JP5824411B2 - マイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法およびその粉末を用いたマイクロ波吸収発熱体の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、調理器具本体の素材にマイクロ波吸収発熱粉を混合したり、表面にマイクロ波吸収発熱粉を含有する層を焼き付けたりして、マイクロ波吸収発熱性能を発現させている。
しかしながら、これらの物質は黒色、暗茶色、灰色などを呈するため、調理器具の色に制約があり、白色や明るい色調の発熱調理器具を作製するには適さなかった。
このため、優れたマイクロ波吸収発熱性能を有し、かつ白色系で色調の自由度が高くデザイン性に富んだ発熱体が求められていた。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.原料粉を、混合して、粉状または成形体とした後、焼成し、ついで必要に応じて粉砕や、分級を施して所定の粒子サイズに調整するマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法において、
上記原料粉として、
SiO2換算で5〜40mass%のシリコン酸化物と、
ZnO換算で50mass%以上95mass%以下の亜鉛酸化物と、
該シリコン酸化物と該亜鉛酸化物の合計量を100質量部とした時、CuO換算で0.05質量部未満(但し、0質量部は含まない)の銅酸化物との混合物を用い、
かつ750℃以上、1350℃以下の温度範囲で焼成する
ことを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法。
2.前記原料粉が、さらに、
Al2O3,MgO,TiO2およびBaTiO3のうちから選んだ少なくとも1種を合計量で25mass%以下含有することを特徴とする前記1に記載のマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法。
本発明は、原料粉を、混合して、粉状または成形体とした後、焼成し、ついで必要に応じて粉砕や、分級を施して所定の粒子サイズに調整してマイクロ波吸収発熱体用粉末を製造する方法、およびその際に得られたマイクロ波吸収発熱体用粉末を用いてマイクロ波吸収発熱体を製造する方法にかかるものである。
亜鉛酸化物は、単体でもマイクロ波を吸収して発熱する物質であり、出力:500Wで1分間のマイクロ波照射で150℃程度にまで発熱する。従って、亜鉛酸化物はZnO換算で50%以上添加させる。
亜鉛酸化物に、シリコン酸化物を添加し、熱処理することで、発熱性能が一段と向上し、200℃以上までの昇温が可能となるため、必須の添加物である。しかしながら、シリコン酸化物自体は発熱しない物質であるため、シリコン酸化物がSiO2換算で50%を超えると発熱性能が低下し、その添加効果が無くなる。従って、シリコン酸化物はSiO2換算で50%以下が必須である。好ましくは5〜40%、より好ましくは7〜35%の範囲である。
さらに、本発明では、微量のCuOを添加することで、発熱体のマイクロ波吸収による発熱速度の制御が可能となる。CuO添加量が多いほど、昇温速度を緩やかにすることができるため、必須の添加物ではあるが、その添加量が0.05質量部以上になると発熱性能が消失する。従って、銅酸化物は、前記シリコン酸化物と前記亜鉛酸化物の合計量を100質量部とした時、CuO換算で0.05質量部未満に限定される。好ましくは、0.0005〜0.03質量部、より好ましくは0.0005〜0.02質量部の範囲である。
また、上記したシリコン酸化物、亜鉛酸化物および銅酸化物の粒径に特別の限定はないが、製造時のハンドリングの容易さを考慮すると、それぞれ0.05〜20μm程度が好ましい。
その他のセラミックス粉末の粒径は、0.1〜10μm程度が好ましい。
すなわち、所定量のZnOとSiO2が共存すると、特定の温度域で、オリビン化合物であるZn2SiO4が生成するため、発熱体の誘電特性が向上して、良好な発熱特性が得られるものと推測されるが、ここに、CuOが加わると、室温から100℃程度までの温度域における発熱体の誘電特性が、適度に低下するため、発熱体の発熱速度が緩やかになるものと考えている。
焼成温度:750〜1350℃
焼成温度は、ZnO、SiO2およびCuOの反応性に大きな影響を及ぼす。すなわち、焼成温度が750℃に満たないと、発熱特性を改善するオリビン化合物の生成反応が十分に進行しないため、発熱体が200℃を超える高温まで昇温できなくなる。一方、焼成温度が1350℃を超えると、ZnOの蒸発やSiO2の構造変化、さらにはCuOの価数変化の影響を受けるために、発熱体の発熱特性が劣化する。従って、焼成温度は750〜1350℃の範囲に限定する。好ましくは、850〜1200℃の範囲である。なお、焼成時間については、特別の限定はないが、生産効率の観点などから0.5〜10時間程度とするのが好ましい。
まず、前述したような好適成分組成に調整したZnO、SiO2およびCuOを混合し、粉末状または成形体として、大気雰囲気中で750〜1350℃の温度として熱処理した後、必要に応じて粉砕、分級などを施して所定の粒子サイズに調整し、マイクロ波吸収発熱体用粉末とする。その際、湿式合成法、水熱合成法など特殊な原料製造方法を用いることもできる。
また、釉薬などと混合し、セラミックス基材の調理皿の表面に塗布後、焼成して使用することができる。このとき、被膜層の厚みは50〜300μm程度とするのが好ましい。さらに、陶磁器の原料粉末に、本発明に従うマイクロ波吸収発熱体用粉末を混合して、発熱体とすることもできる。このとき、およそ10%以上、好ましくは30%以下添加した原料を用いて成形し、焼成することで、調理皿を作製しても良い。
〔実施例1〕
白色粉として、SiO2:ZnO=17:83(%)の混合粉(100質量部)に対して、CuO=0〜2質量部を添加して、混合し、大気中で900℃、2hの条件で焼成して、白色発熱粉を得た。得られた白色発熱粉をシリコン樹脂と混練して、白色発熱粉:樹脂=75:25(mass%)のシートを成形し、40×40×約1mmの形状に切り出して、シートサンプルを作製した。これらのシートサンプルを、市販の電子レンジ(日立製作所製MRO-GS8型)の中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時のシートの表面温度を、放射温度計で測定した。
図1に、得られた測定結果を示す。
昇温速度は、本発明の添加範囲内でCuO量とともに低減するが、添加量が0.05質量部になると200℃以上に昇温することができなくなり、0.05質量部を超えると100℃以上に昇温することがほとんどできなくなる。また、本発明の範囲外である添加量が0.1〜2質量部では、発熱性能がほとんど認めらない。なお、0.1〜2質量部添加されたシート温度が、マイクロ波照射時間とともに僅かに上昇するのは、サンプル皿や電子レンジの床板および側壁からの伝熱の影響であって、サンプル自体の発熱によるものではない。
表1に示す組成比のSiO2,ZnO,Al2O3およびCuOを混合し、大気中で600〜1370℃の所定温度で2時間焼成して、それぞれ白色発熱粉を得た。得られた白色発熱粉をシリコン樹脂と混練して、白色発熱粉:樹脂=75:25(mass%)のシートを成形し、40×40×約1mmの形状に切り出して、シートサンプルを作製した。これらのシートサンプルを市販の電子レンジ(日立製作所製MRO-GS8型)の中に置き、500Wのマイクロ波を10〜90秒間照射した時のシートサンプルの表面温度を放射温度計で測定した。
表1に、シートサンプル温度が200℃に到達するまでの時間とマイクロ波を90秒間照射した時のシートサンプル温度を併記する。
なお、本発明におけるマイクロ波吸収発熱体中のマイクロ波吸収発熱体用粉末の含有量は、75(%)に限定されるものではなく、含有量を調整することで、発熱温度を、200℃から350℃を超える高温まで任意の温度に調整することができる。
Claims (5)
- 原料粉を、混合して、粉状または成形体とした後、焼成し、ついで必要に応じて粉砕や、分級を施して所定の粒子サイズに調整するマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法において、
上記原料粉として、
SiO2換算で5〜40mass%のシリコン酸化物と、
ZnO換算で50mass%以上95mass%以下の亜鉛酸化物と、
該シリコン酸化物と該亜鉛酸化物の合計量を100質量部とした時、CuO換算で0.05質量部未満(但し、0質量部は含まない)の銅酸化物との混合物を用い、
かつ750℃以上、1350℃以下の温度範囲で焼成する
ことを特徴とするマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法。 - 前記原料粉が、さらに、
Al2O3,MgO,TiO2およびBaTiO3のうちから選んだ少なくとも1種を合計量で25mass%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波吸収発熱体用粉末の製造方法。 - 請求項1または2に記載の製造方法に従い得られたマイクロ波吸収発熱体用粉末に、耐熱性樹脂を混合し、成形して、マイクロ波吸収発熱体とすることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法に従い得られたマイクロ波吸収発熱体用粉末に、釉薬を混合して混合液とし、該混合液を、セラミックス基材の表面に塗布後、焼成して、マイクロ波吸収発熱体とすることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法に従い得られたマイクロ波吸収発熱体用粉末に、陶磁器の原料粉末を混合し、成形後、焼成して、マイクロ波吸収発熱体とすることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体の製造方法。
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