JP5431081B2 - マグネシウム−リチウム合金およびその表面処理方法 - Google Patents

マグネシウム−リチウム合金およびその表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウム−リチウム合金の表面処理方法に関するものである。より具体的には、表面電気抵抗値が低く、かつ耐食性に優れた表面を形成することができるマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法に関するものである。
マグネシウム合金は、物理的強度、軽量、リサイクル性、電磁波シールド性、熱放散性、寸法安定性などが優れている。さらに、鋳造性や加工性が良好であり、かつ、軽量であることから、アルミニウムやプラスチックの代替品として、様々な分野で利用されている。その素材として、汎用品はAZ91材、構造材はAM60材が一般的である。
しかし、これらの部材は、鉄、アルミニウム等の合金と比較した場合、常温における展伸性が低い。したがって、実用化されている加工方法としては、ダイカストやチクソモールド法などの鋳造による成型方法がほとんどである。これは、マグネシウム合金の展伸性が他の汎用金属材に比較して低いためである。一般的な金属部品の成型に用いられているプレス法による成型を、マグネシウム合金材で行う場合は、AZ31材などの限られたマグネシウム合金材を用いた温間プレスによる方法のみが実用化されている。
そこで、従来より、上記マグネシウム合金よりもさらに軽量化でき、しかも展伸性が飛躍的に向上し、鉄やアルミと同様に常温でプレスが可能となる素材として、リチウムを含有したマグネシウム−リチウム合金を用いることが検討されている。
このマグネシウム−リチウム合金は、耐食性が一般的なマグネシウム合金より低く、そのままでは実用化に耐えられないケースが多いので、耐食性を向上させたマグネシウム−リチウム合金の製造方法(特許文献1ないし4参照。)や、耐食性を向上させるマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法(特許文献5参照。)などが提案されている。
特許文献1には、リチウムを10.5質量%以下含有し、鉄不純物濃度50ppm以下のマグネシウム−リチウム合金が優れた耐食性を有することが開示されている。
特許文献2には、6〜10.5質量%のリチウム、4〜9質量%の亜鉛を含有するマグネシウム−リチウム合金が室温での強度と耐食性に優れていることが開示されている。
特許文献3には、リチウムを6〜16質量%含有する冷間プレス可能なマグネシウム−リチウム合金が開示されている。
特許文献4には、リチウムを10.5〜40質量%含有し、平均結晶粒径が3〜30μmのマグネシウム−リチウム合金が、強度とプレス加工性に優れることが記載されている。
特許文献5には、マグネシウム−リチウム合金をフッ素とアルミニウムとを含有する処理液中に浸漬処理する表面処理方法が開示されている。
特開2000−282165号公報 特開2001−40445号公報 特開平9−41066号公報 特開平11−279675号公報 特許第4112219号公報
しかし、上記従来のマグネシウム−リチウム合金の場合、耐食性は得られても、携帯電話、ノートパソコン、携帯翻訳機、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のような電子機器筐体部品において要求される表面電気抵抗値を低くすることは、どうしてもできなかった。
上記従来の表面処理方法の場合も、優れた裸耐食性と塗膜性能は得られるが、マグネシウム合金材の用途として大きな割合を占める電子機器筐体部品等に必ず要求される表面電気抵抗値を低くすることは、できなかった。
電子機器筐体部品は、電磁波シールド性や、基板からのアースをとるために、各電気メーカー規格による表面電気抵抗値が1Ω以下であることが要求されている。
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、表面電気抵抗値が低く、なおかつ塗装下地性能や裸耐食性に優れた皮膜を形成する方法と、それによって得られるマグネシウム−リチウム合金とを提供することを目的としている。
上記課題を解決するための本発明のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法は、マグネシウム−リチウム合金の表面を、無機酸にアルミニウムおよび亜鉛の金属イオンを添加した水溶液からなる低電気抵抗処理液で処理して表面電気抵抗値を1Ω以下にする工程を具備するものである。
また、上記マグネシウム−リチウム合金の表面処理方法において、表面調整を行った後、フッ素化合物を含有する処理液に浸漬して皮膜化成処理する工程をさらに具備するものである。
また、上記課題を解決するための本発明のマグネシウム−リチウム合金は、上記の表面処理方法によって得られるものである。
本発明の処理対象としてのマグネシウム−リチウム合金としては、冷間プレス加工に適合するリチウムを含有する種々のマグネシウム合金を用いることができる。例えば、先行技術文献に開示している各種のマグネシウム−リチウム合金を用いることができる。このマグネシウム−リチウム合金の大きさ、形状については特に限定されるものではない。好ましいマグネシウム−リチウム合金としては、リチウムを10.5〜20質量%、さらに好ましくは10.5〜16質量%含有し、残部がマグネシウムと不純物となされたものが挙げられる。
なお、マグネシウム−リチウム合金の極表層では、リチウムが多量に偏析しているため、その表面では非常に腐食し易い状態になっている。したがって、このマグネシウム−リチウム合金は、通常の化成処理でも行われているように、必要に応じて、脱脂工程、水洗工程等を経て表面酸化物層や偏析層の除去等を行ってから使用される。
脱脂工程は、水酸化ナトリウム等による高アルカリ溶液中に浸漬させる等の方法によることができる。水酸化ナトリウムによる場合、好ましくは1〜20質量%の濃度の高アルカリ溶液として調製される。高アルカリ溶液中への浸漬時間は、1〜10分間であることが好ましい。水酸化ナトリウム水溶液の濃度が、1質量%未満であったり、浸漬時間が1分間未満であると、脱脂不足により外観不良を生じることとなる。また、20質量%よりも高い濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いると、アルカリ残が原因となる白粉が発生する。なお、上記した水酸化ナトリウム水溶液以外の高アルカリ溶液を使用する場合は、遊離アルカリ度(FAL)が21.0〜24.0ポイントとなるように調整したものを用いることが好ましい。
低電気抵抗処理液による処理工程は、無機酸(リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸等)の中から選ばれる1種あるいは2種以上の混合酸にさらに2種の金属イオン(アルミニウムおよび亜鉛)を添加した水溶液からなる低電気抵抗処理液に、マグネシウム−リチウム合金を浸漬処理するとこによって行われる。この低電気抵抗処理液で浸漬処理することにより、従来では得られなかった、表面電気抵抗値が低いマグネシウム−リチウム合金を得ることができる。アルミニウム及び亜鉛の中の1種の金属を単独で添加するのみでは表面電気抵抗値を低くすることはできず、両元素の添加においてのみ効果が得られる。
アルミニウムの供給源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム等の水溶性アルミニウム塩により供給する。処理液中のアルミニウム含有率は、好ましくは0.021〜0.47g/lであり、より好ましくは0.085〜0.34g/lである。0.021g/l未満あるいは、0.47g/lを超えると表面電気抵抗値を低くすることはできない。
亜鉛の供給源は、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の水溶性亜鉛塩により供給する。処理液中の亜鉛含有率は、好ましくは0.0004〜0.029g/lであり、より好ましくは0.0012〜0.013g/lである。0.0004g/l未満であると表面電気抵抗値を低くすることはできず、0.029g/lを超えると表面電気抵抗値を低くすることができず、さらに皮膜の耐食性も低下する。
無機酸の濃度は、遊離酸度(FA)が9.0〜12.0ポイントの範囲となるように調整する。9.0ポイント未満であると、処理不足、外観不良、表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性の低下などを生じることがあり、12.0ポイントを超えると、過剰処理による肌荒れ、寸法不良、皮膜耐食性低下などを生じることがある。
上記低電気抵抗処理液による浸漬は、35℃〜70℃、好ましくは55〜65℃の温度状態として行うのが好ましい。35℃未満であると、処理不足、外観不良、表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性低下などを生じることがあり、70℃を越えると、過剰処理による肌荒れ、寸法不良、皮膜耐食性低下などを生じることがある。また、浸漬時間は、0.5〜2分間、より好ましくは1分間である。0.5分未満であると、処理不足、表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性低下などを生じることがあり、2分を越えると、皮膜耐食性が低下することがある。
アルカリ水溶液による脱脂処理の後、以上の組成で構成される低電気抵抗処理液により表面電気抵抗値を低くするための工程を行った後、スマットの残留分を除去するために、再度、アルカリ系水溶液により表面調整処理を実施する。このアルカリ系水溶液による表面調整処理は、脱脂工程と同様に、水酸化ナトリウム等による高アルカリ溶液中に浸漬させる等の方法によることができる。水酸化ナトリウムによる場合、好ましくは5〜30質量%の濃度の高アルカリ溶液として調製される。高アルカリ溶液中への浸漬時間は、0.5〜10分間であることが好ましい。また、浸漬温度は45〜70℃である。水酸化ナトリウム水溶液の濃度が、5質量%未満であったり、浸漬時間が0.5分間未満であったり、温度が45℃未満の場合は、スマットが残留し、皮膜耐食性が低下する可能性がある。また、30質量%よりも高い濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いると、アルカリ残が原因となる白粉が発生する可能性がある。なお、上記した水酸化ナトリウム水溶液以外の高アルカリ溶液を使用する場合は、遊離アルカリ度(FAL)が31.5〜35.5ポイントとなるように調整したものを用いることが好ましい。
この表面調整処理の後に、フッ化物を含有する皮膜化成処理液により、皮膜化成処理する工程を行う。この工程によって耐食性が強化される。
皮膜化成処理する工程は、フッ素を含有する皮膜化成処理液に浸漬することによって得られる。
この皮膜化成処理液中のフッ素としては、フッ酸、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化アンモニウム、ケイフッ化水素酸およびその塩、ならびにホウフッ化水素酸およびその塩から選ばれる少なくとも1種から供給されることが好ましい。これらの化合物によれば、フッ素が活性状態で十分に溶け込んだものとして得ることができるからである。
皮膜化成処理液におけるフッ素の含有量は、好ましくは3.33〜40g/lの範囲の割合である。より好ましくは8.0〜30.0g/lである。フッ素の含有量が3.33g/l未満であると、皮膜付着量不足、皮膜耐食性低下などを生じることがあり、また、40g/lを超えると、表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性の低下などを生じることがあるからである。
皮膜化成処理液における酸の濃度は、遊離酸度(FA)が8.0〜12.0ポイントの範囲となるように調整する。8.0ポイント未満であると、皮膜付着量不足、皮膜耐食性低下などを生じることがあり、12.0ポイントを超えると、表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性の低下などを生じることがあるからである。
皮膜化成処理液による皮膜化成処理は、マグネシウム−リチウム合金を皮膜化成処理液中に浸漬する等、処理液をマグネシウム−リチウム合金の表面に一定時間接触させることができる一般的な方法によって行うことができる。
上記した浸漬する方法による場合、皮膜化成処理液は、40〜80℃、好ましくは約55〜65℃の温度状態で行われるのが好ましい。マグネシウム及びリチウムと、フッ素との化学反応を迅速かつ良好に行わせるためである。また、浸漬時間は、好ましくは0.5〜5分間、より好ましくは約1.5〜4.5分間である。マグネシウム−リチウム合金の表面にフッ化マグネシウム及びフッ化リチウムを生じさせると共に、その複合作用を十分に発揮させるためである。浸漬時間が0.5分間未満であると、皮膜付着量不足、皮膜耐食性低下などを生じることがあり、5分間を超えると、過剰処理のため表面電気抵抗値の上昇、塗膜密着性の低下などを生じることがある。
本発明のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法においては、脱脂、低電気抵抗処理液による処理工程、および表面調整処理を行った後に、この皮膜化成処理液による処理工程を行うことが好ましい。なお、脱脂、低電気抵抗処理液による処理工程、および表面調整処理、皮膜化成処理は、それぞれ個別に行われ、各処理の間に水洗処理が施される。
本発明の方法により表面処理したマグネシウム−リチウム合金は、その表面に形成した塗装膜に密着性を良好に保持させることができる。この塗装処理は、上記した本発明の表面調整処理後に、水洗、乾燥の過程を経た後に行うことができる。塗装方法としては、エポキシカチオン電着塗装によるプライマー処理、さらにはメラミン樹脂等による上塗り処理、一般焼付け塗装等の方法によることができる。
また、本発明の方法により表面処理したマグネシウム−リチウム合金は、優れた耐食性が得られ、かつ、表面電気抵抗値を低くすることができるため、例えば、携帯電話、ノートパソコン、携帯翻訳機、ビデオカメラ、デジタルカメラなどのように、高い電磁波シールド性や、基板からのアースをとるために表面電気抵抗値が低いことを要求される、各種の電気機器筐体部品として有効利用することができる。
さらに、本発明の方法による表面処理は、マグネシウム−リチウム合金の圧延材に施した後、得られた圧延材をプレス加工などで加工しても優れた耐食性と表面電気抵抗値を低く保つことができる。したがって、本発明の方法による表面処理は、プレス加工した後の部品の状態になったマグネシウム−リチウム合金に行うものであってもよいし、加工前の圧延材の状態のマグネシウム−リチウム合金に行うものであってもよい。
上記した全ての工程を経て得られたマグネシウム−リチウム合金は、ピン間10mm、ピン先直径2mmの円柱状2探針(1針の接触表面積3.14mm2)のAプローブ(株式会社三菱化学アナリテック社製)を、240gの荷重で表面に押圧した時の電流計の表面電気抵抗値を1Ω以下とすることができる。また、このプローブを60gの荷重で押圧した時の電流計の表面電気抵抗値でも10Ω以下、好ましい条件に整えると1Ω以下とすることができる。240gの荷重は、ビス固定によってマグネシウム−リチウム合金にアースを取る場合の固定力を想定しており、60gの荷重は、マグネシウム−リチウム合金の表面にテープ固定によってアースを取る場合の固定力を想定している。したがって、本願発明の表面処理方法によって得られるマグネシウム−リチウム合金は、基板からのアースを取る必要がある電子機器筐体部品として好適に用いることができる。
以上述べたように、本発明のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法によると、マグネシウム−リチウム合金の表面に、ピン間10mm、ピン先直径2mmの円柱状2探針(1針の接触表面積3.14mm2)のプローブを、240gの荷重で押圧した時の電流計の表面電気抵抗値を1Ω以下とすることができる。
また、マグネシウム−リチウム合金は、マグネシウム−リチウム合金が有する超軽量、常温プレス加工による加工コストの低下などの利点があるので、低電気抵抗処理液による処理工程を施した本発明のマグネシウム−リチウム合金は、電磁波シールド性が求められたり、基板からのアースを取る必要がある電子機器筐体部品に用いることが可能となる。
(実施例1〜13,比較例1〜19)
被処理対象物として、マグネシウム−リチウム合金(株式会社三徳製「サンマリア材」:リチウム14質量%、アルミニウム1質量%、マグネシウム残部)からなる縦50mm、横50mm、厚さ1.0mmの圧延材を試験片として用意した。
まず、この試験片は、液温を80℃に保った強アルカリ水溶液(ミリオン化学株式会社製:商品名GFMG15SXの30%水溶液)中に、8分間浸漬して脱脂処理を行った。
脱脂処理後の試験片は、水洗後、表1に示す低電気抵抗処理液による処理工程を行った。この低電気抵抗処理液は、リン酸に、酸化亜鉛と、第一リン酸アルミニウムとを加え、処理液中の亜鉛とアルミニウムとが表1の割合となるようにそれぞれ調整したものを用いた。
次いで、試験片は、水洗後、液温を60℃に保った強アルカリ水溶液(ミリオン化学株式会社製:商品名GFMG15SXの45%水溶液)中に、2分間浸漬して表面調整処理を行った。
次に、試験片は、水洗後、表1に示すフッ化物を含有するフッ化アンモニウム水溶液からなる皮膜化成処理液に60℃、180秒の条件で浸漬した。この皮膜化成処理液は、フッ化アンモニウム中のフッ素が、表1に示す量となるように調整して使用した。
Figure 0005431081
水洗および乾燥工程を経て得られた試験片は、一つの条件につき4枚用意しておき、2枚は、表面電気抵抗値、裸耐食性を評価した。
残る2枚は、マグネシウム合金用一般焼き付け塗装を下記の要領で行った。下塗りをエポキシ樹脂系塗料プライマーにより塗装後、150℃、20分間焼き付け、上塗りをアクリル系塗料により150℃、20分間焼き付け、総合膜厚を40〜50μmとした。
この塗装を施した試験片については、塗装性能評価を行った。
各評価は以下のように行った。
−表面電気抵抗値−
表面電気抵抗値は、ロレスターEP2探針Aプローブ(株式会社三菱化学アナリテック社製:ピン間10mm、ピン先直径2.0mm(1針の接触表面積3.14mm2)、バネ圧240g)を用い、試験片表面の中央部、上部、下部に、それぞれピンを押圧して表面電気抵抗値を測定した。測定は一枚の試験片につき3回測定し、2枚で合計6回測定してその平均値を求めた。
240gの測定値は、2探針プローブのピンがバネ圧に抗して引っ込むまで試験片の表面に押圧して測定し、0.5Ω以下の場合を「◎」、0.5Ωを超え、1.0Ω未満の場合を「○」、1.0〜1000Ω未満の場合を「△」、1000Ω以上、または一回でも測定不能になれば「×」とした。
60gの測定値は、2探針プローブ(本体30g)に、さらに30gの荷重を加えて試験片の表面に押圧して測定し、1.0Ω以下の場合を「◎」、1.0Ωを超え、10.0Ω未満の場合を「○」、10.0〜1000Ω未満の場合を「△」、1000Ω以上、または一回でも測定不能になれば「×」とした。
なお、240gの測定値は、部材表面にアースをビス固定して取る場合を想定し、60gの測定値は、部材表面にアースをテープ固定して取る場合を想定している。
−裸耐食性試験−
JIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験方法(SST試験)によって、35℃に設定した試験槽に試験片を入れ、5%食塩水を噴霧して24時間後に取り出し、表面を水洗いし、表面錆面積(%)を確認した。0%の場合を「◎」、5%以下の場合を「○」、5%を超え、30%未満の場合を「△」、30%以上の場合を「×」とした。
−裸耐湿試験−
温度50℃、湿度90%の恒温恒湿器に試験片を入れ、120時間後に取り出し、表面錆面積(%)を確認した。0%の場合を「◎」、5%以下の場合を「○」、5%を超え、30%未満の場合を「△」、30%以上の場合を「×」とした。
−塗膜耐食性試験−
塗装を施した試験片にカッターナイフで切り込みを入れたものを用意した。これを、JIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験方法(SST試験)によって、35℃に設定した試験槽に入れ、5%食塩水を噴霧して240時間後に取り出した。表面を水洗いして乾燥した後、乾燥した塗膜カット部にテープを貼って剥離し、テープ剥離後の片側最大剥離幅(mm)を測定した。2.0mm未満の場合を「◎」、2.0mm〜3.0mm未満の場合を「○」、3.0mm〜6.0mm未満の場合を「△」、6.0mm以上の場合を「×」とした。
−塗膜耐水性試験−
沸騰(100℃)しているお湯の中に、塗装を施した試験片を入れ、60分間浸漬後、試験片を取り出し、表面の水を拭いて常温で1時間放置した。その後、試験片の表面に1mmの碁盤目状の切り込みを入れ、その表面にテープを貼って剥離し、剥離された塗膜の面積を測定した。0%の場合を「◎」、5%以下の場合を「○」、5%を超え、30%未満の場合を「△」、30%以上の場合を「×」とした。
結果を表2に示す。
Figure 0005431081
表2の結果から、本願発明に係る試験片は、表面電気抵抗値が低く、優れた裸耐食性、塗膜密着性が得られることがわかる。
(実施例14〜20)
表3に示す皮膜化成処理液を使用する以外は、上記実施例7と同様に処理を行って、実施例14〜20の試験片を得た。
なお、皮膜化成処理液は、フッ化アンモニウムと、第一リン酸アルミニウムとが、表1に示すフッ素量およびアルミニウム量となるように水溶液を調整して使用した。
得られた試験片の表面電気抵抗値、裸耐食性、塗膜性能評価を、上記実施例と同様に行った。
結果を表3に示す。
Figure 0005431081
表3の結果から、表面電気抵抗値が低く、優れた裸耐食性、塗膜密着性が得られるマグネシウム−リチウム合金を得るためには、低電気抵抗処理液に含まれる亜鉛およびアルミの量と、皮膜化成処理時の処理液中に含まれるフッ素の量とを所定の量に保たなければならないことを確認した。
本発明に係るマグネシウム−リチウム合金およびその製造方法は、アースを取る必要がある各種電子機器筐体に使用できる。

Claims (7)

  1. マグネシウム−リチウム合金の表面を、無機酸にアルミニウムおよび亜鉛の金属イオンを添加した水溶液からなる低電気抵抗処理液で処理する工程を具備することを特徴とするマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法。
  2. 請求項1記載の低電気抵抗処理液で処理する工程の後、
    アルカリ系水溶液に浸漬してスマットの残留分を除去する表面調整処理を行った後、フッ素化合物を含有する処理液に浸漬して皮膜化成処理する工程をさらに具備するマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法。
  3. 低電気抵抗処理液には、アルミニウムとして0.021〜0.47g/lと、亜鉛として0.0004〜0.029g/lとが含有された請求項1記載のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法。
  4. 低電気抵抗処理液には、アルミニウムとして0.021〜0.47g/lと、亜鉛として0.0004〜0.029g/lとが含有された請求項2記載のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法。
  5. フッ素化合物を含有する処理液として、3.33〜40g/lの酸性フッ化アンモニウム水溶液が用いられた請求項2または4記載のマグネシウム−リチウム合金の表面処理方法。
  6. 請求項1ないし5の何れか1記載の表面処理方法によって得られるマグネシウム−リチウム合金。
  7. ピン間10mm、ピン先直径2mmの円柱状2探針プローブ(1針の接触表面積3.14mm 2 )を、240gの荷重で表面に押圧した時の電流計の表面電気抵抗値が1Ω以下となされた請求項6記載のマグネシウム−リチウム合金。
JP2009211134A 2009-09-11 2009-09-11 マグネシウム−リチウム合金およびその表面処理方法 Active JP5431081B2 (ja)

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