JP5713931B2 - マイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉およびその粉末を用いたマイクロ波吸収発熱体 - Google Patents
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Description
そのため、調理器具本体の素材にマイクロ波吸収発熱粉を混合したり、表面にマイクロ波吸収発熱粉を含有する層を焼き付けたりして、マイクロ波吸収発熱性能を発現させている。
特許文献1に記載の技術は、優れた昇温特性を有すると共に、所望の温度でその昇温を止めることができるという優れた技術である。しかしながら、上記のMgCuZnフェライト粉では、MgCuZnフェライト粉中のZnO比を小さくすれば、その昇温停止温度を高温にできるものの、275℃程度が上限であった。
そのため、発明者らは、275℃を超える高温域であっても、その昇温停止温度を設定することができるマイクロ波吸収発熱体用NiCuZnフェライト粉を提案した(特許文献2参照)。
しかしながら、上記したNiCuZnフェライト粉は、陶磁器用の原料として高価な酸化ニッケルを多量に使用する必要があるため、より安価な原料を用いて、NiCuZnフェライトと同様に50〜450℃という広い温度範囲での昇温停止挙動が得られる発熱体が求められていた。
一方で、食材を蒸したり茹でたりするような調理器具には100℃程度が、また、液体の加温に用いるような調理容器には80℃程度が、と調理の目的によって最適な昇温停止温度は異なってくる。
しかしながら、単に、NiOをMgOに置換すると、フェライトの誘電特性が変化し、昇温停止挙動が得られなくなることが分かった。また、飽和磁束密度の低いMgOの置換量が増すと、昇温停止温度が低下し、450℃までの広い範囲でTsを制御することは困難であることが分かった。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.鉄酸化物をFe2O3換算で46〜51mol%、
銅酸化物をCuO換算で3〜14mol%および
亜鉛酸化物をZnO換算で4〜40mol%
含み、残部はニッケル酸化物、マグネシウム酸化物および不可避的不純物からなるNiMgCuZnフェライト粉であって、
上記NiMgCuZnフェライト粉の平均粒子サイズが2〜500μmの範囲で、
上記亜鉛酸化物、上記ニッケル酸化物および上記マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiOおよびMgO換算量の合計で、40〜48mol%の範囲とし、
さらに、ZnO,NiOおよびMgO換算量の合計を100とした三角ダイアグラムにおいて、(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67)およびD(67,0,33)の4点で囲まれる領域内(但し、線上は含まず)の組成であることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉。
まず、本発明における昇温停止温度Tsとは、フェライト粉を圧縮成形した後、焼成して、40×40×約5mmの板状焼結体を作製し、市販の電子レンジを用いて、500Wのマイクロ波を照射した後の試料表面温度が、60〜90秒間、ほとんど温度変化がなく一定とみなされた時の温度である。なお、上記試料表面温度は、放射温度計で測定する。
鉄酸化物:Fe2O3換算で46〜51%
鉄は、フェライト相の安定性および比抵抗に影響を与え、マイクロ波印加による昇温速度に大きく作用する。鉄酸化物量がFe2O3換算で46%に満たないと、フェライト以外の相が生成してフェライト単相を得ることが難しくなり、発熱体の昇温速度が低下する。一方、鉄酸化物量がFe2O3換算で51%を超えると、発熱体の比抵抗が低下して金属のようにマイクロ波を反射して発熱性能が低下したり、マイクロ波を照射した時にスパークしたりするおそれが生じる。従って、鉄酸化物量はFe2O3換算で46〜51%の範囲に限定する。好ましくは48〜49.8%の範囲である。
銅は、マイクロ波印加による昇温特性において、高温での昇温停止挙動に影響する。銅酸化物量がCuO換算で3%に満たないか、または14%を超えたときは、いずれの場合も、発熱体の昇温が停止せずに、マイクロ波照射と共に、発熱体の温度が上昇し続けてしまう。従って、銅酸化物量はCuO換算で3〜14%の範囲に限定する。好ましくは4〜10%、さらに好ましくは4〜9%の範囲である。
亜鉛は、マイクロ波印加による昇温特性において、Tsに影響する元素である。亜鉛酸化物量をZnO換算で4〜40%に調整することで、50〜450℃の広い温度範囲にわたってTsを任意に設定することができる。
ここに、亜鉛酸化物量が多いほどTsが低下し、ZnO換算で40%を超えると、Tsが50℃未満になるため、加熱調理用用具として適さなくなる。一方、亜鉛酸化物が少ないほどTsは上昇するものの、亜鉛酸化物量がZnO換算で4%未満になると、高温域における飽和磁化の値(σs)が低下して、昇温特性が低下するため、適さなくなる。
従って、亜鉛酸化物量はZnO換算で4〜40%の範囲に限定する。好ましくは9〜35%の範囲である。
残部の主成分であるニッケル酸化物およびマグネシウム酸化物の量は、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiO,MgO換算とした場合、それぞれのモル比率の合計:ZnO+NiO+MgOが40〜48mol%の範囲であることが重要である。
3成分(以下、ZnO,NiO,MgOのことを意味する)の合計量が48%を超えると、フェライト以外の相が生成してフェライト単相を得ることが難しくなって、発熱体の昇温速度が低下するからであり、一方、3成分の合計量が40%未満になると、フェライト単相を得ることが難しくなって、発熱体の昇温速度が低下するからである。
この組成範囲であれば、NiOとMgOの共存下でも、発熱体の昇温停止挙動を発現することができるからである。
ここに、座標(ZnO,NiO,MgO)が、B(11,89,0)とC(33,0,67)を結ぶ直線よりも外側、すなわちNiO,MgOが多い領域では、誘電特性が変化するために、誘電損失による温度上昇で発熱体の温度が上昇し続けるため、昇温停止挙動を得ることができなくなる。また、座標(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0)とD(67,0,33)を結ぶ直線よりも外側、すなわちZnOが多い領域では、キュリー温度が低下するため常温では非磁性体になって、磁気損失による発熱が得られなくなるため、発熱性能が著しく低下する。
なお、フェライト粉中には、原料成分や製造過程で、SiO2やMn,Ca,AlおよびPなどが不可避的不純物として混入する場合があるが、これらは、合計量が0.5%以下であれば特に問題はない。
フェライト粉の平均粒子サイズ:2〜500μm
フェライト粉の平均粒子サイズは、マイクロ波の吸収効率に大きく影響する。フェライト粉を樹脂と混練する際、所望する発熱量を得るために、樹脂との合計量に対して10〜80mass%程度のフェライト粉を添加することが望ましいが、粒子サイズが2μmより細かいと、マイクロ波吸収発熱体のマイクロ波の吸収効率が低くなり、温度上昇速度および到達温度が低下するため、食品を均一かつ高速に加熱することが難しくなる。一方、粒子サイズが500μmを超えると、樹脂や釉薬に添加して使用した時に滑らかな表面が得られなくなる。
従って、本発明に従うフェライト粉の平均粒子サイズは2〜500μmの範囲が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは2〜250μmであり、さらに好ましくは5〜100μmの範囲である。なお、本発明における平均粒子サイズは、レーザー回折式粒度分布計で測定した時に得られる50%粒径値(D50)で評価したものである。
なお、本発明のNiMgCuZnフェライト粉は、混合焙焼法や共沈法など特殊なフェライト原料製造方法を用いて得ることもできる。
〔実施例1〕
成分組成比が、Fe2O3=49,CuO=6を一定とし、残部のZnO,NiO,MgOを、3成分の合計量で45%とし、さらに表1に示す組成比となるように秤量し、ボールミルで湿式混合した後、1150℃で焼成し、ついで解砕、分級して、平均粒径D50=50μmのNiMgCuZnフェライト粉とした。ついで、得られたNiMgCuZnフェライト粉にポリビニルアルコール(PVA)を少量添加して混合した後、40×40×約5mm、30gの板状に成形し、1100℃で熱処理してNiMgCuZnフェライト板を作製した。
得られたNiMgCuZnフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定した。70秒、80秒、90秒の表面温度の差が10℃以内の場合を昇温停止とみなして、それらの平均値を昇温停止温度Tsとした。
表1に、得られた結果を併記する。
成分組成比が、Fe2O3:CuO:ZnO:NiO:MgO=47:10:26:8.5:8.5(%)となるように秤量し、ボールミルで湿式混合した後、大気中950℃で5時間焼成し、粉砕、分級して、表2に示すD50=3〜460μmのNiMgCuZnフェライト粉を得た。
ついで、これらのNiMgCuZnフェライト粉をシリコン樹脂と混練して、フェライト粉:樹脂=70:30(mass%)のシートを成形し、40×40×約1mmのシート状に切り出して、粒度の異なる種々のNiMgCuZnフェライトシートを作製した。得られたシートの表面状態を目視観察した。さらに、市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定し、昇温特性を調べた。
それぞれの測定結果を表2に併記する。
成分組成比が、表3に示すモル比になるように、Fe2O3,CuO,ZnO,NiOおよびMgOを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、大気中950℃で2時間焼成し、粉砕、分級して、D50=20〜60μmのNiMgCuZnフェライト粉を得た。
ついで、得られたNiMgCuZnフェライト粉にポリビニルアルコール(PVA)を少量添加して混合した後、40×40×約5mm、30gの板状に成形し、1100℃で熱処理してNiMgCuZnフェライト板を作製した。
得られたNiMgCuZnフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時の成形体表面の温度を放射温度計で測定した。70秒、80秒、90秒の表面温度の差が10℃以内の場合を昇温停止とみなし、それらの平均値を昇温停止温度Tsとした。
表3に、得られた結果を併記する。
なお、上記した実施例では、発熱体の少なくとも一部(表層含む)にNiMgCuZnフェライト粉を含有する調理器具や、表面に釉薬と混ぜたNiMgCuZnフェライト粉を塗布した調理器具の発明例を示してはいないが、本発明に従う限り、いずれも上記したシートと同様に、良好な発熱性能と昇温停止性能を有していることを確認している。
Claims (3)
- 鉄酸化物をFe2O3換算で46〜51mol%、
銅酸化物をCuO換算で3〜14mol%および
亜鉛酸化物をZnO換算で4〜40mol%
含み、残部はニッケル酸化物、マグネシウム酸化物および不可避的不純物からなるNiMgCuZnフェライト粉であって、
上記NiMgCuZnフェライト粉の平均粒子サイズが2〜500μmの範囲で、
上記亜鉛酸化物、上記ニッケル酸化物および上記マグネシウム酸化物を、それぞれZnO,NiOおよびMgO換算量の合計で、40〜48mol%の範囲とし、
さらに、ZnO,NiOおよびMgO換算量の合計を100とした三角ダイアグラムにおいて、(ZnO,NiO,MgO)が、A(85,15,0),B(11,89,0),C(33,0,67)およびD(67,0,33)の4点で囲まれる領域内(但し、線上は含まず)の組成であることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用NiMgCuZnフェライト粉。 - 請求項1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも一部に含有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
- 請求項1に記載のNiMgCuZnフェライト粉を、少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
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