以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1は本実施形態におけるインクジェット記録装置を示す概略構成図である。図1に示すように、インクジェット記録装置100は、記録媒体である用紙Pを収容する給紙カセット101と、用紙Pの搬送経路となる用紙搬送路104と、用紙Pを排出トレイ111へ搬送する搬送ベルト106とを備える。
給紙カセット101は、装置本体の下部に設けられており、画像形成が行われる用紙Pを収容する。給紙カセット101には、給紙を行うための給紙ローラ102が配設されている。この給紙ローラ102により、給紙カセット101内の用紙Pは用紙搬送路104へと順次給紙される。
用紙搬送路104は、給紙カセット101から給紙された用紙Pを搬送ベルト106に導くガイド板から構成されている。この用紙搬送路104には、給紙カセット101側から順に、第1搬送ローラ対103aおよび第2搬送ローラ対103bが配設されている。また、用紙搬送路104の搬送ベルト106側には、2次給紙を行うレジストローラ対105が配設されている。すなわち、給紙カセット101から給紙された用紙Pは、搬送ローラ対103(103a、103b)によりレジストローラ対105へ搬送され、このレジストローラ105により、所定のタイミングで搬送ベルト106へ送り込まれる。
搬送ベルト106は、レジストローラ対105により2次給紙された用紙Pを排出トレイ111に向けて搬送する。この搬送ベルト106は、無端状のベルトからなり、駆動ローラ121、従動ローラ122およびテンションローラ123に張設されている。ここで、駆動ローラ121は用紙搬送方向の下流側に配設されている。従動ローラ122は用紙搬送方向の上流側に配設されている。用紙Pは、従動ローラ122と駆動ローラ121との間の搬送ベルト106により搬送される。また、テンションローラ123は、駆動ローラ121と従動ローラ122との間で、駆動ローラ121および従動ローラ122よりも下方に配設されている。テンションローラ123の上下方向の配設位置を変更することにより搬送ベルト106の張力が調整される。なお、本実施形態では、駆動ローラ121のみがモータ等の駆動手段によって駆動されており、従動ローラ122およびテンションローラ123は駆動ローラ121の回転による搬送ベルト106の移動に伴って回転する。
また、インクジェット記録装置100は、インクを吐出する記録ヘッド群107を備える。記録ヘッド群107は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを吐出する記録ヘッドであるラインヘッド107Y、107M、107C、107Kから構成されている。
記録ヘッド群107の下面に形成されたノズル面107aには、ラインヘッド107Y、107M、107C、107Kごとに、多数のノズルが用紙幅方向に用紙幅分だけ配列されている。各ノズルはラインヘッド107Y、107M、107C、107K内に、各ノズルに対応して形成された加圧室(図示せず)にそれぞれ連通し、各加圧室はさらに各ラインヘッド107Y、107M、107C、107K内に設けられたインク室(図示せず)に連通している。各加圧室には、圧電素子等の駆動手段が設けられており、当該駆動手段が発生する圧力を加圧室内のインクに伝えることで、ノズルからインクが吐出される。インク室は、後述のインク供給系と接続しており、当該インク供給系からインクが供給されるようになっている。各ラインヘッド107Y、107M、107C、107Kは、搬送ベルト106により搬送される用紙P上に、図示しないネットワークアダプタ等を介して、ネットワークを通じて他の機器から受信した画像データ等を印刷する。なお、各ラインヘッド107Y、107M、107C、107Kは、CMYK形式の画像データに変換された各色の画像データに応じて、上記圧電素子を駆動する。
記録ヘッド群107の下流側には、記録ヘッド群107から用紙Pに吐出されたインクを乾燥させるための乾燥装置108が配置されている。乾燥装置108を通過した用紙Pは、搬送ベルト106の下流側に配置された排出ローラ対109および装置側壁に穿設された排出口110を通して排出トレイ111に排出される。
図2は、インクジェット記録装置が備えるインク供給系を示す概略構成図である。当該インク供給系は、ラインヘッド107Y、107M、107C、107Kにそれぞれ設けられ、各色のインクをラインヘッド107Y、107M、107C、107Kへ供給する。図2では、ラインヘッド107Yに接続されたインク供給系について説明する。
図2に示すように、インク供給系200は、メインインクタンク201(以下、メインタンク201という。)、サブインクタンク202(以下、サブタンク202という。)、加圧ポンプ203を備える。
メインタンク201とサブタンク202とは供給路204により接続されている。また、サブタンク202とラインヘッド107Yとは供給路205により接続されている。なお、メインタンク201はサブタンク202に供給されるインクを貯留し、サブタンク202はラインヘッド107Yに供給されるインクを貯留する。供給路204には、メインタンク201とサブタンク202とが連通する開状態と、メインタンク201とサブタンク202とが分離する閉状態とを切り替える電磁弁211が介在されている。また、供給路205には、サブタンク202とラインヘッド107Yとが連通する開状態と、サブタンク202とラインヘッド107Yとが分離する閉状態とを切り替える電磁弁212が介在されている。
サブタンク202は、ラインヘッド107Yよりもわずかに低い位置に配置されている。サブタンク202には、サブタンク202内のインク量を検知するインク量検知センサ210が設けられている。本実施形態では、インク量検知センサ210の検知結果に応じて、メインタンク201からサブタンク202へインクを補給することで、サブタンク202とラインヘッド107Yとの水頭差を一定に保つように構成されている。この水頭差により、ラインヘッド107Yのインク室が微負圧状態に維持される。
メインタンク201は、サブタンク202より高い位置に設けられ、水頭差による加圧でメインタンク201からサブタンク202にインクが補給される。メインタンク201からサブタンク202にインクを補給する際には、メインタンク201とラインヘッド107Yの水頭差により、ラインヘッド107Yからインクが漏れ出すことがないように、電磁弁212を閉状態とした後、電磁弁211が開放される。なお、ラインヘッド107Yはインク室を備えているため、電磁弁212が閉状態になっても直ちに画像形成が不能になることはなく、画像形成はインク補給と並行して実施することができる。
加圧ポンプ203は、ラインヘッド107Yのインク吐出状態を良好に維持するために、ラインヘッド107Y内のインクをノズルから排出させる動作(以下、パージ動作という。)に使用される。加圧ポンプ203は接続路206によりサブタンク202と接続されている。接続路206には、加圧ポンプ203とサブタンク202とが連通する開状態と、加圧ポンプ203とサブタンク202とが分離する閉状態とを切り替える電磁弁213が介在されている。パージ動作は、電磁弁211が閉状態、かつ電磁弁212、213が開状態で実施される。なお、電磁弁213はパージ動作中を除き閉状態になっている。
図3は、本実施形態におけるサブタンク202の構成を示す模式図である。本実施形態では、サブタンク202は、記録装置本体に対して着脱可能に設けられている。
図3に示すように、本実施形態では、供給路204、205は、サブタンク202の上面を貫通し、各先端が、サブタンク202内で、上面が所定範囲に維持されるインクに浸漬する位置に配置されている。ここでは、サブタンク202の着脱を可能とするため、サブタンク202上面の供給路204、205の貫通部分をゴム等の弾性部材により構成し、当該弾性部材に、供給路204、205を挿抜する構成を採用している。また、サブタンク202の上面には、サブタンク202内のインク量の増減に応じて、大気を導入出する通気孔303も設けられている。なお、通気孔303には開閉弁が設けられており、上記パージ動作中は、当該開閉弁が閉じられる。
また、インク量検知センサ210は、サブタンク202内でインク上面が維持される所定高さに配置された一対の電極ピン301、302と、電源304により構成されている。電極ピン301、302は、サブタンク202の側面を貫通して設けられている。サブタンク202における電極ピン301、302が貫通部分は、インク漏れが発生しないように適切にシールされている。
電極ピン301、302に接続された電源304は、電極ピン301と電源ピン302との間に電圧を印加する。例えば、電源304が定電流源である場合、指定電流が流れる状態に印加電圧が制御され、予め設定された閾値電圧以下で指定電流が流れるか否かでインクの有無を判別できる。すなわち、サブタンク202内のインクの上面が電極ピン301、302よりも上方に位置し、サブタンク202内で両電極ピン301、302がインクと接触している場合(以下、インク検知状態という。)、インクを通じて電流が流れるため電源304の印加電圧は閾値電圧以下になる。また、サブタンク202内のインクの上面が電極ピン301、302よりも下方に位置し、サブタンク202内で両電極ピン301、302がインクと接触していない場合(以下、インク非検知状態という。)、電極ピン301、302間に電流は流れないため、電源304の印加電圧は閾値電圧より大きくなる。
また、電源304が定電圧源である場合、電圧印加時に予め設定された閾値電流以上の電流が流れるか否かでインクの有無を判別できる。すなわち、インク検知状態では、インクを通じて閾値電流以上の電流が流れる。また、インク非検知状態では、電極ピン301、302間に電流は流れないため、閾値電流以上の電流が流れることはない。
なお、インク量検知センサ210は、インク上面が、維持されるべき高さにあるか否かを検知可能であればよく、光学式や機械式等の任意構成のセンサを採用することが可能である。光学式であれば、例えば、インク上面に向けて光を出射する光源と、インク上面が所定高さに位置するときに、当該インク上面で反射された光源からの光を受光可能な位置に配置した光検知器とにより構成することができる。この構成では、インク上面が所定高さに位置するとき光検知器が光を検出し、インク上面が所定高さにないときに光検知器が光を検出しない。また、機械式であれば、サブタンク202内のインクよりも比重の小さい浮き部材の位置を検知する機構を設けることで、インク上面が所定高さにあるか否かを検知することができる。
図4は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系を示す概略構成図である。インクジェット記録装置100は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、ROM(Read Only Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404および駆動ローラ121や搬送ローラ103等における各駆動部に対応するドライバ405が内部バス406を介して接続されている。ROM403やHDD404等はプログラムを格納しており、CPU401はその制御プログラムの指令にしたがってインクジェット記録装置100を制御する。例えば、CPU401は、RAM402を作業領域として利用し、ROM403やHDD404等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて上記ドライバ405とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。上記駆動部以外の後述する各手段(図5に示す)についても、CPU401がプログラムを実行することで各手段として動作する。
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の機能ブロック図である。図5に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、インク供給部501、異常検知部502、異常処理部503を備える。
インク供給部501は、インク量検知センサ210の検知結果に応じて、メインタンク201からサブタンク202へインクを供給する。本実施形態では、インク供給部501は、インク量検知センサ210がインク非検知状態であるときに、電磁弁211を予め指定された時間だけ開状態にすることで、予め指定された量(以下、補給インク量Aという。)のインクをメインタンク201からサブタンク202に補給する。
異常検知部502は、インク量検知センサ210の異常を検知する。本実施形態では、異常検知部502は、後述のように、インク量検知センサ210の検知状態と、インク量検知センサ210とは異なる経路で取得したサブタンク202内のインク量との矛盾の有無に基づいてインク量検知センサ210の異常を検知する。本実施形態では、インク量検知センサ210と異なる経路でサブタンク202内のインク量を取得するために、インク量演算部504が各色のサブタンク202内のインク量をそれぞれ算出する構成になっている。
上述のように、本実施形態のインクジェット記録装置100では、インク量検知センサ210がインク非検知状態になったときに、インク供給部501が予め指定された量のインクをメインタンク201からサブタンク202に補給する。したがって、インク量検知センサ210が正常に機能している場合、インク供給部501によるインク補給完了時のサブタンク202内のインク量は一定量になる。インク量演算部504は、インク補給完了からのインク使用量SUを算出するとともに、予め登録されている当該インク補給完了時のインク量S0からインク使用量SUを差し引くことでサブタンク202内のインク量STを算出する。
また、インク量演算部504は、インク使用量SUを、画像形成に使用されたインク量SU1、パージ動作に使用されたインク量SU2の和として算出する。インク量演算部504は、インク量SU1を、画像形成の際に入力される画像データ、すなわち、各ドットの階調に対応するインク使用量を合算することで求める。また、インク量演算部504は、インク量SU2を、電磁弁213が開状態であるときに加圧ポンプ203がサブタンク202に加える圧力により定まる供給路205内を輸送されるインクの単位時間流量と、電磁弁212の開放時間に基づいて算出する。
特に限定されないが、本実施形態では、インク量演算部504は、画像データを構成するドットの階調を5ランクに区分し、各ランクに対応づけて予め登録されたインク使用量と各ランクに分類される累積ドット数との積を合計することにより、画像形成に使用されたインク量SU1を算出している。すなわち、ドットの階調を、濃い方から順に、A、B、C、D、Eの5ランクに区分する。入力された画像データにおいて、各ランクに区分された累積ドット数をNA、NB、NC、ND、NEとし、各ランクに予め対応づけられた、インク使用量をVA、VB、VC、VD、VEとすると、画像形成に使用されたインク量SU1は、NA×VA+NB×VB+NC×VC+ND×VD+NE×VEにより算出できる。なお、インク量演算部504は、インク供給部501によるインク補給が正常に実施された場合、インク使用量SUをリセット(累積ドット数=0、SU2=0)として、その時点からのインク使用量SUを算出する。
異常処理部503は、異常検知部502がインク量検知センサ210の異常を検知した場合、インク供給部501によるインク供給を禁止するとともに、サブタンク202内のインク量が所定量(後述の下限閾値Sth2)になると記録ヘッド群107による画像形成を禁止する。
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、報知部505を備えている。本実施形態では、報知部505は、異常処理部503が記録ヘッド群107による画像形成を禁止した際に、インク量検知センサ210の異常の復旧を要求する警告を通知する。また、報知部505は、異常検知部502がインク量検知センサ210の異常を検知した際に、警告を通知する。なお、報知方法は、表示、音声等ユーザが認識可能な任意の方法を採用することができる。
図6は、異常検知部502が実施する異常検知手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、インクが使用されたときや所定時間周期等の所定のタイミングで開始される。
当該手順が開始すると、まず、異常検知部502は、インク量検知センサ210がインク検知状態からインク非検知状態へ遷移した否かを確認する(ステップS601)。インク量検知センサ210がインク非検知状態へ遷移していた場合、異常検知部502は、インク供給部501によりインク補給を指示する(ステップS601Yes)。当該指示に応じて、インク供給部501は、予め指定された量のインクをメインタンク201からサブタンク202に供給する(ステップS602)。インク補給を完了したインク供給部501はその旨を異常検知部502に通知する。当該通知を受けた異常検知部502は、インク量検知センサ210がインク非検知状態からインク検知状態へ遷移した否かを確認する(ステップS603)。
インク量検知センサ210が正常に動作している場合、インク供給部501によるインク補給に伴い、インク量検知センサ210はインク非検知状態からインク検知状態に遷移する。したがって、インク供給部501によるインク補給が完了したにもかかわらず、インク量検知センサ210がインク非検知状態であるときは、異常検知部502は、インク量検知センサ210が異常であると判断する(ステップS603No、S607)。
また、ステップS601においてインク量検知センサ210がインク非検知状態へ遷移していない場合、異常検知部502は、インク量演算部504からインク使用量SUを取得し、インク使用量SUと予め登録されているインク量Sth1とを比較する(ステップS601No、S606)。当該登録インク量Sth1は、インク補給完了時のサブタンク202内のインク量S0と、インク量検知センサ210がインク非検知状態になるときのサブタンク202内のインク量SEとの差(すなわち、補給インク量A)に基づいて決定することができる。
インク量検知センサ210が正常に動作している場合、インク使用量SUが登録インク量Sth1よりも大きいときは、インク量検知センサ210はインク非検知状態になっているはずである。したがって、インク量検知センサ210がインク非検知状態でないにもかかわらず、インク使用量SUが登録インク量Sth1よりも大きいときは、異常検知部502は、インク量検知センサ210が異常であると判断する(ステップS606Yes、S607)。
なお、本実施形態では、当該判定における誤判定を避けるため、登録インク量Sth1としてインク量検知センサ210が確実にインク非検知状態になるインク量(例えば、補給インク量A+マージンα)を設定している。インク使用量SUが登録インク量Sth1以下である場合、インク量検知センサ210に異常は確認できないので、異常検知部502は手順を終了する(ステップS606No)。
一方、インク供給部501によるインク補給完了時に、インク量検知センサ210がインク非検知状態からインク検知状態へ遷移したときは、インク量検知センサ210は正常に動作していることになる(ステップS603Yes)。このとき、異常検知部502は、インク量演算部504へその旨を通知する。当該通知を受けたインク量演算部504は、インク量算出用の補正情報を取得するとともに、インク使用量SUをリセットする(ステップS604、S605)。
インク量算出用の補正情報とは、インク量演算部504が算出するインク使用量SUと補給インク量Aとの整合性を確保するための情報を意味する。インク補給開始直前におけるインク使用量SUが補給インク量Aと一致していない場合、インク量演算部504が算出するインク使用量SUは誤差を含んでいる。本実施形態では、当該誤差を小さくするため、インク量演算部504が、インク補給開始直前におけるインク使用量SUと補給インク量Aとが一致するように補正情報を生成する。特に限定されないが、例えば、インク量演算部504が、k×(インク補給開始直前におけるインク使用量SU)=Aとなるような係数kを補正情報として求め、以降で算出するインク使用量SUに当該係数kを掛算することで、補正したインク使用量SUを求める構成とすることができる。この構成では、インク量演算部504は、補正したインク使用量SUを「インク使用量SU」として使用することになる。
なお、インク量検知センサ210が異常であると判断した異常検知部502は、異常処理部503にその旨を通知する。本実施形態では、当該通知を受けた異常処理部503は、報知部505に対し、警報の発報を指示するとともに、インク供給部501にインク補給の禁止を指示する。このとき、報知部505は、例えば、インクジェット記録装置100が備える図示しないディスプレイ等に、「インク量検知センサに異常があります。」等の警告メッセージを表示し、ユーザに異常の発生を通知する。
図7は、インク量検知センサ210の異常が検知された場合に、異常処理部503が実施する画像形成手順の一例を示すフロー図である。
インク量検知センサ210の異常が検知された場合、異常処理部503は、出力対象の画像データが入力されると、当該画像データについて、予測インク使用量を算出する(ステップS701Yes、S702)。本実施形態では、異常処理部503は、当該画像データを構成するドットの階調を上述の5ランクに区分し、各ランクに区分されたドット数と、インク量演算部504に登録されている、各ランクに予め対応づけられたインク使用量VA〜VEとの積を合計することで予測インク使用量SU3を算出する。また、上述の補正情報が存在する場合は、異常処理部503は、補正した予測インク使用量SU3を「予測インク使用量SU3」として算出する。なお、出力対象画像データが複数ページである場合、インク量演算部504は、予測インク使用量SU3を1ページごとに算出する。
予測インク使用量SU3を算出した異常処理部503は、インク量演算部504が算出したサブタンク202内のインク量ST(=インク補給完了時インク量S0−インク使用量SU)を取得し、当該インク量STと予測インク使用量SU3とに基づいて、使用後予測インク量SPTを算出する(ステップS703)。なお、異常処理部503は、ステップS606においてインク量検知センサ210が異常であると判定した場合、使用後予測インク量SPTを、SPT=ST−SU3により算出する。また、ステップS603においてインク量検知センサ210が異常であると判定した場合、異常処理部503は、使用後予測インク量SPTを、SPT=ST+A−SU3により算出する。
以上のようにして、使用後予測インク量SPTを算出した異常処理部503は、当該使用後予測インク量SPTと予め登録された下限閾値Sth2とを比較する(ステップS704)。特に限定されないが、本実施形態では、画像形成中のインク切れを避けるため、当該登録インク量Sth2として、“0”ではなく、サブタンク202内が完全に空になることがないインク量を設定している。
使用後予測インク量SPTが下限閾値Sth2よりも大きい場合、異常処理部503は、予測インク使用量SU3の算出対象となった画像データの画像形成を許可する(ステップS704Yes、S706)。なお、画像形成が実施されたときに消費されたインク量は、上述のように、インク量演算部504におけるインク使用量SUの算出に反映される。
上述のように、本実施形態では、インク量演算部504は、1ページごとに予測インク使用量SU3を算出するため、以上の手順が各ページについて実行される。そして、出力対象の画像データがなくなると、出力対象の画像データが入力されるまで待機する(ステップS701No)。
以上のような処理の過程で、使用後予測インク量SPTが下限閾値Sth2以下になると、異常処理部503は、報知部505に対して警報の発報を指示するとともに、画像形成を禁止する。このとき、報知部505は、例えば、インクジェット記録装置100が備える図示しないディスプレイ等に、「インク量検知センサを交換してください。」等の警告メッセージを表示し、ユーザにインク量検知センサの異常の復旧を要求する(ステップS705)。なお、報知部505は、異常検知部502がインク量検知センサ210の異常を検知してから使用後予測インク量SPTが下限閾値Sth2以下になるまでの間、ディスプレイ等にメッセージを表示する等により、サブタンク202内のインク残量をユーザに通知してもよい。
以上説明したように、このインクジェット記録装置100では、サブタンク202が備えるインク量検知センサ210に異常が発生した場合でも、画像形成を継続することができる。また、インクジェット記録装置100における画像形成を最終的に禁止する場合も、1ページごとに出力の可否を判定するため、画像形成中にインク切れが発生することを確実に防止できる。そのため、異常発生時に、画像形成に与える影響を最小限にすることができる。
さらに、本実施形態では、サブタンク202内にインクがほとんど残っていない状態で、異常が発生したインク量検知センサ210の交換等を行うことができるため、交換時にインクがこぼれる等の不具合も発生しない。なお、本実施形態では、上述のように、サブタンク202が、記録装置本体に対して着脱可能に設けられているため、センサ交換が容易である。また、交換されるサブタンク202内にインクがほとんど残らないため、インクの廃棄量を最小限にすることができる。
加えて、本実施形態では、インク量検知センサ210と異なる経路でサブタンク202内のインク量を取得する手段として、インク量演算部504が各色のサブタンク202内のインク量をそれぞれ算出する構成を採用している。そのため、インク量演算部504をCPU401および当該CPU401上で実行されるソフトウェアとして構成でき、既存のインクジェット記録装置に構造上の変更を加えることなく適用することもできる。また、サブタンク202の容量分のみのインク使用を演算により算出する構成であるため、演算によるインク残量と、現実のインク残量との誤差による不具合が生じることもない。
ところで、上記実施形態では、異常検知部502がインク量検知センサ210の異常を検知したときに、直ちにインク供給部501によるインク供給を禁止する構成とした。これは、演算によるインク残量と現実のインク残量との誤差の影響を最小にするためである。しかしながら、演算による求めたインク残量と現実のインク残量との誤差が小さい場合には、メインタンク201からサブタンク202へインク供給を直ちに禁止しなくても、問題は発生しない。すなわち、少なくとも、インク量演算部504が算出したインク量と現実のインク量との間に誤差に起因する不具合(サブタンクへのインク供給過多またはインク供給不足)が発生することのない範囲内で、インク供給部501によるインク供給を実行することを許容しても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、インク量演算部504が算出したインク量と現実のインク量との間に誤差に起因する不具合が発生することのない範囲は、例えば、インク補給を繰り返すことにより累積される誤差の最大値がサブタンク202の容積の所定割合(例えば、5%)以内になるインク補給回数を求め、設定すればよい。
演算によるインク残量と現実のインク残量との誤差をより小さくするには、例えば、上述のドットカウントのランク数を増加させたり、上述の各ランクに予め対応づけられたインク使用量VA〜VEを、各リセット間で算出されるインク使用量SUの誤差が一方向(正方向または負方向)に偏ることがないように設定したりすればよい。また、上記補正情報として、より誤差が小さくなるような補正式を使用してもよい。
この構成では、異常処理部503が、予め指定された回数を上限として、インク供給部501にインク供給を実行させる。当該インク供給は、インク量演算部504が算出したインク使用量SUに応じて実施される。すなわち、インク使用量SUが、補給インク量Aに達する都度、メインタンク201からサブタンク202へのインク供給が実施される。
図8は、当該構成において、異常処理部503が実施する画像形成手順の一例を示すフロー図である。なお、図8において、図7と同一の処理を実施するステップには、同一の符号を付している。
当該手順では、異常処理部503は、インク使用量SUと補給インク量Aとを比較する(ステップS801)。インク使用量SUが補給インク量Aより小さい場合、異常処理部503は、特に制限を加えることなく、出力対象の画像データの画像形成を許可する(ステップS801Yes)。なお、画像形成が実施されたときに消費されたインク量は、上述のように、インク量演算部504におけるインク使用量SUの算出に反映される。
画像形成に伴ってインク使用量SUが補給インク量A以上になると、異常処理部503は、インク供給部501にインク補給を指示する(ステップS801No、S802)。当該指示に応じて、インク供給部501はサブタンク202へインクを供給する。このとき供給されるインク量は、上述のとおり補給インク量Aである。
インク補給が完了すると、異常処理部503は、インク量検知センサ210の異常が検知された以降のインク供給回数が、指定回数に到達したか否かを確認する(ステップS803)。なお、上記実施形態と同様に、インク使用量SUは、インク供給完了時にリセットされる。
インク供給回数が指定回数未満である場合、異常処理部503は、メインタンク201内のインクの有無を確認する(ステップS803No、S804)。ここでは、メインタンクインク無は、サブタンク202へ補給インク量Aのインク補給ができない状態、すなわち、メインタンク201のインク残量が補給インク量A未満である状態を意味する。メインタンクインク有の場合、異常処理部503は、以上の手順を繰り返す(ステップS804No)。なお、メインタンク201のインクが無い状態は、例えば、上述のインク量検知センサ210のようなセンサをメインタンク201に設けて検知してもよく、また、インク量演算部504が、メインタンク201の当初インク量から、その後に使用したインク量を差し引くことによりインク残量を算出してもよい。なお、当該使用したインク量は、リセット直前のインク使用量SUの累積値、算出時点でのインク使用量SUサブタンクの容量および記録ヘッドの容量に基づいて算出可能である。
一方、ステップS803においてインク供給回数が指定回数に到達した場合(ステップS803Yes)、およびステップS804においてメインタンクインク無の場合(ステップS804Yes)は、異常処理部503は、図7に示した手順にしたがって画像形成を実行する(ステップS701)。
この構成では、異常検知部502がインク量検知センサ210の異常を検知した後も、メインタンク201のインクを使用できるため、より長い期間、画像形成を継続することができる。
以上のように、本発明によれば、サブタンクのインク量検知センサに異常が発生した場合でも、サブタンク内に残存しているインクによる画像形成を可能とし、画像形成が突然できなくなるというユーザの不都合を解消することができる。
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、報知部を備える構成を説明したが、当該報知部は、本発明に必須の要素ではない。また、サブタンクが装置本体に対して着脱可能に設けられることも、本発明に必須の要素ではなく、装置本体に固定されたサブタンクの、インク量検知センサのみを交換する構成であってもよい。さらに、図6〜図8に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。
また、上記では、異常検知部が、インク使用量に基づいて異常判定を行う構成としたが、当該判定は、サブタンク内のインク残量に基づいて行うことも当然に可能である。同様に、上記では、異常処理部が、インク残量に基づいて画像形成の禁止判定を行う構成としたが、当該判定は、インク使用量に基づいて行うことも当然に可能である。
さらに、上記では、インク量検知センサと異なる経路でサブタンク内のインク量を取得する特に好ましい手段として、インク量演算部が階調に基づいて区分されたドット数をカウントするドットカウント方式によりインク使用量を算出する構成とした。しかしながら、当該手段は、サブタンク内のインク量が所定値(下限閾値Sth2)に達したか否かを判定で可能であればよく、他の方式によるドットカウントや、他の検知方式(質量や静電容量に基づく推定や上面位置の検出)を排除するものではない。サブタンク内のインク量が所定値に達したか否かを判定で可能であれば、少なくとも、インク量検知センサの異常が検知されたときに、突然、画像形成が不能になることはない。
加えて、上述の実施形態では、記録ヘッドとして4色のラインヘッドを備えるインクジェット記録装置として本発明を具体化したが、他の色数のラインヘッドを備えるインクジェット記録装置や記録ヘッドがキャリッジ上を移動するシリアルスキャン方式等、任意のインクジェット記録装置に本発明を適用可能である。