JP5419383B2 - 垂直曲げ型の連続鋳造機 - Google Patents
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特許文献1〜特許文献4に示すような連続鋳造機では、従来通り、鋼材(鋳片)の表面欠陥や内部割れがない鋼材を鋳造することができるものの、近年求められてきている高強度鋼材を製造(鋳造)するためには、このような従来の連続鋳造機に付帯設備(例えば、加熱装置など)を設けたり、複雑な制御(例えば、鋳造速度に応じて冷却水を可変とする制御)を行う必要があり、高強度鋼材を鋳造することは困難であることが実情である。
即ち、化学成分が、C:0.05〜0.55質量%、Si:0.10〜2.00質量%、Mn:0.30〜1.90質量%、P:0.005〜0.070質量%、S:0.003〜0.120質量%で、且つ、厚みが280mm〜350mmとなる鋳片を、鋳造速度が0.7〜1.1m/minで且つ比水量が0.15〜0.40l/kg・steelで鋳造する垂直曲げ型の連続鋳造機であって、当該連続鋳造機のプロフィールが式(1)〜式(5)を満たすように設定されている点にある。
その結果、鋳造する対象の鋳片の化学成分を、C:0.05〜0.55質量%、Si:0.10〜2.00質量%、Mn:0.30〜1.90質量%、P:0.005〜0.070質量%、S:0.003〜0.120質量%とし、鋳片の厚みを280mm〜350mmとし、当該鋳片を製造する上での鋳造条件を、0.7〜1.1m/minの鋳造速度で、0.15〜0.40l/kg・steelの比水量とした上で、垂直長さが式(1)を満たし、曲げ長さが式(2)を満たし、二次冷却長さが式(3)を満たし、垂直部分から円弧部分までの長さが式(4)を満たし、垂直部分から矯正部分までの長さが式(5)を満たすようにすることによって、表面欠陥や内部割れがない鋳片を簡単に製造することができる垂直曲げ型の連続鋳造機を見出した。
図1は、厚みが280mm〜350mmとなる鋳片(例えば、ブルーム)を鋳造する連続鋳造機の全体側面図を示したものである。
この連続鋳造機1は、垂直曲げ型の連続鋳造機であって、溶鋼2を一時的に貯留するタンディッシュ3と、このタンディッシュ3からの溶鋼2が供給される矩形状の鋳型4と、この鋳型4により成型された鋳片5を引き出すと共に、鋳片5をサポートする複数のサポートロール6と、鋳片5を冷却する冷却手段(例えば、冷却ノズル)7を有している。
サポートロール6は、鋳型5の下方から順に下流側へ配置されている。ここで、連続鋳造機1のプロフィール(ロールプロフィール)を見ると、当該連続鋳造機1は、サポートロール6を鋳型4から下流側に向けて垂直方向に並べることにより当該サポートロール6と鋳型4とにより構成された垂直部10と、サポートロール6を垂直部10の終端(下流側の端部)から続いて徐々に内側に曲げながら並べることにより構成した曲げ部11と、サポートロール6を曲げ部11の終端から続いて内側に円弧状(軌跡が円弧状)に並べることにより構成した円弧部12と、サポートロール6を円弧部12の終端から続いて水平に並べることにより構成された矯正部13とを備えたものとなっている。
この連続鋳造機1では、化学成分が、C:0.05〜0.55質量%、Si:0.10〜2.00質量%、Mn:0.30〜1.90質量%、P:0.005〜0.070質量%、S:0.003〜0.120質量%となる鋳片5を鋳造するためのもので、当該連続鋳造機1は、これらの化学成分の鋳片5の特性を考慮した上での構成となっている。
この連続鋳造機1においては、式(1)〜式(5)を満たすように形成されている。即ち、連続鋳造機1のプロフィールは、式(1)〜式(5)を満たすものとなっている。なお、この連続鋳造機1は、鋳片4の内部歪みの低減と高速鋳造の観点から円弧部12の半径、即ち、円弧半径(定円弧半径)Rは10m以上である。
式(1)に示す垂直長さVLは、垂直部10の垂直長さであって、言い換えれば、鋳型4の上端から鋳片5を垂直に支持する最下流サポートロール6aまでの長さである。
図2は、連続鋳造機1における鋳片5が垂直となっている長さと、鋳片5内部残存介在物との関係を示したもので、日本鉄鋼協会ISIJ international、vol34(1994),No6に開示されたものである。図2のFkは、垂直曲げ連続鋳造機(垂直曲げ型の連続鋳造機)における介在物の補足率から曲げ連続鋳造機(曲げ型の連続鋳造機)の介在物の補足率を割った値で、この値が小さいほど、垂直曲げ型の連続鋳造機による介在物の浮上分離が効果的であることを示している。
[曲げ部の長さについて]
式(2)に示す曲げ長さBLは曲げ部11の長さであって、言い換えれば、曲げ部11の開始のサポートロール6aから曲げ部11の終了のサポートロール6bまでの長さである。
また、鋳型4の下端の垂直部10及び曲げ部11においては、大きな曲げ歪みが鋳片5に加わることから、バルジング歪みを小さくするために、当該垂直部10及び曲げ部11のサポートロール6間には冷却ノズル7が配置されている。
表1は、曲げ長さBL(曲げ部11の長さ)を3.0mに設定して、鋳造を行った際の冷却ノズル7の噴霧状況及び鋳片5の表面欠陥の状況をまとめたものである。
なお、表1のノズル隙間のギャップの欄は、冷却ノズル7の先端部7aから上下サポートロール6の隙間D1の合計(単位:mm)を示したもので、ノズル隙間の片側の欄は、冷却ノズル7の先端部7aから一方(上又は下)のサポートロール6の隙間D1の値(単位:mm)を示したものである。
表1に示すように、実験番号1〜実験番号3に示すように、式(2)を満たすように、曲げ長さBLを設定すると、1W後、2W後、4W後及び6ヶ月後のいずれの経過後でも、ノズル噴霧状況は良好であると共に、表面欠陥の評価も良好という結果となった。
即ち、表1及び図4に示すように、冷却ノズル7とサポートロール6との間の隙間Dが少なく(ノズル隙間D1が10mm以下)、曲げ長さBLが式(2)を満たさない場合、長期間に亘って鋳造すると冷却ノズル7の先端部7aに堆積したスケールがサポートロール6に接触する。その結果、冷却ノズル7の曲がりや変形等が発生して、この影響によって冷却水が鋳片5に均一に噴霧されず、ノズル噴霧状況の不良や表面欠陥を発生させてしまう。特に、表1に示すように、曲げ長さBLが式(2)の値に非常に近似する場合において、鋳造開始から2W後程度では、各評価において良好という結果もあるが、曲げ長さBLが式(2)の値よりも大きく外れてしまうと、鋳造開始から1W後でも各評価は即座に不良となる結果となった。
[二次冷却長さの最小値について]
式(3)に示す二次冷却長さWLは、鋳型4の下方から鋳造方向に向けて配置された冷却ノズル7の範囲で示されるもので、式(3)の左辺は、二次冷却長さWL(冷却ノズル7の設置範囲)の最小値を示している。式(3)の左辺は、冷却ノズル7の設置範囲が垂直部10の長さVLと曲げ部11の長さBLとを加算した長さに鋳型4の長さMLを減算した値以上であることを示している。言い換えれば、式(3)の左辺は、冷却ノズル7が鋳型4の下方から垂直部10を経て曲げ部11内に配置されることを示している。なお、式(3)の左辺においては、鋳型4の長さMLは垂直部10の長さVLよりも短いことが前提となっている(ML<VL)。また、二次冷却長さの説明にあたっては、冷却条件を所定範囲にすべく、比水量(冷却水の水量)を0.15〜0.40l/kg・steelの範囲とすることを前提としている。
表2は、冷却ノズル7の放水を部分的に停止することで二次冷却長さWLを変化させて、鋳造を行った際の内部割れをまとめたものである。鋳造条件は、図5と同じように、鋳造速度Vc=1.1m/minとし、内部割れが発生しやすい鋼種(S55C)を鋳造した。
表2の実験番号8〜実験番号9では、二次冷却長さWLが式(3)の左辺の値を満たしているため、内部割れは発生することがなく良好であった(表2、内部割れ評価「○」)。
[二次冷却長さの最大値について]
式(3)の右辺は、二次冷却長さWL(冷却ノズル7の設置範囲)の最大値を示している。式(3)の右辺は、冷却ノズル7の設置範囲が垂直部10の長さVLと曲げ部11の長さBLと円弧部12の長さCLとを加算した長さに、鋳型4の長さMLと冷却終了後から矯正部13に入るまでの復熱領域(復熱に要する距離)RLを減算したものであることを示している。言い換えれば、式(3)の右辺は、冷却ノズル7が鋳型4の下方から垂直部10から曲げ部11を経て円弧部12内に配置されていると共に、円弧部12内の領域では鋳片5の復熱を考慮して円弧部12の終端の手前で当該冷却ノズル7の配置が完了していることを示している。
このように、SCM420の表面温度が780℃〜830℃となった状態で、矯正部13にて鋳片5を曲げ状態から水平状態に矯正すると、実際に表面割れを引き起こすため、鋳片5が矯正部13に位置したときは表面温度が830℃以上とする必要がある。
図8に示すように、矯正部13内に冷却ノズル7を配置(最下流冷却ノズル7をP1地点に配置)した場合、点線に示すように、矯正部13内にて鋳片5の表面温度が830℃以下となり、表面割れが発生する。一方で、最下流冷却ノズル7を矯正部13から1.0m以上手前にした場合(最下流冷却ノズル7をP2地点に配置)、実線に示すように、冷却を完了した時点では、鋳片5の表面温度は830℃であるが、矯正部13に入るまでに鋳片5の表面温度は復熱により830℃以上となる。
表3は、冷却ノズル7の放水を部分的に停止することで二次冷却長さWLを変化させて、鋳造を行った際の内部割れをまとめたものである。鋳造条件は、図8と同じように、鋳造速度Vc=0.7m/minとし、表面割れが発生しやすい鋼種(SCM420)を鋳造した。
[垂直部から円弧部までの長さ、垂直部から矯正部までの長さについて]
式(4)は垂直部10から円弧部12までの長さであって、垂直部10と曲げ部11と円弧部12の合計の長さを示したものである。
図9に示すように、鋳片5の厚みが異なったとしても、いずれの場合でも、9.0m以上で矯正を開始すると、鋳片5の表面温度が830℃以上で矯正することができ、鋳片5の表面割れを防止することができる。即ち、式(4)に満たすように、垂直部10と曲げ部11と円弧部12の合計の長さが9.0m以上であれば、矯正部13において表面割れがなく鋳片5を矯正することができる。一方で、矯正部13で矯正を行ったとしても21.0m以内で矯正を終了しないと、鋳片5の表面温度が830℃未満となってしまう。そこで、式(5)に満たすように、垂直部10と曲げ部11と円弧部12と矯正部13との合計の長さが21.0m以下であれば、表面割れがなく鋳片5を矯正することができる。
表4は、式(1)〜式(5)を満たす本発明の連続鋳造機1において、鋳造速度を変化させて複数の鋼種の鋳造を行った結果をまとめたものである。
実験番号28、34及び40では、鋳造速度Vc=1.2m/minとすると、S45C、S45CS1及びS55Sの鋼種では内部割れの欠陥が確認された(表4、評価欄「×」)。また、実験番号41では、鋳造速度Vc=0.6m/minとすると、SCM420の鋼種において、表面割れの欠陥が確認された(表4、評価欄「×」)。
5 鋳型
6 サポートロール
10 垂直部
11 曲げ部
12 円弧部
13 矯正部
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