加えた後、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液1.24gを加えて、室温で3時間撹拌した。その後70℃でさらに3時間撹拌した後、室温に戻した。溶媒を減圧留去し、高分子イオン性化合物を得た。得られた高分子イオン性化合物をジメチルホルムアミド4mLに溶解させた後、ポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、高分子イオン性化合物の柔軟なフィルムが得られた。
上記のようにして得た高分子イオン性化合物は下記のようなスペクトルを示した。
1H NMR (DMSO-d6):d 0.3-0.8(bs, 2H, CH2Si), 1.5-1.9(bs, 2H, CH2CH2CH2),
3.9-4.3(bs, 2H, NCH2), 5.46(d, 1H, CH2=CH-), 5.94(d,
1H, CH2=CH-), 7.25(dd, 1H, CH2=CH-), 7.77(m,
1H, NCHCHNCH2), 8.17(s, 1H, VyNCHCHN), 9.27(m, 1H,
NCHN). FT-IR(neat): 1654(dvinyl), 1018(Si-O-Si).
[実施例3]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.04gにアセトニトリル3.06gを加えた後、パラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)30.7mgを水1.08gに溶解させた水溶液を加えて、室温で3時間撹拌した。その後70℃でさらに3時間撹拌した後、室温に戻した。溶媒を減圧留去し、高分子イオン性化合物を得た。得られた高分子イオン性化合物をジメチルホルムアミド4mLに溶解させた後、ポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、高分子イオン性化合物の柔軟なフィルムが得られた。このようにして酸加水分解して得た高分子イオン性化合物の膜は粘着性を有するため、粘着性および接着性を必要とする帯電防止剤に利用できる。
上記のようにして得た高分子イオン性化合物は下記のようなスペクトルを示した。
1H NMR (DMSO-d6):d 0.2-1.1(bs, 2H, CH2Si), 1.5-2.2(bs, 2H, CH2CH2CH2),
3.1-3.9(bs, 0.7H, Si(OCH3)3), 3.9-4.5(bs, 2H, NCH2),
5.45(d, 1H, CH2=CH-), 5.93(d, 1H, CH2=CH-),
7.25(m, 1H, CH2=CH-), 7.78(s, 1H, NCHCHNCH2),
8.16(s, 1H, VyNCHCHN), 9.32(m, 1H, NCHN). FT-IR(neat): 1656(dvinyl), 1028(Si-O-Si).
[実施例4]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.04gにアセトニトリル3.01gを加えた後、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液1.00gを加えて、70℃で3時間撹拌した後、室温に戻した。溶媒を減圧留去し、アルコキシシリル基が加水分解縮合した高分子イオン性化合物を得た。得られた高分子イオン性化合物をジメチルホルムアミド2gに溶解させた後、1重量パーセントに調製した2,2'−アゾビスイソブチロニトリルのジメチルホルムアミド溶液2.01gを加えた。この溶液をポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、ビニル基がラジカル重合した高分子イオン性化合物の硬いフィルムが得られた。
[2] 有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物とその他の化合物との複合化
[実施例5]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.13gとカーボンナノチューブ0.04gを乳鉢で捏ねてペースト状にした後、水酸化ナトリウム(ナカライテスク(株)製)6.3mgを水0.20gに溶解させた水溶液を加えた。さらにペーストを捏ね、シリコンシートの上に塗布し80℃で乾燥させた。得られたカーボンナノチューブ高分子イオン性化合物複合体の面積抵抗は1.76×10Ω/cmであり、導電性が付与された複合材料として利用可能である。
[実施例6]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.19gとカーボンナノチューブ0.04gを乳鉢で捏ねてペースト状にした後、10重量パーセントに調製した2,2'−アゾビスイソブチロニトリルのジメチルホルムアミド溶液0.25gを加えた。さらにペーストを捏ね、不織布の上に塗布し80℃で乾燥させた。得られたカーボンナノチューブ高分子イオン性化合物複合体の面積抵抗は1.23×10Ω/cmであり、導電性が付与された複合材料として利用可能である。
[実施例7]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.12gと酸化亜鉛(住友大阪セメント(株))0.07gを乳鉢で捏ねてペースト状にした後、水酸化ナトリウム(ナカライテスク(株)製)6.0mgを水0.32gに溶解させた水溶液を加えた。さらにペーストを捏ね、ジメチルホルムアミド4.01gを加えた。この懸濁液をナスフラスコに入れ、70℃に加熱した後ポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、酸化亜鉛高分子イオン性化合物複合体の膜が得られた。酸化亜鉛は紫外線反射機能を有するため、酸化亜鉛を含む高分子イオン性化合物複合体の膜は紫外線反射用の材料として用いることができる。
[実施例8]
合成例2で合成したビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体(3)1.19gにジメチルホルムアミド2.00gを加えた。この溶液に70%チタニウムイソプロポキシド含有2−プロパノール溶液(シグマアルドリッチジャパン(株)製)0.10gを加えて撹拌した後、ポリエチレン容器に流し込み80℃で乾燥させると、ジルコニウム2w%含有高分子イオン性化合物複合体のより強い膜が得られた。ジルコニウムは屈折率が高い化合物であるため、ジルコニウム2w%含有高分子イオン性化合物複合体の膜は高屈折率材料として用いることができる。
合成例に示されるように、重合性官能基としてビニル基と、アルコキシシリル基を同一分子内に有する本発明のイオン液体は、これまでに知られていないイオン性化合物である。また、実施例に示されるようにアルコキシシリル基を加水分解縮合することができ、有機―無機ハイブリッド高分子にイオン液体の高イオン伝導性、耐熱安定性並びに難燃性が付与できる。ビニル基とアルコキシシリル基を同一分子内に有するイオン液体のアルコキシシリル基を加水分解縮合した後、ビニル基をラジカル重合できるため、本発明の有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物はグラフト化のモノマーやマクロモノマーとして利用できる。
実施例およびそのNMRデータに示されるようにアルコキシル基の加水分解縮合において、アルカリ加水分解縮合して得た高分子イオン性化合物は完全に加水分解されており、酸加水分解して得た高分子イオン性化合物は92%のメトキシ基が加水分解されている。また、加水分解縮合した後の高分子イオン性化合物がジメチルホルムアミドに可溶であることから、生成したシラノールの縮合は完全に進んでいない。
従って、本発明のイオン液体のアルコキシシリル基を縮合させて高分子イオン性化合物を合成するに際に加水分解縮合を一度途中で止め、中間体として単離し、再度可溶化して完全に縮合させて製膜することができる。本発明における前記中間体をいろいろな用途に対応した中間体として目的物に塗布することもでき、塗布する際に、施工者は前記中間体を製造元から仕入れ、現場で溶かして塗るだけでいろいろな用途に対応した膜を製膜できるという簡便さを教授することができ、産業上においても大変利用価値の高いものである。
本発明の異なる2種類の重合性官能基を有するイオン液体は有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物を提供することができ、それらの用途としては、例えば、ナノ粒子の分散剤、ポリマーコンポジット、発光材料および発光式センサーのマトリックス、イオン伝導電解質膜、磁性流体および磁性体、帯電防止膜、アクチュエーター、難溶性生体由来材料の可溶化媒体、含窒素複素環式カルベン錯体の配位子、二酸化炭素選択的吸着膜、電気二重層キャパシタ、並びに化学反応溶媒としての用途が挙げられる。また、アルコキシシリル基のみを加水分解縮合させ、ビニル基を未反応のまま残した高分子イオン性化合物はグラフト化反応のモノマーやマクロモノマーとして利用できる。

Claims (2)

  1. 機の重合性官能基(RX)とアルコキシシリル基を同一分子内に有する下記一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物を単独若しくは2種以上を混合したもの又は下記一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物を単独若しくは2種以上と他の有機重合性化合物を混合したものを重合させて、有機の重合性官能基が重合した高分子イオン性化合物。
    Figure 0005525699
    式中、RXは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基及びグリシジル基から選ばれるいずれかの有機の重合性官能基であり、
    R1は、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基から選ばれるいずれかのアルキレン基であり、
    R2は、メチル基又はエチル基であり、
    また、R3、R4およびR5はお互いに独立して、水素、メチル基及びエチル基から選ばれるいずれかであり、
    Xは、1価に帯電された塩素、臭素またはヨウ素のいずれかの塩形成アニオンであり、
    Yは、Yは1価に帯電されたBF 、PF 、AsF 、SbF 、AlCl 、FeCl 、(CF SO 、(NC) 、CF SO 、CH SO 、HSO 、CF CO 、CH CO 、CF SO 及びCH SO 3− から選ばれるいずれかの有機または無機の塩形成アニオンである。
  2. 請求項1に記載の一般式(1)から(4)で示される化合物の内いずれかの化合物を単独若しくは2種以上を混合して、加水分解縮合させてアルコキシシリル基を縮合した高分子イオン性化合物を単独若しくは2種以上を有機の重合性官能基を重合させて、又は前記高分子イオン性化合物を単独若しくは2種以上と他の有機重合性化合物を混合したものを有機の重合性官能基を重合させて、重合した高分子イオン性化合物。
JP2008137546A 2008-05-27 2008-05-27 高分子イオン性化合物 Expired - Fee Related JP5525699B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008137546A JP5525699B2 (ja) 2008-05-27 2008-05-27 高分子イオン性化合物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008137546A JP5525699B2 (ja) 2008-05-27 2008-05-27 高分子イオン性化合物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009286699A JP2009286699A (ja) 2009-12-10
JP5525699B2 true JP5525699B2 (ja) 2014-06-18

Family

ID=41456274

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008137546A Expired - Fee Related JP5525699B2 (ja) 2008-05-27 2008-05-27 高分子イオン性化合物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5525699B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011158321A1 (ja) * 2010-06-14 2011-12-22 株式会社メニコン イオン性化合物、組成物、硬化物、ハイドロゲル及び眼用レンズ
CN108701866B (zh) 2015-12-14 2022-05-31 诺姆斯科技有限公司 硅烷官能化离子液体
WO2018211945A1 (ja) * 2017-05-18 2018-11-22 株式会社ダイセル 二酸化炭素分離膜及びその製造方法
CN107964246B (zh) * 2017-11-20 2019-10-18 华南理工大学 长效抗静电的硅橡胶/离子液体复合材料及其制备方法
CN109608642A (zh) * 2018-12-11 2019-04-12 怀化学院 聚硅氧烷离子液体及其制备方法
CN113651913B (zh) * 2021-09-10 2022-10-28 浙江巨化股份有限公司氟聚厂 一种高强度聚四氟乙烯树脂的制备方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08134083A (ja) * 1994-11-10 1996-05-28 Shin Etsu Chem Co Ltd 有機ケイ素化合物及びその製造方法
DE19714320A1 (de) * 1997-03-25 1998-10-01 Ivoclar Ag Hydrolysierbare und polymerisierbare Vinylcyclopropansilane
JP3536014B2 (ja) * 2000-04-07 2004-06-07 株式会社日鉱マテリアルズ イミダゾール有機モノカルボン酸塩誘導体反応生成物及びその製造方法、並びにそれを用いる表面処理剤、樹脂添加剤および樹脂組成物
JP2004124000A (ja) * 2002-10-07 2004-04-22 Sumitomo Bakelite Co Ltd シランカップリング剤及び被覆処理無機充填剤並びに樹脂組成物
JP2007501815A (ja) * 2003-08-11 2007-02-01 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング 固定化することができるイミダゾリウム塩
JP4780269B2 (ja) * 2004-03-11 2011-09-28 日清紡ホールディングス株式会社 無溶剤型液状組成物
CN1990106A (zh) * 2005-12-28 2007-07-04 中国科学院兰州化学物理研究所 硅胶担载含硒阴离子的离子液体催化剂及其制备方法和应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009286699A (ja) 2009-12-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5525699B2 (ja) 高分子イオン性化合物
Genest et al. The aza-Michael reaction as an alternative strategy to generate advanced silicon-based (macro) molecules and materials
Djouani et al. Synthesis, characterization and reinforcing properties of novel, reactive clay/poly (glycidyl methacrylate) nanocomposites
JP4751570B2 (ja) オルガノポリシロキサン変性多糖類およびその製造方法
JP6253882B2 (ja) 四級塩構造を有するポリシロキサン共重合体およびそれを含有する帯電防止剤
Raghuraman et al. Attachment of polymer films to solid surfaces via thermal activation of self-assembled monolayers containing sulphonyl azide group
JP2010090008A (ja) 表面改質された無機化合物微粒子及びその製法並びに該微粒子を含む分散体
US20030158351A1 (en) Phenylethynyl-containing imide silanes
JPH06511463A (ja) 改質表面を有する珪素またはシリカの基質、これの製造方法、新規なオルトエステル類およびこれの製造方法
CN104854115A (zh) 反应性离子液体和使用其的离子固定化金属氧化物颗粒、离子固定化弹性体以及转换器
JP2009286815A (ja) 有機−無機ハイブリッド高分子イオン性化合物と有機−無機ハイブリッドの特性を付与した帯電防止剤
Zhan et al. Design, synthesis, and adhesion of fluorescent conjugated polymers with pendant catechol groups
JP5350741B2 (ja) 表面改質された酸化チタン微粒子及びその分散体
Chang et al. Extraordinary aspects of bromo-functionalized multi-walled carbon nanotubes as initiator for polymerization of ionic liquid monomers
JP6333132B2 (ja) ポリアルキレンオキサイド
US5626968A (en) Polymeric organometallic photoinitiators and the cationically crosslinkable polyorganosiloxane compostions which comprise them
JP6214625B2 (ja) 新規の、簡単に製造可能な、voc還元された、環境保護性の(メタ)アクリルアミド官能性シロキサン系、その製造法ならびに前記シロキサン系の使用
KR101828825B1 (ko) 세포막-모방 브러쉬 고분자 및 그 제조방법
CN1281611C (zh) 单甲氧基聚乙二醇硅烷衍生物及其制备方法和用途
CN108239424A (zh) 一种透明的硅烷改性的纳米蒙脱土分散液及其制备方法和应用
CN115974911B (zh) SuFEx点击化学氨基硅烷偶联剂及其制备方法和应用
KR20130098218A (ko) 불소 함유 말레이미드 화합물 및 그의 제조 방법
Wang et al. Electrosynthesis of linear and branched methylene-bridged oligo-and polycarbosilanes
JP5558756B2 (ja) 抗菌性ハイパーブランチポリマー
JPH04252228A (ja) シリコーン含有エポキシ化合物及びその製法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110523

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130716

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130911

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140401

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140414

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5525699

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees