JP5445725B1 - Al−Sc合金の製造方法 - Google Patents

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Abstract

不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気での加熱のための設備を始めとして、金属Ca等の還元剤や溶融塩電解のための設備及び電力を必要とせず、しかも、1050℃までの加熱で十分であって連続的な操業も可能なAl−Sc系合金の製造に適した方法を提供する。
金属アルミニウム(Al)と、融点が反応温度よりも低くて密度が反応温度で溶融金属アルミニウムの密度の70〜95%の範囲内である金属フッ化物塩と、スカンジウム化合物とを反応容器内に装入し、反応系を反応温度700〜1050℃まで昇温させて溶融金属アルミニウムからなる下層の溶融金属層と金属フッ化物塩及びスカンジウム化合物が溶融した上層の溶融塩層とを形成し、溶融塩層側に生成したスカンジウムイオン(Sc3+)を溶融金属層側に移行させてAl−Sc系合金を製造する方法である。

Description

この発明は、Al−Sc系合金を製造するのに適したAl−Sc系合金の製造方法、及び当該製造方法により得られたAl−Sc系合金に関する。
アルミニウム(Al)又はその合金中に、合金元素としてスカンジウム(Sc)を添加すると、耐熱性が顕著に改善されることから、このようなアルミニウム基合金(Al−Sc系合金)について、近年、産業上多方面での有効利用が期待されている。すなわち、合金元素としてScを添加したアルミニウム基合金は、その希土類元素の添加量が0.1質量%であっても、200℃を超える温度で長時間保持しても、その機械的強度がほとんど低下しない。これは、合金元素としてScを添加したアルミニウム基合金においては、塑性変形加工により変化した機械的性質について、加熱による回復、再結晶が起こり難くなるためと考えられている。例えば、特許文献1には、純Alマトリックス中に0.05〜0.3質量%のSc及び0.1〜0.4質量%のZrを含有させることにより、導電性が良好で、機械的強度が高く、かつ、耐熱性に優れていて、アルミニウム基合金配線材として有用なアルミニウム合金材が得られることが紹介されている。
しかしながら、Scを含有するアルミニウム基合金は、産業上の有用性が期待されるものの、従来においては、その利用が極めて限定的であった。これは、金属Scが酸化され易く、また、Scのハロゲン化物、カルコゲン化物等のスカンジウム化合物(Sc化合物)から金属Scを得る際の還元に困難が伴うためである。すなわちScを金属として得るには、Scよりも酸化され易いNa等のアルカリ金属や、Ca、Mg等のアルカリ土類金属等を還元剤として使用し、Sc化合物を加熱下に還元する、又は溶融塩電解により還元する必要があるからである。
例えば、特許文献2においては、Scのハロゲン化物を金属Ca、金属Zn等と共に真空反応容器内に装入し、金属Caにより前記Scのハロゲン化物を還元してSc−Zn合金とし、得られたSc−Zn合金相を、Caの酸化物を含むハロゲン化物相から分離して粉砕し、更に、粉砕して得られた合金粉末を酸化処理して粉末表面に薄い酸化物被膜を形成した後、内部を不活性ガス雰囲気とした真空容器に装入し、真空下に加熱して合金成分のZn等を揮発蒸発させ、金属Sc粉末を得る技術が開示されている。また、特許文献3においては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のふっ化物とSc、Y及びランタノイド等の希土類元素のふっ化物とを主体とする溶融塩電解浴中で、上層に浮遊した溶融金属Alを陰極とし、また、陽極を上層の溶融金属Alと接触しないように絶縁物で保護し、電解還元を行って希土類元素を含有するアルミニウム基合金を製造する技術が開示されている。
前者の加熱下の還元方法においては、還元剤として用いるアルカリ金属やアルカリ土類金属が高価であるばかりでなく、その反応性が著しくて取扱に細心の注意が必要であり、還元の実施に必要な還元剤を簡便かつ低廉に大量生産することができないという問題があった。また、後者の溶融塩電解により還元する方法においては、Alの融点(660℃)を超える高温に耐える電解還元容器の利用が必須であるうえ、容器等からの不純物等の混入が懸念されることから高温での操業が難しく、1500℃を超えるScの融点以下の温度(具体的には、1000℃以下の温度)で電解還元を行う必要があり、また、還元されて析出したScが固体の金属となって樹枝状に成長しないように還元条件を調整することや、他の金属と低融点の合金を形成するようにして析出したScが固体にならないようにすること等の工夫が必要であり、しかも、電解のための設備及び電力が必要であるほか、上層の溶融金属Al(陰極)が酸化されないように外部加熱の電解槽をアルゴンガス(Arガス)等の不活性ガス雰囲気下で操業しなければならず、加えて、生成したアルミニウム合金の比重(実質的に「密度」と同じ。)が溶融塩の比重を超えないように、電解時間を考慮しなければならない等、労力及びコストが増加し、低廉に大量生産することは容易でなかった。
このような中、Scを含有するアルミニウム基合金の製造を目的として、Scを、その化合物から金属へと還元する工程を経ずに、Sc化合物のまま金属Alと反応させ、Scを含有するアルミニウム基合金を得る幾つかの技術が提案されている。
例えば、特許文献4においては、塩化カルシウム系フラックスの存在下に希土類元素の化合物をアルミニウムと反応させ、希土類元素を含有するアルミニウム基合金を得る技術が開示されている。
また、特許文献5においては、ScF3のようなハロゲン化Scと金属Alとを、還元剤となる金属Ca、フラックスとなるLiF、CaCl2等と共に反応容器に装入し、不活性ガス雰囲気下で800〜1000℃に加熱して金属Caによりハロゲン化Scを還元すると同時に、金属Alと合金化させてAl−Sc合金とし、その後の冷却において、Alの凝固温度若しくは該凝固温度より100℃低い温度までの範囲を毎分10〜70℃の冷却速度で冷却することにより、前記Al−Sc合金内にScの高密度析出部と低密度析出部が生じるようにし、冷却後に高密度析出部を低密度析出部から分離し、該高密度析出部を真空溶解することにより、前記還元剤である金属Caの残留分を揮発蒸発させ、Sc含有量が高いAl−Sc合金を製造する技術が開示されている。
更に、特許文献6においては、Sc等の希土類元素の酸化物又はハロゲン化物の粉末をAl、Mg等の軽金属の粉末と混合し、得られた混合物を圧縮成型によりペレットとし、次いで該ペレットの表面における前記軽金属の溶融物に対する濡れ性を高めてから溶融した軽金属の浴に投入し、前記希土類元素の酸化物又はハロゲン化物を前記軽金属によって還元し、希土類元素を含有する軽金属合金を得る技術が開示されている。
また、特許文献7においては、Y及びランタノイドである希土類元素を含有するアルミニウム基合金を製造する方法として、該希土類元素の酸化物を金属Alと反応させる技術が開示されている。
特開2001-348,637号公報 特開平04-131,308号公報 特開平06-172,887号公報 特開昭48-015,708号公報 特開2003-171,724号公報 特開平04-235,231号公報 フランス共和国特許第2,555,611号公報
しかしながら、特許文献4の技術では、原料である希土類元素の化合物を金属Alで還元しているが、その際の反応温度については1200℃以上であることが必要とされており、そのような温度においては、反応生成物であって蒸気圧の高いAlCl3、HCl等が揮発し、また、このようなガスは非常に腐食性が高く、坩堝材料として高価な耐食性素材を使用する必要があると共に、環境汚染対策等の取扱上の制約があり、しかも、Alの酸化消耗及び所要熱エネルギーが多大であって経済的でないという問題がある。
また、特許文献5においては、還元剤となる金属Caにより不活性ガス雰囲気下でハロゲン化Scを還元した後、前記金属Caの残留分を真空雰囲気下で蒸発させて除去する技術であるため、還元剤となる金属Caが多量に必要であるほか、不活性ガス雰囲気下で原料を反応させ、また反応生成物であるAl−Sc合金のSc高密度析出部を真空雰囲気下で蒸発させる必要があり、不活性ガス雰囲気下において原料を加熱、溶融する設備、Sc高密度析出部を真空雰囲気下で加熱する設備が不可欠であって、コストの低減、経済性の向上が困難であるという問題がある。
更に、特許文献6の技術では、Sc等の希土類元素の酸化物又はハロゲン化物の粉末を軽金属の粉末と混合した後に圧縮成型によりペレットとし、更に、該ペレット表面について、前記軽金属の溶融物に対する濡れ性を高める必要がある等、製造工程が多段階に亘り、特許文献5の場合と同様に、コストの低減、経済性の向上が困難であるという問題がある。
更にまた、特許文献7の技術においては、希土類元素がY及びランタノイドであってScは含まれていないが、反応過程で生成した希土類元素を含有するアルミニウム基合金の溶融物が他方の反応生成物であるアルミニウムの酸化物の粉末の上方に位置して外部雰囲気に露出するので、反応系を不活性ガス雰囲気下に維持する必要があり、原料を不活性ガス雰囲気下で加熱し、溶融する設備が必要になり、この特許文献7の技術においてもコストの低減、経済性の向上が困難であるという問題がある。
本発明は、かかる観点に鑑みて創案されたものであり、Al−Sc系合金を製造するのに適した方法であって、不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気での加熱のための設備を始めとして、金属Ca等の還元剤や溶融塩電解のための設備及び電力を必要とせず、しかも、1050℃までの加熱で十分であって、製造工程も簡便かつ簡潔で、溶融塩の減耗及び環境汚染の虞も低減でき、更には連続的な操業も可能であって、容易に経済性を向上させることのできるAl−Sc系合金の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、金属アルミニウム(Al)と、アルカリ金属ふっ化物、アルカリ土類金属ふっ化物及びふっ化アルミニウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属フッ化物塩と、スカンジウム(Sc)の酸化物及び/又はふっ化物塩からなるスカンジウム化合物とを反応容器内に装入し、反応容器内の前記金属アルミニウム(Al)と前記金属ふっ化物塩と前記スカンジウム化合物とからなる反応系を反応温度まで昇温させて溶融金属アルミニウムからなる溶融金属層と前記金属フッ化物塩及びスカンジウム化合物が溶融した溶融塩層とを形成し、前記溶融塩層側に生成したスカンジウムイオン(Sc3+)を溶融金属層側に移行させてAl−Sc系合金を製造する方法であって、
前記反応系の反応温度を700〜1050℃の範囲内とし、また、前記金属フッ化物塩として、その融点が前記反応温度よりも低く、かつ、その密度が前記反応系の反応温度において溶融金属アルミニウムの密度の70〜95%の範囲内である金属フッ化物塩を使用し、前記反応容器内の反応系において、前記溶融塩層が上層で前記溶融金属層が下層となるようにしたことを特徴とするAl−Sc系合金の製造方法である。
本発明において、溶融塩層を形成するために反応容器内に装入される金属フッ化物塩は、アルカリ金属ふっ化物、アルカリ土類金属ふっ化物及びふっ化アルミニウム(AlF3)からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物であり、前記アルカリ金属ふっ化物としては、ふっ化リチウム(LiF)、ふっ化ナトリウム(NaF)、ふっ化カリウム(KF)、ふっ化セシウム(CsF)等を挙げることができ、また、アルカリ土類金属ふっ化物としては、例えばふっ化ベリリウム(BeF2)、ふっ化マグネシウム(MgF2)、ふっ化カルシウム(CaF2)等を挙げることができるが、所望の反応系の反応温度(700〜1050℃の範囲)を確保し、また、当該反応温度での所望の密度(反応系の反応温度で溶融金属Alの密度の70〜95%の範囲)を得る上で、好ましくは、LiFとNaFとの混合物であるのがよく、より好ましくは、LiFとNaFとが質量比(LiF:NaF)で7:5〜8:5の範囲内の混合物であるのがよい。このような混合物からなる金属フッ化物塩は、その融点が652〜675℃であって、その密度が760℃のとき1.99kg/dm3であって、980℃のとき1.88kg/dm3であって、溶融状態において、溶融金属層を形成する溶融金属Alや溶融Al−Sc合金とは相溶性がない。
また、溶融塩層中に装入されて反応時にスカンジウムイオン(Sc3+)を生成するスカンジウム化合物(Sc化合物)は、スカンジウム(Sc)の酸化物(Sc2O3)及び/又はふっ化物塩(ScF3)であり、連続的なAl−Sc系合金の製造の観点によれば、好ましくは酸化スカンジウム(Sc2O3)である。
本発明においては、前記反応容器内の反応系において、前記溶融塩層が上層で前記溶融金属層が下層となり、溶融金属層が空気と接触しないことが必要であり、反応系を静置した状態で反応を進めてもよく、また、この溶融金属層が空気と接触しない限り、必要により反応系を撹拌してもよく、これによって化学反応をより促進させることができる。また、この反応系の反応温度については、通常700℃以上1050℃以下の範囲であり、700℃より低いと、Alの融点(660℃)に近づき、局所的にAl3Scが生成して反応生成物であるAl−Sc系合金が不均質となる虞があるほか、スカンジウム化合物(Sc化合物)としてスカンジウム(Sc)の酸化物(Sc2O3)を利用する際には、溶融塩層中のスカンジウム酸化物(Sc2O3)の溶解度が低いため、化学反応速度に限度があるという問題があり、反対に、1050℃より高くなると、所要熱エネルギーが多大となるほか、高価な耐熱材料を反応容器として使用しなければならなくなるとともに、溶融塩の蒸気圧が高くなって蒸発ロスが多大となるため、コストが増大すると共に、環境汚染対策等の取扱上の制約が生じるという問題が生じる。
また、上記反応系の反応温度において反応容器内に形成される前記金属フッ化物塩及びスカンジウム化合物が溶融した溶融塩層については、当該反応系の反応温度における溶融塩の密度が当該反応系の反応温度における溶融金属アルミニウムの密度の70%以上95%以下の範囲内であるのがよく、70%未満にするためには融点が高くて高価なふっ化リチウム(mp:848℃)の配合比率を高くする必要があって経済性が低下するという問題があり、反対に、95%より高くなると、溶融塩の密度がSc化合物の溶解に伴って増加し、溶融塩層の密度が溶融金属層の密度より高くなり、溶融金属層が溶融塩層の上部に露出して空気と接触し、溶融金属が空気中の酸素と反応して酸化し、製造目的のAl−Sc合金の回収率が低下するという問題が生じる。
そして、前記反応容器内に形成された反応系の溶融塩層側にスカンジウムイオン(Sc3+)を生成させるに際しては、金属アルミニウム(Al)、金属フッ化物塩及びSc化合物を反応容器内に装入し、その後に反応温度まで昇温させて反応系を形成してもよいが、金属アルミニウム(Al)と金属フッ化物塩とを反応容器内に装入し、反応温度まで昇温させて予め溶融金属層と溶融塩層とを形成し、その後に、前記溶融塩層内にSc化合物を添加し、この溶融塩層内にスカンジウムイオン(Sc3+)を生成させてもよい。
本発明のAl−Sc合金の製造方法によれば、不活性ガス雰囲気下又は真空雰囲気下での加熱のための設備を始めとして、金属Ca等の還元剤や溶融塩電解のための設備及び電力が不要であるほか、1050℃までの加熱で十分であって、製造工程も簡便かつ簡潔で、溶融塩の減耗及び環境汚染の虞が少なく、かつ、連続的な操業も可能であって、容易に経済性を向上させることができる。
図1は、本発明の実施に利用される製造装置の一例を示す説明図である。
本発明においては、金属Alと、金属ふっ化物塩と、Sc化合物とを反応容器に装入し、この反応容器内の反応系を反応温度が700〜1050℃の範囲内となるように加熱し、溶融して溶融金属層と溶融塩層とを形成すると共に、前記金属ふっ化物塩としてその密度が前記反応温度での溶融金属Alの密度の70〜95%となるように調整し、反応系の下部にScの濃度の低い溶融金属Al層が、また、反応系の上部に前記溶融塩層が互いに接触して形成されており、この際の前記溶融塩層と前記溶融金属層との界面においては、反応式(1)で示される下記の化学反応が生じている。
Sc3+/(s)+Al/(m) ⇔ Sc/(m)+Al3+/(s)……(1)
〔ただし、反応式(1)において、溶融塩層内の元素又はイオンを/(s)と示し、また、溶融金属層内のもの元素又はイオンを/(m)と示す。〕
前記反応式(1)に示される溶融塩層と溶融金属層の界面での反応の向きは、Sc塩とAl塩の生成自由エネルギーの差のほか、溶融塩層中のSc3+イオン及びAl3+イオンの活量と、溶融金属Al中のScの活量により決定される。そして、溶融塩層中のSc3+イオンの活量が大きく、かつ、溶融塩層中のAl3+イオンの活量及び溶融金属中のScの活量が小さく、それらの活量差によって反応が右向きとなるとき、還元されて溶融金属Alに合金化するScのモル数は、溶融金属Alから酸化され、イオン化して溶融塩層中に溶解するAl3+イオンのモル数に等しくなり、前記反応に伴って溶融金属Al中のSc金属の濃度が高くなると同時に溶融塩層中のAl3+イオンの濃度も高くなる。
このような活量変化は、反応が停止する方向への変化であり、最終的には前記の各活量が平衡状態に達し、前記反応は停止するが、本発明の範囲内においては、前記反応式(1)に関与する各イオンの活量は、当該各イオンの濃度にほぼ比例する。従って、前記反応式(1)の反応を右向きに進めて効率的にAl−Sc系合金を製造するためには、モル百分率(mol%)で表された反応前の溶融塩層内のSc3+イオンの濃度(Sc3+濃度)を高く保持する一方、Al3+イオンの濃度(Al3+濃度)を低く保持し、また、モル百分率(mol%)で表された反応前の溶融金属層中のScの濃度(Sc濃度)を低く保持する必要がある。
本発明は、前記反応式(1)の反応を右向きに進めるに際し、反応系の反応温度を700〜1050℃とし、この反応温度よりも融点が低い溶融塩層を反応容器内に設けると共に、前記反応容器内の溶融塩層の下部には前記反応温度で溶融状態の溶融金属層を前記溶融塩層と接触させて設け、前記溶融塩層にはSc化合物を装入し、溶解させて当該溶融塩層中のSc3+イオン濃度を増加させ、該溶融塩層と接触して設けられた前記Sc濃度の低い溶融金属層との間で反応させ、前記溶融金属層を合金化させるものである。そして、本発明によれば、溶融金属層の上部に溶融塩層が存在することから反応系を不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気とすることなく反応生成物であるAl−Sc合金の酸化を防止することができ、また、反応系の反応温度が700〜1050℃であることから前記溶融塩層からの蒸発を可及的に抑制することができ、前記溶融塩の減耗及び環境汚染の虞を低減し、更には連続的な操業を可能にして製品を連続的に得ることが可能になり、容易に経済性を向上させることができる。
本発明において、反応式(1)の右側への反応は、溶融塩層中のSc3+濃度が高く維持されると共に、溶融金属Al中のSc濃度が低く維持され、かつ、溶融塩層中に生成するAl3+イオンがこの溶融塩に対して溶解度の低い化合物を形成するのであれば、溶融塩層中のAl3+濃度が大きくならないため、継続的に右向きとなる。ここで、溶融金属層中のSc濃度が一定であれば、反応式(1)は溶融塩層中のAl3+濃度及びSc3+濃度に依存するが、溶融塩の種類、原料となるSc化合物の種類、反応温度等によっても変化するので、これらイオンの濃度が同一であっても最終的に溶融金属層中に移行し合金元素として取り込まれるSc濃度は異なる。
また、本発明において、反応式(1)に示される化学反応によりAl−Sc合金を連続的に製造するためには、製造目的である反応後のAl−Sc合金中の合金元素Scの目標Sc濃度FScと、原料となる溶融塩層中のSc3+濃度PScと、反応前の溶融金属Al中の希土類金属のSc濃度CScとの関係を、下記の関係式(2)に示されるように維持することが必要である。すなわち、本発明の反応系において、下記の関係式(2)に示されるような条件を採用することにより、溶融塩層中のSc化合物を効率的に溶融金属Alと反応させ、合金化させてAl−Sc合金を製造することができる。
0.3≦(FSc−CSc)/PSc≦1.5……(2)
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のAl−Sc系合金の製造方法についてより具体的に説明する。
図1に、本発明のAl−Sc系合金の製造方法を実施する製造装置の一例に係る模式図が示されている。この製造装置は、反応容器14と、前記反応容器14を囲繞し、加熱器12を内蔵する加熱炉10とからなり、加熱器12は反応容器14を少なくとも1050℃まで加熱することができ、また、反応容器14及び加熱炉10は少なくとも1050℃の温度に耐えられる材質で形成されているほか、反応容器14には、必要により、溶融金属層が空気と接触しない程度に反応系を撹拌するために、攪拌翼等の図示外の撹拌手段が設けられている。
本発明においては、例えば、前記のLiFとNaFとを重量比(LiF:NaF)7:5〜8:5の範囲で含む混合物からなる金属ふっ化物塩(混合塩)を反応容器14内に装入し、700〜1050℃から選ばれた反応温度に加熱し、溶融させて溶融塩層16を形成すると共に、金属Alを反応容器14内に装入し、前記反応温度に加熱し溶融させて溶融金属層18とし、前記溶融塩層16と共存させる。ここで、金属Alの融点が660℃であって、760℃及び980℃のときの溶融金属Alの密度がそれぞれ2.36kg/dm3及び2.28kg/dm3であるから、前記混合塩を溶融して得られた溶融混合塩の密度〔1.99kg/dm3(760℃)、1.88kg/dm3(980℃)〕は、それぞれ溶融金属Alの84%及び82%となり、反応容器14内において溶融塩層16と溶融金属層18とは分離し、溶融塩層16が上層となって溶融金属層18が下層になる。
続いて、前記反応容器14を前記反応温度に保持しつつ、Sc化合物を前記反応容器14に装入し、前記溶融塩層16内に溶解させ、この溶融塩層16内にSc3+イオンを生成させる。例えば、回収目的とするAl−Sc系合金がAl−1.2mol%Sc合金であって、その合金の回収量が1.0モルであり、原料となる溶融金属層18中にScが含まれない場合には、原料となる溶融金属層18に必要となるAlの量は反応式(1)より1.0モルであり、関係式(2)を満たすためには、FSc=0.012及びCSc=0であるから、原料となる溶融塩層16中のSc3+濃度を(0.012/1.5)≦PSc≦(0.012/0.3、すなわち0.008≦PSc≦0.04とする必要があり、この場合には、前記溶融塩層16内のSc3+濃度を0.8〜4.0mol%とする必要がある。
前記溶融塩層16中のSc3+濃度は、反応容器14に装入されたSc化合物の溶解に伴って上昇し、それと同時に溶融塩層16の密度も増加するが、この溶融塩層16内のSc3+濃度が5mol%程度迄であれば、その密度の増加は0.02kg/dm3程度迄であって、この密度の増加分(0.02kg/dm3)は溶融金属Alの密度の1%程度迄であるから、溶融塩層16の密度が溶融金属層18の密度の70〜95%であれば、前記溶融塩層16の密度が前記溶融金属層18の密度を上回って、前記反応容器14の内部において、前記溶融金属層18が前記溶融塩層16の上部に露出して空気と接触することはない。
前記反応容器14を前記反応温度の範囲内に保持し続けると、溶融塩層16中のSc3+イオンは、前記反応容器14の内部において、前記溶融塩層16の下部に形成された溶融金属層18との界面において溶融金属Alと化学反応し、還元されて、前記溶融金属Alを合金化する。このとき、前記溶融金属層18が空気と接触しない程度に反応系を撹拌することは、反応式(1)に示す化学反応を促進するので好適であるが、特に撹拌することなく静置してもよい。
この反応式(1)の化学反応により発生したAl3+イオンは溶融塩層16中に溶解し、それによって溶融塩層16中のAl3+濃度が増加し、他方、前記溶融塩層16の下部にあって該溶融塩層と接触する溶融金属層18においては、その溶解限度までの範囲内であって、前記溶融塩層16中のAl3+濃度に対して関係式(2)を満足する値までScが溶解し、溶融Al−Sc系合金が形成され、前記溶融金属Alが次第に溶融Al−Sc系合金となる。
本発明者らの研究によれば、このような化学反応は700〜1050℃で起こり、また、溶融金属Alの密度に対して溶融塩の密度を所定の範囲でより低くしているので、溶融金属層18の表面が溶融塩層16で保護されることになり、不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気とすることなく反応生成物であるAl−Sc系合金の酸化を防止することができる。しかも、反応式(1)の化学反応によれば、反応の進行と共に溶融塩層16の密度が減少し、他方、溶融金属層18の密度が増加するので、前記特許文献3の場合のように、化学反応の途中で各層の密度(あるいは比重)を調整するための通電を停止する等の対応をする必要がなく、操業が簡便かつ容易である。
反応式(1)の化学反応により溶融Al−Sc系合金が形成された後、溶融金属層18を反応容器から採取するが、この採取の方法については、溶融金属層18を反応容器14の外部に移送することができれば特に限定されず、従来公知の方法等により適宜実施できる。すなわち、反応容器14を傾動させて溶融金属層18を選択的に滴下させる方法、杓によって溶融金属層18を選択的に掬い取る方法、真空ポンプで溶融金属層18を選択的に吸引する方法、あるいは反応容器14の底部に予め設けた図示外の取出口から溶融金属層18を選択的に排出させる方法等から選ばれた方法を採用することができる。
また、本発明においては、反応系が上記の関係式(2)に示される関係を満足するように操業すれば、連続的に溶融Al−Sc系合金を製造することができるが、この際には、生成した溶融Al−Sc系合金を採取した後、反応容器14を所定の反応温度の範囲内に保持したまま、新たに金属AlとSc化合物とを反応容器14内に装入し、これらを反応容器14内に残存している溶融塩層16と共に溶融させればよい。すると、新たに反応容器14内に装入されたSc化合物は溶融塩層16の溶融塩に溶解してSc3+イオンを生成し、このSc3+イオンは、同時に反応容器14に装入され溶融して溶融金属層18となった溶融金属Alと反応し、再び反応式(1)の化学反応が進行して溶融金属Alを合金化させ、溶融Al−Sc系合金が形成される。この製造工程を繰り返すことにより、連続的に溶融Al−Sc系合金を製造することができる。
このようなAl−Sc系合金の製造を連続的に繰り返すと、溶融塩層16中のAl3+濃度が徐々に上昇するが、Sc化合物としてSc23を使用すると、溶融塩層16中のAl3+イオンは酸化されてAl23となり、溶融Al−Sc系合金である溶融金属層18及び溶融金属ふっ化物塩である溶融塩層16のいずれにも殆ど溶解することなく、反応容器14の内部において溶融金属層18及び溶融塩層16のいずれからも分離するので、容易に反応系外に排出させることができる。すなわち、Sc化合物としてSc23を使用すれば、副反応生成物であるAl23の反応系外への排出が容易になり、連続的なAl−Sc系合金製造の操業をより容易にすることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に示すが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
表1に示す量のLiFとNaFとを混合して得られた金属ふっ化物塩を反応容器内に装入し、960℃に加熱し、溶融させて溶融塩層とし、続いて表2に示す量の金属Alを反応容器内に装入し、溶融させて溶融金属層とした。これら溶融塩層と溶融金属層は、前記反応容器内に溶融金属層が下層に、また、溶融塩層が上層に分離しつつ互いに接触した状態で存在していた。
更に、反応容器内を960℃に保持しつつ、表2に示すように、Sc化合物として0.080モルのSc23を装入し、溶融塩層に溶解させ、反応式(1)の反応系を構成した。この反応系を前記溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら960℃で180分間保持し、反応式(1)の化学反応をさせてから、この反応によって生成するAl23の生成量が一定となることを目視により確認して、この反応を停止させた。
反応終了後、前記溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記溶融金属層には0.063モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.57mass%Sc合金に相当し、また、このときの(FSc−CSc)/PScの値は0.790であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして反応系を構成した後、960℃で15分保持し、次いで760℃まで冷却した後、溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら760℃で180分間保持して反応式(1)の化学反応をさせた以外は、実施例1と同様に実施した。
反応終了後、実施例1と同様に溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記溶融金属層には0.070モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.74mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.878であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例3〕
溶融塩層を実施例1の半分の量とし、金属Alを実施例1と同じ量とし、また、Sc化合物としてのSc23を実施例1の半分の量とした以外は、実施例1と同じ条件で反応させ、溶融金属層を採取、分析したところ、表3に示すように、前記溶融金属層には0.027モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−0.68mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.339であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例4〕
表1に示す量のLiFとNaFとを混合して得られた金属ふっ化物塩を反応容器内に装入して溶融塩層とし、また、表2に示すように6.671モルの金属Alを反応容器内に装入して溶融金属層とし、更に、表2に示すようにSc化合物として0.160モルのScF3を装入して反応系を構成した以外は、実施例1と同様にして反応式(1)の反応を行った。
反応終了後、実施例1と同様に溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記溶融金属層には0.079モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.95mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は1.469であった。更に、化学反応終了後の溶融塩層の上部表面に固体の浮遊物は観察されなかった。
〔比較例1〕
実施例1の金属Alを6.471モルのAlと0.120モルのScからなるAl−3.00mass%Sc系合金に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応系を構成し反応させた。
反応終了後の溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示されているように、Sc量は0.098モルであって反応前の含有量より減少しており、Al量との対比によれば、これはAl−2.45mass%Scに相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は−0.323であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には、固体のAl23が生成していた。(FSc−CSc)/PScが負の値となったのは、Sc化合物として0.080モルのSc23を装入した時点において、溶融金属層内のSc濃度が既に高かったためと考えられる。
〔実施例5〕
表1に示す量のLiF及びNaFと表2に示す量の金属Alを用い、また、Sc化合物として0.160モルのSc23を用いた以外は、実施例1と同じ条件で反応系を構成し反応させた。
反応終了後の溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示されているように、前記溶融金属層には0.127モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−3.10mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.980であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例6〕
表1及び表2に示すように、初めに、上記実施例5と同じ条件で反応系を構成して反応させ、表3に示すように、溶融金属層に0.124モルのScが含有されてAl−3.02mass%Sc合金に相当する溶融Al-Sc系合金層を形成させた。このとき、(FSc−CSc)/PScの値は0.957であり、化学反応終了後の溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
上記第1回目の化学反応終了後の溶融塩層中には0.196モルのSc3+イオンが残存しているはずであり、そこで、前記溶融塩層の上部表面に生成したAl23を除去し、950℃まで冷却した後に、得られたAl23除去後の溶融塩中に新規に6.671モルの金属Alを装入し、溶融させて溶融金属層とし、反応温度を950℃とした以外は第1回目と同じ条件で第2回目の化学反応を実施し、表3に示すように、第2回目の溶融金属層に0.082モルのScが含有されてAl−2.02mass%Sc合金に相当する溶融Al-Sc系合金層を形成させた。このとき、(FSc−CSc)/PScの値は0.983であり、第2回目の化学反応終了後の溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
更に、上記の第2回目の化学反応終了後の溶融塩層中には、0.114モルのSc3+イオンが残存しているはずであり、そこで、この溶融塩層を950℃に保持したまま、溶融塩層上部表面のAl23を除去し、新規に6.671モルの金属Alを装入し溶融させて第3回目の溶融金属層を形成すると共に、Sc化合物として新たに0.043モルのSc23を装入し、溶融塩層中のSc量が0.200モルに調整された反応系を構成し、第2回目と同じ条件で第3回目の化学反応を実施した。
この第3回目の化学反応終了後に、得られた溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、第3回目の溶融金属層には0.076モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.89mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.893であった。この第3回目の化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例7〕
表1に示す量のLiFとNaFとを混合して得られた金属ふっ化物塩を反応容器内で960℃に加熱し、溶融して溶融塩層とし、続いて表2に示すように、6.671モルの金属Alを反応容器内に装入し、溶融させて溶融金属層とし、更に、反応容器内を960℃に保持しつつSc化合物として0.080モルのSc23を装入し、前記溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら960℃に15分間保持し、反応式(1)の化学反応を実施した。
反応終了後に溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、溶融金属層には0.053モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.31mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.596であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔実施例8〕
表1に示すように、1.700モルのNaF、0.104モルのCaF2及び0.831モルのAlF3の混合物からなる金属ふっ化物塩を用い、反応容器内で960℃に加熱し、溶融して溶融塩層とし、続いて表2に示すように、6.671モルの金属Alを反応容器内に装入して溶融させ、溶融金属層とし、更に、反応容器内を960℃に保持しつつSc化合物として0.094モルのSc23を装入し、前記溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら980℃で180分間保持し、反応式(1)の化学反応を実施した。
反応終了後に溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、溶融金属層には0.055モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−1.36mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.329であった。化学反応終了後、溶融塩層の上部表面には固体のAl23が生成していた。
〔比較例2〕
表1に示すように、2.316モルのLiF、1.252モルのNaF、0.323モルのKF及び0.321モルのBaF2の混合物からなる金属ふっ化物塩を用い、反応容器内で960℃に加熱し、溶融して溶融塩層とし、続いて表2に示すように、6.671モルの金属Alを反応容器内に装入し、溶融させて溶融金属層とした。前記反応容器内において、前記溶融金属層と溶融塩層は互いに分離したが、溶融金属層が溶融塩層の上部に上層として露出し、空気と接触していた。
次に、前記反応容器内を960℃に保持しつつ、Sc化合物として0.080モルのSc23を装入し、下層の溶融塩層に溶解させ、反応式(1)の反応系を構成した。この反応系をそのまま980℃に180分間保持して反応式(1)の化学反応をさせてから、この反応によって生成するAl23の生成量が一定となることを目視により確認して、この反応を停止させた。
反応終了後、前記金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記金属層には0.032モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−0.87mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.283であった。(FSc−CSc)/PScの値が0.3未満となったのは、溶融金属層が、溶融塩層の上部に露出して空気と接触し、酸化したためと考えられる。
〔比較例3〕
表1に示すように、2.333モルのNaF、2.091モルのCaF2及び2.333モルのAlF3の混合物からなる金属ふっ化物塩を用い、反応容器内で960℃に加熱し、溶融して溶融塩層とし、続いて表2に示すように、6.671モルの金属Alを反応容器内に装入し、溶融させて溶融金属層とした。前記反応容器内において、前記溶融金属層と溶融塩層は互いに分離し、溶融金属層が下層として溶融塩層の下部に該溶融塩層と接触して存在していた。
更に、反応容器内を960℃に保持しつつ、Sc化合物として0.160モルのScF3を装入し、上層の溶融塩層に溶解させ、反応式(1)の反応系を構成した。この反応系を前記溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら900℃で180分間保持し、反応式(1)の化学反応をさせた。この反応においてはAl23が生成しないので、保持時間を実施例1と同一の時間とした。
反応終了後、前記溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記金属層には0.011モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−0.28mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.216であった。(FSc−CSc)/PScの値が0.3未満となったのは、溶融塩層中のAl3+濃度が高かったためと考えられる。
〔比較例4〕
表1に示すように、2.203モルのLiF、1.478モルのNaF及び0.428モルのAlF3の混合物からなる金属ふっ化物塩を用い、反応容器内で960℃に加熱し、溶融して溶融塩層とし、続いて表2に示すように、6.671モルの金属Alを反応容器内に装入し、溶融させて溶融金属層とした。前記反応容器内において、前記溶融金属層と溶融塩層は互いに分離し、溶融金属層が下層として溶融塩層の下部に該溶融塩層と接触して存在していた。
更に、反応容器内を960℃に保持しつつ、Sc化合物として0.080モルのScF3を装入し、上層の溶融塩層に溶解させ、反応式(1)の反応系を構成した。この反応系を前記溶融金属層が空気に接触しない程度に撹拌しながら960℃で180分間保持し、反応式(1)の化学反応をさせた。この反応においてはAl23が生成しないので、保持時間を実施例1と同一の時間とした。
反応終了後、前記溶融金属層を採取し、分析したところ、表3に示すように、前記金属層には0.013モルのScが含有されており、Al量との対比によれば、これはAl−0.67mass%Sc合金に相当し、また、(FSc−CSc)/PScの値は0.229であった。(FSc−CSc)/PScの値が0.3未満となったのは、溶融塩層中に装入したSc化合物がScF3であったことにより、化学反応によって溶融塩に可溶なAlF3が副反応生成物として生成し、当該AlF3の生成によって、相対的に溶融塩層中のSc3+濃度が低下したためと考えられる。
Figure 0005445725
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本発明は、不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気での加熱のための設備を始めとして、金属Ca等の還元剤や溶融塩電解のための設備及び電力を必要とせず、しかも、1050℃までの加熱で十分であって、製造工程も簡便かつ簡潔なものであり、Al−Sc系合金の製造方法として好適に利用できるものである。
10…加熱炉、12…加熱器、14…反応容器、16…溶融塩層、18…溶融金属層。

Claims (4)

  1. 金属アルミニウム(Al)と、アルカリ金属ふっ化物、アルカリ土類金属ふっ化物及びふっ化アルミニウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属ふっ化物塩と、スカンジウム(Sc)の酸化物及び/又はふっ化物塩からなるスカンジウム化合物とを反応容器内に装入し、反応容器内の前記金属アルミニウム(Al)と前記金属ふっ化物塩と前記スカンジウム化合物とからなる反応系を反応温度まで昇温させて溶融金属アルミニウムからなる溶融金属層と前記金属ふっ化物塩及びスカンジウム化合物が溶融した溶融塩層とを形成し、前記溶融塩層側に生成したスカンジウムイオン(Sc3+)を溶融金属層側に移行させてAl−Sc系合金を製造する方法であって、
    前記反応系の反応温度を700〜1050℃の範囲内とし、また、
    前記金属ふっ化物塩として、その融点が前記反応温度よりも低く、かつ、その密度が前記反応系の反応温度において溶融金属アルミニウムの密度の70〜95%の範囲内である金属フッ化物塩を使用し、
    前記反応容器内の反応系において、前記溶融塩層が上層で前記溶融金属層が下層となるようにしたことを特徴とするAl−Sc系合金の製造方法。
  2. 金属アルミニウム(Al)と金属フッ化物塩とを反応容器内に装入し、反応温度まで昇温させて溶融金属層と溶融塩層とを形成した後に、前記溶融塩層内にスカンジウム化合物を添加し、この溶融塩層内にスカンジウムイオン(Sc3+)を生成させることを特徴とする請求項1に記載のAl−Sc系合金の製造方法。
  3. 前記金属フッ化物塩が、ふっ化リチウムとふっ化ナトリウムとの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のAl−Sc系合金を製造方法。
  4. モル百分率(mol%)で表されたAl−Sc系合金中の目標Sc濃度をFScとし、モル百分率で表された溶融塩層中のSc3+濃度をPScとし、また、モル百分率で表された溶融金属層中のSc濃度をCScとしたとき、反応容器内の反応系が0.3≦(FSc−CSc)/PSc≦1.5の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のAl−Sc系合金の製造方法。
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