以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、調理台の前に立つ使用者の可動域の一例を例示する平面模式図である。
本実施形態にかかるキッチン装置100は、キッチンキャビネット200と、水栓400と、水栓400からの吐水を指示可能な吐水操作部500と、を備える。キッチンキャビネット200は、水栓400から吐水された水を受けるシンク220と、シンク220の左側方に延在する調理台(調理スペース)210と、を有する。なお、調理台210は、シンク220の右側方に延在していてもよい。また、シンク220は、水栓400から吐水された水を受ける機能を有し、左側面223と、後面224と、右側面225と、前面226と、底面227と、を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、「湯」を含むものとする。
吐水操作部500は、図2に表したように、調理台210の前に立つ使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれか、すなわち人の届く範囲601、602、603、604内の少なくともいずれかに設けられている。可動域601は、使用者の右手・右腕の可動域の一例を例示しており、可動域602は、使用者の左手・左腕の可動域の一例を例示しており、可動域603は、使用者の右脚・右足の可動域の一例を例示しており、可動域604は、使用者の左脚・左足の可動域の一例を例示している。
ここで、吐水操作部500が、人の手の動き等を検知する測距センサなどの赤外線投光式のセンサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどの場合、すなわち非接触型のセンサである場合には、吐水操作部500は、本願明細書において、「センサ機器本体」だけではなく、そのセンサの「検知エリア」をも意味するものとする。
なお、吐水操作部500は、例えば、マニュアル式のスイッチあるいはレバーや、測距センサなどの赤外線投光式のセンサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどであり、特に限定されるわけではない。また、図1および図2に表したキッチン装置100では、吐水操作部500は、シンク220の左側面223に設けられているが、これだけに限定されるわけではない。この吐水操作部500については、後に詳述する。
水栓400は、図1に表したように、吐水部を有し、その吐水部は整流用吐水口(吐水口)410と、シャワー用吐水口(吐水口)423と、を有する。なお、吐水部については、図19に関して後述する。そのため、水栓400は、整流水およびシャワー水を吐水することができる。なお、「整流」とは水流が略一本の吐水形態を意味し、「シャワー」とは水流が複数本の吐水形態を意味するものとする。整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423の構造、および水栓400の吐水形態については、後に詳述する。また、水栓400は、キッチン装置100に対峙した使用者からみてシンク220の奥側、すなわちキッチン装置100の後方に設けられている。
ここで、例えば、キッチン装置100を用いた調理などの際には、使用者はシンク220の横に設けられた調理台210の前に立って、調理材を切る、あるいは混ぜるなどの動作を行いながら、包丁や野菜などを簡単に洗いたい場合が多い。これは、使用者がシンク220の横に設けられた調理台210の前に立ち、調理を継続しながら、例えば、手や、包丁、まな板、あるいは野菜などをサッと洗う動作である。このように、使用者が調理台210の前に立ち、調理を継続しながら、シンク220および水栓400の方向に包丁や野菜などを差し出してサッと洗う動作を、説明の便宜上「簡単洗い」と称する。
「簡単洗い」は、主にすすぎ洗いを行う動作である。「簡単洗い」の洗浄時間は短く、例えば約2秒程度である。そのため、水栓400の近傍に移動するために身体の重心を移動させる動作や、調理台210の前に戻るために再び身体の重心を移動させる動作などの無駄な動作をなくすことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。また、吐水および止水のための動作を短時間で行うことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。これにより、調理作業の効率化を図ることができる。
そこで、本実施形態にかかるキッチン装置100では、水栓400から吐水された水により洗浄対象物(以下、単に「被洗浄物」と称する)を洗浄できる領域(洗浄エリア)401は、図2に表したように、右手・右腕の可動域601内に存在する。つまり、本実施形態の水栓400は、洗浄エリア401が右手・右腕の可動域601内に存在するように整流用吐水口410あるいはシャワー用吐水口423から水を吐水できる。そのため、使用者は、手や体を大きく移動させることなく「簡単洗い」を行うことができる。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができ、その洗い動作の効率を向上させることができる。
なお、洗浄エリア401の位置は、右手・右腕の可動域601内だけに限定されず、調理台210の前に立つ使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれかであればよい。例えば、調理台210がシンク220の右側方に延在している場合には、洗浄エリア401が左手・左腕の可動域602内に存在すると、使用者は、調理台210から斜め方向に被洗浄物を差し出して洗うことができる。そのため、この場合であっても、使用者は、手や体を大きく移動させることなく「簡単洗い」を行うことができる。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができ、その洗い動作の効率を向上させることができる。
次に、水栓400の吐水および止水について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の水栓から吐水させる動作を説明するための平面模式図である。
また、図4は、調理台と吐水操作部と洗浄エリアとの位置関係を説明するための平面模式図である。
なお、図3(a)は、本実施形態にかかるキッチン装置を上方から眺めた平面模式図であり、図3(b)は、図3(a)に表したキッチン装置のC−C断面図である。
本実施形態にかかるキッチン装置100では、使用者が水栓400から吐水させるためには、まず吐水を開始させるための使用者による吐水操作部500への所定動作(動作M1)が必要である。例えば、吐水操作部500がマニュアル式のスイッチあるいはレバーである場合には、その吐水操作部500への所定動作は、スイッチやレバーを操作する動作である。また、例えば、吐水操作部500が赤外線投光式のセンサやマイクロ波センサなどの非接触式(非接触型)のセンサである場合には、その吐水操作部500への所定動作は、非接触式のセンサに手などをかざす動作である。
そして、使用者は、吐水を開始させるための吐水操作部500への所定動作を行い吐水を開始させた後、被洗浄物を洗浄エリア401に移動させる(動作M2)。これにより、使用者は、洗浄エリア401において被洗浄物を洗浄することができる。つまり、使用者が本実施形態にかかるキッチン装置100において洗浄を行うためには、吐水を開始させるための吐水操作部500への所定動作(動作M1)と、被洗浄物を洗浄エリア401に移動させる動作(動作M2)と、を行う必要がある。
これによれば、使用者は、吐水を開始させるためには、右手・右腕の可動域601内にある吐水操作部500に対して所定動作を行う必要があるため、吐水を開始させる際の使用者の手の位置は規定される。つまり、吐水が開始した際には、使用者の手の位置は、吐水操作部500の近傍に存在する。そのため、吐水が開始した際に、使用者の手が不意に濡れることを抑制することができる。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
また、吐水操作部500は、図4に表したように、右手・右腕の可動域601内であって、調理台210と洗浄エリア401との間の設置エリア501内に設置されていてもよい。さらに、本実施形態にかかるキッチン装置100や調理台210やシンク220を上方からみた平面視において、吐水操作部500は、調理台210から洗浄エリア401へ向かう手の動きの線上(動線上)に設置されていてもよい。
これによれば、使用者は、手や身体を大きく動かすことなく「簡単洗い」を行うことができる。また、吐水操作部500が調理台210から洗浄エリア401へ向かう手の動きの線上に設置されていると、使用者は、「簡単洗い」を行う際の手や身体の動きをより抑制され、吐水のための動作をさらに短時間で行うことができる。その結果、使用者は、「簡単洗い」を効率的に行うことができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。
一方、使用者は、水栓400からの水を止水させるためには、シンク220内から手を抜くだけでよい。つまり、使用者は、水栓400からの水を止水させるための動作を行う必要はなく、例えば吐水操作部500bに手をかざしたり、マニュアル式のスイッチなどを押したりする必要はない。そのため、使用者は、手や身体を大きく動かすことなく「簡単洗い」を終了させることができる。これにより、使用者は、「簡単洗い」を効率的に行うことができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。
次に、本実施形態のキッチン装置の具体例、および水栓の吐止水の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
また、図6は、本具体例の吐水操作部を説明するための断面模式図である。
また、図7は、本具体例の変形例の吐水操作部を説明するための断面模式図である。
なお、図6および図7は、図5に表したA−A断面図に相当する。
本具体例にかかるキッチン装置100aでは、図5に表したように、右手・右腕の可動域601内であってシンク220の左側面223に、吐水操作部500aが設置されている。また、吐水操作部500aは、図6に表したように、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方、より具体的にはシンク220の上面すなわちシンク220の開口面であって、本具体例にかかるキッチン装置100aにおいては、調理台210の上面よりも下方に設置されている。
吐水操作部500aは、例えば使用者の手・腕などで操作可能なマニュアル式のプッシュスイッチなどである。つまり、使用者が吐水操作部500aを図6に表した矢印510aの方向に押すだけで吐水が開始される。
また、本具体例のキッチン装置100aは、制御部110と、開閉弁120と、配水管130と、を備える。水栓400は、配水管130を介して開閉弁120に接続されている。そして、制御部110は、吐水操作部500aから送信された信号に基づいて開閉弁120の開閉動作を制御することにより、水栓400からの吐水および止水を制御することができる。その他、水栓400の構造や設置位置、あるいは調理台210やシンク220の構造などについては、図1〜図4に関して前述した如くである。
ここで、水栓400から水を吐水させるときには、図5に表した矢印510aのように、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500aを押す。そうすることにより、制御部110は、開閉弁120を開き、水栓400から水を吐水させることができる。一方、水栓400からの水を止水させるときには、使用者は、水栓400からの水を止水させるための特別や動作を行う必要はなく、例えば吐水操作部500aを再度押したりする必要はない。
なお、使用者に特別な動作をさせずに止水を行う手段としては、水栓400からの吐水が一定量吐水されたのを判断して止水を行う定量止水や、ある一定時間が経過したら止水を行うタイマー式の止水などでも良い。この止水の動作については、後に詳述する。
このように、本具体例によれば、吐水操作部500aはマニュアル式のプッシュスイッチであるため、使用者は、その吐水操作部500aを容易に視認することができる。そのため、使用者が吐水を行う際に吐水操作部500aの位置を探すなどといった無駄な動作を抑制することができ、使用者は確実に吐水を行うことができる。また、500aはプッシュスイッチであるため、使用者は、例えば野菜や包丁などの被洗浄物を持ったままでも吐水を行うことができる。
また、使用者は、止水させるための動作を行うことなく、シンク220内から手を抜くことにより水栓400からの水を止水させることができる。そのため、使用者は、手や身体を大きく動かすことなく「簡単洗い」を終了させることができる。これにより、使用者は、「簡単洗い」を効率的に行うことができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。
また、吐水操作部500aは、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に設置されているため、使用者の上下方向の無駄な動作を抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aは、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に設置されているため、吐水を開始させる際の使用者の手は、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に規定される。そして、水栓400からの水は、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423から下方に吐水されるため、使用者は、吐水操作部500aを押した後、略水平方向に手を移動させることにより洗浄を行うことができる。これにより、使用者の上下方向の無駄な動作を抑制することができる。
さらに、吐水操作部500aは、シンク220の上面よりも下方に設置されていることにより、水跳ねした水がシンク220の外部に飛散することを抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aは、シンク220の上面よりも下方に設置されているため、吐水を開始させる際の使用者の手は、シンク220の上面よりも下方、すなわちシンク220の内部に規定される。そのため、シンク220内に存在する使用者の手や被洗浄物に着水し水跳ねした水は、シンク220内に飛散しやすい。つまり、シンク220内に存在する使用者の手や被洗浄物に着水し水跳ねした水は、シンク220内に収まりやすい。これにより、水跳ねした水がシンク220の外部に飛散することを抑制することができる。
またさらに、吐水操作部500aは、シンク220内であって調理台210側の側面(左側面223)に設置されているため、水跳ねが軽減される。その結果、使用者の手や被洗浄物からの水滴などで水栓400や吐水操作部500aが汚れることを抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aはシンク220の左側面223に設けられているため、使用者は、吐水を開始させるとき(「簡単洗い」を行うとき)には、まず調理台210から手をシンク220側へ移動させる。そして、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500aへその手を移動させ吐水操作部500aを押す。続いて、使用者は、略水平方向の洗浄エリア401に手を移動させることにより洗浄を行う。使用者の手の動きがこのように誘導されることにより、その使用者の手は、吐水方向に対して側方から且つシンク220内で水栓400からの水にアプローチされる。これにより、使用者の手や被洗浄物において生ずる水跳ねを軽減することができる。
なお、吐水操作部500aは、図7に表したように、シンク220に適宜設けられた斜面228に設置されていてもよい。斜面228は、調理台210からシンク220の底面227へ向かう方向に傾斜している。そして、使用者は、斜面228に設置された吐水操作部500aを矢印520aの方向に押すことにより、吐水および止水を行うことができる。図7に表した変形例によれば、使用者は、吐水操作部500aをより容易に視認することができる。そのため、使用者が吐水を行う際に吐水操作部500aの位置を探すなどといった無駄な動作をより抑制することができ、使用者はより確実に吐水を行うことができる。また、斜面228に付着した水や汚れなどは、シンク220に流れやすい。したがって、斜面228やその近傍の調理台210をより清潔に保つことができる。
図8は、本実施形態の他の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
また、図9は、本具体例にかかるキッチン装置の制御の一例を例示するブロック図である。
また、図10は、本具体例にかかるキッチン装置の制御の他の一例を例示するブロック図である。
本具体例の吐水操作部500bは、非接触式(非接触型)のセンサであり、例えば測距センサなどの赤外線投光式のセンサやドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどである。本具体例においては、センサの検知エリアがセンサの直近であることから、吐水操作部500bへの操作を、すなわち検知エリアにおける操作とみなす。つまり、本具体例の吐水操作部500bは、非接触式のセンサであるため、図1および図2に関して前述したように、吐水操作部500bは、「センサ機器本体」だけではなく、そのセンサの「検知エリア」をも意味する。吐水操作部500bは、図5〜図7に関して前述した吐水操作部500aと同様に、右手・右腕の可動域601内であってシンク220の左側面223に設置されている。また、吐水操作部500bは、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方、より具体的にはシンク220の上面すなわち調理台210の上面よりも下方に設置されている。その他の構造や設置形態などについては、図5〜図7に関して前述した具体例と同様である。
吐水操作部500bは、図9に表したように、例えば赤外線や電波などの放射信号531bを放射し、手や被洗浄物などの被検知体620において放射信号531bが反射して生じる検知信号(反射信号)532bを検知する。そして、制御部110は、吐水操作部500bからの指示信号533bを受理し、指示信号533bの内容に応じて開閉弁120に制御信号111を伝送し、開閉弁120の開閉を制御する。
そこで、本具体例のキッチン装置100bにおいて、水栓400から水を吐水させるときには、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500bに手などをかざす。すなわち、吐水操作部500bの検知エリアに手をかざす。ここで、非接触式のセンサである吐水操作部500bが設置された近傍のシンク220には、吐水操作部500bの設置位置を案内する目印などが設けられていることがより好ましい。これによれば、使用者は、吐水操作部500bの位置を容易に視認することができるため、使用者が吐水を行う際に吐水操作部500bの位置を探すなどといった無駄な動作を抑制することができる。そして、使用者が吐水操作部500bに手などをかざすと、制御部110は、開閉弁120を開き、水栓400から水を吐水させることができる。
一方、制御部110は、図10に表したように、水栓400からの吐水480を被検知体620として用いることにより、止水を制御することができる。すなわち、制御部110は、吐水480の態様から使用者が吐水を必要としているのか否かを判断することができる。より具体的には、吐水操作部500bが水栓400からの吐水480を検知し、吐水操作部500b及び制御部110は、この検知結果に基づいて水栓400の止水を制御することができる。例えば、吐水480に乱れがある場合には、使用者は吐水480を用いて作業を行っていると考えられ、制御部110は吐水を継続する必要があると判断することができる。一方、吐水480に乱れがない場合には、使用者は吐水480を用いていないと考えられ、制御部110は吐水を中止する、すなわち止水する必要があると判断することができる。
なお、水栓400の止水に関しては、水栓400からの吐水480を被検知体620として用いることに限定されるわけではない。例えば、洗い動作中の使用者の手や被洗浄物を被検知体620として用いてもよい。この場合であっても、吐水操作部500bは、使用者の手や被洗浄物の動きなどを検知することにより、制御部110は、使用者が吐水を必要としているのか否かを判断することができる。より具体的には、吐水継続判定エリア(例えば、図11に表した吐水継続判定エリア543b)内において、シンク220内において手や被洗浄物などのような動く物を検知しなくなると、制御部110は、開閉弁120を閉じて水栓400からの水を止水することができる。あるいは、吐水継続判定エリアから手や被洗浄物などの物が抜けたことを検知すると、制御部110は、開閉弁120を閉じて水栓400からの水を止水することができる。
そこで、本具体例のキッチン装置100bにおいて、水栓400からの水を止水させるときには、使用者は、吐水継続判定エリアから手を抜くだけでよい。つまり、使用者が吐水継続判定エリアから手を外すと、制御部110は、開閉弁120を閉じ、水栓400からの水を止水させることができる。そのため、使用者は、洗浄を完了した後に水栓400からの水を止水させるための動作を行う必要はなく、例えば吐水操作部500bに手をかざしたり、マニュアル式のスイッチなどを押したりする必要はない。
なお、使用者に特別な動作をさせずに止水を行う手段としては、水栓400からの吐水が一定量吐水されたのを判断して止水を行う定量止水や、ある一定時間が経過したら止水を行うタイマー式の止水などでも良い。
本具体例によれば、吐水操作部500bは非接触式のセンサであるため、使用者は、例えば野菜や包丁などの被洗浄物を持ったままでも吐水を容易に行うことができる。また、使用者は、吐水操作部500bやその近傍のシンク220などに直接的に触れなくとも、吐水操作部500bに手をかざすことにより吐水を行うことができる。そのため、使用者の手が汚れている場合であっても、吐水操作部500bやその近傍のシンク220などを清潔に保つことができる。
また、使用者は、止水させるための動作を行うことなく、吐水継続判定エリアから手を抜くことにより水栓400からの水を止水させることができる。そのため、使用者は、洗い動作を効率よく行うことができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。また、その他の効果についても、図5〜図7に関して前述した具体例と同様の効果を得ることができる。
次に、本具体例の吐水操作部500bおよび吐水継続判定エリアについて、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図11は、本具体例の吐水操作部500bおよび吐水継続判定エリアの一例を例示する平面模式図である。
本具体例の吐水操作部500bは、被洗浄物を検知している間は吐水を継続する吐水継続判定エリア543bを有する。そして、図11に表したように、吐水継続判定エリア543bは、洗浄エリア401よりも大きく、その洗浄エリア401の全てを内包する。つまり、図11に表したように、吐水操作部500bは洗浄エリア401の外部に設けられ、吐水継続判定エリア543bは洗浄エリア401を含むように設定されている。なお、吐水操作部500bと、吐水継続判定エリア543bと、は一体として設けられていてもよいし、別体として設けられていてもよい。
ここで、調理台の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」をはじめとして、キッチン装置での作業においては、シンク220の内部における作業は煩雑である。そのため、シンク220の内部において作業が頻繁に行われるエリアに吐水操作部500bが存在すると、使用者が意図していないにもかかわらず吐水が開始されるおそれがある。これにより、使用者の手が不意に濡れるおそれがある。したがって、吐水操作部500bは、作業が頻繁に行われないエリアであることがより好ましい。
そこで、図11に表した具体例では、吐水操作部500bは、シンク220の壁面(ここでは左側面223)の近傍であって、より狭範囲に設けられている。これは、シンク220の壁面(ここでは左側面223)の近傍では、作業が頻繁に行われることは少ないためである。また、シンク220の左側面223は、調理台210と水栓400との間の領域であることにより、その領域に物が常駐されることは少ないためである。
一方、使用者が水栓からの吐水を継続させたいと希望しているときに、水栓400からの水が止水されると、使用者は不便さを感ずる場合がある。そのため、制御部110が止水を実行する場合には、使用者の様々な行為や状況に基づいて止水が行われることがより好ましい。ここで、吐水継続判定エリア543bが、吐水操作部500bと同じ範囲である場合には、使用者の様々な行為や状況を的確に検知することができない。そのため、使用者が吐水を継続させたいと希望する場合でも、水栓400からの水が止水されてしまう場合がある。したがって、吐水継続判定エリア543bは、作業が頻繁に行われるエリアであることがより好ましい。
そこで、図11に表した具体例では、吐水継続判定エリア543bは、洗浄エリア401を含む。また、吐水継続判定エリア543bの中に、吐水操作部500bの少なくとも一部が含まれていてもよい。これにより、制御部110は、指示信号533bの内容に応じて吐水を継続することができる。
本具体例の検知エリアによれば、吐水操作部500bは洗浄エリア401の外部に設けられ、吐水継続判定エリア543bは洗浄エリア401を含むように設定されている。そのため、使用者が意図していないにもかかわらず吐水が開始されるおそれは少ない。つまり、使用者の手が不意に濡れることを抑制しつつ、吐水が必要な場合には吐水を継続することができる。また、吐水を開始させる際の使用者の手の位置は、洗浄エリア401の外部に設定された吐水操作部500b内に存在する。そのため、使用者の手が不意に濡れることをより確実に抑制することができるとともに、洗浄作業を妨げることはない。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。また、使用者は、止水させるための動作を行うことなく、シンク220内から手を抜くことにより水栓400からの水を止水させることができるため、洗い動作を効率よく行うことができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
また、吐水継続判定エリア543bは、洗浄エリア401を含むように設定されているため、洗浄エリア401から外れるが吐水を継続したい作業、例えば複数の食器を洗浄している際に、1つの食器を洗い終えてから、次の食器を手に取る等の作業時にも、吐水は継続される。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。また、使用者は、止水させるための動作を行うことなく、吐水継続判定エリア543bから手を外すだけで水栓400からの水を止水させることができるため、洗い動作を効率よく行うことができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
図12は、本具体例の吐水操作部500bの検知順番を説明するための平面模式図である。
図11に関して前述したように、キッチン装置での作業においては、シンク220の内部における作業は煩雑である。そのため、吐水操作部500bは、シンク220の内部における作業の動作を限定することは困難である。
図11に表したように、吐水継続判定エリア543bは、洗浄エリア401よりも大きく、その洗浄エリア401の全てを内包する。つまり、図11に表したように、吐水操作部500bは洗浄エリア401の外部に設けられ、吐水継続判定エリア543bは洗浄エリア401を含むように設定されている。
なお、一つの非接触型のセンサによって、吐水操作部500bと吐水継続判定エリア543bが形成されても良いし、吐水操作部500bと吐水継続判定エリア543bが、それぞれ別々の非接触センサで形成されても良い。
そこで、本具体例の吐水操作部500bは、図12に表した矢印551bのように、まず、より狭範囲547b(図11の具体例では吐水操作部500b)にて吐水を指示するための検知を行い、その後、より広範囲548b(図11の具体例では吐水継続判定エリア543b)にて吐水を指示するための検知を行う。これによれば、吐水および止水の誤動作を抑制することができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
これに対して、例えば小便器装置などの比較例では、様々な方向から接近する人を事前に検知して準備を行い、その後、小便器装置などを使用する人のみをより確実に検知することがより好ましい場合がある。この場合には、図12に表した矢印553bのように、より広範囲548bにて検知を行い、その後、より狭範囲547bにて検知を行うことがより好ましい。しかしながら、キッチン装置において、このような順番で検知を行うと、吐水および止水の誤動作を起こすおそれがあるため好ましくない。
図13は、本具体例の吐水操作部500bおよび吐水継続判定エリアの他の一例を例示する平面模式図である。
図13に表した具体例では、吐水操作部500bと吐水継続判定エリア545bとの間に、吐水および止水を指示するための検知情報を無視する空白エリアが存在する。つまり、図13に表したように、吐水操作部500bと、吐水継続判定エリア545bと、は重複していない。また、図11に表した具体例と同様に、吐水操作部500bは洗浄エリア401の外部に設定され、吐水継続判定エリア543bは洗浄エリア401を含むように設定されている。その他については、図11および図12に関して前述した具体例と同様である。
ここで、シンク220内での作業には、一時的にシンク220内を利用しつつも止水を行いたい場合がある。例えば、洗米を行っている際、水を捨てる作業を行う場合には、シンク220内の作業ではあるものの、水は出て欲しくないといった場合がある。また、切った野菜をすすいだのち、皮を捨てたり種類を分けたりといった選別作業時においても、一時的に止水を行うことが望まれる。
本発明のキッチン装置によれば、吐水操作部500bと吐水継続判定エリア545bとの間において、検知情報を無視する空白エリアが存在するため、洗米やすすいだ野菜の選別作業等、シンク220内における作業を行いつつも、一時的に止水を行うことができる。これにより、シンク220内での作業を継続しながら一時的な止水を必要とする作業においても本具体例のキッチン装置を好適に利用することができ、調理台210の前からの洗い作業である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
次に、水栓400の設置位置および構造について、図面を参照しつつ説明する。
図14は、水栓がシンクの中心よりも調理台側に設置された具体例を例示する平面模式図である。
また、図15は、水栓がシンクの中心に設置された具体例を例示する平面模式図である。
また、図16は、調理台の上面に対して吐水部が上方に傾斜した水栓を右側方から眺めた断面模式図である。
本実施形態にかかるキッチン装置100では、水栓400は、図1および図2に関して前述したように、洗浄エリア401が右手・右腕の可動域601内に存在するように吐水できる。ここで、図15に表したように、水栓がシンク220の中心CL上、より具体的にはシンク220の左側面223と右側面225との中心CL上であってその奥側に設置されている場合を考えてみる。この場合において、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定するために、図15に表した水栓400bのように、シンク220の中心CLから調理台210の上面と平行方向(水平方向)に水栓400bを延在させると、その水栓400bが邪魔になる場合がある。これは、水栓400bと、調理台210の上面と、の間の空間が狭くなり、被洗浄物がその水栓400bに干渉する場合があるためである。
そこで、図15および図16に表した水栓400aのように、水栓の吐水部は、調理台210の上面に対して上方に傾斜していてもよい。これによれば、水栓400aと、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができる。そのため、その水栓400aが邪魔になるおそれは少ない。また、水栓400aは、図16に表したように、調理台210の上面に対して垂直ではなく斜め下方に吐水するため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができる。
しかしながら、そうすると、水栓400aから吐水された水は、図15に表した矢印のように、調理台210の前にいる使用者に向かってくる。このとき、その使用者は、水栓400aから吐水された水が使用者自身に向かってくるため、恐怖感や圧迫感などを感ずる場合がある。また、シンク220に着水した水が飛散することにより生ずる「水跳ね」が、使用者に向かってくる場合がある。
そこで、図14に表したように、水栓は、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置されていてもよい。この場合には、水栓400は、図14に表した矢印のように、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水できる。あるいは、水栓400は、キッチン装置100の前方に向かって吐水できる。あるいは、水栓400は、キッチン装置100に対峙した使用者の視線と平行方向に吐水できる。これによれば、水栓400から吐水された水は、調理台210の前にいる使用者に向かってくることはないため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。
またさらに、水栓400の吐水部が、図16に表したように、調理台210の上面に対して上方に傾斜している場合には、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができる。これにより、鍋などのより大きい被洗浄物を洗浄する場合でも、使用者は、水栓400に邪魔されることなく楽に洗浄できる。また、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができるため、使用者は楽に「簡単洗い」を行うことができる。
このように、図14に表した具体例では、水栓400の吐水部は、調理台210の上面に対して上方に傾斜し、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置され、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水可能である。そのため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができ、使用者は楽に「簡単洗い」を行うことができる。また、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができるため、その水栓400が邪魔になるおそれは少ない。また、水栓400から吐水された水は、調理台210の前にいる使用者に向かってくることはないため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。さらに、水跳ねが、調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。これらにより、使用者は、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
次に、本実施形態の水栓400の構造および吐水形態について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図17は、本実施形態の水栓を表す模式図である。
なお、図17(a)は、水栓を正面から眺めた正面模式図であり、図17(b)は、図17(a)に表した水栓のA−A断面を表す断面模式図であり、図17(c)は、図17(a)に表した水栓のB−B断面を表す断面模式図である。
水栓400は、吐水部でもある上方部に整流用吐水口410と、整流用吐水口410の下方部に貯留部430と、を有する。貯留部430は、一端を開口し、上下方向を長手方向とする略直方体形状を有する。そして、貯留部430の開口部分を覆うように、図示しない散水板(図18参照)が設けられている。そのため、本実施形態の水栓400は、整流水とシャワー水とを吐水することができる。整流水とシャワー水との切替は、例えば水栓400の先端に設けられた図示しない切替部によって行うことができる。この切替部は、水栓400の根元や、キッチンキャビネット200の上面に設けられていてもよい。
また、切替部は、1つの配管から2つの配管に分岐され、且つ一方の流路のみに給水可能とされたスイッチやレバーであってもよい。この切替部は、機械的に流路を変更させるような構成を有することができる。さらに、切替部は、流路分岐後から水栓400に至るまでの流路上に設けられた、電気的に「ON/OFF」可能なバルブであってもよい。この切替部は、バルブを駆動させる制御基板が設けられ、使用者の操作に応じて一方のバルブを「ON」にし、他方を「OFF」にするような構成を有することができる。このように、水栓400は、例えば整流用配水管411およびシャワー用配水管431を別途内部に設けることにより、切替部分の設置に伴うスペースを確保することなく2つの形態の吐水を提供することができる。そのため、小型で且つ使用者の欲する吐水を供給可能となる。
水栓400の左右方向の幅L2は、被洗浄物の大きさに応じた設定とすることが望ましい。例えば、洗浄する対象は一般的に手、包丁や鍋等の調理器具、あるいは食材等であるが、左右方向を幅広く設定すると、小さなものを洗う際に余分な水を使用してしまう。これは、長手方向を有する被洗浄物を使用者が水栓400に向けて自然に差し出すと、被洗浄物の長手方向はシンク220の奥行方向と略平行となるためである。一方、左右方向を幅狭く設定すると、大きなものを洗浄する際に狭い範囲にしか水がかからないため、手を大きく動かして洗浄を行う必要がある。
そこで、本実施形態では、手や包丁等を簡単に洗うことを考慮に入れて水栓400の左右方向の幅L2を設定することで、「簡単洗い」では被洗浄物を差し出すだけで洗浄可能とした。例えば、水栓400の左右方向の幅L2を約40mm程度とすることで、手や包丁の刃の部分を左右方向に手を移動させること無く洗浄することが可能となる。また、まな板のように面積の広い調理器具に対しても、後に詳述するように、水栓400はシンク220の奥行方向を長手方向とする吐水が可能であるため、調理器具を吐水の長手方向に動かす動作を低減して洗浄することが可能となる。そのため、使用者の洗浄動作における負荷を低減することが可能となる。但し、これらの寸法はこれだけに限られるわけではなく、適宜変更することができる。
図18は、本実施形態のシャワー吐水用の散水板を例示する模式図である。
なお、図18(a)は、散水板を正面から眺めた正面模式図であり、図18(b)は、複数のシャワー用吐水口を有するシャワー用吐水部を例示する模式図である。
図18(a)に表した散水板420は、水栓400の貯留部430の開口部分を覆うように固定される。散水板420は、シャワー用吐水部421を有し、このシャワー用吐水部421は、水をシャワー水として吐水するためのシャワー用吐水口423を有する。シャワー用吐水部421は、例えば5行×2列で配列されている。また、シャワー用吐水部421には、シャワー用吐水口423が例えば同心円状に2列で配列されており、合計約30個程度のシャワー用吐水口423が1組として設けられている。水は、それぞれのシャワー用吐水口423から吐出され、シャワー水としてシンク220に着水する。
散水板420をこのような構成にすることによって、シャワー用吐水口423から吐出された洗浄水は部分的に集中した形状となる。これにより、シャワー用吐水口が散水板の全体に拡散して配置されている場合に比べて、図18(a)に表した散水板420は、各シャワー用吐水部421に対峙した被洗浄物の一部に対して洗浄水を局所的に衝突させることができる。そのため、被洗浄物の付着物をより効率よく洗い流すことができる。
また、複数個のシャワー用吐水部421を設け、且つ散水板420におけるシャワー用吐水口423の開口面積を十分に確保することにより、洗浄水が被洗浄物に対して局所的に衝突したとしても、散水板420は吐水量を十分に確保することができる。そのため、被洗浄物に衝突した後の吐水の広がりを十分に確保することができる。さらに、吐水を被洗浄物の全体に拡散することもでき、被洗浄物全体への吐水も可能となる。
なお、包丁などの長手方向を有する調理器具等を洗浄することを考慮すると、シャワー用吐水部421は散水板420の長手方向(図18(a)における縦方向)に沿って設けられることが好ましい。これは、図17に関して前述したように、使用者が長手方向を有する被洗浄物を水栓400に自然に差し出すと、被洗浄物の長手方向はシンク220の奥行方向と略平行となるためである。
ここで、シャワー用吐水口423およびシャワー用吐水部421についてさらに詳述する。
洗浄水が被洗浄物に衝突した際の状況は、シャワー用吐水口423の口径によって異なる。例えば、シャワー用吐水口423の口径を小さくしてシャワー用吐水口423の口数を一定にした場合、シャワー用吐水口423から吐出される洗浄水の流速は速くなる。その洗浄水は多くの水流となって吐出されるため、被洗浄物に当たった際の衝撃によって発生する水跳ねは、近傍にある流速の速い水流によって遮られる。そのため、洗浄水が使用者に対して飛散することをより低減させることが可能となる。
また、流速が速い吐水を行うことが可能であるため、1本の水流に対する断面積は小さくとも、洗浄水は被洗浄物に対してより大きな衝突エネルギーを有することが可能となる。例えば、葉物野菜の泥汚れのように小さい隙間等に入った汚れを、断面積の小さい水流は衝突エネルギー用いて洗浄することが可能となる。
一方、シャワー用吐水口423の開口面積を広げた場合には、各水流における洗浄水の衝突エネルギーは低減するものの、洗浄水が被洗浄物に衝突した際に広がる水膜は大きくなる。そのため、被洗浄物全体に対するすすぎを効率良く行うことが可能となる。また、1つのシャワー用吐水部421は複数の水流を有するため、洗浄水はシャワー用吐水部421と対峙した被洗浄物に対して複数の衝突点を持つことが可能となる。そのため、付着物に対する洗浄効果を向上させることも可能となる。
但し、各シャワー用吐水口423から吐水される水流同士が接触又は交差すると、水流が被洗浄物と異なる方向へ進行するため、水跳ねの原因ともなり得る。そこで、シャワー用吐水部421に設けられた各シャワー用吐水口423同士の間隔を一定間隔以上空けることにより、水流同士の接触を抑制することが好ましい。例えば、各シャワー用吐水口423の端面同士の距離を、シャワー用吐水口423の直径と同じ長さ以上に設定することにより、各水流間に水流一本分以上の間隔を保持することが可能となる。そのため、容易に水流が接触することを防止することが可能となる。
また、シャワー用吐水口423は、図18(a)および図18(b)に表したように、同心円状に複数の円を設け、その円周上に一定間隔毎に配置されることが好ましい。シャワー用吐水部を一重の円で構成し、その円周上にシャワー用吐水口を配置した場合には、シャワー用吐水部から吐水される流水群は中抜け状態の吐水となってしまう。そのため、洗浄水は被洗浄物の一定の部位のみに衝突することになり、付着物を効率よく洗浄することが困難となるおそれがある。
これに対して、複数の同心円を設け、その円周上にシャワー用吐水口423を設けることで、シャワー用吐水部421に対峙する被洗浄物に対して効率よく洗浄水を吐水することが可能となる。そのため、付着物を効率よく洗浄することが可能となる。また、複数の同心円にシャワー用吐水口423を設けることにより、内側(同心円の中心側)に位置する同心円状の流水群の水跳ねが、外側に位置する同心円状の流水群に遮られるため、全体的な水はねの量を低減することができる。
但し、前述したように、各シャワー用吐水口423の間隔を十分に確保して、水流同士の接触を防止することが好ましい。1つの同心円状に配置されたシャワー用吐水口423については、前述したように各シャワー用吐水口423同士の間隔を一定間隔以上空けることが望ましいが、隣接する同心円状に配置されたシャワー用吐水口423同士の間隔においても同様に一定間隔以上を空けることが望ましい。例えば、隣接するシャワー用吐水部421の各同心円の直径をシャワー用吐水口423の直径の4倍以上あるいは4倍以下に設定することが好ましい。これにより、各同心円状に配置されたシャワー用吐水口423から吐水される水流同士には、水流の断面積の少なくとも一本分以上の間隔を保持することが可能となる。そのため、容易に水流が接触することを防止することが可能となる。
散水板420に設けられたシャワー用吐水口423の全体の幅L5、すなわち配設されたシャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部との間の寸法(幅L5)は、例えば約20mm程度に設定することができる。一方、散水板420に設けられたシャワー用吐水口423の全体の上下方向(図18(a)における縦方向)の長さL6、すなわち配設されたシャワー用吐水口423の全体の上端部と下端部との間の長さL6は、例えば約65mm程度に設定することができる。
図19は、本実施形態にかかるキッチン装置を上方から眺めた平面模式図である。
以下では、水栓400の吐水部が、図16に表したように、調理台210の上面に対して上方に傾斜している場合を例に挙げて説明する。水栓400の吐水部が調理台210の上面に対して上方に傾斜している場合には、シャワー用吐水口423から吐水された水は、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水される。また、散水板420は、図18(a)に表したように、シャワー用吐水部421およびシャワー用吐水口423を有する。そして、その吐水部は、シンク220の奥行方向を長手方向とする形状を有する。
ここで、吐水部とは、吐水口全体の左端部と右端部と上端部と下端部とで囲まれた部分をいう。すなわち、例えば図18(a)に表した散水板420においては、シャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部と間の長さ(L5)および上端部と下端部との間の長さ(L6)とで囲まれた部分をいう。そのため、シャワー用吐水口423および散水板420に対して垂直にみた状態において、シャワー水全体は、左右方向の幅(L5)が約20mm程度、上下方向の長さ(L6)が約65mm程度の略矩形の形状を有することができる。なお、整流用吐水口410については、整流用吐水口410の開口形状自体が吐水部となる。
そのため、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水された水が調理台210の上面を横切る際の水平方向断面は、図19に表した領域440の如く、シンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈している。領域440の前後方向の長さL1(図16参照)は、例えば約70mm〜75mm程度である。これは、長手方向の長さL6(図18(a)参照)が約65mm程度であるシャワー水が、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水された場合の長さである。一方、図18(a)に表したようなシャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部との幅L5が約20mm程度である場合には、領域440の左右方向の長さL8も同様に約20mm程度となる。
このように、水栓400から吐水された水の水平方向断面が、シンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈することにより、水栓400は、洗浄水を広範囲に吐水することができる。例えば、包丁などのように全長が長い被洗浄物に対しては、被洗浄物の全長の略半分の長さに対して洗浄水を吐水し、且つ被洗浄物上を流れる流水によって残りの略半分の長さを洗い流すことができる。
次に、水栓400の吐水部が調理台210の上面に対して傾斜して設けられていることの効果、水が調理台210の上面に対して斜め方向から吐水されることの効果、および領域440がシンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈することの効果について図面を参照しつつ説明する。
図20は、被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を例示するための斜視模式図である。
また、図21は、被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を側面から眺めた側面模式図である。
なお、図21(a)は、一本の水流を例示する模式図であり、図21(b)は、複数の水流を例示する模式図である。
図20に表したように、水栓400から吐水された水480が被洗浄物700に対して斜めに着水すると、水480は略進行方向である矢印A、矢印B、または矢印Cの方向に流れようとする。そのため、水480が被洗浄物700に着水したときに、被洗浄物700と水480との衝突面が広くなり、水480は被洗浄物700の表面の広い範囲に広がろうとする。
さらに、図19に表した領域440のように、吐水断面が長手方向を有する形状の吐水を被洗浄物700に対して当てる場合には、図21(b)に表したように、水480は例えば矢印Aなどの略一方向に連なって流れようとする。そのため、被洗浄物700に付着した汚れなどは、着水した水の流れと一緒になって洗い流される。したがって、斜め方向から吐水された(着水した)効果と、吐水断面の形状が長手方向を有する形状となるように吐水された(着水した)効果と、の相乗効果によって洗浄効果が向上する。
水栓400の吐水部が調理台210の上面に対して上方に傾斜している場合には、その水栓400は、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水することができ、且つ吐水された水の水平方向断面がシンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈するように吐水することができる。そのため、これらの相乗効果によって洗浄効果を向上させることができる。
図22は、被洗浄物に対して水が斜めに吐水された場合の水跳ねについて説明するための模式図である。
水栓400から吐水された水480が被洗浄物700に対して斜めに着水した場合には、図20および図21に関して前述したように、水480は被洗浄物700の表面の広い範囲に広がろうとする。したがって、被洗浄物700の表面には、広い範囲に渡って水膜480aが形成される。
さらに、水480は被洗浄物700に対して斜めに着水するため、水膜480aは被洗浄物700の表面上を流れようとする。広い範囲に渡って水膜480aが流れると、水栓400から吐水された水480は、この流れを有する水膜480aの上に着水する。流れを有する水膜480aの上に着水した水480は、すぐに水膜480aの流れに乗って、水膜480aと一緒に流れる。そのため、この水膜480aの上に着水した水480は、被洗浄物700に直接着水した水のようには水跳ねしない。したがって、水跳ねを減少させることができる。
また、水膜480aによって水跳ねを生じた場合であっても、断面が長手方向を有する形状の水を被洗浄物700に対して当てる場合には、隣り合う水流との間の領域485において、その水跳ねは打ち消される。したがって、さらに水跳ねを減少させることができる。つまり、広い範囲に渡って流れを有する水膜480aが形成されることと、隣り合う水流との間の領域485が存在することと、によって水跳ねを減少させることができる。これにより、人の手の届く範囲に洗浄エリア401が形成された場合でも、水跳ねが、調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄エリア401は、使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれかに存在する。また、吐水操作部500は、調理台210の前に立つ使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれかに存在する。そのため、使用者は、手や身体を大きく動かすことなく、調理台の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」を行うことができる。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができ、その洗い動作の効率を向上させることができる。
そして、使用者は、吐水を開始させるためには、吐水を開始させるための吐水操作部500への所定動作を行う必要があり、一方で、止水させるためには、止水させるための動作を行う必要はない。そのため、吐水を開始させる際の使用者の手の位置は、吐水操作部500の近傍に規定され、使用者の手が不意に濡れることを抑制することができる。また、使用者は、止水させるための動作を行う必要はないため、手や身体を大きく動かすことなく「簡単洗い」を終了させることができる。これにより、使用者は、「簡単洗い」を効率的に行うことができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、キッチン装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや水栓400の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、水栓400の設置位置に関し、水栓400がシンク220の中心CLよりも調理台210側に設置される場合をより多く例に挙げて説明し図示したが、これだけに限定されるわけではない。水栓400は、シンク220の中心CLの近傍に設置されてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。