JP6088417B2 - マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトおよびその製造方法、並びに、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体 - Google Patents
マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトおよびその製造方法、並びに、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体 Download PDFInfo
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Description
本発明は、マイクロ波加熱装置に用いられる特殊セラミックス材料に関するものであり、特に、マイクロ波を吸収して優れた発熱性能を示すと同時に、所定の温度で昇温を停止する性能も備えるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトに関するものである。
また、本発明は、上記Li系フェライトの製造方法、ならびに、このLi系フェライトを利用したマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体に関するものである。
また、本発明は、上記Li系フェライトの製造方法、ならびに、このLi系フェライトを利用したマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体に関するものである。
電子レンジは、通常、2.45GHzのマイクロ波を食品に照射し、食品中の水分子がマイクロ波を吸収して振動する現象を利用して食品を加熱する調理機器である。ここで、マイクロ波を吸収できるのは水分子に限定されるものではなく、誘電損失や磁気損失の高い材料であれば、食品と同様にマイクロ波を吸収して温度が上昇することが知られている。
近年、電子レンジによるマイクロ波吸収発熱を利用して高温まで短時間で自己発熱する坩堝が提案されており、研究用のセラミックス焼成や金属溶融などへの応用が期待されている(例えば、(株)羽根田商会製「電子レンジるつぼ」など)。
一般に、高温まで発熱可能なマイクロ波発熱体としては、カーボンや炭化珪素などが用いられる。これらの材料は、マイクロ波を吸収して発熱し続けるため、所望の温度を得るためにはマイクロ波照射時間を調整したり、放熱と発熱のバランスを制御したりする必要がある。
また、発明者らは、特許文献1において、電子レンジ用の加熱調理器具に用いる発熱体として、所定温度で昇温を停止するマイクロ波吸収発熱体用NiCuZnフェライトを提案した。特許文献1に記載の技術によって、50〜550℃の範囲の所期した温度で昇温を停止することが可能となった。
しかしながら、特許文献1に記載されたNiCuZnフェライトでは、NiCuZnフェライト中のZnO比を小さくすると昇温停止温度を高温にできるものの、550℃程度が上限であった。このため、550℃をさらに超える高温域に昇温停止温度を設定したい場合などに、未だ課題を残しており、セラミックスの熱処理や金属溶解などのように、550℃をさらに超える高温が必要とされる用途に用いることはできなかった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、所定温度までの発熱性能に優れるのはいうまでもなく、550〜700℃という、従来材よりも高温度域で昇温停止温度を任意に選択できるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトを提案することを目的とする。また、本発明は、上記Li系フェライトの製造方法、ならびに、このLi系フェライトを利用したマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体を提案することを目的とする。
マイクロ波による固体の発熱現象は、渦電流によるジュール損失、誘電損失、磁気損失の3つの損失に起因する。上記のNiCuZnフェライトの場合は、磁気損失を利用して急速に発熱するが、磁性が消失するキュリー温度(Tc)付近では磁気損失が消失するために、発熱が停止する。ここで、Ni単元フェライトのキュリー温度は、Tc=585℃であるが、昇温停止挙動を得るためには、Tcが低い、CuフェライトおよびZnフェライトと複合化する必要があり、NiCuZnフェライトの場合、昇温停止温度は550℃が上限であった。
そこで、発明者らは550℃を超える高温で昇温停止挙動を実現できる磁性体について鋭意検討を加えた。
まず、はじめに、磁性体のTcに注目し、NiフェライトよりもTcの高いLi系フェライト(Tc=670℃)に注目した。Li系フェライト(Li0.5Fe2.5O4)の組成で板状焼結体を作製し、マイクロ波を照射して発熱性能を調べたところ、600℃を超える高温まで急速に昇温することを確認した。
まず、はじめに、磁性体のTcに注目し、NiフェライトよりもTcの高いLi系フェライト(Tc=670℃)に注目した。Li系フェライト(Li0.5Fe2.5O4)の組成で板状焼結体を作製し、マイクロ波を照射して発熱性能を調べたところ、600℃を超える高温まで急速に昇温することを確認した。
しかしながら、Li系フェライトは、マイクロ波照射時間と共に、さらに緩やかに昇温をし続け、その昇温停止挙動は不明瞭であった。また、Li系フェライトは、マイクロ波による急速昇温および照射停止後の急速空冷による熱衝撃に耐えられず、500℃を超える高温まで発熱すると、焼結板が破断するという問題があることが判明した。
すなわち、発熱体を粉体状やコーティング層として使用する場合には問題ないが、坩堝のように塊状で使用する場合は、耐熱衝撃性に優れることが不可欠である。
すなわち、発熱体を粉体状やコーティング層として使用する場合には問題ないが、坩堝のように塊状で使用する場合は、耐熱衝撃性に優れることが不可欠である。
そこで、発明者らがさらに検討を加えた結果、Li系フェライトに所定量のビスマス酸化物を添加すると、明瞭な昇温停止挙動が得られ、併せて、耐熱衝撃性能が向上することを見出した。また、ビスマス酸化物の添加量が増えるとともに昇温停止温度が高温化して、550〜700℃の温度範囲で昇温停止温度が調整可能であることが明らかになった。
さらに、成分に加えて、Li系フェライトの焼成温度を適切に選定することで、より安定した昇温停止挙動と耐熱衝撃性能が得られることを知見した。
本発明は、上記の知見に立脚し、さらに改良を加えて完成させたものである。
さらに、成分に加えて、Li系フェライトの焼成温度を適切に選定することで、より安定した昇温停止挙動と耐熱衝撃性能が得られることを知見した。
本発明は、上記の知見に立脚し、さらに改良を加えて完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%、かつ鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%の範囲からなる基本成分に加え、
上記リチウム酸化物と上記鉄酸化物の合計量:100質量部に対して、ビスマス酸化物がBi2O3換算で、0.1〜10質量部を含有するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト。
1.リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%、かつ鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%の範囲からなる基本成分に加え、
上記リチウム酸化物と上記鉄酸化物の合計量:100質量部に対して、ビスマス酸化物がBi2O3換算で、0.1〜10質量部を含有するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト。
2.前記1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトが、粉体形状であるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉。
3.前記1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトが、塊形状であるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体。
4.前記マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体の焼結密度が、3.30〜4.60g/cm3の範囲である前記3に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体。
5.前記1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト、前記2に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、および、前記3乃至4に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体のうちから選んだ1種以上を、少なくとも一部に含有するマイクロ波吸収発熱体。
6.前記1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトを得る製造方法であって、リチウム化合物、鉄化合物およびビスマス化合物を混合した後、900〜1150℃の範囲で焼成するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトの製造方法。
本発明によれば、電子レンジに用いられる2.45GHzのマイクロ波を効果的に吸収して急速に発熱、昇温し、かつ550〜700℃の高温域における任意の温度でその昇温を停止させることができると共に、耐熱衝撃性に優れ、塊形状で使用しても熱衝撃で破断し難い特徴を有するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトを、その製造方法と共に得ることができる。
また、本発明によれば、上記特徴を有するLi系フェライトを利用したマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体を得ることができる。
また、本発明によれば、上記特徴を有するLi系フェライトを利用したマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体およびマイクロ波吸収発熱体を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明におけるLi系フェライトの基本成分について説明する。
本発明におけるLi系フェライトの基本成分は、リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%、かつ鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%の組合せからなる。
まず、本発明におけるLi系フェライトの基本成分について説明する。
本発明におけるLi系フェライトの基本成分は、リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%、かつ鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%の組合せからなる。
リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%
Li系フェライトの基本成分中、リチウム酸化物が、Li2O換算で15.5mol%未満または18.0mol%を超えると、昇温停止挙動が不明瞭になる。従って、リチウム酸化物は、Li2O換算で15.5〜18.0mol%の範囲とする。好ましくは、15.8〜17.2mol%である。
Li系フェライトの基本成分中、リチウム酸化物が、Li2O換算で15.5mol%未満または18.0mol%を超えると、昇温停止挙動が不明瞭になる。従って、リチウム酸化物は、Li2O換算で15.5〜18.0mol%の範囲とする。好ましくは、15.8〜17.2mol%である。
鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%
Li系フェライトの基本成分中、鉄酸化物が、Fe2O3換算で82.0mol%未満または84.5mol%を超えると、昇温停止挙動が不明瞭になる。従って、鉄酸化物は、Fe2O3換算で82.0〜84.5mol%の範囲とする。好ましくは、82.8〜84.2mol%である。
Li系フェライトの基本成分中、鉄酸化物が、Fe2O3換算で82.0mol%未満または84.5mol%を超えると、昇温停止挙動が不明瞭になる。従って、鉄酸化物は、Fe2O3換算で82.0〜84.5mol%の範囲とする。好ましくは、82.8〜84.2mol%である。
ビスマス酸化物の含有量:リチウム酸化物と鉄酸化物(以下、単に基本成分といった場合は、リチウム酸化物と鉄酸化物からなる成分を意味する)の合計量を100質量部とした時、Bi2O3換算で0.1〜10(質量部)
ビスマス酸化物は、マイクロ波吸収発熱挙動と耐熱衝撃性に影響する。ビスマス酸化物が無添加では、昇温停止挙動が不明瞭となるが、ビスマス酸化物を添加することによって、昇温停止挙動が明瞭となると共に、昇温停止温度が高温化する。また、ビスマス酸化物が無添加では、500℃程度まで発熱すると、熱衝撃によって焼結体が破断するが、ビスマス酸化物を添加したものは、破断が抑えられる。一方、ビスマス酸化物は、焼成中に蒸発して炉内の耐火物に悪影響を及ぼす可能性があるため、多量に添加することは好ましくない。
すなわち、ビスマス酸化物の含有量が、基本成分の合計量を100質量部とした時、Bi2O3換算で0.1質量部未満の場合は、焼結体の発熱性能および耐熱衝撃性の改善効果が不十分である一方で、ビスマス酸化物の添加量が、基本成分を100質量部とした時、Bi2O3換算で10質量部を超えると、その改善効果が飽和するだけでなく、炉内の耐火物に悪影響を及ぼすおそれが生じてしまうことになる。
従って、ビスマス酸化物の含有量は、基本成分を100質量部とした時、Bi2O3換算で0.1〜10質量部の範囲とする。好ましくは、0.5〜8質量部である。
ビスマス酸化物は、マイクロ波吸収発熱挙動と耐熱衝撃性に影響する。ビスマス酸化物が無添加では、昇温停止挙動が不明瞭となるが、ビスマス酸化物を添加することによって、昇温停止挙動が明瞭となると共に、昇温停止温度が高温化する。また、ビスマス酸化物が無添加では、500℃程度まで発熱すると、熱衝撃によって焼結体が破断するが、ビスマス酸化物を添加したものは、破断が抑えられる。一方、ビスマス酸化物は、焼成中に蒸発して炉内の耐火物に悪影響を及ぼす可能性があるため、多量に添加することは好ましくない。
すなわち、ビスマス酸化物の含有量が、基本成分の合計量を100質量部とした時、Bi2O3換算で0.1質量部未満の場合は、焼結体の発熱性能および耐熱衝撃性の改善効果が不十分である一方で、ビスマス酸化物の添加量が、基本成分を100質量部とした時、Bi2O3換算で10質量部を超えると、その改善効果が飽和するだけでなく、炉内の耐火物に悪影響を及ぼすおそれが生じてしまうことになる。
従って、ビスマス酸化物の含有量は、基本成分を100質量部とした時、Bi2O3換算で0.1〜10質量部の範囲とする。好ましくは、0.5〜8質量部である。
なお、本発明に用いるLi系フェライトの原料中には、基本成分とビスマス酸化物の他、原料成分や製造過程で、SiO2やMn、Ca、AlおよびPなどが不可避的不純物として混入する場合があるが、これらは、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトの合計量中、1質量%以下であれば特に問題はない。
次に、本発明のLi系フェライトの製造方法について説明する。なお、以下に述べる製造条件以外の製造条件は、フェライトおよびフェライトを用いた粉体、焼結体および発熱体の従来公知の製造条件に従えば良い。
焼成温度:900〜1150℃
フェライト粉末の焼成温度は、マイクロ波吸収発熱挙動と耐熱衝撃性に影響する。焼成温度が900℃より低いと、フェライト化反応が十分に進行しないために昇温停止挙動が不安定であると共に、焼結が不十分となって材料の機械的強度が低いために、耐熱衝撃性が劣る。一方、焼成温度が1150℃より高いと、昇温停止温度が低温化し、600℃を超える高温まで発熱できなくなると共に、焼結体が緻密化し過ぎて欠けやすくなる。
従って、本発明における焼成温度は、900〜1150℃の範囲に限定する。好ましくは、920〜1100℃の範囲である。
また、焼成時間については、特別の限定はないが、0.5〜10時間程度とするのが好ましい。
フェライト粉末の焼成温度は、マイクロ波吸収発熱挙動と耐熱衝撃性に影響する。焼成温度が900℃より低いと、フェライト化反応が十分に進行しないために昇温停止挙動が不安定であると共に、焼結が不十分となって材料の機械的強度が低いために、耐熱衝撃性が劣る。一方、焼成温度が1150℃より高いと、昇温停止温度が低温化し、600℃を超える高温まで発熱できなくなると共に、焼結体が緻密化し過ぎて欠けやすくなる。
従って、本発明における焼成温度は、900〜1150℃の範囲に限定する。好ましくは、920〜1100℃の範囲である。
また、焼成時間については、特別の限定はないが、0.5〜10時間程度とするのが好ましい。
ここで、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトは、粉体形状のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、または塊形状のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体とすることができる。
上記マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉を得るためには、以下の製造手順に依ることが好ましい。
すなわち、上記成分組成に調整した、Fe2O3、Li2CO3およびBi2O3を出発原料として、混合し、900〜1150℃で熱処理してフェライト化し、その後必要に応じて粉砕、分級などを施して所望の粒子サイズに調整すれば良い。なお、上記出発原料は、Fe、LiおよびBiの酸化物に限られず、それらの炭酸塩等、酸素含有化合物であれば良い。また、所望の粒子サイズとは、1〜500μm程度であり、上記熱処理前には、800〜1000℃程度で仮焼しても良い。
すなわち、上記成分組成に調整した、Fe2O3、Li2CO3およびBi2O3を出発原料として、混合し、900〜1150℃で熱処理してフェライト化し、その後必要に応じて粉砕、分級などを施して所望の粒子サイズに調整すれば良い。なお、上記出発原料は、Fe、LiおよびBiの酸化物に限られず、それらの炭酸塩等、酸素含有化合物であれば良い。また、所望の粒子サイズとは、1〜500μm程度であり、上記熱処理前には、800〜1000℃程度で仮焼しても良い。
また、上記焼成密度のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体を得るためには、以下の製造手順に依ることが好ましい。
すなわち、上記の成分組成に調整した、Fe2O3、Li2CO3およびBi2O3を、出発原料として、混合したのち、この原料混合粉を必要に応じて800〜1000℃程度で仮焼し、必要に応じて粉砕し、さらに所望の形状に成形して、900〜1150℃で焼成することで、本発明に従う塊形状のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体を得ることができる。
なお、本発明において、塊形状とは、単独で、坩堝や容器として使用できる形だけでなく、以下に述べるマイクロ波吸収発熱体の一部の形状であっても良い。
すなわち、上記の成分組成に調整した、Fe2O3、Li2CO3およびBi2O3を、出発原料として、混合したのち、この原料混合粉を必要に応じて800〜1000℃程度で仮焼し、必要に応じて粉砕し、さらに所望の形状に成形して、900〜1150℃で焼成することで、本発明に従う塊形状のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体を得ることができる。
なお、本発明において、塊形状とは、単独で、坩堝や容器として使用できる形だけでなく、以下に述べるマイクロ波吸収発熱体の一部の形状であっても良い。
上記Li系フェライト焼結体は、特に、耐熱衝撃特性の観点からは、適度な機械的強度と熱衝撃を緩和するための空隙のバランスが重要であり、Li系フェライト焼結体の焼結密度を3.30〜4.60g/cm3程度の範囲とすることで最も良好な耐熱衝撃性能が得られ、昇温停止挙動も明瞭となる。なお、より好ましくは、4.00〜4.40g/cm3の範囲であり、さらに好ましくは、4.05〜4.36g/cm3の範囲である。
本発明のマイクロ波吸収発熱体は、上述した方法で得られたLi系フェライト、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、および、マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体のうちから選んだ1種以上を、少なくともその一部に含有することができる。また、本発明では、塊形状の焼結体のままでマイクロ波吸収発熱体としたり、Li系フェライト粉を、700℃程度の高温でも使用できる耐火物に混合したり、耐火物の表面に被覆したりしてマイクロ波吸収発熱体とすることができる。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
[実施例1]
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、Bi2O3が基本成分100質量部に対して2.0質量部となるように添加して、乳鉢で混合した後、850℃で仮焼した。
仮焼粉を板状に成形し、1000℃で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。この板状焼結体の焼結密度は4.33g/cm3であった。
また、リチウムを含まない従来品として、mol%で、Fe2O3:ZnO:NiO:CuO=49:5:40:6の比率とし、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmの大きさで、焼結密度を4.33g/cm3とした。
得られたフェライト板を、それぞれ、市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を照射した時の試料表面温度を、放射温度計で測定した。
図1に、得られた結果を、マイクロ波照射時間とサンプル表面温度との関係で示す。
[実施例1]
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、Bi2O3が基本成分100質量部に対して2.0質量部となるように添加して、乳鉢で混合した後、850℃で仮焼した。
仮焼粉を板状に成形し、1000℃で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。この板状焼結体の焼結密度は4.33g/cm3であった。
また、リチウムを含まない従来品として、mol%で、Fe2O3:ZnO:NiO:CuO=49:5:40:6の比率とし、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmの大きさで、焼結密度を4.33g/cm3とした。
得られたフェライト板を、それぞれ、市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を照射した時の試料表面温度を、放射温度計で測定した。
図1に、得られた結果を、マイクロ波照射時間とサンプル表面温度との関係で示す。
同図から明らかなように、本発明に従う発明例1のLi系フェライトは、550℃を超える高温まで発熱し、約660℃で昇温停止することが分かる。これに対して、従来品は、500℃程度で昇温が止まっている。
[実施例2]
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、表1に示す量のBi2O3を添加して、乳鉢で混合した後、板状に成形し、950℃で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。
得られたフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を150秒間照射した時の試料表面温度を放射温度計で測定し、昇温停止挙動を観察した。
なお、昇温停止挙動は、マイクロ波照射時間が、140秒の時と150秒の時とで試料表面温度をそれぞれ測り、試料表面温度の差が、140秒の時と150秒の時とで、20℃以内となる場合を「明瞭に停止」、20〜40℃となる場合を「不明瞭」、40℃以上となる場合を「昇温し続ける」とした。また、耐熱衝撃性は昇温測定での試料の割れ度合いを目視観察して評価した。
表1に、得られた結果を併記する。
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、表1に示す量のBi2O3を添加して、乳鉢で混合した後、板状に成形し、950℃で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。
得られたフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を150秒間照射した時の試料表面温度を放射温度計で測定し、昇温停止挙動を観察した。
なお、昇温停止挙動は、マイクロ波照射時間が、140秒の時と150秒の時とで試料表面温度をそれぞれ測り、試料表面温度の差が、140秒の時と150秒の時とで、20℃以内となる場合を「明瞭に停止」、20〜40℃となる場合を「不明瞭」、40℃以上となる場合を「昇温し続ける」とした。また、耐熱衝撃性は昇温測定での試料の割れ度合いを目視観察して評価した。
表1に、得られた結果を併記する。
表1から明らかなように、本発明のLi系フェライトは優れた耐熱衝撃性と昇温停止挙動を併せ持つことが分かる。さらに、Bi2O3含有量が増えると共に昇温停止温度が上昇することと共に、Bi2O3含有量を調整することで550〜700℃の温度範囲で昇温停止温度を的確に制御できることが分かる。
[実施例3]
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、Bi2O3が基本成分100質量部に対して2.0質量部となるように添加して、乳鉢で混合した後、板状に成形し、表2に示す焼成温度で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。
得られたフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を150秒間照射し、それぞれの照射時間の試料表面温度を放射温度計で測定した。なお、昇温停止挙動は、マイクロ波照射時間が、140秒の時と150秒の時とで試料表面温度をそれぞれ測り、試料表面温度の差が、140秒の時と150秒の時とで、20℃以内となる場合を「明瞭に停止」、20〜40℃となる場合を「不明瞭」、40℃以上となる場合を「昇温し続ける」とした。また、耐熱衝撃性は昇温測定での試料の割れ度合いを目視観察して評価した。
表2に、得られた結果を併記する。
出発原料をFe2O3、Li2CO3として、基本成分が、Li2O換算で16.67mol%、Fe2O3換算で83.33mol%となるように秤量し、さらに、Bi2O3が基本成分100質量部に対して2.0質量部となるように添加して、乳鉢で混合した後、板状に成形し、表2に示す焼成温度で2時間焼成して、縦:35mm×横:35mm×厚:5mmのLi系フェライトよりなる板状焼結体を得た。
得られたフェライト板を市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を150秒間照射し、それぞれの照射時間の試料表面温度を放射温度計で測定した。なお、昇温停止挙動は、マイクロ波照射時間が、140秒の時と150秒の時とで試料表面温度をそれぞれ測り、試料表面温度の差が、140秒の時と150秒の時とで、20℃以内となる場合を「明瞭に停止」、20〜40℃となる場合を「不明瞭」、40℃以上となる場合を「昇温し続ける」とした。また、耐熱衝撃性は昇温測定での試料の割れ度合いを目視観察して評価した。
表2に、得られた結果を併記する。
表2から明らかなように、本発明の焼成温度範囲で作製すると、優れた耐熱衝撃性と昇温停止挙動とを併せ持つLi系フェライトを得ることができることが分かる。
以上の実施例で示したとおり、本発明に従うLi系フェライトは、マイクロ波照射によって急速に昇温することができ、しかも550〜700℃の所定の温度で昇温を停止し、さらには優れた耐熱衝撃性を有することが判明し、もって、本発明の効果を確認することができた。
Claims (6)
- リチウム酸化物がLi2O換算で、15.5〜18.0mol%、かつ鉄酸化物がFe2O3換算で、82.0〜84.5mol%の範囲からなる基本成分に加え、
上記リチウム酸化物と上記鉄酸化物の合計量:100質量部に対して、ビスマス酸化物がBi2O3換算で、0.1〜10質量部を含有するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト。 - 請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトが、粉体形状であるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉。
- 請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトが、塊形状であるマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体。
- 前記マイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体の焼結密度が、3.30〜4.60g/cm3の範囲である請求項3に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体。
- 請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト、請求項2に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト粉、および、請求項3乃至4に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライト焼結体のうちから選んだ1種以上を、少なくとも一部に含有するマイクロ波吸収発熱体。
- 請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトを得る製造方法であって、リチウム化合物、鉄化合物およびビスマス化合物を混合した後、900〜1150℃の範囲で焼成するマイクロ波吸収発熱体用Li系フェライトの製造方法。
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