JP5459464B2 - スフレ様菓子の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、スフレ様菓子の製造法に関し、更に詳しくはスフレのように食感がふんわりとして軽く、かつ口解けがしっとりとみずみずしく良好であり、しかも従来のスフレには必須であったメレンゲの添加を削減もしくは特に添加を必要としないスフレ様菓子の製造法に関する。
従来、スフレ様菓子としてはスフレが広く知られている。
スフレは、カスタードクリーム生地、あるいはシュー生地にメレンゲを混合してスフレの生地を作り、これをスフレ型に入れ、湯煎焼成することにより得ることができる。カスタードクリーム生地は、牛乳、卵、砂糖、小麦粉を加熱して得られる。
シュー生地はバター(マーガリン)と水を沸騰させたものに小麦粉を加えてα化し、さらに卵を加えて得られる。こうして得られたスフレは、メレンゲ由来の気泡を多く含み、食感は柔らかくふんわりして、しかも湯煎焼成をすることもあって、直火で焼成されるスポンジケーキなどに比べて水分を含みしっとりしており、非常に口解けの良好なものである。
しかしながら、カスタードクリーム生地やシュー生地を作成することは手間であり、さらにそれらをスフレ生地にとって望ましい状態に調整することが難しく熟練を要する。
一方メレンゲは卵白に砂糖を加えて泡立てて作るが、メレンゲをスフレ生地にとって望ましい状態に調整するのは熟練を要し、作ったメレンゲのカスタードクリーム生地、シュー生地への混合のやり方とともに、生地の品質、生地の焼きあがり状態を大きく左右する要因となる。また、メレンゲの気泡状態は経時的に変化する不安定なものであり、作りおきが難しい。さらにスフレ生地は耐熱性が弱く、焼成は湯煎で行う必要があり、大量生産には適さないものであった。
一方で、スフレ以外に気泡を含有する焼成菓子としてスポンジケーキが知られている。
スポンジケーキは卵類、砂糖、小麦粉を主原料とし、その他油脂、乳製品などを添加することもあるが、基本的には卵類と砂糖を混合して含気させ、薄力粉を混合して焼成してなるものである。
しかしながら、小麦粉などの穀物粉類が多く、骨格がしっかりしているために食感はやや硬く、また基本的にオーブンで直焼きされるケースが多いため、焼成後の水分は少なくなりしっとり感に乏しく、口解けの良さという点ではスフレには劣るものであった。
そこで、スフレの工業的な製造において、生地に水中油型乳化液を混錬し、オールインミックス法といわれるメレンゲを使用しない製造方法が開発されている。(特許文献1)。しかし、この方法においても、しっとりしていながらソフトなスフレを製造するためには湯煎焼き工程が必要であったし、また、カラギーナン等の増粘剤が必要であった。
特許文献2では、シュー生地とメレンゲを含有することを特徴とするケーキ菓子生地が提案されているが、シュー生地を炊くという手間のかかる工程があり、かつシュー生地の調製が難しい。また、温かいシュー生地にメレンゲを添加するため(混合する際のシュー生地の温度は概ね50℃)、メレンゲの気泡が消えやすいという難点があった。
特許文献3では、簡単に大量生産できるスフレの製造方法が提案されているが、特殊な形状の(オーブンの熱板とデコ型の底面との間に隙間を生じさせる立脚部を有する)デコ型に充填する必要があった。
特開平6−253720号公報 特開2005−151924号公報 特開2007−215448号公報
本発明の目的は、スフレのように食感がふんわりで、かつしっとりとみずみずしくて、口解けが良く、しかも従来のスフレにはしかも従来のスフレには必須であったメレンゲの添加を削減もしくは特に添加を必要とせず、平易かつ安定的に、さらには大量生産をすることができるスフレ様菓子ならびにそのスフレ様生地(C)の製造法を提供する事にある。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、卵類、糖類及び澱粉性原料を含む生地を含気させた生地(A)に塑性乳化物(B)を加配するだけで、特にメレンゲを添加することなしにスフレに類する生地が得られ、オーブンで直焼きすることが可能で、さらに概生地を焼成冷却後、食感がふんわりで、かつしっとりと口解けが良いスフレ様菓子が得られるという知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(1)としては、卵類、糖類及び澱粉性原料を含む生地を含気させた生地(A)に塑性乳化物(B)を加配するスフレ様生地(C)の製造法であり、(2)としては、塑性乳化物(B)の配合量が10〜45重量%である(1)記載のスフレ様生地(C)の製造法であり、(3)としては、塑性乳化物(B)を加配する時点における、生地(A)の比重が0.2〜0.6g/cmである(1)または(2)記載のスフレ様生地(C)の製造法であり、(4)としては、生地(A)に塑性乳化物(B)を加配してなるスフレ様生地(C)の比重が0.3〜0.5g/cmである、(1)ないし(3)のいずれか1項記載のスフレ様生地(C)の製造法であり、(5)としては、塑性乳化物(B)のpHが4.0〜6.5に調整された乳酸醗酵物である、(1)ないし(4)のいずれか1項記載のスフレ様生地(C)の製造法であり、(6)としては、(1)ないし(5)のいずれか1項記載のスフレ様生地(C)を焼成してなるスフレ様菓子の製造法であり、(7)としては、水分量が30〜50重量%に調整された(6)記載のスフレ様菓子の製造法である。
本発明によって、従来のスフレを製造するに際し必要であった、メレンゲを添加する工程や、原材料の炊き上げ工程、それにメレンゲの起泡状態や合わせ具合といった、細かく煩雑な配慮が必要なく、湯煎による焼成工程ではなくオーブンで直焼きすることが可能といった平易でかつ安定的な方法により、食感がふんわりと軽く、かつしっとりとみずみずしくて口解けが良い、スフレ様菓子を提供することが可能となった。
本発明は、卵類、糖類及び澱粉性原料を含む生地を含気させた生地(以降「生地(A)」と称する)に塑性状態の水中油型乳化物(以降「塑性乳化物(B)」と称する)を加配し、混合した生地(以降「スフレ様生地(C)」と称する)ならびに概スフレ様生地(C)を焼成してなるスフレ様菓子の製造法に関するものである。
本願で言うところの卵類としては、生卵、凍結卵、加糖加塩卵、加熱卵、酵素処理卵、粉末卵、卵黄油などが例示できる。それらは全卵で用いることも、卵黄、卵白に分けて用いることもでき、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。卵は鶏、アヒル、うずら等の卵も使用可能である。
ただし、卵白(生卵白、加糖卵白、乾燥卵白、凍結卵白、凍結加糖卵白などが挙げられる)を含気させた所謂「メレンゲ」は「背景技術」でも述べたとおり、加えることで工程が煩雑で熟練を要するものとなるため、特に実質的に加える必要はない。ここでいう実質的に加える必要が無いとは混入やメレンゲとしての機能が期待できないような添加量であることで、生地(A)に対して5重量%以下である。
本願で言うところの糖類としては、特に限定されるものではなく、従来のスポンジケーキやスフレといった気泡を含有した焼成菓子で用いられる糖類を適宜使うことができる。一例としては、砂糖、グラニュー糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、澱粉糖、乳糖等が挙げられる。
卵類や糖類の配合量としては従来のスポンジケーキやスフレといったものに用いられる配合量にならい、適宜選択できる。
本願で言うところの澱粉性原料としても糖類と同じく、特に限定されるものではなく、従来のスポンジケーキやスフレといった気泡を含有した焼成菓子で用いられる澱粉性原料を適宜使うことができる。一例としては、澱粉性原料としては、小麦粉類(強力粉、中力粉、薄力粉)、米粉類、そば粉類及びライ麦粉類の穀物粉類並びにコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉及びタピオカ澱粉の澱粉類が例示でき、これらのものから1種以上を選択して使用することができる。特に望ましくは小麦粉類が好適に用いることができる。
なお、従来のスポンジケーキやスフレといった気泡を含有した焼成菓子で澱粉性原料とともに用いられる澱粉以外の組成が多く含まれる原料を適宜配合することが可能である。例としてはアーモンドプードルやココアパウダー、きなこなどが挙げられる。
澱粉性原料の使用量としてはスフレ様生地(C)全体に対してスポンジケーキ生地に比較して少ない方が望ましく、全体に対して3〜13重量%、より好ましくは4〜12重量%であり、更に好ましくは6〜11重量%である。
澱粉量が少なすぎると、焼成後のスフレ様菓子がボリューム感に乏しいものになりやすい。多すぎるとスフレ特有のしっとりとした、みずみずしい食感が弱まって口解けの良さに欠け、スポンジケーキの食感に近づいたり、ねたつく食感が発現しがちである。
生地(A)は、上記卵類、糖類及び澱粉性原料以外に特に限定はないが、必要に応じて、従来のスポンジケーキやスフレに用いられる原料、一例としては油脂類、塩類、増粘剤、安定剤、乳化剤など1種、または2種以上を使用することが出来る。
特に乳化剤などは分散性と起泡力を向上させる点で望ましい。
油脂類としては、食用のものであれば特に制限なく自由に選択でき、種類は問わない。融点が少なくとも5℃以上、好ましくは15〜40℃程度のものが好適であり、油脂原料としては、例えば、菜種油、大豆油、ひまわり種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物性油脂ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、これらの油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化分別油、ならびに酵素エステル交換、触媒によるランダムエステル交換等を施した加工油脂が使用できる。
乳化剤としては、レシチン、モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレ ングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソル ビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤が例示できる。さらに好ましくは、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、クッキー生地等に一般的に使用されている油脂に乳化剤を含んだものが良い。例えば、起泡性乳化油脂、ケーキミックス用ショートニング、パン用ショートニングが例示できる。
生地(A)の原料混合方法は従来より行われている方法でよいが、オールインミックス法で混合するのが繁雑でなく簡便である。なおその際には上記乳化剤または油脂に乳化剤を含んだもの(乳化油脂)を併用することが作業的に望ましい。
生地(A)の含気の方法は特に限定はされないが、一例としては従来のスポンジケーキに用いられるホイップ操作が挙げられる。ただし、ホイップだけでは起泡力が十分ではない、あるいは抱き込んだ気泡が抜けやすいといった場合もあるため、より強く安定的な起泡力を得るためには、乳化剤または乳化油脂を併用することが望ましい。
本発明の塑性乳化物(B)は、5〜55℃の範囲において、塑性状態である必要がある。
塑性状態とは具体的には品温5℃において粘度400cP〜5万cP、望ましくは1000cP〜3万cP、さらに望ましくは1500cP〜1万cPの範囲のものであり、品温35℃においても粘度400cP〜5万cP、望ましくは1000cP〜3万cP、さらに望ましくは1500cP〜1万cPの範囲のものであって、5〜35℃の広い温度帯において上記の粘度を有するものである。
そして粘度はBM型、BH型(東京計器製)の粘度計を用いて測定した。
塑性状態であることによって、塑性乳化物(B)が生地(A)と混合しやすくなり、得られた生地の比重、生地状態、成型できる状態が安定化するので好ましい。
塑性乳化物(B)が液状の場合、混合後の生地が、気泡の抜けやすい不安定な生地となり、成型できる状態にもならない。また、硬すぎると生地(A)との混合が難くなる。
塑性状態にするには、従来よりある方法を適宜用いることができる。一例としては澱粉類や糖類、増粘多糖類などを添加することや、乳化物を醗酵させることで粘稠なものとすることができる。
醗酵によって塑性状態にしたものとしては市販のチーズ類、ヨーグルト類、サワークリームといったもののような、乳製品を乳酸菌などにより醗酵したものを、あるいは概醗酵物を複数混合したり、さらには概醗酵物を別の未醗酵の乳類などで粘度を調整するといった方法や、乳化物の醗酵の度合いをコントロールして粘度を調整するといった方法が挙げられる。なお、本願においては概醗酵物を単独、複数混合、未醗酵との混合といったそのすべての場合の混合物を乳酸醗酵物と称し、塑性乳化物(B)として好適に用いることができる。
乳酸醗酵した乳化物を塑性乳化物(B)として用いる場合は風味の付与などの効果もあり、また焼き上がりのスフレ様菓子の口解けがよりしっとりとしたみずみずしいものとなる。
塑性乳化物(B)は油脂類及び蛋白類を含むものであることが望ましい。
塑性乳化物(B)の蛋白質分は好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは2〜15重量%がよい。蛋白質分が少ない場合は、混合した生地の安定性が弱くなり、成型しにくくなる。また、耐熱保形性も弱くなるため好ましくない。蛋白質分が多い場合は、冷却後の菓子生地の食感が硬くなり、ふんわり感が損なわれる。また、塑性乳化物(B)の安定な乳化が維持し難くなる。
更に塑性乳化物(B)は、pH4.0〜6.5に調製されたものが好ましい。調整方法としては、油脂類及び蛋白類を含む乳化物に有機酸、醸造酢、果汁などの添加が挙げられるが、乳酸醗酵によるものがさらに好ましい。
有機酸としては、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等、及びそれら有機酸の塩などが挙げられる。
pHが4.0未満のものは生地(A)との混合が難しくなったり、混合後の組織が荒れたりする場合があり、また最終製品の風味に酸味・酸臭の悪影響が顕実化しやすい。pHが6.5を越える場合は混合後の生地が、気泡の抜けやすい不安定な生地になりやすい。
また、乳酸醗酵によるものとしては、市販のチーズ類、ヨーグルト類、サワークリームを適宜含むものも例示できる。複数の原料を混合、例えば市販チーズを牛乳で溶くなどして塑性乳化物(B)を作成してもよいが、塑性乳化物(B)としては均一な状態であることが望ましい。
塑性乳化物(B)が特定pH、特に乳酸醗酵によるものである場合は、上記塑性状態の規定のところでも触れたが、風味の付与などの効果もあり、また焼き上がりのスフレ様菓子の口解けがよりしっとりとしたみずみずしいものとなる。
本発明のスフレ様生地(C)は、上記方法で得られた生地(A)に塑性乳化物(B)を加配し調製する。
塑性乳化物(B)を加配する時点における生地(A)は含気した状態である必要がある。また生地(A)の含気の度合いについても、生地(A)が含気した状態であっても、特に含気していない塑性乳化物(B)が入ることで全体としての比重が大きくなり、また塑性乳化物(B)と混合することで生地(A)に含まれた空気が抜けることでも比重は大きくなる傾向になる。さらに、塑性乳化物(B)と生地(A)を混合した状態で含気させることは困難であるため、生地(A)は塑性乳化物(B)を加配する時点で含気している必要があり、比重が低い方が望ましい。
塑性乳化物(B)を加配する時点における生地(A)の比重は好ましくは0.2〜0.6g/cm、さらに好ましくは0.25〜0.4g/cmに含気していることが望ましい。0.6g/cm以上だと、スフレ様のふんわりとした食感が得られにくく、密で重い食感になりがちである。生地(A)の比重を0.2g/cm未満するのは技術的により難易度が高い操作であるにも拘らず、塑性乳化物(B)と混合した生地の比重は0.2g/cm以上の場合と大差ないか、気泡がつぶれやすくなり逆に比重が大きくなる場合もあるので望ましくない。
また塑性乳化物(B)と生地(A)を混合する方法も特に限定はされないが、前述のとおり塑性乳化物(B)と生地(A)が混合した状態から含気させるのは困難であり、また過度の負荷をかける混合方法だと、折角の生地(A)が蓄えた気泡が抜けてしまいかねない。塑性乳化物(B)と生地(A)が均一になる程度の混合、例えばゴムベラによる手をつかった混合程度が望ましい。
生地(A)と塑性乳化物(B)加配して混合する際の生地(A)の温度が5〜40℃、好ましくは10〜35℃、さらに好ましくは10〜30℃であるのが望ましい。
温度が低すぎると、塑性乳化物(B)の組成によっては、生地(A)が硬すぎて、塑性乳化物(B)との混合が難くなったり、乳化が不安定になる。温度が高すぎると、生地(A)中の気泡が壊れやすく、安定した生地状態、成型できる状態を保つことが難くなる。
また、生地(B)は上記の通り、5〜55℃の範囲において、塑性状態であれば特に温度は従来の気泡含有菓子における作業温度に準じた品温で用いることができるが、例え塑性乳化物(B)として塑性状態であっても、その温度で生地(A)に加配することで生地(A)の温度が物性を損なうようなケースは避ける方が望ましい。
その際の生地(C)に対する塑性乳化物(B)の配合量は15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは25〜35重量%であることが望ましい。15重量%未満だと焼成した気泡含有菓子がスフレ特有のしっとりとした、みずみずしい食感が弱まって口解けの良さに欠け、スポンジケーキの食感に近づき、45重量%を超える場合は目の詰まった重い食感であったり、火抜けが悪くなりべたつく食感になりがちである。
本発明のスフレ様菓子は、生地(A)に塑性乳化物(B)加配して混合し、混合後の生地(C)を焼成して得るのであるが、その焼成方法は、従来の様に湯煎焼きに限られることなく、直焼きすることもできる。また、型や天板に流し込んで焼成するだけでなく、型に入れずに焼成することも出来る。また焼成して得られたスフレ様菓子は通常のスポンジケーキと同様な使用が、一例としてロールケーキ、ブッセ、オムレット、ショートケーキなどに利用することが可能である。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。
<実施例1>
表1の配合に従い、生地(A)として、全卵、卵黄と上白糖、液糖(三菱化学フーズ株式会社製、商品名:ハイスイートデラックス、転化糖液糖、固形分70%)、乳化油脂、(不二製油株式会社製、商品名:パーミングセレクト)薄力粉を混合し、比重が0.32g/cmまでホイップしたものに、塑性乳化物(B)として乳酸醗酵乳化物1(不二製油株式会社製、商品名:クレームコルセRG)を加えて混合し、混合後の生地(C)を得た。混合する際の生地(A)の品温は23℃であった。そして生地(C)を180℃のオーブンにて20分焼成し、冷却後に実施例1に基づく気泡含有菓子を得た。
なお塑性乳化物(B)として使用した乳酸醗酵乳化物1は脱脂粉乳、油脂、水を均質化して得た水中油型乳化物を乳酸菌にて醗酵を行った製品であり、pH5.7、粘度は5℃において4000cPの塑性状態であった。
また乳化油脂はケーキなどを作製する際に生地の乳化安定性を向上させ、焼成後の内相をきめ細かな状態にするものとして従来より用いられているものであり、今回オールインミックス製法であるため、乳化を安定させるために使用した。
パネラーによる評価の結果、得られた気泡含有菓子は従来のメレンゲを用いたスフレとほぼ同等の食感であり、食感はふんわりして軽く、口解けもしっとりとみずみずしく非常に良好なものであった。
本発明により、メレンゲや湯煎焼成を用いずとも従来のメレンゲを用いたスフレと同等の食感を有する食品を得ることができた。
<比較例1>
表1の配合に従い、砂糖、薄力粉、卵黄をボールに入れ、すり合わせておく。そこに市販のクリームチーズ(商品名「kiriクリームチーズ」、ベルジャポン株式会社製)と牛乳を加熱、沸騰させたものを混ぜ合わせ、カスタードクリーム状に炊き上げ、バターを混合し、とろみのある混合物(乳酸醗酵乳化物2)を作成しておく。別に予め卵白と砂糖を7〜8分立てまでホイップし調整したメレンゲを、前記混合物に数回に分けてメレンゲの気泡が壊れないように混ぜ合わせ、生地を作成し、オーブンで天板に湯をはって(上火180℃/下火150℃)で50分、途中からオーブンのふたを少し開けて焼成し、チーズスフレを得た。
得られたチーズスフレは従来よりあるものであり、食感はふんわりして軽く、口解けもしっとりとみずみずしく非常に良好なものであるが、メレンゲを作製する操作やオーブンでの湯をはっての焼成といった工程が煩雑であり、またメレンゲの作り置きも出来ないものであった。
<比較例2>
表1の配合に従い、全卵と砂糖を混合し、卓上ミキサーでホイップして含気させたものに、小麦粉を混合してスポンジケーキ生地を得た。得られた生地を型に流し入れ、オーブン(上火180℃/下火150℃)で20分焼成し、スポンジケーキを得た。得られたスポンジケーキは従来よりあるものであり、メレンゲの作成は不要であったが、食感はやや乾いて硬く、口解けはしっとりとしたみずみずしさが乏しく、スフレとは異なるものであった。
<比較例3・比較例4>
実施例1と同じ配合ながらも、生地(A)をホイップせずに塑性乳化物(B)を加えて生地(C)を得る以外はすべて実施例1と同工程で比較例3に基づく焼成菓子を得た。得られた焼成菓子はメレンゲの作製は不要であったが、まったく含気していないため食感はきわめて重く、また口解けも火の通りも悪くてべたついて重く、商品価値の乏しいものであった。
また、比較例3と同じ配合、工程で得られた生地(C)はホイップによりわずかにしか気泡を抱き込まず、そのあとの工程を比較例3と同工程で比較例4に基づく焼成菓子を得たが、比較例3同様に含気していない商品価値の乏しいものであった。
<表1>
Figure 0005459464
※ スフレ食感の評価は10名のパネルが試食して官能検査を行なった。評価基準は下記の通りである。
◎:従来のスフレと同等のふんわりとした軽い食感と、しっとりとしたみずみずしい口解け。
○:従来のスフレはやや異なるものの軽い食感と、みずみずしい口解けを有する。
△:従来のスフレに比べると軽さ・みずみずしさは劣るものが市場性はある。
×:スフレの食感とはほど遠く、べたついて重いものやぱさついて乾いたもの。
<比較例4・実施例2・実施例3・実施例4・実施例5>
表2の配合に従い、生地(A)に加配する塑性乳化物(B)として乳酸醗酵乳化物1をそれぞれ、0.0、10.0、20.0、40.0、50.0に、それ以外の原料は残余にしめる比率は同じになるように配分する以外は実施例1と同工程で比較例4、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5に基づく菓子を得た。また塑性乳化物(B)が30重量%である実施例1の配合と評価を参考のため表2記す。
得られたスフレ様菓子は、比較例4については食感はやや硬く、しっとり感に乏しく、口解けの良さはスフレには及ばないスポンジケーキのようなものであったが、実施例2・実施例3・実施例1と塑性乳化物(B)の配合量が増えるにつれて、その食感はスフレ的にふんわりとして軽く、かつ口解けもしっとりとみずみずしく良好なものとなり、実施例2においても十分に既存のスポンジケーキとは異なる食感を有していた。
特に実施例1はもっとも食感がふんわり軽くて良好でありかつ、もっとも口解けもしっとりとみずみずしいものであった。実施例4・実施例5はスフレ的な食感はあるが、菓子の骨格が弱く、また口解けがべたついた感じがやや強くなる傾向になり、特に実施例5は保形性が弱く単独では形を保ちにくい。しかしカップデザート型のスフレとしては十分な市場性があった。
なお、実施例2・実施例3・実施例4・実施例5は実施例1同様に、メレンゲを作製する操作も不要で平易な方法で製造が可能であった。
<表2>
Figure 0005459464
<実施例6・実施例7・実施例8・実施例9>
実施例1と同配合ながら、塑性乳化物(B)を加配する直前の生地(A)のホイップにて比重が0.44、0.60、0.72、0.22g/cmとなったものを用いる以外は実施例1と同工程で実施例6、実施例7、実施例8、実施例9に基づく菓子を得た。
得られた菓子は比較例3ほど食感は重くなく、また火も通り、商品価値のあるものであったが、実施例1・実施例6・実施例7・実施例8の順でよりスフレ的な、ふんわりとして軽い食感で、しっとりとみずみずしい良好な口解けを有するものであった。またメレンゲを作製する操作も不要で平易な方法で製造が可能であった。
また実施例9に基づく菓子は、生地(A)の比重は実施例1程度まで下がった後は下がりにくく、0.2まで下がったものの、これ以下の比重にすることはこの配合では困難であった。しかも比重を下げる為にホイップ時間が長く取られる割に、実施例1に比べてスフレ的な食感や口解けは大差が無かった。
<表3>
Figure 0005459464
<実施例10>
表4の配合にしたがい、実施例1と同工程で実施例10に基づく菓子を得た。
澱粉性原料が多いため、生地の目が詰まっておりやや食感が重く、口解けはスフレ本来のものに比べるとやや悪く、またべたつく食感があるが、スポンジケーキとは異なる新規なものであった。
<実施例11>
塑性乳化物(B)として、乳化物3(濃縮乳タイプ乳製品(商品名「プロベスト500」、不二製油株式会社製、3倍濃縮乳、油分9%、固形分:32%)を乳酸醗酵乳化物1と同程度の固形分になるよう水で希釈したもの)を用い、かつ粘稠になるようコーンスターチを添加し加熱したものを用いる以外は実施例1と同配合、同操作にて実施例11に基づくスフレ様菓子を得た。
食感はふんわりして軽いが、口解けがスフレ本来のものに比べるとやや悪く、またべたつく食感があるが、スポンジケーキとは異なる新規なものであった。
<表4>
Figure 0005459464
<実施例12・実施例13>
塑性乳化物(B)として、チーズ様ペースト(商品名「クレメフロマージュ」、不二製油株式会社製)を乳酸醗酵乳化物1と同程度の固形分になるよう牛乳で希釈したものを用いる以外は実施例1と同配合、同操作にて実施例12を、また同様に実施例12のチーズ様ペーストの替わりに市販のクリームチーズ(商品名「kiriクリームチーズ」、ベルジャポン株式会社製)を用いた実施例13に基づくスフレ様菓子を得た。
得られた菓子は実施例と同様にスフレ的なもので、食感はふんわり軽く、また口解けもしっとりとみずみずしくて良好なものであった。またそれぞれの原料とした乳化物由来の風味の特徴の表れたものであった。
<表5>
Figure 0005459464
本発明は、スフレ様菓子の製造法に関し、更に詳しくはスフレのように食感がふんわりで、かつしっとりとみずみずしくて口解けが良く、しかも従来のスフレには必須であったメレンゲの添加を特に必要としないスフレ様菓子の製造法に関するものである。

Claims (3)

  1. 卵類、糖類及び澱粉性原料を含む生地を比重0.25〜0.4g/cm 含気させた生地(A)に、塑性乳化物(B)としてpHが4.0〜6.5に調整された乳酸醗酵物をスフレ様生地(C)に対し15〜45重量%加配することを特徴とする、比重が0.3〜0.5g/cm であるスフレ様生地(C)の製造法。但し、生地(A)に、油脂、糖質、澱粉またはセルロース、蛋白質および増粘剤を含有してなる水中油型乳化組成物が混練される場合を除き、澱粉性原料の使用量は、スフレ様生地(C)全体に対して6〜11重量%である場合に限る。
  2. メレンゲを実質的に添加しない、請求項1記載のスフレ様生地(C)の製造法。
  3. 請求項1ないし請求項2のいずれか1項記載の製造法によって得られるスフレ様生地(C)を焼成するスフレ様菓子の製造法。
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