JP5433293B2 - 粘着テープ - Google Patents

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本発明は、粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に設けた粘着テープに関する。
一般的なアクリル系粘着剤層を備えた粘着テープで合成樹脂等の有機系被着体を固定すると、取り外し時に剥離し難いという問題がある。前記粘着テープを被着体に貼着した状態で加熱すると、前記粘着剤層が柔軟になることによって剥離し易くなるものの、十分ではない。
一方、粘着力を熱により可逆的に制御できる粘着剤層を備えた粘着テープとして、感温性粘着テープがある(例えば、特許文献1参照)。該感温性粘着テープは、粘着剤層が所定の感圧性接着剤に感温性樹脂を含有してなり、該感温性樹脂の融点以上の温度にまで加熱処理をすると、前記感温性樹脂が流動性を示すことによって粘着力が低下する。
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の感温性粘着テープには、セラミックや金属等の無機系被着体に対しては粘着力が低下するものの、有機系被着体に対しては粘着力が十分に低下しないという問題があった。
特開2000−351946号公報
本発明の課題は、有機系被着体に対して、固定時に必要な粘着力を有し、かつ取り外し時には粘着力を十分に低下させることができる粘着テープを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に設けた粘着テープであって、前記粘着剤層が、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、ブチルアクリレートと、前記(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートと共重合可能なモノマーとの共重合体を含むことを特徴とする粘着テープ。
(2)前記粘着剤層が、前記炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート10〜70重量部と、前記ブチルアクリレート30〜90重量部と、前記(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートと共重合可能な前記モノマー1〜20重量部との共重合体を含む前記(1)記載の粘着テープ。
(3)有機系被着体に対して、23℃における粘着力が2N/25mm以上であり、かつ60℃における粘着力が0.2N/25mm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着テープ。
本発明によれば、有機系被着体に対して固定時に必要な粘着力を有しているので、有機系被着体を確実に固定することができる。しかも、取り外し時には、加熱すれば粘着力が十分に低下するので、簡単に剥離することができる。したがって、本発明の粘着テープは、取り扱いが困難な微細・精密なチップ形状の電子部品・機械部品等を加工する工程や、有機系被着体と無機系被着体とが混在する工程等に好適に用いることができる。
(a)〜(d)は、本発明の粘着テープを用いて行うチップ型電子部品の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 図1に示す収容プレートを示す斜視図である。
本発明の粘着テープは、粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に設けてなる。前記粘着剤層は、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、ブチルアクリレートと、前記(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートと共重合可能なモノマーとの共重合体を主成分として含む。これにより、本発明の粘着テープは、有機系被着体に対して所定の粘着力を有し、かつ該粘着力の低下を達成することができる。この理由としては、以下の理由が推察される。
すなわち、ブチルアクリレートを含む共重合体に、前記炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として含むと、共重合体の極性が有機系被着体のそれと近似するようになるので、有機系被着体に対する親和性が向上し、それゆえ所定の粘着力を有するようになる。また、加熱の際にはブチルアクリレートを含む共重合体に、前記炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として含むと、ブチルアクリレートに炭素数1〜14を含むそれの共重合体の熱に対する運動性がより増加し、粘着力を低下する挙動が顕著になるので、前記粘着力が十分に低下するようになる。
前記炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
前記(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートと共重合可能なモノマーとしては、例えばヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられ、前記グリシジル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
重合割合としては、例えば炭素数12〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを10〜70重量部、ブチルアクリレートを30〜90重量部、前記(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートと共重合可能なモノマーを1〜20重量部とするのが好ましい。
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜6時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
前記共重合体の重量平均分子量は、25万〜100万であるのがよい。前記共重合体の重量平均分子量があまり小さいと、粘着テープを部品から取り外す際には、粘着剤層が部品上に残る、いわゆる糊残りが多くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、凝集力が高くなりすぎて、有機系被着体に対し固定時に必要な粘着力を得られないおそれがある。前記重量平均分子量は、前記共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
本発明の粘着テープは、有機系被着体に対して、通常、23℃における粘着力が2N/25mm以上、好ましくは2〜5N/25mmであり、かつ60℃における粘着力が0.2N/25mm以下である。したがって、本発明の粘着テープによれば、有機系被着体に対して所定の粘着力を有し、かつ該粘着力の低下が達成され、取り扱いが困難な微細・精密なチップ形状の電子部品・機械部品等を加工する工程や、有機系被着体と無機系被着体とが混在する工程等への使用が可能となる。
前記粘着力は、各温度におけるJIS Z0237に準拠した180°剥離強度を測定して得られる値である。前記有機系被着体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂等が挙げられる。前記無機系被着体としては、例えばステンレス鋼、アルミ、鉄、銅等の金属や、セラミック等が挙げられる。
前記粘着剤層には、凝集力を上げるために架橋剤を添加することができる。該架橋剤としては、例えばイソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物等が挙げられる。また、必要に応じて可塑剤、タッキファイヤー、フィラー等のような任意の成分を添加することもできる。
一方、前記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルム、紙等が挙げられる。該基材フィルムは、単層体またはこれらの複層体からなるものであってもよく、厚さは、通常、5〜500μm程度である。基材フィルムの表面には、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等の表面処理を施してもよい。
前記粘着剤層を前記基材フィルムの片面または両面に設けるには、例えば基材フィルムの片面または両面に、溶液重合反応後の共重合体溶液を塗布し、乾燥させればよい。塗布は、一般的にナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等により行うことができる。また、塗工厚みや材料の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーター等により行うこともできる。粘着剤層の厚さは5〜60μm、好ましくは10〜60μm、より好ましくは10〜40μmであるのがよい。
本発明の粘着テープの用途としては、特に限定されるものではなく、例えば取り扱いが困難な微細・精密なチップ形状の電子部品・機械部品等を加工する工程や、有機系被着体と無機系被着体とが混在する工程等に使用される仮止め用粘着テープとして好適に用いることができる。
具体例を挙げると、積層セラミックコンデンサー等のチップ型電子部品における素体(チップ)の両端面には、外部電極が形成されている。この外部電極は、例えば下記第1〜第5工程を経て形成される。
(第1工程)
図1(a),図2に示すように、素体1を収容する貫通孔51が複数設けられた収容プレート50の片面に、粘着剤層11を基材フィルム12の片面に設けた第1の粘着テープ10を貼付する。
(第2工程)
収容プレート50の他面から貫通孔51内に素体1を挿入し、第1の粘着テープ10の粘着剤層11に素体1の一端面1aを貼付する。
(第3工程)
第1の粘着テープ10が貼付された素体1の一端面1aと反対の他端面1bに、図1(b)に示すように、ディッピング等の方法で電極ペーストを塗布・乾燥して外部電極3を形成する。
(第4工程)
図1(c)に示すように、形成された外部電極3の外面に、粘着剤層21を基材フィルム22の片面に設けた第2の粘着テープ20を貼付し、素体1を収容プレート50と共に、第1の粘着テープ10から第2の粘着テープ20に転写する。
(第5工程)
転写後、図1(d)に示すように、素体1の一端面1aに外部電極4を形成し、ついで素体1の外部電極3から第2の粘着テープ20を剥離し、これにより両端面に外部電極3,4が形成された素体1を得る。
前記各工程において使用する収容プレート50は、素体1を安定して保持するための治具であり、通常、エポキシ樹脂等の有機系材料からなる。素体1の両端面の外部電極3,4は、素体1が収容プレート50の貫通孔51に収容された状態で形成される。
ここで、第1の粘着テープ10として本発明の粘着テープを使用すれば、前記第1〜第3工程では、素体1および収容プレート50を安定して固定することができ、前記第4工程では、加熱処理を行うことにより粘着力を低下させて、素体1や外部電極3にストレスを与えることなく、第1の粘着テープ10から第2の粘着テープ20に転写することができる。
しかも、従来の(感温性)粘着テープのように有機系被着体に対して粘着力が十分に低下しないという問題がないので、前記第4工程において、素体1を収容プレート50と共に第2の粘着テープ20に転写することができる。なお、第2の粘着テープ20として本発明の粘着テープを使用することもできる。また、本発明の粘着テープは、上記で説明したチップ型電子部品の外部電極を形成する用途の他、例えばダイシング工程、研磨工程等にも好適に用いることができる。
以下、合成例および実施例を挙げて本発明の粘着テープを詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
(合成例1)
セチルメタクリレートを20部、ブチルアクリレートを70部、ヒドロキシエチルアクリレートを10部、および開始剤としてパーブチルND(日油社製)を0.2部の割合で、それぞれトルエン200部に加え、60℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は30万であった。
(合成例2)
セチルメタクリレートを50部、ブチルアクリレートを40部にした以外は、前記合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は37万であった。
(比較合成例1)
エチルヘキシルアクリレートを52部、メチルアクリレートを40部、ヒドロキシエチルアクリレートを8部、および開始剤としてパーブチルND(日油社製)を0.2部の割合で、それぞれトルエン200部に加え、60℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は46万であった。
(比較合成例2)
エチルヘキシルアクリレートを92部、ヒドロキシエチルアクリレートを8部、および開始剤としてパーブチルND(日油社製)を0.2部の割合で、それぞれトルエン200部に加え、60℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は47万であった。
(比較合成例3)
ベヘニルアクリレートを40部、ステアリルアクリレートを35部、メチルアクリレートを20部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを6部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は8000であった。
(比較合成例4)
ステアリルアクリレートを95部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを5部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は8500であった。
前記合成例1,2および比較合成例1〜4の各共重合体を表1に示す。なお、前記重量平均分子量は、共重合体をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
Figure 0005433293
[実施例1,2および比較例1〜5]
<粘着テープの作製>
実施例1,2および比較例1,2として、上記で得た合成例1,2および比較合成例1,2の各共重合体溶液100部に対し、イソシアネート系架橋剤を0.5部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ30μmの粘着剤層が形成された粘着テープをそれぞれ作製した。
比較例3として、上記で得た比較合成例1の共重合体溶液100部に対し、比較合成例3の共重合体溶液を5部、およびイソシアネート系架橋剤を0.5部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ30μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
比較例4として、上記で得た比較合成例2の共重合体溶液100部に対し、比較合成例4の共重合体溶液を5部、およびイソシアネート系架橋剤を0.5部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ30μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
比較例5として、アクリル系粘着剤(綜研化学社製の「SK−1340」)100部に対し、架橋剤(綜研化学社製の「M−5A」)を2.4部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ30μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
<評価>
上記で得た各粘着テープについて、粘着力およびその低下率を評価した。各評価方法を以下に示す。
(粘着力)
所定の雰囲気温度における有機系被着体に対する粘着力を、JIS Z0237に準拠した180°剥離強度にて評価した。前記雰囲気温度は、23℃および60℃に設定した。前記有機系被着体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニルおよびアクリル樹脂を用いた。その結果を表2に示す。また、各有機系被着体に対する粘着力の平均値を平均粘着力として算出した。その結果を表3に示す。
(粘着力の低下率)
上記で得られた23℃および60℃における各粘着力の評価結果を下式(I)に当てはめて、粘着力の低下率(%)を算出した。その結果を表2に示す。また、各有機系被着体に対する低下率の平均値を平均低下率として算出した。その結果を表3に示す。
Figure 0005433293
Figure 0005433293
Figure 0005433293
表2および表3から明らかなように、実施例1,2は、有機系被着体に対して、23℃における粘着力が2N/25mm以上であり、かつ60℃における粘着力が0.2N/25mm以下であるとともに、粘着力の低下率が95%以上であるのがわかる。これらの結果から、実施例1,2は、有機系被着体に対して所定の粘着力を有し、かつ該粘着力の低下を達成できているのがわかる。
一方、比較例1〜5の粘着テープは、実施例1,2よりも60℃における粘着力が高く、粘着力の低下率に劣る結果を示した。なお、比較例1,2,5の粘着テープは、アクリル系粘着剤層を備えた粘着テープであり、比較例3,4の粘着テープは、粘着剤層が感圧性接着剤(比較合成例1,2)に感温性樹脂(比較合成例3,4)を含有してなる感温性粘着テープである。また、表2,3中において、粘着力の(平均)低下率が「−」を示すものは、60℃における粘着力が、23℃における粘着力よりも大きいことを意味する。
1 素体
1a 一端面
1b 他端面
3,4 外部電極
10 第1の粘着テープ
11,21 粘着剤層
12,22 基材フィルム
20 第2の粘着テープ
50 収容プレート
51 貫通孔

Claims (1)

  1. 粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に設けた粘着テープであって、
    前記粘着剤層が、セチルメタクリレートと、ブチルアクリレートと、ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体を含み、
    前記セチルメタクリレート、前記ブチルアクリレート、前記ヒドロキシエチルアクリレートの比率が、重量比で、セチルメタクリレート:ブチルアクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート=20:70:10〜50:40:10であり、
    有機系被着体に対して、23℃における粘着力が2N/25mm以上であり、かつ60℃における粘着力が0.2N/25mm以下であることを特徴とする粘着テープ。
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