JP5443895B2 - 燃料電池システムおよび燃料電池システムの運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池を備えて構成された燃料電池システム、およびその燃料電池システムの運転方法に関するものである。
近年、注目が集められている固体高分子型燃料電池は、以下のような数多くの利点を有している。その利点は、カルノーサイクルの制約を受けないため高い発電効率が期待できる。排熱を利用することができる。騒音が少なく排気ガスがクリーンである。電解質が固体であるため散逸することがなく加圧運転並びに差圧制御を容易に行うことができる。他の燃料電池と比較して低温の80℃〜100℃で動作する部分負荷でも発電効率が低下せずターンダウンが可能であるといった種々の特長点である。固体高分子型燃料電池のこれらの特長点を活かすことで、家庭用燃料電池に代表される分散型電源や自動車電源として、固体高分子型燃料電池を利用した燃料電池システムの開発が近年活発に行われている。
燃料電池システムにおいて、固体高分子型燃料電池の燃料極に供給する燃料としては、水素、メタノール等を挙げることができるが、家庭用燃料電池に代表される分散型電源の燃料としては主に水素が用いられる。この水素を供給する方法としては、天然ガス、ナフサ、灯油、メタノール等の炭化水素含有燃料と、水蒸気を、金属触媒の存在下で改質、変成させて水素リッチガスを得る方法が現在では主流となっている。水素リッチガスは、水素を主成分としたガスで、改質に伴い発生した一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO)を含有している。固体高分子型燃料電池の電極触媒はCOに対して被毒性が高いため、COについては、CO選択酸化触媒を用いて水素リッチガス中の含有量が10ppm以下となるように除去する必要があるが、COは固体高分子型燃料電池の電極触媒に特に大きな影響を及ぼさないため、除去されてはいないのが現状である。従って、家庭用燃料電池では、COを20〜30質量%含有した水素リッチガスを、固体高分子型燃料電池の燃料極に供給して発電する方法が一般的であった。
しかしながら、改質器で行われる改質反応(変成器としての機能を含む場合は変成反応を含む)は基本的に熱プロセス(吸熱反応)であり、燃料電池側の負荷機器のスイッチのON−OFFや出力変動による電流の変化、並びにこれに伴う燃料電池内での電気化学反応に比較すると、燃料電池システムの熱容量自体がかなり大きいため時間的応答が極めて遅くなるという課題があった。
また、一方で燃料電池での発電出力に必要な水素量が不足すると燃料電池で腐食が発生する等の悪影響を生じる可能性が高いため、燃料利用率を70〜80%として過剰の燃料を供給する運用を行わざるを得なかった。従って、発電に使用されなかった余剰水素は改質器に再び戻して熱源燃料の一部とされるが、その系統が複雑になり、更には、燃料改質の効率が低下するという課題もあった。
また、電力負荷が急速に増大し、その一方で改質器の出力の増加が間に合わない場合には、系統電力より電力を補う運用を余儀なくされており、燃料電池の分散型電源としての自立性を著しく損なう結果を招いている。また、部分負荷運転を行うためには複雑且つ微妙な制御が必要であるという課題も有していた。
近年開発されたこの燃料電池システムは、以上に示すような課題を抱えているが、特に負荷変動に対応するためには、下記に示すような様々な提案がなされている。
特許文献1として、燃料電池と電気二層キャパシタとを並列に接続し、負荷増大時に電気二層キャパシタから電力を供給する燃料電池電源装置に関する提案がなされている。しかしながら、この特許文献1記載の燃料電池電源装置では、電気二層キャパシタを追加して設ける必要があり、コストアップにつながるばかりか、系統が複雑になるという課題があり、また、改質器の負荷応答性の低さから、改質器の出力を増加もしくは低減する仮定で改質ガス中の水素を発電に用いることはできず、燃料改質の効率が低下するという課題も残っている。
また、特許文献2として、燃料電池の負荷変動に対応する燃料需要信号を、燃料ポンプと燃料気化器を組み合わせた燃料供給手段に送りこの燃料需要信号を基に原燃料供給源から送り出す原燃料ガス量を負荷変動に追従制御させる燃料電池発電システムが提案されている。しかしながら、この特許文献2記載の燃料電池発電システムでは、原燃料を応答遅れなしに改質器に供給したとしても、負荷が急速に増大した際に原燃料を急増させることとなり、瞬間的に熱バランスが崩れ、改質触媒層におけるホットスポットの生成や副生成物の増大が起こる可能性がある。またこれらのことが原因で、原燃料の供給量を急増させたとしても同じ割合で水素が増加するとは限らず、負荷追随性は必ずしも十分ではない。
また、燃料電池の発電を行う前工程に水素吸蔵合金を設け、その水素吸蔵合金に吸蔵された高純度水素を燃料電池に連続して供給することにより負荷変動に対応するという提案が、特許文献3、特許文献4等でなされている。特に特許文献3には、水素貯蔵能力に加え、選択的に水素のみを吸蔵するという水素吸蔵合金の特徴に着目し、水素吸蔵合金に水素精製と貯蔵の両方の役割を持たせることにより純水素型燃料電池の使用が可能となる燃料電池発電装置に関する技術内容が記載されている。
これらの提案は、改質した水素を無駄なく燃料電池に投入することができ、且つ燃料電池の負荷変動に対応させることができるという意味で有効な提案であるといえるが、負荷変動が大きく且つ水素が急激に消費された場合の改質器の制御については特には言及されていない。また、水素吸蔵合金の水素吸蔵量を把握する具体的な手段についてもこれら特許公報には記載されていない。
特開2002−216818号公報 特開平9−22713号公報 特開2000−12061号公報 特開2001−338661号公報
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、炭化水素含有燃料の供給量や、複数の水素吸蔵合金容器内に入れられた水素吸蔵合金の吸蔵・放出の切り替え時間を適切に制御することができ、固体高分子型燃料電池の負荷が急激に変動した場合でも、改質器の出力を急増させる必要なく負荷変動に対応することができる燃料電池システムおよびその燃料電池システムの運転方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、炭化水素含有燃料から水素リッチガスを生成する改質器と、複数の水素吸蔵合金容器を有し、前記水素リッチガスに含まれる水素を前記水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金に吸蔵させると共に、その吸蔵させた水素を前記水素吸蔵合金から高純度水素として放出させる水素分離回収装置と、前記高純度水素を導入して発電を行う固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムであって、前記水素吸蔵合金容器内に設けられた温度・圧力センサーで検出した高純度水素放出後の水素吸蔵合金容器内の温度および圧力を用いて、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を演算する機能を備えると共に、前記固体高分子型燃料電池の発電量をもとに前記固体高分子型燃料電池での使用水素量を演算する演算機能を備えた運転制御装置が設けられており、前記運転制御装置により演算された水素吸蔵量と使用水素量に応じて、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めるか、或いは、目標炭化水素流量が現状の炭化水素流量より大きくなり過ぎる場合は、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めることに加えて前記水素分離回収装置の水素吸蔵合金の水素の吸蔵・放出の切り替え時間の短縮を行うように構成されていることを特徴とする燃料電池システムである。
請求項2記載の発明は、炭化水素含有燃料から水素リッチガスを改質器により生成する水素リッチガス生成工程と、前記水素リッチガスに含まれる水素を複数の水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金に順次吸蔵させると共に、吸蔵させた水素を前記水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金から順次高純度水素として放出させる水素回収分離工程と、前記高純度水素を固体高分子型燃料電池に導入して発電する発電工程を備えた燃料電池システムの運転方法であって、前記水素吸蔵合金容器内に設けられた温度・圧力センサーで検出した高純度水素放出後の水素吸蔵合金容器内の温度および圧力を用いて、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を演算すると共に、前記固体高分子型燃料電池の発電量をもとに前記固体高分子型燃料電池での使用水素量を演算し、それら演算された水素吸蔵量と使用水素量に応じて、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めるか、或いは、目標炭化水素流量が現状の炭化水素流量より大きくなり過ぎる場合は、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めることに加えて前記水素分離回収装置の水素吸蔵合金の水素の吸蔵・放出の切り替え時間の短縮を行うことを特徴とする燃料電池システムの運転方法である。
請求項3記載の発明は、前記水素回収分離工程で、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を、前記水素吸蔵合金の飽和水素吸蔵量の20〜80%とすることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システムの運転方法である。
本発明の請求項1記載の燃料電池システムおよび請求項2記載の燃料電池システムの運転方法によると、炭化水素含有燃料の供給量や、複数の水素吸蔵合金容器内に入れられた水素吸蔵合金の吸蔵・放出の切り替え時間を適切に制御することができ、固体高分子型燃料電池の負荷が急激に変動した場合には、改質器の出力を急増させなくても負荷変動に対応することができる。その結果、改質器の長寿命化、燃料電池システム全体の安定化を図ることができる。
また、本発明の請求項3記載の燃料電池システムの運転方法によると、水素回収分離工程における水素吸蔵率の悪化を防止することができ、高純度水素の製造効率、並びに発電効率の向上を図ることができる。
本発明の一実施形態の燃料電池システムの概要を示すフロー図である。 本発明の別の実施形態の燃料電池システムの概要を示すフロー図である。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る燃料電池システムの一実施形態の概要を示すフロー図である。2は改質器(変成器としての機能を含む場合もある)、4は水素分離回収装置、5は固体高分子型燃料電池、6は運転制御装置、7は燃料流量制御弁であって、水素分離回収装置4は水素吸蔵合金を内蔵する二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bを有して構成されている。
燃料流量制御弁7を介して供給された天然ガス、ナフサ、灯油、メタノール等の炭化水素含有燃料aは、まず、水素リッチガス生成工程の改質器2に送られ、その改質器2での改質反応によって水素リッチガスbとなる。尚、この水素リッチガスbの生成時には、改質器2に加熱用燃料fと共に後述する水素分離回収装置4から回収されたオフガスeが供給され熱源燃料の一部として再利用される。
尚、ここで示す水素リッチガスbとは、水素を主成分とするガスのことであり、改質器2での改質に伴い発生したCO、CO等のほか、HO、N、O等の不純物を含有する。また、改質器2としては、従来型の水蒸気改質方式の改質器2のほか、近年開発が進められている部分酸化改質方式またはオートサーマル改質方式の改質器2を用いることができる。
以上の説明では単に、炭化水素含有燃料aは改質器2での改質反応によりCO、CO、HO、N、O等を含有する水素リッチガスbになると説明したが、改質反応により得られたガスを、更に変成器で変成させたガスとしたり、セラミックフィルタ等の組成分離膜に流通させて水素濃度を高めたガスとしたりしても良い。
水素リッチガス生成工程で、改質器2での改質反応により生成された水素リッチガスbは、次の水素分離回収工程に送られる。水素分離回収工程には、水素吸蔵合金を内蔵する二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bを有して構成された水素分離回収装置4が設けられており、水素リッチガスbはこの水素分離回収装置4に供給される。水素リッチガスbのうち主成分の水素は、水素分離回収装置4の水素吸蔵合金に吸蔵され、この水素分離回収装置4で回収しきれなかった水素並びにその他のガスは、オフガスeとして水素リッチガス生成工程の改質器2に戻され、熱源燃料の一部として再利用される。水素分離回収装置4の水素吸蔵合金に吸蔵された水素は精製され、減圧パージ、加熱を経て、高純度水素dとして次の発電工程へ送られる。
二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bに内蔵された水素吸蔵合金は、水素吸蔵・精製ステップ→減圧・加熱ステップ→高純度水素放出ステップ→冷却ステップという順に機能して、再び水素吸蔵・精製ステップに戻るというサイクルで水素分離回収装置4は稼動する。このように二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bに内蔵された水素吸蔵合金が夫々機能することで、一方の水素吸蔵合金容器4aに内蔵された水素吸蔵合金が水素を吸蔵しているときには、他方の水素吸蔵合金容器4bに内蔵された水素吸蔵合金が高純度水素dを放出させる状態、水素吸蔵合金容器4bに内蔵された水素吸蔵合金が水素を吸蔵しているときには、他方の水素吸蔵合金容器4aに内蔵された水素吸蔵合金が高純度水素dを放出させる状態とすることができ、二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bに内蔵された水素吸蔵合金は、交互に効率性良く高純度水素dを精製放出することができる。尚、水素吸蔵合金容器は三塔またはそれ以上としても良く、三塔以上とした場合は連続して絶え間なく高純度水素dを精製放出することも可能である。
水素分離回収工程で水素以外のガスが除去された高純度水素dは次の発電工程に送られる。発電工程には固体高分子型燃料電池5が設けられており、高純度水素dがこの固体高分子型燃料電池5に導入されることで発電が実施される。
固体高分子型燃料電池5には発電電力計測装置(図示せず)が設けられており、この発電電力計測装置で計測した計測した発電電力量(発電量)を運転制御装置6に送る。また、水素分離回収装置4の二塔の水素吸蔵合金容器4a,4bの内部には、温度・圧力センサー(図示せず)が夫々設けられており、高純度水素dを放出した後の水素吸蔵合金容器4a,4b内の温度、および圧力を検出して運転制御装置6に送る。
運転制御装置6においては、計測した発電量から求めた固体高分子型燃料電池5の単位水素あたりの発電量Eと、燃料電池装置定数Ceから、水素吸蔵合金容器4a或いは4bから放出された水素量Meを算出し、固体高分子型燃料電池5での使用水素量Meとする。尚、燃料電池装置定数Ceは、用いる固体高分子型燃料電池5の種類、形態、燃料利用率、水素パージ間隔などから実験等で求められる定数または関数である。
Me=E×Ce
また、高純度水素d放出後の水素吸蔵合金容器4a或いは4b内の温度Tを温度センサーで測定し、その測定温度Tと、水素吸蔵合金に固有の水素吸蔵・放出に伴う標準エンタルピー変化ΔHと、標準エントロピー変化ΔSと、気体定数Rから、平衡状態における平衡水素圧力Pcを求める。(標準エンタルピー変化ΔHと標準エントロピー変化ΔSの求め方については後で説明する。)
Pc=exp(ΔH/RT−ΔS/R)
次に、前式で求められたPcと、実際に圧力センサーで測定した水素圧力Pとの差ΔPを求め、平衡状態からのズレΔPとする。
ΔP=P−Pc
次いで、対象とする水素吸蔵合金容器4a或いは4bの温度TにおけるPCT曲線(後で説明する。)と、前式で求められた平衡水素圧力Pcから、平衡水素吸蔵量Mcを算出する。ここでは、その時点での水素吸蔵合金の水素吸蔵量Mを、この平衡水素吸蔵量Mcと、ΔPから算出される平衡状態と実際の状態の差を補正する補正関数Kを用いて次式より算出する。尚、補正関数Kは、水素吸蔵合金容器4a或いは4bの形状、高純度水素放出ステップの時間、水素吸蔵合金の加熱を行う方法等により変化する値であり、実験等から求める必要がある。
M=Mc×K(ΔP)
次に、前式で求めた水素吸蔵量M、吸蔵・放出の切り替え時間(吸蔵工程の時間)tにおける発電量Eの積分値Eから求められる放出水素量(固体高分子型燃料電池5での使用水素量と同じ)Meから、変化量ΔMeを求め、その変化量ΔMeと、水素分離回収効率Uと、装置定数Crを用いて、次式から目標炭化水素流量Fを算出する。尚、装置定数Crは、用いる炭化水素燃料の種類、改質器2の改質方式並びに改質効率から実験等で求められる定数または関数である。
F=Cr×ΔMe÷t/U
以上の計算により算出された目標炭化水素流量Fから、改質器2に向けて供給する炭化水素燃料の供給量を求め、燃料流量制御信号により燃料流量制御弁7を調整することで適量の炭化水素燃料を改質器2に向けて供給する。この目標炭化水素流量Fに制御するためには、PID制御をはじめとする各種の制御方法を用いることが可能である。
また、ΔMeの値が大きく発電量の増加が大きいため、目標炭化水素流量Fが現状の炭化水素流量より大きくなりすぎる場合(例えば、目標炭化水素流量Fが現状の炭化水素流量の2倍以上になる場合)は、炭化水素流量の変化量を緩和するための制御として吸蔵・放出の切り替え時間(サイクルタイム)tを短くする。
尚、吸蔵・放出の切り替え時間tを短くしすぎると、水素分離回収工程での高純度水素放出ステップ終了時の加熱状態から水素吸蔵・精製ステップを開始できる温度まで下げる冷却ステップでの温度制御が不十分となり、また、水素吸蔵・精製ステップにおける水素吸蔵合金の水素吸蔵量Mを減少させることから、水素吸蔵合金が有する水素バッファ機能を十分に発揮できなくなる。そのため、吸蔵・放出の切り替え時間を短くする場合は、初期設定切り替え時間の0.5倍以上とすることが好ましい。その上で、放出水素量Meの変化量ΔMeのサイクル(切り替え)毎の推移をモニタリングしながら、サイクル毎に目標炭化水素流量Fを増加させ、且つ吸蔵・放出の切り替え時間tを初期設定の切り替え時間に戻す制御を行うことが好ましい。
また、前記した水素分離回収装置4が設けられた水素分離回収工程では、高純度水素dの放出が終了した状態の水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量Mを、水素吸蔵合金の飽和水素吸蔵量Mmの20〜80%とすることで、水素分離回収工程における水素吸蔵率の低下を防止することができる。水素吸蔵量Mが飽和水素吸蔵量Mmの20%未満であると、水素吸蔵合金の収縮率が高い状態で被処理ガスと水素吸蔵合金を接触させることとなり、収縮に伴う水素吸蔵合金充填層におけるショートパスの生成等により、水素吸蔵率(=水素吸蔵量/水素投入量)の悪化を招いてしまう。一方、水素吸蔵量Mが飽和水素吸蔵量Mmの80%を超えると、水素吸蔵合金の収縮率は低い状態となるが、その状態から水素を吸蔵できる水素吸蔵量、すなわち有効水素吸蔵量が低い状態から水素分離回収工程を始めることとなり、水素吸蔵量Mが多すぎても水素吸蔵率の悪化を招いてしまう。より好ましい水素吸蔵量Mの下限は飽和水素吸蔵量Mmの25%であり、より好ましい水素吸蔵量Mの上限は飽和水素吸蔵量Mmの60%である。
尚、ここで説明した飽和水素吸蔵量は、JIS H7201の「水素吸蔵合金の圧力−組成等高線(PCT線)の測定方法」に示す方法で測定されたPCT線から算出することが可能である。また、先に示した水素吸蔵合金に吸蔵させた水素吸蔵量を求めるために必要な標準エンンタルピー変化ΔHと標準エントルピー変化ΔSについてもJIS H7201の「水素吸蔵合金の圧力−組成等高線(PCT線)の測定方法」に示す方法で測定されたPCT線から、Van’t Hoffの式を用いて求めることができる。
図2は、本発明に係る燃料電池システムの先に示した実施形態とは異なる実施形態の概要を示すフロー図である。1は圧縮機、2は改質器(変成器としての機能を含む場合もある)、3はCO吸着除去器、4は水素回収分離装置、5は固体分子型燃料電池、6は運転制御装置、7は燃料流量制御弁であって、これらのうち、CO吸着除去器3は二塔のCO吸着除去塔3a,3bを有して構成されており、水素回収分離装置4は水素吸蔵合金を内蔵する三塔の水素吸蔵合金容器4a,4b,4cを有して構成されている。
圧縮機1は、天然ガス、ナフサ、灯油、メタノール等の炭化水素含有燃料aを事前に加圧する燃料加圧工程に設けられており、燃料流量制御弁7を介して供給された炭化水素含有燃料aは、まず、この燃料加圧工程の圧縮機1に送られる。
燃料加圧工程で加圧された加圧状態にある炭化水素含有燃料aaは、次の水素リッチガス生成工程に送られる。水素リッチガス生成工程には改質器2が設けられており、加圧状態にある炭化水素含有燃料aaは改質器2での改質反応により水素リッチガスbとなる。この水素リッチガスbは、主成分の水素のほか、改質器2での改質に伴い発生したCOやCO、またHO、N、O等の不純物を含有する。水素リッチガスbの生成時には、改質器2に加熱用燃料fと共にオフガスeaが供給され熱源燃料の一部として再利用される。
固体高分子型燃料電池5から回収された際のオフガスeはCOを主成分とするが、CO吸着除去器3を通過した際に除去されたCOも含有することになり、このオフガスeaに含まれるCOやCO等が熱源燃料の一部となる。
水素リッチガス生成工程で、改質器2での改質反応により生成された水素リッチガスbは、次のCO吸着除去工程に送られる。CO吸着除去工程には、二塔のCO吸着除去塔3a,3bを有して構成されたCO吸着除去器3が設けられており、CO吸着除去器3に内蔵されたCO吸着剤に水素リッチガスbを接触させることにより、水素リッチガスBからCOを吸着除去して水素を主成分とするCO除去ガスcとする。
尚、ここで示すCO吸着剤としては、シリカ、アルミナ、活性炭、グラファイトおよびポリスチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上の単体に、ハロゲン化銅(I)および/またはハロゲン化銅(II)を担持させてなる材料等を例示できる。
このCO吸着除去工程を、後述する水素吸蔵合金による水素分離回収工程の前段階の工程とすることで、水素吸蔵合金の被毒成分となり水素吸蔵能力を低下させる可能性があるCOを事前に除去することができる。また、燃料電池システムの停止後の再起動時に水素リッチガス生成工程で副生成物としてCOが発生して水素リッチガスb中のCO濃度が増加してもそのCOを完全に除去することができる。
CO吸着除去工程で、CO吸着除去器3によりCOが除去されたCO除去ガスcは、次の水素分離回収工程に送られる。この水素分離回収工程には、水素吸蔵合金を内蔵する三塔の水素吸蔵合金容器4a,4b,4cを有して構成された水素分離回収装置4が設けられており、CO除去ガスcはこの水素分離回収装置4に供給される。CO除去ガスcのうち主成分の水素は、水素分離回収装置4の各水素吸蔵合金に吸蔵され、この水素分離回収装置4で回収しきれなかった水素並びにCOをはじめとする他のガスは、オフガスeとして水素リッチガス生成工程に戻され改質器2の熱源燃料の一部として再利用される。水素分離回収装置4の水素吸蔵合金に吸蔵された水素は精製され、減圧パージ、加熱を経て、高純度水素dとして次の発電工程へ送られる。
三塔の水素吸蔵合金容器4a,4b,4cに内蔵された夫々の水素吸蔵合金は、水素吸蔵・精製ステップ→減圧・加熱ステップ→高純度水素放出ステップ→冷却ステップという順に機能して、再び水素吸蔵・精製ステップに戻るというサイクルで水素分離回収装置4は稼動する。この三塔の水素吸蔵合金容器4a,4b,4cに内蔵された水素吸蔵合金が夫々機能する状態(ステップ)を時間的に等間隔でずらせることにより、CO除去ガスcから高純度水素dを連続して精製放出することができる。この水素吸蔵合金容器が三塔以上であれば、高純度水素dを連続して精製放出することができる。
先に説明したように、水素回収分離工程でCOや他の不純物が除去された高純度水素dは次の発電工程に送られる。発電工程には固体高分子型燃料電池5が設けられており、高純度水素dがこの固体高分子型燃料電池5に導入されることで発電が実施される。
固体高分子型燃料電池5には発電電力計測装置(図示せず)が設けられており、この発電電力計測装置で計測した発電電力量(発電量)を運転制御装置6に送る。また、水素分離回収装置4の三塔の水素吸蔵合金容器4a,4b,4cの内部には、温度・圧力センサー(図示せず)が設けられており、高純度水素dを放出した後の水素吸蔵合金容器4a,4b,4c内の温度、および圧力を検出して運転制御装置6に送る。
運転制御装置6により演算された水素吸蔵量と使用水素量に応じて、改質器2に供給する炭化水素含有燃料の供給量および/または水素分離回収装置4の水素吸蔵合金の水素の吸蔵・放出の切り替え時間を求める以降の詳細構成は、先に示した実施形態と略同様であるのでその説明を省略する。
1…圧縮機
2…改質器
3…CO吸着除去器
3a,3b…CO吸着除去塔
4…水素回収分離装置
4a,4b,4c…水素吸蔵合金容器
5…固体高分子型燃料電池
6…運転制御装置
a…炭化水素含有燃料
aa…加圧状態にある炭化水素含有燃料
b…水素リッチガス
c…CO除去ガス
d…高純度水素
e…オフガス
ea…オフガス
f…加熱用燃料

Claims (3)

  1. 炭化水素含有燃料から水素リッチガスを生成する改質器と、
    複数の水素吸蔵合金容器を有し、前記水素リッチガスに含まれる水素を前記水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金に吸蔵させると共に、その吸蔵させた水素を前記水素吸蔵合金から高純度水素として放出させる水素分離回収装置と、
    前記高純度水素を導入して発電を行う固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
    前記水素吸蔵合金容器内に設けられた温度・圧力センサーで検出した高純度水素放出後の水素吸蔵合金容器内の温度および圧力を用いて、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を演算する機能を備えると共に、前記固体高分子型燃料電池の発電量をもとに前記固体高分子型燃料電池での使用水素量を演算する演算機能を備えた運転制御装置が設けられており、
    前記運転制御装置により演算された水素吸蔵量と使用水素量に応じて、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めるか、或いは、目標炭化水素流量が現状の炭化水素流量より大きくなり過ぎる場合は、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めることに加えて前記水素分離回収装置の水素吸蔵合金の水素の吸蔵・放出の切り替え時間の短縮を行うように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 炭化水素含有燃料から水素リッチガスを改質器により生成する水素リッチガス生成工程と、
    前記水素リッチガスに含まれる水素を複数の水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金に順次吸蔵させると共に、吸蔵させた水素を前記水素吸蔵合金容器内の水素吸蔵合金から順次高純度水素として放出させる水素回収分離工程と、
    前記高純度水素を固体高分子型燃料電池に導入して発電する発電工程を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
    前記水素吸蔵合金容器内に設けられた温度・圧力センサーで検出した高純度水素放出後の水素吸蔵合金容器内の温度および圧力を用いて、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を演算すると共に、前記固体高分子型燃料電池の発電量をもとに前記固体高分子型燃料電池での使用水素量を演算し、
    それら演算された水素吸蔵量と使用水素量に応じて、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めるか、或いは、目標炭化水素流量が現状の炭化水素流量より大きくなり過ぎる場合は、前記炭化水素含有燃料の供給量を求めることに加えて前記水素分離回収装置の水素吸蔵合金の水素の吸蔵・放出の切り替え時間の短縮を行うことを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
  3. 前記水素回収分離工程で、前記高純度水素の放出が終了した状態の前記水素吸蔵合金が含有する水素吸蔵量を、前記水素吸蔵合金の飽和水素吸蔵量の20〜80%とすることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システムの運転方法。
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