JP5430086B2 - プラスチック光ファイバケーブル - Google Patents
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Description
一般的に、ナイロン12等のポリアミド系樹脂は、工業的にはアミンとカルボン酸の重縮合反応により得られる。しかし、ポリアミド系樹脂の重合は化学平衡反応であるため、生成ポリマー中にポリアミド系樹脂の原料に由来するモノマー、オリゴマーが残存することは避けられない。
前記コアは、ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体からなり、
前記クラッド層は、テトラフルオロエチレン単位を含み且つ示差走査熱量測定(DSC)における結晶融解熱が40mJ/mg以下である含フッ素オレフィン系樹脂からなる層を少なくとも最外層に有し、
前記被覆層は、内側から順に、光遮断被覆層、機能被覆層(C)、機能被覆層(D)からなり、
前記光遮断被覆層は、遮光剤を含有し、ナイロン11及びナイロン12の少なくとも一種のナイロン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物から形成され、前記ナイロン系樹脂は、ナイロン系樹脂由来のモノマー化合物及びオリゴマー化合物の合計含有量がナイロン系樹脂中1.5質量%以下であり、
前記機能被覆層(C)は、
ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である樹脂組成物(I)から形成され、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、JIS K7215規格に準じて測定したショアD硬度が38〜85であり、ハードセグメント単位(結晶相)として後述する一般式(4)で示されるセグメントを有し、ソフトセグメント単位(非晶相)として後述する一般式(5)で示されるセグメントを有し、
前記機能被覆層(D)は、
示差走査熱量測定(DSC)による結晶融点が240℃以上280℃以下の範囲にあり、且つISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法で測定した温度T(K)における酸素透過率P(cm3・cm/(cm2・sec・Pa))が、下記一般式(1)
P<8×10−2×exp(−5600/T) (1)
を満たす、無着色の又は無機顔料により着色されたナイロン系樹脂組成物である樹脂組成物(II)から形成され、
前記機能被覆層(C)の厚みc(μm)と前記機能被覆層(D)の厚みd(μm)が、下記一般式(2)を満たすことを特徴とするプラスチック光ファイバケーブルに関するものである。
0.39 ≦ c/(c+d) ≦ 0.9 (2)
前記コアは、ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体からなり、
前記クラッド層は、テトラフルオロエチレン単位を含み且つ示差走査熱量測定(DSC)における結晶融解熱が40mJ/mg以下である含フッ素オレフィン系樹脂からなる層を少なくとも最外層に有し、
前記被覆層は、内側から順に、光遮断被覆層、機能被覆層(C)、機能被覆層(D)からなり、
前記光遮断被覆層は、遮光剤を含有し、ナイロン11及びナイロン12の少なくとも一種のナイロン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物から形成され、前記ナイロン系樹脂は、ナイロン系樹脂由来のモノマー化合物及びオリゴマー化合物の合計含有量がナイロン系樹脂中1.5質量%以下であり、
前記機能被覆層(C)は、
示差走査熱量測定(DSC)による結晶融点が240℃以上280℃以下の範囲にあり、且つISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法で測定した温度T(K)における酸素透過率P(cm3・cm/(cm2・sec・Pa))が、下記一般式(1)
P<8×10−2×exp(−5600/T) (1)
を満たす、無着色の又は無機顔料により着色されたナイロン系樹脂組成物である樹脂組成物(II)から形成され、
前記機能被覆層(D)は、
ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である樹脂組成物(I)から形成され、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、JIS K7215規格に準じて測定したショアD硬度が38〜85であり、ハードセグメント単位(結晶相)として後述する一般式(4)で示されるセグメントを有し、ソフトセグメント単位(非晶相)として後述する一般式(5)で示されるセグメントを有し、
前記機能被覆層(C)の厚みc(μm)と前記機能被覆層(D)の厚みd(μm)が、下記一般式(3)を満たすことを特徴とするプラスチック光ファイバケーブルに関するものである。
0.15 ≦ c/(c+d) ≦ 0.7 (3)
[POFケーブルの基本構造]
本発明のPOFケーブルは、図1に示すように、コアと、その外周に形成された少なくとも一層のクラッドからなるコア/クラッド構造を有するPOF素線101と、その外周に設けられた、内層側から順に、光遮断被覆層102、機能被覆層(C)103、機能被覆層(D)104からなる被覆層を有する。
本発明のPOFケーブルでは、POF素線のコアを構成する材料(コア材)は、特に限定されるものではないが、105℃付近での長期耐熱性を満足する観点からは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)又はメタクリル酸メチル(MMA)単位を主成分とする共重合体が好ましい(以下、これらをPMMA系樹脂と呼ぶ。)。この共重合体としては、メタクリル酸メチル(MMA)単位と1種類以上のビニル系単量体単位からなる共重合体が好ましい。PMMA系樹脂のなかでも、透明性と機械的強度のバランスに優れたPMMAが特に好ましい。コア材がMMAを主成分とする共重合体である場合には、透明性を十分に確保する点から、MMA単位の含有量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。MMAに対する共重合成分としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等の、POF用コア材の原料としてこれまでに提案されている材料に使用されている成分を適宜選択することができる。
また、TFE単位を含む含フッ素オレフィン系重合体中にVdF単位とHFP単位のうち少なくとも1種類を含む樹脂は、POFの溶融紡糸時の安定性に優れている点で好ましい。
クラッドが複数層で形成されている場合、その内層側の内層クラッドを形成する樹脂としては、フッ素化メタクリレート系重合体、フッ化ビニリデン系重合体等のPOF用クラッド材として提案されている材料を適宜選択することができる。特にフッ素化メタクリレート系重合体は、屈折率の調整が容易で、良好な透明性及び耐熱性を有しながら、屈曲性及び加工性に優れる重合体であるため好ましい。
下記一般式(7)
CH2=CX−COO(CH2)m−R1f (7)
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、又はメチル基、R1fは炭素数1〜12の(フルオロ)アルキル基、mは1又は2の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸フッ素化アルキルエステルの単位(A)15〜90質量%と、単位(A)の単量体と共重合可能な単量体の単位(B)10〜85質量%からなり、屈折率が1.39〜1.475の範囲にある共重合体を用いることができる。
これらの中から、クラッド材としての透明性や耐熱性を満足するように、1種類以上の化合物を適宜選択すればよい。中でも、(メタ)アクリル酸メチルは、(メタ)アクリル酸フッ素化アルキルエステルと共重合することによって、クラッド材の透明性や耐熱性、さらに機械的強度をバランス良く向上させることができる点から好ましい。また、メタアクリル酸の単位を、フッ素化メタクリレート系重合体中に0.5〜5質量%の範囲で含有させることによって、POFのコア材及びクラッド最外層の樹脂の両方に対する密着性を向上できる。
尚、前述のようにクラッド層は2層以上の複数層から形成されてもよいが、製造コストを低減する観点からは、最外層クラッドとコアの間に内層クラッドとして第1クラッドのみを備え、第1クラッド及びその外周に最外層クラッドとして第2クラッド層を備えた2層構造とすることが好ましい。
次に本発明のPOFケーブルを構成する光遮断被覆層について説明する。
本発明のPOFケーブルには、上述したコア−クラッド構造からなるPOF素線の外周に、外光の入射を防止するためカーボンブラック等の遮光剤を含有させたナイロン系樹脂(ポリアミド系樹脂)からなる光遮断被覆層が設けられる。
POFケーブルが、自動車内LAN通信用配線として、自動車のエンジンルーム近傍等のような高温環境下に敷設される場合には、オイルや電解液、ガソリン等の引火性物質が存在するため、耐熱性と同時に耐薬品性に優れることも要求される。そのため、POFケーブルの被覆材としてのナイロン系樹脂としては、耐熱性、耐屈曲性、耐薬品性等に優れたナイロン11(単独重合体)又はナイロン12(単独重合体)が適している。ナイロン11、ナイロン12は、被覆工程における成形性が良好で、かつ適度な融点を有しているため、PMMA系樹脂をコア材とするPOFケーブルの伝送性能を低下させることなく容易にPOF素線を被覆することができる。
本発明者らの検討によれば、POF素線に接するように、ナイロン11又はナイロン12からなる一次被覆層を設けたPOFケーブルは、105℃の高温環境下に長期間放置された場合、POFの伝送損失が著しく増大する現象が見られた。
本発明者らは、この原因についての詳細な解析を行い、その結果、上記の伝送損失が増大する原因は、これら原料由来の残存モノマーやオリゴマーが、一次被覆層や二次被覆層からPOF素線の内部に溶解・拡散して、POFの伝送損失の増大を引き起こしていることをつき止めた。
さらに、この現象は、クラッド最外層が、テトラフルオロエチレン(TFE)単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂であって、その結晶融解熱がある一定以上の値であるものからなる場合に、この伝送損失の増大が著しいことを見出した。
上記オリゴマーは、低分子量である程、POF素線中への溶解・拡散が起こりやすくなる傾向があり、分子量2000以下ではその影響が特に顕著に現れる。
前述の通りPOFケーブルには耐熱性に優れていることが求められており、特に自動車内でPOFケーブルが使用される場合には、105℃環境下において5000時間を超える長期間にわたり伝送損失の増加量が小さいことが要求されている。
ナイロン系樹脂中のモノマー化合物及びオリゴマー化合物を低減する方法としては、ナイロン系樹脂の重縮合反応時の温度、水分率、反応系内の原料/生成物濃度を制御する方法や、重合後のナイロン系樹脂を熱水抽出塔に供給して熱水で向流抽出する方法や、溶融したナイロン系樹脂を高温・高真空下で脱モノマー処理する方法など、公知の技術を用いることができる。
上記のようなモノマー化合物及びオリゴマー化合物の合計含有量が1.3質量%以下のナイロン系樹脂としては、例えば、ナイロン12ではダイセル・エボニック社製のDaiamide−L1600、L1640(商品名)、ナイロン11ではアルケマ社のRilsan BMF−0(商品名)等が挙げられる。
本発明のプラスチック光ファイバケーブルは、光遮断被服層の外側に、機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)を有する。機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)は、後述する樹脂組成物(I)又は樹脂組成物(II)から形成され、機能被覆層(C)が樹脂組成物(I)から形成される場合は、機能被覆層(D)は樹脂組成物(II)から形成され、機能被覆層(C)が樹脂組成物(II)から形成される場合は、機能被覆層(D)は樹脂組成物(I)から形成される。
樹脂組成物(I)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物又はエチレン−ビニルアルコール共重合体を主成分とする樹脂組成物である。
このようなPBT樹脂としては、例えば、東レ・デュポン社製のハイトレル(Hytrel)2551、2474、4047、4057、4767、7237F(商品名)や、ポリプラスチック社製のDYURANEX 400LP(商品名)、帝人化成社製のヌーベラン4400シリーズ(商品名)、東洋紡社製のペルプレンSタイプ、Pタイプ(P150M)(商品名)、三菱化学社製のプリマロイBシリーズ(商品名)等の中から選ぶことができる。中でも、難燃性に優れている点から、東レ・デュポン社製のハイトレル(Hytrel)7237F(商品名)を用いることがより好ましい。
上記のようなPBT樹脂を樹脂組成物(I)に用いることによって、POFケーブルの柔軟性をより一層向上することができる。
また、EVAL共重合体は酸素遮断性が高いことから、高温環境下におけるPOFの酸化劣化による伝送損失の増大も抑制できる。
EVAL共重合体としては、例えば、クラレ社製のエバールE105、G156、F104、FP104、EP105、EU105(商品名)等が挙げられる。
本発明のPOFケーブルにおける特徴の一つは、光遮断被覆層の外側に、特定の範囲にある酸素透過率を持つナイロン系樹脂組成物である樹脂組成物(II)からなる機能被覆層を設けて、POFケーブルが高温環境下で使用される場合の電子遷移吸収の増大を抑制することにある。この機能被覆層を設けることによりPOFケーブルに、耐熱性を損なわずに識別性を付与することができるばかりでなく、場合によっては耐熱性をさらに向上させることが可能なる。
樹脂組成物(II)は、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融点が240℃以上280℃以下であり、且つISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法で測定した温度T(K)における酸素透過率P(cm3・cm/(cm2・sec・Pa))が、下記一般式(1)
P<8×10−2×exp(−5600/T) (1)
を満たすナイロン系樹脂組成物である。
このようなナイロン系樹脂組成物としては、より高い耐熱性向上効果を得る点から、ナイロン66を主成分とするナイロン系樹脂組成物が好ましく、特に、その酸素透過率(P)が、T=296K(23℃)を一般式(1)に代入して得られる条件を満たすものが好ましい。
ナイロン系樹脂においては、Brill転移温度と呼ばれる温度が存在することが知られている。このBrill転移温度においては、Brill転移と呼ばれる現象、すなわちポリマー主鎖のメチレンーアミド基間のねじれ運動が活発となり、アミド基の水素結合は保持されつつも、メチレン鎖のコンフォメーションの揺らぎや規則性の乱れを伴った大きな運動がおこりはじめる現象が起こり始める(Polymer,44(2003)、p6407−6417)。
ナイロン66(Bril温度の最大値は約150〜160℃、Polymer,42(2001)、p10119−10132)は、融点が265℃であり、温度23℃における酸素透過率は、P=約3×10−10〜4×10−10cm3・cm/(cm2・sec・Pa)、温度105℃における酸素透過率は、P=約1×10−8〜2×10−8cm3・cm/(cm2・sec・Pa)である。
ナイロン66としては、宇部興産社製のUBEナイロン2015B、2020B、2026B(商品名)や、東レ社製のアミランCM3007、CM3001−N、CM3006、CM3301、CM3304、CM3004(商品名)、旭化成ケミカルズ社製のレオナ1200S、1300S、1500、1700(商品名)や、BASF社製のUltramid 1000、1003、A3、N322、A3X2G5(商品名)、EMS・CHEMIE AG社製のGRILON ASシリーズ、AZシリーズ、AR、ATシリーズ(商品名)、DuPont社製のZytel 101、103、42A、408(商品名)を挙げることができる。
上述したPOFケーブルの波長650nmの伝送損失値は、105℃の高温環境下でも、長期間にわたり安定である。
ナイロン系樹脂組成物の酸素透過率(P)が、前記式(1)の右辺の値より高くなると、POFケーブルが105℃の高温環境下に長期間置かれた場合、POFが置いてある環境中の酸素が、光遮断被覆層を透過して、POF素線の内部に溶解・拡散して、POF素線が酸化劣化を受ける傾向が大きくなる。その結果、POF素線のコア部やクラッド部における電子遷移吸収が増大して、伝送損失が増大する。酸素透過率(P)が、上記式(1)を満たせば、伝送損失の増大を大きく抑えることができる。
P<8×10−2×exp(−5800/T) (8)
下記一般式(9)を満たすことがより好ましく、
P<8×10−2×exp(−6000/T) (9)
下記一般式(10)を満たすことが特に好ましい。
P<8×10−2×exp(−6300/T) (10)
機能被覆層としてのナイロン系樹脂組成物の結晶化度は30%以上55%以下の範囲にあることが好ましい。結晶化度をこのような範囲に制御することにより、所望の酸素透過率を有するナイロン系樹脂組成物を得やすくなる。結晶化度が小さすぎると、POFケーブルが高温下で処理された際に後結晶化が発生するため、POFケーブルの寸法変化が生じたり、所望の酸素透過率が得られないため、105℃の環境下に長期間置かれた場合に、伝送損失の増加を抑制することが困難になったりする。結晶化度が大きすぎると、POFケーブルの曲げ弾性率が高くなるため、POFケーブルが取り扱い難くなったり、POFケーブルをボビンに巻き取って長期間保管しておくと巻き癖が付き易くなったりする等の問題が生じる。ナイロン系樹脂組成物の結晶化度の好ましい範囲の下限側は35%以上がより好ましく、上限側は50%以下がより好ましく、45%以下がさらに好ましい。
結晶化度(X)=(ds−da)/(dc−da)
(da:非晶質の密度、dc:結晶質の密度、ds:試料の密度)。
機能被覆層を形成するナイロン系樹脂組成物は、顕微鏡観察による球晶サイズの平均直径が0.01μm以上40μm以下の範囲にあることが好ましい。
ここで、球晶サイズは、POFケーブルの機能被覆層から超薄切片を作製し、その切片を顕微鏡で観察し、球晶の写真を撮影した後、画像解析装置で球晶の直径の数平均を算出して得られる値である。
樹脂組成物(II)としてのナイロン系樹脂組成物中の結晶化促進剤の含有量は、POFケーブルの105℃での耐熱性を損なわない範囲で適宜設定することができるが、ナイロン系樹脂組成物100質量%に対し、0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜5質量%の範囲がより好ましく、0.3〜3質量%の範囲がさらに好ましい。
本発明において、樹脂組成物(II)としてのナイロン系樹脂組成物に特定の難燃剤を含有させることにより、機能被覆層の酸素透過性を小さくすることができる。
自動車内通信用途で用いられるPOFケーブルには高い難燃性が要求されるため、機能被覆層に難燃剤を含有させることが好ましい。機能被覆層に難燃剤を含有させる場合、本発明のPOFケーブルでは、PMMA系樹脂からなるPOF素線、光遮断被覆層には難燃剤を含ませないことが好ましく、また各々の被覆層の材料は自己消火性を有さない点から、機能被覆層に難燃機能を担わせることが好ましい。
一般的にナイロン系樹脂に用いられる難燃剤としては、リン系化合物、臭素系化合物、塩素系化合物、トリアジン系化合物、水和金属系化合物が良く知られており、様々な用途で利用されている。
本発明者らは、このような問題を解決できる難燃剤の探索・検討を行った結果、高分子量タイプの臭素系難燃剤を単独、又は高分子量タイプの臭素系難燃剤と酸化アンチモンを併用して、ナイロン系樹脂に対して特定の範囲内の量を添加して用いることが、本発明のPOFケーブルに最適であることを見出した。
上記臭素系難燃剤の分子量が900より小さい場合には、POFケーブルが105℃の高温環境下の長期間置かれた場合に臭素系難燃剤が機能被覆層からブリードアウトする傾向にあり、光遮断被覆層とより内層に付与された機能被覆層を通過してPOF素線に移行して伝送損失の著しい増大を引き起こしたり、あるいはPOFケーブルの表面に臭素系難燃剤がブリードアウトしてPOFケーブルの難燃性が低下したりするおそれがある。
上記臭素系難燃剤の分子量が60,000より大きい場合には、臭素系難燃剤の流動性や、ナイロン系樹脂組成物中への溶解性・分散性が低下することにより、POFケーブルの難燃性や機械的強度が低下したり、ケーブルの外観が損なわれたりする傾向がある。
臭素系難燃剤は単独で使用しても難燃性の向上効果が得られるが、酸化アンチモンと併用することにより、さらに難燃性を高めることができる。酸化アンチモンは、POFケーブルが高温環境下に長期間置かれた場合でもPOF素線へ移行することがないため、本発明のPOFケーブルに適している。このような酸化アンチモンとしては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンを挙げることができるが、低価格という点から五酸化アンチモンが好ましい。酸化アンチモンの含有量は、樹脂組成物(II)としてのナイロン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、臭素原子含有量が1.5〜30質量%の範囲となる量の臭素系難燃剤に対して、酸化アンチモンを0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましい。
三酸化アンチモンは、日本精鉱社製のPATOXシリーズ(CZ等)、STOXシリーズ(商品名)、鈴裕化学社製のFCP AT−3、AT−3CN(商品名)等を挙げることができ、五酸化アンチモンは、日産化学社製のサンエポック(商品名)を挙げることができる。
本発明のPOFケーブルでは、樹脂組成物(II)としてのナイロン系樹脂組成物に、特定の着色剤を添加したり、上述した難燃剤と特定の着色剤を組み合わせて添加することにより、機能被覆層の材料の結晶化度を高めたり、球晶サイズを小さくしたりして、酸素透過性を制御することができる。これにより、POFケーブルが高温環境下で使用される場合に波長650nmの伝送特性を安定に維持できる。
一般的な熱可塑性樹脂の着色剤としては、有機系色素と無機顔料が広く用いられているが、本発明であるPOFケーブルを識別するための着色剤としては、有彩色の無機系顔料を用いる。
無機顔料として、例えば、緑色が要求される場合にはセリウム又はランタンのうち少なくとも1つを含むレアメタル系化合物や、青色の場合には群青、紺青、黄色の場合は黄酸化鉄、赤色の場合は弁柄(三酸化二鉄)、白色の場合は酸化チタン、タルク、カオリン、黒色の場合はカーボンブラック、黒色酸化鉄等を挙げることができる。なかでも、群青、紺青、酸化鉄、弁柄、酸化チタン、レアメタル系化合物、カーボンブラックから選択される少なくとも一種の着色剤を好適に用いることができる。
本発明のプラスチック光ファイバケーブルは、光遮断被服層の外側に、機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)を有する。機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)は、前述したように樹脂組成物(I)又は樹脂組成物(II)から形成されるが、機能被覆層(C)が樹脂組成物(I)から形成される場合は、機能被覆層(D)は樹脂組成物(II)から形成され、機能被覆層(C)が樹脂組成物(II)から形成される場合は、機能被覆層(D)は樹脂組成物(I)から形成される。
ただし、機能被覆層(C)が樹脂組成物(I)から形成され、機能被覆層(D)が樹脂組成物(II)から形成される場合と、機能被覆層(C)が樹脂組成物(II)から形成され、機能被覆層(D)が樹脂組成物(I)から形成される場合とでは、それぞれの厚みの関係が異なるので注意が必要である。以下に光遮断被覆層、機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)の各層の厚みと、機能被覆層全体(機能被覆層(C)+機能被覆層(D)に対する機能被覆層(C)及び機能被覆層(D)の厚みの関係について説明する。
900≦a≦1100
200≦b≦350
500≦b+c+d≦660
光遮断被覆層の厚みbが200μmより小さい場合には、POFケーブルの耐薬品性が低下する恐れがあり、350μmより大きい場合には、光遮断被覆層に由来する残存モノマーやオリゴマーがPOF素線の光学特性に影響を及ぼす恐れがある。
被覆層全体の厚み(b+c+d)については、550μmより小さい場合には、自動車内における振動や、高温多湿な環境からPOF素線を保護する効果等、各層による効果が不十分になるおそれがある。逆に被覆層全体の厚みが660μmより大きい場合には、POFケーブルの曲げ弾性が大きくなり、ケーブル加工時の取り扱い性が低下する。
機能被覆層(C)が樹脂組成物(I)から形成され、機能被覆層(D)が樹脂組成物(II)から形成される場合は、下記式(2)を満たす必要がある。
0.39 ≦ c/(c+d) ≦0.9 (2)
この場合、機能被覆層(C)および機能被覆層(D)を合わせた厚み(c+d)に対する機能被覆層(C)の厚みcが占める割合が0.9よりも大きくなると、ケーブルの柔軟性が向上する反面、機能被覆層(D)がもつ酸化劣化の抑制機能が十分発現されず、高温環境下での伝送損失増大を招く恐れがある。反対に機能被覆層(C)の厚みcが占める割合が0.39よりも小さくなると、POFケーブルの曲げ弾性率が大きくなり、ケーブル加工時の取り扱い性が低下する問題が発生する恐れがある。
以上の観点から、式(2)の上限値は、0.8以下が好ましく、0.75以下がより好ましい。また、式(2)の下限値は0.40以上が好ましく、0.41以上がより好ましい。
0.15 ≦ c/(c+d) ≦0.7 (3)
この場合、機能被覆層(C)および機能被覆層(D)を合わせた厚み(c+d)に対する機能被覆層(C)の厚みcが占める割合が0.7より大きくなると、高い耐熱特性を発現する反面、POFケーブルの曲げ弾性率が大きくなり、ケーブル化工事の取り扱い性が低下する問題が発生する恐れがある。反対に機能被覆層(C)の厚みcが占める割合が0.15よりも小さくなると、POFケーブルの曲げ弾性率が小さくなり、より柔軟で取り扱いの容易なケーブルが得られる一方、酸化劣化抑制効果が十分発現されず、高温環境下での伝送損失増大を招く恐れがある。
以上の観点から、式(3)の上限値は、0.65以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。また下限は0.20以上が好ましい。
次に、本発明のPOFケーブルの被覆層の形成方法について説明する。
本発明におけるPOFケーブルの製造プロセスにおける被覆工程は、クロスヘッドダイを備えた押出被覆装置を用いて、POF素線の外周を被覆材で被覆することにより行うことができる。
POF素線を被覆する際の被覆温度Tの範囲は、光遮断被覆層の場合、190℃以上230℃以下であることが好ましい。被覆温度が190℃より低いと、被覆する樹脂が十分に溶融されず、塊となって被覆の厚み変動が大きくなったり、被覆樹脂の被覆装置配管中の流れが悪くなり、樹脂吐出不足を起こし、所望の厚み制御が困難になる。被覆温度が230℃より高くなると、POF素線が溶融しやすくなり、被覆工程の被覆樹脂供給圧力で外径変動を起こしたり、熱劣化による伝送損失の増加等を招く恐れがある。被覆層の厚みをより薄く均一に制御し、且つPOF素線の光学特性を維持するためには、被覆温度Tは200℃から220℃の範囲にあることがより好ましい。
機能被覆層(C)として、樹脂組成物(I)、特にPBT樹脂を主成分とする樹脂を用いる場合には、光遮断被覆層と機能被覆層(C)との間に十分な密着性が発現されにくいため、クロスヘッド内の樹脂流路を減圧状態にし、光遮断被覆層と機能被覆層(C)の密着強度を高めることが好ましい。
本発明の各実施例に対して実施した各種の評価は、下記に記載の評価方法に従って行った。各実施例のPOFケーブルの構成および評価結果を比較例とともに各表に示した。
[結晶融解熱(△H)及び結晶融点(Tm)の測定]
示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツル社製、商品名:DSC−220)を使用して測定を行った。サンプルを、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して5分間保持して溶融させた後、10℃/分で0℃まで降温して、再度昇温速度10℃/分で昇温、5分間保持、10℃/分で降温を行い、この時の結晶融解熱(△H)を求めた。また、結晶融解ピークの最大点を結晶融点とした。
[屈折率の測定]
溶融プレスにより厚さ200μmのフィルム状の試験片を形成し、アッベの屈折計を用い、室温23℃におけるナトリウムD線の屈折率(nD23)を測定した。
ナイロン系樹脂のペレット50gとメタノール100mlを300mlナスフラスコに入れ24時間、攪拌しながら還流した。還流後、メタノールをビーカーに移し、新たなメタノールをナスフラスコに入れて更に24時間還流を行った。還流後、抽出したメタノール溶液の合計200mlを乾固させ、得られた乾固物の質量(Xg)を測定した。
この乾固物について、質量分析計(MS)(日本電子(株)製、商品名:SX−102)、熱抽出GC−MS(Agilent社製、商品名:HP5890/5972)による定性分析を行った。
また、この乾固物をメタノールに再度適当量溶解し、分取型サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(日本分析工業(株)製、商品名:LC−10)により、乾固物を分子量別に分けて採取した。さらに、採取物に対して、核磁気共鳴スペクトル測定(NMR)(日本電子(株)製、商品名:EX−270)による定性分析を行った。
なお、ナイロン系樹脂のペレット中に含まれる低分子化合物の含有量(モノマー化合物とオリゴマー化合物の合計含有量)は下記式(iX)により算出した。
〔含有量〕=X/50×100(質量%) (iX)。
25℃に管理された恒温水槽にn−ヘプタンと四塩化炭素からなる密度勾配管を作製し、試料を5mm×5mm程度の大きさにサンプリングして投入し、24時間後に読み取り、この読み取り値より密度dsを決定した。次いで、この密度dsを用いて、結晶化度(X)を下記一般式に従って算出した。
結晶化度(X)=(ds−da)/(dc−da)
(ここで、da:非晶質の密度、dc:結晶質の密度、ds:試料の密度)
ds、dcの値はX線回折法や赤外線スペクトルから求めた。ナイロン66の場合、da=1.09、dc=1.24を用いた。
[球晶サイズの測定]
POFケーブルの機能被覆層からミクロトームで超薄切片を切り出し、その切片を偏光顕微鏡で観察し、球晶の写真を撮影した後、画像解析装置で球晶の直径を20点測定して数平均を算出して、これを球晶サイズとした。
波長650nm、励振NA=0.1の光を用い、25−1mのカットバック法により、初期のPOFケーブルの伝送損失及び、105℃のオーブン内にで5000時間放置した後のPOFケーブルの伝送損失を測定した。
[酸素透過率の測定]
ISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法に従って、以下のようにして被覆材料の酸素透過率を測定した。
機能被覆層を形成するためのナイロン系樹脂組成物を、圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ100μmのフィルム状試験片を作製し、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名:OXTRAN(登録商標))を用い、温度23℃、湿度0%RHの条件下で酸素透過率[cm3・cm/(cm2・sec・Pa)]を測定した。
難燃性試験は、DIN72551−5に準拠するに測定方法に基づいて行った。
なお、この測定方法は、電線用の難燃性測定法であるDIN72551−5を、光ファイバケーブルの難燃性を測定するために、次のように変更したものである。
すなわち、この測定法においては、燃焼時または燃焼後の電線を斜め45°に維持することが必要とされている。しかし、光ファイバケーブルは電線とは異なり、光ファイバが燃焼した際に光ファイバケーブルをこのような斜め45°に維持することが困難である。よって、光ファイバケーブルを燃焼時または燃焼後に斜め45°に維持するために、光ファイバケーブルの周囲に螺旋状に一対の銅線を、互いが交差するように巻き付けた状態で難燃性を測定する。この銅線としては直径0.7mmφのものを用い、螺旋周期は光ファイバケーブルの長手方向に20mm周期とする。
また、難燃性試験の合否の判定基準は、光ファイバケーブルにバーナーの炎を7秒間あてて着火した後、この炎を試料から遠ざけ、30秒以内に炎が消えたものを可とし、消えなかったものを不可とする。このような試験を10本のサンプルに対して行って、可の本数が8本以上である場合を「○」とし、それ未満の場合を「×」とした。併せて、30秒以内に炎が消えたものの本数を記録した。
POF二次ケーブルを2つの固定点で固定し、ケーブル曲げ具を用いてPOFケーブルを中心軸に対して垂直に押圧した。固定点の間隔は15mmとした。押圧時、POFケーブルは、曲率半径5mmの円弧形状となった。ケーブル曲げ具が押圧開始から1mm変位したときのケーブル曲げ具にかかる応力(N)を測定し、曲げ弾性率(N/mm)とした。この結果から、二次ケーブルの曲げ弾性率の判定を、次のように行なった。
○:曲げ弾性率が、10N以上18N以内、
×:曲げ弾性率が、6N以上10N未満、又は、18Nを超過
曲げ弾性率が低すぎると、POFケーブルが軟らかくなるため、取り扱いの最中にPOFケーブルがねじれやすくなる。逆に、曲げ弾性率が高すぎると、POFケーブルが固くなるため、取り扱い性が低下したり、POFケーブルを専用ボビンに巻き取った状態で保管しておくと、POFケーブルに“巻き癖”が付きやすくなる。
コア材としてPMMA(屈折率1.492)、第1クラッド材として3FM/17FM/MMA/MAA(組成比で51/31/17/1(質量%))からなる共重合体(屈折率1.416〜1.417)、第2クラッド材としてVdF/TFE/HFP(組成比で43/48/9(質量%)、屈折率1.375、結晶融解熱(△H)14mJ/mg)からなる共重合体をそれぞれ用いた。これらの重合体を溶融して、220℃の紡糸ヘッドに供給し、同心円状複合ノズルを用いて複合紡糸した後、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、各クラッドの厚みが10μmで直径が1mmのPOF素線を得た。得られたPOF素線の波長650nmの伝送損失は130dB/kmと良好であった。
得られたPOF一次ケーブルは、波長650nmの初期の伝送損失が134dB/kmと良好であった。光遮断被覆層のナイロン12に含まれるモノマーおよびオリゴマーの合計含有量は、1.18質量%であった。抽出後のメタノール溶液から得られた採取物の定性分析を行ったところ、抽出物は、ナイロン12の原料であるモノマー単量体(12−アミノドデカン酸およびω−ラウロラクタム)及びこのモノマーの二量体、三量体、四量体、さらにそれ以上の多量体(アミノ脂肪族カルボン酸化合物と環状ラクタム化合物)であった。
得られたPOF二次ケーブルは、波長650nmの初期の伝送損失が134dB/kmと良好であり、耐熱試験後の伝送損失も190dB/kmと良好であった。また、曲げ弾性率試験の結果は15Nであり、柔軟性の高いPOFケーブルを得た。また得られたPOFケーブルの難燃性も良好であった。
機能被覆層(C)と機能被覆層(D)の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは伝送損失、耐熱性、柔軟性、難燃性いずれにおいても良好であった。それぞれの評価結果を表2に示す。
[実施例5〜7]
機能被覆層(D)に用いる樹脂組成物(II)を表3に示すPA66(B)〜PA66(D)に変更した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは伝送損失、耐熱性、柔軟性、難燃性いずれにおいても良好であったが、難燃剤である臭素化ポリスチレン及び五酸化アンチモンの添加量の違いにより耐熱性や曲げ弾性率に若干の違いが見られた。それぞれの評価結果を表2に示す。
[実施例8〜10]
機能被覆層(C)として樹脂組成物(II)を、機能被覆層(D)として樹脂組成物(I)を、表1に示すように用いた以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは伝送損失、耐熱性、柔軟性、難燃性いずれにおいても良好であった。それぞれの評価結果を表2に示す。
機能被覆層(C)を付与しなかった以外は実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、伝送損失、耐熱性、難燃性は非常に良好なものであったが、曲げ弾性率が26Nと高く、加工時等取り扱いの難しいPOFケーブルであった。得られた結果を表2に示す。
[比較例2〜3]
機能被覆層(C)の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。実施例1〜4と比較して、機能被覆層(C)の厚みが小さい比較例2〜3は、伝送損失、耐熱性は良好なものの、曲げ弾性率や難燃試験に不十分な結果が得られた。結果を表2に示す。
機能被覆層(D)を付与しなかった以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、伝送損失、難燃性、柔軟性に優れるケーブルであったが、耐熱性に不十分な結果が得られた。結果を表2に示す。
[比較例5]
機能被覆層(C)の厚みを変更した以外は、実施例8〜10と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、初期伝損、耐熱性、難燃性は非常に良好なものであったが、機能被覆層(C)が厚いため曲げ弾性率が大きく増大した。結果を表2に示す。
機能被覆層(C)の厚みを変更した以外は、実施例8〜10と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、初期伝損、難燃性、柔軟性は非常に良好なものであったが、機能被覆層(C)が薄いため耐熱性に不十分な結果が得られた。結果を表2に示す。
[比較例7]
光遮断被覆層としてカーボンブラックを1質量%添加した市販のナイロン12樹脂(EMS−CHEMIE社製、商品名:Grilamide L16A、モノマー及びオリゴマーの合計含有量が1.69質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、初期伝損、難燃性、柔軟性は非常に良好なものであったが、耐熱性が著しく劣る結果が得られた。結果を表2に示す。
[比較例8]
第2クラッド材としてVdF/TFE(組成比で80/20(質量%)、屈折率1.402、結晶融解熱(△H)60mJ/mg)からなる共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを得た。得られたPOFケーブルは、初期伝損、難燃性、柔軟性は非常に良好なものであったが、耐熱性が著しく劣る結果が得られた。結果を表2に示す。
VdF:フッ化ビニリデン、
TFE:テトラフルオロエチレン、
HFP:ヘキサフルオロプロピレン、
MMA:メタクリル酸メチル、
MAA:メタクリル酸、
3FM:メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、
17FM:メタクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル、
PA12(A):ナイロン12(ダイセル・エボニック社製、商品名:ダイアミド−L1640)、
PA12(B):ナイロン12(EMS/CHEMIE社製、商品名:Grilamide L16A)、
PA66:ナイロン66(宇部興産社製、商品名:UBEナイロン2015B)、
BrPSt:臭素化ポリスチレン(アルベマール社製、商品名:HP−3010)、
AnOx:五酸化アンチモン(日産化学社製、商品名:サンエポック)、
102 光遮断被覆層
103 機能被覆層(C)
104 機能被覆層(D)
201 ダイス
201a 先端面
202 ニップル
203 被覆材料の流路
204 POF素線101が通る経路の軸線
205 ダイス−ニップル部での被覆材料の流路
Claims (6)
- コアと該コアの外周に形成された1層又は2層以上からなるクラッド層を有するプラスチック光ファイバ素線と、その外周に被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブルであって、
前記コアは、ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体からなり、
前記クラッド層は、テトラフルオロエチレン単位を含み且つ示差走査熱量測定(DSC)における結晶融解熱が40mJ/mg以下である含フッ素オレフィン系樹脂からなる層を少なくとも最外層に有し、
前記被覆層は、内側から順に、光遮断被覆層、機能被覆層(C)、機能被覆層(D)からなり、
前記光遮断被覆層は、遮光剤を含有し、ナイロン11及びナイロン12の少なくとも一種のナイロン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物から形成され、前記ナイロン系樹脂は、ナイロン系樹脂由来のモノマー化合物及びオリゴマー化合物の合計含有量がナイロン系樹脂中1.5質量%以下であり、
前記機能被覆層(C)は、
ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である樹脂組成物(I)から形成され、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、JIS K7215規格に準じて測定したショアD硬度が38〜85であり、ハードセグメント単位(結晶相)として下記一般式(4)で示されるセグメントを有し、ソフトセグメント単位(非晶相)として下記一般式(5)で示されるセグメントを有し、
(式中、pは4〜12の整数、qは2〜20の整数を示す。)
前記機能被覆層(D)は、
示差走査熱量測定(DSC)による結晶融点が240℃以上280℃以下の範囲にあり、且つISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法で測定した温度T(K)における酸素透過率P(cm3・cm/(cm2・sec・Pa))が、下記一般式(1)
P<8×10−2×exp(−5600/T) (1)
を満たす、無着色の又は無機顔料により着色されたナイロン系樹脂組成物である樹脂組成物(II)から形成され、
前記機能被覆層(C)の厚みc(μm)と前記機能被覆層(D)の厚みd(μm)が、下記一般式(2)を満たすことを特徴とするプラスチック光ファイバケーブル。
0.39 ≦ c/(c+d) ≦ 0.9 (2) - コアと該コアの外周に形成された1層又は2層以上からなるクラッド層を有するプラスチック光ファイバ素線と、その外周に被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブルであって、
前記コアは、ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体からなり、
前記クラッド層は、テトラフルオロエチレン単位を含み且つ示差走査熱量測定(DSC)における結晶融解熱が40mJ/mg以下である含フッ素オレフィン系樹脂からなる層を少なくとも最外層に有し、
前記被覆層は、内側から順に、光遮断被覆層、機能被覆層(C)、機能被覆層(D)からなり、
前記光遮断被覆層は、遮光剤を含有し、ナイロン11及びナイロン12の少なくとも一種のナイロン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物から形成され、前記ナイロン系樹脂は、ナイロン系樹脂由来のモノマー化合物及びオリゴマー化合物の合計含有量がナイロン系樹脂中1.5質量%以下であり、
前記機能被覆層(C)は、
示差走査熱量測定(DSC)による結晶融点が240℃以上280℃以下の範囲にあり、且つISO14663−2:1999(Annex C)に定められた方法で測定した温度T(K)における酸素透過率P(cm3・cm/(cm2・sec・Pa))が、下記一般式(1)
P<8×10−2×exp(−5600/T) (1)
を満たす、無着色の又は無機顔料により着色されたナイロン系樹脂組成物である樹脂組成物(II)から形成され、
前記機能被覆層(D)は、
ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする樹脂組成物である樹脂組成物(I)から形成され、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、JIS K7215規格に準じて測定したショアD硬度が38〜85であり、ハードセグメント単位(結晶相)として下記一般式(4)で示されるセグメントを有し、ソフトセグメント単位(非晶相)として下記一般式(5)で示されるセグメントを有し、
(式中、pは4〜12の整数、qは2〜20の整数を示す。)
前記機能被覆層(C)の厚みc(μm)と前記機能被覆層(D)の厚みd(μm)が、下記一般式(3)を満たすことを特徴とするプラスチック光ファイバケーブル。
0.15 ≦ c/(c+d) ≦ 0.7 (3) - 前記樹脂組成物(II)が、ナイロン66を主成分とするナイロン系樹脂組成物である、請求項1又は2のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記樹脂組成物(II)が、臭素含有ポリスチレン又はポリ(臭素化ベンジルアクリレート)を臭素原子の含有量で1.5質量%以上30質量%以下含有するナイロン系樹脂組成物である、請求項1又は2のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記樹脂組成物(II)が、酸化アンチモンを0.1質量%以上20質量%以下含有するナイロン系樹脂組成物である、請求項1又は2のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記樹脂組成物(II)が、無機顔料を0.1質量%以上10質量%以下含有するナイロン系樹脂組成物である、請求項1又は2のいずれかに記載のプラスチック光ファイバケーブル。
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