JP5420213B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、主としてスチールベルトからなるリングの耐摩耗性や疲労特性等を改善することを目的とした窒化処理等の熱処理を行なう際に用いられる熱処理装置に関するものである。
スチールベルトを無端状に接合してなるリングは、特に無段変速機用としての使用が拡大を続けており、変速比を無段階で変更できる無段変速機は変速比、駆動力伝達の最適化が図れ、燃費向上に効果的であることから今後も積極的に自動車への搭載が図られていくと考えられる。
この無段変速機用スチールベルトは、大きい引張りと曲げ応力が繰り返し負荷されるため、現在は時効処理によって非常に高い引張り強度を発揮するマルエージング鋼が材料として使用され、かつその表層部に窒化層を形成させて耐摩耗性を付与するとともに、表層部に圧縮残留応力を付与することによって疲労強度を向上させることが行なわれている。このような方法としては、例えば、特許文献1、2、3に開示されているような処理方法が提案され、一部は既に実用化されている。
一方、上述したマルエージング鋼は、時効処理によってNiTi、NiAl等の金属間化合物を微細析出させ、非常に高い引張強度を発揮する材料であるため、鋼材中にTiやAlが含有されている。これらの元素は、疲労強度低下の原因となる介在物を形成しやすく、このような介在物の形成を極力抑制するために高真空での溶解を行なう必要がある。したがって、一般鋼に比べて生産性も低く、非常に高価な材料となっている。このため、例えば、特許文献4、5、6、7に開示されているように、マルエージング鋼に替わる新材料によるリングの開発を目的とした報告も多くなされている。
一方、特許文献8には、それらの熱処理を連続的に短時間で実施するための熱処理方法および装置について開示されている。また、特許文献9には、マルエージング鋼製のスチールベルトによるリングの窒化処理を行なうための連続炉について開示されている。
特許第3439132号公報 特許第3630299号公報 特開2004−43962号公報 特開平11−200010号公報 特許第3421265号公報 特開2006−57136号公報 特開2007−70696号公報 特許第3836296号公報 特許第3986995号公報
特許文献8は、マルエージング鋼製スチールベルトの時効処理および窒化処理を連続的に行う処理方法が開示されているが、連続炉でありながら、各処理室で処理に必要な時間の均等化等が考慮されておらず、生産性の高い装置ではない。また、単純に、時効と窒化を行うだけの装置に過ぎず、窒化処理層の疲労特性を向上させる熱処理を行いうるものではない。
特許文献9は、マルエージング鋼製スチールベルトの窒化処理を行なうための連続炉に関するものであるが、時効処理後のスチールベルトを窒化処理するものであり、時効処理と窒化処理を連続して実施するものではない。また、ハロゲン化物ガスを使用する予熱室とアンモニアガスを使用する窒化処理室とが併設されており(図2)、両室間でガスが混入すると危険である。このため、いわゆる連続操業を行なう際に、予熱室でのハロゲン化処理と窒化処理室での窒化処理とを同時に処理することができず、結果的に生産性が悪くなるという問題がある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、スチールベルトからなるリングの時効処理および窒化処理を連続的に実施して生産性にも優れた熱処理装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の熱処理装置は、熱処理用治具にスチールベルトからなるリングを保持した状態で時効処理とフッ化処理を行う時効処理室と、
上記フッ化処理が行われた上記リングを窒化処理する窒化処理室と、
上記時効処理室と窒化処理室との間に配置され、時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するための中間室と、
上記熱処理用治具への上記リングの保持状態を維持したまま時効処理室から中間室、窒化処理室への搬送を行なう搬送手段とを備え、
上記熱処理用治具は、雰囲気ガスを流通させるための開口が形成されたベースプレートと、横方向に配置されるリングを外周側から保持する複数の保持部材が上記ベースプレートに対して垂直となるように取り付けられて構成され、
上記熱処理用治具は、上記保持部材における少なくともリング端部と接触することになる部分の表層部を構成する材料が、窒化処理を行なっても表面硬度がHv800を超えない材料であることを要旨とする。
本発明は、時効処理とフッ化処理を行う時効処理室と、上記フッ化処理後に窒化処理する窒化処理室と、上記時効処理室と窒化処理室との間に配置されて時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するための中間室とを備えている。このように、窒化処理の前処理としてのフッ化処理と時効処理とを同じ時効処理室で行い、フッ化後の窒化処理を上記時効処理室とは別の窒化処理室で行うことにより、フッ化処理/時効処理と、窒化処理とを並行して処理することが可能となる。しかも、上記中間室により時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するため、フッ化ガスと窒化ガスが混入して不要な反応を起こす危険が回避される。このように、時効、フッ化、窒化という処理を連続して行う場合のタクトタイムの調整が可能となり、生産性を大幅に向上させることが可能となる。
また、スチールベルトからなるリングにおける窒化処理層の疲労特性を向上させる熱処理を行い、しかもその生産性を大幅に向上させることが可能となる。
また、上記熱処理用治具は、上記保持部材における少なくともリング端部と接触することになる部分の表層部を構成する材料が、窒化処理を行なっても表面硬度がHv800を超えない材料であるため、リング端部と接触することになる部分の表面に硬度の上昇が起こらない材料を使用することで、リング端部の傷つきを防止できる。特にリングの取り外し時の傷発生を防止する。これにより、リングの幅方向の端部に、使用時に破壊の起点となりやすい傷付を防止し、リングの信頼性を向上させる。
本発明の熱処理装置では、例えば、スチールベルトからなるリングの熱処理を、横方向に配置されるリングを外周側から保持する保持部材がリングの周方向において少なくとも3箇所に存在し、上記保持部材は、上記横方向に配置されるリングの下側に位置する端部と接触する第1の傾斜部を備えた熱処理用治具で行うことができる。
このようにすることにより、横方向に配置されるリングが、リングの周方向において少なくとも3箇所に存在する保持部材の内側において外周側から保持されるため、熱処理時のリングの変形が極限まで防止され、炉内攪拌ファンによって生ずる風圧によってもリングの脱落やリングに傷がつくような揺れを起こしにくい状態で熱処理を行うことができる。これにより、使用に支障のあるレベルの変形やキズ付きを起こすことなく熱処理を行なうことができる。このように、時効処理の際の変形やキズ付きの問題が解消され、時効処理において良好に使用することができる。
また、上記リングは、横方向に配置されるリングの下側に位置する端部が第1の傾斜部に接触して保持される。このため、リングの幅方向の下側の端部が点接触で支えられて保持される。また、例えば、同じ治具に多数のリングを取り付けたり直径の異なるリングを取り付けたりしたときでも、各リングは概ね同心円に配置される。このため、雰囲気ガスの流通を阻害せず、保持部材との接触部と非接触部とのガスとの接触機会や温度のムラを極限まで小さくすることができる。これにより、窒化処理の際の処理の不均一性の問題を解消し、窒化処理においても良好に使用することができる。
このように、時効処理における変形やキズ付きの問題を解消するとともに、窒化処理における処理の不均一性の問題も解消し、時効処理と窒化処理の双方で良好に使用することができる。したがって、この熱処理用治具にリングを取り付けて時効処理を行い、そのまま治具を付け替えることなく、上記熱処理用治具へのリングの保持状態を維持したまま窒化処理を行なうことができ、時効処理から窒化処理への連続熱処理を同じ熱処理用治具で実現することができるようになるのである。
また、本発明の熱処理装置は、上記熱処理用治具を用い、リングの時効処理および窒化処理の処理を行う際に、異なる治具へのリングの付け替え作業を行うことなく上記熱処理を実施することが可能であり、作業コストの低減や生産性の向上が可能となる。これにより、作業や工程の削減を図れることによるコストの低減だけでなく、量産性も向上させることが可能となり、生産性を大幅に向上させることが可能となる。また、炉内の攪拌ファンによって発生するガスの流れによって炉内のガス濃度のばらつきが極力小さくなるように本発明の熱処理用治具を炉内に適正に配置できる構造となっていることによって、炉内全体にわたって均一な窒化処理が可能となる。さらに、被処理品が順次炉入り口から挿入され、処理品が順次出口から排出される、いわゆる連続操業が可能であり、生産性の更なる向上が図れる。
また、上記第1の傾斜部に対向して上記リングの上側に位置する端部と接触する第2の傾斜部をさらに備えている場合には、上記リングは、横方向に配置されるリングの上下の端部がそれぞれ第1の傾斜部と第2の傾斜部とに接触して保持されるため、リングの幅方向の端部が点接触で支えられて安定した保持状態を維持できる。このため、
炉内攪拌ファンによって生ずる風圧によってもリングの脱落やリングに傷がつくような揺れをほとんど起こさずに熱処理を行うことができる。これにより、時効処理の際のキズ付きの問題が解消される。
また、上記第1の傾斜部および/または第2の傾斜部の少なくとも表層部を構成する材料は、窒化処理を行なっても表面硬度がHv800を超えない材料である場合には、リング端部と接触することになる部分の表面に硬度の上昇が起こらない材料を使用することで、リング端部の傷つきを防止できる。特にリングの取り外し時の傷発生を防止する。これにより、リングの幅方向の端部に、使用時に破壊の起点となりやすい傷付を防止し、リングの信頼性を向上させる。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1〜図3は、本発明の熱処理装置に適用可能な熱処理用治具の一例を示す図である。図1は平面図、図2はA−A断面図。図3は要部の部分拡大図である。この熱処理用治具は、スチールベルトからなるリング1の熱処理を行なうためのものである。
本発明が熱処理の対象とするのは、スチールベルトを無端状に接合したリング1であり、例えば、マルエージング鋼からなる鋼板から形成される。まず、鋼板をベンディングしてループ化したのち端部同士を溶接して筒状のドラムを形成し、一次溶体化処理により硬度を均一化したのち所定幅に裁断してリング1を形成する。ついで、リング1を圧下率40〜50%で圧延した後、二次溶体化処理を行なって金属組織を圧延前の状態に戻す。つぎに、リング1を駆動ローラと従動ローラに掛け渡して張力を与えた状態で回転駆動して周長補正を行なう。この周長補正を行なったリング1を、上記熱処理用治具に取り付け、時効処理および窒化処理を含む熱処理が行なわれる。
上記熱処理用治具は、雰囲気ガスを流通させるための開口3が形成されたベースプレート2と、上記ベースプレート2に対して複数の保持部材4が略垂直となるように取り付けられて構成されている。この熱処理用治具では、横方向この例では略水平方向に配置されるリング1を外周側から保持する保持部材4がリング1の周方向において少なくとも3箇所(この例では4つ)に存在する。そして、複数のリング1を、リングの外周側から保持部材4で保持し、ベースプレート2に略平行すなわちこの例では略水平に各リング1を保持するようになっている。
なお、本発明において、横方向とは、略水平方向に限定するものではなく、上記保持部材4に保持されたリング1が熱処理時の加熱と自重等により使用に支障をきたすまでの変形等をしない程度であれば傾斜をしている場合も含む趣旨である。
上記各保持部材4は、この例では、シャフト6の外周部に、複数の突出部7が等間隔で形成されて構成されている。上記突出部7は、シャフト6の外周部の全周にわたって形成され、外側に行くほど厚みが薄くなって尖った頂部が形成され、二等辺三角形の断面を呈するように形成されている。
また、各隣接する突出部7の麓部同士の距離P1が、リング1の幅寸法よりも小さくなるように設定されている。また、各隣接する突出部7の頂部同士の距離P2は、リング1の幅寸法よりも大きくなるように設定されている。この例では、各保持部材4において、各突出部7の形状および間隔寸法が等しくなるように設定されている。そして、リング1の中心を通過する径方向に配置された2つの保持部材4において、各突出部7の頂部同士の距離Sがリング1の直径よりも短くなるとともに、シャフト6同士の距離Lがリング1の直径よりも大きくなるように設定されている。
すなわち、上記保持部材4は、上記略水平方向に配置されるリング1の下側に位置する端部と接触する第1の傾斜部8と、上記第1の傾斜部8に対向して上記リング1の上側に位置する端部と接触する第2の傾斜部9とを備えている。これにより、リング1の幅方向の端部が、隣り合う突出部7の傾斜部8,9に接触することによりリング1が保持される。
言い換えれば、上記保持部材4は、シャフト6の外周部に、周方向に伸びる断面台形状の溝が所定間隔で複数形成され、溝と溝の間に尖った頂部を有する突出部7が形成されたものであり、上記溝の傾斜部8,9にリング1を保持するようにしたものである。
このように、リング1の上下の端部を、外に行くほど先広がりとなる第1の傾斜部8と第2の傾斜部9との間で外周側から保持するため、保持されたリング1は第1の傾斜部8と第2の傾斜部9との間で安定して保持される。各保持部材4の突出部7の形状および間隔寸法を等しくしたため、各リング1はいずれも水平を保って安定する。
このとき、突出部7を有する保持部材4の必要本数については、その突出部7の突出寸法やリング1直径等によって決定することができるが、リング1を保持するには保持部材4の本数は3本あれば十分である。この例では4本の場合を例示して説明している。
リング1を熱処理する際には、例えば、窒化処理時に炉内の温度やガス成分の均一化を図るために使用される攪拌ファンによって発生する風圧により、リング1が脱落やズレを起こしやすくなる。また、支持されていない部分の間隔が長くなった場合に、熱処理時の加熱によりその部分のリング1の自重による変形が生じやすくなる。また、上述した処理中の脱落やズレを防止するためにリング1に比較的大きな圧縮力をかけなければならないときがあり、その場合にも変形を起こしやすい。これらを考慮した上で保持部材4の適切な数を決定すればよいが、より好ましい保持部材4の本数は4本以上である。
また、例えば、上記ベースプレート2に長穴を開けるなどして、上記各保持部材4をベースプレート2に対して移動可能に取り付けるようにした場合、取り付けるリング1の径が変わっても、それに対応して保持部材4の位置を変更して使用することができる。
上記保持部材4の突出部7の突出寸法をある程度確保することによって、多少直径が異なるリング1であっても、共通の熱処理用治具にセットすることが可能である。無段変速機に使用するリング1では、9〜12枚積層した状態で使用するために少しずつリング1の直径を変化させており、このようなリング1の熱処理に極めて適している。上記突出部7の突出寸法については、特に限定するものではないが、上述したリング1の直径差を考慮して決定することができる。
また、リング1端部と突出部7の各傾斜部8,9とが点接触となった方が、熱処理の際の接触部の昇温遅れ等の問題が生じにくく、窒化処理の際の雰囲気ガスのまわりもよくて均一な窒化層を得ることができる。この理由からも、上記突出部7の麓部同士の距離P1はリング1幅よりも短く設定し、リング1が保持部材4の突出部7以外のシャフト6表面に接しないようにするのが好ましい。なお、リング1が保持部材4の突出部7以外のシャフト6表面に接したとしても、ある程度均一な窒化層の形成を行なうことはできる。
また、突出部7の各傾斜部8,9の面形状は特に限定するものではないが、曲面である方がリング1の端部と各傾斜部8,9との接触面積が小さくなり、窒化処理時のガスの回り込みが良くなるため、曲面とすることが好ましい。なお、例えば平面でも処理は可能である。具体的には、シャフト6の外周部の全周にわたって形成され、外側に行くほど厚みが薄くなり、二等辺三角形の断面を呈するように形成したものを用いることができる。
上記第1の傾斜部8および第2の傾斜部9の少なくとも表層部を構成する材料は、窒化処理を行なっても表面硬度がHv800を超えない材料とするのが好ましい。
このようにすることにより、リング1の幅方向の端部に破壊の起点となるような傷の発生を防止することができる。突出部7自体をそのような材料で形成するか、突出部7の傾斜部8,9表面をそのような材料で被覆することが望ましい。具体的には、加工が容易な例えばNiを主成分とする合金もしくは純Niを材料自体として使用するか、ステンレス等の材料にNiメッキやNi−P等のニッケル系めっきを施して使用することができる。これらの材料によれば、繰り返し窒化処理を行なった場合でも硬度が過度に上昇せず、少なくとも窒化されたリング1の表面硬度を超えることがない。
また、リング1の表面に均一な窒化層を形成させるため、窒化処理の前に酸化処理やフッ化処理等の前処理を行なうことが望ましい。このため、第1の傾斜部8および第2の傾斜部9の少なくとも表層部を構成する材料は、窒化だけでなくこれらの前処理に対しても耐性を持っていることが好適である。この点を踏まえると、少なくともリング1端部と接触する突出部7の傾斜部8,9表面には、Niを70%以上含有する合金もしくは純Ni自体を使用するか、ステンレス等にNiメッキを施すことが望ましい。
ワークが無段変速機のスチールベルト製リング1のように薄肉で重量が大きくない場合には強度もさほど必要ではないことから、少なくとも突出部7の傾斜部8,9表面を構成する材料として、耐酸化性もしくは耐フッ化性、耐窒化性等に優れ、繰り返し使用されても硬度上昇が認められない純Niを選択することが最も望ましい。
なお、硬度の高いセラミックスを使用した場合については、繰り返し窒化処理を行なってもその表面状態はほとんど変化しないため、事前にその表面を研磨しておくことによってリング1端に傷を発生させる可能性が低いという点で理想的であるといえるが、コスト面および加工の困難さという点から、実際に使用するのは容易ではない。さらに、PVD等の方法によるセラミックスコーティングの使用も考えられるが、コーティングされる材料は一般に熱膨張係数が小さいため、繰り返し熱サイクルが負荷される条件では剥離を起こす可能性が高くこちらも実用的ではない。
上記ベースプレート2の形状は、図示した例では四角形としたが、これに限定されるものではなく、熱処理炉内の構造や、後述するリング1の自動着脱の際の位置決め等を考慮して最適な形を選択することができる。ただし熱処理、特に窒化処理時の炉内のガスの攪拌性を考慮すると、少なくとも治具の中心部付近に通気孔となる開口3が形成されていることが望ましい。またベースプレート2の材質および厚さについても特に限定されるものではないが、治具の寿命等を考慮すると、繰り返し熱処理が加わった場合でも変形を起こさないような材質および板厚であることが望ましく、具体的には5mm程度の厚さを有するステンレス鋼や耐熱鋼、Ni基合金等が望ましい。
このようにすることにより、上記熱処理用治具は、少なくとも時効処理と窒化処理を行う際に治具を変更せずとも実用上支障のあるような変形、傷の発生がなく、かつ均一な窒化層の形成が可能となる。さらに、作業や工程の削減によるコストの低減を図ることができる。
図4(A)は、本発明の熱処理装置に適用可能な熱処理用治具において、保持部材4を6本備えた例である。この例では、空間領域5の両側にそれぞれ3つずつの保持部材4が配置される。このように、リング1着脱用の空間領域5を形成する場合には、全体で保持部材4を偶数としたほうが空間領域5の両側に配置される保持部材4の数が等しくなるのでリング1の保持状態が安定する。
図4(B)は、本発明の熱処理装置に適用可能な熱処理用治具において、保持部材4を3本備えた例である。このように、略水平方向に配置されるリング1を外周側から保持する保持部材4がリング1の周方向において少なくとも3箇所存在させればリング1を保持することができる。
図5は、保持部材4の変形例を示す。図5(A)は、シャフト6の外周部に、周方向に伸びる断面U状の溝を所定間隔で形成し、溝と溝の間に尖った頂部を有する突出部7を形成したものである。この例では、第1の傾斜部8および第2の傾斜部9はシャフト6の長手方向の断面形状においても曲線を呈している。図5(B)は、図1〜3に示した保持部材4をシャフト6の長手方向に半分に切除した形状を呈している。図5(C)は、板状部材を溝状に屈曲形成し、2つの開放端縁に二等辺三角形状の突出部16を所定間隔で複数形成したものである。
つぎに、上記熱処理用治具を用いた場合の本発明の熱処理装置について説明する。
図6は、本実施形態の熱処理装置の一例を簡易的に示した断面図である。図に示した熱処理炉の一例の概略は、処理品が挿入、搬出される自動開閉可能な開閉扉30を両側に有することによって区切られた複数の連続した第1〜第5の処理室25,26,27,28,29からなっており、基本的に上記各処理室25,26,27,28,29の上部に温度および雰囲気の均一化を図るための炉内攪拌用のファン33が少なくとも1つ以上取り付けられており、さらに特に図示しないがそれぞれの処理室25,26,27,28,29には雰囲気を調整するためのガスを導入、排気するための配管と、各処理室25,26,27,28,29内の温度を独立して制御することが可能な加熱手段、および処理品を載せたトレイ32を移動させることが可能な搬送手段が取り付けられた連続熱処理装置である。
この熱処理装置は、上述した熱処理用治具を使用し、熱処理用治具にワークであるリング1を保持した状態で時効処理とフッ化処理を行う時効処理室と、上記フッ化処理が行われたワークを窒化処理する窒化処理室と、上記時効処理室と窒化処理室との間に配置され、時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するための中間室と、上記熱処理用治具へのリングの保持状態を維持したまま時効処理室から中間室、窒化処理室への搬送を行なう搬送手段とを備えており、上記熱処理用治具にリング1を保持した状態で時効処理を行い、上記熱処理用治具へのリング1の保持状態を維持したまま窒化処理を行なう本発明の熱処理方法を実現する。
より詳しく説明すると、まず、リング1を保持させた本発明の熱処理用治具を炉内に適正に配置するための棚状治具31にセットし、その棚状治具31を炉内搬送するためのトレイ32上に載置する。ここで、各処理室25,26,27,28,29内の炉壁を、ワークの進行方向に円筒形状とすることによって、炉内攪拌のファン33により基本的に棚状治具31内およびそこに配置された熱処理用治具内で下から上に向けたガス流れが発生し、そのガス流が棚状治具31と炉壁の間をスムーズに降下するような対流を起こすことで炉内温度およびガス濃度のばらつきを極小化できる。
つぎに、上記棚状治具31を載せたトレイ32を雰囲気置換およびもしくは昇温を行なう第1の処理室25前の自動開閉可能な開閉扉30を上に上げ炉内に挿入し、その開閉扉30を下げて閉める。なお開閉扉30は自動開閉可能なだけでなく十分な気密性を確保できる構造となっている。次にこの第1の処理室25内を真空引きおよびもしくはNガス等で置換することによって、昇温された際に上記リング1の表面が酸化することを防ぐ。
なお、この第1の処理室25では雰囲気置換を行うことが重要であり必ずしも昇温を行う必要はなく、次室である第2の処理室26で昇温してもよい。したがって、雰囲気置換の迅速化のため真空ポンプを用いて一旦真空引きする方法を利用してもよいし、単にファン33を回しながらNガス等を投入することのみで炉内ガスを置換する方法を利用しても構わないが、それらの方法によって雰囲気置換、すなわち酸化源となる第1の処理室25内の酸素濃度およびもしくは水分濃度を十分に低下させることを行なえば、必ずしも昇温を行なう必要はない。したがって、この場合にはこの第1の処理室25に加熱手段を設ける必要は必ずしも無い。この第1の処理室25に加熱装置を設けるか否かについては、順次処理品を炉内に挿入する、いわゆる連続操業を行なう際に、次室以降第2〜第5の処理室26,27,28,29で処理を連続的かつスムーズに行えるように時間を調整する必要があるため、この点を考慮して決定する。
つぎに、上記リング1を熱処理用治具に保持した状態のまま、棚状治具31を積載したトレイ32を第1の処理室25と第2の処理室26の間の開閉扉30を開け、搬送手段により時効およびフッ化を含む熱処理を行うための第2の処理室26に移動させた後、開閉扉30を閉める。
この第2の処理室26では、時効処理が行なわれ、第2の処理室26は時効処理室として機能する。また、第2の処理室26では、時効処理と併せてフッ化処理をおこなうこともできる。
上記第2の処理室26については上記トレイ32が挿入される前に予めNガス等の非酸化性ガスで置換しておく必要がある。その際の第2の処理室26内の温度については、例えば常温の状態にしたまま上記トレイ32を挿入し、それから時効温度まで昇温しても構わないが、予め時効温度に加熱保持しておいた方が昇温時間の短縮が可能となるためより望ましい。なおこのとき第2の処理室26の温度を時効温度、例えば400〜500℃程度の高温に熱しておいた場合でも、第2の処理室26内と同様に第1の処理室25内の酸化性ガス濃度は既に非常に低くなっているため、第1の処理室25と第2の処理室26との間の開閉扉30を開閉した場合でも、上記リング1の表面が以後の処理に問題となるような酸化を起こすことを防止することができる。
また、処理を行うリング1の材質がマルエージング鋼やステンレス鋼など、通常のガス窒化処理のみでは均一な窒化層の形成が難しい材質である場合には、ガス窒化処理の前にその表面に形成している酸化皮膜を破壊、除去する前処理を行なうのが好ましい。本発明の熱処理装置では、適正な処理を実施できる温度域が広く、例えば最適な時効処理温度を選択しその温度を変えることなく安定的に処理を行うことが可能であり、またその後の窒化処理で例えばNHの分解率を低くコントロールした場合でも均一な窒化層を形成させることが可能である等の理由から、上記前処理としてフッ化処理を選択することができる。
上記フッ化処理に使用するガスとしてはフッ素ガスやフッ素化合物ガスを含むガスであれば特に限定されるものではないが、NFガスをNガス等で希釈したガスが取り扱い性等の面で最も利用しやすい。このフッ化処理は窒化処理の前であれば時効処理の前であっても実施可能であるが、できるだけ窒化処理の前に行うことが望ましいことから、時効処理後または時効処理と併せて窒化処理の直前に実施するのが最も望ましい。
したがって、本実施形態の熱処理装置では、第2の処理室26で時効処理とフッ化処理を行い、第3の処理室27では特別な処理を行わず、第4の処理室28で窒化処理を行う。
上記フッ化処理の後、できるだけ速やかに窒化処理に移行するのが好ましい。このため、上記第2処理室26にワークを搬入して時効処理を開始し、第2処理室26での時効処理の残り時間がフッ化処理時間と略同じになったときにフッ化ガスを導入してフッ化処理を開始する。そして、第2処理室26での時効処理とフッ化処理を同時に終了させることが行われる。このように、フッ化処理は、時効処理時間の一部に重ねて同じタイミングで行われる。
中間室として機能する第3の処理室27については、上述した連続操業時にはほぼ一定間隔で本発明の熱処理炉内に処理品が挿入され、各処理室25,26,27,28,29間を搬送されてくる。この場合において、第3の処理室27は、第2の処理室26と第4の処理室28間のガスの混入を防ぐことを設置目的の一つとしているため、第2の処理室26で時効処理とフッ化処理を行い、第3の処理室27では保温もしくは特別な処理を行わず、第4の処理室28で窒化処理を行う方法が好ましい。この場合、第3の処理室27の炉内雰囲気は予めNガス等の非酸化性ガスを充満させておくことが望ましい。なお、第3の処理室27が上記の目的で使用される場合には、図示したファン33およびモーター34は必ずしも必要とはしない。
このとき、上記リング1を本発明の熱処理用治具に保持した状態のまま、棚状治具31を積載したトレイ32を第2の処理室26と第3の処理室27の間の開閉扉30を上げ、搬送手段により第3の処理室26に移動させた後、開閉扉30を閉める。また、上記リング1を本発明の熱処理用治具に保持した状態のまま、棚状治具31を積載したトレイ32を第3の処理室27と第4の処理室28の間の開閉扉30を上げ、搬送手段により第4の処理室28に移動させた後、開閉扉30を閉める。
つぎに、時効処理され必要に応じてフッ化処理がなされたリング1は、窒化室として機能する第4の処理室28に移動され、窒化処理する工程が行われる。この第4の処理室28についても、予め窒化処理温度に保持させておくと処理時間の短縮化に寄与する。この窒化処理時にも上記熱処理用治具が使用され、かつフッ化処理が行われていることによって、上記熱処理用治具と上記リング1の幅方向の端部を含め、そのリング1材の材質を問わずその表面部全体に均一な窒化層を形成させることが可能となるのである。
なお、窒化処理を行なう温度、時間等については処理を行なう上記リング1の材質や要求される性能等によって異なるため特に限定しないが、例えばマルエージング鋼製のリング1であれば、過時効にならない400〜500℃の温度で20分〜120分保持する条件とすることができる。
また、フッ化処理された表面はNHの分解によって生ずる活性なHによって容易に還元され活性化するため、リング1表面に侵入するN濃度が高くなりやすい。したがって、リング1表面に硬く耐摩耗性の高い窒化物層が形成されやすいが、脆い性質のために特に曲げ応力が加わった場合に破壊の起点となりやすい。このため、NHだけでなくHも添加して第4の処理室28内のNHの分解率を適正にコントロールする方法を用いることができる。
このような正確な雰囲気コントロールを実現するためには炉内の温度およびガス濃度のばらつきが極力小さいことが重要となるが、上述したように本発明の熱処理装置では、炉内のガス流を最適化できる構造となっているため、例えば1回の処理あたり1000本を越えるような本数のリング1を処理する場合であっても、表面に脆い窒化物層を有しない、Nが母材中に拡散した層が表面部に均一かつ安定的に形成され、その表面部には高い圧縮応力を発生させることが可能となるため、その結果として高い引張りと曲げ応力が繰り返し負荷される過酷な使用環境においても実用可能な疲労強度を有したリング1の量産窒化処理が可能になるのである。
つぎに、第4の処理室28内で窒化処理されたリング1は、第4の処理室28と第5の処理室29の間の開閉扉30を上げ、搬送手段により第5の処理室29に移動され、開閉扉30を閉めて冷却される。このとき、冷却室として機能する第5の処理室29内の雰囲気は、上記窒化処理されたリング1表面が過度に酸化されて強度低下等を起こすことを防ぐため、予めNガス等の非酸化性ガスを充満させておくことが望ましい。ただし、150〜200℃程度で表面に非常に薄く緻密な酸化層を形成させた場合には、上記窒化処理されたリング1の耐食性を向上させる効果が発現する場合があるため、第5の処理室29を上記温度に保持、酸化する工程が行なえるように酸素もしくは空気を導入できる構造にしておくことがより望ましい。
そして、上記第2処理室26での時効処理およびフッ化処理の処理時間と、第4処理室28での窒化処理の処理時間とがほぼ等しくなるように調整することにより、最適なタクトタイムで連続操業することができる。
上記熱処理用治具を用いた熱処理装置によって、時効処理および窒化処理を含む熱処理を行った場合でも使用に支障のあるような変形や傷等を発生させることはなく、また例えば1回の処理あたり1000本を越えるような本数のリング1を処理した場合であっても、治具と接触しているリング1の幅方向の端部を含め、表面部に安定的に均一な窒化層を形成することができる。また本発明の熱処理装置によれば、炉内に挿入したリング1を載せた熱処理用治具を例えば窒化室として機能する第4の処理室28に移動させる段階で後続のリング1を載せた熱処理用治具を時効室およびフッ化室として機能する第2の処理室26に移動させるような、いわゆる連続操業が可能となるため、時効処理と窒化処理間で治具を変える必要が無いことも含め、大幅な生産性の向上を図ることができる。
以下に本発明の実施例について説明する。
約18質量%のNiの他に、Co、Mo、Ti等を含む低炭素鋼であるマルエージング鋼からなる溶体化処理を施された、板厚が約0.18mmに圧延されたリング1形状のスチールベルトを図4(A)に示した治具に9本セットした。なお突出部7を有する保持部材4の材料には加工が容易で窒化反応を起こさない純Niを使用し、リング1との接触面積が小さくなるように上記突出部7の面は曲面となるように加工したものを用いた。
このとき、上記リング1は9本重ねて使用することを目的として周長補正されており、最も大きなリング1と最も小さなリング1の直径差が3.0〜3.5mmあるものを使用した。なお当該実施例で使用した最も大きいリング1の直径は約240mmであった。
つぎに、上記リング1が9本セットされた状態の熱処理用治具を、図6に示す炉内に適正に配置するための棚状治具31にベースプレート2を下にしてセットし、トレイ32に載せて第1の処理室25内に挿入した。第1の処理室25内を窒素置換した後、予め窒素置換した状態で480℃に保持された第2の処理室26に移動させ、処理品を480℃に昇温させた後40分間保持し時効処理を実施した。このとき、雰囲気にHガスを添加しさらにリング1表面の酸化を抑制する方法も実施可能であるが、その場合フッ化処理の前に炉内のHガスを完全に排気することが望ましく、工程が増えるため、本実施例では窒素のみで時効処理を実施した。
つぎに、上記時効処理に引き続き同一の第2の処理室26内にNFガスを含むフッ素源ガスを導入し、その状態で20分間保持しフッ化処理を実施した。フッ化処理終了後、搬送手段により第3の処理室27に移動させ、その後第4の処理室28室まで搬送手段により移動させた。なお第4の処理室28室についても予め480℃に保持された状態とした。その後、NHガスとHガスが3:2の容量割合になるように調整されたガスを含んだ混合ガスを第4の処理室28内に導入し、1時間保持することで窒化処理を実施した。
つぎに、窒化処理が終了した処理品を載せたトレイ32を200℃に保持した第5の処理室29に移動させ、処理品の温度が200℃に安定したところで乾燥空気を第5の処理室29内に導入し、10分間保持したのち、第5の処理室29出口側の開閉扉30を上げ室温まで冷却した。
処理後のリング1のセット状態を確認したが、処理前と同様に熱処理用治具から外れたり、炉内の風の流れによって治具や処理品同士が衝突して打痕が発生したようなものは認められなかった。また、リング1の取り外しを行ったが、リング1に傷は発生せず、また変形も確認できずほぼ処理前の形状を維持していた。
つぎに、炉内の硬度のばらつきを確認するために、マイクロビッカース硬度計を用いて炉内の8隅にセットしたリング1と中央部にセットしたリング1の表面および中心硬度の測定を行った。また熱処理用治具と接触していたリング1の幅方向の端部についても同様に硬度測定を行った。その結果を表1に示す。
上記表1の結果より、炉内の表面硬度および中心硬度のばらつきはかなり小さいことから、炉内の温度およびガス濃度のばらつきが非常に小さいことが分かる。また熱処理用治具との接触部についても、表面および中心硬度が非接触部とほぼ同等の値を示していることから、接触部についても均一な時効処理および窒化処理が行われたことが分かる。なお表1で接触部の中心硬度の欄には表面から0.09mm位置の硬度を示した。またこれらのサンプルの断面をナイタール液で腐食して観察したが、どのサンプルの表面にも腐食されず白色に見える窒素化合物層の存在は確認されなかった。その腐食断面組織の一例を図7に示す。
つぎに、熱処理用治具に配設された保持部材4が3本であり、リング1を12本セットすることが可能な形状の治具を使用し、最大直径が約200mmである、溶体化および周長補正された実施例1と同じ組成のマルエージング鋼製リング1を使用し、基本的には実施例1と同様の処理方法を用いるが、連続操業を模擬し、第4の処理室28にトレイ32が移動したときに第2の処理室26に次のトレイ32が入るタイミングで順次処理炉内に被処理品および熱処理用治具を載せたトレイ32を挿入する方法で、5回連続処理を行った。このときの熱処理用治具と接触している部分ではないすなわち非接触部の表面硬度についてマイクロビッカース硬度計を用いて測定した結果を下記の表2に示す。
このとき、実施例1と同様に熱処理用治具との接触部について、および両者の中心硬度についても複数測定したが、実施例1の結果と同様に非接触部とほぼ同等の値を示したため、表2では非接触部の表面硬度のみを代表的に示す。また処理後のリング1のセット状態、リング1端部の傷およびリング1の形状変形についても実施例1と同様に確認したが、特に問題となるものは発見されなかった。さらに断面組織についても実施例1と同様に検査用に抜き取りを行なった全てのサンプルを腐食して観察したが窒素化合物層の存在は確認されなかった。
表2の結果から連続操業を模擬した試験でも、実施例1と同様に炉内の表面硬度ばらつきは非常に小さく、また平均値の推移からも安定した値で推移していることが分かる。よって実際の連続操業時の場合であっても安定した処理が可能であると推測され、生産性に優れた連続処理および連続操業が安定的に実施可能になるものと考えられる。
以上のように、本実施形態の熱処理装置は、時効処理とフッ化処理を行う時効処理室と、上記フッ化処理後に窒化処理する窒化処理室と、上記時効処理室と窒化処理室との間に配置されて時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するための中間室とを備えている。このように、窒化処理の前処理としてのフッ化処理と時効処理とを同じ時効処理室で行い、フッ化後の窒化処理を上記時効処理室とは別の窒化処理室で行うことにより、フッ化処理/時効処理と、窒化処理とを並行して処理することが可能となる。しかも、上記中間室により時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するため、フッ化ガスと窒化ガスが混入して不要な反応を起こす危険が回避される。このように、時効、フッ化、窒化という処理を連続して行う場合のタクトタイムの調整が可能となり、生産性を大幅に向上させることが可能となる。
また、上記ワークがスチールベルトからなるリングである場合には、スチールベルトからなるリングにおける窒化処理層の疲労特性を向上させる熱処理を行い、しかもその生産性を大幅に向上させることが可能となる。
また、上記熱処理用治具を用い、リング1の時効処理および窒化処理の処理を行う際に、異なる治具へのリング1の付け替え作業を行うことなく上記熱処理を実施することが可能であり、作業コストの低減や生産性の向上が可能となる。これにより、作業や工程の削減を図れることによるコストの低減だけでなく、量産性も向上させることが可能となり、生産性を大幅に向上させることが可能となる。また、炉内攪拌用のファン33によって発生するガスの流れによって炉内のガス濃度のばらつきが極力小さくなるように本発明の熱処理用治具を炉内に適正に配置できる構造となっていることによって、炉内全体にわたって均一な窒化処理が可能となる。
さらに、時効処理室と窒化処理室との間に、両室間のガスの混入を防ぐ中間室が設けられていることから、フッ化処理を実施する場合に、被処理品が順次炉入り口から挿入され、処理品が順次出口から排出される、いわゆる連続操業を安全かつ安定的に実施することが可能であり、生産性の更なる向上が図れる。
本発明に適用可能な熱処理用治具の平面図である。 上記熱処理用治具のA−A断面図である。 上記熱処理用治具の要部を拡大した図である。 本発明に適用可能な熱処理用治具の他の実施形態を示す図である。 保持部材の他の例を示す図である。 本発明の熱処理装置の一例の断面図である。 本発明装置を使用した熱処理方法を行なったリング断面腐食組織の一例である。
符号の説明
1:リング
2:ベースプレート
3:開口
4:保持部材
5:空間領域
6:シャフト
7:突出部
8:第1の傾斜部
9:第2の傾斜部
16:突出部
25:第1の処理室(雰囲気置換およびもしくは昇温室
26:第2の処理室(時効およびフッ化室
27:第3の処理室(中間室
28:第4の処理室(窒化室
29:第5の処理室(冷却室
30:開閉扉
31:棚状治具
32:トレイ
33:ファン
34:モーター

Claims (1)

  1. 熱処理用治具にスチールベルトからなるリングを保持した状態で時効処理とフッ化処理を行う時効処理室と、
    上記フッ化処理が行われた上記リングを窒化処理する窒化処理室と、
    上記時効処理室と窒化処理室との間に配置され、時効処理室と窒化処理室のガスが混入するのを防止するための中間室と、
    上記熱処理用治具への上記リングの保持状態を維持したまま時効処理室から中間室、窒化処理室への搬送を行なう搬送手段とを備え、
    上記熱処理用治具は、雰囲気ガスを流通させるための開口が形成されたベースプレートと、横方向に配置されるリングを外周側から保持する複数の保持部材が上記ベースプレートに対して垂直となるように取り付けられて構成され、
    上記熱処理用治具は、上記保持部材における少なくともリング端部と接触することになる部分の表層部を構成する材料が、窒化処理を行なっても表面硬度がHv800を超えない材料である
    ことを特徴とする熱処理装置。
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