JP2007209868A - 圧力スイング吸着装置の安定運転方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】PSA10に導入される原料ガス流量と、PSA10からの製品水素流量から水素回収率を算出する演算機能を持たせ、サイクル時間を随時変更することで、外気環境温度の変動などに拘らず、一定の回収率でPSA10を運転できる。これにより、夏期や冬季などによる外気環境温度に拘らず、製品水素の純度および製品水素製造量を低コストでかつ簡単に安定化でき、しかも既存設備を利用し、簡単かつ低コストで本発明の運転方法とすることができる。
【選択図】図4
Description
図2には、併せて各工程の進行に伴う各吸着塔内における圧力変化を示している。都市ガスなどの原料ガス、すなわち炭化水素を改質する水蒸気改質器(燃焼部+改質部)からCO変成器を経て得られる改質ガスはA塔に供給され、ここでH2O、CO2、CO、CH4などの不純物の吸着が行われ、吸着されない水素が精製水素(製品水素)となる。
特許文献1では、水素精製用4塔式圧力スイング吸着装置の運転に際して、製品水素の温度を測定、検知し、その測定、検知値を基にサイクル時間を変更する。これにより、製品水素流量を安定化させると同時に、製品水素の純度を安定化させ、かつ回収率を安定化させる。これにより夏場や冬場、あるいは昼夜などの気温差により目標とする装置性能に達しないケースを未然に防ぐことができる。
すなわち、製品水素の純度(CO含有量)に基づき、PSA装置のサイクル時間を制御し、かつ製品水素ホルダー内圧力(製品水素回収量)に基づいて、水素含有ガス製造装置の原料供給量を制御する。これにより、機械的トラブル以外の製品水素の純度低下においても水素回収率を一定に保ことができる。なお、サイクル時間を早めるとき、PSA装置へ供給する改質ガス量を一定とすると、PSA装置により得られる製品水素量が減少し、製品水素圧力、すなわち製品水素ホルダー内の圧力が低下する。これを補い、製品水素量を低下前と同じにするには、PSA装置への供給改質ガス量を増やす必要があることも開示されている。
また、特許文献2の水素精製用4塔式圧力スイング吸着装置では、設備中にCO分析計(CO濃度計)、PSA自動クリーニングモード設定機構、PSA自動負荷設定機構、圧力計および水素製造装置自動負荷設定機構という多数の機器を必要とする。これらの測定器は大変高価であるとともに、高純度な測定器を維持管理するために手間を要していた。また、通常、PSA装置内にはCO分析計を設けない。したがって、CO濃度とは異なる測定値により製品水素の純度を許容範囲内に制御する技術が望まれていた。
上記圧力スイング吸着装置から排出される製品ガス流量Poutとを計測し、
次式により製品ガス回収率ηAを求め、
得られた製品ガス回収率ηAに上限値ηH、下限値ηL を設定し、
(I)ηA<ηLの場合には、サイクル時間Tc(秒)を(Tc+Tc×x)(ここで、xは0.001〜0.1の小数点以下の数値である。以下同じ)と所定時間だけ増やす一方、
(II)ηH≧ηA≧ηLの場合には、サイクル時間Tc(秒)を変えず、
(III)ηA>ηHの場合には、サイクル時間Tc(秒)を(Tc−Tc×x)と所定時間だけ減らす、
圧力スイング吸着装置の安定運転方法に関する。
製品ガス回収率(ηA)=[Pout/(Fin×Cin/100)]×100……(1)
〔式(1)中、原料ガス流量Finと製品ガス流量Pout は、何れも移動平均値(Nm3/h)であり、Cinは、原料ガス中の製品ガス分率(mol%)である。〕
一方、製品ガス回収率ηA に対する上限値ηH と下限値ηL とを予め設定する。
製品ガスの温度が低い場合は、昇圧工程に用いられる製品ガスの一部は、実流量で所定圧力まで昇圧されるため、理想状態における必要製品ガス量が増加し、回収率が低下してしまう。そのためサイクル時間を長くし、回収率を高める必要がある。反面、温度が低ければ、平衡吸着量は増加し、製品ガスの純度は、サイクル時間を長くしてもキープされる。このようにして、製品ガス純度、回収率が安定する。
本発明によれば、このようにして圧力スイング吸着装置の運転に際して、夏場、冬場、あるいは昼、夜などの外気環境温度の変化に拘らず、製品ガスの純度および製品ガス製造量を、吸着剤を積み増しすることなく低コストでかつ簡単に安定化させることができ、しかも既存設備からの設備変更も容易に行うことができる。
なお、(II)ηH≧ηA≧ηLの場合には、サイクル時間Tc(秒)を変える必要はない。
吸着剤はゼオライトのみでもよいし、活性炭のみでもよい。また、これらの両方でもよい。さらに、分子篩炭素(MSC)やアルミナを併用してもよい。
実施例では、図3に示す水素精製用4塔式圧力スイング吸着装置(以下、圧力スイング吸着装置)10を使用した。各吸着塔A、B、C、Dに混合床として活性炭、ゼオライトを充填した。吸着塔A〜Dへ供給する被処理ガスとして、都市ガス(脱硫済み)を水蒸気改質器で改質し、改質器からCO変成器を経て得られる改質ガスを用いた。改質器は概略バーナを備える燃焼部と改質部からなり、燃焼部からの熱(ΔH)が改質部に供給され、改質部で原料ガスが接触反応により改質ガスへ変えられる。
改質ガスは、水素が主成分であるが、CO、CH4 、CO2 、N2などが含まれている。これらの水素外のガスが吸着塔で吸着除去されるガスであるが、改質ガスの吸着塔への入温度は20〜40℃程度である。CO変成器を経た改質ガスの温度はそれより高温であるので、ガスクーラーによりそのような温度に冷却して吸着塔に供給される。
運転圧力は、吸着工程時(吸着工程終了時まで同じ)0.70MPaG、均圧減圧、減圧保持および減圧終了時0.6MPaG、ブローダウン終了時0.02MPaG、パージ終了時0.22MPaG、昇圧終了時0.68MPaとした。吸着工程の吸着圧力は、精製水素ラインに配置された制御バルブにより制御されるが、図示は省略している。以下の操作において、弁Vはステップ1〜12を通して開の状態である。ブローダウン(工程)は適宜ブロー(工程)と略記している。
圧力スイング吸着装置10の運転時において、ηA<ηLの場合は、サイクル時間Tc(秒)をTc=Tc+Tc×0.01(1%)(ここで、x=0.01)に代入し、所定時間だけ長くする。製品水素の温度が低い場合は、昇圧工程に用いられる製品水素の一部は、実流量で所定圧力まで昇圧されるため、理想状態における必要水素量が増加し、回収率が低下してしまう。そのため、サイクル時間を長くし、回収率を高める必要がある。反面、温度が低ければ、平衡吸着量は増加し、製品水素の純度は、サイクル時間を長くしてもキープされる。このようにして製品水素純度、回収率が安定する。
圧力スイング吸着装置10の運転時において、ηA>ηHの場合は、TcをTc=Tc−Tc×0.01(1%)(ここで、x=0.01)に代入し、所定時間だけ短くする。回収率適正診断は、圧力スイング吸着装置10の吸着塔A〜Dのサイクル切り替え時に随時行う(4塔式の場合、各塔のサイクル切り替え時)。サイクル時間を短くするのは、圧力スイング吸着装置10の吸着操作において、温度が高い場合、平衡吸着量が低くなるため、製品水素の純度をキープするには、単位吸着剤当りの処理容量を減少させることが必須であるからである。この場合、昇圧工程に用いられる製品水素の一部は、実流量で所定圧力まで昇圧される。これにより、理想状態における必要水素量としては減少し、回収率は高まる方向となる。サイクル時間が短くなるほど、水素回収率は低下する傾向にあるが、上記二つの効果が相殺され、製品水素純度、回収率が安定する。
一方、比較例では、上記サイクル時間を常に180秒として実施した。実施例では、上記のように、製品水素回収率ηAを基準とし、この基準回収率ηAと、その上限値ηHおよび下限値ηLを基に、ηA<ηLの場合にはサイクル時間を1%長くし、ηA>ηH の場合にはサイクル時間を1%短くした。また、ηH≧ηA≧ηLの場合はサイクル時間を変更しないものとした。
このように、実施例においては、2つの流量計11,12による製品水素回収率演算機能を有しているため、サイクル時間を演算によってサイクル時間を随時変更させたので、操作温度に差分が生じても一定の水素回収率および製品純度を許容内に抑えることが可能となった。
11 原料ガス流量計
12 製品ガス流量計
Claims (4)
- 原料ガス中の不純物を加圧下で吸着剤層に吸着させて分離し、その後、常圧付近まで減圧して吸着不純物を脱着させて製品ガスを得る圧力スイング吸着装置に導入される原料ガス流量Finと、
上記圧力スイング吸着装置から排出される製品ガス流量Pout とを計測し、
下記式(1)により製品ガス回収率ηAを求め、
得られた製品ガス回収率ηA に上限値ηH 、下限値ηLを設定し、
(I)ηA<ηLの場合には、サイクル時間Tc(秒)を(Tc+Tc×x)(ここで、xは0.001〜0.1の小数点以下の数値である。以下同じ)と所定時間だけ増やす一方、
(II)ηH≧ηA≧ηLの場合には、サイクル時間Tc(秒)を変えず、
(III)ηA>ηHの場合には、サイクル時間Tc(秒)を(Tc−Tc×x)と所定時間だけ減らす、
圧力スイング吸着装置の安定運転方法。
製品ガス回収率(ηA)=[Pout/(Fin×Cin/100)]×100……(1)
〔式(1)中、原料ガス流量Finと製品ガス流量Pout は、何れも移動平均値(Nm3/h)であり、Cinは、原料ガス中の製品ガス分率(mol%)である。〕 - 原料ガスは、水素精製プロセスにおいて脱硫部で脱硫された原料炭化水素に、改質部で水蒸気を加えて改質することで水素含有ガスを生成した後、ガス変成部で水素含有ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素および水素に転換して得られたガス変成後の水素含有ガスで、
上記製品ガスは高純度水素である請求項1に記載の圧力スイング吸着装置の安定運転方法。 - 上記圧力スイング吸着装置は4塔式である請求項1または請求項2に記載の圧力スイング吸着装置の安定運転方法。
- 上記吸着剤層に充填される吸着剤は、ゼオライト、活性炭および/または分子篩炭素である請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の圧力スイング吸着装置の安定運転方法。
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