JP5212905B2 - 水栓およびシステムキッチン - Google Patents

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Description

本発明の態様は、一般に、水栓およびシステムキッチンに関する。より具体的には、水栓と、シンクと、カウンターと、を備えたシステムキッチンに関する。
調理中などにおいては、包丁や野菜、食器などに付着している汚れを落とすために、洗浄が行われる。このような洗浄における洗い動作は、2種類に分けることができる。一方は、汚れの少ないものを洗う動作であり、これを「簡単洗い」と呼ぶことにする。他方は、汚れの落ち難いものを洗う動作であり、これを「丁寧洗い」と呼ぶことにする。
「簡単洗い」は、主にすすぎ洗いを行う動作であり、具体的には、手、包丁、まな板、あるいは汚れの少ない野菜などを洗う動作である。洗浄時間は短く、例えば約2秒程度である。また、簡略的な洗い動作であるため、シンクの側方に設けられた調理台の前に立ちつつ、水栓の方向に向かって、洗浄物を差し出して、洗うことができると便利である。すなわち、調理台の前から移動せずに、洗うことができると便利である。
これに対して、「丁寧洗い」は、主にこすり洗いを行う動作であり、具体的には泥汚れ、油汚れ、あるいは肉や魚の「ヌメリ」などを洗う動作である。洗浄時間は、「簡単洗い」よりも長く、例えば約10秒以上である。また、魚を切った後のまな板などのように汚れの落ち難いものを洗う動作であるため、シンクおよび水栓の正面に立って差し出して洗うことが多い。
また、この他にも、泥付き野菜、葉物野菜などをまとめて洗う「準備洗い」、食器、鍋、フライパンなどを洗う「片付け洗い」などに分類することもできる。
この場合、いずれの洗い動作であっても、洗浄効果や作業性を向上させて、食器などの洗浄を素早く終了させることが好ましい。
そこで、従来から、食器や調理器具、食材等の洗浄を素早く行うために、洗浄物に対して、広範囲に吐水をかけるキッチン用の水栓が提案されている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、特許文献1、2に記載された水栓においては、幅広の吐水部から、広範囲の吐水が実現されるものの、カウンター上面に対し、略並行に配設された吐水管から、略鉛直下方に吐水されており、吐水管は、シンクの上方部あるいは前方部に張り出している。このため、手や洗浄物を洗う際に、吐水管に遮られ、汚れ落ちやすすぎの状態が見にくくなり、洗い動作に時間がかかるといった問題があり、特に背の高い調理者においては、この傾向が顕著にみられた。また、調理台の前に立った状態から、手や洗浄物を差し出すと、吐水に届きにくいといった問題や、フライパンや鍋など大物の調理器具を吐水に差し出しにくくなる他、洗い動作においては、吐水管が邪魔になり、調理器具の取り回しがしにくいという問題もあった。
一方、吐水部の上流に設けられた弁装置等に止水操作を施し、湯水の供給を停止した後も、弁装置等より下流の水栓本体および配管内に残留した水が、吐水部から長い時間に渡って滴下するという問題があった。特に、シャワーヘッドのように、散水板の背面側に、水の貯留部を大きく有する場合、残留する水の量が多くなるため、排出に時間がかかっていた。このような課題に対し、止水させた後に吐水部からの水の滴下を防止する水栓が提案されている(例えば、特許文献3、4、5)。
特許文献3に開示された技術の思想は、残留した水を排出させないことで、水の滴下を防止しようというものである。しかしながら、細かい散水孔の一つ一つに、粗面化処理を施すのが非常に煩雑であるばかりでなく、汚れや菌等も付着しやすくなるため、不衛生になるといった問題があった。特許文献4に開示された技術の思想は、残留した水をできるだけ早く排出させようというものである。しかしながら、特許文献4に開示された技術では、吐止水に応じて、給排水管を切替える機構および呼気手段が必要となるため、構成が複雑になるのに加え、設置位置にも制約が生じるため、キッチン用途では適用しにくいという問題があった。また、特許文献5に開示された技術の思想は、散水孔の一つあたりに残留する水を少なくすることで、早く排出させようというものである。しかしながら、特許文献5に開示された技術は、吐水フェイスの傾きが小さい場合には有効であるものの、吐水フェイスの傾きが大きい場合、残留した水は結局下方の散水孔に集まってしまい、水の排出に時間がかかるという問題があった。
特開2000−27248号公報 特開2000−96642号公報 特許第3520108号公報 特開2005−213793号公報 特開2004−208733号公報
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗い動作が行い易く、洗浄効果を向上させることができ、調理台の前に立った状態からでも吐水に手や洗浄物が届きやすく、かつ止水操作の後も吐水部から水が滴下することを抑制若しくは、軽減できる水栓を提供することを目的となされたものである。
本発明の一態様によれば、シャワー吐水部を備えた水栓であって、前記シャワー吐水部
は、複数の散水孔を有する散水板を有し、前記散水板は、水平方向に対し傾斜した方向に
向けて設置され、前記複数の散水孔は、前記散水板の傾斜した方向が長手方向となるよう
に縦長に穿設され、前記散水板の背面側には貯留部が設けられ、前記貯留部は、上方部に給水流路が接続されており、前記給水流路と、前記貯留部との接続部は、前記貯留部に向かうにつれ流路断面が広がるように、テーパ部が設けられていることを特徴とする水栓を提供する。
本発明によれば、洗い動作が行い易く、洗浄効果を向上させることができ、調理台の前に立った状態からでも吐水に手や洗浄物が届きやすく、かつ止水操作の後も吐水部から水が滴下することを抑制若しくは、軽減できる水栓が提供される。
第1の発明の実施形態は、シャワー吐水部を備えた水栓であって、前記シャワー吐水部は、複数の散水孔を有する散水板を有し、前記散水板は、水平方向に対し傾斜した方向に向けて設置され、前記複数の散水孔は、前記散水板の傾斜した方向が長手方向となるように縦長に穿設され、前記散水板の背面側には貯留部が設けられ、前記貯留部は、上方部に給水流路が接続されることを特徴とする水栓である。
この水栓によれば、長手方向に広範囲に吐水がかかり、水栓が邪魔になることもない。また、貯留部に残存した気泡の排出が促進されるため、止水操作の後も吐水部から水が滴下することを抑制できる。
第2の発明の実施形態は、第1の発明の実施形態において、前記給水流路と、前記貯留部との接続部は、前記貯留部に向かうにつれ流路断面が広がるように、テーパ部が設けられていることを特徴とする水栓である。
この水栓によれば、テーパが設けられ、貯留部に接続されているため、接続部近傍のよどみが解消され、気泡の排出がより促進される。したがって止水操作の後に吐水部から水が滴下するのを抑制することができる。
第3の発明の実施形態は、第1または2の発明の実施形態において、前記複数の散水孔は、第一の散水孔と第二の散水孔を備え、前記第二の散水孔は、前記第一の散水孔よりも小さな直径を有し、少なくとも、上端の散水孔は、前記第二の散水孔であることを特徴とする水栓である。
この水栓によれば、上端の散水孔径が小さいため、上端の散水孔に形成される水膜に働く表面張力が大きくなり、貯留部への空気の流入が抑制されるため、水の滴下がより抑制される。
第4の発明の実施形態は、第1乃至3のいずれか一つの発明の実施形態において、前記散水板の背面側かつ下方の一部に、前記散水孔より開口面積の小さいメッシュが設けられていることを特徴とする水栓である。
この水栓によれば、散水孔より開口面積が小さいため、メッシュに形成される水膜に働く表面張力がより大きくなり、貯留部からの水の滴下がより抑制される。
第5の発明の実施形態は、第1乃至4のいずれか一つの発明の実施形態において、前記散水孔の少なくとも一部は、水平面と、前記散水孔が設けられた散水板表面の法線方向と、がなす角度よりも、水平面と、前記散水孔から吐水される水の吐水方向と、がなす角度のほうが小さくなるように、前記散水板に穿設されていることを特徴とする水栓である。
この水栓によれば、上端の散水孔と下端の散水孔との鉛直方向の高低差をより小さくでき、下端の散水孔に働く水圧が小さくできるため、水の滴下がより抑制される。さらに吐水が放出される方向は、傾斜した方向となるため、洗い作業の効率向上は維持される。
第6の発明の実施形態は、第1乃至5のいずれか一つの発明の実施形態において、シンクと、前記シンクに吐水流を放出するよう配置された水栓とを備えたシステムキッチンである。
このシステムキッチンによれば、シンクの前後方向に渡って、広範囲に吐水され、調理における洗いの作業を効率化することができる。また、止水操作後の吐水部からの水の滴下を抑制できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムキッチンを表す模式図である。
本実施の形態にかかるシステムキッチン10は、水栓20と、シンク30と、カウンター60と、を備えている。水栓20には、整流吐水部22と、シャワー吐水部24と、が設けられている。シンク30は、シンク開口部32と、シンク底面34と、シンク前面36と、シンク左側面37と、シンク後面38と、シンク右側面39と、を備えている。また、システムキッチン10には、シンク開口部32の左側方および右側方の少なくともいずれかに延在する調理台(図示せず)を備えるようにすることもできる。なお、本願明細書において「整流」とは水流が略一本の吐水流となる場合を意味し、「シャワー」とは水流が複数本の吐水流となる場合を意味するものとする。また、「水」という場合には、「湯」や「温水」をも含むものとする。
水栓20は、使用者から見てシンク30の奥側、すなわちシステムキッチン10の後方で、かつカウンター上面62に設けられている。水栓20の下方部、すなわちカウンター上面62に取り付けられている近傍の部分は、カウンター上面62に対して垂直になるように設けられている。そして、所定の寸法よりも上方部は、カウンター上面62に対して傾斜して設けられている。この場合、傾斜角度は、カウンター上面62に対して例えば、60°程度とすることができる。ただし、この傾斜角度は、適宜変更することができる。傾斜した上方部の前面に吐水部が接続されており、吐水部には、整流吐水部22とシャワー吐水部24と、が設けられている。すなわち、整流吐水部22およびシャワー吐水部24は、カウンター上面62に対して傾斜した状態でシンク30に向かって設けられている。そのため、吐水部(整流吐水部22、シャワー吐水部24)からカウンター上面62に対して傾斜した方向から吐水流を放出することができる。
また、カウンター上面62とシンク後面38との連接部分(略稜線部分)に、ある一定の角度で傾斜した図示しない設置面を設け、この設置面に対して垂直に設けられる直線状の水栓とすることもできる。また、シンク後面38からカウンター上面62に対して水平方向に所定の寸法だけ延在させ、先端をさらにカウンター上面62に対して垂直方向に所定の寸法だけ延在させるとともに、所定寸法より上方に位置する部分をカウンター上面62に対して傾斜させたような形状の水栓とすることもできる。また、シンク30の後方であって、カウンター上面62に対して垂直な壁面に設けられ、この壁面から水平方向に所定の寸法だけ延在させ、先端をカウンター上面62に対して傾斜させたような形状の水栓とすることもできる。
また、水栓の形状は例示したものに限定されるわけではなく、少なくともシャワー吐水部から、カウンター上面62(シンクの底面34)に対して傾斜した方向に吐水流が放出されるような形状であればよい。また、水栓の設置場所も適宜変更することができる。
図2は、本実施形態にかかる水栓の上方部を例示するための模式図である。なお、図2(a)は、上方部を正面から眺めた模式正面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA−A矢視断面を示す模式断面図であり、図2(c)は、図2(a)におけるB−B矢視断面を示す模式断面図である。
水栓20は、その先端近傍に設けられた整流吐水部22と、整流吐水部22の下方に設けられたシャワー吐水部24と、を備えている。すなわち、水栓20は、シンク前面36より後方側であってカウンター上面62より上方側に位置するシャワー吐水部24と、シャワー吐水部の上方側かつ前方側に位置する整流吐水部22を備えている。また、水栓20は、整流吐水部22へ水を導くための整流用配水管23と、シャワー吐水部24へ水を導くためのシャワー用配水管25と、を備えている。
図2に示すように、シャワー吐水部24には、一端を開口し、上下方向を長手方向とする略直方体形状の貯留部24bが設けられている。そして、貯留部24bの開口部分を覆うように散水孔を有する図示しない散水板(図3、図10〜図13を参照)が設けられている。そのため、本実施形態の水栓20は、整流吐水と、シャワー吐水と、を行うことができる。整流吐水と、シャワー吐水と、の切替えは、例えば、水栓20の先端に設けられた図示しない切替部手段によって、行うことができる。この切替部手段は、水栓20の先端や根元、カウンター上面62に設けられていてもよい。
後述するように、シャワー吐水部24から放出された直後の水の吐水流断面は、例えば、散水板の傾斜した方向が長手方向となる縦長形状を呈している。そして、前述したように、水栓20の上方部はカウンター上面62に対して傾斜角度θだけ傾斜しているので、シャワー吐水部24から放出される水もカウンター上面62に対して斜め方向からシンク底面34に向けて吐水されることになる。そのため、カウンター上面62を横切る際の吐水流の水平方向断面は、カウンター前縁64に対して垂直な方向を長手方向とする縦長形状を呈することになる。
整流用配水管23は、水栓20の右側方寄りを通って、整流貯留部22bの右側方に接続されている。一方、シャワー用配水管25は、水栓20の左側方寄りを通って、整流貯留部22bとシャワー貯留部24bの間を通過し、シャワー貯留部24bの上方に接続されている。すなわちシャワー貯留部24bは、上方に給水流路が接続されている。
水栓20の左右方向の幅寸法L2は、洗浄物の大きさに応じて適宜変更することができる。例えば、洗浄する対象は一般的に手、包丁や鍋などの調理器具、あるいは食材などであるが、幅寸法L2とともに後述する横幅寸法L5(図3を参照)を長くしすぎると小さなものを洗う際に余分に水を消費してしまうおそれがある。一方、幅寸法L2とともに後述する横幅寸法L5を短くしすぎると、狭い範囲にしか水がかからないため、大きなものを洗浄する際に手を大きく動かさなければならなくなる。
この場合、例えば、調理中頻繁に行われる手や包丁などを洗うことを考慮に入れて水栓20の左右方向の幅寸法L2を設定するようにすることができる。例えば、幅寸法L2を約40mm程度、横幅寸法L5を約20mm程度とすれば、手や包丁の刃の部分を左右方向に移動させること無く短時間で「簡単洗い」を行うことができる。ただし、例示をした寸法に限定されるわけではなく、洗浄物の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
図3は、シャワー吐水部に設けられる散水板を例示するための模式図である。
なお、図3(a)は、散水板を正面から眺めた場合の模式図であり、図3(b)は、散水孔群を例示するための模式図である。
図3に例示をする散水板26は、貯留部24bの開口部分を覆うようにして水栓20のシャワー吐水部24に固定される。散水板26には、複数の散水孔群27が設けられている。また、散水孔群27は、シャワー吐水流を形成させるための散水孔28を複数有している。図3(a)に示すように、例えば、散水孔群27を5行×2列に配列することができる。また、図3(b)に示すように、例えば、散水孔28を同心円上に2列に配列することができる。この場合、例えば、散水孔28の数を合計約30個程度とすることができる。そのため、貯留部24bを介して散水孔28から水を放出させることができ、放出された水はシャワー吐水流となってシンク底面34に着水するようになっている。
図4は、洗浄対象の形状を例示するための模式図である。なお、図4(a)は、一般的な包丁を例示するための模式図であり、図4(b)は、使用者の手を例示するための模式図である。
本発明者の得た知見によれば、一般的な包丁の刃の長さL10は170mm程度である。また、刃の幅L11は30mm程度である。また、20〜69歳の人の手の幅寸法L12は、男性では、最大114.6mm程度、最小90.4mm程度、平均102.6mm程度である。また、女性では、最大103.1mm程度、最小80.8mm程度、平均91.8mm程度である。また、手の長さ(指先から手首までの長さ)L13は、男性では、最大197mm程度、最小165.6mm程度、平均181m程度である。また、女性では、最大181.2mm程度、最小154.4mm程度、平均167.3mm程度である。
ここで、散水孔28が設けられる領域の横幅寸法L5と縦幅寸法L6とについて説明をする。なお、図3に示すように、横幅寸法L5は、穿設された散水孔28のうち、最左端と最右端に設けられたものの外縁の最も外側に位置する部分間の寸法である。また、縦幅寸法L6は、穿設された散水孔28のうち、最上端と最下端に設けられたものの外縁の最も外側に位置する部分間の寸法である。
システムキッチン10に設けられるシャワー吐水部24から吐水されるシャワー吐水流としては、包丁などの調理器具や使用者の手に対して水を広範囲に放出できることが好ましい。包丁の刃や使用者の手の全体に吐水させることができれば、素早く「簡単洗い」を終了させることが可能となる。
その中でも幅寸法が短い包丁に対して、水が包丁の幅の略全体わたって放出され、かつ包丁に当たらずにシンク30に直接着水することを抑制することが好ましい。これは、洗浄物に当たらず無駄になる水を抑制するためである。本発明者の得た知見によれば、一般的な包丁の刃の幅寸法L11(30mm程度)に対して横幅寸法L5を20mm程度とすれば、放出された水が包丁に当たらずにシンク30に直接着水することを抑制することができる。これにより、放出された水を洗浄のための水として有効に利用することができ、洗浄に使われない無駄な水を削減することができる。
また、図4において例示をしたように、調理器具や手などの洗浄物は170mm程度の長さを有するものが多い。しかしながら、これらの洗浄物の略全長に一度に水を放出すると、大流量の水を消費してしまう。本発明者の得た知見によれば、洗浄物の全長の略半分の長さに対して水を放出し、洗浄物上を流れる水によって残りの略半分の長さを洗い流すようにすれば、水の使用量を抑制しつつ洗浄効果を向上させることができる。
ここで、使用者が「簡単洗い」を行う場合、洗浄物をシャワー吐水部24(散水孔28)から吐水された水40の進行方向に対して、洗浄物を略垂直に差し出すと、大きな水跳ねが発生してしまう。そのため、使用者はシャワー吐水部24から吐水された水40の進行方向に対して、斜めに洗浄物を差し出す。斜めに差し出されることで、縦幅寸法L6を洗浄物の全長の略半分の長さよりも短くしても、洗浄物上においては洗浄物の全長の略半分の長さ程度に水があたるようになる。本発明者の得た知見によれば、例えば、縦幅寸法L6を65mm程度とすれば、70mm程度から85mm程度の長さに相当する水を洗浄物にあてることができる。その結果、洗浄物の広範囲に水を当てることができるとともに、水の使用量を抑制することができる。
ただし、散水孔28が穿設けられる領域の横幅寸法L5と縦幅寸法L6は例示をした寸法に限定されるわけではない。この場合、縦幅寸法L6が横幅寸法L5よりも大きくなるようにすれば、洗浄物の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
また、散水孔28の孔の軸線を散水板26の中心側から外側に向けて形成するようにすれば、拡散するような吐水を行うことができる。そのため、横幅寸法L5や縦幅寸法L6を小さくしながらも、同一の吐水範囲の吐水を得ることもできる。その場合、散水板26の寸法を小さくできるため、スペース効率が向上する。
「簡単洗い」や「丁寧洗い」などの洗い動作を行う際には、吐水範囲の広いシャワー吐水流とすることが好ましい。この場合、前述したように、カウンター上面62に対して傾斜した方向にシャワー吐水流が形成されれば、水栓20で視界を遮られることがないため、洗浄面が見やすく、調理台の前に立った状態からでも吐水に手が届きやすくなり、作業性がよい。また、傾斜した方向にシャワー吐水流が形成されれば、水平面内における直接飛散する面積を大きくすることができる。また、洗浄物の全長方向に対して効率よく水を当てることができるので、水の消費量を抑制することができる。また、水栓20の、シンク30の上方への出っ張りも少なくすることができるので、使用者はシンク30内およびその上方の領域を広く使用することができる。
そのため、洗い動作を行う際には、カウンター上面62に対して傾斜した方向にシャワー吐水流が形成されるようなシャワー吐水流の形態とすることが好ましい。
次に、吐水部の内部構造、特にシャワー貯留部24bと、シャワー用配水管25の接続について説明する。
図5、図6は、吐水部の内部を通過する水の様子を例示するための模式図である。図5(a)、(b)は、比較例にかかる水栓を例示する模式図であり、シャワー用配水管が貯留部の下方部に接続された場合の、吐水部の内部を通過する水の様子を表している。図5(a)は、吐水されている状態の水の様子を表す模式図であり、図5(b)は、止水した後の水の様子を表す模式図である。
また、図6(a)、(b)は、本実施形態にかかる水栓を例示する模式図であり、シャワー用配水管が貯留部の上方部に接続された場合の、吐水部の内部を通過する水の様子を表している。図6(a)は、吐水されている状態の水の様子を表す模式図であり、図6(b)は、止水した後の水の様子を表す模式図である。
吐水される前は、貯留部24bおよびシャワー用配水管25は空気で満たされている。そして吐水が行われると、水が供給されることにより、徐々に空気から水への置換が起こっていくが、図5(a)に示すように、吐水中においても、貯留部24bには、気泡として、空気が残存している。シャワー用配水管25が貯留部24bの下方部に接続された場合、気泡は重力の影響と、水の流れによって、貯留部24bの上方部に集まるが、貯留部24bの上方に向かうに従い、シャワー用配水管25から遠ざかるため、水の流速は次第に下がっていき、気泡を散水孔28から排出しづらくなる。よって、貯留部24bには、気泡が多く残存し、止水操作を施し、通水を止めた場合、図5(b)に示したように、吐水部内部の気泡は、吐水部の上方部に集まり、上端の散水孔を介して、大気と連通する。したがって、大気は、上端の散水孔を介して、貯留部24b吐水部内部に自由に出入りできるようになる。
一方、水が満たされた部分の散水孔には、水面と、散水孔との鉛直方向の高低差に相当する水圧が、吐水部内部から外側に向かって働いており、また散水孔に水膜が形成されている場合には、水膜に表面張力が働き、外側から吐水部内部に向かって、内部の水が排出されるのを抑制するように働いている。
このとき、散水孔下端に働く水圧Pは次式で表される。
P=ρgΔh ・・・(式1)
ここで、ρは水の密度、gは重力加速度であり、Δhは水面と、散水孔下端と、の鉛直方向の高低差である。したがって、高低差Δhが大きくなるほど、水圧Pは大きくなる。
また、水膜に働く表面張力F1は、次式で表される。
F1=γcosθ・2πR/πR ・・・(式2)
ここで、γは水の表面張力、θは水の接触角であり、Rは散水孔の半径である。したがって、散水孔の半径Rが小さくなるほど、表面張力F1は大きくなる。ただし、散水孔の形状は、円形に限定されるわけではなく、矩形、三角形等任意の形状を選択することができる。その場合、水膜に働く表面張力F1は、(式2)における2πRを任意の形状の周の長さに置き換え、さらに(式2)におけるπRを任意の形状の面積に置き換えればよい。
水圧Pが、表面張力F1より、大きい場合、貯留部24bに残存した水は、滴下する。
これに対し、図6(a)に示すように、シャワー用配水管25が貯留部24bの上方部に接続された場合、吐水部内部に残存した気泡は、重力により、吐水部の上方部に集まろうとするが、水の流れは、吐水部の上方部から下方部に向かって流れているため、結果として、散水孔28から、気泡は排出される。よって、吐水部内部には、気泡の残存が少なくなり、止水操作を施し、通水を止めた場合、図6(b)に示したように、貯留部24bに残存した気泡は上方部に集まるが、量が少ないため、上端の散水孔には水膜が形成され、大気と連通することはない。
このとき、上端の散水孔の水膜に働く表面張力F2は、次式で表される。
F2=γcosθ・2πr/πr ・・・(式3)
ここで、rは上端の散水孔の半径である。したがって、上端の散水孔の半径が小さいほど、水膜に働く表面張力は大きくなる。この場合、表面張力は、貯留部24bから外側に向かって働いており、大気が貯留部24bに流入しようとするのを、妨げている。すなわち、図5(b)に示すように、散水孔の上端が大気と連通している場合、貯留部24bと外側で空気が自由に出入りできるため、水と空気との入れ替えが容易に起こり、吐水部内部の水が外側に滴下するが、図5(b)に示すように、散水孔の上端が水膜で塞がっている場合、水膜に働く表面張力により、大気の流入を阻害するため、水と空気との入れ替えがしづらくなり、吐水部内部の水が外側に滴下するのを防ぐことができる。つまり、水圧Pが、表面張力F1と表面張力F2の和F1+F2より大きい場合、吐水部内部に残存した水が滴下し、(式3)で示した表面張力F2の分だけ、水が滴下するのが抑制される。
次に、吐水部の内部構造の変形例について例示をする。
図7は、水栓の吐水部の断面を例示するための模式図である。水栓201は、その先端近傍に設けられた整流吐水部221と、整流吐水部221の下方に設けられたシャワー吐水部241と、を備えている。また、水栓20aは、吐水切替部291と、吐水切替部291へ水を導くための配水管211と、吐水切替部291からシャワー吐水部241へ水を導くためのシャワー用配水管251と、を備えている。
図7に示すように、吐水切替部291を、整流吐水部221の後方側に設けることにより、シャワー配水管を251、図2に例示したシャワー配水管25より、短くすることができる。このため、図2に例示した吐水部に比べ、吐水部を小さくすることができる。
図8は、水栓の吐水部の断面の変形例を例示するための模式図である。図8に示すように、水栓202のシャワー用配水管252には、テーパ部が設けられて、貯留部の上方部に接続されている。より滑らかに貯留部に接続することで、圧損が削減される。またシャワー吐水が行われる場合には、シャワー用配水管252が接続される貯留部壁面での、剥離が抑制されるため、貯留部の上方部に残存する気泡の排出がより促進される。このため、貯留部内の気泡の残存が少なくなり、止水操作を施し、通水を止めた場合、上端の散水孔に水膜が形成されやすくなり、止水操作後の、吐水部からの水の滴下が抑制される。
図9は、水栓の吐水部の変形例を例示するための模式図である。図9(a)は、吐水部の断面の模式図であり、図9(b)は、貯留部に設けられているメッシュを正面から眺めた場合の模式図である。
図9(a)に示したように散水板の背面側、かつ下方側の貯留部にメッシュ263が設けられており、メッシュ263と散水板260は接触している。またメッシュ263の目開きは、散水板下方部の散水孔の直径より、小さくなっている。この場合、水膜は下方部の散水孔ではなく、メッシュ部分に形成される。そして、メッシュの方が、単位面積あたりに働く表面張力が大きくなる。これは(式2)における表面張力F1が大きくなることに相当し、このため、吐水部からの水の滴下が抑制される。
ただし、散水板の背面側の全面に、メッシュを設けた場合も、同様の効果が得られ、(式2)における表面張力F1は大きくなる。しかしながら、全面にメッシュを設けた場合、貯留部に残存した気泡の排出も抑制され、貯留部の全てを水で満たすことが難しくなることから、メッシュは、散水板背面側の一部分、例えば上下方向の下側半分程度設けることが好ましい。
なお、吐水部から水が吐出される場合、メッシュを通過した水は、散水孔で再び合体した後、吐出されるため、吐出後、粒化された水滴の粒径は、メッシュの大きさには依存しない。散水孔の孔径が大きい場合、より大きな水滴が洗浄物に衝突するため、衝撃力が大きくなり、洗浄性が向上する。
図10は、シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。図10(a)は、散水板を正面から眺めた場合の模式図であり、図10(b)は、図10(a)におけるA−A矢視断面を表す模式断面図である。
図10(a)に示すように、散水板26aには、散水孔28aが設けられている。この場合、散水孔は、21行×8列に配列されている。散水孔28aが設けられている領域の横方向(図の左右方向)の寸法L5aは、例えば20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L6aは、例えば、65mm程度とすることができる。散水板の下部は、孔径の等しい散水孔が11行配列されており、例えば、散水孔の孔径を0.6mm程度とすることができる。また、散水板の上方部には、散水孔の下部よりも、孔径の小さい散水孔が10行配列されており、例えば、散水孔の孔径を0.4mm程度とすることができる。この場合、散水孔に水膜が形成されている場合、上端の水膜に働く表面張力は、下端の水膜に働く表面張力の1.5倍となる。これは、(式3)における表面張力F2が大きくなることに起因している。したがって、上端の散水孔からの、大気の流入が起こりにくくなり、貯留部内部の大気と残存した水の置換が抑制されるため、止水操作後の、吐水部からの水の滴下が抑制される。
さらに、散水板26aの下部に孔径の大きな散水孔が配列されており、前述したように、より大きな水滴が洗浄物に衝突するため、衝撃力が大きくなり、洗浄性が向上する。大きな水滴の場合、水跳ねが生じるおそれがあるが、散水板26aの上方部に孔径の小さな散水孔が配列されており、この小さな散水孔から吐出されたシャワー吐水に遮られるため、調理者側に飛び散ることもない。
また、図10(b)に示すように、散水板26aに設けられた散水孔28aの軸線方向は、散水板の法線方向に対して、上方向に、ω傾いている。このようにすることで、散水板を傾け、斜めに吐水する場合においても、散水孔下端の水膜に働く水圧を抑制することができる。すなわち、散水孔の軸線方向が傾いているため、散水孔の軸線方向が、散水板に対して垂直方向に向いている場合に比べ、水面と、散水孔下端の水膜と、の鉛直方向の高低差を少なくし、同じ角度で吐水させることができる。これは、(式1)における△hが小さくなっていることに相当し、散水孔下端の水膜に働く水圧が減少するため、断続的な水の滴下が抑制される。
なお、上方部の散水孔の孔径を小さくすることと、散水孔の軸線方向を上方向に傾けること、とは、異なる技術思想を持った工夫であり、図10に示す散水板26aのように、同時に行ってもよいし、また別々に行ってもよい。
また例えば、複数の散水孔を有する湾曲した散水板において、散水孔のそれぞれの軸線方向を、湾曲面の軸線方向に向けることで、(式1)における△hを小さくすることもできる。
さらに、シャワー吐水部24に固定される散水板の変形例について例示をする。
図11〜図13は、シャワー吐水部24に固定される散水板の変形例を例示するための模式図である。
図11に示すように、散水板26bには、図3で例示した散水孔群27に換えて、散水孔群27bが、設けられている。この場合、散水孔群は、複数ではなく、1つのみであり、散水孔の数は、例えば250個程度、散水孔の直径を0.4mm程度とすることができる。
散水孔群が設けられている領域の横方向(図の左右方向)の寸法L5bは、例えば、20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L6bは、例えば、65mm程度とすることができる。また、上方の横方向(図の左右方向)の寸法L30bは、例えば3mm程度とすることができ、下方の孔の空いていない空間の高さL40bは、例えば30mm程度とすることができる。
散水孔群27bを備えた散水板26bを用いれば、長手方向に、広い範囲に吐水をかけることができる。散水孔群が設けられる領域は、図3に例示をした散水板26と比べ、漸次幅が狭くなる形状になっているため、より着水後の水膜が広がるようになるため、効率よく洗浄を行うことができ、水の使用量を抑制することができる。
図12は、シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。
なお、図12(a)は、散水板全体を正面から眺めた場合の模式図であり、図12(b)は、散水孔群を例示するための模式図である。
図12(a)に示すように、散水板26cには、散水孔群27cが設けられている。この場合、散水孔群は、複数であり、例えば、1行×12列に配列することができる。
散水孔群が設けられている領域の横方向(図の左右方向)の寸法L5cは、例えば、20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L6cは、例えば、65mm程度とすることができる。また、散水孔群27cの縦方向(図の上下方向)の間隔の寸法L7cは、例えば、5mmとすることができる。
また、図12(b)に示すように、例えば、散水孔群を横方向(図の左右方向)が長手方向とする偏平形状にし、図の上方に向かって凸状形状にすることができる。散水孔群27cの横方向(図の左右方向)の寸法L50cは、例えば、20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L60cは、例えば、9mm程度とすることができる。
この場合、散水孔群は、横方向を長手方向とする偏平形状であるが、散水孔群が、縦方向に配列されているため、図3に示したように、縦方向を長手方向とする偏平形状の散水孔群と同様の効果が得られる。
図13は、シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。なお、図13(a)は、散水板全体を正面から眺めた場合の模式図であり、図13(b)は、散水孔群を例示するための模式図である。
図13(a)に示すように、散水板26dには、散水孔群27dが設けられている。この場合、散水孔群は、複数であり、例えば、1行×12列に配列することができ、上から7列の散水群の散水孔直径を、例えば、0.4mm程度とすることができ、下から5列の散水孔群の散水孔直径を、例えば、0.5mm程度とすることができる。
散水孔群が設けられている領域の横方向(図の左右方向)の寸法L5dは、例えば、20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L6dは、例えば、65mm程度とすることができる。また、散水孔群27dの縦方向(図の上下方向)の間隔の寸法L7dは、例えば、5mmとすることができる。
また、図13(b)に示すように、例えば、散水孔群を横方向(図の左右方向)が長手方向とする偏平形状にし、図の上方に向かって凸状形状にすることができる。散水孔群27dの横方向(図の左右方向)の寸法L50dは、例えば、20mm程度とすることができ、縦方向(図の上下方向)の寸法L60dは、例えば、9mm程度とすることができる。
この場合、散水孔群は、横方向を長手方向とする横長形状であるが、散水孔群が、縦方向に配列されているため、シャワー吐水部24から放出された直後の水の吐水流断面は、上下方向を長手方向とする縦長形状を呈している。下方向の散水孔群の散水孔直径は、大きくなっており、より大きな水滴が衝突するため、衝撃力が大きくなり、さらに洗い易くなる。大きな水滴の場合、水跳ねが生じるおそれがあるが、上方向に小さい散水孔直径の散水孔が配列されているため、上方向の散水孔から吐出されるシャワー吐水流に遮られ、調理者側に飛び散ることもなくなる。
「簡単洗い」や「丁寧洗い」などのいずれの洗い動作であっても、水栓から吐水された水が、洗浄物に当たって跳ね返る現象、いわゆる「水跳ね」を減少させることが好ましい。本発明者らは、水跳ねについて、事前に検討を行っている。
図14〜図16は、着水面に対し垂直に吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。
また、図17〜図19は、着水面に対し斜め方向から吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。
尚、図15(a)、図18(a)は一本の水流を例示するための模式図であり、その他の図は複数の水流を例示するための模式図である。
図14〜図16に示すように、水栓20から吐水された水40が着水面100に対して垂直に着水すると、水40は、あらゆる方向に対して略同等に流れようとする。すなわち、水40は着水面100の全体に広がろうとする。一本の水流しか存在せず、かつ着水部に障害物が存在しない場合、水40は着水部から遅延なく排出される。着水部とは、水40が着水する場所のことである。しかしながら、シャワー吐水のように複数の水流の吐水が行われた場合には、図14や図15(b)に示すように隣り合う水流との間の領域44において、互いの進行方向を打ち消し合うように水40が流れようとする。その結果、水40は流れを失い、その場に滞留しようとするか、もしくは上方にその方向を変えられ、滞留する水がちぎれ、水滴として、飛び散ろうとする。水滴として飛び散るほどのエネルギーを有さない場合においても、領域44の水面は著しく乱れ、乱れは近傍に伝播される。そして、図16に示すように、乱れが伝播され、波を打った水40bの水面に略垂直方向から水40が着水すると、さらに乱れが増幅され、波が大きくなり、ある曲率以上に変形された水面は、水滴として周囲に放出される。
この場合、隣り合う水流との間の領域48においては、跳ねた水滴どうしが合体し、大きな水滴となることもあれば、水滴どうしが衝突によりさらに細かな水滴に分裂することもあり、その態様はさらに複雑となる。さらに、滞留した水40bに対して垂直に着水した水40は、一方向に水跳ねを生じさせるわけではなく、あらゆる方向に水跳ねを生じさせる。そのため、例えば、領域50や領域52において生じた水跳ねは打ち消されることはない。
これに対し、図17〜図19に示すように、水栓20から吐水された水40が着水面100に対して斜め方向から着水すると、水40は略進行方向である矢印C、矢印D、矢印Eの方向に流れようとする。すなわち、着水面に略一方向に流れる水の流れを有する水膜が形成されることになる。
また、この場合、略進行方向に向かうエネルギーが大きいため、着水した大部分の水40が略進行方向に流れようとする。この場合、同一の方向に向かう流れとなり、水面の乱れが軽減されるため、水滴として放出される確率が低くなる。また、図19に示したように、水の流れができ、安定している水面40bに、斜め方向から水40が着水すると、流れと同一方向であることから、衝突の衝撃が緩和され、水面の乱れが抑制されるため、水跳ねが軽減される。また、図18(b)に示したように、水40は略一方向(略進行方向)に合流するようにして流れる。すなわち、吐水口から着水面100(例えば、シンク底面34)に対して傾斜した方向に吐水流を放出することで、着水面100を略一方向に流れる水の流れを形成させることができる。尚、この場合においても、図18に示すように、隣り合う水流との間の領域46においては、干渉し合い、水面が乱れ、水跳ねが生じることもあるが、進行方向に向かうエネルギーの方が大きいため、干渉する方向に向かうエネルギー量は小さくなる。そのため、水面の乱れも小さくなり、水跳ね量は少なくなる。
ここで、本発明者の得た知見によれば、着水面100に対し斜め方向から水40を着水させることで生じさせた水40の流れの上に次の水40を着水させるようにすれば、水跳ねを抑制することができる。この原因は、必ずしも明らかではないが以下のことが考えられる。すなわち、斜め方向から水40を着水させることで着水時の衝撃を緩和することができる。また、すでに着水している水40の上に着水する場合においても、進行方向が一致するため、水面の乱れが生じにくい。尚、水跳ねを抑制することができるとともに、着水音をも抑制することができる。また、斜め方向から水40を着水させることで一方向の水の流れを強制的に作り出すことができる。そのため、水勢を高めることができるので滞留する水40の量が少なく、すでに着水している水40が水跳ねを起こすことを抑制することができる。
次に、傾斜角度θと水跳ねとの関係を説明する。
図20は、水跳ね試験の概要を例示するための模式図である。尚、図20(a)は、水跳ね試験の様子を例示するための模式断面図、図20(b)は、図20(a)における矢視方向から見た模式平面図である。
図20(a)に示すように、カウンター上面62に対して15°傾斜させたアクリル板(縦500mm×横500mm)をシンク30内に挿入し、カウンター上面62の高さを横切る水40を受けるようにした。そして、図20(b)に示すように、水膜(滞留する水)が形成されていない領域110aに水跳ねした水滴量を測定した。この場合、吐出時間は150秒としている。また、傾斜角度θを0°〜90°の範囲で変化させて、水跳ねした水滴量を測定している。尚、アクリル板の傾斜角度15°は、洗浄物を差し出す角度を想定したものである。発明者らが得た知見によれば、「簡単洗い」で、手や洗浄物を洗う動作では、先端側を低くして洗っていることが多い。これは腕に水が伝うのを嫌うことや、関節にかかる負担を減らすなどの心理が働いているものと思われる。なお、本発明者の調査によれば、身長162±2cmの被験者6人がキッチン用水栓20に差し出した例えば包丁などの角度の平均値は、シンク上面32に対して約32度程度であり、15°は被験者6人の中で、差し出した例えば包丁などの角度の最も低い角度である。
図21は、傾斜角度θと水跳ねとの関係を例示するためのグラフ図である。
尚、横軸は傾斜角度θを表し、縦軸は図20に例示をした水跳ね試験により測定した水滴量を水跳ね量として表したものである。
図21に示すように、図20に例示をした水跳ね試験によれば、傾斜角度θが30°以下では、水跳ね量は略一定で多いことが分かる。これは図14〜16に関して前述したように、水が洗浄物に対して、略垂直に着水するため、着水面で水の滞留が起こり、水面が乱れるためである。
これに対し、傾斜角度θが40°以上では、水跳ねが単調的に減少していることが分かる。これは図17〜19に関して前述したように、水が洗浄物に対して、傾斜して着水した場合は、着水した水は、遅延なく排出され、水面の乱れが抑制されるためである。
なお、傾斜角度θが80°以上では、水面の乱れの抑制が頭打ちとなるため、水跳ね量の減少効果も、飽和し始める。
これにより、40°以上の場合には、水跳ねの減少効果が大きくなることが分かる。
また、傾斜角度を大きくしていくと、水の流速、流量を変えた場合の、吐水の軌跡の変動が大きくなり、作業効率が悪くなる恐れがあるのに加え、吐水がより遠くまで到達することからシンク30の前後方向の寸法が大きくなりすぎる恐れがあることから、80°以下が好ましい。
図22は、シャワー吐水の軌跡を例示するための写真である。
図22に示す吐水の軌跡は、傾斜角度θが55°、流速が2.1m/secの場合である。この場合のシンク底面34に対する着水角度αは55°程度である。尚、流速が2.1m/secは、システムキッチンにおいて一般的な洗浄作業をする場合を考慮した値である。図22に示したように、シャワー吐水部から斜めの方向に幅広に吐水されるため、洗浄物を素早く洗うことができる。またシンクの手前に着水するため、調理台の前に立った状態からでも、楽な姿勢で吐水に手を伸ばすことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、システムキッチン10およびキッチン用水栓20などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや、キッチン用水栓20および散水板26の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。またシステムキッチンとは、少なくとも吐水口を有するキッチン用水栓と、シンクを備えた調理作業を行うための設備機器を意味するものとする。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
本発明の実施の形態に係るシステムキッチンを例示するための模式斜視図である。 水栓の吐水部を例示するための模式図である。 シャワー吐水部に設けられる散水板を例示するための模式図である。 洗浄対象の形状を例示するための模式図である。 シャワー用配水管が貯留部の下方に接続された場合の、吐水部の内部を通過する水の様子を例示するための模式図である。 シャワー用配水管が貯留部の上方に接続された場合の、吐水部の内部を通過する水の様子を例示するための模式図である。 水栓の吐水部の断面を例示するための模式図である。 水栓の吐水部の断面の変形例を例示するための模式図である。 水栓の吐水部の変形例を例示するための模式図である。 シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。 シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。 シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。 シャワー吐水部に設けられる散水板の変形例を例示するための模式図である。 着水面に対し垂直に吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 着水面に対し垂直に吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 着水面に対し垂直に吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 着水面に対し斜め方向からに吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 着水面に対し斜め方向からに吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 着水面に対し斜め方向からに吐水がされた場合の水跳ねを例示するための模式図である。 水跳ね試験の概要を例示するための模式図である。 傾斜角度と水跳ねとの関係を例示するためのグラフ図である。 シャワー吐水の軌跡を例示するための写真である。
符号の説明
10 システムキッチン、
20、201、202、203 水栓、
211、配水管
22、221、222、223 整流吐水部、
23 整流用配水管、
24、241、242、243 シャワー吐水部、
24b 貯留部、
25、251、252、253 シャワー用配水管、
26、260、26a、26b、26c、26d、 散水板、
263 メッシュ
27、27b、27c、27d 散水孔群、
28、28a 散水孔、
291、292 吐水切替部
30 シンク、
32 シンク開口部、34 シンク底面、
36 シンク前面、37 シンク左側面、38 シンク後面、39 シンク右側面、
40、40b 水
44、46、48、50、52 領域
60 カウンター、
62 カウンター上面、
64 カウンター前縁
100 着水面
θ 傾斜角度、

Claims (5)

  1. シャワー吐水部を備えた水栓であって、
    前記シャワー吐水部は、複数の散水孔を有する散水板を有し、
    前記散水板は、水平方向に対し傾斜した方向に向けて設置され、
    前記複数の散水孔は、前記散水板の傾斜した方向が長手方向となるように縦長に穿設され、
    前記散水板の背面側には貯留部が設けられ、
    前記貯留部は、上方部に給水流路が接続されており、
    前記給水流路と、前記貯留部との接続部は、前記貯留部に向かうにつれ流路断面が広がるように、テーパ部が設けられていることを特徴とする水栓。
  2. 前記複数の散水孔は、第一の散水孔と第二の散水孔を備え、
    前記第二の散水孔は、前記第一の散水孔よりも小さな直径を有し、
    少なくとも、上端の散水孔は、前記第二の散水孔であることを特徴とする請求項記載の水栓。
  3. 前記散水板の背面側かつ下方の一部に、前記散水孔より開口面積の小さいメッシュが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の水栓。
  4. 前記散水孔の少なくとも一部は、
    水平面と、前記散水孔が設けられた散水板表面の法線方向とがなす角度よりも、
    水平面と前記散水孔から吐水される水の吐水方向とがなす角度のほうが小さくなるように、
    前記散水板に穿設されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の水栓。
  5. シンクと、
    前記シンクに吐水流を放出するよう配置された
    請求項1乃至のいずれか一項に記載の水栓と、
    を備えたことを特徴とするシステムキッチン。
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