JP5436514B2 - グリセロールからジクロロプロパノールを製造するための方法であって、該グリセロールが最終的にバイオディーゼルの製造における動物性脂肪の転化から生じる方法 - Google Patents
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Description
他の製造方法の副生成物を再使用するための方法を見出し、除去又は破壊される必要のある副生成物の全量を最小化することもまた望まれていた。
従って、本発明は、有機化合物を製造するための出発生成物としての、再生可能な原材料から得られたグリセロールの使用に関する。
“再生可能な原材料から得られるグリセロール”という表現は、特にバイオディーゼルの製造過程中に得られるグリセロール、又は概して植物又は動物由来の脂肪又はオイルの転化中、例えばけん化、トランスエステル化又は加水分解反応中に得られるグリセロールを意味することが意図される。特に好適なグリセロールは、動物脂肪の転化中に得ることができる。別の特に好適なグリセロールは、バイオディーゼルの製造中に得ることができる。
対照的に、合成グリセロールは、一般的に石油化学資源から得られる。
本発明の使用では、粗製生成物は、一般的に少なくとも40質量%のグリセロールを含む。しばしば、粗製生成物は、少なくとも50質量%のグリセロールを含む。好ましくは、少なくとも70質量%のグリセロールを含む。しばしば、粗製生成物は、せいぜい99質量%のグリセロールを含む。典型的には、せいぜい95質量%のグリセロールを含む。
本発明の使用では、粗製生成物は、一般的に少なくとも5質量%の水、又は他の化合物の不存在下で、少なくとも1質量%の水を含む。本発明の使用では、粗製生成物は、一般的にせいぜい50質量%の水、又は他の化合物の不存在下で、せいぜい60質量%の水を含む。しばしば、粗製生成物は、せいぜい30質量%の水、好ましくはせいぜい21質量%の水を含む。
適切な場合では、粗製生成物は、一般的に金属塩、特に少なくとも1質量%、好ましくは約3質量%以上の含有率の金属塩素化物を有する。適切な場合では、粗製生成物は、一般的に金属塩、特にせいぜい10質量%、好ましくは約5質量%以下の含有率の金属塩素化物を有する。
本発明の使用では、精製生成物は、一般的に少なくとも0.1質量%の水を含む。本発明の使用では、精製生成物は、一般的にせいぜい20質量%の水を含む。しばしば、精製生成物は、せいぜい10質量%の水を含む。好ましくはせいぜい5質量%の水を含む。特別な態様では、精製生成物は、せいぜい3質量%の水を含む。
本発明の使用の好ましい態様では、精製グリセロール生成物が、一般的にせいぜい0.5質量%のアルデヒドを含む。好ましくはせいぜい0.1質量%のアルデヒドを含む。しばしば、精製グリセロール生成物は、一般的に質量1kg当たり少なくとも1mgのアルデヒドを含む。
例えばエバポレーション工程中に、粗製生成物に存在し得るアルデヒドの含有量を減らすか、又は全て除去するのが特に有利であることが見出された。これは、本発明の使用から着色が抑えられた生成物を得るのを可能にする。
本発明の使用は、特に3の倍数の数の炭素原子を含む有機化合物の製造に適用する。第一の好ましい実施態様では、有機化合物は3個の炭素原子を含む。第二の実施態様では、有機化合物は6、9、12、15又は18個の炭素原子、好ましくは6、9又は12個の炭素原子を含む。
本発明の使用はまた、特に好ましくは上記の数の炭素原子を含む酸化有機化合物の製造にも適用する。
本発明の使用は、特に好ましくはジクロロプロパノール及びエピクロロヒドリンなどの塩素化化合物の製造に適用する。驚くべきことに、本発明の使用は、これらの化合物を再生可能な資源から出発して経済的に得ることを可能にする。
従って、本発明はまた、特に塩素化有機化合物を製造する方法にも関し、該方法は本発明の使用に基づき再生可能原材料から得られるグリセロールを用い、及び前記グリセロールを少なくとも1種の塩素化剤と接触させる。上記の製造方法はまた、一般的なグリセロールで行うこともでき、再生可能な原材料から得られたグリセロールの好ましい使用に限定されないと理解される。
酸化的塩素化用の薬剤の中で挙げられ得るのは、特に塩素である。
置換的塩素化用の薬剤の中で挙げられ得るのは、特に塩素化水素を含む塩素化剤である。
この塩素化剤は、しばしば有機塩素化、脱離又は置換反応、又は他に燃焼反応における副生成物として得られるため、特に有利である。本発明は、この副生成物の市場を維持することができる。
この態様は、製造が塩素化水素の製造、例えば塩素化ビニル又は4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(これは副生成物として塩素化水素を提供する)の製造と同じ場所で行われるときに特に有利である。
第二の態様では、塩素化剤が塩化水素の水溶液である。この場合、溶液の塩素化水素含有率は、一般的に少なくとも4質量%である。好ましくは、この含有率は20質量%以上である。この場合、該溶液の塩素化水素含有率は、一般的にせいぜい37質量%である。
この具体的な態様は、塩素化有機化合物の熱分解から誘導された質の低い塩化水素の水溶液、又は金属をストリッピングするために用いられた質の低い塩化水素の水溶液の市場を安定化することができる。
特に、該生成物を合成するための通常の方法では、例えば塩素化アリルの次亜塩素化によるジクロロプロパノールを製造するための方法から生じるジクロロプロパノールが負荷されている塩化水素の水溶液を用いることができる。
この具体的な態様は、容易に可搬な塩素化剤を用いることができ、同時に、特にグリセロール及び塩素化剤間の反応を複数の工程で行うときに、反応媒体における水含有量の効果的な制御を可能にする。
第三の態様では、塩素化剤は、反応媒体内の現場で、例えば硫酸、リン酸などの有機酸、及びNaCl、KCl又はCaCl2などの好適な金属塩素化物から出発して生成される塩素化水素である。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、一般的に、反応条件下で塩素化剤、特に塩素化水素に対して耐性のある物質からなるか又は被覆されている反応器で行われる。
好適な物質として挙げられ得るのは、例えばエナメルスチールである。ポリマーを用いてもよい。ポリマーの中では、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、及び特にポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)などのフッ素化ポリマー、及びポリスルホン又はポリスルフィドなどの硫黄を含むポリマーであり、特に芳香族であるものが非常に好適である。
樹脂を用いる被覆剤を、有効に用いることができ、これらの中ではエポキシ樹脂又はフェノール樹脂が特に好適である。
ある種の金属又はその合金も好適となり得る。特に挙げられ得るのは、タンタル、チタン、銅、金及び銀、ニッケル及びモリブデン、特にニッケル及びモリブデンを含む合金である。これらは、塊で用いるか、又は被覆加工の形態で用いてもよく、又は他の任意の被覆方法を用いてもよい。
セラミックス又は金属セラミックス及びさらに耐熱性物質も用いることができる。
ある種の特定の成分、例えば熱交換体としては、含浸されていてもされていなくてもよいグラファイトが特に好適である。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、グリセロール及び塩素化剤間の反応を、触媒の存在下又は不存在下で行ってよい。好ましくは好適な触媒の存在下で反応を行う。
触媒の具体例は、任意に置換されている酢酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、脂肪酸及び安息香酸などの芳香族カルボン酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸に基づく。
カルボン酸の別の具体例は、ジ-、トリ-又はテトラカルボン酸などのポリ(カルボン酸)である。ジカルボン酸が好ましい。
第二の好ましい実施態様では、触媒は置換されている安息香酸に基づく。この実施態様では、芳香族環は、しばしば2-位又は4-位に少なくとも1種の置換基を有する。この置換基は、有利にはニトロ基などの誘起的又は共鳴的捕獲基、又はヒドロキシル基、アルコキシ基、例えばメトキシ基、又は塩素及びフッ素などのハロゲン、又は任意にアルキル化されているアミノ基などの共鳴的供与及び誘起的捕獲基であり、これらの中では特にジ-又はトリアルキルアミノ基である。
触媒の具体例は、サリチル酸、4クロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸及び2,4ジニトロ安息香酸から選択される。
第三の好ましい実施態様では、触媒は脂肪酸に基づく。好ましい例は、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン(カプリル)酸、ラウリン酸、デカン酸又はそれらの混合物から選択される。オクタン(カプリル)酸は、該酸の特に好ましい例である。
第四の好ましい実施態様では、触媒はポリ(カルボン酸)に基づく。好ましい例は、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸から選択される。アジピン酸が好ましい。
反応媒体における触媒濃度は、適当に最適化され、反応媒体の体積を最小化することができる。“触媒濃度”という表現は、酸及びその誘導体(例えばエステル)の濃度を表すことを意図する。触媒濃度は、液体反応媒体1kg当たりの酸及び酸誘導体、特にエステル基のモル数で表される。この濃度は、一般的に0.1mol/kg以上、好ましくは1mol/kg以上、及び最も好ましくは2mol/kg以上である。上記に定義された触媒濃度は、通常10mol/kg以下、特に8mol/kg以下、及びさらに特に4mol/kg以下である。
別の実施態様では、反応は110℃以上の温度で行われる。この温度は、しばしば115℃以上である。好ましくは約120℃以上である。この実施態様では、反応は一般的にせいぜい160℃の温度で行われる。この温度はしばしばせいぜい140℃である。好ましくは約130℃以下である。
この実施態様は、反応が連続的に行われるときに特に好ましい。
本発明の方法では、反応は一般的に少なくとも0.3barの圧力で行われる。反応は、しばしば少なくとも0.5barの圧力で行われる。この圧力は好ましくは約1bar(大気圧)以上である。本発明の方法では、反応は一般的にせいぜい100barの圧力で行われる。この圧力はしばしばせいぜい20barである。好ましくはせいぜい15bar、及び最も好ましくはせいぜい10barである。
本発明の方法の好ましい第一の態様では、反応が、上記のようにわずかな減圧下で行われる。これにより、水が形成するか、又は反応進行に応じて反応媒体から水を除去するこ とができる。
本発明の方法の第二の好ましい態様では、反応は上記のように増加した圧力下で行われる。これは、特に反応器におけるHClの高い濃度を、適切なときには保持し、それによって反応速度を増加させることができる。
本発明の方法は、好ましくは液相で行われる。
滞留時間は、それとは別にグリセロールの体積の流量に対する反応器における液体媒体の体積の比として定義することもできる。この場合、滞留時間は一般的に1時間以上、好ましくは5時間以上である。有利には、滞留時間は10時間以上である。この場合、グリセロールの体積による流量に対する反応器における液体媒体の体積の比として定義される滞留時間は、一般的に100時間以下、好ましくは50時間以下、及び最も好ましくは30時間以下である。約20時間以下の滞留時間が特によく適する。
バッチ方法では、滞留時間は一般的に1〜20時間である。
“ジクロロプロパノール”という用語は、一般的に本質的に1,3-ジクロロプロパン-2-オール及び2,3-ジクロロプロパン-1-オールからなる異性体の混合物を意味することを意図する。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、驚くべきことに1,3-ジクロロプロパン-2-オールの高い選択性が得られ、この異性体はエピクロロヒドリンを製造する目的の脱塩素化水素反応のための出発生成物として特に好適である。本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法のこの態様では、反応媒体が一般的に10〜95質量%のジクロロプロパノールを含む。好ましくは50〜90質量%のジクロロプロパノールを含む。
連続的な方法において特に好ましい別の態様では、液体反応媒体が、液体反応媒体の全質量に対して10〜50質量%のジクロロプロパノールを含む。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、反応媒体が一般的に1〜50質量%の水を含む。しばしば、1〜15質量%の水を含む。好ましくはせいぜい10質量%の水を含む。約5質量%以下の水含有率がさらに特に好ましい。
具体的態様では、本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、液体反応媒体の全質量に対して1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水分濃度が保持される液体反応媒体で連続的に行われる。この具体的態様では、本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、液体反応媒体の全質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下の水分濃度が保持される液体反応媒体で連続的に行われる。8質量%以下の水分濃度を保持することも可能である。
グリセロール及び塩素化水素から出発してクロロジヒドロキシプロパン及びジクロロプロパノールを合成する際に製造される重質化合物の量は、グリセロール及び種々の反応生成物と混和性である非水性溶媒を用いて著しく減少させることができる。該非反応性溶媒の特別な例は、ジクロロプロパノール、ジオキサン、フェノール及びクレゾールである。クロロジヒドロキシプロパンはまた、ジクロロプロパノールを製造するためのグリセロールの希釈剤としても好適である。該溶媒の混合物も好適であり、クロロジヒドロキシプロパン及びジクロロプロパノールの混合物がグリセロールから出発するジクロロプロパノールの製造に特に好ましい。溶媒の効果は、反応媒体におけるグリセロール含有率が反応媒体の全質量に対して50質量%以下である場合に特に有利であり、この濃度が30%よりも少ない場合に特に良好である。有利には10質量%よりも少ない。
この態様では、反応媒体における溶媒含有率が、一般的に10〜95質量%、好ましくは30〜80質量%である。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法の別の態様では、反応媒体の蒸気ストリッピング、特に蒸気ストリッピングが行われる。この場合、1〜5、あるときは2〜3、及び好ましくは1.5〜2.5mol/lの塩素化有機化合物、特にジクロロプロパノールを含むフラクションを得ることができる。この態様では、ストリッピングされた混合物が、主に水及びジクロロプロパノールからなる。
反応が連続的に行われ、反応からの少なくとも水及び塩素化有機化合物を含むフラクションの連続的又は周期的な引き抜きが行われるときに好ましい具体的態様では、反応媒体に水、特に蒸気が供給される。この供給は、適当な供給パイプから生じる外来の水、又は任意に別の反応又は操作ユニットから回収される残りの水で行うことができる。
この供給は、一般的に上記の範囲内の反応媒体における水の濃度を保持するような方法で行われる。
この態様では、反応物、特に塩素化水素及びグリセロールの供給速度、触媒供給速度、温度、反応容積及び圧力などの反応器の操作条件は、好ましくは蒸留に供給される混合物における塩素化水素の濃度が、反応圧力において二成分共沸塩素化水素-水混合物における塩素化水素の濃度よりも低いままであるような方法で調整される。この濃度を調整する効果的な方法は、液体反応媒体への塩素化水素の供給を制御することである。
該方法のこの態様は、好ましくは連続的に行われる。
“実質的に塩素化水素を含まない”とは、特に水を含むフラクションの全質量に対して10質量%以下の水を含むフラクションにおける塩素化水素含有率を意味すると理解される。しばしば、この含有率は5質量%以下、及び好ましくは1質量%以下、及びさらに好ましくは0.3質量%以下である。一般的に、“実質的に塩素化水素を含まない”とは、特に水を含むフラクションの全質量に対して1mg/kg以上、しばしば10mg/kg以上の水を含むフラクションにおける塩素化水素含有率を意味すると理解される。この態様では、反応中に形成された及び/又は反応媒体から反応物と共に導入される水を引き抜くことができ、反応媒体における実質的に全ての塩素化水素及び触媒を保持する。
ジクロロプロパノール、特に1,3-ジクロロプロパン-2-オールは、水及び塩素化水素と擬似共沸混合物を形成する。本発明はまた、この擬似共沸組成物にも関する。
本発明の目的のために、特に“擬似共沸組成物”によって理解されるのは、エバポレーション操作に付されるとき、50質量%の組成物をエバポレートした後に残りの組成物の蒸気圧が最初の組成物の蒸気圧と10%以下で異なるという特性を有する組成物である。好ましくは、この差は5%以下である。
好ましい実施態様では、反応媒体のフラクションの分離が、蒸留工程によって行われ、この蒸留工程に供給される物質の集合は、蒸留の圧力において二成分共沸組成物塩素化水素/水における塩素化水素濃度よりも低い塩素化水素濃度を有する。
従って、本発明はまた、少なくとも水、ジクロロプロパン及び塩素化水素を含む混合物の分離のための方法にも関し、該混合物は蒸留工程で分離され、前記蒸留工程に供給される物質の集合は、蒸留の圧力において塩素化水素/水の二成分共沸組成物における塩素化水素濃度よりも低い塩素化水素濃度を有する。
最大限に好適な塩素化水素濃度は、操作圧力がより高いときは、Bonner及びTitus(J. Amer. Chem. Soc. 52, 633 (1930))によって出版され、以下の表に部分的に転載されている共沸塩素化水素のための液体-蒸気平衡データに従ってわずかに減少する。
例えば、大気圧(101.3kPa)では、反応媒体と接触している気相における塩素化水素濃度が約20.22質量%よりも低い場合に、反応器の気相の蒸留によって、23質量%のジクロロプロパノールを含む水及びジクロロプロパノールの二成分共沸混合物を得ることができる。
水を含むフラクションの引き抜きによってジクロロプロパノールが反応媒体から完全には引き抜かれないときは、少なくともジクロロプロパノールを含む反応媒体のフラクションを回収することができる。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法のこの態様では、50〜95質量%のジクロロプロパノール及びせいぜい50質量%の水を含む少なくとも1種のフラクションが、一般的には回収される。好ましくは、このフラクションは、75〜99.9質量%、しばしば75〜99質量%のジクロロプロパノール、及び0.01〜25質量%、しばしば1〜25質量%の水を含む。
蒸留又はエバポレーションは、一般的に少なくとも20℃の温度で行われる。この温度は、しばしば少なくとも60℃である。好ましくは少なくとも70℃である。蒸留又はエバポレーションは、一般的にせいぜい180℃の温度で行われる。この温度は好ましくはせいぜい140℃である。
蒸留又はエバポレーションは、一般的に0.001barよりも高い圧力で行われる。この圧力は好ましくは約0.003bar以上である。蒸留又はエバポレーションは一般的にせいぜい1barの圧力で行われる。この圧力はしばしばせいぜい0.5barである。好ましくはせいぜい0.2barである。
(a)グリセロールを塩素化剤と接触させ、少なくともクロロプロパンジオールを含む生成物のフラクションを得る第一反応工程;
(b)任意に該生成物のフラクションの少なくとも一部を乾燥操作に付し;
(c)任意に乾燥された生成物のフラクションの少なくとも一部を、少なくとも一部のクロロプロパンジオールが塩素化剤と反応する第二反応工程に導入すること、
を含む方法によって製造される。
この態様における工程(a)及び(c)は、好ましくは本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法として上記されている条件下で行われる。しかし、水の存在下、反応媒体の全質量に対して好ましくは20〜80質量%の範囲の濃度で、工程(a)の反応を行うのが好ましい。
工程(b)は、例えば、工程(a)又は(c)の反応器の少なくとも1種におけるストリッピング操作によるか、又は反応器外部にあるリサイクルパイプに設置されているエバポレーターを用いることによって行うことができる。別の好ましい態様では、水が膜技術によって除去される。
本発明の有機化合物、特にジクロロプロパノールを製造するための方法は、例えばカスケード反応器、少なくとも1種のプレートカラム又は少なくとも1種のバブルカラム、又はそのような反応器の集合で行うことができる。
本発明の方法では、反応媒体が加熱されるとき、加熱は、例えばジャケットを用いるか又は内部熱交換機を用いて得ることができる。加熱はまた、反応器の外部にあるリサイクルパイプにおける熱交換機を用いても得ることができる。任意に、加熱は、反応器の外部にあるリサイクルパイプ上のジャケット及び熱交換機の組み合わせ使用によって得られる。
特に、本発明の方法が連続的又は供給バッチ様式で操作されるとき、二次的反応は、反応器における低揮発性の副生成物、中でも多かれ少なかれ塩素化グリセロールオリゴマーの増加を導き得る。この増加は、反応媒体の容積の進行性の増加を導き得、反応器の連続的又は不連続的なパージを必要とし、適切な水準の容積を保持する。
反応混合物からのパージに含まれている触媒は、経済的に精製処理後に反応器にリサイクルすることができる。例えば、水における低い溶解度を有する触媒を、酸加水分解処理に付すことができ、好ましくは30℃よりも高い温度、好ましくは少なくとも50℃の温度で行われ、それに続いて例えばデカンテーション、濾過又は抽出による分離工程が行われる。アジピン酸の場合、パージの酸加水分解は、冷却及び濾過の後に、良好な収率で高い純度の結晶化アジピン酸の回収を導くことが見出された。
無水HClを用いるときは、グリセロールを含む液流を、HClの流れに対向させるのが好ましい。該方法がいくつかの反応器で行われるとき、HClは有利には、例えば好適な固体、例えばモレキュラーシーブ上での吸着か、又は好適な膜による逆浸透によって、2の反応器間で乾燥される。
本発明の具体的な実施態様では、ジクロロプロパノールが本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法で得られたときに、このジクロロプロパノールの一部を、少なくとも1種の他のアルコールの存在下、さらに特にポリオール、例えばビスフェノールAの存在下で脱塩素化水素操作に付し、“エポキシ”樹脂又はそれらの有用なモノマーを得ることができる。本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法の主要な異性体、1,3 ジクロロプロパノールは、このようにして得られたポリマー又はモノマーの直鎖構造を保つことができるため、この操作に特に好適である。これは、現在の工業的方法によって主要な生成物として得られる2,3-異性体の場合ではない。
具体的な実施態様では、ジクロロプロパノールが本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法で得られるとき、このジクロロプロパノールの少なくとも一部は、好ましくはその後に脱塩素化水素反応に付されてエピクロロヒドリンを得る。
特に、エピクロロヒドリンは、99.5質量%以上の純度を示し得る。
さらに、本発明の方法は、エピクロロヒドリン製造の水性流出液の容積を減少させ、さらに有機塩素化副生成物、例えば塩素化エーテルなどのこれらの流出液における含有率を最小化することができる。
エピクロロヒドリン合成において、特に上記の1,3-ジクロロプロパン-2-オール含有率を有する精製された1,3-ジクロロプロパン-2-オールの使用は、塩素化不純物の形成を劇的に減少させることにより、製造流出液の質をさらに改善することができる。
具体的な実施態様では、エピクロロヒドリンが、水性反応媒体において、全供給量に対して1〜30質量%のジクロロプロパノールの供給で製造される。
好ましい別の実施態様では、本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法の反応媒体は、全供給量に対して、30〜90質量%のジクロロプロパノールが供給される。後者の態様では、反応媒体はしばしば、60〜90質量%、好ましくは65〜80質量%のジクロロプロパノールが供給される。有利には、全供給量に対して30〜65質量%のジクロロプロパノールの供給を行うこともできる。
この実施態様は、特に該方法の水廃棄物をかなり減らすことができる。
本発明のエピクロロヒドリンを製造するためのさらに別の具体的な態様では、ジクロロプロパノールが塩基に対して過剰に用いることで、収率を改善することができる。この場合、当量の塩基当たり少なくとも1.1当量のジクロロプロパノールが、一般的に用いられる。当量の塩基当たり少なくとも1.5当量のジクロロプロパノールが、しばしば用いられる。当量の塩基当たり少なくとも2当量のジクロロプロパノールが、好ましく用いられる。この場合、当量の塩基当たりせいぜい5当量のジクロロプロパノールが一般的に用いられる。
該供給はまた、ケトン又はエーテル、例えばメチルエチルケトンなどの有機溶媒を含み得る。
一回の供給、又は、好ましくは、例えば2又は3回の供給点を有する段階的な供給を、行うことができる。
この反応実施態様における媒体は、単一相媒体か、又は、特に有機溶媒を用いるときは、2相媒体でもよい。
本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法では、反応は一般的に少なくとも0℃の温度で行われる。この温度はしばしば少なくとも20℃である。好ましくは少なくとも30℃である。本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法では、反応は一般的にせいぜい140℃の温度で行われる。好ましくはせいぜい120℃である。第一の具体的な態様では、温度は25〜50℃である。第二の具体的な態様では、温度は60〜100℃である。
この回収操作によって、塩、特にNaClが豊富な水性フラクション、及び水が豊富なフラクションを得ることができる。塩が豊富なフラクションは、任意に好適な精製工程の後に、例えば塩素を製造するための電気分解プラントで回収し及び用いることができ、又は場合によって存在する有機化合物のその含有率を減らすことを意図する任意な酸化処理に導入され、プラントから除去することができる。エバポレーションを行い、乾燥及び、好ましくは、固体形態で回収された塩を除去することもできる。水が豊富なフラクションは、適切な場合には、有利に本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法に使用するための塩基性水溶液又はスラリーを製造するために用いることができる。
具体的な特徴では、塩、特にNaClは、脱塩素化水素操作中に、5を超えない量、しばしば2を超えない量、好ましくは1.2を超えない量であるが、一般的に製造されるエピクロロヒドリン1モル当たり少なくとも1モルのNaClが除去又は回収される。NaClはしばしば脱塩素化水素工程中に実質的にもっぱら除去される。
縮合剤は、酸性又は塩基性薬剤でもよい。固体縮合触媒を任意に用いてもよい。
本発明のポリグリセロールを製造するための方法では、上記の本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法から誘導されるエピクロロヒドリンが好ましくは用いられる。
本発明はまた、エポキシ樹脂を製造するための方法であって、上記の本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法から誘導されるエピクロロヒドリンをアルコール及び/又はポリオールと反応させる方法にも関する。エポキシ樹脂の製造は、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Vol. A9, p. 547-562に記載されている。
(a)植物油をグリセロール以外のアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールとのトランス-エステル化反応に付し、少なくともバイオディーゼル及びグリセロールを含む粗製生成物を回収し;
(b)該粗製生成物を任意に蒸留などの精製操作に付し;
(c)工程(a)で形成されるグリセロールを、本発明の有機化合物を製造するための方法に付す、
方法にも関する。
別の方法では、工程(a)を、植物油を例えば超過大気圧下で水との加水分解反応に付し、少なくとも脂肪酸及びグリセロールを含む粗製生成物の混合物を製造し、及び該脂肪酸混合物のエステル化によってバイオディーゼルを得ることから構成することができる。
本発明のバイオディーゼル及び有機化合物を製造するための方法の第二の態様では、工程(a)及び(c)が、異なる製造場所で行われる。工程(c)は、有利には塩素又は塩素化水素の供給源の近くに位置する。
特に好ましい温度及び滞留時間は、図1で示すと、反応器(11)では100℃及び3時間、及び反応器(12)では130℃及び8時間、及び反応器(13)では130℃及び8時間である。
続いて、第三の反応器を出るジクロロプロパノール、触媒及び重質生成物をカラム(18)での蒸留によって分離し、ジクロロプロパノールはライン(7)を介して頂部で引き抜くことができ、触媒及び重質生成物はライン(8)を介して底から引き抜くことができる。カラムは好ましくは0.1barの真空下で機能する。
カラム供給は、フィルター(19)を介して濾過し、粗製グリセロールに場合によって存在する固体粒子を除去することができる。
カラム(18)の重質生成物を、反応器(11)にリサイクルしてもしなくてもよい。
この概略図で得られた結果を、例12に記載する。
該方法のこの態様は、頂部における共沸により、反応から生じるほぼ全ての水を出発物質から除去し及び/又は場合によって反応器又はカラムの底に供給し、且つ2種の異性体の合計が99.5質量%以上の非常に高い純度であるジクロロプロパノールの混合物を、炭化水素鎖および塩素化水素に関する選択率を99質量%よりも高く得ることができる。
453gのグリセロール(4.92mol)及び29.5gの氷酢酸(0.49mol)の混合物を110℃に加熱して20分間攪拌した。続いて、無水塩素化水素を、5.2mol/時間で2時間、3.8mol/時間で100分及び、最後に、1.3mol/時間で317分にプログラムされた流量でこの混合物に吹き込んだ。全体で、23.6molの塩素化水素を導入した。試験の終わりにおける反応混合物の分析を表1に表す。グリセロールの転化率は99.1%であり、グリセロールに対するグリセロールに関連する重質生成物(ジグリセロール及び塩素化ジグリセロール)に関する選択率は、0.4%である。
110gのグリセロール(1.20mol)、257gの1-クロロ-2,3-ジヒドロキシプロパン(2.32mol)及び21gの氷酢酸(0.35mol)を、110℃に加熱して20分間攪拌した。続いて、無水塩素化水素を、4.76mol/時間で26分、2.04mol/時間で71分、0.62mol/時間で4時間及び、最後に、0.3mol/時間で10時間で連続したセットの流量により、この混合物に吹き込んだ。全体では、10.0molの塩素化水素を導入した。試験の終わりにおける反応混合物の分析を、表1に表す。グリセロールの転化率は99.5%であり、重質生成物(ジグリセロール及び塩素化ジグリセロール)に関する選択率は0.03%であった。
塩化水素の水溶液、グリセロール、有機酸及びジクロロプロパノールを、一定の流量で、サーモスタットで試験温度に調節された350mLのガラス反応器に導入した。大気圧で機能する反応器をオーバーフローシステムに備え、液体の一定の容積を保持した。気化した反応混合物フラクションを反応器から除去し、大気温度で濃縮した。濃縮物は、2相:主にジクロロプロパノールを含む高密度な有機相、及び未反応の大部分の塩化水素の水溶液を含むより軽い水相に分離した。オーバーフロー出口に集められた液体混合物は、ジクロロプロパノール製造の残部を含んでいた。
例3は、触媒として酢酸を用いる濃塩化水素の水溶液の使用を記載している。用いられる大部分の触媒(55%)は、反応液体からエバポレートされ、濃縮物中で発見される。
例4は、酢酸をカプリル酸で置き換えることによって提供される改善を説明している。前記酸のさらに限られたフラクション(10%)しか、この場合には、反応器から気化されないことがわかった。
例5〜7は、反応温度の効果を示している。最も良い結果は120℃以上で得られた。
例3〜7に記載されている反応器を改良して蒸留カラムを搭載し、気化される反応媒体フラクションを精留した。塩化水素の水溶液、グリセロール及び触媒のみを一定の流量で反応器に導入した。カラムの還流比を50%に固定した。形成されたジクロロプロパノールの共沸エントレインメントを作り出すのに十分な量の水で希釈した共沸塩酸を用いて得られた結果を、例8〜10について表に詳細に示す。最適な塩化水素の転化及びジクロロプロパノール選択率は、約130℃付近で観察された。蒸留したフラクションの分析は、ジクロロプロパノールの不純物はわずかなカルボン酸しか伴わないことを示す。
例11は、アジピン酸で得られた優れた結果を説明している。
種々の制御パラメーター及びさらに試験3〜11で得られた結果を、表2に詳細に与える。
反応器(20)にグリセロール及び33質量%の塩化水素の水溶液を、相対的流量質量比1/2.36で連続的に供給した。滞留時間は20時間であり、反応媒体におけるアジピン酸濃度は1kg当たり酸官能性3molとした。反応器を大気圧及び130℃で操作した。55.3%の水、9.1%の塩素化水素、9.4%のジクロロプロパノール及び25.1%のグリセロールモノクロロヒドリンを含む蒸気相が生成された。反応混合物の液相は7.7%の水及び1.24%の塩素化水素を含んだ。カラム(30)から除去される気相を25℃で濃縮し、デカンター(31)でデカントした。還流比をデカンターからの水相の適切な量をリサイクルすることによって調節し、カラム頂部においてジクロロプロパノール全生産物を抜き出した。
デカンターの出口で、15.0%のジクロロプロパノールを含む水相及び88%のジクロロプロパノールを含む有機相を回収した。ジクロロプロパノールの収率は93%であった。両相の分析は、その含有量が0.1%よりも高いいかなる有機混入物も示さなかった。水相の塩化水素の水溶液含有率は0.037%であり、アジピン酸含有率は18mg/kgであった。
連続的方法からサンプルされた反応混合物(その組成は以下の表に転載される)を加水分解処理に付した。
加水分解した混合物の第一のフラクション(134.3g)を、攪拌しながら室温まで冷却した。1.5時間後、41.9gの結晶性白色固体を濾過によって単離した。20時間以上たった後、新しい収穫量として6.7gの結晶が第一の濾液から単離された。両固体及び第二の濾液の組成を、新しい表に詳細する。80〜84%の純度のアジピン酸結晶が、回収率87%で得られた。
Claims (5)
- グリセロールを、塩素化水素を含む塩素化剤との液体反応媒体中での反応に付すジクロロプロパノールの製造方法であって、
少なくとも水、ジクロロプロパノール及び塩素化水素を含むフラクション(I)の連続的又は周期的引き抜きが行われ、
前記フラクション(I)が前記液体反応媒体から引き抜かれる気相であり、
前記フラクション(I)は蒸留工程に導入され、
少なくとも水、及び、1mg/kg以上、且つ、10質量%以下の塩素化水素を含むフラクション(II)が前記蒸留工程から分離され、
前記フラクション(II)を沈澱による分離操作に付し、50質量%以下の1,3−ジクロロプロパン−2−オールを含む水相が得られ、当該水相が蒸留工程にリサイクルされる
製造方法。 - 前記反応が反応器中で行われ、前記蒸留が前記反応器に搭載された蒸留カラムを用いて行われるか、又は、前記反応が反応器中で行われ、前記蒸留が前記反応器から分離された蒸留カラムを用いて行われる、請求項1記載の製造方法。
- 前記フラクション(II)が環流を保持するための前記蒸留カラムの頂部にリサイクルされ、前記塩素化剤が実質的に無水の塩化水素を含み、前記反応が触媒の存在下で行われる、請求項2記載の製造方法。
- 得られたジクロロジクロロプロパノールの少なくとも1つのフラクションがエピクロロヒドリンを得るための脱塩素化水素反応に付される、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 得られたエピクロロヒドリンを、エポキシ樹脂を得るためにアルコール又はポリオールと反応させる、請求項4記載の製造方法。
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