JP5476992B2 - トリフェニレン類の製造方法及び当該製造方法により得られる結晶 - Google Patents

トリフェニレン類の製造方法及び当該製造方法により得られる結晶 Download PDF

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Description

本発明は、例えばディスコチック液晶等の機能性材料の原料として有用なヒドロキシトリフェニレン類の製造方法に関し、更に詳しくは、1,2−ジヒドロキシベンゼン類(以下、単にカテコール類と略記する場合がある。)を原料とするヒドロキシトリフェニレン類の製造方法及び当該製造方法により得られる結晶、並びに2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の新規な結晶に関する。
ディスコチック液晶は、一般的に円盤状の中心母核とその母核から放射状に延びる側鎖を有し、その構造ゆえに特異な液晶性を示すことから、近年液晶分野に於いて様々な研究がなされている。ディスコチック液晶の中心母核となる化合物としては、例えばベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、トリフェニレン誘導体、シクロヘキサン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられるが、中でもトリフェニレン誘導体は、光学的機能性素子の形成に有効なディスコチックネマチック相を形成しやすいことから、近年注目を集めている化合物である。
このトリフェニレン誘導体の中でも、特に2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンは、6つのヒドロキシル基に適当な側鎖を容易に導入できることなどから、従来より種々の製造方法が報告されている。
具体的には、例えば1,2−ジアルコキシベンゼンを出発原料として、一旦化学的に安定な2,3,6,7,10,11−ヘキサアルコキシトリフェニレンを合成した後(例えば特許文献1、非特許文献1等)、三臭化ホウ素やヨウ化水素等で脱アルキル化することにより(例えば特許文献2、非特許文献2等)、目的とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを合成する方法が知られている。しかしながら、これらの方法では三量化工程と脱アルキル化工程の2工程を要するばかりでなく、原料である1,2−ジアルコキシベンゼンが比較的高価であること、脱アルキル化工程に用いる三臭化ホウ素やヨウ化水素の腐食性が高いことなどから、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの工業的製法としては不向きであった。
このような問題点を解決する方法として、原料として1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)を用い、直接2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを合成する方法が試みられている(例えば特許文献3、非特許文献1等)。具体的には非特許文献1では、無水塩化鉄(III)と9.5倍モル以上の硫酸の存在下でカテコールを反応させることにより、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの鉄錯体を得ている。しかしながら、この鉄錯体から2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを単離したとの記述はなされていない。また、特許文献3では、塩化鉄(III)の水和物の存在下でカテコールを反応させ、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの鉄錯体及び/又はキノン体を得た後、これを還元処理することにより、目的とする2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを合成している。このように、これらの方法では原料としてカテコールを用い、脱アルキル化工程を要しないことから生産性の問題と腐食性の問題は解決しているものの、高純度の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを得るためには、カテコールの三量化工程の他に還元工程を要するため、工程数の問題は未だ解決されておらず、工業的製法としては決して有利なものではなかった。
このような状況下、安価な原料を用いることができるばかりでなく、ヘキサアルコキシトリフェニレンに於けるアルコキシ基からの脱アルキル化などの脱保護や、ヘキサヒドロキシトリフェニレンの鉄錯体及び/又はキノン体の還元といった煩雑な工程を経ずに、より簡便に純度の高い2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを合成する製造方法の開発が望まれていた。
また、最近では2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶形に係る技術として、特許文献4に当該1水和物のA型結晶が開示されている。該A型結晶は、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン結晶のアセトン−水混合溶媒から特定の温度条件でアセトンを減圧下に留去することによって得られる約139℃に熱分解温度(Td)を有するもので、熱安定性に優れることが記載されている。また、当該特許文献4には、従来公知の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方法によって得られる結晶(特許文献4に於けるB型結晶)は、すべて熱安定性に乏しい結晶であることが記載され、当該B型結晶を組み込んだ機器は、耐久性に乏しく長期に亘って所望の性能を発揮できなくなる不都合があることが記載されている。このことからも明らかなように、従来の製造方法で得られたB型結晶は、満足のいく性能を有するものではなかった。
このような状況下、熱安定性の乏しい2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶から、少なくとも当該1水和物のA型結晶に匹敵する熱安定性を有するものへの改良、すなわち熱安定性が良好な2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物が望まれると共に、当該化合物の製造方法の確立が望まれていた。
特開平7−330650号公報 特開平8−119894号公報 特開平9−118642号公報 WO2005/090275号公報 Synthesis, 477, 1994 J. Mater. Chem., 1992, 2, 1261
本発明は、上記した如き状況に鑑み成されたもので、安価な原料を用いることができるばかりでなく、脱アルキル化などの脱保護や還元等の煩雑な工程を必要としない工業的生産に有利な、純度の高いヒドロキシトリフェニレン類の製造方法を提供し、更には、ヒドロキシトリフェニレン類の結晶の製造方法を提供することにある。
また、本発明は、上記の製造方法によって得られる、熱安定性が良好な2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の新規な2種類の結晶(以下、B’型結晶及びC型結晶と略記する場合がある。)を提供することにある。
本発明は、一般式(1)
Figure 0005476992
(式中、2つのRは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。)で示される化合物を、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させることを特徴とする一般式(2)
Figure 0005476992
(式中、6つのRは前記に同じ。)で示される化合物の製造方法の発明である。
また、本発明は、カテコールを3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56〜95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより得られる、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶の発明である。
更に、本発明は、カテコールを3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5〜50℃の温度範囲で水を加えることにより得られる、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶の発明である。
更にまた、本発明は、CuKα特性X線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、26.4に主ピークを有し、かつ、10.5〜12.5の間にピークを有さない、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶の発明である。
本発明の製造方法によれば、一般式(1)で示される化合物(カテコール類)を原料とするため生産性が高いばかりでなく、また、脱アルキル化などの脱保護や還元等の煩雑な工程を必要とせず1工程で合成が可能であり、更には、有機過酸化物等の酸化剤を使用しないため環境負荷が少なく、より簡便に純度の高い2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン類を製造することが可能となる。
また、カテコールを原料に上記の方法で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、特定の条件で再結晶させて得られる本発明の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の2種類の結晶、すなわち、B’結晶及びC型結晶は、従来の方法によって得られたB型結晶と比較して、熱安定性に優れる結晶であることから、本発明の結晶が機能性材料の原料として組み込まれた機器は、安定性(耐変性)に優れ、長期に亘って所望の性能を発揮できる。
実施例4で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶のX線回折スペクトルを示す図である。 実施例5で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶のX線回折スペクトルを示す図である。 実施例4で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶の熱分析(TG/DTA)データを示す図である。 実施例5で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶の熱分析(TG/DTA)データを示す図である。 比較例1で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶のX線回折スペクトルを示す図である。
一般式(1)及び(2)に於けるRで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でもフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、その中でも塩素原子、臭素原子がより好ましい。
一般式(1)及び(2)に於けるRで示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状或いは分枝状の何れでもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましく、その中でもメチル基がより好ましい。
一般式(1)及び(2)に於けるRで示される炭素数1〜3のアルコキシ基としては、直鎖状或いは分枝状の何れでもよく、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましく、その中でもメトキシ基がより好ましい。
一般式(1)及び(2)に於けるRとしては、水素原子がより好ましい。
本発明の製造方法に於いて、一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物を、一般式(1)で示される化合物に対して所定量の3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物と不揮発性の強酸の存在下、水及び/又は極性溶媒中で三量化させることにより合成でき、更には、この三量化反応後の反応液を後述する後処理操作、いわゆる単離・精製操作を選択すれば、2種類の一般式(2)で示される化合物の1水和物の結晶を創り分けることが可能となる。また、一般式(1)で示される化合物としてカテコールを選択し、かつ、上記の三量化反応後の反応液を後述する単離・精製操作を選択することにより、創り分けられる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の2種類の結晶(B’型結晶及びC型結晶)は、何れも熱安定性に優れるものである。
本発明に於いて使用される一般式(1)で示される化合物、すなわちカテコール類は、市販のものを用いるか、常法により合成したものを適宜用いればよく、本発明に於いては、特に、一般式(1)で示される化合物として、一般式(1)に於ける2つのRが共に水素原子である、カテコールを用いることが好ましい。また、カテコールを用いて合成される一般式(2)で示される化合物は、一般式(2)に於ける6つのRが全て水素原子である2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンである。すなわち、本発明は、安価なカテコールを原料として、機能性材料の原料として有用な2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを高純度で合成する方法として、特に好ましい製造方法である。
本発明に於ける3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物としては、構造中に3価の鉄、5価のバナジウム又は6価のモリブデンを含み、酸化作用を有するこれらの金属の金属酸化物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば三酸化二鉄(酸化第二鉄)、四酸化三鉄、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン等が挙げられ、中でも三酸化二鉄(酸化第二鉄)が好ましい。これらの金属酸化物は、夫々単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、金属酸化物の使用量としては、一般式(1)で示される化合物のモル数に対する3価の鉄、5価のバナジウム又は6価のモリブデンのモル当量として、通常1.0〜10当量、好ましくは1.6〜4当量である。1.0当量未満の場合には、目的とする一般式(2)で示される化合物の収率が低下し、一方、10当量を越える量のこれらの金属酸化物を使用することも可能であるが、経済性が損なわれる等の問題が生じる。
このように、本発明に於いて、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物を酸化剤として用いることにより、目的とする一般式(2)で示される化合物を収率良く、かつ、高純度で合成できることを見出し、更に上記の製造方法に後述する後処理操作(単離・精製操作)を組み合わせることにより、熱安定性が良好な一般式(2)で示される化合物の1水和物の結晶を製造できることを見出した。
また、本発明に於ける不揮発性の強酸としては、上記の3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物を溶解することができ、反応中に濃度変化を引き起こさない不揮発性の強酸であればよく、具体的には、例えば硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸が挙げられ、中でも硫酸が好ましい。これらの不揮発性の強酸は、夫々単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよいが、原料である一般式(1)で示される化合物及び目的とする一般式(2)で示される化合物に対して、悪影響を及ぼさない不揮発性の強酸の組み合わせを選択する必要がある。また、不揮発性の強酸の使用量としては、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物を溶解できる量以上であればよく、具体的には、例えば3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物に於ける3価の鉄、5価のバナジウム又は6価のモリブデンのモル数に対する不揮発性の強酸に於ける水素イオンのモル当量として、通常5〜60当量、好ましくは6〜40当量である。
反応溶媒としては、上でも少し述べたように、水及び/又は極性溶媒が使用でき、ここで言う極性溶媒としては、原料である一般式(1)で示される化合物を溶解できる極性溶媒であって、還元作用を示さないものであれば何れでもよく、具体的には、例えばアセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられ、中でもジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。これらの反応溶媒は夫々単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、中でも水を単独で使用するのが好ましい。また、これらの反応溶媒の使用量は、原料である一般式(1)で示される化合物を溶解できる量以上であって、反応系内の不揮発性の強酸の重量パーセント濃度の値が適切な濃度となるように、適宜その使用量を設定すればよく、具体的には、例えば一般式(1)で示される化合物のモル数に対する水及び/又は極性溶媒のモル当量として、通常6〜120当量、好ましくは10〜60当量である。
本発明に於いては、反応系内の不揮発性の強酸の重量パーセント濃度の値によって、反応時間及び目的とする一般式(2)で示される化合物の収率が変動するため、適切な濃度で反応を実施することが望ましい。反応系内の不揮発性の強酸の重量パーセント濃度の適切な値は、不揮発性の強酸の種類及びその使用量、反応溶媒の種類及びその使用量等によって変動するので、一義的に定義することは難しいが、具体的には、例えば反応系内の不揮発性の強酸の重量パーセントとしては、通常50〜95%、好ましくは60〜90%、より好ましくは70〜85%の範囲である。中でも、当該不揮発性の強酸が硫酸である場合の重量パーセント濃度は、好ましくは60〜90%、より好ましくは70〜85%の範囲であり、特に、70〜85%の範囲で実施すれば、目的とする一般式(2)で示される化合物の分解等を殆ど生起させることなく、短時間で収率良く目的とする一般式(2)で示される化合物を合成できる。尚、不揮発性の強酸は、上記の重量パーセント濃度の範囲の市販品をそのまま使用してもよいし、希釈したものを適宜用いてもよい。
反応温度としては、一般式(1)で示される化合物を効率良く三量化できる温度を選択することが望ましく、具体的には、通常0〜50℃、好ましくは20〜45℃、より好ましくは25〜40℃の範囲に設定される。特に、25〜40℃の範囲で実施すれば、目的とする一般式(2)で示される化合物の分解等を殆ど生起させることなく、短時間で収率良く目的とする一般式(2)で示される化合物を合成できる。
本発明の製造方法に於いて、反応は常圧、加圧、減圧下の何れの圧力下でも進行するが、特別な設備を必要としない常圧条件下が好ましい。
反応時間は、一般式(1)で示される化合物に対する3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物中の3価の鉄、5価のバナジウム又は6価のモリブデンのモル当量数、不揮発性の強酸の種類及びその使用量、反応溶媒の種類及びその使用量、反応系内の不揮発性の強酸の重量パーセント濃度の値、反応温度等により変動する場合があるので、一概には言えないが、通常0.5〜20時間、好ましくは2〜12時間の範囲に設定される。
本発明に於いて、反応終了後の反応液から、目的とする一般式(2)で示される化合物を精製する方法としては、以下に述べる操作を適用することにより、結晶を精製できるばかりでなく、2種類の結晶を創り分けることができる。具体的には、本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物を(a)アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から適切な温度範囲でアセトンを留去して、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させるか、或いは本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物を(b)アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に適切な温度範囲で水を加えて、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させることにより、2種類の異なる結晶を創り分けることができる。すなわち、本発明の製造方法に、更に上記の結晶の析出方法を組み合わせることにより、熱安定性に優れる2種類の異なる結晶を創り分けることができる。また、ここでいう特定の操作により目的とする結晶を得る際に用いられる、本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物は、本発明の製造方法による反応終了後の反応液から、常法により取り出したものでも、粗結晶のものであってもよい。より具体的には、例えば、反応終了後の反応液を水中に投入するか、或いは該反応液に水を投入し、生じた沈殿物をろ取することにより、粗結晶を得ることができるので、これを用いてもよいし、当該粗結晶を、更に水等で洗浄したものでもよいし、更にカラムクロマトグラフィー等で精製したものであってもよい。
上記(a)法のより具体的な結晶の析出方法としては、例えば本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物が、上記の方法によって得られた粗結晶である場合には、当該粗結晶をアセトンに分散させた後、その分散液を室温で攪拌、次いでこれをろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭を加えて室温で攪拌後、活性炭をろ別する。このような処理をすることにより得られたろ液に対して、所定量の水を加えてアセトンと水との混合溶液とし、これを常圧下、適切な温度範囲でアセトンを留去することにより析出した結晶をろ取、乾燥することで、結晶を析出(結晶化)させることができる。尚、上述したような粗結晶を更にカラムクロマトグラフィー等で精製したものを結晶化させる場合には、アセトンによる分散処理や活性炭処理を行わなくてもよい。
上記アセトンと水との混合溶媒に於けるアセトンの使用量としては、一般式(2)で示される化合物をすべて溶解できる量を用いればよく、より具体的には、例えば結晶化の対象となる本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物1gに対して、通常2mL以上、好ましくは3〜100mL、より好ましくは5〜60mL程度である。例えば上述したような活性炭処理を行った際に、過剰量のアセトンを用いた場合には、活性炭処理後のろ液に水を加える前にアセトンを留去して、アセトンの使用量を上記の範囲に設定することが望ましい。
上記アセトンと水との混合溶媒に於ける水の使用量としては、該水の添加の段階ではアセトンに溶解している一般式(2)で示される化合物が析出してこない程度の量であって、該アセトンと水との混合溶媒中のアセトンの留去に伴って結晶が析出してくる量を用いればよく、より具体的には、例えば該アセトンと水との混合溶媒中のアセトン100mLに対する水の混合割合が、通常10〜500mL、好ましくは30〜300mL、より好ましくは50〜200mL程度であり、例えば上述したような活性炭処理後のろ液に対して水を加える場合には、アセトンと水との混合割合を上記した範囲となるように加える水の量を調節することが望ましい。
本発明の(a)法では、結晶を得る際にアセトンの留去を行うが、この留去は常圧下で行われる。そのため、上記アセトンと水との混合溶媒からアセトンを留去する際の温度としては、通常56℃以上、好ましくは56〜95℃の範囲に設定される。(a)法の析出方法に於いては、目的とする結晶形の結晶は70℃以上で結晶化させることが望ましく、また、一般式(2)で示される化合物はアセトンに溶解し、水に不溶な性質を有するので、当該混合溶媒からアセトンを留去して結晶を析出させるために、常圧時のアセトンの沸点にあたる56℃以上でアセトンの留去を開始しつつ、70℃以上で結晶化させるが、実際には70〜80℃の温度範囲で結晶化が完了する。尚、70℃以上で結晶化ができれば、通常70℃以上、好ましくは70〜80℃の範囲でアセトンの留去を行ってもよい。
上でも少し述べたが、このようにして析出してきた結晶は、常法により単離すればよく、具体的には、例えば吸引ろ過等のろ過手段によって結晶をろ取し、ろ取した結晶を減圧乾燥させることにより、目的の結晶形の結晶を得ることができる。
一方、上記(b)法のより具体的な結晶の析出方法(精製方法)としては、例えば本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物が、上述した方法によって得られた粗結晶である場合には、当該粗結晶をアセトンに分散させた後、その分散液を室温で攪拌、次いでこれをろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭を加えて室温で攪拌後、活性炭をろ別する。このような処理をすることにより得られたろ液を一度、減圧下で濃縮することによりアセトンを留去して蒸発乾固させ、得られた残渣に所定量のアセトンと水とを加えたアセトンと水との混合溶媒に対して、適切な温度範囲で水を加えることにより析出した結晶をろ取、乾燥させることで、結晶を析出(結晶化)させることができる。尚、上述したような粗結晶を更にカラムクロマトグラフィー等で精製したものを結晶化させる場合には、アセトンによる分散処理や活性炭処理を行わなくてもよい。
上記アセトンと水との混合溶媒に於けるアセトンの使用量としては、一般式(2)で示される化合物をすべて溶解できる量を用いればよく、より具体的には、例えば結晶化の対象となる本発明の製造方法によって得られた一般式(2)で示される化合物1gに対して、通常1〜30mL、好ましくは1.5〜20mL、より好ましくは2〜10mL程度であるが、効率的に結晶を析出させるためには、できるだけ少量のアセトンを使用して、一般式(2)で示される化合物を溶解させることが望ましい。
上記アセトンと水との混合溶媒に於ける水の使用量としては、アセトンに溶解している一般式(2)で示される化合物が析出してこない程度の量を用いればよく、より具体的には、例えば該アセトンと水との混合溶媒中のアセトン100mLに対する水の混合割合が、通常5〜100mL、好ましくは10〜90mL、より好ましくは20〜80mL程度である。このように、アセトンに対して適当量の水を添加して、アセトンと水との混合溶媒とすることで、一般式(2)で示される化合物を効果的に溶解させることができる。
上記アセトンと水との混合溶媒に対して添加される水の量としては、該水の添加によって、アセトンと水との混合溶媒に溶解している一般式(2)で示される化合物が析出してくる程度の量を用いればよく、より具体的には、例えば該アセトンと水との混合溶媒中のアセトン100mLに対する水の添加割合が、通常200〜2000mL、好ましくは250〜1500mL、より好ましくは300〜1200mL程度である。
上記アセトンと水との混合溶媒に水を添加する際の温度としては、目的とする結晶形の結晶が析出する温度を設定することが必要であり、具体的には、通常5〜50℃、好ましくは10〜35℃の範囲に設定される。(b)法の析出方法に於いては、目的とする結晶形の結晶は50℃以下で結晶化させることが望ましく、また、一般式(2)で示される化合物はアセトンに溶解し、水に不溶な性質を有するので、当該混合溶媒に水を加えて結晶を析出させるために、50℃に保持した溶液を徐々に冷却しつつ、5℃に保持される間に結晶化させるが、中でも10〜35℃の温度範囲で結晶化を完了させることが好ましい。
上でも少し述べたが、このようにして析出してきた結晶は、常法により単離すればよく、具体的には、例えば吸引ろ過等のろ過手段によって結晶をろ取し、ろ取した結晶を減圧乾燥させることにより、目的の結晶形の結晶を得ることができる。
このように、本発明の製造方法に、更に上で述べた結晶の析出方法(結晶化方法)を組み合わせることにより、結晶形状が異なる2種類の結晶を製造することができ、粗結晶を結晶化させる場合には、この方法により精製も同時に行うことができる。
尚、単離・精製操作に於いて、得られる一般式(2)で示される化合物の結晶形を考慮しない場合には、従来公知の何れの単離・精製操作を採用してもよく、より具体的には、例えば反応液を水中に投入、或いは反応液に水を投入し、生じた沈殿物をろ取した後、ろ取した粗結晶を水で洗浄する。次いで、その粗結晶を水と適当な極性溶媒との混合溶媒に分散させた後、その分散液を所定の温度まで加温しながら攪拌し、これを同温度で熱時ろ過した後、ろ液を濃縮し、析出した結晶をろ取することにより、効率良く精製することができる。
上記の単離・精製操作に於いて、粗結晶の分散の際に用いられる極性溶媒としては、例えばアセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、熱時ろ過の際には、例えば珪藻土、活性炭等のろ過助剤を併用してもよい。
このように、本発明の製造方法に於いては、上述した何れの単離・精製操作を実施しても、反応に使用した鉄等の金属も含めて除去できる。更に、本発明によれば、反応に有機過酸化物等の酸化剤を使用しないため、後処理操作として過剰の有機過酸化物を除去するための還元、分液・抽出等の煩雑な工程を必要とせず、簡便な操作で、目的とする一般式(2)で示される化合物が単離・精製できる。
また、本発明の製造方法に於いて、一般式(1)で示される化合物としてカテコールを用いることによって得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、上述の(a)法及び(b)法の何れかの結晶化方法を採用することにより、熱安定性が良好な2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を製造することができる。より具体的には、本発明の製造方法によって得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、上記(a)法で結晶を析出させれば、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶を製造することができ、上記(b)法で結晶を析出させれば、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶を製造することができ、なおかつ、上記(a)法及び(b)法で得られる該1水和物のB’型結晶及びC型結晶は、何れも熱安定性に優れるものである。
すなわち、本発明者らは、本発明の製造方法によって得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを更に特定の結晶化方法で結晶を析出させることにより、従来の製造方法によって得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶と比較して熱安定性に優れる該1水和物のB’結晶及びC型結晶が得られることを見出したのである。より具体的には、従来公知の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶は熱安定性に劣るが、本発明の製造方法に更に特定の結晶化方法、いわゆる特定の再結晶方法を組み合わせる方法によって得られる該1水和物の結晶は熱安定性に優れていることを初めて明らかにしたのである。また、本発明者らは、更に研究を重ねた結果、熱安定性に優れる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶が新規なものであることも見出したのである。このように、本発明は斯かる知見に基づいて完成されたものである。
本発明の方法(結晶化方法)によって得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのB’型結晶は、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物からなっており、カールフィッシャー法により該B’型結晶は、1水和物であることを同定している。
また、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶は、CuKα特性X線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で11.4、17.2、22.6、26.1、27.7に主ピークを有するもので、例えば特許文献4に記載の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶のX線データと類似する。しかしながら、本発明に係る該B’型結晶は、従来公知のB型結晶と比較して熱安定性に優れており、また、従来公知のB型結晶は約162℃に熱分解温度(Td)を有するが、本発明に係る該B’型結晶には熱分解温度(Td)がないことからして、詳細は明らかではないが、本発明に係る該B’型結晶は、従来公知のB型結晶とは異なる物性値に起因する構造を有する化合物であることが示唆される。
本発明の方法(結晶化方法)によって得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのC型結晶は、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物からなっており、カールフィッシャー法により該C型結晶は、1水和物であることを同定している。
また、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶は、CuKα特性X線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、26.4に主ピークを有し、かつ、10.5〜12.5の間にピークを有さない(言い換えれば、「この範囲でチャートからピークを明確に同定できない」という意味である。)もので、該C型結晶を熱分析(TG/DTA)したところ、140℃に熱分解温度(Td)を有する新規な結晶で、該C型結晶は、従来公知のB型結晶と比較して熱安定性に優れるものである。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1 カテコールを出発原料とし、3価の鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化第二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合成
水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三酸化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、その溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液に水500mLを滴下し、更に30分攪拌した。そこで生じた沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で洗浄後、乾燥して粗結晶19.2gを得た。この粗結晶19.2gのうちの、5.0gを水50mLとアセトニトリル200mLとの混合溶媒に分散させた後、その分散液を加温して1時間攪拌した。次いで、この分散液を熱時ろ過して不溶物をろ別し、ろ液を減圧濃縮後、析出した結晶をろ取、乾燥することにより、黒色粉体状の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン2.56gを得た(カテコールからの理論収率:45.5%)。得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのH−NMRを測定したところ、文献記載の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのH−NMRデータと一致した。尚、H−NMRの測定結果を以下に示す。また、得られた結晶中の鉄イオンの含量を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)で測定したところ、得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン2.56g中の鉄イオンの含量(金属鉄からの換算量)は、0.087mg(0.034mg/g)であった。尚、誘導結合プラズマ発光分光分析による鉄イオン含量の測定は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS3100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、予め適当量の金属鉄をn−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解したものを測定して、その測定結果に基づいた検量線を作成しておき、当該検量線から2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン中に含まれる鉄イオンの含量を測定した。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):7.61(s,Ar),9.27(s,OH)
実施例2 カテコールを出発原料とし、5価のバナジウムを含む金属酸化物として五酸化二バナジウム(酸化バナジウム(V))を用いた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合成
水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び五酸化二バナジウム(酸化バナジウム(V))36.4g(0.2モル)を加え、その溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液に水500mLを、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、同温度で更に30分攪拌した。そこで生じた沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で洗浄後、その粗結晶を更に水1Lに分散させ、その分散液を30分間攪拌し、次いでこの分散液をろ過して結晶をろ取した。このろ取した結晶をアセトン400mLに分散させた後、その分散液を30分間攪拌した。次いで、この分散液をろ過して不溶物をろ別し、ろ液を減圧濃縮して過剰量のアセトンを留去した後、そのろ液(約160mLの溶液)に水160mLを投入した。この溶液を常圧下で56℃から徐々に昇温させて濃縮し、濃縮温度が70〜80℃で結晶が析出し、更に濃縮を続け、濃縮温度が90℃となったところで濃縮を終了した。このようにして析出した結晶をろ取、乾燥することにより、黒色粉体状の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン7.27gを得た(カテコールからの理論収率:33.6%)。尚、得られた黒色粉体状物が2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンであることは、実施例1と同様にH−NMRを測定することにより確認した。
実施例3 カテコールを出発原料とし、6価のモリブデンを含む金属酸化物として三酸化モリブデン(酸化モリブデン(VI))を用いた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合成
水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三酸化モリブデン(酸化モリブデン(VI))57.54g(0.4モル)を加え、その溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪拌して反応させた。6時間反応後の反応率は18.0%であった。尚、当該反応率は、6時間反応後の溶液の一部を抜き取り、その溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定して求めた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で検出されるピークが2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンであることは、従来法で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンとのピークと一致することにより確認した。すなわち、実施例3で得られた化合物のHPLCに於ける保持時間が、従来法で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのHPLCに於ける保持時間と一致することにより、実施例3で得られた化合物が2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンであることを同定した。尚、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による同定は、インテリジェントHPLCポンプPU−980型、インテリジェントUV/VIS検出器UV−970型(日本分光株式会社製)を用い、カラム:Wakosil−II 5C−18 4.6mm×150mm(和光純薬工業株式会社製)、溶離液:アセトニトリル/水/リン酸/トリエチルアミン=200mL/800mL/2mL/2mL、測定波長:275nmで同定した。また、上記反応率は、上記のHPLC装置等を用いて、予め適当量の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを上記溶離液に溶解したものを測定してピーク面積を求め、そのピーク面積に基づいた検量線を作成しておき、反応後の溶液(反応後の溶液の抜き取り量を反応後の溶液全量に換算)のHPLC測定によるピーク面積と当該検量線を比較して、反応後の溶液中の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの存在量を求め、当該反応率を算出した。
実施例4 カテコールを出発原料とし、3価の鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化第二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’結晶の合成
水44mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三酸化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、その溶液に98%硫酸176g(1.76モル)を、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液に水200mLを、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、更に同温度で30分攪拌した。そこで生じた沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で洗浄後、その粗結晶を更に水400mLに分散させ、その分散液を30分間攪拌し、次いでこの分散液をろ過して結晶をろ取した。このろ取した結晶をアセトン400mLに分散させた後、その分散液を30分間攪拌した。次いで、この分散液をろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭10.81gを加えて30分間攪拌した。攪拌後、ろ液を減圧濃縮して過剰量のアセトンを留去した後、そのろ液(約160mLの溶液)に水160mLを投入した。この溶液を常圧下で56℃から徐々に昇温させて濃縮し、濃縮温度が70〜80℃で結晶が析出し、更に濃縮を続け、濃縮温度が90℃となったところで濃縮を終了した。このようにして析出した結晶をろ取、乾燥することにより、黄黒色粉末状の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶9.32gを得た(カテコールからの理論収率:40.8%)。尚、得られた該B’型結晶の含水率をカールフィッシャー測定装置(三菱化学株式会社製水分測定装置KF−200)を用いて測定したところ、5,5%であった。一方、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の分子量は342.30(C1812・HO)であり、水の分子量は18.02であるので、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の理論含水率は5.26%であることから、得られた該B’型結晶は2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物であることを確認した。
実施例5 カテコールを出発原料とし、3価の鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化第二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC結晶の合成
水44mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三酸化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、その溶液に98%硫酸176g(1.76モル)を、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液に水200mLを、溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、更に同温度で30分攪拌した。そこで生じた沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で洗浄後、その粗結晶を更に水400mLに分散させ、その分散液を30分間攪拌し、次いでこの分散液をろ過して結晶をろ取した。このろ取した結晶をアセトン400mLに分散させた後、その分散液を30分間攪拌した。次いで、この分散液をろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭10.81gを加えて30分間攪拌した。攪拌後、ろ液を減圧濃縮し、アセトンを留去して蒸発・乾固させた。蒸発・乾固後の残渣に室温でアセトン40mL及び水20mLを加えて残渣を溶解させた後、同温度で水380mLを徐々に滴下し、滴下後の溶液を10℃まで冷却することにより結晶が析出した。このようにして析出した結晶をろ取、乾燥することにより、赤紫色粉末状の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶8.43gを得た(カテコールからの理論収率:36.9%)。尚、得られたC型結晶の含水率を実施例4と同様にカールフィッシャー法により求めたところ、該C型結晶は、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物であることを確認した。
実施例6 実施例4及び5で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶のX線粉末回折スペクトルの測定
得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶のX線粉末回折スペクトルの測定は、株式会社リガク製RINT2000/PCを用いて行い、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線でX線回折スペクトルを得た。該B’型結晶の測定結果を図1に、該C型結晶の測定結果を図2に示すと共に、これらの主なピーク値を表1(該B’型結晶のピークデータ)及び表2(該C型結晶のピークデータ)に示す。
Figure 0005476992
Figure 0005476992
実施例7 実施例4及び5で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶の熱分析(TG/DTA)の測定
得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶の熱分析(TG/DTA)の測定は、ブルガー・エイエックス株式会社製熱分析装置TAPS3000Sを用い、測定温度範囲:30〜500℃、昇温速度:10℃/分、キャリアーガス:アルゴン(100mL/分)で、アルミニウム製浅皿に測定する結晶約10mgを量り取り、測定装置のサンプル皿上に置き、上記の測定条件にて行った。尚、リファレンスはαAl約10mgとした。測定の結果、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶では、熱分解温度(Td)が見られず、また、該C型結晶の熱分解温度(Td)は、140℃であった。該B’型結晶の熱分析の測定結果を図3に、該C型結晶の熱分析の測定結果を図4に示す。
比較例1 従来法による2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶の合成
非特許文献1(Synthesis, 477, 1994)及び特許文献2(特開平8−119894号公報)に記載されている方法に従って、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶を合成した。すなわち、1,2−ジメトキシベンゼン31.78g(0.23モル)及び無水塩化第二鉄120g(0.74モル)を70%硫酸に溶解して25℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、その溶液を氷水500gに投入し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を水1Lで洗浄後、乾燥させることにより、薄紫色の2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン28.2gを得た(1,2−ジメトキシベンゼンからの理論収率:90.1%)(非特許文献1の方法)。
次いで、得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサメトキシトリフェニレン28.2g(0.069モル)に57%ヨウ化水素酸235.3g(1.05モル)と酢酸145mLとを加え、2時間加熱還流した。反応終了後、その溶液を室温まで冷却し、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶を減圧乾燥させることにより、灰色の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶20.2gを得た(収率:85.5%)(特許文献2の方法)。尚、得られた灰色化合物が2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物であることは、H−NMR及びカールフィッシャー測定装置による含水率を測定することにより確認した。また、該B型結晶のX線粉末回折スペクトルの測定結果を図5に示すと共に、主なピーク値を表3に示す。尚、X線粉末回折スペクトルの測定は、実施例6と同様の方法にて行った。
Figure 0005476992
実験例1 実施例4、実施例5及び比較例1で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶、C型結晶及びB型結晶の熱安定性試験
実施例4、実施例5及び比較例1で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶、C型結晶及びB型結晶の夫々50mgを、全量が100mLとなるようにメタノールに溶解させ、結晶のメタノール溶液を各々調製した。このメタノール溶液を石英セルに入れ、メタノールをリファレンスとして可視紫外分光分析を行った。可視紫外分光分析による測定は、可視紫外分光分析装置として株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550を用い、また、光路長が10mmの石英セルを使用して、360nm及び520nmに於ける吸光度を測定した。
また、測定に用いた夫々の石英セルを、60℃の恒温槽中で所定日数の間放置し、所定日数の間放置した当該石英セルについて、上記と同様にして、360nm及び520nmに於ける吸光度を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005476992
表4の結果から、実施例4及び5で得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶は、60℃で21日間放置しても360nm及び520nmの吸光度の何れに於いても数値の変化がほとんど見られなかったことから、これらの結晶は、60℃に於いても殆ど変化せず、熱安定性に優れる結晶であることが分かる。一方、比較例1で得られた従来公知の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶は、60℃で21日間放置すると360nm及び520nmの吸光度の何れに於いても数値が上昇しており、目視観察でも当該メタノール溶液が日を追うごとに著しく着色していることから、このB型結晶は、60℃に於いて何らかの変化を引き起こす、熱安定性に乏しい結晶であることが分かる。尚、実施例1に於ける鉄イオンの含量測定の結果から明らかなように、本発明の製造方法によって得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン中に鉄等の金属酸化物が殆ど含まれていないことも、該1水和物の結晶の熱安定性に寄与しているものと考えられる。
このように、実施例1〜3の結果から、反応を、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で実施することにより、再結晶等の簡便な操作で、収率良く高純度の目的とする一般式(2)で示される化合物を単離・精製できることが分かる。従来の技術にあるように、塩化鉄(III)を用いた場合には、一般式(2)で示される化合物の鉄錯体及び/又はキノン体を還元するための還元工程を必要とするが、反応に所定の金属の金属酸化物を用いる本発明の製造方法では、還元工程を必要とせず、通常の再結晶等の簡便な操作で単離・精製できることから、反応に於いて、一般式(2)で示される化合物の鉄錯体及び/又はキノン体は、生成していない、或いはその生成が、著しく抑えられているものと考えられる。更に、本発明の製造方法は、実施例1に於ける鉄イオンの含量測定の結果から明らかなように、通常の再結晶等の簡便な単離・精製操作で、反応に使用した鉄等の金属も含めてその大部分が効率良く除去できる方法であるので、鉄等の金属(酸化物)を除去するための特別な工程を必要としない優れた方法である。また、本発明の製造方法は、有機過酸化物等の酸化剤を併用する必要もないため、環境負荷が少なく、過剰の過酸化物を除去するための還元、分液・抽出等の煩雑な工程も必要としない、工業的規模の生産に有利な方法である。
更に、実施例4〜7及び実験例1の結果から、本発明の製造方法に更に所定の結晶の析出方法(結晶化方法)を組み合わせることによって得られる結晶は、従来公知のB型結晶に比較して熱安定性に優れる結晶である。すなわち、実施例6及び比較例1の結果から明らかなように、実施例4で得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶は、比較例1で得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶と類似するX線粉末回折スペクトルを有するものであるが、実施例7の結果から明らかなように、該B’型結晶は、公知のB型結晶にあるような熱分解温度(Td)を持たず、更に実験例1の結果から明らかなように、従来公知のB型結晶とは異なり、優れた熱安定性を有することから、本発明に係る2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶は、従来公知のB型結晶とは異なる構造を有する化合物であることが示唆されるのである。一方、本発明に係る2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶は、従来公知の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶にはない、X線粉末回折スペクトル及び熱分解温度(Td)を有する新規な結晶であり、当該結晶は熱安定性に優れる結晶である。このように、本発明の製造方法に、更に特定の結晶の析出方法(結晶化方法)とを組み合わせて得られる2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶とC型結晶は、熱安定性に優れる結晶であることから、本発明の結晶が機能性材料の原料として組み込まれた機器は、安定性(耐変性)に優れ、長期に亘って所望の性能を維持できる。
本発明の製造方法は、例えばディスコチック液晶等の機能性材料の原料として有用なヒドロキシトリフェニレン類の工業的生産等を可能にするものである。また、本発明の2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の新規な結晶は、熱安定性に優れることから、例えば当該結晶を機器への機能性材料の原料として用いれば、当該機器の所望の性能を長期に亘って維持することを可能にするものである。

Claims (14)

  1. 一般式(1)
    Figure 0005476992
    (式中、2つのRは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。)で示される化合物を、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに硫酸、硝酸及びリン酸から選ばれる不揮発性の強酸の存在下で反応させることを特徴とする一般式(2)
    Figure 0005476992
    (式中、6つのRは前記に同じ。)で示される化合物の製造方法であって、前記金属酸化物のモル当量が、前記一般式(1)で示される化合物のモル数に対する前記3価の鉄、前記5価のバナジウム又は前記6価のモリブデンのモル当量として、1.0〜10当量であり、かつ、前記不揮発性の強酸のモル当量が、前記金属酸化物に於ける前記3価の鉄、前記5価のバナジウム又は前記6価のモリブデンのモル数に対する前記不揮発性の強酸に於ける水素イオンのモル当量として、5〜60当量である、前記製造方法
  2. 更に、前記一般式(2)で示される化合物をアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56〜95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 更に、前記一般式(2)で示される化合物をアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5〜50℃の温度範囲で水を加えることにより、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させる、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記一般式(1)で示される化合物が、カテコールであり、前記一般式(2)で示される化合物が、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンである、請求項1に記載の製造方法。
  5. 更に、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンをアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56〜95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を析出させる、請求項4に記載の製造方法。
  6. 更に、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンをアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5〜50℃の温度範囲で水を加えることにより、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を析出させる、請求項4に記載の製造方法。
  7. 前記金属酸化物が、三酸化二鉄、四酸化三鉄、五酸化二バナジウム及び三酸化モリブデンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
  8. 前記金属酸化物が、三酸化二鉄である、請求項1に記載の製造方法。
  9. 前記不揮発性の強酸が、硫酸である、請求項1に記載の製造方法。
  10. 反応系内の前記不揮発性の強酸の重量パーセント濃度が、50〜95%の範囲で実施される、請求項1に記載の製造方法。
  11. 反応温度が、0〜50℃の範囲で実施される、請求項1に記載の製造方法。
  12. カテコールを3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに硫酸、硝酸及びリン酸から選ばれる不揮発性の強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5〜50℃の温度範囲で水を加えることにより得られる、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶。
  13. CuKα特性X線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、26.4に主ピークを有し、かつ、10.5〜12.5の間にピークを有さない、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶。
  14. 熱分解温度(Td)が140℃である、請求項13に記載の結晶。
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