JP6640660B2 - 水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置に関する。
近年、地球環境の改善につながる燃料電池用の燃料として、水素への期待が高まっている。水素製造方法の代表的なものとしては、炭化水素含有ガス(天然ガス)の改質又は水素を含有する有機ハイドライドの脱水素化により得られる水素リッチガスに含まれる水素以外の不純物を水素精製器で除去する方法がある。
上記水素精製器としては、装置の小型化が可能なPSA(Pressure Swing Adsorption)方式を採用した吸着塔による吸着除去技術が開示されている(特開2012−87012号公報参照)。
上述の吸着塔は、定期的に吸着塔内を減圧し、パージガスで洗浄することで吸着剤を再生する必要がある。このパージガスとしては、一般に吸着塔で精製した水素ガスや、予め用意した高純度水素ガスが用いられる。
このように吸着塔の再生でパージガスに用いられた水素ガスは、オフガスとして吸着塔から排出され処理される。そのため、従来の水素ガス製造方法では、パージガスで使用した水素ガスの消費により、トータルでの水素回収量が低下するという課題がある。
特開2012−87012号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、水素リッチガスをPSA型吸着塔で精製する水素ガス製造において水素回収量を向上できる水素ガス製造方法及び水素製造装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明は、水素ガス及び水素以外の不純物ガスを含む水素リッチガスからPSA型吸着塔による精製で高純度水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、上記PSA型吸着塔を再生する工程を備え、上記再生工程で、上記PSA型吸着塔が吸着しない水素以外のパージガスを用いることを特徴とする。
当該水素ガス製造方法によれば、水素以外のガスをパージガスとして用いることで、水素ガスの消費を低減しつつPSA型吸着塔の再生を行うことができる。その結果、当該水素ガス製造方法は、水素回収量を向上させることができる。なお、「吸着塔が吸着しない」とは、吸着塔の吸着対象ガスよりも吸着塔での吸着量が小さいことを意味し、例えば吸着塔での吸着率が5体積%以下、好ましくは1体積%以下であることを意味する。
上記再生工程で、上記パージガスでのパージ後に水素ガスでのパージを行うとよい。このように水素以外のパージガスでパージした後に水素ガスでパージすることで、水素ガスの消費を低減しながら、精製される水素ガスの純度を向上できる。
炭化水素含有ガスの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガスを生成する工程と、上記改質工程で使用する高純度酸素ガスを空気の精製により得る工程とをさらに備え、上記空気精製工程で排出される窒素含有ガスを上記パージガスとして用いるとよい。このように改質ガスの生成時に副生される窒素含有ガスをパージガスとして用いることで、水素回収量を向上しつつ、水素ガスの製造コストを低減することができる。
炭化水素含有ガスの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガスを生成する工程をさらに備え、上記改質工程で排出される二酸化炭素含有ガスを上記パージガスとして用いてもよい。このように改質ガスの生成時に発生する二酸化炭素含有ガスをパージガスとして用いることでも、水素回収量を向上しつつ、水素ガスの製造コストを低減することができる。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、水素ガス及び水素以外の不純物ガスを含む水素リッチガスからPSA型吸着塔による精製で高純度水素ガスを製造する水素ガス製造装置であって、上記PSA型吸着塔に再生用のパージガスを供給するラインを備え、上記パージガスが上記PSA型吸着塔が吸着しない水素以外のガスであることを特徴とする。
当該水素ガス製造装置によれば、水素以外のガスをパージガスとして用いることで、水素ガスの消費を低減しつつPSA型吸着塔の再生を行うことができる。その結果、当該水素ガス製造装置は、水素回収量を向上させることができる。
以上説明したように、本発明の水素ガス製造方法及び水素製造装置によれば、水素リッチガスをPSA型吸着塔で精製する水素ガス製造において水素回収量を向上できる。
本発明の一実施形態の水素ガス製造装置を示す概略図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の水素製造装置及び水素ガス製造方法の実施形態を詳説する。
[水素ガス製造装置]
図1の当該水素ガス製造装置は、炭化水素含有ガスAの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガス(水素リッチガスB)を生成する改質器1と、水素リッチガスBを貯蔵する水素リッチガスバッファタンク2と、水素リッチガスBを精製するPSA型吸着塔3と、PSA型吸着塔3から排出される製品ガスEを貯蔵する製品ガスバッファタンク4と、PSA型吸着塔3に再生用のパージガスPを供給するパージガス供給ライン100とを主に備える。
当該水素ガス製造装置は、水素自動車や燃料電池自動車などの水素を燃料とする車両等に水素を供給するためや燃料電池を利用した中大規模の発電に用いられる。
<改質器>
改質器1は、水蒸気改質を用いる場合は、例えば公知の水蒸気改質部と変成部とを組み合わせた改質器を用いることができる。具体的には、炭化水素含有ガスAを触媒が充填された水蒸気改質部で水蒸気Hにより改質し、水素及び一酸化炭素を主成分とするガスとした後、さらに変成部で改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気で変成し、水素リッチガスBを生成する。このとき水素リッチガスBとは別に二酸化炭素含有ガスCが排出される。なお、上記水蒸気改質反応は吸熱反応なので、例えばバーナーにより改質部を加熱して反応を促進させる。このバーナーは、その燃料として、炭化水素含有ガスAの一部と、酸素ガスOとを用いる。
部分酸化改質を用いる場合は、改質器1に充填された酸化触媒により、炭化水素含有ガスAを高純度の酸素ガスOにより酸化することで水素リッチガスBを得る。この場合、水蒸気の供給及び加熱は不要である。また、水蒸気改質と部分酸化改質とを組み合わせたオートサーマル改質の場合、水蒸気Hの供給は必要であるが、加熱は不要である。部分酸化改質又はオートサーマル改質の場合は、当該水素ガス製造装置は、高純度酸素ガスを得るための空気精製器を備えることが好ましい。
炭化水素含有ガスAとしては、分子中に炭素と水素とを含む化合物又はその混合物から適宜選んで用いることができる。上記化合物としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、ガソリン、ナフサ、灯油及び軽油などの炭化水素燃料、メタノール及びエタノールなどのアルコール、ジメチルエーテルなどのエーテル等を挙げることができる。
改質器1で生成される水素リッチガスB中には、水素の他、一酸化炭素、二酸化炭素、未反応の天然ガス成分や水などの不純物が含まれる。
<水素リッチガスバッファタンク>
水素リッチガスバッファタンク2は、改質器1より排出される水素リッチガスBを一次貯蔵して流量の変動を吸収し、PSA型吸着塔3に安定して供給するために水素リッチガス供給ライン101に設けられる。具体的には、改質器1より排出される水素リッチガスBはコンプレッサ(図示省略)で圧縮され、水素リッチガスバッファタンク2に貯蔵される。
水素リッチガスバッファタンク2内の圧力の下限としては、絶対圧で5気圧が好ましく、8気圧がより好ましい。一方、水素リッチガスバッファタンク2内の圧力の上限としては、20気圧が好ましく、10気圧がより好ましい。上記圧力が上記下限より小さいと、水素リッチガスBのPSA型吸着塔3への供給が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、装置及び運転コストが過大となるおそれがある。
<PSA型吸着塔>
PSA型吸着塔3は、改質器1より排出される水素リッチガスBを精製し、水素リッチガスBよりも純度の高い高純度の水素ガスを製品ガスEとして得る。具体的には、PSA型吸着塔3にはPSA法で再生可能な吸着剤が充填されており、上述の未反応の天然ガス成分など、水素リッチガスB中に含まれる不純物を吸着除去し、製品ガスEを排出する。
具体的には、当該水素ガス製造装置は、複数(図では4)のPSA型吸着塔3a,3b,3c,3dと、この複数のPSA型吸着塔3a,3b,3c,3dに連通する水素リッチガス供給ライン101、製品ガス排出ライン102及びオフガス排出ライン103とを備える。なお、PSA型吸着塔3の数は任意である。
水素リッチガスBは、水素リッチガス供給ライン101を通して複数のPSA型吸着塔3a,3b,3c,3dに供給される。
PSA型吸着塔3は、水素リッチガスB中の上記不純物を吸着する吸着剤が充填されており、製品ガス排出ライン102から高純度の製品ガスEを排出する。これらのPSA型吸着塔3は、それぞれ吸着、減圧、洗浄及び均圧、昇圧、並びに吸着の一連の工程を順次切り替えて運転される。具体的には、吸着工程の終了後、吸着塔内の圧力を減圧する工程及び水素ガス以外の吸着塔が吸着しないパージガスPで洗浄する(パージする)工程により、吸着した不純物を除去し、吸着剤を再生する。その後、吸着剤を再生した吸着塔を再び昇圧し水素精製に再び供する。当該水素ガス製造装置の運転中、少なくとも1の吸着塔が吸着工程となるように上記一連の工程のタイミングを各吸着塔でずらして行うことで、吸着と再生とを異なる吸着塔で同時に行うことが可能となり、連続的に製品ガスEを製造できる。
PSA型吸着塔3には、水素リッチガスB中の主な不純物である一酸化炭素、二酸化炭素、水分等を吸着可能な吸着剤が充填される。この吸着剤は各不純物を吸着可能で、PSA法で再生可能なものであれば特に限定されない。このような吸着剤としては、X型やA型のゼオライト、活性炭、多孔質シリカ、多孔質アルミナ及び金属有機構造体が特に好適に使用できる。
なお、複数種の不純物を除去する場合には、それぞれに適応した吸着剤を吸着塔内に順に充填して対応することが可能である。具体的には、水素リッチガスBの導入方向(入口側)から順に芳香族化合物吸着剤及び低級炭化水素吸着剤を充填するとよい。
さらに、吸着剤の種類ごとに吸着塔を分割してもよい。つまり、1つの区画(又は吸着塔)に1種類の吸着剤が充填されるようにしてもよい。これにより、吸着剤の種類に合わせてパージガスPの種類を選択することができる。
水素リッチガス供給ライン101は水素リッチガスBをPSA型吸着塔3へ導入するためのラインである。水素リッチガス供給ライン101とPSA型吸着塔3とはそれぞれ水素リッチガス供給弁V1a,V1b,V1c,V1dを介して接続される。
製品ガス排出ライン102はPSA型吸着塔3で水素リッチガスBの不純物を除去して得た高純度水素ガスである製品ガスEの回収ラインであり、複数のPSA型吸着塔3a,3b,3c,3dとはそれぞれ製品ガス排出弁V2a,V2b,V2c,V2dを介して接続される。回収した製品ガスEは製品ガスバッファタンク4に一時的に貯蔵され、適宜供給される。なお、この製品ガスEはPSA型吸着塔3の二次パージガス(洗浄ガス)としても使用される。
また、PSA型吸着塔3の排出側には、それぞれ上記製品ガス排出ライン102の他に均圧ライン104及び洗浄ライン105が接続されている。均圧ライン104は、PSA型吸着塔3a,3b,3c,3dにそれぞれ均圧弁V4a,V4b,V4c,V4dを介して接続される。洗浄ライン105は、PSA型吸着塔3a,3b,3c,3dにそれぞれ洗浄弁V5a,V5b,V5c,V5dを介して接続され、さらに製品ガスバッファタンク4及び後述のパージガス供給ライン100とも接続される。これらの製品ガス排出ライン102、均圧ライン104及び洗浄ライン105によって、少なくとも1のPSA型吸着塔3から製品ガスEを回収しながら、他のPSA型吸着塔3に対して、パージガスPによる洗浄工程と、製品ガスバッファタンク4又は残りのPSA型吸着塔3から製品ガスEを供給することによる昇圧工程とを行うことができる。
具体的には、以下のステップを表1に示すようにサイクリックに行うことにより、それぞれのPSA型吸着塔3で上記工程を行うことができる。
(1)4つのPSA型吸着塔3の内の1つ(PSA型吸着塔3a)に水素リッチガスBを供給することにより、不純物を吸着除去して高純度水素ガスを製造する吸着ステップ
(2)吸着ステップを終了したPSA型吸着塔3a内に残存するガスの一部を後述する第2均圧ステップの終了したPSA型吸着塔3cに移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3cとの内圧を均圧にする第1均圧ステップ
(3)第1均圧ステップでの均圧状態を保持する保持ステップ
(4)保持ステップが終了したPSA型吸着塔3a内に残存するガスの一部を、PSA型吸着塔3dに移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3dとの内圧を均圧にする第2均圧ステップ
(5)第2均圧ステップを終了したPSA型吸着塔3a内に残存するガスをオフガスFとして排出し、内圧を大気圧まで減圧する第1減圧ステップ
(6)第1減圧ステップで大気圧まで減圧したPSA型吸着塔3aをさらに真空ポンプP1を用いて大気圧未満まで減圧する第2減圧ステップ
(7)第2減圧ステップでPSA型吸着塔3aを大気圧未満に減圧した状態で、パージガスPを供給して、PSA型吸着塔3aの吸着剤に吸着された不純物を脱着させる吸着剤再生ステップ
(8)吸着剤再生ステップで吸着剤の再生が終了したPSA型吸着塔3aに保持ステップの終了したPSA型吸着塔3b内に残存するガスの一部を移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3bとの内圧を均圧にする第2均圧ステップ
(9)吸着ステップの終了したPSA型吸着塔3c内に残存するガスの一部を移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3cとの内圧を均圧にする第1均圧ステップ
(10)PSA型吸着塔3a内に高純度水素ガスを導入し、PSA型吸着塔3a内の圧力を吸着ステップを行う圧力まで昇圧する昇圧ステップ
上記(7)の再生ステップでは、パージガスPによるパージ後に製品ガスバッファタンク4又は残りのPSA型吸着塔3から製品ガスEを供給して二次パージを行うとよい。
Figure 0006640660
なお、PSA型吸着塔3が3つの場合は、以下のステップを表2に示すようにサイクリックに行うことにより、それぞれのPSA型吸着塔3で上記工程を行うことができる。
(1)3つのPSA型吸着塔3の内の1つ(PSA型吸着塔3a)に水素リッチガスBを供給することにより、不純物を吸着除去して高純度水素ガスを製造する吸着ステップ
(2)吸着ステップを終了したPSA型吸着塔3a内に残存するガスの一部を後述する再生ステップの終了したPSA型吸着塔3cに移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3cとの内圧を均圧にする均圧ステップ
(3)均圧ステップを終了したPSA型吸着塔3a内に残存するガスをオフガスFとして排出し、内圧を大気圧まで減圧する第1減圧ステップ
(4)第1減圧ステップで大気圧まで減圧したPSA型吸着塔3aをさらに真空ポンプP1を用いて大気圧未満まで減圧する第2減圧ステップ
(5)第2減圧ステップでPSA型吸着塔3aを大気圧未満に減圧した状態で、パージガスPを供給して、PSA型吸着塔3aの吸着剤に吸着された不純物を脱着させる吸着剤再生ステップ
(6)吸着剤再生ステップで吸着剤の再生が終了したPSA型吸着塔3aに吸着ステップの終了したPSA型吸着塔3b内に残存するガスの一部を移送し、PSA型吸着塔3aとPSA型吸着塔3bとの内圧を均圧にする均圧ステップ
(7)PSA型吸着塔3a内に高純度水素ガスを導入し、PSA型吸着塔3a内の圧力を吸着ステップを行う圧力まで昇圧する昇圧ステップ
Figure 0006640660
オフガス排出ライン103は、PSA型吸着塔3の再生時に吸着塔内を減圧し、オフガスを排出するために用いるラインである。オフガス排出ライン103は、PSA型吸着塔3a,3b,3c,3dとオフガス排出弁V3a,V3b,V3c,V3dをそれぞれ介して接続される。オフガス排出ライン103にはPSA型吸着塔3の再生時に大気圧以下まで減圧するための真空ポンプP1の吸入側が接続される。
なお、オフガスFは、水素やメタン等を含有するため、改質器1のバーナーに供給することで、燃料として再利用が可能である。
<パージガス供給ライン>
パージガス供給ライン100は、PSA型吸着塔3が吸着しない水素以外のパージガスPをPSA型吸着塔3に供給するラインであり、具体的には洗浄ライン105に切替弁V100を介して接続している。この切替弁V100により、PSA型吸着塔3に供給する再生用のガスを製品ガスEとパージガスPとの間で切り替えることができる。
パージガスPとしては、供給先のPSA型吸着塔3の吸着剤によって吸着されず、吸着塔内部を洗浄できるものであれば限定されないが、例えば窒素、二酸化炭素、メタン、ヘリウム、アルゴン等を使用することができる。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、二酸化炭素やメタンは、水素リッチガスBに含まれ得る不純物であり、PSA型吸着塔3における吸着対象であるが、これらを吸着する吸着剤を他の吸着剤と別の区画又は吸着塔に充填することで、これらを吸着しない吸着剤(例えば水吸着剤)が充填された吸着塔の再生に使用することができる。
また、パージガスPとして、水素リッチガスBの生成時に副生される窒素含有ガスを用いるとよい。例えば改質器1で部分酸化改質又はオートサーマル改質を行う場合、高純度の酸素ガスOを得るための空気精製器から窒素含有ガスが副生される。そこで、この空気精製器から発生する窒素含有ガスをパージガス供給ライン100によりパージガスPとして供給することで、PSA型吸着塔3の再生コストを低減できる。なお、水蒸気改質の場合のバーナー燃焼用の酸素ガスは高純度である必要はないが、空気精製を行うことで、バーナーの燃料である酸素ガスOとパージガスPとを同時に得ることができる。
さらに、パージガスPとして、改質器1で炭化水素含有ガスAの改質により発生する二酸化炭素含有ガスCをパージガス供給ライン100によりパージガスPとして供給してもよい。これによってもPSA型吸着塔3の再生コストを低減できる。
[水素ガス製造方法]
次に、図1の水素ガス製造装置を用いて、当該水素ガス製造方法について説明する。
当該水素ガス製造方法は、水素ガス及び水素以外の不純物ガスを含む水素リッチガスからPSA型吸着塔による精製で高純度水素ガスを製造する。当該水素ガス製造方法は、炭化水素含有ガスAの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガス(水素リッチガスB)を生成する工程(改質工程)と、上記改質工程で得られた水素リッチガスBをPSA型吸着塔3で精製する工程(水素リッチガス精製工程)と、PSA型吸着塔3を再生する工程(PSA型吸着塔再生工程)とを主に備える。
<改質工程>
改質工程では、改質器1を用いて、炭化水素含有ガスAから水素リッチガスBを生成する。
なお、当該水素ガス製造方法は、水素製造コスト低減の観点から、改質工程に加え、改質工程で使用する高純度酸素ガスを空気の精製により得る工程をさらに有するとよい。
<水素リッチガス精製工程>
水素リッチガス精製工程では、PSA型吸着塔3を用いて、水素リッチガスBを精製し、高純度の水素ガスを得る。水素リッチガス精製工程では、PSA型吸着塔3に流通するガスを冷媒により冷却しながら水素ガスの精製を行うとよい。このように吸着時にPSA型吸着塔3内部に流通するガスを冷却することで、吸着剤による不純物の有効吸着量が増加し、吸着剤の必要量が低減され装置を小型化することができる。
なお、吸着塔では、水素リッチガスB中の不純物が吸着剤に吸着し、吸着剤の飽和吸着部分が増加する。そこで、不純物を製品ガスEに混入させないためには、吸着剤の未吸着部分が残存している状態で吸着操作を停止する必要がある。
<PSA型吸着塔再生工程>
PSA型吸着塔再生工程では、PSA型吸着塔3を上述した均圧ライン104、洗浄ライン105、オフガス排出ライン103及びパージガス供給ライン100と、パージガスPとを用いて再生し、オフガスFを排出する。
パージガスPは、PSA型吸着塔3が吸着しない水素以外のガスであり、当該水素ガス製造装置の実施形態で上述したものが使用され、水素リッチガスBの生成時に副生される窒素含有ガス又は炭化水素含有ガスAの改質により発生する二酸化炭素含有ガスCを用いることが好ましい。
吸着塔の再生では、吸着塔内のガスがオフガス排出ライン103より排出され、常圧までの減圧が行われる。このとき、吸着塔の製品ガス出口側に空隙部を設けておくことで、空隙部に存在する水素が吸着剤のパージに使用され、芳香族炭化水素等の不純物の脱着に寄与する。
常圧までの減圧後は真空ポンプP1によりオフガス排出ライン103を通じて吸着塔内のガスが吸引され、吸着塔が負圧に減圧される。その後、さらに真空ポンプP1を運転し、吸着塔内を負圧に維持しながら洗浄ライン105によりパージガスPを吸着塔に導入することで吸着剤のさらなる再生が行われる。真空ポンプP1で吸引することで、吸着剤の間隙部に存在するガス中の不純物の一部が除去され、分圧が低下することにより、吸着平衡が着脱側に移行するため、パージ操作により吸着剤を再生し易くなる。また、この減圧吸引操作において、吸着剤の間隙に存在する水素ガス及び空隙部に存在する水素が排気側に移動することでパージガスとして作用し、不純物の着脱の進行に寄与する。吸着剤の再生後は、均圧操作を行い、その後吸着塔に製品ガスEを導入することにより再加圧した後、再度吸着操作が行われる。
また、パージガスPでのパージ後に、製品ガスバッファタンク4又は他のPSA型吸着塔3から製品ガスEを供給して二次パージを行うとよい。これにより、再生後の精製(吸着)開始時に排出される水素ガスの純度を高めることができる。具体的には、パージ開始時に切替弁V100をパージガスPが供給される側としておき、パージ後半に切替弁V100を製品ガスEが供給される側に切替えるとよい。この切替はシーケンスで自動制御することができる。
パージの最終時点では、吸着剤は完全には再生されておらず、吸着した一部の不純物が残存した状態であるが、吸着終了時点と比較して、吸着剤の未飽和吸着部分が多くなり、再び吸着工程に移行しても十分な吸着容量を回復することになる。また、吸着、脱圧、減圧、及びパージの繰返しによる吸着剤の吸着容量の減少に対しては、吸着容量の減少に対応して吸着時間を短く設定することで、吸着時における製品ガスの純度を担保することができる。また、吸着時間を短く設定するのではなく、吸着塔に導入する水素リッチガスのガス量を低下させ、吸着塔におけるガスの線速度LVを低くする方法で製品ガスの純度を担保することも可能である。
なお、水素リッチガス精製工程とPSA型吸着塔再生工程とは、複数のPSA型吸着塔3a,3b,3c,3dでその周期をずらしながら交互に行われる。
<利点>
当該水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置によれば、水素以外のガスをパージガスとして用いることで、水素ガスの消費を低減しつつPSA型吸着塔の再生を行うことができる。その結果、当該水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置は、水素回収量を向上させることができる。
[その他の実施形態]
本発明の水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、水素リッチガスとして、炭化水素含有ガスの改質ガスを用いたが、触媒存在下の加熱による有機ハイドライドの脱水素反応で得られる水素リッチガスを用いてもよい。
上記有機ハイドライドとしては、メチルシクロヘキサン(MCH)、シクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリン等の水素化芳香族化合物が挙げられる。例えば有機ハイドライドとしてMCHを用いた場合、脱水素反応により、芳香族化合物であるトルエンに変換される。
上記脱水素反応は、触媒存在下の加熱により有機ハイドライドの脱水素反応を行う脱水素反応器を用いて行う。この反応器は、有機ハイドライドの脱水素反応を促進する脱水素反応触媒を有し、有機ハイドライドを加熱すると共に脱水素反応触媒と接触させることによって、有機ハイドライドから水素を分離する酸化反応を生じさせる。これにより、芳香族化合物及び水素の混合ガスが発生する。
反応器で用いられる上記脱水素反応触媒としては、例えば硫黄、セレン、微粒子白金を担持したアルミナ等が知られている。
有機ハイドライドの脱水素反応を用いる場合、反応器から排出される芳香族化合物及び水素の混合ガスを冷却により気液分離するとよい。具体的には、内部に流通するガスを冷却する冷却機構を有する分離器を用いてガスを冷却することで、沸点が比較的高いMCHなどの芳香族化合物等が混合ガスから分離し易くなり、分離後のガス中のトルエン等を含む芳香族化合物濃度が低減される。なお、液体として分離された芳香族化合物は、分離器2からドレンとして排出される。
また、上記実施形態における水素リッチガスバッファタンクは必須の構成要素ではなく、省略が可能である。さらに、真空ポンプも任意の構成要素である。
以上説明したように、当該水素ガス製造方法及び水素ガス製造装置は、水素リッチガスをPSA型吸着塔で精製する水素ガス製造において水素回収量を向上できるので、高純度の水素を供給する用途に好適に用いられる。
1 改質器
2 水素リッチガスバッファタンク
3、3a、3b、3c、3d PSA型吸着塔
4 製品ガスバッファタンク
100 パージガス供給ライン
101 水素リッチガス供給ライン
102 製品ガス排出ライン
103 オフガス排出ライン
104 均圧ライン
105 洗浄ライン
A 炭化水素含有ガス
B 水素リッチガス
C 二酸化炭素含有ガス
E 製品ガス
F オフガス
H 水蒸気
O 酸素ガス
P パージガス
V1a、V1b、V1c、V1d 水素リッチガス供給弁
V2a、V2b、V2c、V2d 製品ガス排出弁
V3a、V3b、V3c、V3d オフガス排出弁
V4a、V4b、V4c、V4d 均圧弁
V5a、V5b、V5c、V5d 洗浄弁
V100 切替弁
P1 真空ポンプ

Claims (4)

  1. 水素ガス及び水素以外の不純物ガスを含む水素リッチガスからPSA型吸着塔による精製で高純度水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
    上記PSA型吸着塔を再生する工程を備え、
    上記再生工程で、上記PSA型吸着塔が吸着しない水素以外のパージガスを用いてパージし、
    上記パージ後に水素ガスでのパージを行うことを特徴とする水素ガス製造方法。
  2. 炭化水素含有ガスの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガスを生成する工程と、
    上記改質工程で使用する高純度酸素ガスを空気の精製により得る工程と
    をさらに備え、
    上記空気精製工程で排出される窒素含有ガスを上記パージガスとして用いる請求項1に記載の水素ガス製造方法。
  3. 炭化水素含有ガスの水蒸気改質、部分酸化改質又はオートサーマル改質により水素リッチな改質ガスを生成する工程をさらに備え、
    上記改質工程で排出される二酸化炭素含有ガスを上記パージガスとして用いる請求項1に記載の水素ガス製造方法。
  4. 水素ガス及び水素以外の不純物ガスを含む水素リッチガスからPSA型吸着塔による精製で高純度水素ガスを製造する水素ガス製造装置であって、
    上記PSA型吸着塔に再生用のパージガスを供給するラインを備え、
    上記パージガスが上記PSA型吸着塔が吸着しない水素以外のガスと、上記高純度水素ガスとであり、
    上記再生用のパージガスを供給するラインに、上記水素以外のガスと上記高純度水素ガスとを切り替える切替弁を有することを特徴とする水素ガス製造装置。
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