JP5713931B2 - マイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉およびその粉末を用いたマイクロ波吸収発熱体 - Google Patents

マイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉およびその粉末を用いたマイクロ波吸収発熱体 Download PDF

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Description

本発明は、電子レンジ用調理皿などに用いられる特殊セラミック材料に関するものであり、特に、マイクロ波を吸収して優れた発熱性能を示し、しかも所定の温度で昇温を停止する性能も具えるマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉およびその粉末を用いたマイクロ波吸収発熱体に関するものである。
電子レンジは、通常、2.45GHzのマイクロ波を食品に照射し、食品中の水分子がマイクロ波を吸収して振動する現象を利用して食品を加熱する調理機器である。ここで、マイクロ波を吸収できるのは水分子に限定されるものではなく、誘電損失や磁気損失の高い材料であれば、食品と同様にマイクロ波を吸収して温度が上昇することが知られている。
近年、電子レンジ用調理皿として、2.45GHzのマイクロ波を吸収して発熱する性質をそなえる特殊セラミックス材料を利用した製品が提案されている(例えば、(有)東彼セラミックス製「ドリームキッチン」など)。このような電子レンジ用の加熱調理器具は、電子レンジの放射するマイクロ波を食材に照射して調理するものではなく、マイクロ波で調理器具本体を発熱させ、その熱で食材を加熱して調理するものである。
そのため、調理器具本体の素材にマイクロ波吸収発熱粉を混合したり、表面にマイクロ波吸収発熱粉を含有する層を焼き付けたりして、マイクロ波吸収発熱性能を発現させている。
上記した電子レンジ用の加熱調理器具は、一般にセラミックスで作られているが、かかるセラミックスは、加熱に伴って温度が上がり続けるため、調理時間が長すぎると食品が焦げたり、取り出しの際に火傷をするおそれがあるという問題があった。
特許第4663005号公報 特願2011−241310号明細書
そこで、発明者らは、マイクロ波を吸収して優れた発熱性能を示し、なおかつ、所定温度で昇温を停止するマイクロ波吸収発熱体用MgCuZnフェライト粉を提案した(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術は、優れた昇温特性を有すると共に、所望の温度でその昇温を止めることができるという優れた技術である。しかしながら、上記のMgCuZnフェライト粉では、MgCuZnフェライト粉中のZnO比を小さくすれば、その昇温停止温度を高温にできるものの、275℃程度が上限であった。
そのため、発明者らは、275℃を超える高温域であっても、その昇温停止温度を設定することができるマイクロ波吸収発熱体用NiCuZnフェライト粉を提案した(特許文献2参照)。
しかしながら、上記したNiCuZnフェライト粉は、陶磁器用の原料として高価な酸化ニッケルを多量に使用する必要があるため、より安価な原料を用いて、NiCuZnフェライトと同様に50〜450℃という広い温度範囲での昇温停止挙動が得られる発熱体が求められていた。
ここで、上述した昇温停止温度(Ts)とは、フェライト粉を圧縮成形した後、焼成して、40×40×5mmの板状焼結体を作製し、これを市販の電子レンジの中に置いて500Wのマイクロ波を60〜90秒間程度照射し、温度上昇が停止した時の試料表面温度を測定した値である。
実際に、フェライト粉を発熱体として使用する場合は、陶磁器の表面に釉薬と共に薄くコーティングしたり、耐熱樹脂に混練してシート状で使用したりすることが多い。このような場合は、上記の板状焼結体で測定した場合に比べると、発熱体の含有量が少なく、また、放熱の影響を受けるために、昇温停止温度が低下する。このため、食材に焦げ目を付ける調理に最適な、200〜300℃の温度範囲で昇温を停止するためには、300℃をはるかに超える450℃程度の温度で昇温停止するフェライト粉が求められることになる。
一方で、食材を蒸したり茹でたりするような調理器具には100℃程度が、また、液体の加温に用いるような調理容器には80℃程度が、と調理の目的によって最適な昇温停止温度は異なってくる。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、所定温度までの発熱性能に優れるのはいうまでもなく、50〜450℃という広い範囲の昇温停止温度を任意に選択でき、さらに、従来技術のNiCuZnフェライトに比べて、原料価格が安価なマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉を提供することを目的とする。
発明者らは、上記した発熱体用NiCuZnフェライト粉に係る問題を解決するために、NiOの一部をMgOで置換したNiMgCuZnフェライトを用いた発熱体の作製について鋭意検討を加えた。
しかしながら、単に、NiOをMgOに置換すると、フェライトの誘電特性が変化し、昇温停止挙動が得られなくなることが分かった。また、飽和磁束密度の低いMgOの置換量が増すと、昇温停止温度が低下し、450℃までの広い範囲でTsを制御することは困難であることが分かった。
そこで、発明者らは、さらに詳細に試作検討を行った結果、NiO,MgO,ZnOの組成比を所定の範囲に調整し、さらに必要に応じて、フェライト粉の粒子サイズを適切に選定することにより、少ないNiO量であっても、50〜450℃という広い範囲で昇温停止温度が調整できることを知見したのである。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鉄酸化物をFe換算で46〜51mol%、
銅酸化物をCuO換算で3〜14mol%および
亜鉛酸化物をZnO換算で4〜40mol%
含み、残部はニッケル酸化物、マグネシウム酸化物および不可避的不純物からなるNiMgCuZnフェライト粉であって、
上記NiMgCuZnフェライト粉の平均粒子サイズが2〜500μmの範囲で、
上記亜鉛酸化物、上記ニッケル酸化物および上記マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiOおよびMgO換算量の合計で、40〜48mol%の範囲とし、
さらに、ZnO,NiOおよびMgO換算量の合計を100とした三角ダイアグラムにおいて、(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67)およびD(67,0,33)の4点で囲まれる領域内(但し、線上は含まず)の組成であることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉。
.前記1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも一部に含有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
.前記1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
本発明に従うマイクロ波吸収発熱体は、電子レンジの2.45GHzのマイクロ波を効果的に吸収して急速に加熱、昇温し、かつ50〜450℃という広い温度範囲における任意の温度で、その昇温を停止することができる。
3成分(ZnO,NiO,MgO)の合計を100とした場合の組成範囲を示す三角ダイアグラムである。 ZnO+NiO+MgO=45mol%の場合の組成範囲を示す三角ダイアグラムである。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明における昇温停止温度Tsとは、フェライト粉を圧縮成形した後、焼成して、40×40×約5mmの板状焼結体を作製し、市販の電子レンジを用いて、500Wのマイクロ波を照射した後の試料表面温度が、60〜90秒間、ほとんど温度変化がなく一定とみなされた時の温度である。なお、上記試料表面温度は、放射温度計で測定する。
次に、本発明のNiMgCuZnフェライト粉の基本組成について説明する。なお、以下に示すNiMgCuZnフェライト粉の成分組成を表す%表示は、とくに断らない限りmol%を意味する。
鉄酸化物:Fe換算で46〜51%
鉄は、フェライト相の安定性および比抵抗に影響を与え、マイクロ波印加による昇温速度に大きく作用する。鉄酸化物量がFe換算で46%に満たないと、フェライト以外の相が生成してフェライト単相を得ることが難しくなり、発熱体の昇温速度が低下する。一方、鉄酸化物量がFe換算で51%を超えると、発熱体の比抵抗が低下して金属のようにマイクロ波を反射して発熱性能が低下したり、マイクロ波を照射した時にスパークしたりするおそれが生じる。従って、鉄酸化物量はFe換算で46〜51%の範囲に限定する。好ましくは48〜49.8%の範囲である。
銅酸化物:CuO換算で3〜14%
銅は、マイクロ波印加による昇温特性において、高温での昇温停止挙動に影響する。銅酸化物量がCuO換算で3%に満たないか、または14%を超えたときは、いずれの場合も、発熱体の昇温が停止せずに、マイクロ波照射と共に、発熱体の温度が上昇し続けてしまう。従って、銅酸化物量はCuO換算で3〜14%の範囲に限定する。好ましくは4〜10%、さらに好ましくは4〜9%の範囲である。
亜鉛酸化物:ZnO換算で4〜40%
亜鉛は、マイクロ波印加による昇温特性において、Tsに影響する元素である。亜鉛酸化物量をZnO換算で4〜40%に調整することで、50〜450℃の広い温度範囲にわたってTsを任意に設定することができる。
ここに、亜鉛酸化物量が多いほどTsが低下し、ZnO換算で40%を超えると、Tsが50℃未満になるため、加熱調理用用具として適さなくなる。一方、亜鉛酸化物が少ないほどTsは上昇するものの、亜鉛酸化物量がZnO換算で4%未満になると、高温域における飽和磁化の値(σs)が低下して、昇温特性が低下するため、適さなくなる。
従って、亜鉛酸化物量はZnO換算で4〜40%の範囲に限定する。好ましくは9〜35%の範囲である。
残部:ニッケル酸化物、マグネシウム酸化物および不可避的不純物
残部の主成分であるニッケル酸化物およびマグネシウム酸化物の量は、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiO,MgO換算とした場合、それぞれのモル比率の合計:ZnO+NiO+MgOが40〜48mol%の範囲であることが重要である。
3成分(以下、ZnO,NiO,MgOのことを意味する)の合計量が48%を超えると、フェライト以外の相が生成してフェライト単相を得ることが難しくなって、発熱体の昇温速度が低下するからであり、一方、3成分の合計量が40%未満になると、フェライト単相を得ることが難しくなって、発熱体の昇温速度が低下するからである。
さらに、本発明のNiMgCuZnフェライト粉は、3成分の合計量を100として三角ダイアグラム(図1参照)で示した時に、座標(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67)およびD(67,0,33)の4点で囲まれる領域内(但し、線上は含まず)の組成を有している必要がある。
この組成範囲であれば、NiOとMgOの共存下でも、発熱体の昇温停止挙動を発現することができるからである。
ここに、座標(ZnO,NiO,MgO)が、B(11,89,0)とC(33,0,67)を結ぶ直線よりも外側、すなわちNiO,MgOが多い領域では、誘電特性が変化するために、誘電損失による温度上昇で発熱体の温度が上昇し続けるため、昇温停止挙動を得ることができなくなる。また、座標(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0)とD(67,0,33)を結ぶ直線よりも外側、すなわちZnOが多い領域では、キュリー温度が低下するため常温では非磁性体になって、磁気損失による発熱が得られなくなるため、発熱性能が著しく低下する。
本発明におけるNiMgCuZnフェライト粉の組成範囲を、三角ダイアグラムで図1に示しているが、三角形の各頂点は、ZnO=100,NiO=100およびMgO=100に対応する。また、座標(ZnO,NiO,MgO)=A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67),D(67,0,33)で囲まれた領域は、図中の四角形ABCD中の斜線の部分である。
ここに、一例として、3成分の合計がZnO+NiO+MgO=45(%)の場合の本発明の組成範囲を図2に示す。三角形の各頂点は、ZnO=45(%),NiO=45(%),MgO=45(%)になる。そして、図中の四角形ABCDの内側で示される部分が本発明範囲である。
なお、フェライト粉中には、原料成分や製造過程で、SiOやMn,Ca,AlおよびPなどが不可避的不純物として混入する場合があるが、これらは、合計量が0.5%以下であれば特に問題はない。
以上、本発明のNiMgCuZnフェライト粉の成分組成について説明したが、本発明では、さらに、フェライト粉の粒径を所定の範囲におさめることが好ましい。
フェライト粉の平均粒子サイズ:2〜500μm
フェライト粉の平均粒子サイズは、マイクロ波の吸収効率に大きく影響する。フェライト粉を樹脂と混練する際、所望する発熱量を得るために、樹脂との合計量に対して10〜80mass%程度のフェライト粉を添加することが望ましいが、粒子サイズが2μmより細かいと、マイクロ波吸収発熱体のマイクロ波の吸収効率が低くなり、温度上昇速度および到達温度が低下するため、食品を均一かつ高速に加熱することが難しくなる。一方、粒子サイズが500μmを超えると、樹脂や釉薬に添加して使用した時に滑らかな表面が得られなくなる。
従って、本発明に従うフェライト粉の平均粒子サイズは2〜500μmの範囲が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは2〜250μmであり、さらに好ましくは5〜100μmの範囲である。なお、本発明における平均粒子サイズは、レーザー回折式粒度分布計で測定した時に得られる50%粒径値(D50)で評価したものである。
次に、上記のフェライト粉を用いた電子レンジ用の加熱調理器具、例えば調理皿を製造する場合について説明する。本発明では、前記したNiMgCuZnフェライト粉を、発熱体の少なくとも一部に含有させるか、または、少なくとも表面に有することで、本発明に従うマイクロ波吸収発熱体を得ることができる。
まず、前記の好適成分組成に調整したFe,CuO,ZnO,MgOおよびNiOを出発原料として、混合し、粉砕または成形体とし、850〜1200℃の温度域で熱処理(焼成)してフェライト化し、その後必要に応じて粉砕、分級などを施して所定の粒子サイズに調整する。
その際、上記した焼成温度は、フェライト生成反応と結晶粒成長に大きな影響を及ぼす。焼成温度が850℃に満たないと、フェライト生成反応が十分に進行せずに、未反応のFeやNiO、MgOなどが残留し、マイクロ波吸収発熱性能が低下するおそれがあるため、好ましくない。一方、焼成温度が1200℃を超えると、異相であるCuOが析出し、誘電特性が変化するために、昇温停止挙動が得られなくなり、やはり好ましくない。従って、焼成温度は850〜1200℃の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、900〜1150℃の範囲である。なお、焼成時間については、特別の限定はないが、0.5〜10h程度とするのが好ましい。
なお、本発明のNiMgCuZnフェライト粉は、混合焙焼法や共沈法など特殊なフェライト原料製造方法を用いて得ることもできる。
本発明では、陶磁器や樹脂容器等の電子レンジ用の加熱調理器具の原料に、上記の方法で得られたNiMgCuZnフェライト粉を、10mass%以上添加した原料を用いて調理皿を作製することができる。すなわち、フェライト粉をマイクロ波吸収発熱体の一部に含有させることができる。また、フェライト粉(すなわち100mass%)を所定の形状に成形し、焼成して電子レンジ用調理皿とした場合は、表層として表面の一部に含有させることもできる。
また、上記の方法で得られたNiMgCuZnフェライト粉に、耐熱樹脂あるいは釉薬などを混合し、調理皿の表面に塗布したり、接着したりして使用する、すなわちフェライト粉をマイクロ波吸収発熱体の表面に付することができる。その際の厚みは、塗布する場合で、50〜500μm程度が、また接着して使用する場合で、10〜500μm程度が、さらに上記の表層として表面の一部に含有している場合で、0.1〜3mm程度が好ましい。
なお、その他のNiMgCuZnフェライト粉を製造する工程およびマイクロ波吸収発熱体を製造する工程は、特に限定はなく、いわゆる常法に従えば良い。
以下、本発明を具体的に実施した例について説明する。
〔実施例1〕
成分組成比が、Fe=49,CuO=6を一定とし、残部のZnO,NiO,MgOを、3成分の合計量で45%とし、さらに表1に示す組成比となるように秤量し、ボールミルで湿式混合した後、1150℃で焼成し、ついで解砕、分級して、平均粒径D50=50μmのNiMgCuZnフェライト粉とした。ついで、得られたNiMgCuZnフェライト粉にポリビニルアルコール(PVA)を少量添加して混合した後、40×40×約5mm、30gの板状に成形し、1100℃で熱処理してNiMgCuZnフェライト板を作製した。
得られたNiMgCuZnフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定した。70秒、80秒、90秒の表面温度の差が10℃以内の場合を昇温停止とみなして、それらの平均値を昇温停止温度Tsとした。
表1に、得られた結果を併記する。
Figure 0005713931
同表から明らかなように、3成分が本発明に従う範囲のNiMgCuZnフェライト板は、いずれも所定温度で昇温が停止することが確認された。一方、比較例1,2は、いずれも昇温停止することなく、500℃以上まで発熱し続けた。また、比較例3は、キュリー温度が室温より低く、常温で磁性を持たないため、マイクロ波を照射してもほとんど発熱することはなかった。
〔実施例2〕
成分組成比が、Fe:CuO:ZnO:NiO:MgO=47:10:26:8.5:8.5(%)となるように秤量し、ボールミルで湿式混合した後、大気中950℃で5時間焼成し、粉砕、分級して、表2に示すD50=3〜460μmのNiMgCuZnフェライト粉を得た。
ついで、これらのNiMgCuZnフェライト粉をシリコン樹脂と混練して、フェライト粉:樹脂=70:30(mass%)のシートを成形し、40×40×約1mmのシート状に切り出して、粒度の異なる種々のNiMgCuZnフェライトシートを作製した。得られたシートの表面状態を目視観察した。さらに、市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定し、昇温特性を調べた。
それぞれの測定結果を表2に併記する。
Figure 0005713931
同表に示したように、本発明の範囲を満足したNiMgCuZnフェライトシートは、明瞭な昇温停止挙動が得られ、かつ表面状態の良好なシートを得ることができることが分かる。
〔実施例3〕
成分組成比が、表3に示すモル比になるように、Fe,CuO,ZnO,NiOおよびMgOを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、大気中950℃で2時間焼成し、粉砕、分級して、D50=20〜60μmのNiMgCuZnフェライト粉を得た。
ついで、得られたNiMgCuZnフェライト粉にポリビニルアルコール(PVA)を少量添加して混合した後、40×40×約5mm、30gの板状に成形し、1100℃で熱処理してNiMgCuZnフェライト板を作製した。
得られたNiMgCuZnフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定した。70秒、80秒、90秒の表面温度の差が10℃以内の場合を昇温停止とみなし、それらの平均値を昇温停止温度Tsとした。
表3に、得られた結果を併記する。
Figure 0005713931
同表から明らかなように、本発明に従うFe,CuO,ZnO,NiOおよびMgO組成比範囲のNiMgCuZnフェライト板は、いずれも明瞭に昇温が停止することが確認された。一方、比較例4および7は、所定温度で昇温停止せずに、500℃以上に発熱し続けた。比較例5および6は、昇温速度が遅く、90秒照射後も明瞭な昇温停止挙動は得られなかった。
以上、それぞれの実施例で示したように、本発明に従うNiMgCuZnフェライト粉は、マイクロ波照射によって急速に昇温し、かつNiMgCuZnフェライトの板状焼結体を用いた評価では、50〜450℃の範囲の所期した温度で昇温が停止するという、本発明の効果が確認された。
なお、上記した実施例では、発熱体の少なくとも一部(表層含む)にNiMgCuZnフェライト粉を含有する調理器具や、表面に釉薬と混ぜたNiMgCuZnフェライト粉を塗布した調理器具の発明例を示してはいないが、本発明に従う限り、いずれも上記したシートと同様に、良好な発熱性能と昇温停止性能を有していることを確認している。

Claims (3)

  1. 鉄酸化物をFe換算で46〜51mol%、
    銅酸化物をCuO換算で3〜14mol%および
    亜鉛酸化物をZnO換算で4〜40mol%
    含み、残部はニッケル酸化物、マグネシウム酸化物および不可避的不純物からなるNiMgCuZnフェライト粉であって、
    上記NiMgCuZnフェライト粉の平均粒子サイズが2〜500μmの範囲で、
    上記亜鉛酸化物、上記ニッケル酸化物および上記マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiOおよびMgO換算量の合計で、40〜48mol%の範囲とし、
    さらに、ZnO,NiOおよびMgO換算量の合計を100とした三角ダイアグラムにおいて、(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67)およびD(67,0,33)の4点で囲まれる領域内(但し、線上は含まず)の組成であることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉。
  2. 請求項1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも一部に含有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
  3. 請求項1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
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