JP5492871B2 - ペクチン含有ゼリー製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲル化剤としてペクチンを含むゼリー製剤に関する。
近年、不快な味を有する薬物の味をマスクし、或いは薬物を嚥下しやすくすることを目的として、ゼリー状に製剤化された経口医薬製剤、すなわちゼリー製剤が注目されている。ゼリー製剤の製造に用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、ペクチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キサンタンガムなどが知られている(特許文献1、2、3)。このうち、ペクチンは、カルシウムイオンなど2価の金属イオンの存在により、酸性条件で安定なゼリーを形成することから、酸性条件下で安定な薬物を含むゼリー製剤に有用である(特許文献4、5、6)。
ゼリー製剤は、嚥下のしやすさの観点からは、一定の柔らかさ(例えば、破断強度約120g以下(本明細書の実施例に記載の測定方法によった場合の値、以下同じ。))を有している必要がある一方で、取扱いやすさ、保存性等の観点からは、一定の硬さ(例えば、破断強度約40g以上)を有している必要がある。
従来、ペクチン及び2価の金属イオンを用いて、嚥下のしやすい柔らかいゼリー製剤を調製しようとする際には、ペクチン及び2価の金属イオンの含有量を小さくしたり、両者の配合比を調節する方法が主に用いられてきた。しかしながら、このような方法でペクチンを含むゼリー製剤を柔らかくしようとすると、該ゼリー製剤は、ゾルの性質(ジャム状)を発現し、所定の形状を維持することが困難となる。
また、ゼリー製剤は、通常、プラスチック製の容器に封入されて患者に提供されるが、このようなゾルの性質を有するゼリー製剤は、容器から取り出す際に崩れたり、容器内に付着したりし、取り出しにくいという問題をも有していた。そして、この取り出しにくさ故に、製剤の一部が容器に残りやすく、規定量の薬物の投与が満足に行われないという問題があった。
一方、従来のペクチンを含むゼリー製剤は、薬物の放出に時間を要するため、徐放性のゼリー製剤としては好適である。
しかしながら、従来のペクチンを含むゼリー製剤は、短時間での薬物の放出が求められる薬物には、適さないという問題を有していた。
特開2008−195714号公報 特開2008−260708号公報 特開2006−28028号公報 特開2008−184400号公報 特開2007−238561号公報 特開2005−325081号公報
本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、取扱いやすさ又は保存性等の観点、及び嚥下のしやすさの観点の両方からみて適度な破断強度を与える技術を提供することを課題とする。また、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、高い薬物の溶出性を与える技術を提供することを課題とする。
更に、本発明は、ペクチンを含むゼリー製剤に、適度な破断強度及び高い薬物の溶出性の両者を与える技術を提供することを課題とする。
そして、本発明は、適度な破断強度を有し、かつ高い薬物の溶出性を有する、ペクチンを含むゼリー製剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、ペクチンを含むゼリー製剤に、スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて配合することにより、ゼリー製剤に適度な破断強度を与えることができることを見出した。
また、ペクチンを含むゼリー製剤に、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分を配合することにより、ゼリー製剤に高い薬物の放出性を与えることができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含むゼリー製剤であって、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む、ゼリー製剤(以下、「本発明のゼリー製剤」という。)。
(2)スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の総含有量が5〜50質量%であり、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分の総含有量が5〜30質量%である、(1)に記載のゼリー製剤。
(3)炭素数5〜6のアルジトールが、キシリトール及びD−ソルビトールから選ばれる、(1)又は(2)に記載のゼリー製剤。
(4)炭素数3〜4のアルジトールがグリセリン及びエリスリトールから選ばれる、(1)〜(3)の何れかに記載のゼリー製剤。
(5)薬物が、ドネペジル塩酸塩である、(1)〜(4)の何れかに記載のゼリー製剤。
(6)プラスチック製の容器、及びこれに封入された(1)〜(5)の何れかに記載のゼリー製剤を含む、容器入りゼリー製剤(以下、「本発明の容器入りゼリー製剤」という。)。
本発明の容器入りゼリー製剤1の正面図。 本発明の容器入りゼリー製剤1の開封時の斜視図。 キシリトールの添加量とゼリー製剤の破断強度の関係を示す図。 ゼリー製剤の放置時間とゼリー製剤からの薬物の溶出率の関係を示す図。
本発明のゼリー製剤は、薬物、ペクチン及び2価の金属イオンを含み、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分と、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分とを組み合わせて含む。
薬物は、特に制限されないが、好ましくは、酸性で安定な薬物である。酸性で安定な薬物としては、pH2〜5程度で安定な塩酸塩などが挙げられる。例えば、ドネペジル塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ペオニフロリン塩酸塩、アンブルキソール塩酸塩などが挙げられる。本発明のゼリー製剤における薬物の含有量は、薬物の種類、適用疾病などに応じて決定される。例えば、本発明のゼリー製剤がドネペジル塩酸塩を含む場合、その含有量は、通常は0.02〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
ペクチンとしては、通常ゼリー製剤に用いられるものを、特に制限なく用いることができる。本発明のゼリー製剤においては、任意のエステル化度のペクチンを、単独で又は組み合わせて用いることができる。本発明のゼリー製剤に用いられるペクチンとしては、好ましくは、エステル化度が約40%以下(メトキシル基含有率で言えば、約7%以下)の低メトキシルペクチン(L.M.ペクチン)を、単独で又は高メトキシルペクチンと組み合わせて用いる。本発明のゼリー製剤に用いられるペクチンとしては、さらに好ましくは、20〜35%のエステル化度(メトキシル基含有率で言えば、3〜5%)を有するペクチンを、単独で又はこの範囲外のエステル化度を有するペクチンと組み合わせて用いる。この場合において、前記範囲外のエステル化度を有するペクチンの含有量は、全ペクチンの含有量に対し、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。本発明のゼリー製剤に用いられるペクチンとしては、特に好ましくは、20〜35%のエステル化度を有するペクチンを単独で用いる。
本発明のゼリー製剤におけるペクチンの含有量は、嚥下しやすい(口腔内で容易に咀嚼できる)硬さのゼリーを形成できる範囲であればよい。ペクチンの含有量は、通常は0.5〜10質量%、好ましくは1〜3質量%である。
2価の金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。2価の金属イオンは、経口可能な金属塩の形態で製剤に添加することができる。このようなカルシウム塩としては特に限定するものではないが、エデト酸カルシウム二ナトリウム、塩化カルシウム水和物、繊維素グリコール酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム水和物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム水和物、リン酸三カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。また、このようなマグネシウム塩として特に限定するものではないが、L-アスパラギン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム水和物が挙げられる。中でも、好ましくはカルシウム塩、中でも乳酸カルシウムである。2価の金属イオンの含有量は、嚥下しやすい硬さのゼリーを形成できる範囲であればよい。本発明のゼリー製剤における2価の金属イオンの含有量は、金属換算量で、通常は0.0005〜0.1質量%、好ましくは0.002〜0.05質量%である。また、2価の金属イオンの含有量は、ペクチン1質量部に対し、金属換算量で、通常は0.0003〜0.1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部である。カルシウムイオンを用いる場合は、カルシウムイオンの含有量は、カルシウム換算量で、通常は0.001〜0.1質量%、好ましくは0.005〜0.05質量%である。また、カルシウムイオンの含有量は、ペクチン1質量部に対し、カルシウム換算量で、通常は0.0007〜0.07質量部、好ましくは0.0035〜0.035質量部である。
本発明のゼリー製剤においては、スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分を単独で、又は組み合わせて用いることができる。本発明のゼリー製剤における該成分の総含有量は、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは25〜45質量%である。
炭素数3〜4のアルジトールとしては、好ましくは、グリセリン及びエリスリトールが挙げられる。これらの成分は、市販されているものを用いればよい。スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分は、ゼリー製剤の破断強度を適度に大きくする作用を有する。
本発明のゼリー製剤においては、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分を単独で、又は組み合わせて用いることができる。
本発明のゼリー製剤における該成分の総含有量は、好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜25質量%である。炭素数5〜6のアルジトールとしては、好ましくはキシリトール及びD−ソルビトールが挙げられる。これらの成分は、市販されているものを用いればよい。炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分は、前記スクロース、マルチトール及び及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の作用を補助してゼリー製剤の破断強度を適度に大きくする作用、及び、薬物の溶出性を高める作用を有する。
スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の総含有量と、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分の総含有量の質量比は、好ましくは1:0.1〜1:3、更に好ましくは1:0.25〜1:1である。
本発明のゼリー製剤は、好ましくは、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含む。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、ゼリー製剤の表面のべたべたした性質を小さくし、ゼリー製剤を容器から取り出す際に、容器から滑り出しやすくする(ゼリー製剤の滑り性を向上させる)。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、好ましくは、ポリオキシエチレン部分の平均重合度(ポリオキシエチレン単位の繰返し数)が3〜200、ポリオキシプロピレン部分の平均重合度が17〜70のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが、更に好ましくは、ポリオキシエチレン部分の平均重合度が120〜200、ポリオキシプロピレン部分の平均重合度が20〜67のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが、特に好ましくは、ポリオキシエチレン部分の平均重合度が120〜160、ポリオキシプロピレン部分の平均重合度が20〜67のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが用いられる。
具体的には、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール(かっこ内の数値は、それぞれ平均重合度を示す。)、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(プルロニックF87)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックP123)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(プルロニックP85)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックF127)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(プルロニックL44)、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(3)、ポリオキシプロピレン(17)グリコールなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールが最も好ましい。ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールは、プルロニックF68又はポロクサマー188などの商品名で販売されている。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量は、生体への投与に許容される量であり、かつ、ゼリーの形成を妨げない範囲であればよい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量は、好ましくは、0.001〜0.5質量%、更に好ましくは0.005〜0.1質量%である。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量を0.001質量%以上とすることにより、ゼリー製剤のべたべたした性質が小さくなり、ゼリー製剤の滑り性が向上する(容器に封入されたゼリー製剤を容器から取り出す際に、容器から滑り出しやすくなる。)。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量を0.005質量%以上とすることにより、ゼリー製剤のべたべたとした性質がほとんどなくなり、ゼリー製剤の滑り性が極めて良好になる。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量を0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%とすることにより、製剤の製造過程で、製剤の泡立ちを抑制しやすくなり、外観、薬物の安定性、製剤の均一性の点からも優れたゼリー製剤を得ることができる。
本発明のゼリー製剤のpHは、ゼリーの形成を妨げない範囲であればよい。本発明のゼリー製剤のpHは、好ましくは2〜5、更に好ましくは2.5〜4.5である。この範囲で、特にゼリーの安定性が良好である。
pHの調整に用いるpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、フタル酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコン酸、グリセロリン酸等の有機酸およびその塩、ならびに塩酸、リン酸などの無機酸およびその塩、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などのアミノ酸及びその塩、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤およびその塩が挙げられる。
本発明のゼリー製剤は、前記スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の作用、及び炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分の作用を損なわない範囲で、更に通常医薬に用いられる添加剤を含有していてもよい。このような任意成分として、防腐剤、甘味剤、香料などが挙げられる。
本発明のゼリー製剤は、薬物としてドネペジル塩酸塩を含む場合には、好ましくは更に塩化ナトリウムを含む。塩化ナトリウムは、ドネペジル塩酸塩の苦みを低減する作用を有する。塩化ナトリウムの含有量は、好ましくは0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。また、塩化ナトリウムの含有量は、ドネペジル塩酸塩1質量部に対して、好ましくは0.04〜4質量部、更に好ましくは0.2〜2質量部である。
このように、本発明者らは塩化ナトリウムがドネペジル塩酸塩の苦みを低減することを見い出した。従って、本発明は、ドネペジル塩酸塩及び塩化ナトリウムを含む医薬をも提供する。また、本発明は、ドネペジル塩酸塩を含む医薬に、塩化ナトリウムを添加することを含む、ドネペジル塩酸塩の苦みを低減する方法をも提供する。この場合の塩化ナトリウムの好ましい含有量又は添加量の範囲も、上記のとおりである。これらの発明は、本発明のゼリー製剤のみならず、他のゼリー製剤、又は液剤、錠剤若しくは顆粒剤などの剤形を有する医薬に応用できる。
本発明のゼリー製剤は、ペクチン以外のゲル化剤を含んでいてもよいが、その含有量は、好ましくは、ペクチンの含有量の1質量倍未満、更に好ましくは0.5質量倍未満、特に好ましくは0.1質量倍未満である。本発明のゼリー製剤は、更に好ましくはペクチン以外のゲル化剤を含有しない。ペクチン以外のゲル化剤をペクチンの含有質量と同質量以上配合すると、前記スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の作用、及び炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分の作用が十分に発揮されない場合がある。
本発明のゼリー製剤は、例えば、以下のようにして製造することができる。
スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分、炭素数5〜6のアルジトールから選ばれる成分、ペクチン、必要に応じてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを、精製水に加え、攪拌しながら約80℃〜90℃で加熱溶解する。これに薬物を添加し、撹拌しながら、溶解(又は混和)する。2価金属塩の水溶液を、前記薬物を添加した溶解(又は混和)液に添加し、撹拌する。その後、必要に応じて、pH調整剤を添加し、pHを2〜5程度に調整する。得られた溶解(又は混和)液を冷却して、本発明のゼリー製剤を得る。
本発明のゼリー製剤は、通常、プラスチック製の容器に封入され、容器入りゼリー製剤として、保存され、流通する。容器は、好ましくは多層ラミネートフィルムで構成される。容器の形状は、好ましくは、棒状の袋である。容器は、好ましくは、内部に本発明のゼリー製剤を収納するための押圧変形可能な胴部と、該胴部の押圧によりゼリー製剤を容器外に排出するための開口部を形成する開口手段とを備える。
本発明の容器入りゼリー製剤は、例えば、特許3665498号公報、特開2000−256181号公報、特開平11−123231号公報、特開平09−194346号公報などに記載されるような封入形態を有する。
本発明の容器入りゼリー製剤は、好ましくは、以下の形態を有する(符号は、図1及び図2を参照)。
ヒートシール可能なフィルムで形成される棒状の袋状容器(2)、及びこれに封入された本発明のゼリー製剤(3)とを含む容器入りゼリー製剤であって、前記容器は、前記ゼリー製剤を封入するための胴部(5)と、該胴部の長手方向の少なくとも一端と側部のそれぞれに設けられたヒートシール部(6a、6b、6c)とを備え、前記ヒートシール部(6c)上の前記胴部の長手方向の何れか一端の近傍には、前記ゼリー製剤を容器外に排出するための開口部(8)を形成するためのノッチ(7)または破断線が設けられている、ゼリー製剤。
本発明の容器入りゼリー製剤の形態として、図1に記載される容器入りゼリー製剤1が挙げられる(エアプッシュ型)。図1は、本発明の容器入りゼリー製剤1を示す正面図、図2は、同製剤の開封時の斜視図である。この形態では、本発明のゼリー製剤(3)は、前記胴部に、気体(4)と共に封入されている。ゼリー製剤と気体とは、前記胴部の長手方向で2分割された状態で封入され、胴部内の内気圧が外気圧と等しいかまたは外気圧より高く胴部が膨満した状態にある。また、前記ノッチまたは破断線は、前記ヒートシール部(6c)上の前記胴部の長手方向のゼリー製剤が封入された部分側の一端の近傍に設けられている。
本発明の容器入りゼリー製剤1は、上記で得られた冷却前の溶解(混和)液を、公知の方法により気体とともに前記容器に封入することで、製造することができる。封入方法は、特開2000−256181号公報を参照することができる。
他の形態として、本発明のゼリー製剤は、前記胴部に充填されて(気体なしで封入されて)いてもよい。
(1)容器入りゼリー製剤の製造
表1に示す処方に従い、容器入りゼリー製剤を製造した。実施例Aの容器入りゼリー製剤は、以下のようにして製造した。ペクチン、粉末還元麦芽糖水アメ(主成分:マルチトール)、キシリトール、濃グリセリン、プルロニックF68(ポリエチレン(160)ポリプロピレン(30)グリコール)を秤取り、精製水30mLに添加し、80〜90℃で加熱しながら撹拌し溶解した。これにドネペジル塩酸塩を加えて攪拌し溶解し、さらに乳酸カルシウム水溶液(乳酸カルシウム0.07gを精製水5mLに溶解した)を添加し、加温しながら撹拌し混和した。これにリン酸水溶液(リン酸0.12gを精製水5mLに溶解した)を加えてpH3.5付近に調整し、残りの精製水を加えて100gとした。得られた溶解液を1回服用量(2g)ずつ、棒状の袋状容器に入れ、空気とともに封入し、冷却して、容器入りゼリー製剤を得た(エアプッシュ型、図1)。実施例B、比較例の容器入りゼリー製剤も実施例Aと同様の方法で製造した。
Figure 0005492871
(2)破断強度の測定
前記実施例及び比較例の容器入りゼリー製剤を室温(25℃)で24時間放置した後、容器からゼリー製剤を取り出し、ゼリー製剤の破断強度を測定した。
破断強度(g)の測定は、レオメータ(サン科学社製CR500DX)を用いて、モード4、測定速度30mm/min、アダプタ8φmm(円筒型)、室温(25℃)で測定した。
結果を、図3に示す。
図3から判るように、キシリトールの添加量が大きくなると、ゼリー製剤の破断強度が大きくなった。この測定方法で得られた破断強度を基準とすると、40〜120gの範囲のゼリー製剤であれば、通常の流通、保存において、さらに前記したような袋状容器からの押出し等で受け得る圧力では崩れないが、咀嚼によっては崩れる強度であり、理想的な物性を有するゼリー製剤であるといえる。これより、本発明のゼリー製剤におけるキシリトールの含有量は、特に、5〜30質量%程度が好ましいといえる。また、キシリトールの含有量は、特に、スクロース及び炭素数3〜4のアルジトール1質量部に対し、0.12〜0.75質量倍程度が好ましいといえる。
(3)薬物溶出率の測定
前記実施例及び比較例のゼリー製剤の薬物溶出率を以下の方法で測定した。測定は、JP XV(第15改正日本薬局方)の「溶出試験法」、「パドル法」に沿って実施した。溶出液としては、精製水900mLを用い、これに各ゼリー製剤を入れて、時間推移に従う、溶出液中の薬物濃度(%)を吸光度測定法で測定した。
結果を図4に示す。
図4から判るように、キシリトールの含有量が大きくなればなるほど、ゼリー製剤の薬物溶出率が一定の値を超えるまでの時間が短くなった。例えば、キシリトールを含まないゼリー製剤では、溶出率90%を超えるまでに、約30分要したが、キシリトールを10質量%含むゼリー製剤では、溶出率90%を超えるまでに、約20分要し、キシリトールを20質量%含むゼリー製剤では、溶出率90%を超えるまでに、約15分要した。また、キシリトールを含まないゼリー製剤では、溶出率100%に到達するまでに、約40分要したが、キシリトールを10質量%含むゼリー製剤では、溶出率100%に到達するまでに、約30分要し、キシリトールを20質量%含むゼリー製剤では、溶出率100%に到達するまでに、約20分要した。
上記(2)の試験の結果と併せて考察すると、ペクチンを含むゼリー製剤に、キシリトールを配合することにより、ゼリー製剤の破断強度が大きくなった(ゼリー製剤が固くなった)にも拘わらず、薬物の溶出性は高くなった点が、特に注目に値する。
(4)容器入りゼリー製剤の製造
表2及び表3に示す処方に従い、容器入りゼリー製剤を製造した。実施例1の容器入りゼリー製剤は、以下のようにして製造した。ペクチン、粉末還元麦芽糖水アメ(主成分:マルチトール)、キシリトール、濃グリセリン、プルロニックF68(ポリエチレン(160)ポリプロピレン(30)グリコール)を秤取り、精製水30mLに添加し、80〜90℃で加熱しながら撹拌し溶解した。これにドネペジル塩酸塩を加えて攪拌し溶解し、さらに乳酸カルシウム水溶液(乳酸カルシウム0.07gを精製水5mLに溶解した)を添加し、加温しながら撹拌し混和した。これにリン酸水溶液(リン酸0.12gを精製水5mLに溶解した)加えてpH3.5付近に調整し、香料を加えて混和し、残りの精製水を加えて100gとした。得られた溶解液を1回服用量(2g)ずつ、棒状の袋状容器に入れ、空気とともに封入し、冷却して、容器入りゼリー製剤を得た(エアプッシュ型、図1)。他の実施例、参考例の容器入りゼリー製剤も実施例1の容器入りゼリー製剤と同様の方法で製造した。なお、塩化ナトリウムを添加する場合は、ペクチン等とともに前記精製水30mLに添加した。
(5)滑り性の評価
得られた容器入りゼリー製剤の排出の容易性を、3名のパネラーにより評価した。各パネラーに、容器に設けられたノッチから容器を開封してもらい、胴部の空気が入った部分(図1及び2の(4)参照)を押してもらった。その際のゼリー製剤の排出性について、以下の基準に従ってスコア付けをしてもらった。
<基準>
5:ゼリー製剤が良好に滑り出し、ゼリー製剤が極めてスムーズに排出された。
4:ゼリー製剤がやや良好に滑り出し、ゼリー製剤がスムーズに排出された。
3:ゼリー製剤が滑り出し、ゼリー製剤が問題なく排出された。
2:ゼリー製剤が滑り出しにくく、ゼリー製剤が排出し難かった。
1:ゼリー製剤が滑り出さず、空気のみが抜けてしまった。
結果を、表2及び表3に示す。
Figure 0005492871
Figure 0005492871
実施例1と実施例6、実施例2と実施例7、参考例2と参考例4との比較から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを添加することにより、ゼリー製剤の滑り性(容器からの排出のしやすさ)が顕著に向上することが判った。また、薬物を含まない参考例1及び参考例3との比較から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを添加することにより、ゼリー基剤自体の滑り性(容器からの排出のしやすさ)が顕著に向上することが判った。
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量を、0.005〜0.1質量%の間で変化させても(実施例3〜5)、滑り性(容器からの排出のしやすさ)は良好であった。また、上記表2の記載外で、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量を変化させた処方で、滑り性(容器からの排出のしやすさ)を評価した。その結果、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量が0.001質量%より小さくなると、滑り性(容器からの排出のしやすさ)は、上記実施例に比較して低くなり、上記基準に従って評価すると、スコア2〜3であった。
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量が、0.5質量%より大きくなると、製剤の泡立ち・泡切れが悪くなり、泡を噛み込み、製剤の均一性が低くなった。
(6)ゼリー製剤の容器内残存量の測定
上記で製造した参考例1〜4の容器入りゼリー製剤について、容器内へのゼリー製剤の残存量を測定した。
3名のパネラーに、各容器入りゼリー製剤(ゼリー製剤2g封入)について、1人あたり3回、上記(5)と同様にして胴部の空気が入った部分を押してもらった後、容器へのゼリー製剤の残存量を測定し、ゼリー製剤残存率を算出した(各n=9)。
結果を表4に示す。
Figure 0005492871
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含む参考例1及び2の容器入りゼリー製剤は、容器へのゼリー製剤の残存率が、1質量%より小さかった。一方、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含まない参考例3及び4の容器入りゼリー製剤は、容器へのゼリー製剤の残存率が99質量%であった。
これより、特に、図1に示すようなエアプッシュ型の容器を使用する場合には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの添加が、重要であることが判った。
(7)味の評価
上記で調製した実施例4のゼリー製剤、及び表5に示す実施例8のゼリー製剤の味を、3名のパネラーにより下記の基準に従い評価してもらい、平均スコアを算出した。
<基準>
5:味が甘く、服用に全く問題ない。
4:味は甘く、服用に問題はないが、僅かに別な味も感じる。
3:味は甘いが、僅かに苦味も分離して感じる。
2:味は甘さと苦味を分離して感じるが、我慢すれば服用できる。
1:味は甘さと苦味を分離して感じ、服用しにくい。
結果を、表5に示す。
Figure 0005492871
これより、製剤に塩化ナトリウムを配合することで、ドネペジル塩酸塩の苦みが緩和されることが判った。
本発明のゼリー製剤は、適度な破断強度を有し、かつ高い薬物の溶出性を有する。本発明のゼリー製剤は、特に、認知症治療薬として知られるドネペジル塩酸塩を含む医薬として、有用である。
1・・容器入りゼリー製剤
2・・袋状容器
3・・ゼリー製剤
4・・気体
5・・胴部
6a、6b、6c・・ヒートシール部
7・・ノッチ
8・・開口部

Claims (4)

  1. ドネペジル塩酸塩、ペクチン及び2価の金属イオンを含む経口用ゼリー製剤であって、更にスクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分と、キシリトールとを組み合わせて含む、経口用ゼリー製剤。
  2. スクロース、マルチトール及び炭素数3〜4のアルジトールから選ばれる成分の総含有量が5〜50質量%であり、キシリトールの含有量が5〜30質量%である、請求項1に記載の経口用ゼリー製剤。
  3. 炭素数3〜4のアルジトールがグリセリン及びエリスリトールから選ばれる、請求項1又は請求項2に記載の経口用ゼリー製剤。
  4. プラスチック製の容器、及びこれに封入された請求項1〜の何れか一項に記載の経口用ゼリー製剤を含む、容器入り経口用ゼリー製剤。
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