JP2017027933A - マイクロ波吸収発熱体 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる発熱体は、電子レンジ用発熱調理器や、マイクロ波を利用した保温材、温熱医療用発熱体など、産業用加熱用途に利用することができる。
1.電磁波を吸収して発熱するMnZn系フェライト粉と電磁波を吸収して発熱するNi系フェライト粉とを、MnZn系フェライト粉:Ni系フェライト粉=30〜90:10〜70(mass%)の範囲で混合したマイクロ波吸収発熱体用フェライト粉を、樹脂中に40〜90(mass%)の割合で含有させたことを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
また、上記マイクロ波吸収発熱体は、単に混合物の混合比から比例計算した速度よりも、立上りの昇温速度を速くすることができる。
さらには、原料価格の高価なNi系フェライトの一部を安価なMnZn系フェライトで置き換えることができるため、製造コスト低減効果も期待できる。
本発明のマイクロ波吸収発熱体は、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉と樹脂からなる。
また、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉は、電磁波を吸収して発熱するMnZn系フェライト粉と電磁波を吸収して発熱するNi系フェライト粉との混合粉からなる。
マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉におけるNi系フェライトの混合比が10(mass%)未満の場合、MnZn系フェライトの昇温特性とほとんど変わらない特性しか得られない。一方、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉におけるNi系フェライトの混合比が70(mass%)を超えると、Ni系フェライトの昇温特性とほとんど変わらない特性しか得られない。
そのため、MnZn系フェライト粉:Ni系フェライト粉は、30〜90:10〜70(mass%)の範囲で混合する。より好ましくは、MnZn系フェライト粉:Ni系フェライト粉=40〜80:20〜60(mass%)の範囲である。
図1に示したように、MnZn系フェライト粉とNi系フェライト粉との混合比を上記の範囲に調整することで、単純な混合比からの比例計算から予想される温度(図1中の点線で示した線)よりも短時間で高温となる。すなわち、マイクロ波吸収発熱体の立上りの昇温速度を速くすることができる。
ここで、上記樹脂の種類は、用途および昇温停止温度によって適宜選択されるが、例えば、250℃を超える高温を選択するのであれば、シリコーン樹脂やPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱樹脂を用いることが好ましい。
また、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉と樹脂との混合比は、発熱性能および成形品の品質に影響するため、製品の発熱性能および成形品の品質から適宜決めることができる。
Fe2O3が多過ぎるとMnZnフェライトの焼成段階で異相が析出しやすくなり、発熱性能に悪影響を及ぼす。従って、Fe酸化物はFe2O3換算で57mol%以下が好ましく、56mol%以下がより好ましい。一方、Fe2O3が少なくなるとキュリー温度が低下し、昇温停止温度が低温化する。従って、昇温停止温度を200℃以上に調整するためには、Fe酸化物はFe2O3換算で53mol%以上が好ましく、54mol%以上がより好ましい。
ZnOは飽和磁束密度の温度依存性に関係する。ZnOが11mol%を超えるとキュリー温度が低下し、昇温停止温度が200℃以下に低下する。従って、Zn酸化物はZnO換算で11mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましい。一方、ZnOが4mol%未満では飽和磁束密度が低下して発熱性能に悪影響を及ぼす。従って、Zn酸化物はZnO換算で4mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましい。
NiOは複素透磁率の虚数成分μ’’の温度特性に関係する。2.45GHzのμ’’が大きいほど高周波磁気損失に起因するマイクロ波発熱能が高くなる。NiOを含まないとμ’’の値は室温で大きく、NiO量とともにμ’’のピーク温度は高温化する。NiOが4mol%を超えると、μ’’の値は高温では高いものの、室温付近では小さくなり。発熱体の温度の立ち上がりが遅くなる。従って、Ni酸化物はNiO換算で4mol%以下が好ましく、3mol%以上がより好ましい。一方、NiOの含有量が少ないと、室温付近のμ’’は高いものの、高温で低μ’’となり、昇温の立上りは速いが、その後昇温が遅くなってしまう。しかし、本発明ではNiZn系フェライトと混合することでその影響は小さい。従って、Ni酸化物は含まなくても良い。
さらに具体的には、Fe酸化物(Fe2O3換算):46〜51mol%、Cu酸化物(CuO換算):3〜14mol%、Zn酸化物(ZnO換算):0〜38mol%を含み、残部がNi酸化物からなるNi系フェライト粉であることが昇温停止挙動の安定性の点から好ましい。
Fe2O3は、フェライト相の安定性および比抵抗に影響を与え、マイクロ波印加による昇温速度に作用する。Fe2O3換算で51mol%を超えると、発熱体の比抵抗が低下して金属のようにマイクロ波を反射して発熱性能が低下する。従って、Fe酸化物はFe2O3換算で51mol%以下が好ましく、50mol%以下がより好ましい。一方、Fe2O3が少ないとフェライト以外の相が生成してフェライト単相を得ることが難しくなり、発熱体の昇温速度が低下する。従って、Fe酸化物濃度はFe2O3換算で46mol%以上が好ましく、47mol%以上がより好ましい。
CuOは、マイクロ波印加による昇温特性において、高温での昇温停止挙動に影響する。CuOが3mol%に満たないか、または14mol%を超えたときは、いずれの場合も発熱体の昇温が停止せずに、マイクロ波照射と共に発熱体の温度が上昇し続けてしまう。従って、Cu酸化物はCuO換算で3〜14mol%の範囲が好ましく、4〜10mol%がより好ましい。
ZnOは、マイクロ波印加による昇温特性において、昇温停止温度に影響する。ZnO換算で0〜38mol%に調整することで、50〜550℃の広い温度範囲にわたって昇温停止温度を設定することができる。ZnOが0mol%の場合、550℃程度まで昇温する。ZnOが38mol%超の場合、50℃以上に昇温しない。従って、Zn酸化物はZnO換算で0〜38mol%以上が好ましく、2〜35mol%がより好ましく、3〜20mol%がさらに好ましい。
(実施例1)
MnZn系フェライト粉は、Fe2O3:MnO:NiO:ZnO=55.0:35.0:2.5:7.5(mol%)の基本組成として原料を混合し、ついで、1300℃で焼成、解砕、分級して得た。
Ni系フェライト粉は、Fe2O3:NiO:ZnO:CuO=49:32:13:6mol%の基本組成として原料を混合し、ついで、1100℃で焼成、解砕、分級して得た。
表1に示す比率でMnZn系フェライト粉とNi系フェライト粉を混合し、次いで、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練し、40×40×1mmのシートを作製した。得られたシートを市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10秒〜90秒間照射した時のシートの温度を赤外線放射温度計で測定した。
MnZn系フェライト粉は実施例1と同様な方法で作製した。
Ni系フェライト粉は、Fe2O3:NiO:ZnO:CuO=48:40:5:7mol%の基本組成として原料を混合し、ついで、1000℃で焼成、解砕、分級して得た。
上記のMnZn系フェライト粉とNi系フェライト粉を65:35mass%の比率で混合し、次いで、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練し、40×40×1mmのシートを作製した。得られたシートを市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10秒〜90秒間照射した時のシートの温度を赤外線放射温度計で測定した(発明例8)。
比較例として、Ni系フェライト粉をFe2O3:NiO:ZnO:CuO=48:28:17:7mol%の基本組成として原料を混合し、ついで、1000℃で焼成、解砕、分級して得た。Ni系フェライト粉単体:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練し、発明例8と同様の方法で樹脂シートを作製して、マイクロ波昇温特性を測定した(比較例5)。比較例5のフェライト粉はNi系フェライト粉のみであり、MnZn系フェライト粉を含んでいない。
本発明に従う発明例8および比較例5のマイクロ波昇温特性を図3に示す。
MnZn系フェライト粉は、Fe2O3:MnO:ZnO=55:40:5mol%の基本組成として原料を混合し、ついで、1320℃で焼成、解砕、分級して得た。
Ni系フェライト粉は、Fe2O3:NiO:ZnO:CuO=49:31.5:14.5:5mol%の基本組成として原料を混合し、ついで、950℃で焼成、解砕、分級して得た。
上記のMnZn系フェライト粉とNi系フェライト粉を50:50mass%の比率で混合し、次いで、マイクロ波吸収発熱体用フェライト粉:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練し、40×40×1mmのシートを作製した。得られたシートを市販の電子レンジの中に置き、500Wのマイクロ波を10秒〜90秒間照射した時のシートの温度を赤外線放射温度計で測定した(発明例9)。
比較例として、上記のMnZn系フェライト粉単体:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練した(比較例6)。比較例6のフェライト粉はMnZn系フェライト粉のみであり、Ni系フェライト粉を含んでいない。
また、上記のNi系フェライト粉単体:シリコーン樹脂=75:25の質量比で混練して、同様の方法で樹脂シートを作製して、マイクロ波昇温特性を測定した(比較例7)。比較例7のフェライト粉はNi系フェライト粉のみであり、MnZn系フェライト粉を含んでいない。
本発明に従う発明例9および比較例6、比較例7のマイクロ波昇温特性を図4に示す。
Claims (3)
- 電磁波を吸収して発熱するMnZn系フェライト粉と電磁波を吸収して発熱するNi系フェライト粉とを、MnZn系フェライト粉:Ni系フェライト粉=30〜90:10〜70(mass%)の範囲で混合したマイクロ波吸収発熱体用フェライト粉を、樹脂中に30〜90(mass%)の割合で含有させたことを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
- 請求項1に記載のMnZn系フェライト粉は、Fe酸化物(Fe2O3換算):53〜57mol%、Zn酸化物(ZnO換算):4〜11mol%およびNi酸化物(NiO換算):0〜4mol%を含み、残部がMn酸化物からなることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
- 請求項1に記載のNi系フェライト粉は、Fe酸化物(Fe2O3換算):46〜51mol%、Cu酸化物(CuO換算):3〜14mol%、Zn酸化物(ZnO換算):0〜38mol%を含み、残部がNi酸化物からなることを特徴とするマイクロ波吸収発熱体。
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