JP3789720B2 - 高純度水素駆動燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度水素を連続して固体高分子型燃料電池に供給して発電できるだけでなく、固体高分子型燃料電池の電気出力を変えながら長時間運転できるようにしてなる高純度水素駆動燃料電池システムに関する。なお、本明細書中システムとは装置を意味するものとして用いている。
【0002】
【従来の技術】
水素は各種用途に供される基礎原料であり、燃料電池の燃料としても利用される。水素の製造法には各種あるが、例えば水蒸気改質法では改質器を用いて炭化水素と水蒸気を反応させることにより水素を主成分とする改質ガスを生成させる。改質器の起動には時間を要するばかりでなく、得られる改質ガスには主成分である水素のほか、CO(一酸化炭素)、CO2 等の副生成分や余剰H2O が含まれているため、改質ガスを燃料電池にそのまま使用したのでは電池性能を阻害してしまう。固体高分子型燃料電池(PEFC)でのCOの許容濃度は100ppm程度であり、これらを越えると電池性能が著しく劣化する。このためそれら副生成分は燃料電池へ導入する前に除去される。
【0003】
COについては、CO変成反応、CO選択酸化反応を用いて除去する方法が用いられる。こうして得られた水素リッチガスの水素濃度は40〜70%程度であるが、従来、これを燃料電池に供給して発電を行っていた。ところが、水素リッチガスは純水素でないため、燃料電池の水素利用率に上限があり、また電力あるいは熱負荷に瞬時に対応させることがきわめて困難であった。
【0004】
一方、水素の精製、貯蔵、放出に水素吸蔵合金を用い、放出水素をPEFCに供給することも考えられている。これは粗精製水素を水素吸蔵合金充填容器に通して水素を分離精製且つ吸蔵し、そして放出してPEFCの燃料として利用する。その態様としては、1基の水素吸蔵合金充填容器を用いる場合のほか、2基の水素吸蔵合金充填容器に交互に通して水素を分離精製且つ吸蔵させ、吸蔵水素を交互に放出させる場合がある。
【0005】
図1は2基の水素吸蔵合金充填容器の例を示す図である。S、Tは切換弁である。粗精製水素は一方の水素吸蔵合金充填容器に通されて精製・吸蔵される。他方の水素吸蔵合金充填容器からは前段階で精製・吸蔵された高純度水素が放出され、PEFCの燃料極に供給される。次いで切換弁S、Tを切り換えることにより、粗精製水素は一方の水素吸蔵合金充填容器で精製・吸蔵され、他方の水素吸蔵合金充填容器からは高純度水素が放出され、PFFCに供給される。
【0006】
しかし、上記のように2基の水素吸蔵合金充填容器を用いる場合には、瞬時の電力需要に対応できず、また起動停止時の燃料ロスや劣化を来してしまう。すなわち切換弁S、Tを瞬時に切り換えたにしても、水素の放出には加熱が必要であるため、その時点から水素を定常状態で供給できるまで時間がかかり、遅れが出て、その間、所要電力を発電できないばかりか、水素燃料をロスしてしまうという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決し、水素吸蔵合金充填容器を巧みに組み合わせて、水素の吸蔵、放出だけでなく、水素の吸蔵待機、放出待機の役目をもたせることで、高純度水素を連続して固体高分子型燃料電池に供給して発電できるだけでなく、固体高分子型燃料電池の発電出力を変えながら長時間運転できるようにしてなる固体高分子型燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は(1)水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システムを提供する。
【0009】
本発明は(2)水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷却媒体により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は加熱媒体により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システムを提供する。
【0010】
本発明は(3)水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は固体高分子型燃料電池の電池冷却水により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システムを提供する。
【0011】
本発明は(4)水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は、固体高分子型燃料電池から貯湯槽を経た電池冷却水により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システムを提供する。
【0012】
本発明は(5)水素源として炭化水素ガスを改質器で改質し、精製した水素を用い、その水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は改質器から排出される燃焼排ガスにより加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システムを提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置し、これら各水素吸蔵合金充填容器を導管を介して固体高分子型燃料電池の燃料極に連結する。そして、これら各水素吸蔵合金充填容器に水素の吸蔵(水素吸蔵)、水素の吸蔵待機(水素吸蔵待機)、水素の放出(水素放出)、水素の放出待機(水素放出待機)の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるようにしてなる。
【0014】
図2はその態様例を示す図である。図2中A〜Dとして示すように4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置し、これらの入口側に水素源からの水素供給導管を連結し、これらの出口側に導管を介して固体高分子型燃料電池(PEFC)を連結する。本態様例では、水素吸蔵、水素吸蔵待機の段階の水素吸蔵合金充填容器を水(冷水)により冷却し、水素放出、水素放出待機の段階の水素吸蔵合金充填容器を電池冷却水により加熱する。電池冷却水は、貯湯槽を経由して、すなわち貯湯槽に蓄えた後に供給してもよく、貯湯槽を経由せずに供給してもよいが、図2には貯湯槽を経由する態様を示している。
【0015】
水素吸蔵合金には各種のものがあるが、本発明における水素吸蔵合金としては、冷却により水素を吸蔵し、加熱により吸蔵水素を放出する合金であれば何れも使用される。その幾つかの例としてはTiFe0.9Mn0.1、Mg2Ni、CaNiS、LaNi5、LaNi4.7Al0.3、MmNi4.5Al0.5(Mm=ミッシュメタル)、MmNi4.15Fe0.85(Mm=ミッシュメタル)等を挙げることができる。
【0016】
水素は、水の電解法、石炭やコークスのガス化法、液体燃料のガス化法、ガス体燃料の変成法、コークス炉ガスの液化分離法、メタノールやアンモニアの分解法など各種の製造方法で得られるが、本発明の水素源としては何れの製造法による水素も使用できる。水素の純度は好ましくは99.999%程度以上である。水素の純度が低いときはCO変成器その他適宜の精製手段により純度を上げて水素吸蔵の役割をしている水素吸蔵合金充填容器に供給する。
【0017】
本発明では、各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせる。このため、各水素吸蔵合金充填容器は間接的に冷却し、また間接的に加熱できるように構成される。図3はその態様例を示す図であり、1は水素吸蔵合金、2は冷却用熱媒体及び加熱媒体の導入管、3はその導出管であり、4は水素の導入管、5は水素の導出管である。冷却用熱媒体及び加熱媒体としては適宜な熱媒体を用いることができるが、冷却用熱媒としては好ましくは水を用いることができる。加熱媒体としては、好ましくは電池冷却水を用いることができ、水素源として改質器を用いる場合には、改質器からの燃焼排ガスも利用することができる。
【0018】
水素吸蔵時には、導入管2から冷却用熱媒体(例えば冷水)が導入され、水素の吸蔵時の発生熱を除去し、水素の吸蔵に最適な温度に保ちながら導出管3から排出される。水素吸蔵待機時には、導入管2から冷却用熱媒体(例えば冷水)が導入され、次の段階である水素吸蔵時に備えて冷却し導出管3から排出される。ここで、吸蔵待機(=水素吸蔵待機)とは、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持するという温度制御を伴うことを意味し、この意味は、請求項1〜11にいう吸蔵待機、水素吸蔵待機についても同じである。一方、水素放出時には、導入管2から加熱用熱媒体(例えば電池冷却水)が導入され、水素の放出に必要な熱を供給し、水素の放出に最適な温度に保ちながら導出管3から排出される。水素放出待機時には、導入管2から加熱用熱媒体(例えば電池冷却水)が導入され、次の段階である水素放出時に備えて加熱し導出管3から排出される。ここで、放出待機(=水素放出待機)とは、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持するという温度制御を伴うことを意味し、この意味は、請求項1〜11にいう放出待機、水素放出待機についても同じである。
【0019】
本発明における水素吸蔵合金充填容器としては、図3のような水素吸蔵合金を管内に充填する管内充填式のほか、各種態様で構成することができる。図4はその幾つかの例であるが、これらに限定されない。図4(a)は套内充填式、図4(b)は内部熱交換器付、図4(c)は内部2回通過熱交換器付であり、各部分について図3と共通する部分には同一の符号を用いている。これらは竪型として示しているが、図3の場合のように横型としてもよいことは勿論である。
【0020】
本発明では、上記のような各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、順次、これら役割を切り換えるが、図5はこれらの基本的態様を示す図である。図5中A〜Dは各々水素吸蔵合金を充填した容器であり、図5(a)〜(d)中矢印(→)を記載している管が対応する流体が流れている状態である。図5(a)はAとBを冷却し、同時にCとDを加熱する段階であり、これは図2に示す各水素吸蔵合金充填容器の状態と同じである。Aを冷却して水素を吸蔵しながらBを冷却しているので、Aでの水素吸蔵が終わった時点で直ちにBでの水素吸蔵が開始される。また、Cを加熱して水素を放出しながらDを加熱しているので、Cでの水素放出が終わった時点で直ちにDでの水素放出が開始される。なお、例えば全体で8個の該容器を配置し、各2個をペアとして各段階で同じ役割をもたせるようにすることもできる。
【0021】
図5(b)は図5(a)に続く段階であり、Bでの水素吸蔵が開始されたのと同時に、Dでの水素放出が開始された段階である。この切り替えは弁操作により行われる。図6はそれら弁操作用の弁の配置態様を示している。XA1〜XD1は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの水素導入管に配置された弁、XA2〜XD2は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの水素導出管に配置された弁、YA1〜YD1は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの冷却媒体(冷水等)導入管に配置された弁、YA2〜YD2は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの冷却媒体導出管に配置された弁、ZA1〜ZD1は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの加熱媒体(電池冷却水等)導入管に配置された弁、ZA2〜ZD2は各々水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの加熱媒体導出管に配置された弁である。
【0022】
図6に示す各弁の開閉状態は図5(a)の開閉状態を示している。すなわちXA1〜XD1ではXA1が開で、それ以外は閉(図6における各弁○印中に×を入れた弁、以下閉について同じ)、XA2〜XD2ではXC2が開で、それ以外は閉、YA1〜YD1ではYA1とYB1が開で、それ以外は閉、YA2〜YD2ではYA2とYB2が開で、それ以外は閉、ZA1〜ZD1ではZC1とZD1が開で、それ以外は閉、ZA2〜ZD2ではZC2とZD2が開で、それ以外は閉の状態である。この状態で、Aを冷却して水素を吸蔵しながらBを冷却し、またCを加熱して水素を放出しながらDを加熱している。
【0023】
図7に示す各弁の開閉状態は図5(b)の開閉状態を示している。図5(b)の段階ではBとCを冷却し、DとAを加熱する。Bで水素を吸蔵しながらCを冷却しているので、Bでの水素吸蔵が終わった時点で直ちにCでの水素吸蔵が開始される。またDで水素を放出しながらAを加熱しているので、Dでの水素放出が終わった時点で直ちにAでの水素放出が開始される。この段階での各弁の開閉状態については、XA1〜XD1ではXB1が開で、それ以外は閉、XA2〜XD2ではXD2が開で、それ以外は閉、YA1〜YD1ではYB1とYC1が開で、それ以外は閉、YA2〜YD2ではYB2とYC2が開で、それ以外は閉、ZA1〜ZD1でZD1とZA1が開で、それ以外は閉、ZA2〜ZD2でZD2とZA2が開で、それ以外は閉の状態である。
【0024】
これら弁の開閉は、図5(b)の段階に続く図5(c)の段階、さらに図5(c)の段階に続く図5(d)の段階へと、上記図5(a)の段階から図5(b)の段階への切り換えに準じて、すなわち上記図6の段階から図7の段階への切り換えに準じて、順次切り換えられる。そして図5(a)の段階から図5(d)の段階への4段階からなる1サイクルを経た後、図5(a)の段階へ切り換えられる。こうして弁操作のみで水素を切れ目なく連続してPEFCへ供給することができる。
【0025】
図5(c)は図5(b)に続く段階であり、Cでの水素吸蔵が開始されたのと同時に、Aでの水素放出が開始された段階である。CとDを冷却し、AとBを加熱する。Cで水素を吸蔵しながらDを冷却しているので、Cでの水素吸蔵が終わった時点で直ちにDでの水素吸蔵が開始される。またAで水素を放出しながらBを加熱しているので、Aでの水素放出が終わった時点で直ちにBでの水素放出が開始される。
【0026】
図5(d)は図5(c)に続く段階であり、Dでの水素吸蔵が開始されたのと同時に、Bでの水素放出が開始された段階である。DとAを冷却し、BとCを加熱する。Dで水素を吸蔵しながらAを冷却しているので、Dでの水素吸蔵が終わった時点で直ちにAでの水素吸蔵が開始される。またBで水素を放出しながらCを加熱しているので、Bでの水素放出が終わった時点で直ちにCでの水素放出が開始される。そして図5(d)の段階に続き図5(a)の段階となる。
【0027】
こうして、水素源からの水素供給導管に少なくとも4基の水素吸蔵合金充填容器を並列に配置し、これらの各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素吸蔵待機、水素放出、水素放出待機の4つの役割をもたせ、これらの役割を順次切り換えるようにすることにより、水素を、切れ目なく、連続してPEFCに供給することができるだけでなく、PEFCについては、その出力を変えながら連続運転ができ、その稼働率を上げることができる。また、本発明では、水素吸蔵合金充填容器がバッファとなるため、PEFCの負荷変動に左右されることなく水素源から水素を供給できるので、この点でも非常に有利である。特に、水素源として改質器を使用する場合、水素吸蔵合金充填容器がバッファとなるため、PEFCの負荷が変動しても改質器は一定で運転を行うことができる。
【0028】
例えば、前記のように2基の水素吸蔵合金充填容器で、交互に水素吸蔵用と水素に切り換える場合(図1参照)では、弁切り換えの時点から水素を定常状態で供給できるまで遅れが出て、時間がかかり、その間所要電力を発電できなかったが、本発明によれば、水素吸蔵用と水素放出用に加えて、水素吸蔵待機と水素放出待機の各水素吸蔵合金充填容器を併置し、これらを順次切り換えることで、水素を切れ目なく、連続してPEFCに供給できる。また、PEFCについては、その出力を変えながら運転できることから、本燃料電池システムを例えば電気自動車用に用いる場合にも非常に有効である。
【0029】
PEFCでは、作動時に温度80〜100℃程度に維持する必要があるため、その発電に伴い生じる熱を除去しなければならない。このため電池冷却水や冷空気により冷却される。本発明においては、冷水(例えば水道水等の常温水でよい)を水素吸蔵合金充填容器での水素吸蔵及び吸蔵待機中の冷却に利用した後、PEFCにおける電池冷却水として利用することができる。PEFCからの電池冷却水は自らは温められて電池作動温度(80〜100℃程度)に対応する温度となっているので、これを水素吸蔵合金充填容器からの水素放出及び水素放出待機時の加熱用に利用する。これにより燃料電池システム内のエネルギーを有効に利用し、その損失を可及的に少なくすることができる。
【0030】
前記水素の製造方法のうち、ガス体燃料の変成法では、炭化水素ガスを水蒸気による改質器や部分燃焼による改質器で改質し、水素を主成分とする改質ガスが得られるが、炭化水素ガスとして天然ガス、都市ガス、あるいはLPガス等を用いることができるので本発明において非常に有利である。改質ガスはCO変成反応、CO選択酸化反応等を利用して精製する。改質器のうち特にメンブレンリフォーマは、炭化水素ガスの改質とともに、精製した水素が得られるので好ましく用いられる。
【0031】
その際、改質器から排出される燃焼排ガスの熱を水素放出及び水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の加熱に用いることができる。この場合、改質器から排出される燃焼排ガスは、それ自体を熱媒体として水素放出及び水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の加熱に用いてもよく、燃焼排ガスを間接熱交換により貯湯槽の電池冷却水の加熱に利用し、該貯湯槽の温水を水素放出及び水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の加熱に用いるようにしてもよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明が実施例に限定されないことは勿論である。
【0033】
本実施例では図8に示すような装置を用いた。都市ガス(脱硫済)をメンブレンリフォーマにより改質し且つ精製した水素を4基の水素吸蔵合金充填容器のうちの1つに通して水素を吸蔵しながら、他の水素吸蔵合金充填容器の1つから水素を放出させた。この放出水素をPEFCの燃料極へ供給した。弁の配置は図6(図7も同じ)に示すとおりとし、弁操作は、図5(a)から図5(b)、図5(b)から図5(c)、図5(c)から図5(d)の各段階を1時間毎に切り換え、これら図5(a)から図5(d)までのサイクルを繰り返して実施した。
【0034】
本実施例で用いたメンブレンリフォーマは、概略、図9に示すよう構成されたもので、改質器(水蒸気改質器)による改質ガスの生成と改質ガスの水素透過膜による精製とを1つの装置で行うよう一体化した装置である。原料ガスである都市ガス等の炭化水素ガスはバーナでの発生熱が原料ガスの改質用に利用されて触媒層で改質され、水素を含む改質ガスとなる。改質ガス中の水素はPd膜やPd合金膜などの水素透過膜を選択的に透過して精製水素として取り出される。
【0035】
PEFCの燃料極へ上記水素吸蔵合金充填容器からの放出水素を供給し、PEFCの空気極へは、図示は省略しているが、空気を供給した。各水素吸蔵合金充填容器の冷却媒体として冷水(水道水:25℃)を用いた。各水素吸蔵合金充填容器から出る水は35℃程度になっているが、図示のとおりこれを電池冷却水として利用した。PEFCからの電池冷却水は貯湯槽を経て各水素吸蔵合金充填容器の加熱用に用いた。本システムの連続運転により、冷却媒体として用いた分だけPEFC作動温度に対応する温度の電池冷却水(温水)が出るが、これは例えば貯湯槽から取り出して利用することができる。
【0036】
図8中に、本実施例における標準的な、各箇所の温度、メンブレンリフォーマにおける都市ガス、空気、水(水蒸気発生用)、オフガス、燃焼排ガス等の流量及びこれらに加えポンプ駆動を含めた各々におけるエネルギー量、水素吸蔵合金充填容器へのTiーZr系水素吸蔵合金の充填量、水素吸蔵合金充填容器への水素、冷却水(水)、電池冷却水(貯湯槽から)等の各量及びこれらに加えポンプ駆動を含めた各々におけるエネルギー量、PEFCへの水素、電池冷却水等の量及びエネルギー量の一例を示している。
【0037】
本実施例ではポンプを5基用いているが、その駆動エネルギーの和(補器電力)は0.14kW(=30W+50W+20W+20W+20W)である。こうして、水素製造効率=77.0%(LHV)〔=(0.75Nm3/h×2573kcal/Nm3)÷(0.24Nm3/h×9940kcal/Nm3+0.14kW×860kcal/kW)×100〕、発電効率(都市ガスエネルギーに対する発電効率)=41.2%(LHV)〔=(1.2kW/h×860kcal/kW)÷(0.24Nm3/h×9940kcal/Nm3+0.14kW×860kcal/kW)×100〕、電池効率(水素エネルギーに対する発電効率)=53.5%(LHV)〔=(1.2kW×860kcal/kW)÷(0.75Nm3/h×2573kcal/Nm3)×100〕が得られる。
【0038】
この点、例えば、従来における発電効率(都市ガスエネルギーに対する発電効率)は30%程度であるが、本実施例における発電効率は41.2%であり、有意格段に改善されていることが明らかである。なお、本例においては、メンブレンリフォーマから燃焼排ガス〔1.75Nm3/h(80kcal/h)〕が生成されるが、この排ガスを貯湯槽中の電池冷却水との間接加熱により電池冷却水を加熱する熱源として利用することもできる。また、該排ガスそれ自体を熱媒体として、水素放出及び水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の加熱に用いることもできる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、水素吸蔵合金充填容器に水素の吸蔵、放出だけでなく、水素の吸蔵待機、放出待機の役目をもたせることにより、高純度水素を連続して固体高分子型燃料電池に供給して発電できるだけでなく、固体高分子型燃料電池の電気出力を変えながら長時間運転することができる。また、水素源として、例えば改質器を用いる場合において、本発明では水素吸蔵合金充填容器がバッファとなるため、PEFCの負荷が変動しても改質器は一定で運転を行うことができるので、この点でも非常に有利である。さらに、燃料電池の電池冷却水を燃料電池システム中に有機的に組み込むことにより、電池冷却水の熱を効率よく利用することができるなど各種効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来考えられている水素吸蔵合金充填容器による水素の精製、吸蔵及び放出の一例を示す図。
【図2】本発明の態様例を示す図。
【図3】本発明で用い得る水素吸蔵合金充填容器の態様例を示す図。
【図4】本発明で用い得る水素吸蔵合金充填容器の他の態様例を示す図。
【図5】本発明の各水素吸蔵合金充填容器の基本的態様を説明する図。
【図6】本発明の各水素吸蔵合金充填容器の弁操作用の弁の配置態様を示す図。
【図7】本発明の各水素吸蔵合金充填容器の弁操作用の弁の配置態様を示す図。
【図8】実施例で用いた装置を示す図。
【図9】実施例で用いたメンブレンリフォーマの概略を示す図。
【符号の説明】
S、T 切換弁
1 水素吸蔵合金
2 冷却用熱媒体及び加熱媒体の導入管
3 冷却用熱媒体及び加熱媒体の導出管
4 水素導入管
5 水素導出管
A〜D 各水素吸蔵合金充填容器
XA1〜XD1 水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの水素導入管に配置された弁
XA2〜XD2 水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの水素導出管に配置された弁
YA1〜YD1 水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの冷却媒体導入管に配置された弁
YA2〜YD2 水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの冷却媒体導出管に配置された弁
ZA1〜ZD1 水素吸蔵合金充填容器A〜Dへの加熱媒体導入管に配置された弁ZA2〜ZD2 水素吸蔵合金充填容器A〜Dからの加熱媒体導出管に配置された弁
MH 水素吸蔵合金
Claims (11)
- 水素源からの水素供給導管に水素吸蔵合金充填容器A、B、C及びDを並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持する水素吸蔵待機、水素放出、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持する水素放出待機の4つの役割をもたせ、下記(a)〜(d)のとおりに、順次、これら役割を切り換えるようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
(a)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出待機。
(b)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出。
(c)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵待機。
(d)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵。 - 水素源からの水素供給導管に水素吸蔵合金充填容器A、B、C及びDを並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持する水素吸蔵待機、水素放出、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持する水素放出待機の4つの役割をもたせ、下記(a)〜(d)のとおりに、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷却媒体により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は加熱媒体により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
(a)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出待機。
(b)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出。
(c)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵待機。
(d)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出、水素
吸蔵合金充填容器Cでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵。 - 水素源からの水素供給導管に水素吸蔵合金充填容器A、B、C及びDを並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持する水素吸蔵待機、水素放出、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持する水素放出待機の4つの役割をもたせ、下記(a)〜(d)のとおりに、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は固体高分子型燃料電池の電池冷却水により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
(a)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出待機。
(b)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出。
(c)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵待機。
(d)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵。 - 水素源からの水素供給導管に水素吸蔵合金充填容器A、B、C及びDを並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持する水素吸蔵待機、水素放出、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持する水素放出待機の4つの役割をもたせ、下記(a)〜(d)のとおりに、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は、固体高分子型燃料電池から貯湯槽を経た電池冷却水により加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
(a)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出待機。
(b)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出。
(c)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵待機。
(d)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵。 - 上記水素源が、炭化水素ガスを改質器で改質し、精製した水素であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の固体高分子型燃料電池システム。
- 上記水素源が、炭化水素ガスをメンブレンリフォーマで改質し、精製した水素であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の固体高分子型燃料電池システム。
- 上記炭化水素ガスが天然ガス、都市ガス又はLPガスである請求項5又は6に記載の固体高分子型燃料電池システム。
- 請求項3又は4の固体高分子型燃料電池システムにおいて、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の冷却に用いた水を電池冷却水として用いるようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
- 請求項4の固体高分子型燃料電池システムにおいて、改質器から排出される燃焼排ガスを貯湯槽の電池冷却水の加熱に利用し、且つ、貯湯槽の温水を水素放出及び水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器の加熱に用いるようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
- 水素源として炭化水素ガスを改質器で改質し、精製した水素を用い、その水素源からの水素供給導管に水素吸蔵合金充填容器A、B、C及びDを並列に配置するとともに、これら各水素吸蔵合金充填容器に導管を介して固体高分子型燃料電池を連結してなる固体高分子型燃料電池システムであって、それら各水素吸蔵合金充填容器に水素吸蔵、水素を吸蔵することなく水素吸蔵に最適な温度に保持する水素吸蔵待機、水素放出、水素を放出することなく水素放出に最適な温度に保持する水素放出待機の4つの役割をもたせ、下記(a)〜(d)のとおりに、順次、これら役割を切り換えるようにし、その際、水素吸蔵及び水素吸蔵待機の役割をしている水素吸蔵合金充填容器は冷水により冷却し、且つ、水素放出、水素放出待機の役目をしている水素吸蔵合金充填容器は改質器から排出される燃焼排ガスにより加熱するようにしてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
(a)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出待機。
(b)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは放出。
(c)水素吸蔵合金充填容器Aでは放出、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Cでは吸蔵、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵待機。
(d)水素吸蔵合金充填容器Aでは吸蔵待機、水素吸蔵合金充填容器Bでは放出、水素吸蔵合金充填容器Cでは放出待機、水素吸蔵合金充填容器Dでは吸蔵。 - 上記改質器がメンブレンリフォーマであることを特徴とする請求項10に記載の固体高分子型燃料電池システム。
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