JP5420564B2 - チューナブルフィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、通信システムにおける帯域フィルタとして用いられるチューナブルフィルタに関し、より詳細には、弾性表面波共振子を用いて構成されているチューナブルフィルタに関する。
通信システムに用いられる帯域フィルタにおいて、通過帯域を調整し得ることが求められることがある。このような要求を満たす帯域フィルタ、すなわちチューナブルフィルタが種々提案されている。
例えば下記の特許文献1には、複数の弾性表面波共振子と可変コンデンサとを用いたチューナブルフィルタが開示されている。図52は、特許文献1に記載のチューナブルフィルタの回路図である。
チューナブルフィルタ101では、入力端102と出力端103との間を結ぶ直列腕に、複数の直列腕共振子104,105が互いに直列に接続されている。また、直列腕とグラウンド電位との間の複数の並列腕において、それぞれ、並列腕共振子106,107が接続されている。直列腕共振子104,105及び並列腕共振子106,107は、弾性表面波共振子により形成されている。
上記直列腕共振子104,105及び並列腕共振子106,107を有するラダー型フィルタ回路が構成されている。さらに、通過帯域を調整することを可能とするために、可変コンデンサ108〜115が接続されている。すなわち、直列腕共振子104に並列に、可変コンデンサ108が接続されており、該直列腕共振子104及び可変コンデンサ108に直列に可変コンデンサ110が接続されている。同様に、直列腕共振子105にも、並列に可変コンデンサ109が接続されており、直列に可変コンデンサ111が接続されている。
並列腕においても、並列腕共振子106に並列に可変コンデンサ112が接続されており、並列腕共振子106及び可変コンデンサ112に直列に可変コンデンサ114が接続されている。同様に、並列腕共振子107に並列に可変コンデンサ113が接続されており、直列に可変コンデンサ115が接続されている。
特開2005−217852号公報
チューナブルフィルタ101においては、直列腕の回路部分における共振周波数FrSは、可変コンデンサ110,111の容量、すなわち直列容量が小さくなるほど高めることができる。また、並列容量、すなわち可変コンデンサ108,109による静電容量が大きくなるほど直列腕における反共振周波数FaSを低めることができる。
同様に、並列腕の回路部分の共振周波数FrP及び反共振周波数FaPについても、並列に接続される可変コンデンサ112,113及び直列に接続される可変コンデンサ114,115の容量を変化させることにより、変化させることができる。そのため、チューナブルフィルタ101全体の中心周波数を、上記可変コンデンサ108〜115の容量を変化させることにより変化させることができる。
しかしながら、特許文献1に記載のチューナブルフィルタ101では、直列腕共振子104,105や並列腕共振子106,107に用いられている弾性表面波共振子の電気機械結合係数が小さいという問題があった。また、周波数温度係数TCFの絶対値が大きいという問題があった。さらに、直列腕及び並列腕における弾性表面波共振子や可変容量コンデンサなどの部品の点数が多かった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、弾性表面波共振子の電気機械結合係数を大きくでき、それによって弾性表面波共振子の比帯域幅を拡大することができ、チューナブルフィルタの可変周波数範囲を拡大することができ、さらに、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくして温度変化による特性の変化を小さくすることが可能とされているチューナブルフィルタを提供することにある。
本願の第1の発明によれば、オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、Au、Pt、W、Ta、Ag、Cu、Mo、及びNiからなる群から選択された少なくとも1種を主体とする金属材料が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、弾性表面波の波長をλとした場合、IDT電極の主体となる金属と、電極膜厚の下限とデューティとの関係が下記の表1で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表1に示す各値とされており、デューティが0.15〜0.85にされたる弾性表面波共振子と、前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備えるチューナブルフィルタが提供される。
Figure 0005420564
なお、デューティはIDT電極の電極指形成ピッチをP、同電極指幅をMとした場合に、電極指形成ピッチPに対する電極指線幅Mの大きさM/Pである。
の発明によれば、オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、Au、Pt、W、Ta、Ag、Cu、Mo、及びNiからなる群から選択された少なくとも1種を主体とする金属材料が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、弾性表面波の波長をλとした場合、IDT電極の主体となる金属と、電極膜厚の下限とデューティとの関係が下記の表2で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表2に示す各値とされており、デューティが0.5より大にされた弾性表面波共振子と、前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備えるチューナブルフィルタが提供される。
Figure 0005420564
本発明に係るチューナブルフィルタのさらに別の特定の局面では、IDT電極の主体となる金属と、電極膜厚とデューティとが、下記の表3で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表3に示す各値とされている。
Figure 0005420564
膜厚の上限は反射係数が大きすぎることに起因するスプリアスが発生することにより決定される。
本願の第の発明に係るチューナブルフィルタは、オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、Au、Pt、W、Ta、Ag、Cu、Mo、及びNiからなる群から選択された少なくとも1種を主体とする金属材料が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、弾性表面波の波長をλとした場合、Au、Pt、WまたはTaが主体となる電極厚みH/λが0.006以下、Agが主体となる電極厚みH/λが0.01以下、Cu、MoまたはNiが主体となる電極厚みH/λが0.013以下に構成された弾性表面波共振子と、前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備える。
本発明に係るチューナブルフィルタのさらに別の特定の局面では、前記弾性表面波共振子として複数の弾性表面波共振子を有し、該複数の弾性表面波共振子が入力端子と出力端子との間で直列に接続されており、前記可変コンデンサとして、第1,第2の可変コンデンサを有し、第1の可変コンデンサが前記複数の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子に直列に接続されており、前記第2の可変コンデンサが、前記複数の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子に並列に接続されており、複数の弾性表面波共振子の接続点とグラウンドとの間に接続されたインダクタンスと、入力端子とグラウンド間及び出力端子とグラウンド間に接続された整合コンデンサとをさらに備える。
本発明に係るチューナブルフィルタのさらに他の特定の局面では、整合コンデンサ及びインダクタンスのインピーダンスが20〜100Ωである。
本発明に係るチューナブルフィルタによれば、弾性表面波共振子と可変コンデンサとが接続されている構成において、弾性表面波共振子が、LiNbOまたはLiTaOからなる圧電基板の上面の溝に電極材料を充填することによりIDT電極が形成されている構造を備えるため、弾性表面波共振子の電気機械結合係数を高めることができる。そのため、比帯域幅が広い弾性表面波共振子が得られ、可変周波数範囲の広いチューナブルフィルタを提供することが可能となる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るチューナブルフィルタの回路構成を示す図であり、(b)は、実施形態で用いられる弾性表面波共振子を示す模式的平面図であり、(c)は、(b)中のI−I線に沿う部分の正面断面図である。(d)は、(c)中のSiO膜が存在しない構造の正面断面図である。 図2は、第1の実験例で測定された弾性表面波共振子の周波数特性を示す図であり、SiO膜が形成されている弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図3は、参考例のチューナブルフィルタの回路図である。 図4は、第2の実験例において、図3の参考例のフィルタ回路における可変容量の静電容量を変化させた場合のフィルタ特性の変化を示す図である。 図5は、第3の実験例において、36°YX−LiTaOにおける弾性表面波共振子のIDT電極の規格化膜厚H/λを変化させた場合の反射係数の変化を示す図である。 図6は、第3の実験例において、36°YX−LiTaOにおける弾性表面波共振子のIDT電極の規格化膜厚H/λを変化させた場合の電気機械結合係数kの変化を示す図である。 図7は、第4の実験例において、13°YX−LiTaOにおける弾性表面波共振子において形成されているSiO膜の規格化膜厚h/λを0.2、0.3または0.4とした場合に、IDT電極の規格化膜厚H/λと反射係数との関係を示す図である。 図8は、第4の実験例において、弾性表面波共振子において形成されているSiO膜の規格化膜厚h/λを0.2、0.3または0.4とした場合に、IDT電極の規格化膜厚H/λと電気機械結合係数kとの関係を示す図である。 図9は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、PtからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、反射係数との関係を示す図である。 図10は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、PtからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、電気機械結合係数との関係を示す図である。 図11は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、AuからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、反射係数との関係を示す図である。 図12は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、AuからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、電気機械結合係数との関係を示す図である。 図13は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、CuからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、反射係数との関係を示す図である。 図14は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、CuからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、電気機械結合係数との関係を示す図である。 図15は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、AlからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、反射係数との関係を示す図である。 図16は、第5の実験例において、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、AlからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とした場合のLiNbOを用いた各種構造の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、電気機械結合係数との関係を示す図である。 図17は、第5の実験例において、LiTaOを用い、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、PtからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.02,0.04または0.08とした場合の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、反射係数との関係を示す図である。 図18は、第5の実験例において、LiTaOを用い、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.25とし、PtからなるIDT電極の規格化膜厚H/λを0.02,0.04または0.08とした場合の弾性表面波共振子のオイラー角(0°,θ,0°)のθと、電気機械結合係数との関係を示す図である。 図19は、第6の実験例において、LiNbO基板を用い、IDT電極として、Cuが埋め込まれた構造からなり、この厚みが波長の6%または10%とし、デューティを0.5とした場合の弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図20は、第6の実験例において、LiNbO基板を用い、IDT電極として、厚みH/λが0.1のCuが埋め込まれた電極を用い、IDT電極のデューティを0.4、0.45、0.5、0.55または0.6とした場合の弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図21は、第6の実験例において、LiNbO基板を用い、デューティが0.6であり、厚みH/λが0.06または0.1であるCuが埋め込まれたIDT電極からなる場合の弾性表面波装置のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図22は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Auが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図23は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Ptが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図24は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Wが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図25は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Taが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図26は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Agが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図27は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Cuが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図28は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Moが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図29は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Alが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.5である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図30は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Alが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.45である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λとfrに相当する弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図31は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Alが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.55である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λとfrに相当する弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図32は、第6の実験例において、オイラー角(0°,100°,0°)すなわち、10°YカットX伝搬のLiNbO基板を用い、IDT電極として、Alが埋め込まれた構造からなり、デューティが0.85である場合のIDT電極の規格化膜厚H/λとfrに相当する弾性表面波の音速との関係を示す図である。 図33は、第1の実験例で測定された弾性表面波共振子の周波数特性を示す図であり、実線がSiO膜が形成されている弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示し、破線がSiO膜が形成されていない弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。 図34は、本発明の第2の実施形態に係るチューナブルフィルタの回路図である。 図35は、第2の実施形態のチューナブルフィルタにおいて可変コンデンサC2及びC6の容量を同一とし、可変コンデンサC2の容量を0.25pF、0.5pF、0.75pFまたは1.0pFとした場合のチューナブルフィルタのフィルタ特性の変化を示す図である。 図36は、圧電基板上に設けられた溝に金属を充填してなるIDT電極を有する弾性表面波共振子及び圧電基板の上面に金属からなるIDT電極を形成した弾性表面波共振子の各インピーダンス特性を示す図である。 図37は、本発明の第3の実施形態に係るチューナブルフィルタの回路図である。 図38は、第3の実施形態のチューナブルフィルタにおいて、可変コンデンサC2の静電容量と可変コンデンサのC3の静電容量を同一とし、可変コンデンサCP1と可変コンデンサCP2との静電容量を同一とし、可変コンデンサC2,C3の静電容量と、可変コンデンサCP1,CP2の静電容量を変化させた場合のフィルタ特性の変化を示す図である。 図39は、Cu電極がオイラー角(0°、94°、0°)のLiNbO上に形成された構造の弾性表面波の共振及び反共振音速とCu膜厚との関係を示す図である。 図40は、オイラー角(0°、94°、0°)のLiNbO上にCu電極が形成された構造とLiNbO基板上の溝にCu電極が埋め込まれた構造の電気機械結合係数とCu膜厚との関係を示す図である。 図41は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにNi電極が埋め込まれた構造のいろいろなデューティにおける共振と反共振周波数音速のNi膜厚依存性を示す図である。 図42は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにAu電極が埋め込まれた構造のデューティとAu膜厚の下限値との関係を示す図である。 図43は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにPt電極が埋め込まれた構造のデューティとPt膜厚の下限値との関係を示す図である。 図44は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにW電極が埋め込まれた構造のデューティとW膜厚の下限値との関係を示す図である。 図45は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにTa電極が埋め込まれた構造のデューティとTa膜厚の下限値との関係を示す図である。 図46は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにAg電極が埋め込まれた構造のデューティとAg膜厚の下限値との関係を示す図である。 図47は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにCu電極が埋め込まれた構造のデューティとCu膜厚の下限値との関係を示す図である。 図48は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにMo電極が埋め込まれた構造のデューティとMo膜厚の下限値との関係を示す図である。 図49は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにNi電極が埋め込まれた構造のデューティとNi膜厚の下限値との関係を示す図である。 図50は、オイラー角(0°、100°、0°)のLiNbOにAl電極が埋め込まれた構造のデューティとAl膜厚の上限値との関係を示す図である。 図51(a)は、本発明の変形例に係るチューナブルフィルタの回路図であり、(b)は、直列腕共振子S3を含む直列腕とインダクタンスL5を含む並列腕からなる回路がさらに縦続接続されている、本発明の他の変形例のチューナブルフィルタの回路図である。 図52は、従来のチューナブルフィルタを説明するための回路図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るチューナブルフィルタの回路図であり、(b)は、該チューナブルフィルタに用いられる弾性表面波共振子の模式的平面図であり、(c)は、(b)中のI−I線に沿う部分の正面断面図である。(d)は、(c)中のSiO膜が存在しない構造の正面断面図である。
図1(a)に示すように、チューナブルフィルタ1は、入力端子2と出力端子3とを有する。入力端子2と出力端子3とを結ぶ直列腕において、複数の直列腕共振子S1及びS2が互いに直列に接続されている。ここでは、直列腕共振子S1の入力側において、直列腕共振子S1に直列に可変コンデンサ4が接続されている。また、直列腕共振子S2の出力側においては、直列腕共振子S2に直列に可変コンデンサ5が接続されている。
直列腕共振子S1の入力側においては、直列腕とグラウンド電位とを結ぶ第1の並列腕が形成されている。第1の並列腕には、並列腕共振子P1が接続されている。第1の並列腕においては、並列腕共振子P1に直列に可変コンデンサ6が接続されている。また、直列腕共振子S1,S2間の接続点とグラウンド電位との間に、第2の並列腕が形成されている。第2の並列腕に第2の並列腕共振子P2が接続されており、並列腕共振子P2に直列に可変コンデンサ7が接続されている。さらに、直列腕共振子S2の出力側においては、第3の並列腕が、直列腕とグラウンド電位とを結ぶように形成されており、第3の並列腕に、並列腕共振子P3及び可変コンデンサ8が接続されている。可変コンデンサ8は、並列腕共振子P3に直列に接続されている。
上記直列腕共振子S1,S2及び並列腕共振子P1〜P3は、いずれも、弾性表面波共振子により形成されている。周知のように、ラダー型フィルタでは、直列腕共振子の共振周波数と、並列腕共振子の反共振周波数とにより通過帯域が形成される。上記可変コンデンサ4〜8を、直列腕共振子または並列腕共振子に直列に接続し、かつ該可変コンデンサ4〜8の静電容量を変化させることにより、直列腕及び並列腕における共振特性を変化させることができる。従って、特許文献1に記載のチューナブルフィルタと同様に、チューナブルフィルタ1の中心周波数を変化させることができる。
上記直列腕共振子S1,S2及び並列腕共振子P1〜P3は、弾性表面波共振子からなる。弾性表面波共振子の構造を、直列腕共振子S1を代表して説明する。図1(b)、(c)及び(d)に示すように、直列腕共振子S1を構成している弾性表面波共振子は、圧電基板11を有する。圧電基板11は、本実施形態では、15°YカットX伝搬のLiNbOからなる。すなわち、オイラー角で(0°,105°,0°)のLiNbO基板が圧電基板11として用いられている。
圧電基板11の上面11aには、凹部として複数本の溝11bが形成されている。この溝11b内に電極材料を充填することにより、IDT電極12が形成されている。図1(b)に示すように、本実施形態では、IDT電極12の弾性表面波伝搬方向両側に、反射器13,14が形成されている。従って、1ポート型弾性表面波共振子が構成されている。
反射器13,14もまた、圧電基板11の上面11a上に設けられた凹部、すなわち複数本の溝に電極材料を充填することにより形成されている。
図1(c)、(d)に示すように、上記IDT電極12の上面すなわち電極指部分の上面は、圧電基板11の上面11aと面一とされている。
従って、上記IDT電極12及び反射器13,14を形成した後に、圧電基板11の上面11aは平坦とされている。図1(c)の構造では、この圧電基板11の上面11aを覆うようにSiO膜15が形成されている。図1(d)の構造では、SiO膜を形成しない。
直列腕共振子S1を例にとり説明したが、直列腕共振子S2も同様に構成されている。また、直列腕共振子S1,S2は、共振周波数がチューナブルフィルタ1の通過帯域内に、反共振周波数が通過帯域よりも高域側の減衰域に設定されている。他方、並列腕共振子P1〜P3は、共振周波数が通過帯域よりも低域側の減衰域に、反共振周波数が通過帯域内に形成される。
本実施形態のチューナブルフィルタ1では、直列腕共振子S1,S2及び並列腕共振子P1〜P3が上記のような構造を有するため、弾性表面波共振子の電気機械結合係数kを高めることができ、それによって、比帯域幅を広げることが可能となる。加えて、SiO膜が成膜されているため、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくし、温度変化による特性の変化を小さくすることが可能となる。これを、図2〜図8を参照して説明する。
(第1の実験例)
図2は、15°YカットX伝搬のLiNbO基板、すなわちオイラー角で(0°,105°,0°)のLiNbO基板を用い、電極材料としてAlを用い、弾性表面波共振子の波長をλとしたときに、IDT電極12の膜厚H/λを0.17とし、SiO膜の膜厚h/λを0.22としたときの弾性表面波共振子のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。比較のために、SiO膜が形成されていないことを除いては、同様に形成された弾性表面波共振子のインピーダンス−周波数特性及び位相特性を図33に破線で示す。なお、図33において、対比を明らかにするために図2の特性を実線で再度示す。
図33から明らかなように、反共振点におけるインピーダンスの共振周波数におけるインピーダンスに対する比である山谷比は、SiO膜を形成しなかった場合には、57.5dBであったのに対し、SiO膜を形成した構造では、60.2dBと大きくすることが可能であった。さらに、周波数温度係数TCFについては、SiO膜を有しない場合には−120ppm/℃であったが、SiO膜の形成により、−10〜−30ppm/℃とその絶対値を小さくすることが可能であった。
従って、SiO膜の形成により電気機械結合係数kは多少小さくなるが、山谷比を大きくすることができることがわかる。加えて、この温度特性を改善することができることがわかる。
(第2の実験例)
次に、図3に示すチューナブルフィルタ21を形成し、可変コンデンサの静電容量の変化によるフィルタ特性の変化を調べた。図3に示すチューナブルフィルタ21では、入力端子22と出力端子23とを結ぶ直列腕において、直列腕共振子S1,S2が互いに直列に接続されている。そして、直列腕共振子S1の入力側において、直列腕共振子S1に直列に可変コンデンサC2が接続されている。また、直列腕共振子S1の入力側においては、直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕に、コンデンサC1が接続されている。
直列腕共振子S1及びS2間の接続点とグラウンド電位とを結ぶ第2の並列腕において、インダクタンスL1が接続されている。また、直列腕共振子S2の出力側においては、可変コンデンサC3が直列腕共振子S2に接続されている。さらに、出力端子3とグラウンド電位との間を結ぶ第3の並列腕にコンデンサC4が接続されている。なお、インダクタL1の代わりに容量を用いてもよく似た特性を示す。
ここでは、直列腕共振子S1,S2は、上記と同様に、15°YカットX伝搬、オイラー角で(0°,105°,0°)のLiNbO基板を用い、上面の溝に電極材料としてAlを埋め込み、規格化膜厚H/λが0.17のIDT電極及び反射器を形成した。なお、SiO膜は形成しなかった。また、可変コンデンサC2と可変コンデンサC3の静電容量を等しくした構造において、静電容量を図4のように、1pF、2pF、5pF、10pF、25pF、50pFまたは100pFと変化させ、フィルタ特性を測定した。
直列腕共振子S1,S2の静電容量については、IDT電極の電極指の対数あるいは交差幅を変化させることにより調整した。上記インダクタンスL1の値は12nHとした。
図4は、上記のようにして、コンデンサC1〜C4及び直列腕共振子S1,S2の静電容量を変化させた場合のフィルタ特性の変化を示す。図4から明らかなように、容量が1pFから100pFに変化していくにつれ、フィルタの中心周波数が2.21GHz付近から2.48GHz付近の間で変化すること、すなわち約11%変化することがわかる。よって、コンデンサC1〜C4の静電容量を変化させることにより、このような回路構成を有するフィルタの通過帯域を調整し得ることがわかる。後述するように、図3の入力端子22と出力端子23の間に容量を接続することにより2.53GHz以上の高周波の減衰量を改善することができる。
本実験例では、オイラー角(0°,105°,0°)のLiNbOを用いたが、本願発明者の実験によれば、(0°,80°〜130°,0°)の範囲のLiNbO基板を用いた場合、本実験例と同様の結果の得られることが確かめられた。
(第3の実験例)
オイラー角が(0°,126°,0°)のLiTaO基板を圧電基板として用い、電極材料としてAuを用い、圧電基板を覆うようにSiO膜を成膜し、種々の構造の弾性表面波共振子を作製した。弾性表面波共振子のIDT電極の電極指ピッチで定まる波長をλとしたときに、SiO膜の厚みhを波長λで規格化してなる規格化厚みh/λは0.3とした。用意した弾性表面波共振子としては、以下の第1〜第4の弾性表面波共振子A〜Dを用意した。
第1の弾性表面波共振子A:圧電基板の上面に電極を形成し、SiO膜をさらに形成した構造。SiO膜の上面には、電極が下方に位置している部分に下地の電極の厚みに相当する高さの凸部が形成されている。
第2の弾性表面波共振子B:SiO膜の上面の凸部が存在しないことを除いては第1の弾性表面波共振子Aと同様。SiO膜の上面は平坦化されている。
第3の弾性表面波共振子C:圧電基板の上面に設けられた溝に電極材料を充填することによりIDT電極及び反射器が形成されている構造。電極の上面と圧電基板の上面が面一とされている。SiO膜の上面には、電極が下方に存在する部分において、電極の厚みとほぼ等しい高さの凸部が形成されている構造。
第4の弾性表面波共振子D:SiO膜の上面に凸部が形成されておらず、SiO膜の上面が平坦とされていることを除いては、第3の弾性表面波共振子Cと同一の構造。
図5に、上記第1〜第4の弾性表面波共振子A〜Dにおいて、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.3のときの、電極の規格化膜厚H/λを変化させた場合の反射係数の変化を示す。また、図6は、上記第1〜第4の弾性表面波共振子において、電極の規格化膜厚H/λを変化させた場合の電気機械結合係数kの変化を示す図である。周知のように、SiO膜の周波数温度係数TCFは正の値を有し、LiTaO基板の周波数温度係数TCFは負の値を有する。従って、いずれの場合においても、SiO膜の成膜により、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくすることができ、温度特性を改善することが可能である。
もっとも、図5及び図6から明らかなように、SiO膜を形成した場合、第1の弾性表面波共振子A、第2の弾性表面波共振子B及び第3の弾性表面波共振子Cでは、電気機械結合係数kが小さくなり、IDT電極の規格化膜厚H/λが増加するにつれて電気機械結合係数kが小さくなることがわかる。
これに対して、第4のタイプの弾性表面波共振子Dでは、IDT電極の規格化膜厚を特定の範囲とすることにより、電気機械結合係数kを高め得ることがわかる。SiO膜の上面が平坦である第4のタイプの弾性表面波共振子Dでは、IDT電極の規格化膜厚H/λを0.01〜0.09とすることにより、電気機械結合係数kを効果的に高め得ることがわかる。
また、図5から明らかなように、第1〜第4のいずれのタイプの弾性表面波共振子A〜Dにおいても、IDT電極の膜厚が厚くなるにつれて、反射係数が高くなることがわかる。
第3〜第4の弾性表面波共振子C〜Dの結果を比較すれば、上面に凸部が設けられている第3の弾性表面波共振子Cにおいて、第4の弾性表面波共振子Dよりも、IDT電極の規格化膜厚が同じであれば、反射係数を高め得ることがわかる。従って、反射係数を高めるには、SiO膜の上面に凸部を形成することが望ましいことがわかる。
もっとも、反射係数は用途によりある程度(例えば0.02)以上あればよいのでIDT電極の膜厚のばらつきによる反射係数のばらつきを低めたり、広い帯域の共振子を構成する上では、SiO膜の上面が平坦化された第4のタイプの弾性表面波共振子Dが望ましいことがわかる。
上記のように、本実験例によれば、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaOの圧電基板の上面に設けられた溝にAuを埋め込み、IDT電極を形成し、SiO膜を形成した構造においては、SiO膜の表面が平坦である場合には、IDT電極の規格化膜厚H/λを0.01〜0.09とすることにより、電気機械結合係数を効果的に高め得ることがわかる。従って、比帯域幅を広げ得ることがわかる。よって、チューナブルフィルタの直列腕共振子や並列腕共振子に用いた場合、より一層効果的にチューナブルフィルタの周波数特性を調整し得ることがわかる。なお、Au以外の電極でも同じような結果が得られている。
(第4の実験例)
次に、オイラー角(0°,103°,0°)のLiNbO基板を圧電基板として用い、圧電基板の上面の溝に電極材料としてAuを充填することによりIDT電極及び反射器を形成した。さらに、圧電基板の上面にSiO膜を形成した。もっとも、SiO膜の上面に、IDT電極の厚みに等しい高さの凸部を形成した。すなわち、第3の実験例で作製した第3のタイプの弾性表面波共振子Cを形成した。
SiO膜の規格化膜厚h/λと、IDT電極の規格化膜厚H/λを変化させ、反射係数及び電気機械結合係数の変化を求めた。図7は、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.2、0.3または0.4の場合のIDT電極の規格化膜厚H/λの変化による反射係数の変化を示す図であり、図8は、電気機械結合係数kの変化を示す図である。
図7から明らかなように、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.2、0.3または0.4のいずれの場合においても、IDT電極の規格化膜厚H/λが大きくなるにつれ、反射係数は高められることがわかる。
他方、図8から明らかなように、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.2の場合には、IDT電極の規格化膜厚H/λが厚くなるにつれ電気機械結合係数kが低下していることがわかる。
これに対して、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.3や0.4の場合には、IDT電極の規格化膜厚H/λが増加するにつれ電気機械結合係数kが増加し、H/λがさらに増加すると、電気機械結合係数kが低下していく傾向にあることがわかる。すなわち、図8から明らかなように、SiO膜の上面に凸部が設けられている第3のタイプの弾性表面波共振子Cでは、SiO膜の規格化膜厚h/λを0.3以上とすることにより、IDT電極の規格化膜厚H/λを選択することにより、電気機械結合係数kを高め得る。
SiO膜の規格化膜厚h/λが0.2未満の場合には、IDT電極の規格化膜厚H/λを高めると、反射係数は高くなるものの、電気機械結合係数kは低くなり、反射係数と電気機械結合係数kとはトレードオフの関係にある。しかし、用途により反射係数はある程度以上の値であればよく、さほど大きい必要はない。
しかしながら、SiO膜の規格化膜厚h/λが0.3以上の場合には、IDT電極の規格化膜厚H/λを選択することにより、反射係数と電気機械結合係数kの双方を適度に大きくし得ることがわかる。よって、LiNbOの上面に溝を形成し、該溝に電極を形成し、さらにSiO膜を形成した構造において、SiO膜の上面に凸部が形成されている場合には、SiO膜の規格化膜厚h/λは0.2以上でよい。
本実験例では、オイラー角(0°,103°,0°)のLiNbOの圧電基板の上面に設けられた溝にAuを充填し、SiO膜を成膜し、さらにSiO膜の上面に凸部が形成されている構造を採用することにより、上述した通り、電気機械結合係数kと反射係数の双方を高めることができるので、前述したチューナブルフィルタの直列腕共振子または並列腕共振子として用いた場合、チューナブルフィルタの温度特性を改善し得るだけでなく、電気機械結合係数の向上により、帯域幅をより一層効果的に調整し得ることがわかる。
(第5の実験例)
上記第3,第4の実験例では、それぞれ、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaOまたは(0°,103°,0°)のLiNbOを用いたが、本願発明者の実験によれば、LiTaOについては、(0°,85°〜150°,0°)のLiTaOを用いた場合においても同様の結果の得られることが確かめられた。
また、LiNbOについては、(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOを用いた場合においても同様の結果の得られることが確かめられた。
これを図9〜図16を参照して説明する。オイラー角(0°,θ,0°)のLiNbO基板の上面に溝を形成し、該溝内に金属を充填してIDT電極を形成し、さらにSiO膜を形成し、第3の実験例における第4の弾性表面波共振子Dと同様の構造を得た。また、比較のために、(0°,θ,0°)のLiNbO基板上に、電極を形成し、SiO膜をさらに形成し、SiO膜の上面が平坦となるように形成し、前述の弾性表面波共振子Bと同一構造を有する比較例の弾性表面波共振子を作製した。なお、SiO膜の規格化膜厚h/λは、電極が存在しない付近において0.25とした。
上記2種類の弾性表面波共振子において、Ptを電極材料として用い、電極の規格化膜厚H/λを0.04または0.08とし、オイラー角のθによる反射係数及び電気機械結合係数の変化を測定した。図9及び図10に結果を示す。
図9及び図10から明らかなように、電極材料としてPtを用いた場合、本発明の実施形態に相当する弾性表面波共振子では、LiNbOのオイラー角が(0°,80°〜130°,0°)の範囲であれば、十分大きな電気機械結合係数を得られることがわかる。次に、電極材料PtからAu、CuまたはAlに変更し、同様にして、オイラー角のθと反射係数及び電気機械結合係数との関係を求めた。結果を図11〜図16に示す。図11〜図16から明らかなように、電極材料としてAu、CuまたはAlを用いた場合にも、同様に、LiNbOのオイラー角のθが、80°〜130°の範囲であれば、第4の実験例と同様に、大きな電気機械結合係数の得られることが確かめられた。また弾性表面波共振子Bと同一構造より弾性表面波共振子Dと同一構造の方がいずれのオイラー角でも大きな電気機械結合係数が得られることがわかった。
同様に、オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO基板の上面に溝を形成し、該溝内に金属を充填してIDT電極を形成し、さらにSiO膜を形成し、第3の実験例における第4のタイプの弾性表面波共振子Dと同様の構造を得た。また、比較のために、(0°,θ,0°)のLiTaO基板上に、電極を形成し、SiO膜を、SiO膜の上面が平坦となるように形成し、前述の弾性表面波共振子Bと同一構造を有する比較例の弾性表面波共振子を作製した。なお、SiO膜の規格化膜厚h/λは、電極が存在しない付近において0.25とした。
上記2種類の弾性表面波共振子において、Ptを電極材料として用い、電極の規格化膜厚H/λを0.02、0.04または0.08とし、オイラー角のθによる反射係数及び電気機械結合係数の変化を測定した。図17及び図18に結果を示す。従って、LiTaOについては、オイラー角が(0°,85°〜150°,0°)のLiTaOを用いた場合に、同様に電気機械結合係数を高め、帯域幅を効果的に調整し得ることが確かめられた。また、本願発明者の実験によれば、電極材料PtからAu、CuまたはAlに変更した場合であっても、同様のオイラー角のθの範囲で、同様に電気機械結合係数を高め得ることが確かめられた。また溝に電極が埋め込まれた構造の方が大きな電気機械結合係数を示している。
なお、LiTaO及びLiNbOのオイラー角表示において、(0°,θ,0°)に対し、(0°±5°,θ,0°±5°)の範囲であれば、すなわちオイラー角のφ及びψについては、0°±5°であれば、オイラー角φ及びψが0°の場合と同様の結果が得られることが確かめられている。従って、φ及びψが0°とは、0°±5°の範囲を許容するものであることを指摘しておく。
(第6の実験例)
ラダー型フィルタや共振子型フィルタで用いられる弾性表面波共振子では、弾性表面波共振子の共振周波数と反共振周波数に相当する音速の間に圧電基板の遅い横波音速が存在しない場合には、良好な反共振特性が得られる。弾性表面波共振子の共振周波数と反共振周波数に相当する音速の間に圧電基板の遅い横波音速が存在する場合には、共振周波数と反共振周波数の間において遅い横波に相当する周波数のスプリアスが生じる。そのため良好な反共振特性が得られない。
図19は、YカットX伝搬のLiNbO基板の上面に溝を形成し、該溝内にCuを充填してIDT電極が形成されている弾性表面波共振子のインピーダンス周波数特性及び位相周波数特性を示す図である。図19では、溝の深さすなわちCuからなるIDT電極の厚みH/λが波長λの6%=0.06及び10%=0.1の場合の結果を示す。なお、図19の横軸は周波数ではなく弾性表面波の周波数と波長λの積である音速で表す。
図19から明らかなように、CuからなるIDT電極の厚みH/λが0.06の場合、反共振周波数に相当する音速は約4200m/秒であり、LiNbOの遅いバルク波横波音速4060m/秒より速いため、共振周波数と反共振周波数の間に遅い横波が存在し、反共振周波数付近におけるインピーダンス特性曲線が鋭くならずなまっている。
これに対して、CuからなるIDT電極の厚みH/λが0.1の場合には、反共振周波数に相当する音速は約3900m/秒であり、LiNbOの遅いバルク波横波音速4060m/秒よりも遅いため、反共振周波数付近のインピーダンス特性が急峻であり、良好な特性が得られている。
これは後述の図27からも説明できる。図27はデューティ0.5のCu電極が(0°、100°、0°)LiNbO上に埋め込まれた構造の音速のCu膜厚依存性を示している。図中faは反共振周波数に相当する有限要素法で解析された電極オープン時のストップバンド上端の周波数、frは共振周波数に相当する電極短絡時のストップバンドの下端の周波数である。図より、Cu電極規格化膜厚H/λが0.01〜0.09の範囲では遅いバルク横波音速が共振周波数と反共振周波数の間に存在し、特性がなまるあるいはスプリアスが生じて良好な周波数特性が得られないことを示している。一方、図39、40にはCu電極が(0°、94°、0°)LiNbO上に存在する構造の音速及び電気機械結合係数のCu電極厚み依存性を示している。図39に示すようにCu電極がLiNbO基板上に存在する構造ではCu電極厚みH/λが0.04以上で遅い横波音速が共振と反共振音速の範囲外になるが、図40に示すように電気機械結合係数がCu電極が埋め込まれた構造の電気機械結合係数より小さいという欠点がある。図27と図39において、オイラー角のθが多少異なるが、オイラー角θ=94°とθ=100°とではほとんど同じ値を示す。
共振及び反共振周波数における音速は、IDT電極を構成する材料及びIDT電極の厚みだけでなく、IDT電極のデューティによってもコントロールすることができる。図20は、図19の場合と同じ構造において、ただしCuからなるIDT電極の厚みH/λは0.1とし、デューティを0.4、0.45、0.5、0.55または0.6とした場合の各インピーダンス特性及び位相特性を示す図である。
図20から明らかなように、デューティが0.4の場合には、反共振周波数における音速は、遅いバルク波横波音速よりも速い。他方、デューティが0.45、0.50、0.55及び0.6の場合には、反共振周波数における音速は遅いバルク波横波音速よりも遅くなり、反共振周波数付近のインピーダンス特性は急峻となる。
図21は、図19と同じ構造において、ただしCuからなるIDT電極のデューティを0.6とした場合のインピーダンス特性及び位相特性を示す図である。図19に示したように、CuからなるIDT電極の厚みH/λが0.06の場合、デューティが0.5であると、反共振周波数の音速は上記バルク波横波音速よりも速かった。これに対して、図21に示すように、CuからなるIDT電極の厚みH/λが波長の6%すなわち0.06であっても、デューティが0.6になると、反共振周波数の音速はバルク波横波音速よりも遅くすることができる。このように、IDT電極を構成する金属の種類、及び厚み以外に、デューティを大きくすることにより、反共振周波数の音速を、バルク波横波音速よりも遅くすることができる。従って、Cu厚みH/λが0.1ではデューティを0.45以上、Cu厚みH/λが0.06ではデューティを0.06以上とすることが望ましい。デューティは、0.87以下であることが好ましい。デューティが0.87より大きすぎると、電極が短絡するおそれがある。共振子構造では、有限要素法により、電極オープンのときのストップバンドの上端、下端、電極短絡時のストップバンドの上端及び下端の各周波数もしくは音速を計算することができる。この4つの音速の内、2つの音速がほぼ一致し、残りの2つの音速の内速い方の音速が反共振周波数の音速に相当し、遅い方の音速が共振周波数における音速に相当する。そのため、上述のように反共振周波数におけるインピーダンス特性が急峻な良好な共振子を得るには、共振と反共振周波数に相当するストップバンドの端部に相当する音速間に、バルク波横波音速が存在しないようにすればよい。従って、良好な特性のチューナブルフィルタを得るには、上記条件を満たす共振子を用いることが望ましい。
もっとも、チューナブルフィルタでは、反共振周波数より低い周波数を用いるため、実用上、反共振周波数よりも周波数が10%程度低い部分において共振特性が鈍くなっていてもよい。すなわち、反共振周波数における音速は、バルク波横波音速よりも10%程度速い、あるいは共振周波数の音速はバルク波横波音速より遅くても差し支えない。
図22〜図28及び図41は、10°YカットX伝搬すなわちオイラー角で(0°,100°,0°)のLiNbOの上面の溝にAu、Pt、W、Ta、Ag、Cu、MoまたはNiをそれぞれ埋め込んでIDT電極を形成した図1(d)の構造の弾性表面波装置におけるIDT電極の規格化膜厚H/λと、電極オープン時のストップバンドの上端、及び下端、並びに電極短絡時のストップバンドの上端及び下端における各弾性表面波の音速との関係を示す図である。なお、IDT電極のデューティはいずれも0.5である。図22〜図28において、共振周波数に相当する音速をfr、反共振周波数に相当する音速をfaの記号を付して示す。なお、4060m/秒の破線は、バルク波横波音速を示す。
図22〜図28及び図41から明らかなように、Au、Pt、W、Ta、Ag、Cu、MoまたはNiからなる電極の規格化厚みH/λは、好ましくは、それぞれ0.022以上、0.027以上、0.037以上、0.04以上、0.06以上、0.09以上、0.10以上または0.14以上のとき、良好な共振特性を示すことがわかる。実用上差し支えない範囲は、それより10%薄い範囲であり、従って、それぞれ、0.02以上、0.024以上、0.033以上、0.036以上、0.051以上、0.081以上、0.09以上及び0.126以上のとき、実用上差し支えない特性が得られる。
なお、上記IDT電極の規格化厚みH/λの上限については、図22〜図28、図41では、0.14あるいは0.2までの範囲の結果が示されているが、0.14を越えて0.3までほとんど同じ値を示し、すべて反共振周波数faは横波音速以下である。IDT電極の厚みH/λが0.30を越えると、これらの高密度金属からなる電極では加工しにくくなるおそれがある。
なお、IDT電極のデューティが大きくなると、前述の図20、21のようにIDT電極の膜厚は薄くともよい。例えば、図41よりNiからなるIDT電極において、デューティが0.65の場合、望ましくは、IDT電極の厚みH/λは0.125以上、実用上は0.112以上であればよく、デューティ0.8の場合IDT電極厚みH/λは0.085以上、実用上は0.077以上あればよい。デューティに対する膜厚の下限値は図42〜49に示すようになる。デューティは0.15〜0.85が好ましい。デューティは、より好ましくは0.5より大きいことが好ましい。デューティが0.15〜0.85または0.5より大きいときのデューティと、電極膜厚下限とは、図42〜49及び前述した表1に示す値であることが好ましく、上限は表1に示す値であることが好ましく、上限は表1に示す値であることが好ましい。もっとも、膜厚上限は、実用上は上述のように10%薄い膜厚でもよい。また、LiNbO基板のカット角が変化しても音速変化量は同じであるため、IDT電極の望ましい厚みはほぼ同じである。
もっとも、AlからなるIDT電極だけは例外的な振る舞いを示す。図22から図28において示した各材料からなるIDT電極では、共振周波数frに相当する音速及び反共振周波数faに相当する音速は、IDT電極の厚みが変化すると、バルク波横波音速よりも速い領域から遅い領域に急激に変化する。これに対して、図29に示すように、AlからなるIDT電極を用いた場合、共振周波数に相当する音速及び反共振周波数に相当する音速は、電極の厚みの如何にかかわらず、バルク波横波音速よりも速い。従って、共振と反共振音速の間にバルク横波音速がないため共振周波数と反共振周波数の間に特性の劣化が生じないと考えられる。図33の破線は、上記と同様の構造であって、ただしAlからなるIDT電極を用い、その厚みH/λが0.17の場合のインピーダンス特性及び位相特性を示す。図33から明らかなように、反共振周波数においてインピーダンス特性曲線が比較的鋭く、良好な特性を示すことがわかる。すなわち、共振周波数における音速及び反共振周波数における音速の間にバルク波横波音速が存在しないため、良好な特性の得られることがわかる。
AlからなるIDT電極を用いた場合の電極の好ましい膜厚H/λの範囲は、0.04以上、0.33以下である。0.04は、共振周波数frに相当する音速が電極短絡時のストップバンドの下端における音速からストップバンドの上端の音速に変化するAlの膜厚H/λである。0.33は、図示していないが、共振周波数frに相当する音速及び反共振周波数faに相当する音速の双方がバルク波横波音速よりも速いAl膜厚である。デューティが0.15〜0.85の範囲かつ共振周波数frに相当する音速及び反共振周波数faに相当する音速の双方がバルク波横波音速よりも速い範囲がより好ましい。加工上、デューティが小さくかつ深い溝よりも、デューティが大きくかつ浅い溝の方が作りやすいので、デューティは0.5を超えるほうが望ましい。
Au,Pt,W,Ta,Ag,Cu,MoまたはNiの場合は、膜厚により急激に音速が低下するがfrとfaの音速の間に遅い横波が存在しないときは良好な共振特性を示す。従って、電極が基板に埋め込まれた構造では、Au,Pt,WまたはTaからなる電極では規格化膜厚H/λは0.006以下、Ag電極では0.01以下、Cu,MoまたはNiでは0.013以下が好ましく、それによって良好な特性が得られる。
従って、図22〜図28の結果から、デューティが0.5よりも大きい場合、各金属材料を用いた場合のIDT電極の好ましい厚みの範囲は下記の表に示す範囲となる。
Figure 0005420564
またより好ましい範囲は、下記の表に示す範囲となる。
Figure 0005420564
図30〜図32は、オイラー角(0°,100°,0°)のLiNbO基板上に設けられた溝にAlを充填してなる弾性表面波装置において、AlからなるIDT電極のデューティが、それぞれ、0.45、0.55及び0.85の場合のIDT電極を形成しているAlからなる金属膜の膜厚H/λと弾性表面波の音速との関係を示す図である。図30〜図32では、電極短絡時のストップバンドの上端における共振周波数に相当する音速の結果を示す。反共振周波数は共振周波数より高い。従って、図30〜図32は、共振周波数がバルク横波音速より速いとき、共振周波数と反共振周波数との間においてスプリアスが出ない十分な条件を示す。
一般に共振及び反共振周波数に相当する音速の双方がバルク横波音速以下でないと漏洩表面波のままなので良好な特性が得られないと考えられていたが、共振と反共振周波数間にバルク横波音速がなければ良好な共振特性を示すことを初めて明らかにした。
図30から明らかなように、デューティが0.45の場合、AlからなるIDT電極の膜厚が規格化膜厚0.37すなわち0.37λの厚み付近で共振周波数frに相当する音速は約4060m/秒であることがわかる。同様に、図31に示すように、デューティが0.55の場合には、AlからなるIDT電極の規格化膜厚H/λが0.25のときに、図32に示すようにデューティが0.85の場合AlからなるIDT電極の規格化膜厚H/λが0.065のとき、弾性表面波の音速がバルク横波音速4060m/秒であることがわかる。
図30〜図32から明らかなように、AlからなるIDT電極を用いた場合、IDT電極の厚みH/λが0.04以上、0.37以下の場合、デューティは0.45以下でもよいことがわかる。また、IDT電極の規格化膜厚H/λが0.04〜0.029の場合、デューティは0.55でもよく、すなわち0.55以上であってもよい。
図50にデューティとAl電極膜厚の上限値を示す。この式はデューティX,Al厚みYとするとY=−0.9X+0.766の式を満たす。よってAl電極膜厚H/λは0.04以上で、上限はこの式を満たす値以下である。
なお、デューティの上限は、0.85であることが好ましい。0.85を越えると、電極形成が困難となる。
従って、図29〜32、図50からLiNbO基板にAlまたはAl合金が埋め込まれたIDT電極の好ましい膜厚の範囲は下記の表に示す範囲となる。
Figure 0005420564
またより好ましい範囲は、下記の表に示す範囲となる。
Figure 0005420564
Au,Pt,W,Ta,Ag,Cu,MoまたはNiからなる電極をLN基板に埋め込んだ場合も、共振周波数及び反共振周波数に相当する音速の双方が遅い横波音速より速い場合には、遅い横波によるスプリアスのない共振子が得られる。その場合、Au,Pt,WまたはTaからなる電極の規格化膜厚H/λは0.006以下、Agからなる電極では0.01以下、Cu,MoまたはNiからなる電極では0.013以下が好ましい。それによって、スプリアスの少ない良好な特性が得られる。
図34は、本発明の他の実施形態に係るチューナブルフィルタの回路図である。図34に示すチューナブルフィルタ31では、入力端子32と出力端子33とを結ぶ直列腕において、直列腕共振子S1,S2が互いに直列に接続されている。直列腕共振子S1の入力側において、直列腕共振子S1に直列に可変コンデンサC2が接続されている。また、直列腕共振子S1の入力側においては、直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕にコンデンサC1が設けられている。
直列腕共振子S1及びS2間の接続点とグラウンド電位とを結ぶ第2の並列腕においてインダクタンスL4が挿入されている。また、直列腕共振子S2の出力側においては可変コンデンサC6が接続されている。さらに、出力端子3とグラウンド電位との間を結ぶ第3の並列腕にコンデンサC7が接続されている。
加えて、チューナブルフィルタ31では、入力端子32と出力端子33との間を結ぶ直列腕に並列にコンデンサCfが挿入されている。
このコンデンサCfが挿入されていることを除けば、図34のチューナブルフィルタ31は図3のチューナブルフィルタ21と同様である。
図36の実線で示した特性、より具体的にはCuからなるIDT電極の厚みH/λが0.1であり、デューティが0.6である弾性表面波共振子を上記直列腕共振子S1,S2として用い、チューナブルフィルタ31を構成した。この場合のチューナブルフィルタ31の特性を図35に示す。図35から明らかなように、コンデンサC2及びC6の静電容量を等しくし、これらの静電容量を0.5pF、0.75pF、1.0pFと高めることにより、中心周波数を1860MHz、1813MHz、1750MHzと変化させ得ることがわかる。すなわち、1813MHzを基準とすると、±3%の範囲内で中心周波数を変化させ得ることがわかる。この場合、コンデンサC1、インダクタンスL1及びコンデンサC4などのグラウンド電位に繋がる素子については、そのインピーダンスは20〜100Ωの範囲内とすれば、損失を小さくすることができる。
すなわち、グラウンド電位に接続される並列腕に挿入されている素子のインピーダンスを20Ω〜100Ωの範囲内とすることが望ましい。この範囲内のインピーダンス値の場合、コンデンサC1,C4またはインダクタンスL1の前後に接続される回路とのインピーダンス整合が良好となる。よって、挿入損失を小さくすることができる。
図37は、本発明の第3の実施形態に係るチューナブルフィルタを示す回路図である。図37のチューナブルフィルタ41は、図35に示したチューナブルフィルタ21とほぼ同様である。異なるところは、直列腕共振子S1に並列に接続された可変コンデンサCP1及び直列腕共振子S2に並列に接続された可変コンデンサCP2が備えられていることにある。
すなわち、直列腕共振子S1,S2に直列に接続されている可変コンデンサC2,C3が本発明における第1の可変コンデンサである。また、直列腕共振子S1及びS2にそれぞれ並列に接続されている可変コンデンサCP1,CP2が、本発明における第2の可変コンデンサである。本実施形態では、全ての直列腕共振子S1,S2に、それぞれ、第1の可変コンデンサC2,C3及び第2の可変コンデンサCP1,CP2がそれぞれ接続されている。もっとも、本発明においては、直列腕に設けられている直列腕共振子としての複数の弾性表面波共振子において、少なくとも1つの弾性表面波共振子に直列に第1の可変コンデンサが接続されておればよい。同様に、少なくとも1つの該弾性表面波共振子に、並列に第2の可変コンデンサが接続されておればよい。またインダクタンスL4の代わりにコンデンサを用いてもよい。
このチューナブルフィルタ41では、通過帯域幅を変化させずかつ通過帯域よりも高域側における減衰量を劣化させることなく、中心周波数を変化させることができる。図36及び図38を参照してこれを説明する。図36の実線は、LiNbO基板上の溝に金属を充填した本発明の弾性表面波装置の一例のインピーダンス−周波数特性を示し、破線はLiNbO上に電極が形成されている比較のための弾性表面波装置のインピーダンス特性を示す。破線で示す特性に比べて実線で示す特性では共振反共振周波数間の帯域が広いという利点があるのがわかる。
上記チューナブルフィルタ41において、直列腕共振子S1,S2として上記共振特性を有する埋込型IDT電極を有する弾性表面波装置を用いた場合、可変コンデンサC2と可変コンデンサC3との容量を等しくし、可変コンデンサCP1と可変コンデンサCP2との容量を等しくした構造において、静電容量を図38に示すように変化させた場合の周波数特性を図38に示す。
図38から明らかなように、C2=0.5pF及びCP1=0(CP1を接続しない)、C2=0.75pFかつCP1=1pF並びに、C2=1.0pFかつCP1=3pFと変化させた場合、中心周波数を1858MHz、1798MHz及び1733MHzと周波数を7%変化させ得ることがわかる。なお、コンデンサC1、C4の静電容量が2.5pFである場合のインピーダンス値は1800MHzにおいて35Ωとなり、外部からのインピーダンス50Ωとほぼ整合するので、挿入損失を小さくすることができる。また、上記インダクタンスL4(インダクタンス値4.5nH)の1800MHz付近におけるインピーダンスは45Ωである。
図37は、前述した本発明の第3の実施形態に係るチューナブルフィルタの回路図であるが、可変コンデンサCP1と直列腕共振子S1との並列接続回路に、可変コンデンサC2が直列接続されている。同様に、可変コンデンサCP2と直列腕共振子S2との並列接続回路に、可変コンデンサC3が直列接続されている。
図51(a)の変形例に示すように、直列腕共振子S1と可変コンデンサC2との直列接続回路に、可変コンデンサCP1,が並列接続されてもよい。同様に直列腕共振子S2と可変コンデンサC3との直列接続回路に、可変コンデンサCP2が並列接続されていてもよい。
図37では直列腕共振子S1,S2を直列腕に有するチューナブルフィルタを示したが、図51(b)の他の変形例に示すように直列腕共振子S3を含む直列腕とインダクタンスL5を含む並列腕とからなる回路がさらに縦続接続されてもよい。S1,S2,S3に並列あるいは直列に可変コンデンサが接続されているが、一部が削除されてもよい。またインダクタンスL4はコンデンサであってもよい。
上述した各実験例では、弾性表面波共振子及び弾性表面波共振子に直列に可変コンデンサが接続されているチューナブルフィルタにつき説明したが、本発明は、チューナブルフィルタに用いられる弾性表面波共振子に特徴を有するものである。従って、チューナブルフィルタにおける回路構成は特に限定されるものではない。すなわち、弾性表面波共振子に直列及び/または並列に可変コンデンサが接続されているチューナブルフィルタ一般に本発明を適用することができる。
また、可変コンデンサの構造についても特に限定されず、機械的あるいは電気的に静電容量を変化させ得る適宜の可変コンデンサを用いることができる。
1…チューナブルフィルタ
2…入力端子
3…出力端子
4〜8…可変コンデンサ
11…圧電基板
11a…上面
11b…溝
12…IDT電極
12a,12b…くし歯電極
13,14…反射器
15…SiO
21…チューナブルフィルタ
22…入力端子
23…出力端子
31…チューナブルフィルタ
32…入力端子
33…出力端子
41…チューナブルフィルタ
C1,C4,C7…コンデンサ
C2,C3,C6…可変コンデンサ
Cf…第3のコンデンサ
CP1,CP2…可変コンデンサ
L1,L4,L5…インダクタンス
P1〜P3…並列腕共振子
S1〜S3…直列腕共振子
S11,S12…直列腕共振子回路部

Claims (6)

  1. オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、
    Au、Pt、Ta、Ag、Mo、及びNiからなる群から選択された金属が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、共振周波数と反共振周波数との間の周波数域において横波が生じないように、弾性表面波の波長をλとした場合、IDT電極を構成している金属と、電極膜厚の下限とデューティとの関係が下記の表1で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表1に示す各値とされており、デューティが0.15〜0.85にされた弾性表面波共振子と、
    前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備えるチューナブルフィルタ。
    Figure 0005420564
  2. オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、
    Au、Pt、Ta、Ag、Mo、及びNiからなる群から選択された金属が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、共振周波数と反共振周波数との間の周波数域において横波が生じないように、弾性表面波の波長をλとした場合、IDT電極を構成している金属と、電極膜厚の下限とデューティとの関係が下記の表2で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表2に示す各値とされており、デューティが0.5より大きくされた弾性表面波共振子と、
    前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備えるチューナブルフィルタ。
    Figure 0005420564
  3. IDT電極を構成している金属と、電極膜厚とデューティとの関係が下記の表3で示す関係とされており、電極膜厚上限が下記の表3に示す各値とされている、請求項1または2に記載のチューナブルフィルタ。
    Figure 0005420564
  4. オイラー角(0°,80°〜130°,0°)のLiNbOからなり、上面に凹部が形成された圧電基板と、
    Au、Pt、Ta、Ag、Mo、及びNiからなる群から選択された金属が前記凹部に埋め込まれたIDT電極とを有しており、共振周波数と反共振周波数との間の周波数域において横波が生じないように、弾性表面波の波長をλとした場合、Au、PtまたはTaからなる電極厚みH/λが0.006以下、Agからなる電極厚みH/λが0.01以下、MoまたはNiからなる電極厚みH/λが0.013以下に構成された弾性表面波共振子と、
    前記弾性表面波共振子に接続された可変コンデンサとを備えるチューナブルフィルタ。
  5. 前記弾性表面波共振子として複数の弾性表面波共振子を有し、該複数の弾性表面波共振子が入力端子と出力端子との間で直列に接続されており、
    前記可変コンデンサとして、第1,第2の可変コンデンサを有し、第1の可変コンデンサが前記複数の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子に直列に接続されており、前記第2の可変コンデンサが、前記複数の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子に並列に接続されており、
    複数の弾性表面波共振子の接続点とグラウンドとの間に接続されたインダクタンスと、 入力端子とグラウンド間及び出力端子とグラウンド間に接続された整合コンデンサとをさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチューナブルフィルタ。
  6. 整合コンデンサ及びインダクタンスのインピーダンスが20〜100Ωである、請求項5に記載のチューナブルフィルタ。
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