JP3819174B2 - 圧力スイング吸着装置におけるオフガス流量制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフガス貯蔵タンクを有する水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置におけるブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素は不飽和結合への水素添加用、酸水素炎用その他各種用途に供される基礎原料であり、燃料電池用の燃料としても利用される。水素の工業的製造方法としては、水の電解法、石炭やコークスのガス化法、液体燃料のガス化法、ガス体燃料の変成法、コークス炉ガスの液化分離法、メタノールやアンモニアの分解法など各種の方法が知られている。
【0003】
このうち例えばガス体燃料の変成法は、通常、天然ガスや都市ガス等の炭化水素ガスの水蒸気改質により行われる。水蒸気改質法では改質器が用いられ、炭化水素ガスが接触反応により改質ガスへ変えられる。触媒としてはNi系、Ru系等の適当な触媒が使用される。得られる改質ガスには主成分である水素のほか、CO、CO2等の副生成分や余剰H2O、また未改質の炭化水素が含まれている。このため、改質ガスを例えば燃料電池にそのまま使用したのでは電池性能を阻害してしまう。
【0004】
例えば、燃料電池のうちリン酸型燃料電池(PAFC)で用いる水素ガス中のCOは1%、固体高分子型燃料電池(PEFC)では100ppmが限度であり、これらを越えると電池性能が著しく劣化する。したがって改質ガスは、燃料電池へ導入する前に精製し、それら副生成分を除去しておく必要がある。また不飽和結合への水素添加用或いは酸水素炎用の水素は通常ボンベに詰めたものが使用されており、その純度は5N以上が要求されている。
【0005】
そのような高純度の水素を得るための水素精製法の一つとして圧力スイング吸着法(PSA法)がある。圧力スイング吸着法では、不純物を吸着剤相に加圧下で吸着させて分離し、常圧付近まで減圧して吸着不純物を脱着させる。このうち3塔式圧力スイング吸着法においては、吸着、減圧、均圧、ブローダウン、パージ、均圧、昇圧等の諸工程が繰り返されるが、ブローダウン工程及びパージ工程ではオフガスが発生する。
【0006】
図1は3塔式圧力スイング吸着装置における各吸着塔の工程フロー及び運転シーケンスの概略を示す図である。図1中、上部の図は下部の図(表)におけるステップ1から3までの工程を示し、また下部の図(表)には、各工程の進行に伴う各吸着塔における圧力変化を示している。改質ガス等の水素含有原料ガスはA塔に供給され、ここでH2O、CO2、CO、CH4 等の不純物の吸着が行われ、吸着されない水素が精製水素(製品水素)となる。
【0007】
その間、B塔では減圧、均圧、ブローダウン工程が行われ、C塔ではパージ、均圧、昇圧工程が行われる。このうちC塔におけるパージから昇圧まで工程は、この段階でのB塔におけるように減圧からブローダウンまでの工程を経た後の工程である。原料ガスの供給は、A塔において不純物が飽和して破過する前に、自動的にC塔に切り替えられる。この時点でA塔は減圧、均圧、ブローダウン工程へ切り替えられ、またB塔はパージ、均圧、昇圧工程へ切り替えられる。以降、これら工程を順次自動的に繰り返して連続的に操作される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の工程において、ブローダウン工程時のオフガスは、加圧下で吸着した不純物を常圧付近まで減圧して脱着させる工程で発生し、オフガス導管(オフガスライン)を介してオフガス貯蔵タンクへ蓄えられる。ところで、従来、オフガス発生工程ではオフガスラインのバルブ開度を全開、またはある開度に固定している。しかし、このようにオフガスラインに配置されたバルブ開度を固定しておくと、この工程の始めから終わりまでの間、圧力差に応じてオフガス発生量が大きく変化し、オフガス貯蔵タンクの内圧も変化する。このためタンクのオフガスを水素製造用改質器のバーナへ供給するとガス流量が変動し、燃焼状態が不安定となる。
【0009】
図2は上記状態を模式的に示した図である。図2(a)のようにオフガスラインに配置されたバルブ開度を固定しておくと、図2(b)のようにオフガスがオフガス貯蔵タンクに蓄積され、圧力も大きく変化する。このようなオフガス貯蔵タンクの圧力上昇は、吸着塔のブローダウン工程時の圧力上昇をまねき、ひいては圧力スィング吸着の性能を低下させる原因となる。またオフガス貯蔵タンクのオフガスを水素製造用の改質器の燃料として使用すると、タンク内圧の変動によって、バーナの燃焼状態が不安定となる。
【0010】
上記のような問題を回避するためには、オフガス貯蔵タンクの内圧変化を可及的に抑制する必要があり、このためにはタンク容量を大きくせざるを得ない。そこで、本発明者等は、吸着塔におけるブローダウン工程時の減圧圧力の上昇を防いで圧力スィング吸着の性能を低下させず、しかもタンク容量を大きくすることなく、オフガス貯蔵タンクの圧力変化を可及的に抑制する上でのそれら問題点を解決すべく追求、検討した結果、オフガス貯蔵タンクの上流側のオフガス調整バルブの開度を段階的に、もしくは直線的に開けて行くことにより解決できることを見い出した。
【0011】
すなわち、本発明は、圧力スイング吸着装置において、オフガスラインすなわちオフガス貯蔵タンクの上流側のオフガス調整バルブの開度を段階的に、もしくは直線的に開けて行くことにより、オフガス発生量を可能な限り一定とし、これによりオフガス貯蔵タンクの圧力変動を抑えることができるブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)オフガス貯蔵タンクを有する水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置において、各吸着塔におけるブローダウン工程時に、オフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を段階的に開けて行くことを特徴とするブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法を提供し、また本発明は、(2)オフガス貯蔵タンクを有する水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置において、各吸着塔におけるブローダウン工程時に、オフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を直線的に開けて行くことを特徴とするブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、圧力スイング吸着装置の操作時において、各吸着塔におけるブローダウン工程時において、各吸着塔に連結されたオフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を段階的に開けて行くか、または直線的に開けて行くようにする。これにより各吸着塔におけるオフガス発生量を可能な限り一定とし、吸着塔の減圧圧力の上昇を防ぐことができ、圧力スィング吸着の性能低下を防止できるだけでなく、オフガス貯蔵タンクの圧力変動を抑えることができる。
【0014】
図3は本発明においてオフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を段階的に開けて行った状態を模式的に示した図、図4は本発明においてオフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を直線的に開けて行った状態を模式的に示した図である。図3(a)、図4(a)のようにオフガスラインに配置されたバルブ開度を段階的に、または直線的に開けて行くと、図3(b)、図4(b)のようにオフガス貯蔵タンクの内圧変動を小さくすることができる。
【0015】
これによって、従来におけるように、バルブ開度が固定されている場合に生じる吸着塔でのブローダウン工程時の減圧圧力の上昇を防ぎ、圧力スィング吸着装置における性能を低下をなくすることができる。また、オフガス貯蔵タンクの内圧変動を少なくできることにより、オフガス貯蔵タンクからのオフガスを圧力変動を少なくして排出できるため、オフガスを水素製造用改質器の燃料として使用するに際して改質器バーナの燃焼状態を悪化させることがない。
【0016】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはもちろんである。図5は実施例において使用した装置の概略を示す図である。本実施例では定常状態となった時点での操作例を示し、比較例として、弁Y(すなわちオフガス貯蔵タンクの上流側バルブ)の開度を一定とした場合を併せて記載している。
【0017】
各吸着塔A、B、Cに混合床として活性炭、ゼオライトを充填した。原料ガスとして都市ガスを水蒸気改質する改質器からCO変成器を経て得られる改質ガスを用いた。改質器は概略バーナを備える加熱部と改質部からなり、加熱部からの熱(ΔH)が改質部に供給され、改質部で都市ガスが接触反応により改質ガスへ変えられる。図中、Tはオフガス貯蔵タンク、Fはバーナ燃料ガス導管、Kはバーナ燃焼用空気導管である。なお、図中CO変成器の記載は省略している。
【0018】
原料ガスすなわち改質ガスは、水素を主成分とし、CO、CH4、CO2、N2 などが含まれており、温度は20〜40℃の範囲である。各吸着塔A〜Cにおける吸着時間は200〜300sec、減圧及びパージ時間は80〜120sec、ブローダウン時間は60〜110sec、均圧時間は15〜40secの範囲とした。また吸着時の圧力は4〜9.9kg/cm2G、減圧時の圧力は2〜6kg/cm2G、均圧時の圧力は1〜5kg/cm2G、ブローダウン時の圧力は0〜2kg/cm2G、昇圧時の圧力は4〜9.9kg/cm2Gの範囲で実施した。
【0019】
《実施例1》
(1)A塔での吸着工程、B塔での減圧工程、C塔でのパージ工程のステップから、(2)A塔での吸着工程、B塔での均圧工程、C塔での均圧工程のステップを経た後、(3)A塔での吸着工程、B塔でのブローダウン工程、C塔での昇圧工程のステップを実施した。
【0020】
上記(3)のステップにおいては、(2)のステップの後、同じくA塔での吸着操作を続けながら、弁B4を開から閉に切り替え、弁B5を閉から開へ切り替えてB塔での均圧工程をブローダウン工程へ切り替えるとともに、弁W、C4を開から閉に切り替え、弁W、C3を開としてC塔での均圧工程を精製水素による昇圧工程へ切り替えた。
【0021】
ここで、比較例として、B塔でのブローダウン工程からのオフガスは、弁Yの開度を一定としてオフガスタンクへ供給した。このため、B塔でのブローダウン工程における減圧圧力が上昇し、またオフガス貯蔵タンクのタンク内圧力は図2(b)のように上昇(最大0.12MPa)した後、下降(最低0.018MPa)した。この間、オフガス貯蔵タンク中のオフガスを改質器の燃料として供給したが、改質器におけるバーナの燃焼状態を不安定にし悪化させてしまった。
【0022】
そこで、本発明により、弁Yの開度を図3(a)のように段階的に上げて行ったところ、B塔でのブローダウン工程における減圧圧力の上昇はなく、またオフガス貯蔵タンクの内圧は図3(b)のようにほぼ一定値(平均0.023MPa)を保持した。この間、オフガス貯蔵タンク中のオフガスを改質器の燃料として供給したが、改質器におけるバーナの燃焼状態に変化はなかった。
【0023】
次いで、A塔での吸着操作をC塔での吸着操作に切り替え、上記(1)〜(3)と同様にして順次操作し、A塔でのブローダウン時に、弁Yの開度を図3(a)のように段階的に上げて行ったところ、オフガス貯蔵タンク中のタンク内圧力は図3(b)のようにほぼ一定値を維持した。この間、オフガス貯蔵タンク中のオフガスを改質器の燃料として供給したが、改質器におけるバーナの燃焼状態に変化はなかった。
【0024】
さらに、C塔での吸着操作をB塔での吸着操作に切り替え、上記と同様にしてC塔でのブローダウン時に、弁Yの開度を図3(a)のように段階的に上げて行ったところ、上記と同様の結果が得られた。こうして各吸着塔でのブローダウン工程時に、各吸着塔の減圧圧力の上昇を防ぐことができ、オフガス貯蔵タンクの内圧をほぼ一定値に維持することができた。
【0025】
《実施例2》
実施例1と同様にして、各吸着塔でのブローダウン工程時に弁Yの開度を図4(a)のように直線的に上げて行ったところ、各吸着塔の減圧圧力の上昇はなく、またオフガス貯蔵タンク中のタンク内圧力は図4(b)のようにほぼ一定値を維持することができた。この間、オフガス貯蔵タンク中のオフガスを改質器の燃料として供給したが、改質器におけるバーナの燃焼状態に変化はなかった。
【0026】
【発明の効果】
本発明のブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法によれば、水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置において、オフガス貯蔵タンクの内圧変動を抑えるとともに、該圧力スィング吸着装置の性能低下を防止できる。また、オフガス貯蔵タンクからのオフガスを圧力変動を少なくして排出できるため、オフガスを水素製造用改質器の燃料として使用するに際して改質器バーナの燃焼状態を悪化させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】3塔式圧力スイング吸着装置における各吸着塔の工程フロー及び運転シーケンスの概略を示す図。
【図2】従来におけるオフガスラインに配置されたバルブ開度とオフガス貯蔵タンクの圧力状態を示す図。
【図3】本発明によるオフガスラインに配置されたバルブ開度とオフガス貯蔵タンクの圧力状態を示す図。
【図4】本発明によるオフガスラインに配置されたバルブ開度とオフガス貯蔵タンクの圧力状態を示す図。
【図5】実施例において使用した装置の概略を示す図。
【符号の説明】
A〜C 吸着塔
T オフガス貯蔵タンク
F バーナ燃料ガス導管
K バーナ燃焼用空気導管
Claims (2)
- オフガス貯蔵タンクを有する水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置において、各吸着塔におけるブローダウン工程時に、オフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を段階的に開けて行くことを特徴とするブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法。
- オフガス貯蔵タンクを有する水素精製用の3塔式圧力スイング吸着装置において、各吸着塔におけるブローダウン工程時に、オフガス貯蔵タンクの上流側バルブの開度を直線的に開けて行くことを特徴とするブローダウン工程時のオフガス流量の制御方法。
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