JP5468825B2 - 電磁波吸収発熱体および電子レンジ用の調理用器具 - Google Patents
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Description
この点を解決するために、別に電気ヒータを取付けたものがあるが、ヒーター自体の発熱速度が遅いために、調理が迅速にできないという問題が残っていた。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来の誘電体や磁性体に比べて、昇温速度が格段に向上し、しかも食品の加熱に適した200〜300℃の範囲で昇温が停止する電磁波吸収発熱体およびそれを用いた調理用器具を提供することを目的とする。
また、電波吸収用途として、テレビゴースト対策用などに利用されるフェライトタイルがある。但し、MnZn系、NiZn系立方晶フェライトは、その特性上、実用の周波数がメガヘルツ帯域である。そのため、電子レンジの2.45GHzでは、磁気的性質が弱まり、複素透磁率の虚数成分μ’’の値が小さくなり、発熱効率も決して高くない。
従って、発熱性能をより高めるには、2.45GHzの周波数帯でより大きなμ’’を示すフェライトが求められている。
しかし、電磁波吸収による発熱体として用いられたことは無かった。
また、Y型六方晶フェライトは、強磁性体であるため、温度を上げた場合に、磁気的性質が失われる温度、つまりキュリー温度を有している。そのため、発熱体として利用した場合、その発熱体の温度がキュリー温度近傍で停止することが期待できる。
さらに、Y型六方晶フェライトは、いろいろな元素置換が可能であることから、この元素置換を行うことでキュリー温度を変えることができる。つまり、加熱時の到達温度を制御できる可能性がある。
まず、Ba2M2Fe12O22になるY型六方晶フェライトの粉末を作製した。なお、Mは、Mg,Ni,Co,CuおよびZnの内から1種または2種以上の組合せを適宜選択(以下、本発明に置いてMは同義に使用する)し、Baを一部Srと置換したものも作製した。このY型六方晶フェライトの粉末を、耐熱性樹脂と混合し、所定の形状に成形した。この成形体を電子レンジ中に入れ、電磁波を印加した時の昇温特性を確認した。
ついで、MnZn系、NiZn系立方晶フェライトおよび各種誘電体も同様にして耐熱性樹脂と混合して成形体を作製し、比較実験を行った。
以上のような知見を得て、本発明を完成させた。
(1)電磁波を吸収する発熱体であって、該発熱体がY型六方晶フェライトからなると共に、
上記Y型六方晶フェライトが、次式
式:Ba x M y Fe z O w 、
Mは、Mgならびにその一部がNi,CoおよびCuのうちから選ばれた1種または2種以上であって、
x:1.8〜2.2
y:1.8〜2.2
z:11.8〜12.2
w:21.8〜22.2
の組成になることを特徴とする電磁波吸収発熱体。
本発明は、発熱体が六方晶フェライトの中でも特に、Y型であることが最も重要なところである。
前述したとおり、電磁波を印加した場合、Y型六方晶フェライトは種々の誘電体および磁性体の中でも特に優れた昇温速度を示した。なお、六方晶フェライトは、Y型の他に、M,W,Z型があるが、このY型というのは通常のX線回折法により相同定が可能である。
本発明では、上記の組成で示されるY型六方晶フェライトを発熱体として用いるが、かかるY型六方晶フェライトの中でも、次式
式:Ba xMyFezOw
Mは、前述したとおり、Mgならびにその一部がNi,CoおよびCuのうちから選ばれた1種または2種以上であり、また、係数x、y、zおよびwがそれぞれ、
x:1.8〜2.2
y:1.8〜2.2
z:11.8〜12.2
w:21.8〜22.2
で示される組成のものがとりわけ有利に適合する。
x:1.8〜2.2
xは、Baの原子比を表す。その値が1.8以上2.2以下の範囲を逸脱すると、Y型相以外に、MFe2O4などの異相が出現するため、本発明の所定の性質、性能等を発揮できない。
yは、Mの原子比である。その値が1.8以上2.2以下の範囲を逸脱すると、Y型相以外に、MFe2O4などの異相が出現するため、本発明の所定の性質、性能等を発揮できない。
zはFe、wはOの原子比を表し、いずれもフェライトの主成分である。これらの値は、上記したその他の成分に応じて変動することができる。但し、zは11.8〜12.2、また、wは21.8〜22.2の範囲とする。
の組合せが可能であるが、前記した元素またはその組合せ群により、前述したとおりに、
いわゆるキュリー温度を適宜変えることができる。つまり、本発明の電磁波吸収発熱体は、その高い昇温速度を維持しながら、昇温停止温度を、100〜400℃のなかで設定することができる。
特に、250℃前後の一般的な食品を加熱するのに最も適した組成は、上記したMとして、Mgならびにその一部をNi,CoおよびCuとした組成である。
なお、本発明に用いる樹脂は、シリコーン樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等が挙げられ、樹脂の添加量は、20〜50mass%程度とすることが好ましい。
まず、Fe2O3、BaCO3、MOを出発原料とする。ついで、各原料をY型六方晶フェライトの組成となるように秤量し、混合器を用いて混合する。その後、1000〜1200℃で焼成する。焼成後は粉砕機等で解砕し、平均粒径を数μm程度の粉末とする。
粉末および焼結体の態様は、用途または使用する調理器具の種類によって、適宜選択される。
ここに、上記した樹脂との混合物は、単独で容器に成形しても用いることもできる。
〔参考例1〕
原料として、BaCO3,MgO,Fe2O3を使用し、それらのモル比率がBaCO3:MgO:Fe2O3=2:2:6となるように秤量し、ボールミルで湿式混合する。ついで、乾燥をし、大気中1150℃×3時間で焼成した、その後、焼成体を解砕し、平均粒径が約3.5μmのBa2Mg2Fe12O22のY型六方晶フェライト粉を得た。この粉末にシリコーン樹脂を、フェライト粉:樹脂=75:25の質量比率で混練し、40mm×40mm×1mmのシートを作製した。得られたシートを市販の電子レンジの中に置き、500Wの電磁波を10秒〜120秒間照射した時のシートの温度を赤外放射温度計で測定した。
上記したY型六方晶フェライトを用いた場合の測定結果と比較材を用いた場合の測定結果とを図1に示す。
原料として、BaCO3,MgO,Fe2O3を使用し、それらのモル比率がBaCO3:MgO:Fe2O3=2:2:6となるように秤量し、振動ミルで乾式混合する。ついで、大気中950℃×2時間で仮焼した、その後、アトライターミルで湿式解砕し、平均粒径が約1.5μmのBa2Mg2Fe12O22のY型六方晶フェライト仮焼粉を得た。この仮焼粉にバインダーとしてPVA水溶液を加え、スプレイドライヤーを用いて、粒径が50〜150μm程度の造粒粉を得た。
上記したY型六方晶フェライトを用いた場合の測定結果と比較材を用いた場合の測定結果とを図3に示す。
原料として、BaCO3,MgO,NiO,Fe2O3を使用し、それらのモル比率がBaCO3:MgO:NiO
:Fe2O3=2:1.6:0.4:6となるように秤量し、ボールミルで湿式混合する。ついで、乾燥をし、大気中1150℃×3時間で焼成した、その後、焼成体を解砕し、平均粒径が約3.9μmのBa2(Mg0.8Ni0.2)2Fe12O22のY型六方晶フェライト粉を得た。この粉末にシリコーン樹脂を、フェライト粉:樹脂=70:30の重量比率で混練した後、図4に示すステンレス製容器の外側に1mm厚で塗布した。この容器を市販の電子レンジの中に置き、600Wの電磁波を10秒〜180秒間照射した時の、同図に示した容器側面部の温度を赤外放射温度計で測定した。
上記した本発明のY型六方晶フェライトを用いた場合の測定結果と比較材を用いた場合の測定結果とを図5に示す。
表1に示す組成になるY型六方晶フェライト粉を、参考例1と同様な方法および条件で作製した。この粉末にシリコーン樹脂を、フェライト粉:樹脂=80:20の質量比率で混練し、40mm×40mm×2mmのシートを作製した。得られたシートを市販の電子レンジの中に置き500Wの電磁波を照射して、シートの温度が赤外放射温度計で200℃となるまでの時間を測定した。また、シートの昇温が停止する温度、およびそこまでかかった時間を併せて測定した。
上記した本発明のY型六方晶フェライトを用いた場合の測定結果と比較例の測定結果とを表1に併記する。
また、同表より、10〜30℃程度の差で、昇温が停止する目標温度を達成できていることが分かる。
Claims (4)
- 電磁波を吸収する発熱体であって、該発熱体がY型六方晶フェライトからなると共に、
上記Y型六方晶フェライトが、次式
式:Ba x M y Fe z O w 、
Mは、Mgならびにその一部がNi,CoおよびCuのうちから選ばれた1種または2種以上であって、
x:1.8〜2.2
y:1.8〜2.2
z:11.8〜12.2
w:21.8〜22.2
の組成になることを特徴とする電磁波吸収発熱体。 - 前記Y型六方晶フェライトが焼結体であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収発熱体。
- 前記電磁波吸収発熱体が、前記Y型六方晶フェライトの他さらに樹脂を20〜50mass%の範囲で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波吸収発熱体。
- 調理用器具の少なくとも一部に、請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収発熱体を有することを特徴とする電子レンジ用の調理用器具。
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